説明

濃縮された、クリーム状から固体状の、水中油型エマルジョンの乾燥組成物、その製造方法、及び官能的側面及び栄養生理学の点で改良された食品を製造するためのその使用

本発明は、水中油型エマルジョンに関する。それは、実質的には、特有の安定性を有するタンパク質、多糖類及び油もしくは脂肪を含み、増粘剤、懸濁剤、コーティング材としての使用、複数の製品を製造する際の食品への添加物としての使用に好適である。さらに、従来製造されていた製品に比べて、官能的側面、及び栄養学的な点に関して改善された特性を有する食品及びその製造方法が提供される。さらに、本発明によって製造されたエマルジョン及び製品は、非乾燥組成物とほぼ同じ性質を有する組成物を得るために、乾燥、続いて再水和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概要、連続水相及び分散された脂肪または油の相を有するバイオポリマー系組成物、並びにそれらを製造するための簡単かつ連続した方法に関する。分散された油相は安定性があり、長時間放置しても分離しない。水相及び油相の分離に対する該組成物の安定性は、製造に用いられる独自の方法に基づくものであり、更なる乳化剤又は分散剤を必要としない。該組成物は、独自の特徴をもち、それらを食品製品における増粘剤、懸濁化剤、コーティング材、及び脂肪の代用品に適するようにしている。さらに、本発明の方法によって製造された製品は、乾燥させ、続いて再水和させて、乾燥させていない組成物と本質的に同じ特徴を有する組成物を生成することができる。
【背景技術】
【0002】
クリーム状で、及び/又は食感が濃厚で、コクのある食品及び化粧品等の他の製品は、典型的に、所望の稠度を得るために(例えば、マイクロ粒子もしくは乳化脂肪の形態で)ヒドロコロイド及び/又は微細に分散した粒子の添加に依存している。一般的に、乳化脂肪は、液体もしくはスプレー乾燥されたクリーム化非乳物質、全乳又はスキム(低脂肪)ミルクの形状で提供される。これらの製品中に通常見出される脂肪の量は、稠度及び/又は水結合能に関して、不十分な利点しか提供せず、長時間の保存中に分離することも多い。
【0003】
1つの別法は、製品の稠度(粘性)を増加させる成分の使用である。飲料の稠度を提供するために、すなわち、それらの粘性を増加させるために、ヒドロコロイドガム及び水溶性デンプンが通常使用される。しかしながら、ヒドロコロイドガムはしばしば、製品を「粘液性」もしくは「粘性」にする、好ましくない稠度特性を付与する。
【0004】
粘性を増加させるために、水溶性デンプンを使用することもできる。しかしながら、これらの特性を提供するために必要な水溶性デンプンの量は、ガムの使用と比べて通常大きくなり、より多量の固体物質を追加する必要がある。インスタント製品の場合、これによって、固体物質の比率が更に大きくなる。高用量の固体物質によって、味の豊かさやクリーミーさを増加させることができるものの、しかしながら、これは、最終製品の容量を増加させることを意味し、したがって、原材料の少ない投入で、高品質の最終製品を得ることを目指す、製品の生成を困難にすることを意味する。
【0005】
従来技術
従来技術としては、例えば、国際特許出願WO03/003850が挙げられる。そこでは、化粧品、ヘルスケア製品、食品及び飲料の粘性を安定化させ、増加させるために、実質的には、ペクチン、アルギン酸塩及びセルロースからなる組成物が提案されている。文献欧州特許340 035A2には、従来及び新規の食品製品において、栄養素、粘性もしくは稠度のコントロール手段としての、不溶性のマイクロ断片化されたイオン性多糖類/タンパク質複合体の分散液の使用が記載されている。しかしながら、従来技術には、クリーミーな口あたり、ならびに食品製品から医薬品にわたる広範囲の食用製造物の製品に対するクリーム化安定性をもたらし、例えば、工業製品を含む他の製品からの水の分離を減少または排除した、油中水型エマルジョンの製造方法については記載されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、実質的には、タンパク質、多糖類、油もしくは脂肪、及び任意成分としての水からなる水中油(O/W)型エマルジョン(以下、「PPS」すなわち、タンパク質/多糖類安定化剤とも称する)の製造方法に関する。特に、本発明は、エマルジョンの全重量に対して、0.2〜10.0重量%のタンパク質;0.3〜10.0重量%の極性多糖類;0.1〜60重量%の脂肪/油成分;及び任意成分として0〜30.0重量%のポリオールを含有する水中油(O/W)型エマルジョンの製造方法に関する。必要に応じて、0〜1.0重量%の着香料;0〜1.0重量%の着色剤;0〜0.2重量%の防腐剤;及び/又は0〜1.0重量%の酸がさらに存在してもよい。ならびに、所望の最終製品にPPSを介して、例えば、酵素類を粉石鹸に;ビタミン、必須脂肪酸、色素及び酸化チタン等の金属を食品製品または日焼け止めローション等のヘルスケア製品に;タキソール等の治療用活性成分を医薬品に;防カビ剤を植物保護剤に;水酸化アルミニウムを飲料冷水等に、導入または組み込む活性成分がさらに存在してもよい。
【0007】
本発明は、従来使用されていた乳剤又は分散剤の不存在下で、タンパク質及び多糖類を含有する水相に対して、実質的には脂肪/油成分(油相)からなる相を分散または微細に乳化することによって、バイオポリマーもしくはバイオポリマー混合物の水相全体に分散している微細な油滴によって構成される安定な分離しないエマルジョンを製造することができる(水相の作製には、タンパク質及び多糖類を、混合する前に撹拌しながら別個に溶解させる)、という驚くべき発見に基づいている。本発明のエマルジョンを製造するために、別法として、前記油相を少なくとも一部の前記多糖類と撹拌しながら混合し、続いてそれを前記タンパク質及び任意成分として一部の前記多糖類を含有する水相中に分散及び微細に乳化することもできる。PPSの分散された油滴もしくは脂肪滴の粒子サイズは、最大分散x50.3≦10μm(体積関連中央値)であることが好ましい。PPSの乾燥質量含有率は5〜60重量%であることが好ましい。PPSの乾燥質量の減少は、基本的には、油もしくは脂肪の含有量を減少させることによって達成される。
【0008】
得られたエマルジョンは、以下の点を特徴とする:(1)安定しており、長時間保存後に、油成分及び水成分のそれぞれへの相分離は見られない;(2)比較的高い水結合能によって特徴づけられる;(3)タイプによって、分散された脂肪の不存在下で加熱によって、注入可能な液体に容易に変換できる、粘性の液体からクリーム状のペーストまで容易に形成する;(4)冷安定性(冷凍及び解凍)が確保される;(5)滅菌条件下での熱安定性が確保される;(6)例えば、ドラム乾燥器を用いて乾燥することができ、触ったとき殆んど油がつかない固体組成物を生成する;そして(7)乾燥された組成物は容易に水和し、容易に水に再溶解され、なめらかで、安定性があり、塊のないエマルジョンを生成し、乾燥を経ていない水性組成物と同一もしくは類似の特徴を有する。本発明のエマルジョンのなめらかさ及びしなやかさは、それらを食品製品における粘稠化剤、懸濁剤及び脂肪の代用品としての使用に好適なものとしている。エマルジョン中に油成分が存在することによって、該エマルジョンはさらに乳化剤及び分散剤として機能するようになり、種々の疎水性材料、例えば、他の脂肪、揮発性の精油(エーテル性の)ならびに着香性の油及び食物着香料、酸化防止剤、医薬品、農薬等の使用を容易にする。該組成物はまた、その油成分によって、多くの種類の種子において見られる乾燥組成物及びロウ状のコーティングとの適合性が高く、種子粉衣として有用である。
【0009】
これらの発見にしたがって、本発明は、エマルジョンの全含有量中、少なくとも60重量%までの含有量において均一で安定的な油の分布を示す、新規なクラスのバイオポリマーベースのエマルジョンを提供することを目的とする。乾燥状態では、これらの組成物、特に、エマルジョン中に粒子サイズ1μm以内で存在し、及び/又は、水性エマルジョンの合計重量に対して約30重量%未満の油が添加された組成物は、基本的には、触っても油っこくない。水性分布において、本発明による組成物は、更になめらかな非脂肪構造を有している。
【0010】
本発明はさらに、組成物及び製造物に関する。特に、更なる成分の他に、0.001〜99.9重量%の本発明のエマルジョンを含有する乾燥された組成物に関する。本発明のエマルジョンを含有する製品において、該エマルジョンは、それぞれの製品に含有される固体と液体の分布を安定化する作用をするであろう。基本的に、本発明のあらゆるエマルジョンは、水中油型エマルジョンを使用する任意の製品、特に、ローション、ゲル、クリーム、ペースト、潤滑剤等の製造に用いることができる。
【0011】
更なる局面によれば、本発明は、官能的、機能的及び/又は栄養生理学的特性について改変された食品を製造する方法であって、PPSを使用する方法に関する。特に、本発明は、官能的、機能的及び/又は栄養生理学的特性について改変された食品の製造方法であって、エマルジョンの全重量に対して、以下の成分、すなわち、0.2〜10.0重量%のタンパク質;0.3〜10.0重量%の極性多糖類;0.1〜60.0重量%の脂肪/油成分;0〜30.0重量%の着香油成分;及び任意成分として0〜30.0重量%のポリオールを含有する水中油(O/W)型エマルジョンを提供することを含む方法に関する。必要に応じて、0〜1.0重量%の着香料;0〜1.0重量%の着色剤;0〜0.2重量%の防腐剤;及び/又は0〜1.0重量%の酸をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の方法によれば、PPSは、コクと、クリーミーな口あたりが望まれる食品製品において用いられる。クリーム化製品が従来用いられていた食品製品、例えば、香味付けされた、又は香味付けされていないコーヒーや紅茶飲料、ホットチョコレート、ジュース含有飲料、シェークの形態の栄養飲料、麦芽飲料等のインスタント飲料や出来合いの飲料;カクテルや混合飲料、プリン;ソース;グレイビー;熱処理及び調理されたソーセージ;バーガー及び他の挽肉料理;練り生地及び焼いた製品、ドレッシング;ムースデザート;アイスクリーム;ヨーグルト;クリームチーズ;チーズディップ及び/又はスプレッド;サワークリーム;ベジタブルディップ及び/又はスプレッド;糖衣、ホイップトッピング;冷凍菓子類;ミルク;コーヒークリーマー;コーヒー用粉ミルク;及び他のディップやスプレッドにおいて特に好ましい。
【0013】
好ましい液体状又は流動可能な食品製品は、乳製品または植物ベースの飲料、デザート、ヨーグルト及びスープである。食品代用品ならびに乳製品及び植物ベースの飲料、スープが特に好ましい。これらの食品製品は、食品製品を製造するために、液体、例えば、水と混合される粉末または濃縮物の形状で提供されてもよい。
【0014】
乳製品の製造に関して本発明によって行われた実験の結果、驚くべきことに、PPSは、食品代用品の製造に好適であることがわかった。これは、特に、実質的にはPPSからなる乾燥質量を有する食事療法食代用品に適用され、好ましい態様では、エネルギー含有量が実質的に0%であり、繊維含有量が70%〜80%である多糖類を使用したPPSが用いられる。好ましい態様によれば、したがって、本発明はまた、特に、従来の製品と比較してカロリーが抑えられた低カロリー食品製品、特に、低カロリー食の食品製品及び飲料を製造する方法に関する。
【0015】
本発明の方法によって、いかなるGMO(遺伝子組換え生物)材料を含有せず(GMOを含まない植物性タンパク質の使用が可能である)、基本的に天然の原料からなる食品製品を製造することができる点で本発明はさらに有利である。さらに、有機的な質の基礎原料(タンパク質、多糖類)を用いた製造が提供される。本発明の方法によって導入されることになる油も同様である。有機製品及び乳児用調製乳に関しては、本発明の方法は極めて有利である。したがって、本発明はまた、本発明の方法によって製造され、認定有機製品に必要な要件を満たす食品製品に関する。
【0016】
前記方法はまず、その乾燥質量含有量が、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは20〜25重量%であるPPSを提供することが必要である。本発明の方法はさらに、PPSと所望の食品製品を製造するための好適な食品基材とを混合する。食品基材全体に対してエマルジョンは、0.1〜75重量%の比率で存在するものとする。本発明の更なる目的及び利点は、以下の説明において明らかになろう。官能的及び栄養生理学的特性について改良された食品の製造の局面に関しては、ドイツ特許出願DE 10 2009 019 551.3(2009年4月30日出願)がさらに参照される。本願は、当該出願に基づく優先権を主張する。そして、その開示内容を本明細書において引用によって援用する。
【0017】
発明の詳細な説明
定義
用語「出来合い」食品または飲料;「すぐに食べられる」食品;及び「すぐに飲める」飲料の語は、すぐに使える、もしくは消費できる形態で提供される食品及び飲料製品を定義するために、本明細書において互換可能に用いられる。本発明の食品は、基本的に、あらゆる消費可能な食用及び飲用組成物を含み、好ましくは、図4〜7の表に記載に代表例として記載した食品の分類を含む。基本的には、食品という語には、動物用飼料製品及び飼料添加物, 例えば、ドッグフードもしくはキャットフードも含まれる。獣医学の領域でもまた、バランスのとれた、動物に許容可能な食餌療法がますます注目されているためである。さらに、本発明の食品はまた、例えば、馬術競技やドッグレースのような高パフォーマンススポーツの領域の動物用に、特に、濃縮された飼料製品の形態でも用いることができる。
【0018】
用語「インスタント」及び「可溶性」は、インスタントコーヒー製品、可溶性の粉洗浄剤、及び水、特に湯に比較的溶けやすい製品等の、製品及び組成物を定義するために、本明細書において互換可能に用いられている。即席製品または出来合い食品もしくは飲料を提供するための混合物(粉末、乾燥混合物、濃縮物、もしくはエマルジョンのいずれかの形態)がメーカーによって販売されており、消費者によって水溶液または希釈液(すなわち、水、ミルクもしくは他のあらゆる水溶性媒体)と混ぜられる。
【0019】
ソーセージ製品の製造において、用語「添加される水の比率」とは、肉のかたまりに対して、例えば、熱処理されたソーセージ製品のソーセージ肉の製造におけるボウルカッティングプロセス中に粉砕した氷の形態で添加される水の比例量を意味する。前記「添加される水の比率」の一部は、PPSと置換されてもよい(熱処理されたソーセージ用の肉中、PPSは、好ましくは、ボウルカッティングプロセス中に細断され、冷凍された状態で、調理プロセスに続いて、非冷凍状態で混合される調理されたソーセージ用の肉に添加されることが好ましい)。
【0020】
原則として、「食品基材」は、調製の直前直後にヒトが消費するためのあらゆる食用食品組成物であることができ、溶解、希釈、調理、揚げ調理、焼き調理等によっておいしくなる。食品基材は、乳製品タイプまたは非乳製品タイプのいずれでもよい。PPSの変形例の導入のための食品基材の例を図4〜7の表に示す。
【0021】
特に言及がない限り、本明細書では、全ての量、部、比率、及びパーセンテージは、重量を基準として用いられる。
【0022】
本発明の方法のためのエマルジョンの成分源
特に言及がない限り、用語「脂肪」及び「油」または「脂肪成分」及び「油成分」は、本明細書において交換可能に用いられる。
【0023】
脂質(もしくは脂肪)は、生細胞中に存在する物質であり、非極性炭化水素部分、又は極性官能基を有する炭化水素からなる物質を指す一般的な用語である(Encyclopedia of Chemistry, 第3版, C. A. Hampel and G. G. Hawley編,1973年632頁参照)。脂肪の大半は、水には溶けず、エーテルやクロロホルムのような脂質溶媒に溶ける。脂肪は、脂質ファミリーの主クラスを示す。脂肪は、脂肪酸のグリセロールエステル類であり、多くの場合、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸であるが、他の多くの天然に発生する脂肪酸もまた見出すことができる。脂肪の殆んどはグリセロールトリエステルの形態で存在する。Hackh's Chemical Dictionary, 第4版, G. Grant編, 1969, 470頁において、油は、水と混合できない液体であり、通常可燃性であり、エーテルに溶けることができると定義されている。油は、3つのカテゴリーに分類される:(1)植物や動物からの脂肪物質;(2)揮発性もしくは精(エーテル性の)油、すなわち、植物の芳香性成分;ならびに(3)鉱油、燃料オイル、及び潤滑剤、すなわち、石油由来の炭化水素及びその製品。
【0024】
本発明の組成物を製造するために、あらゆる脂肪を用いることができるが、流動可能な食用植物油、例えば、ダイズ油、トウモロコシ油、綿実油, ヒマワリ油、パーム油、ココナッツ油、菜種油、MCT油及びオリーブ油、ならびに半固体水和植物油、魚油、バター、ベーコンもしくは獣脂等の動物由来の脂肪、及び通常パラフィンオイルと呼ばれる精製された非毒性の鉱油が好ましい。部分的もしくは全体的に水和された、あるいは別のように改変された、ならびに、トリグリセリドと同様の性質をもつ、部分的もしくは全体的に消化しにくい脂肪である、非毒性に改変された油脂もまた含まれる。この語はまた、低カロリー脂肪及び食用の消化しにくい脂肪、油、または脂肪の代用品をも含む。「脂肪」または「油」は、100%非毒性の、トリグリセリドと同様の性質をもつ脂肪材料も意味する。一般的に、用語「脂肪」または「油」はまた、クリームや脂肪代用品のような脂肪含有組成物も含み、その材料は、部分的もしくは全体的に非消化性である。
【0025】
以下の開示において、本発明は、主に、結合した脂肪としての油の更なる添加について記載している。用語「油」は、本明細書において、用語「脂質」及び「脂肪」と交換可能に用いられ、他の脂質(すなわち、脂肪及び炭化水素)と置き換え得る。乳化脂肪には、本明細書の用語「脂質」及び「脂肪」の範囲に含まれることは当業者にとって明らかであるが、本発明にかかる、高度に分散したバイオポリマー/油製品を生成するために、本発明の方法は、前記材料の固有の乳化特性を必要としない。
【0026】
特定の態様において、例えば、食品添加物の製造のために、「脂肪成分」及び「油成分」は、必須及び/又は「機能的」脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、例えば、長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC−PUFA)、特に、リノレン酸及びリノール酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)またはグリセリド及びそのホスホグリセリドによって強化される。本発明によれば、上記脂肪及び油成分のいずれの組合せを用いてもよい。
【0027】
用語「着香油成分」は、食品に、特定のニュアンスの香味を付与することが可能なハーブまたはスパイスオイル濃縮物等の油、果皮油、フルーツオイル及び他の上記定義された油や脂肪を含む。強化植物油(食用油)、好ましくは、ハーブ及び/又はスパイス植物及び/又は果物の一部を含む、加工及び皮むきされた脂肪種子から製造することは、原則として、文献DE 101 01 638 C2により公知である。着香油の例としては、とりわけ、タイム、バジル、コリアンダー、及びオレガノ等のハーブ植物;フェンネル等のハーブ植物、例えば、フェンネルオイル濃縮物;又はシーバックソーンなどのフルーツ、例えば、シーバックソーン由来の果肉オイルや種油または柑橘類由来の油を含む、加工及び皮むきされた脂肪種子由来の油が挙げられる。
【0028】
多糖類(PS)は、バイオポリマーの重要な群を表す。本発明の目的においては、多糖類は、ヒドロコロイド、すなわち、高分子、極性、水溶性バイオポリマーが好ましい(Dickinson、「粒子の分散及び乳化を安定させる際のヒドロコロイドの役割」;In: Phillips Glyn O, Williams PA, Wedlock DJ (Eds): 「食品産業用ガム及び安定化剤4」、Wrexham
1988; 249-264)。用いられる多糖類は、カルボキシル基を含有する多糖類であることが好ましい。しかしながら、カルシウムイオン(Ca)の存在は、アルギン酸塩や低エステル型ペクチンを用いて除去されることが好ましい。発明の範囲内と考えられる多糖類としては、限定されないが、キサンタン、カルボキシメチルプルラン、カラギーナン、キトサン、ゲラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム及びペクチンが含まれる。
【0029】
ペクチン(PE)は、高等植物の細胞壁に存在する多糖類である。それらは、中葉もしくは主細胞壁から単離される。中葉に存在する時、ペクチンは、シーラントとして機能し、一方、主細胞壁に存在する時、細胞の水残量の調整に積極的に関与する。ペクチンは、柑橘類の皮やリンゴやビートの搾りかすから得られる。ペクチンは、異種複合体の多糖類であり、部分的にエステル型α−1,4−結合D−ガラクツロン酸ユニットからなる(Kunz, Lexikon der Lebensmitteltechnologie. Springer Verlag,
Heidelberg, 第1版、1993)。この主なフレームワークは、中性糖(アラビノース、ガラクトース)からなる側鎖を有するラムノースが割込んでいる。ガラクツロン酸ユニットのそれぞれのC1及びC3原子の水酸基は、部分的にアセチル化されているか、又は更に別の糖類(例えば、D−ガラクトース、D−キシロース、L−アラビノース、L−ラムノース)によって置換されている(Ebert, Biopolymere: Struktur und Eigenschaften. BG Teubner Verlag,
Stuttgart, 1993; Kunz, (1993),上掲)。ポリガラクツロン酸のカルボキシル基は、部分的に、メタノールによってエステル化されているか、またはアミド化されている。市販されているペクチンの分子質量は30,000〜200,000g/モルである(Schweiz. Lebensmittelbuch Gelier- und Verdickungsmittel, 1993)。一般的に、ペクチンは、それらのエステル化度(DE)によって識別することができる。エステル化度とは、メタノールによってエステル化されたカルボキシル基の割合である。DE>50のペクチンを高エステル型ペクチンと称し、一方、DE<50のペクチンを低エステル型と称する。アミド化ペクチンは、アミド基をさらに含有する低エステル型ペクチンである。アミド化度(DA)は、アミド化されたカルボキシル基の割合と定義される(Rolin, Pectin. In: Whistler RL, BeMiller JN (Eds):「工業用ガム多糖類及びそれらの誘導体」、Marcel Dekker Inc., New York, 第3版、(1993), 257-293)。ペクチンは多くの供給元から市販されている。本発明によれば、用語「ペクチン」は、こうした定義に照らせば、厳密にはペクチンではないものの、誘導体化などによって得られる、ペクチンと同一又は類似の特性を示すもの(例えば、ヒドロキシル化、カルボキシル化、エステル化及び/又はアミド化によって得られるポリガラクツロン酸や複合糖など)を含み、それらは同様に用いられ得る。EUでは、ペクチンは、種々の製品の食品添加物として指示E440によって承認されている。
【0030】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)は、セルロース系バイオポリマーであり、セルロースを水酸化ナトリウム溶液中で、モノクロロ酢酸ナトリウムを用いてエーテル化することによって作製される(Feddersenら、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」。In: Whistler RL, BeMiller JN(Eds):「工業用ガム多糖類及びその誘導体」。Marcel Dekker Inc., New York, 第3版(1993)、537-578)。置換度(DS)は、エーテル化度の測定値として得られる。置換度とは、グルコースユニット中でのエーテル化された水酸基の平均数である。3つの反応する水酸基が存在すれば、3つのカルボキシメチルナトリウム基を導入することができる。カルボキシメチルセルロースナトリウムの特性は、その置換度及び重合度に依存する(Belitzら、Lehrbuch der Lebensmittelchemie. Springer-Verlag, Berlin,第4版, 1992)。重合度は、重合プロセス中に結合して高分子を形成するモノマー分子の平均数を表す。本発明において好ましいカルボキシメチルセルロースナトリウムの平均分子質量は125,000g/モルである。平均重合度は、582ユニットのβ−Dグルコースである。EUでは、カルボキシメチルセルロースナトリウムは、物質を濃厚にし、ゲル化するグループにおける食品添加物として、指示E446によって承認されている。
【0031】
本発明によれば、用語「カルボキシメチルセルロースナトリウム」はまた、その定義において厳密な意味ではカルボキシメチルセルロースナトリウムではないが、例えば、ヒドロキシル化、カルボキシル化、エステル化及び/又はエーテル化による、セルロース又は他の多くの糖の誘導体化により、カルボキシメチルセルロースナトリウムと同一及び/又は類似の特徴を有している多糖類も含んでいる。したがって、それらは同様に用いることができると理解される。
【0032】
用語「タンパク質」は、実質的にはアミノ酸からなる任意のペプチドまたはポリペプチドを含む。PPSの製造に好適なタンパク質源としては、植物性タンパク質(特に、綿花、ヤシの木、菜種、サフラワー、カカオ、ヒマワリ、ゴマ、ダイズ、エンドウマメ、ジャガイモ、ピーナッツなどに由来する脂肪種子タンパク質)、ナトリウムカゼイネート、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン等の動物性タンパク質、ならびに酵母タンパク質及びいわゆる「単細胞タンパク質」等の細菌性タンパク質が挙げられる。
【0033】
好ましいタンパク質としては、ホエータンパク質分離物、乳タンパク質濃縮物、ナトリウムカゼイネートまたはスキムミルク粉末、及び非乳ホエータンパク質、例えば、特にダイズ、エンドウマメ及びハウチワマメ由来のタンパク質等の植物性タンパク質が挙げられる;実施例も参照されたい。ホエーは、チーズ製造中の副産物として生成される。それは、ミルクの全成分の80〜90%を占め、多くの栄養素を含有している。ホエータンパク質は、ホエーの重要な成分である。ホエータンパク質は、酸またはレンネット析出によって、乳由来のカゼインを分離した後のホエー中に残っているタンパク質である(Barth and Behnke, Ernahrungsphysiologische Bedeutung von Molke und
Molkenbestandteilen. Nahrung 41 (1997), 2-12)。この点においては、用語「タンパク質」はまた、加水分解されたホエータンパク質等の加水分解されたタンパク質も含む。用語「タンパク質」は、例えば、ヨーグルトやチーズまたは粉石鹸;医薬品としてのインシュリン等のホルモン類;ワクチン用抗原;試薬中のプロテアーゼ等の製造に用いられる酵素等の生物学的に活性のあるタンパク質をさらに含む。
【0034】
用語「ポリオール」は、少なくとも4つ、好ましくは4〜11の水酸基を有する多価アルコールを意味する。ポリオールは、糖類(すなわち、単糖類、二糖類及び三糖類)、糖アルコール、その他の糖誘導体(すなわち、アルキルグルコシド)、ジグリセロールやトリグリセロール等のポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びポリビニルアルコール等の糖エーテルを含む。好適な糖類、糖アルコール及び糖誘導体の具体例としては、キシロース、アラビノース、リボース、キシリット、エリトリット、グルコース、メチルグルコシド、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルビトール、マルトース、乳糖、ショ糖、ラフィノース及びマルトトリオースが挙げられる。
【0035】
「着香料」は、マイルドで好ましい香味を付与する量で食品組成物に好ましく添加される着香物質である。着香料は、通常用いられている市販の香味であることができる。スパイシーでない香味が望ましい場合、着香料は、通常、種々のカカオ、ピュアバニラから、または、バニリン、エチルバニリン、チョコレート、麦芽、ミント、ヨーグルト粉末、抽出物、シナモンのようなスパイス、ナツメグ及びジンジャー、及びそれらの混合物等の人工の香味から選択されるであろう。基本的な香味を組み合わせることによって、複数の香味のバリエーションを得ることができることがわかる。スパイシーな香味が望ましい場合、着香料は、通常、種々のハーブ及びスパイスから選択される。好適な香味はまた、塩、フェークフルーツもしくはチョコレート香味などの調味料を、単独で、もしくはそれらのあらゆる好適な組合せによって含んでもよい。ビタミン及び/又はミネラル及び他の成分のオフフレーバをさらに隠すための香味をそれぞれの食品組成物に添加することも好ましい。フルーツ香味のような他の香味を用いてもよい。その更なる例としては、パイナップル、アーモンドナッツ、アマレット、アニス酒、ブランデー、カプチーノ、クレームドマント、グラン・マルニエ、ピスタチオ、ニワトコ、アップル、カモミール、フレンチバニラ、アイリッシュ・クリーム、カルア、レモン、ペパーミント、マカデミアナッツ、オレンジ、オレンジリーフ、ピーチ、ストロベリー、グレープ、ラズベリー、チェリー、コーヒー、チョコレート、モカ等の香味がある。
【0036】
用いられるエマルジョン中の成分としてもよい更なる成分の例としては、着色成分、植物抽出物、植物果汁、ビタミン含有植物濃縮物、ミネラル含有製品及び防腐剤が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の水中油(O/W)型エマルジョン(本明細書において「PPS」とも称する)を製造するための本発明の方法の模式図である。態様(A)において、実質的には脂肪/油成分(油相)からなる相が、タンパク質及び多糖類を含有する水相中に分散される。実施例1も参照されたい。更なる態様(B)において、油相は、多糖類と混合され、次いでタンパク質を含有する水相中に分散される。実施例2も参照されたい。更なる態様(C)において、目的量の多糖類(PS)が変形例Bによる油相中に導入され、油+PS相が、変形例AによるP+PS相中に分散される。そこでは、多糖類(PS)の量は、油相に既に含有されているPSの量に対応して採用される。全ての場合において、プロセス温度は、エマルジョンが得られるまでタンパク質の変性温度範囲以下に保持すべきである(例えば、ホエータンパク質については、60℃以下)。
【0038】
変形例A
: 1以上の油及び/又は脂肪成分(O)を、約50℃もしくはすべての脂肪が溶けるまで60℃で加熱する(油相)。理想的には、油相の密度は約1.0g/cmである。
: 多糖類(PS)を、水相(ペクチンもしくはCMCを用いる場合、約50〜90℃、好ましくは70℃)に、マグネチックスターラー又は星型攪拌子を備えたRW16ベーシック撹拌装置(IKA Labortechnik, Staufen, ドイツ)を用いて約1,500rpmで、ゆっくりと添加し、溶液が得られるまで1〜2時間溶解する。ショ糖等のポリオールの存在下で、多糖類をポリオールとともに乾燥混合させ、その後水相中に分散させる。多糖類及び任意にポリオールを溶解するための水の比率は、水の体積全体に対して約75%であることが好ましい。さらに使用する前に、PS溶液を10分間95℃で滅菌してもよい。
: タンパク質(P)を、マグネチックスターラー又は星型攪拌子(改良型撹拌ディスク)を用いて水相(約50℃)に、1,000〜1,500rpmでゆっくりと添加し、約1時間溶解させる。泡を形成する場合、攪拌装置の回転速度を低くする。タンパク質を溶解するための水の比率は、水の体積全体に対して約25%であることが好ましい。タンパク質が酸性pH値を有し、したがって可溶性が低い場合(例えば、ジャガイモタンパク質EMVITAL
K5)、該タンパク質の分散は1%NaOH溶液(例えば、タンパク質1gあたり、1.96gの1%NaOH)を添加して中性にしてから、多糖類または油相と混合させる。使用前に、P溶液を滅菌条件下、例えば、0.2μmのセラミック膜を4MPaで用いて濾過することが推奨される。
: 攪拌子を用いて、P水溶液をゆっくりとPS水溶液に混合する。
: 1,500rpmの撹拌条件で、例えば、ローター/ステーター分散装置(CAT-X620、M. Zipperer GmbH/Staufen)を用いて、約20,500〜24,000rpmで、15秒間〜1分間、油相をPPS水相に混合し、続いて乳化した。実験室の規模では、油相の添加は、パスツールピペットを用いて20秒以内、または5mlマイクロリッターピペットを用いてゆっくり滴下することによって行った。このプロセス系において、エマルジョンは、予め投与された油部分を、吸引チューブを介してゆっくり滴下することによって作製される。
: 実験室の条件下で、高圧力乳化装置EmulsiFlex C5(AVESTIN, Canada)を用いてエマルジョンの微細分散を、20〜80MPa、好ましくは50MPaで、または他の好適な圧力乳化装置(例えば、実験室圧力ホモジナイザーHH20(Wissenschaftlicher Geratebau, Zentralinstitut fur Ernahrung, DE 195
30 247 A1)を用いて、8MPaで、引き続いて行う。エマルジョン中の油滴の平均径は、約1μm±0.2である。
【0039】
大規模においては、別法として、油相のPPS水相への導入及び微細分散は、バッチ処理で行うことができる。例えば、ギアリム分散(ギアリムローター及びステーター)の原理に基づいて操作し、粒子サイズx50が1.2〜2.5μmの粘性の高いエマルジョンを生成することが可能な真空処理プラントFrymaKoruma MaxxD 200(FrymaKoruma GmbH, Neuenburg, ドイツ)を用いて行うことができる。この粒子サイズは、特に稠度の操作が望ましい場合において、粘性のより高い食品製品を製造するのに十分である。
【0040】
変形例B
: =A
: 好ましくは、分散ギアリムを備えた攪拌子を用いて、多糖類(PS)を、油相中で1,300rpmで約15分間撹拌し、油−PS混合物が得られるように分散させる。
: タンパク質を溶解するための水の比率を、水の体積全体に対して100%とした以外は、約Aと同様にする。
: Aに記載したように、油−PS混合物をP水相に組み込み、乳化させる。連続相の粘性は、油中に含有される多糖類比率に依存して、油滴表面(m/ml油)の増加に伴ってかなり急速に上昇するので、エマルジョンを生成するためには、分散プロセスを素早く(数秒以内)行うことが重要である。したがって、乳化プロセスは、エマルジョンが過度の粘性によって、その流動性を失う前に、油中の多糖類の含有率を高くすることによって、行い終了しなければならない。
: Aに記載の通り。
【0041】
変形例C
: =A=B
: =A及びB、それぞれのケースにおいて、変形例A及びBのそれぞれに従い、多糖類(PS)の全量の一部のみを用いる。
: =A
: =A
: =A、変形例Aに従い、多糖類(PS)の全量の一部のみを用いる。好ましくは、用いられる量とステップCにおいて用いられるPSの量の足した量は、変形例A及びBのそれぞれによって用いられる総量に等しい。
: =A
【0042】
取得可能なエマルジョン(PPS)
基本的に、得られるエマルジョンは、酸性もしくは中性pHを有し、粒子サイズは、x50<10μm、好ましくは、<1.5μmとしなければならない。必要であれば、更なる処理を行う前に、例えば、0.1重量%クエン酸(10%溶液)、乳酸もしくはアスコルビン酸を用いた酸化処理によって、所望のpH値に調節することができる。この酸は撹拌しながらゆっくりと添加される。
【0043】
変形例B及びCにかかる方法によって、油含有率が高く、多糖類含有率が非常に高いエマルジョンを生成することができる。そのようなエマルジョンは、含水率が低い、例えば、含水率50重量%未満の組成物及び製造物に特に好適である。
【0044】
任意に、ポリオール、着香料、着色剤、防腐剤及び/又は活性成分等の更なる成分を、撹拌しながらエマルジョンに添加することができる。この場合、続く乳化が必要かもしれない。好ましくは、更なる成分の添加は省略される。
【0045】
PPSは、pH値を減少させたときに、油滴の凝集を防ぐかどうかを調べることによって同定してもよく(ドデシル硫酸ナトリウムを添加して、あるいは添加せずに粒子サイズを決定)、また、pH値及び長時間保存後の相安定性(安定性対分離)を測定することによって行ってもよい。変形例B及びCにかかるPPSは、油相中の多糖類の存在によってさらに同定してもよい;以下に示す、本発明の方法の一般的な記述も参照されたい。
【0046】
製造物の調製
ある態様において、それをゆっくりと流動性から液体状の、好ましくは酸性pH値を有する基材、例えば、生物学的に活性のあるタンパク質のためのドレッシングまたは緩衝液等と混合させることによって、液体状で粘性の稠度を有するエマルジョンが用いられる。または、それを、所望の製品を得るためにすぐに使用してもよいし、または処理してもよい。ほとんどの用途は、PPSをそれぞれの基材と混合させることが有利である一方、強い酸性の溶液をPPSにゆっくりと混合させることも、その結果としてpH値はあまり急速には減少しない点で有利であることが証明されている。
【0047】
別の態様において、それぞれの製品を得るために、クリーム状からペースト状の稠度を有するエマルジョンを、粘性があり、ペースト状の、広げやすい、あるいは練り生地状の、好ましくは中性pH値を有する基材に混合させる。必要であれば、基材のpH値は、更なるプロセスの前に、例えば、乳酸またはクエン酸等のそれぞれの製品中で従来から使用される他の酸で酸性処理することによって、減少させることができる。別法として、エマルジョン自体が、例えば、軟膏またはクリームの形態で製品のマトリックスを構成し、そこに、それぞれの用途に好適な活性成分が組み込まれる。もちろんこれは、例えば、油、タンパク質または多糖類成分の一部として、エマルジョンの製造プロセス中において行っていてもよい。
【0048】
PPSは、食品成分、活性成分もしくは建築材料等の更なる成分を乾燥ベースで混合するために、すぐに乾燥させてもよい。種々の乾燥方法を用いることができる;実施例12及び13を参照されたい。中間製品または最終製品に関する具体的な要件にしたがって、好適な方法が選択される。利便性(例えば、溶解しやすい)が望まれる場合で、選択された乾燥方法によってまだそれが提供されていない場合、例えば、凝集等の更なる方法を続けて行わなければならない。次いで、乾燥エマルジョンを、それぞれの製品を得るための更なる成分を含有する乾燥状もしくは乾燥した組成物に混合させる。本態様によれば、エマルジョンは、別法として、組成物の更なる成分と混和させ、続いて乾燥又は凍結乾燥させてもよい。
【0049】
【図2】図2は、PPS7(A)及びPPS20(B)ならびに種々のタンパク質及び多糖類源を用いて、本発明の方法において用いられるエマルジョンの製造を示す模式図である。図2Cは、ホエータンパク質の加水分解産物及びリンゴペクチン抽出物を使用した、PPS24の製造を説明する図である。図2Dは、植物油もしくは脂肪を使用した、PPSの製造を説明する図である。図2Eは、植物油及びクリームを使用した、PPSの製造の態様を説明する図である。
【0050】
【図3】図3は、官能的、機能的及び/又は栄養生理学的特性について改変された食品製品を製造するための本発明の方法であって、水中油(O/W)型エマルジョン(本明細書においては、「PPS」とも称する)の好ましい製造方法を示す模式図である。変形例A及びBの説明に関しては、上記図1の説明を参照されたい。
【0051】
エマルジョンの調整及び分析
E: 基本的に、得られるエマルジョンは中性pH値を有し、粒子サイズは、x50<10μm、好ましくは、<1.5μmとしなければならない。必要であれば、更なる処理を行う前に、例えば、0.1重量%クエン酸(10%溶液)、乳酸もしくはアスコルビン酸を用いた酸化処理によって所望のpHに調節してもよい。この酸は撹拌しながらゆっくりと添加される。変形例B及びCにかかる方法によって、油含有率が高く、多糖類含有率が非常に高いエマルジョンを生成することができる。そのようなエマルジョンは、含水率が低い、例えば、含水率50重量%未満の食品の添加物として特に好適である。
:任意に、ポリオール、着香料、着色剤、及び/又は防腐剤等のさらなる成分を撹拌しながらエマルジョンに添加してもよい。この場合、続く乳化が必要かもしれない。更なる成分の添加は省略されることが好ましい。それぞれの食品製品を製造するためには、以下の表、実施例及び図面に記載のPPS変形例(バリアント)が、指示された濃度において使用されることが好ましい。
【0052】
PPSは、pH値を減少させたときに、油滴の凝集を防ぐかどうかを調べることによって同定してもよく(ドデシル硫酸ナトリウムを添加して、あるいは添加せずに粒子サイズを決定)、また、pH値及び長時間保存後の相安定性(安定性対分離)を測定することによって行ってもよい。変形例B及びCにかかるPPSは、油相中の多糖類の存在によってさらに同定してもよい;続く本発明の方法の一般的な方法も参照されたい。
【0053】
食品の製造
:エマルジョンは、それをゆっくりと流動性から液体状の、好ましくは酸性pH値を有する食品基材、例えば、ジュース、トマトペースト、及びドレッシングと混合させることによって、用いることができる。あるいは、食品としてすぐに使用してもよいし、またはそれぞれの食品製品を得るためにさらに処理してもよい;例えば、図6の表を参照されたい。ほとんどの用途は、PPSをそれぞれの食品基材と混合させることが有利である一方、強い酸性の食品(例えば、天然のフルーツ果汁)をPPSにゆっくり混合した場合、pH値はそれほど急速に減少せず有利であることが証明されている。
: エマルジョンは、粘性で、ペースト状で、広げやすい、あるいは練り生地状の食品基材で、好ましくは中性pH値を有する食品基材に、それぞれの食品製品を得るために、混合される;図5の表を参照されたい。必要であれば、更なるプロセスの前に食品基材のpH値を下げてもよい。例えば、乳酸またはクエン酸等のそれぞれの製品中で従来から使用されている他の酸で酸性処理することによって、pH値を下げることができる。
:PPSは、食品成分を乾燥ベースで混合するために、すぐに乾燥させてもよい。種々の乾燥方法を用いればよい;実施例25及び26を参照されたい。中間製品または最終製品に関する具体的な要件に応じて、好適な方法が選択される。利便性(例えば、容易に溶解しやすい)が望まれる場合で、選択された乾燥方法によってまだそれが提供されていない場合、例えば、凝集等の更なる方法を続けて行わなければならない。次いで、乾燥エマルジョンを、それぞれの食品製品を得るために、乾燥状もしくは乾燥した食品材料に混合させる;例えば、図7の表を参照されたい。Eの態様によれば、エマルジョンは、別法として、食品基材と混合し、続いて乾燥させ、又は凍結乾燥させてもよい。
【0054】
【図4】図4は、PPSを、CMCナトリウム(CM)もしくは高エステル型ペクチン(PE)と組み合わせたホエータンパク質とともに適用する分野を、PPS変形例及びその濃度範囲とともに示す図である。
【図5】図5は、本発明による液体状及び流動性食品のリストを示す表である。
【図6】図6は、本発明にかかる、粘性で、ペースト状で、広げやすい、練り生地状で、固い食品又はそれらのそれぞれの開始基材のリストを示す表である。
【図7】図7は、本発明の液体状及び流動性食品を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
一般的に、本発明は、手段、すなわち、クリーム状で、なめらかで、及び/または、質感が濃厚で、また食品製品に関しては、コクのある口あたりをもたらし、栄養生理学的要件を満たしていることを特徴とする、複数の製品の製造に好適なエマルジョン(本明細書において「PPS」と称する)に関する。それに対応して、本発明は、乾燥質量含有率が5〜60重量%であり、エマルジョンの全重量に対して、以下の成分:
(i)0.2〜10.0重量%のタンパク質;
(ii)0.3〜10.0重量%の極性多糖類;
(iii)0.1〜60.0重量%の脂肪/油成分;
(iv)0〜30.0重量%のポリオール;
を有する相安定性水中油(O/W)型エマルジョンを製造する方法であって、実質的には前記脂肪/油成分(油相)(iii)からなり、多糖類(ii)又はその一部と混合されてもよい相が、前記タンパク質(i)と任意に多糖類(ii)またはその一部を含有する水相に分散され、続いて前記エマルジョンが乳化される、方法に関する。分散された油滴または脂肪滴の粒子サイズは、最大分散で好ましくは、x50.3≦10μm(体積関連中央値)である。好ましくは、液体状もしくは流動性の材料中に含有される水の量(他の成分中に存在するあらゆる量の水を含む)は、20〜95重量%であり、より好ましくは、30〜80重量%である。従来、PSSの乾燥質量減少を60重量%以下にすることは、油または脂肪成分を減少させることによって実質的に達成される。一方、タンパク質及び多糖類のそれぞれの比率は、実質的に一定である。
【0056】
本発明のエマルジョンは、凝集及び相安定性ならびにクリーム状の稠度によって特徴づけられる。本発明は、実質的にはわずか3成分、すなわち、タンパク質、極性多糖類、及び液体状の脂質(油、液体状の脂肪)からなるエマルジョンを用いることで、複数の製品を改変及び製造することができるという驚くべき観察に基づいている;実施例の製品も参照されたい。それは、一般に行われているこれまでの油/脂肪エマルジョンや乳化剤などを用いた十分な結果によっては、分散した脂肪相のフロキュレーション、相不安定または水の分離のために、製造することができなかった。本発明の目的は主に、多糖類成分としてのペクチン(PE)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びアルギン酸塩ナトリウム(Alg)ならびにタンパク質成分としてのホエータンパク質(WPI)及びハウチワマメタンパク質(Lup)を含有するエマルジョンの使用に関連して説明される。特に言及がない限り、この目的のために記載された態様は、用いられるエマルジョンが代替または均等の多糖類成分及びタンパク質成分を含有する態様を等しく含む。さらに、本明細書に記載の本発明の態様またはその特徴は、それぞれの態様が互いに排除し合っていない限り、更に別の1以上の態様及びその特徴と組み合わせてもよいことが理解される。
【0057】
原則として、本発明の方法に用いられるエマルジョンは、図1及び3で概略を示したように、2つ又は3つの方法によって調製することができる。ある態様(変形例A)において、エマルジョンは、実質的には、タンパク質及び多糖類を含有する水相中に脂肪/油成分(油相)からなる相を分散させることによって得ることができる;実施例1及び図2も参照されたい。別の態様(変形例B)において、エマルジョンは、油相を多糖類と混合させ、続いてそれを、タンパク質を含有する水相中に分散させることによって、得ることができる;実施例2も参照されたい。別の態様(変形例C)において、意図した量の多糖類の一部を、変形例Bにかかる油相に導入し、多糖類相を変形例Aにかかるタンパク質及び多糖類を含有する水相中に分散させる。このとき、水相中の多糖類の量は、油相中にすでに含有されている多糖類の量に対応した量であることが好ましい。
【0058】
変形例Aにかかるエマルジョンを製造する方法は、ドイツ特許出願DE10 2006 019 241 A1に記載されている。そこでは、第1のステップにおいて、油相と、タンパク質(例えば、ホエータンパク質)及び多糖類(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはアミド化された低エステル型ペクチン)を含有する水相からなるバイオポリマーの混合物を、酸を添加せずに混合させて、中性のエマルジョンを生成し、次のステップにおいて、酸性の水相を添加して前記エマルジョン中のpH値を下げる。DE 10 2006 019 241 A1の開示、特に、エマルジョンを製造するための実施例を、本明細書中に引用によって援用する。文献DE 10 2006 019 241 A1ならびに、それを基礎とした更なる特許出願DE 10 2006 058 506 A1は、しかしながら、そこに記載のエマルジョンを単に、アルコールを含む及び含まない、酸性の冷飲料の添加剤として使用することを記載している。本発明のある態様においては、DE 10 2006 019 241 A1及びDE 10 2006 058 506 A1に記載のエマルジョン及び/又は冷飲料を製造する方法は、明確に除外されている。本発明の別の態様において、DE 10 2006 019 241 A1またはDE 10 2006 058 506 A1にかかるエマルジョンが製造されるが、そこでは、しかしながら、ホエータンパク質のかわりに植物性タンパク質が用いられている。
【0059】
さらに、文献DE10 2006 019 241 A1にかかる方法とは対照的に、所望の製品を製造するためにさらに使用するためのエマルジョンのpH値を減少させることは、本発明では必要とされていない。本発明の方法のいくつかの態様においては、酸性もしくは中性pHのエマルジョンが用いられ、pH値は、用いられる多糖類及びタンパク質の緩衝能によって定義される。一方、CMCナトリウムを用いる本発明の態様では、エマルジョンのpH値は中性の範囲(pH6.9〜7.6)であり、ペクチン(例えば、高エステル型ペクチン)によって製造されるエマルジョンのpH値は、4.2〜5.0である。したがって、本発明の好ましい態様において、PPSは、続く酸の添加によってpH値を減少させることなく、製造される。
【0060】
本発明のエマルジョンの所望の効果を達成させるために、タンパク質及び多糖類成分を、水に別々に溶解させて、続いてそれらを混合することが有利であることが証明されている。タンパク質−多糖類水相は、タンパク質を含有する溶液を、多糖類を含有する溶液中に混合させることによって調製することが好ましい;変形例A及び図1及び3の模式図も参照されたい。
【0061】
本発明の方法の特に好ましい態様において、エマルジョン中に用いられる多糖類は、ペクチン製品である。特に好ましい態様において、用いられるペクチンは、高エステル型ペクチンである。本発明の方法のさらに好ましい態様において、エマルジョン中に用いられる多糖類は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)である。
【0062】
本発明のある態様において、エマルジョンの油相は、着香油である。本発明によって調製されるエマルジョンが、非常に低い比率のエマルジョンであることが意図されていれば、食品に香味をつけるため、または、着香油を含有する化粧品に香をつけるために用いられるエマルジョンは、高い希釈率でも安定である必要がある。そのような着香油は通常連続相より低密度であるため(例えば、分散相<0.930g/cm;連続相>1.000g/cm)、非常に小さな油滴粒径の分散油が必要であるのみならず、油滴の凝集ならびに分散相の密度の更なる上昇を防ぐことが要求される。周囲の相の密度に適用される油相の密度が上昇すると、分散した油滴が安定に懸濁した状態となって、例えば、液体となり、よって、例えば、チンキ剤またはローションのための安定した濁度が得られる。
【0063】
本発明のエマルジョンの強い希釈の場合は、特に、液体状及び流動性の製品において、エマルジョンの油相が0.995g/cmを超える密度を有するように保証されていることが好ましい。ドイツ特許出願DE10 2007 026 090 A1は、濁ったライト飲料の製造方法を記載しており、そこでは、油相及び、タンパク質及び多糖類を含有する水相からなる、エマルジョンが用いられている。エマルジョンの油相は、好ましくは加工及び皮むきされた脂肪種子と、ハーブ及び/又はスパイス植物及び/又は果物から作製される少なくとも1つの着香油を含有し、0.850〜1.135g/cmを超える密度、好ましくは0.995〜1.020g/cmの密度を有する。DE10 2006 019 241A1に記載されているように、そのようなエマルジョンは、油相と水相から調製され、第1のステップにおいて、油及び、タンパク質、好ましくはホエータンパク質、及び多糖類、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはアミド化された低エステル型ペクチン、を含有する水相からなるバイオポリマー混合物を、酸を添加せずに混合して中性のエマルジョンを生成し、次のステップにおいて、酸性の水相を添加して前記エマルジョン中のpH値を下げる。
【0064】
文献DE 10 2006 019 241 A1に記載の方法とは対照的に、ハーブ及び/又はスパイス植物及び/又は果物の一部を含み、及び/又は、好ましくは、さらに植物性着香油を含む、加工及び皮むきされた脂肪種子から作製される1以上の着香油が、エマルジョンの調製に用いられる。エマルジョンの調製の前に、着香油は、琥珀酸と結合し、密度が1.00〜1.02g/cmである分割植物脂肪酸C及びC10のグリセロールエステルと混合され(例えば、Miglyol(登録商標)829, Sasol ドイツ GmbH)、密度を増加させる。別法として、本発明によれば、密度が0.850〜1.135g/cm、好ましくは、0.995〜1.020g/cmの着香油を含有する油相の密度を増加させることが可能な更なる油または脂肪成分を用いることができる。本発明の方法のある態様において、文献DE 10 2007 026 090 A1に記載のエマルジョンの飲料、特に、ライト飲料製造のための使用は、除外される。本発明の方法の別の態様においては、ホエータンパク質の代わりに植物性タンパク質が用いられること以外、文献DE 10 2007 026 090 A1によって製造されるエマルジョンが使用される。
【0065】
本発明の更に別の態様において、用いられるエマルジョンの水相はポリオールを含有する。例えば、1〜3%の氷砂糖のようなポリオールを添加することによって、CMCナトリウムの分散が促進され、ホエータンパク質の熱感度が減少する。凝集しがちな(水中で撹拌させた場合)粉末の分散性を高めるために、当該産業においては通常それらを、凝集しにくいさらに別の物質と混合させる。よって、製造物が氷砂糖を含有している場合、ペクチンまたはCMCナトリウムを糖と混合することが推奨される。エマルジョンを製造するための植物の処理を用いる場合、ポリオールの存在は基本的には必要ではないが、本発明のいくつかの態様では、用いられるエマルジョンが少なくとも1%のポリオール、すなわち、糖(例えば、ショ糖、ソルビトールもしくはイソマルト(isomalt))を含有することが望ましい。これらの糖類が更なる技術的機能性に効果があるためである。エマルジョンの冷凍/解凍挙動を高める(冷凍プロセスにおけるエマルジョンにおいて油が出ること(leading)を防止)他に、ソルビトールはまた、水の活性を減少させる作用をし(改善された微生物学的安定性)、イソマルトは、乾燥したエマルジョンの吸湿性を減少させる作用をする。イソマルツロース(パラチノース)を用いられるエマルジョン中に存在させることも、エネルギーの持続をより発揮させることが望ましい食品製品(スポーツ飲料)の製造において有利である。
【0066】
本発明の更に別の態様において、用いられるエマルジョンの油相は、重み付け剤、例えば、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)を含有する。重み付け剤を存在させることは、エマルジョンが高い希釈率で着香エマルジョンとして用いられる場合に有利となり得る。SAIBの代わりに、脂肪酸グリセリドからのコハク酸エステル(DE 10 2007 026 090 A1に記載)、または油相において結合する多糖類(上で述べたDE 10 2007 057 258.3及び実施例2参照)を重み付け剤として使用してもよい。
【0067】
本発明の好ましい態様においては、用いられるエマルジョンは、実質的には、合成乳化剤、重み付け剤及び/又はポリオールを含まない。FrymaKoruma(ROMACO, FrymaKoruma GmbH, Neuenburg, ドイツ)による処理プラントを用いてエマルジョンを製造する際、強い剪断力によって上記凝集は起こらないので、例えば、エマルジョン中にポリオールを存在させる必要はない。本発明のさらに好ましい態様においては、用いられるエマルジョンは、実質的には、着香油成分、着香料、着色剤、防腐剤、酸及び/又はさらには賦形剤を含まない。
【0068】
本発明の特に好ましい態様においては、エマルジョン中に使用されるタンパク質は、植物性タンパク質である。上記したように、文献DE 10 2006 019 241 A1、DE 10 2006 058 506 A1及びDE 10 2007 026 090 A1には、飲料の製造における排他的な使用が意図されているホエータンパク質を排他的に使用したエマルジョンの製造が記載されている。実験が行われ、驚くべきことに、本発明の範囲内でのみ、例えば、DE 10 2006 019 241 A1またはDE 10 2007 026 090 A1に記載の方法によって、しかしホエータンパク質の代わりに植物性タンパク質を用いて、製造されるエマルジョンは、非常に高い相安定性及び酸安定性を発揮し、複数の製品、特に純水に植物ベースの製品及び、揚げたソーセージやバーガー、例えば、ベジタブルバーガー等における肉含有率を少なくすることが好ましい製品に混合するのに理想的に好適である。
【0069】
したがって、本発明によれば、ホエータンパク質の代わりにハウチワマメタンパク質のような植物性タンパク質を含有するエマルジョンを有利に製造することができる。それによって、前記エマルジョンを使用することによって、例えば、消費者が苦しむかもしれないホエータンパク質を含有する製品に対するアレルギー反応を回避することができる。さらに、エンドウマメタンパク質、ダイズタンパク質もしくはジャガイモタンパク質等の植物性タンパク質をエマルジョンで使用することによって、アミノ酸組成物に影響を及ぼし、したがって、栄養生理学的特性を改変した食品を生成することができる。さらに、本発明の方法によって製造されるエマルジョン中に、油相用の植物油及びペクチン等の植物性多糖類と一緒に用いて、純粋に植物ベースの製品を製造することができる。特定の消費者グループのニーズが、用いられる原料に関して、容易かつ好適に満たされる。したがって、本発明のエマルジョン製造方法の特に好ましい態様において、成分は実質的には植物由来である。
【0070】
本発明のエマルジョン製造方法のさらに好ましい態様において、用いられる多糖類は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはペクチン(PE)である。ペクチン及びCMCナトリウムは炭水化物であるが、それらは、直接的に代謝されない純粋な食物繊維であるため、栄養価の計算においてカウントされない。いくつかの態様において、ペクチンが標準化の目的で(一定のゲル強度を提供するために)糖を含有する場合、ペクチンについての栄養情報が見られるかもしれない(例えば、100グラムあたり100kcalもしくは425kJ)。糖のペクチンへの添加は、大いに変化する;上記栄養情報の例では、糖含有率は約25%である。CMCナトリウムの使用に伴い、所望の特徴を調整するための更なる炭水化物の添加が省略されることが好ましい。
【0071】
本発明の方法のある態様において、エマルジョン製造に用いられるペクチンは、高エステル型(HE)またはアミド化低エステル型(P−am)ペクチンである。P−amは、ライト飲料において非常に安定した濁度を生成するのに好適である。しかしながら、もし香味付けされたPPSエマルジョンをカルシウム含有製品において広範囲で使用することが意図されている場合、カルシウムとペクチンの反応が、製品に望ましくない変質(フロキュレーション、ゲル生成、相分離等)をもたらすかもしれない。これはエマルジョンを乳製品に混合させるときにも言える。したがって、別の態様においては、エマルジョン中に用いられるペクチンは、高エステル型ペクチンである。
【0072】
本発明の、エマルジョン製造方法において、タンパク質と多糖類の比率は、4:1乃至1:4の範囲であり、エマルジョンは、実質的には、0.75〜5.0重量%のタンパク質、0.5〜2.5重量%の多糖類及び5.0〜50.0重量%の脂肪/油成分を含有する。多糖類(例えば、ペクチン)の含有率がより高いことが望ましい場合、添付の図面の説明に記載の図1及び3において説明した態様BまたはCによれば、エマルジョン製造工程の前に、多糖類を油相に添加することができる。
【0073】
上で既に説明したたように、本発明は、実質的には、わずか3成分、すなわち、タンパク質、極性多糖類及び中性の植物油からなるエマルジョンを用いることで、複数の製品を改変及び製造することができるという驚くべき観察に基づいている;実施例もまた参照されたい。本発明の特に好ましい態様において、エマルジョンはしたがって、実質的には、成分、タンパク質、多糖類及び油からなる。特に好ましい組成物を以下の表1に掲載する。
【0074】
【表1】

本発明に用いられるエマルジョンの好ましい組成物。エマルジョンの乾燥質量含有率に応じて、「PPS」の名称に基づいてタイプ別に示している。
【0075】
さらに好ましいPPS組成物は、実施例及び図面から得られる。タンパク質及び多糖類の絶対含有率ならびにそれらの比率は、所望の用途(特に、粘性も多糖類含有率によって決定される)に依存し、したがって、好ましくは双方の成分を組み合わせたPPS7と称するエマルジョンが存在する場合の比率は、1.5〜2.5重量%であり、PPS20では3.5〜6.0重量%であり、PPS34では3.0〜5.0重量%であり、PPS51では、4.0〜7.0重量%である。脂肪/油成分の含有率は変化しないことが好ましいが、10%までの偏差は許容される。好ましくは、タンパク質と多糖類の水相での比率は、1:1〜1:1.25である。
【0076】
上記表は、タンパク質含有率は油含有率の上昇によって上昇するはずであるとの事実に基づいて、異なる比率のタンパク質及び多糖類を示している。油1mlあたりの油滴表面が上昇すれば、界面の占有率において、より高いタンパク質比率が必要になる。もし、油1mlに対する表面1mあたりパーセンテージが低すぎれば、油滴は、凝結安定性を失うことになる。一方、水相におけるCMCナトリウムまたはペクチン濃度が高すぎれば、エマルジョン中の含水率が減少し、エマルジョンは流動性を失うことになる。したがって、レオロジーもしくはペースト稠度は、ペクチンまたはCMCナトリウム含有率を変えることによって調整することができる。
【0077】
本発明の特に好ましい態様において、用いられるエマルジョンは、実質的には、表2に記載の組成物の1つを有する。
【0078】
【表2】

本発明における、用いられるエマルジョンの好ましい組成。エマルジョンの乾燥質量含有量に応じて、「PPS」の名称に基づいてタイプ別に示している。
【0079】
本発明の方法において、用いられるエマルジョン中のタンパク質と多糖類の質量比は、DE 10 2006 019 241 A1(1:0.25〜1:2.0)に記載のように、1:1から変更してもよい。本質的に、タンパク質と、ペクチン及びCMCナトリウムの組合せにも適用される。一方、タンパク質と更に別の多糖類との組合せに関しては、対応する予備実験を行うことが推奨される。好ましくは、用いられるエマルジョンの乾燥質量含有率は7.0〜55.0重量%の範囲である。好ましい態様において、乾燥質量含有率は、標準的な処方では、25%または50%までの任意の含有量である。
【0080】
好ましい態様において、エマルジョンは、1.5重量%を超えるタンパク質及び/又は、1.0重量%を超える、好ましくは1.5重量%を超える多糖類を含有し、乾燥質量(DM)の合計が好ましくは約20重量%以上であることが好ましい。前記表1及び2で示したように、この場合、エマルジョンは、少なくとも2.0重量%のタンパク質、及び/又は、少なくとも2.0重量%の多糖類を含有するであろう。
【0081】
表2に標準として示したPPSエマルジョンについては、本発明の方法における適用範囲及び量を図3の表に示した。本発明の方法によって得られるエマルジョンの粒子サイズは、好ましくはx50.3<5μmであり、さらに好ましくはx50.3<1.5である。この粒子サイズは、エマルジョンがより高い粘性を有する製品中において用いられる場合、特に、稠度に影響を及ぼす目的の場合に十分である。<1.5μmの粒子サイズをもつそのようなエマルジョンは、希釈される場合、更に高い濁度を有し、遅いクリーム化速度を示す。処理プラントで行われる乳化実験では、特定の乳化条件においては、ギアリム分散の原則によってもエマルジョン中において更に小さな滴を生成するかもしれない。
【0082】
好ましい態様において、本発明のエマルジョンは、−18℃で密封包装して冷凍保存した場合、長期間、すなわち、少なくとも3カ月間、好ましくは6カ月間、特に好ましくは12カ月間、有利には24カ月間、保存可能であり、安定している。すなわち、使用前にいかなる相分離も起こらない。湿潤状態の製品、及び好ましくは乾燥した製品は、使用前、冷温で紫外線が直接当たらない場所に保存されるべきである。
【0083】
この状況において、本発明のエマルジョンは、粘稠化剤、懸濁剤、結着剤、保水剤として、更なるプロセスを行わずに脂肪分を減らすために用いることができる。しかしながら、経済的な理由から、エマルジョンは、乾燥状態、そして実質的には乾燥組成物の形態で処理され、市販される必要がある。乾燥処理は、当該技術分野の当業者に公知のいかなる好適な方法によって行ってもよいが、ドラム乾燥の方法が好ましい。
【0084】
濃縮された食品、特に食品添加物を製造するために、そして、インスタント製品として適用するために、PPSは、例えば、乳製品の標準的な条件を用いたスプレードライアーで乾燥される。凍結乾燥も有利である。製造物の更なる成分に添加される前にPPSを乾燥させる場合、エマルジョンをまず凍結乾燥ステップにおいて、冷凍させる。ここで、強い結晶形成がおこり、その結果油滴の界面が破壊され、油滴の凝結が起こることを防ぐため、エマルジョンが高い冷凍/解凍安定性を有することが有利である。冷凍安定性は、糖等のポリオールを、特に単糖類もしくは二糖類の形状で添加することによって高めることができる(凍結防止剤として)。
【0085】
本態様は、ミルクの添加に似せて用いられる、エマルジョンがコーヒーや紅茶飲料を白くする効果に影響を及ぼしてもよいインスタント製品にとって特に有利である。この目的でミルク代用品が用いられるインスタント製品の従来技術において、これは、特に、タンパク質及び低分子乳化剤を組み合わせることによって達成される。本発明において用いられるエマルジョンにおいては、低分子乳化剤の添加を省略可能であり、有利である。
【0086】
本発明の目的において、PPS組成物は、含水率(フリー水分率)が約20%未満であれば、乾燥状態であるとみなされる。通常、得られた製品は、約5〜12%の含水率に乾燥される。乾燥組成物は、その後破砕、粉砕または粉末化され、所望の粒子サイズとすることができる。当業者は、PPSの粘性及び含水率がそれぞれ乾燥前の処理条件に適応していれば、更なる乾燥方法を用いてもよいことを理解するであろう。用途によるが、乾燥混合物中のPPSの重量比は、0.1〜99重量%の範囲、好ましくは2.0〜98重量%、特に好ましくは5〜90重量%、特に好ましくは50〜80重量%である。乾燥製品は、本発明の好適な水溶性の組成物を生成するために、高い剪断ひずみのもとで混合することによって、水に容易に再溶解させることができる。水を、実質的に、純粋にPPSベースの乾燥組成物に添加することで、それぞれ独自のエマルジョン、または、大量の水を添加する場合、それぞれのPPSタイプの対応する希釈物を生成する。
【0087】
上で既に説明したように、本発明の乾燥組成物は、成分、比率及び処理条件を適切に選択することによって特定の最終使用にカスタマイズし得る独自の特徴を有する。前記組成物は、主として急速に水和し、なめらかで多少の粘性があるのみならず、タイプ化にしたがって、良好なクリーミーさ及び摺動抵抗性の低い非常に優れた膜形成性を有する分散を生じさせる。
【0088】
粘性のペーストを室温で生成させるためにより高い固体脂肪分を有する本発明の組成物は、加熱により流動可能となるのに十分薄いものとなるであろう。加熱された組成物は、その後冷却により再び固体となるであろう。これらの特徴は、典型的な溶融可能な脂肪またはショートニングの特徴と類似する。もし、バイオポリマー/油エマルジョンを、含有率約30%を超える固体物質を用いて製造すれば、得られる製品は厚い、接着性のものとなりとなりがちで、それはコーティングエマルジョンもしくは膜形成剤としての適用に適し、また軽い接着剤(light adhesive)としての適用も考えられる。
【0089】
所望の処方にしたがって、好適なPPSのタイプを用いればよい。例えば、PPS7−PEは、薄く、粘性があり、無臭で、やや酸性のエマルジョンであり、したがって、チンキ剤やローション等の液体製造物に特に好適である。一方、PPS7−CMやPPS20−PEは、濃く、風味は中性であり、したがってむしろ、カプセル剤に含有される活性成分用のゲル及び流動性マトリックスに用いられる。PPS20−CMは、濃く、クリーム状で、やや流動性のあるエマルジョンであり、PPS34−PE、PPS34−CM、PPS51−PE及びPPS51−CMは、濃密なクリーム状で、無臭で、風味は中性のペーストであり、特に軟膏、クリーム、シーラント等の製造に有利である。この点において、より高濃度のこれらのPPSタイプは希釈して、液体製造物中で用いてもよいことが理解される。上で概略を説明したように、所望の多糖類の使用に加えて、本発明の方法の変形例B及びCにかかるPPSを製造し、油相中の多糖類含有率を高めることによっても、粘性は影響を受けるかもしれない。粒子サイズを調整することによって、固体から乾燥形態のPPSが多少油状になるかどうかも、影響を受け得る。例えば、PPSをスプレー乾燥した時に得られる結果は、油滴の粒子サイズを減少させれば、粉末はますます乾燥する、すなわち、約1μmで乾燥することが示されている。一方、粒子サイズが約5μmの時、PPSはより油状になり、より容易に粉砕し、クリーム、軟膏もしくは粉化粧への適用に有利である。本発明の組成物は種々の特性を示すことから、通常エマルジョンが用いられる多くの製品を製造するのに好適なものとなっている。
【0090】
食品部門では、本発明の組成物に導入可能な処方として、限定されないが、サワークリーム、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズ、スプレッドチーズ、ベーキング混合物、ビスケット、乾燥ローストピーナッツコーティング、サラダドレッシング、肉、マーガリン、粉末状ショートニングもしくはベーキング混合物、練り生地、出来合いのグレイビー及び菓子類が挙げられる。これらの用途では、組成物は、エマルジョンの重量に対して約5%〜約60%の脂肪分で製造される。また、本発明の組成物は、味を改善し、電子レンジ中でポップコーンを容易に「はじけさせる」ために、揮発性の着香剤及び芳香剤の担体として、また、低脂肪のコーティングとして好適である。
【0091】
それに応じて、本発明は更に別の局面において、クリーミーで、なめらかで、食感が濃厚で、及び/又は、コクのある口当たりで、かつ、栄養生理学的要件を満たすことを特徴とする食品及び飲料製品の製造における、PPSの使用に関する。特に、官能的、機能的及び/又は栄養生理学的特性について改変された食品を製造するための方法が提供される。該方法は、実質的には上記のように製造される水中油(O/W)型エマルジョンを提供することを含み、エマルジョンの全重量に対して、以下の成分を含有する:
(i)0.2〜10.0重量%のタンパク質;
(ii)0.3〜10.0重量%の極性多糖類;
(iii)0.1〜60.0重量%の脂肪/油成分;
(iv)0〜30.0重量%の着香油成分;
(v)0〜30.0重量%のポリオール;
(vi)0〜1.0重量%の着香料;
(vii)0〜1.0重量%の酸;を含み、好ましくは、
(viii)分散された油滴または脂肪滴の粒子サイズは、最大分散x50.3≦10μm(体積関連中央値)であり、及び/又は、
(ix)前記エマルジョンの乾燥質量含有量は、5〜60重量%であり、さらに該方法は、前記エマルジョンと、食品を製造するための食品基材を混合し、前記エマルジョンは食品基材に対して0.1〜75重量%の比率で存在する。好ましくは、エマルジョンは、食品基材に対して、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2.5重量%、更に好ましくは少なくとも5重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%の比率で存在する。
【0092】
本発明の方法のさらに好ましい態様においては、液体状もしくは流動可能な食品基材中に含有される水の量(他の成分中に存在する水分量も含む)は、20〜95重量%の範囲、より好ましくは、30〜90重量%の範囲である。
【0093】
本発明のこの局面は、実質的にはわずか3成分、すなわち、タンパク質、極性多糖類、及び液体状の脂質(油、液体状の脂肪)からなるエマルジョンを用いることで、複数の食品を改変及び製造することができるという驚くべき観察に基づいている;実施例の製品も参照されたい。一般に行われているこれまでの油脂エマルジョンと乳化剤などを用いた十分な結果によっては、分散した脂質相のフロキュレーション、相不安定または水の分離のために、現在製造することができない。本発明の当該目的は主に、多糖類成分としてのペクチン(PE)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びアルギン酸塩ナトリウム(Alg)、ならびにタンパク質成分としてのホエータンパク質(WPI)及びハウチワマメタンパク質(Lup)を含有するエマルジョンの使用に関連して説明される。特に言及がない限り、この目的のために記載された態様は、用いられるエマルジョンが代替または均等の多糖類成分及びタンパク質成分を含有する態様を等しく含む。さらに、本明細書に記載の本発明の態様またはその特性は、それぞれの態様が互いに排除し合っていない限り、更に別の1以上の態様及びその特性と組み合わせてもよいことが理解される。
【0094】
本発明によってエマルジョンが混合される食品基材は、通常、実質的には、中性または、好ましくは酸性のpH値を有する。任意に、pH値は、別のステップ、エマルジョンを食品基材に添加している時もしくは後、またはそれぞれの食品製品を得た後にさらに下げてもよい。
【0095】
食品は、食品組成物のそれぞれのタイプにしたがって、いかなる好適な従来の技術によって製造してもよい。そのような技術は当業者に公知であり、ここでは更に詳述する必要はない。しかしながら、それらとしては、混合、ブレンド、押出しホモジナイゼーション、高圧ホモジナイゼーション、乳化または分散が挙げられる。食品に熱処理ステップ、例えば、パスツール殺菌法またはUHT処理を行ってもよい。最終的に、本発明の方法の更なる態様において、得られた食品は、好適な容器に包装してもよいし、及び/又は、好適な条件で保存してもよい。本発明の方法の更なる態様において、食品製品を得た後、食品は従来技術の方法によって保存される更なるステップを行う。
【0096】
本発明は、更に本発明の方法によって得られる食品、例えば、ミルクまたは乳製品、プリン、スムージー、菓子類、特別食品製品、スープ、ソース、マリネード、乳児用調製乳、アイスクリーム製品、肉製品、焼いた製品、スポンジケーキまたは練り生地からなる群から選択される食品、及び特に図4〜7の表に記載された食品及び食品分類に関する。本発明の食品の特に好ましい態様では、前記食品は、インスタント製品である;
図4〜7の表を参照されたい。本発明によって得られた食品は、PPSの検出の他に、好ましくは、クリーミーで、コクのある口当たり、及び/又は、均質な稠度によって、従来の食品製品または用いられる食品基材と区別される。
【0097】
本発明の関連で行われた乳製品の製造ついての実験によって、更に、驚くべきことに、PPSの使用によって、実質的にはPPSからなる乾燥質量をもつ食品代用品を容易に製造できることがわかった。一つの好ましい態様ではエネルギー含有率が実質的に0%で繊維含有率が70%〜80%の多糖類を用いて製造されるPPSを用い、特に、食事療法食の代用品に適用できる。したがって、本発明は特にまた、低カロリー食品及び従来の製品と比べてカロリー含有率が低い食品、特に、「ニアウォーター(near water)」飲料、フルーツシェーク、及び「スグロッピーノ(sgroppino)」、及び、特に「ヘルシーミルク」及び「無乳糖ミルク」などのミルク飲料等の食餌療法食の食品製品及び飲料を製造する方法に関する。
【0098】
さらに、本発明、物理的及び官能的特性が向上し、食品代用品の使用に好適な、例えば、国際特許出願WO2005/023017に記載のような食品製品に関する。その開示内容を本願において引用によって援用する。したがって、本発明はまた、文献WO2005/023017に記載の食品組成物に関する。本発明によれば、例えば、ゼラチンに加えて、もしくはそれに代えて、食品分類毎に示す図4〜7の表に示すようなPPSが含有される。実施例4及び5に記載のように、食品製品は、本発明のPPSを添加して製造してもよいし、質を改変してもよい。ここで、用いられるPPSは、特定の食品製品の本質的な基礎を形成し得る。したがって、エネルギー密度を調整し、長期保存後もそれらの官能的特性を維持するカロリーコントロール製品を製造することもできる。したがって、本発明はまた、本発明の方法によって製造され、その乾燥質量が実質的にはPPSからなる食品に関する。典型的に、PPSの乾燥質量は、それぞれの食品の、>50重量%、好ましくは>75重量%、特に好ましくは90重量%もしくは任意の態様として最大95重量%を構成する。ある態様において、本発明は、5〜10重量%のPPS20及び任意に着香料、ポリオール及び/又は必須脂肪酸を含有するスキムミルクを含む食品組成物に関する。
【0099】
実質的にはPPSを基礎とする食品組成物のある態様において、該食品組成物は、好ましくは、ビタミンA、ビタミンB複合体(ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、ビタミンB、ビオチン、p−アミノ安息香酸、コリン、イノシトール、葉酸、ビタミンB12)、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンKから少なくとも1つが選択された添加ビタミンを含む。さらに別の態様においては、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ヨード、マンガン、モリブデン、燐、セレン及びクロムから少なくとも1つが選択された添加ミネラルが含有される。もう一つの選択肢として、ビタミン及び/又はミネラルは、ビタミンプレミックス、ミネラルプレミックス及びその混合物を用いることによって添加してもよいし、別々に添加してもよい。組成物中のビタミン及びミネラルは、消費者によって再吸収され得るような形で提供されなければならず、したがってバイオアベイラビリティーに優れていなければならない。
【0100】
ヘルスケア製品部門においては、本発明の組成物は、薬学的製剤、化粧製品、及び個人衛生製品における担体または賦形剤として有用である。そのような製品の例としては、限定されないが、ハンドローション及びボディーローション及びクリーム、入浴剤、シャンプー及びコンディショナー、日焼け止めローション、リップスティック、アイシャドー、タルカンパウダー、粉末食品、油剤、ビタミン、抗生物質、防カビ剤などが挙げられる。皮膚クリームもしくは軟膏を製造するためには、例えば、基剤として50重量%のPPS20が用いられ、次いでそこに、クリーム及び軟膏のための当該技術において一般的な他の成分が添加される。特に、薬学的または化粧の組成物としてのPPSは、下記の成分を個別にもしくは組み合わせて含んでもよい。親水性に修飾されたケイ素;植物エキス;アミノ酸、ペプチド、タンパク質及びその誘導体;オリゴヌクレオチド;更なるポリマー;ビタミン;フラボノイド;イソフラボノイド;ユビキノン化合物;UV−スクリーニング物質;血清調整剤;制汗剤;酸化防止剤。上記成分ならびに更なる活性成分、賦形剤及び添加物の具体的な例としては、例えば、ドイツ特許出願DE 10 2006 031 500 A1を参照されたい。その開示内容を本明細書において引用によって援用する。
【0101】
種子粉衣技術の分野において、前記組成物は、従来技術として知られている防カビ剤、除草材、殺線虫剤、成長調整剤、ホルモン、肥料、発芽刺激剤及び他の活性成分の担体として同様に有用である。
【0102】
食品産業の領域では、PPSは、更なる油類または揮発性物質、着香料、芳香性物質、新鮮な果物等からの抽出物を乳化させるための分散または乳化剤として有用である。PPSは、農業の領域、例えば、損傷を遅らせ、酸化を防ぐために果物や野菜をコーティングするためにも用いられ、つぼみや球根を保護するためにも用いることができる。さらに、PPSは、肥料の製造のために用いてもよいと考えられている。
【0103】
PPSの産業上の利用としては、コーティング剤の製造、接着剤、窓用パテ、塗料濃縮剤、インク、つや出し、チンキ剤、塗料剥離剤、洗浄剤、潤滑剤、トナー及び掘削スラッジ、コンクリート及びシーリング材中の結着剤、及び疎水性添加物との相溶性が改善された合成製造物中のフィラーが挙げられる。
【0104】
この点において、PPSの驚くべき程高い水結合能も、建築材料領域での、例えば、保水剤や凝結遅延剤としての使用に関して有利である。したがって、本発明はまた、PPSベースの乾燥建築材料混合物及びその使用に関する。従来技術においては、例えば、カルシウム硝酸塩に基づく建築材料混合物が知られている。例えば、ドイツ特許出願DE 10 2007 027 477 A1を参照されたい。その開示内容を本明細書において引用によって援用する。したがって、本発明によれば、PPSは、そのような乾燥建築材料混合物において使用され、例えば、特にカルシウム硝酸塩と一部を置き換えるために、及び/又は保水力に寄与するために用いてもよい。本発明の乾燥建築材料混合物は、例えば、石膏ボード用の結合フィラーとして使用され、さらにパテもしくは石膏としても使用される。ある態様において、PPSは、乾燥建築材料混合物中に凝結遅延剤として、0.01〜2.0重量%で含有される。建築材料混合物のさらに可能な成分に関しては、ドイツ特許出願DE 10 2007 027 477 A1を参照されたい。
【0105】
本発明の更なる態様において、PPSは、洗浄剤において、例えば、タブレット、粉末、粒状、液体、ゲルの形態、または別個の用量で用いられる。ある態様において、PPSは、洗浄剤用量の皮膚ケア用化合物としての対応する油を、例えば、ドイツ特許出願 DE 10 2006 029 837 A1に記載のように、選択して用いられる。その開示内容を本明細書において引用によって援用する。この場合、PPSは、DE 10 2006 029 837 A1に記載のように、洗浄剤物質の溶解性を調整するためのシステム成分として用いることができる。さらに、外用の安定形状(external resting form)からなり、1以上のフィリングを含有する、洗浄剤、洗浄化合物及びケア製品用量は、基本的に当該技術分野の当業者に公知である;ドイツ特許出願DE 102 44 802 A1も参照されたい。その開示内容を本明細書において引用によって援用する。洗浄剤、洗浄化合物及びケア製品において従来用いられている成分は、従来技術に示されたものから作製してもよい。
【0106】
PPSの処方は、組成物のタイプにしたがってあらゆる好適な従来の技術によって製造すればよい。そのような技術は、当該技術分野の当業者に公知であり、さらにここでは詳細に説明する必要はないが、それらには、混合、ブレンド、押出しホモジナイゼーション、高圧ホモジナイゼーション、乳化または分散がある。食品に熱処理ステップ、例えば、パスツール殺菌法またはUHT処理を行ってもよい。最終的に、本発明の方法の更なる態様において、得られたPPSまたはPPSを用いた製造物は、好適な容器に包装してもよいし、及び/又は、好適な条件で保存してもよい。
【0107】
上記及び続く実施例に照らして、本発明はまた、一般的にPPSの食品添加物及び/又は、好ましくは、食品製品の所望の官能的特性を調整するための使用に関することが、更に明らかになるであろう。
【0108】
以下において、本発明は、好ましい態様によって、より詳細に説明される。しかしながら、これらの実施例は本発明の主題を限定するものではない。
【実施例】
【0109】
材料
タンパク質
ナトリウムカゼイネートDSE 7894, NZMP, NZ/Fonterra(Europe)GmbH, ドイツ
乳タンパク質濃縮物DSE 9148、dito
ホエータンパク質分離物DSE 5669、dito
ホエータンパク質濃縮物NuDr 8080、部分的に変質されている、Arla Foods amba、デンマーク
有機ホエータンパク質濃縮物P 50、BMI eG、ドイツ
NZMP7080, 315410(中等度に加水分解されている)NZ/ Fonterra(Europe)GmbH、ドイツ
Alatal821, 315409(強く加水分解されている)NZ/ Fonterra(Europe)GmbH、ドイツ
Peptigen IF-3080(強く加水分解されている)Arla Foods Ingredients、デンマーク
有機スキムミルク粉末、HEIRLER CENOVIS GmbH, ドイツ
エンドウマメタンパク質PISANE M9, Cosucra Group, B/Georg Breuer GmbH, ドイツ
ダイズタンパク質SOYPRO-900 IP, Kerry Group, Ireland/Georg Breuer GmbH、ドイツ
ハウチワマメタンパク質LUPIDOR HP, HOCHDORF Nutrifood, CH/Georg Breuer GmbH、ドイツ
ジャガイモタンパク質EMVITAL K5, Emsland Group, D/Emsland-Starke GmbH、ドイツ
【0110】
多糖類
高エステル型ペクチン、Herbacel Classic CU 201 CU 201(Pektin HV), Herbstreith & Fox、ドイツ
高エステル型ペクチン、Herbacel Classic CU 201 AS 501(Pektin HV), Herbstreith & Fox、ドイツ
Herbapekt SF 06-A-APE(〜25%ペクチン含有率)、Herbafood Ingredients GmbH、ドイツ
低エステル型ペクチン、OP0301(NVP)、OBIPEKTIN、スイス
アミド化低エステル型ペクチン、OP0404(ANVP)、OBIPEKTIN、スイス
アミド化低エステル型ペクチン、GRINDSTED LA 415(Pektin NV), Danisco A/S、デンマーク
Gummi arabicum(GA): スプレー乾燥、Ph. Eur., ROTH GmbH & Co. KG, ドイツ
アルギン酸塩、FD 120, GRINDSTED, Danisco A/S、デンマーク
カラギーナン、Cerogel, Type CL-07-Lambda, C.E. Roeper GmbH、ドイツ
Amylopektin C*Gel 04201 ろう状のトウモロコシデンプン、Cargill Deutschland GmbH, ドイツ
カルボキシメチルセルロースナトリウム、WALOCEL CRT 1.000 GA (Na-CMC), Dow Wolff Cellulosics、ドイツ
【0111】
油類
中性油、Miglyol(登録商標)812(MCT)、密度0.9400g/cm、Sasol Germany GmbH、ドイツ
中性油、MiglyolR(登録商標)829、密度1.010g/cm、Sasol Germany GmbH、ドイツ
菜種油、Rapso、密度0.920g/cm、VOG AG、オーストリア
ヒマワリ油、Sonnin、密度0.921g/cm、Walter Rau Lebensmittelwerke、ドイツ
ハーブ油濃縮物、K-Ol;TH、タイム;PF、ペパーミント;AN、アニシード;カモミール、オレガノ、密度0.9210g/cm、EG Olmuhle & Naturprodukte GmbH, Kroppenstedt、ドイツ
【0112】
その他
脱イオン水(導電性:<2μS/cm)または低硬度の水道水
SAIB、ショ糖、ジアセタートヘキサイソブチラート(SAIB−SG)、Aldrich W51.810-7-K、密度1.1460g/cm、Sigma-Aldrich、ドイツ
【0113】
方法
油滴のサイズ分布を測定する方法
油滴の所望のサイズ分布は、エマルジョン調整における必須のパラメータである。粒子サイズ分析は、MVMモジュールを使用する測定装置Coulter Electronics LS 100(レーザ回折システム、測定範囲0.4〜900μm、波長750nm)を用いて行った。O/Wエマルジョンの粒子の分布は、蒸留水中で、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を添加して、及び添加せずに測定した。SDSの添加に続いて、平均粒子サイズがより小さな、密な粒度分布を測定する場合、油滴の凝集体は、試験されるエマルジョン中に存在すると想定されてもよい(本発明によって製造されていないタンパク質安定エマルジョンは、通常、酸を添加すると油滴の凝集が見られる。熱変質性ホエータンパク質を含有するエマルジョンも同様である)。
【0114】
体積関連平均径d43、表面関連平均径d32、モデル値(一連の測定において最も多く発生する値)及びSPAN(分布幅の係数、SPAN=(d90%−d10%)/d50%)を評価において考慮した。多くの場合、粒子サイズに関して異なるパラメータが示され、ここでは体積関連中央値x50が用いられることが好ましい。この値は、滴剤体積の50%が所与の滴剤径x50より小さな滴剤によって捕捉されることを示す。この指標と体積関連中央値とを関連づけるために、更なる指標x50.3が付与される。
【0115】
クリーム化及び相安定性
調製物及び組成物の形態に関して異なるO/Wエマルジョンの安定性を調べるために、10mlずつの前記エマルジョンを、目盛り付き遠心管に注入した。60分及び120分後(それぞれより長時間後)、クリーム化されたエマルジョンまたは油相の乳清を評価した。さらに、相分離に関する相変化を、時間依存的に観察した(+16℃で最長14日まで保存)。
【0116】
顕微鏡的検査
エマルジョンの顕微鏡的外観の試験は、カラービューカメラ(Soft Imaging System)及び画像分析ソフトanalySISR(登録商標)(Soft Imaging System)を備えた顕微鏡BX61(OLYMPUS Deutschland GmbH, Hamburg)を用いて行った。視覚検査の前に、エマルジョンを脱イオン水で、1:10の比率で希釈した。各サンプルにつき1滴ずつを診断用スライド(ROTH GmbH & Co. KG)に滴下し、単一滴剤の分布もしくは滴剤の凝集を200倍の倍率で評価した。これらの検査においては、油の分離は観察されなかった。
【0117】
レオロジー特性
エマルジョンのレオロジーの特徴づけを、円錐/平板型測定システム(Rheostress RS 300, THERMO HAAKE, Karlsruhe)を用いて行った。直径60mm、角度1度の円錐を用いた。測定温度は23℃とした。約1mlのサンプルを平板におき、3分間焼戻した(Thermostat DC30, HAAKE)。剪断速度を連続的に0〜100s−1で増加させた。OSTWALD-DE WAELEのレオロジー法にしたがって、稠度係数kを測定値に基づいて決定した。
τ=kγ
τ:剪断応力(Pa)
k:稠度係数(Pa s
n:流動指数
γ:剪断速度(s−1
【0118】
冷凍/解凍安定性の測定
高粘性の安定性エマルジョンを、PE膜(フィルムバッグ)間で、薄い層(2mm)の形状で、−17℃で保存し(少なくとも24時間)、続いて+20℃で1時間保存した。薄い、安定性エマルジョン(少なくとも24時間の相安定性)を5ml冷凍管に入れ、−17℃で少なくとも24時間保存し、続いて+20℃で1時間保存した。エマルジョンの外観(エマルジョンの安定度)を評価した。分離したエマルジョン(なめらかでない外観、水の分離)を冷凍/解凍非安定性と分類した。これらの実験では、油の分離は(及びエマルジョンの「油の漏出れ」は、それぞれ)、観察されなかった。
【0119】
視覚的観察
タンパク質溶液の製造中、溶液の混合中、エマルジョンの製造中、ならびにエマルジョンの保存中の特定の異常を記録した。
【0120】
エマルジョンのpH値の測定
新鮮に調製したエマルジョンのpH値を、希釈せずに単一ロッド電極HI1131(pHメーター、Hanna Instruments)を用いて測定した。
【0121】
希釈におけるエマルジョンの濁度特性
0.05mlのエマルジョンを7mlの脱イオン水中に希釈し、濁度を主観的に評価し、写真記録する。0.1mlの10%クエン酸を7mlの希釈エマルジョン溶液に添加後も同じステップを行った。
【0122】
エマルジョンとアロニア果汁の混合
2:1の比率(エマルジョン:果汁)で、中性エマルジョンを、天然フルーツの果汁と混合し(アロニア果汁、pH2.9、Kelterei Walter GmbH u. Co KG, 01477 Arnsdorf)、相安定性と口あたり(稠度)に関して特徴付けた。
【0123】
本発明の方法の一般的説明
タンパク質及び多糖類、及び任意にポリオールを、前記表1及び2に示した量で、撹拌装置を用いて50℃及び70℃でそれぞれ別々に水に溶解し、続いて混合した(水相)。水相は、好ましくは、タンパク質を含有する溶液を、多糖類を含有する溶液に混合することによって作製される;図1及び3も参照されたい。荷電したペクチンに代えて中性アミロペクチンまたはCMCを用いて、前者は、好ましくは、約2.15%(エマルジョンにおける含有率)の濃度で用い、軽い高粘性の溶液が得られるまで90℃に加熱する。溶解性の予備試験において、どの多糖類含有率において、水相が、溶液を調製するのに好適な流動特性をまだ維持しているか、すなわち、まだ流動性があるかを測定した。好ましくは、タンパク質としてホエータンパク質分離物(WPI)(DSE 5669, Fonterra GmbH、ドイツ)を用い、多糖類として高エステル型ペクチン(P-HV)(Classic AS 501, VE 57 %, Herbstreith & Fox GmbH、ドイツ)を用いる。使用前に無菌条件下で、P溶液を、例えば0.2μmのセラミック膜を用いて4MPaで濾過することが推奨される。
【0124】
油もしくは脂肪成分及び、任意に着香油成分を、約50℃もしくはすべての脂肪が溶けるまで60℃で加熱する(油相)。ヒマワリ油または菜種油及び任意に着香油成分としてのハーブ油もしくはフルーツ果肉油を、好ましくは、油成分として使用する。使用前に多糖類溶液を95℃で(10分間)加熱することによって低温殺菌することが好ましい。
【0125】
次いで、例えば、星型攪拌子を用いて、1,500rpmで60℃未満の温度、好ましくは40〜45℃で、さらに好ましくは約30℃で、油相を水相中に分散させ、ローター/ステーター乳化装置(例えば、CAT-X620, M. Zipperer GmbH, Staufen)を用いて20,500rpmで約1分間後乳化させ、好ましくは、x50<10μmの範囲、好ましくは、<1.5μm、特に好ましくは、<1.2μmの中間粒子サイズを得る。必要に応じて、所望の粒子サイズを得るためにEmulsiFlex C5(20〜50MPa、AVESTIN、カナダ)などの高圧乳化装置または別の高圧ホモジナイザーを用いて微細乳化を行う。
【0126】
例えば、もしPPSを高希釈で用いる場合、特に小さな粒子サイズ(好ましくは、<1μm)が有利である。高粘性の食品基材に添加するためには、約5μmの平均粒子サイズで十分であろう。
【0127】
乳化装置の要件は、必要とされる粒子サイズ及びエマルジョンの粘性によって決定される。低粘性エマルジョンでは、粒子サイズ範囲x50.3=1.0μmは、従来の高圧乳化装置を用いたプレ乳化によって容易に得られる。一方、高粘性エマルジョンでは、特別に設計された高圧乳化装置もしくは特別に設計されたプラント(例えば、好適なローター/ステーターシステムを装備)によってのみ同じことが可能である。
【0128】
例えば、ギアリム分散の原理(ギアリムローター及びステーター)に基づいて作動する真空プロセスプラントMaxxD 200(FrymaKoruma)を用い、好適なギアリムツールを選択して、粒子サイズx50=1.2〜2.5μmの高粘性エマルジョンPPS20CMSを作製してもよい。特に稠度操作目的が望まれる場合、この粒子サイズは、エマルジョンを用いて高粘性製品を得るために十分である。
【0129】
EmulsiFlex C5などの高圧ホモジナイザーを用いて、1.1〜1.3μmの粒子サイズx50が得られる。この目的としては、しかしながら、プレエマルションの調製が必要である(エネルギーインプットの高いギアリム分散装置または攪拌装置)。高希釈での着香に用いられるそのようなエマルジョンは、その密度を増加させるために、重み付け剤としての、高クリーム化安定性が油に対して付加されていた。
【0130】
多糖類及びタンパク質を含有し、中性pH値を有する、得られるエマルジョンのpH値は、約pH7.0以内である。しかしながら、酸性pH値の多糖類が用いられる場合(例えば、高エステル型ペクチン)、得られるエマルジョンのpH値は、pH約4.4〜4.8の範囲でもよい。例えば、10%のクエン酸などの酸を添加することによって、中性エマルジョンのpH値及び酸性pH範囲のエマルジョンのpH値を低くしてもよい。しかしながら、酸の添加は省略することが好ましい。続く実施例においては、酸を添加せずに製造されるPPSが用いられる。
【0131】
最後に、低温殺菌ステップ、好ましくは、約85℃で、特に好ましくは、約75℃で熱処理を行ってもよい。冷却後、このエマルジョンは、約60℃で滅菌容器に注入されることが好ましい。
【0132】
種々の製品の製造におけるエマルジョンPPSの使用
代表的な製品の選択として(実施例3ff参照)、関連する製品データ及び情報を体系的に確認し、該製品は、その元の状態において、官能的特徴づけをされ、次にもう1回続けて、特に言及がない限り、x%(重量%)のPPS20を添加した。値xは、それぞれの製品領域によって変化する。PPSのタイプ、すなわち、例えば、PPS−CMCまたはPPS−PEは、特に言及がない限り、それぞれの正確な組成を含む表1及び2から用いればよい。選択された値は、中央値であり、個別に変化し得る。x%DM(乾燥質量)を有するPPSが、更なる成分として、または混合製品のための混合成分として添加された。混合は特定の順序で行わなかった。均一な粒度分布を得るために、好適なローター/ステーターシステムを用いて、任意に、最終製品を集中的にPPSと混合させた。
【0133】
選択された食品に食感を与えるために十分なPPSの量もしくは濃度を決定するために、PPS20(10%、20%及び30%)を、特に言及がない限り、以下の製品の追加成分もしくは混合成分と混和した。水分離及び、食品の場合は製品のPPS20を添加する前後の口当たりが、少なくとも3人によって試験され、味見された
【0134】
PPSと混合製品中に含有されるPPSの検出
原則として、PPSは、実質的には、タンパク質、極性多糖類、及び油もしくは脂肪からなり、とりわけ、(a)油滴のフロキュレーションが避けられる、(b)タンパク質/多糖類の非相溶性がない、(c)不溶性タンパク質/多糖類複合体が低い水結合能では形成されない、(d)タンパク質/多糖類相中の油滴が均一に分散されることを特徴とする。PPSを検出するための1つの可能な方法としては、希釈もしくは非希釈の中性エマルジョンのpH値を下げること、または酸含有エマルジョンを希釈すること、及びゼーター電位を測定することが挙げられる。PPSを用いると、酸の添加により、自然発生的なフロキュレーションが起こることはない。酸含有及び安定性エマルジョンを希釈する場合、PPSの特徴である単一の油滴の分布が存在するかどうかを顕微鏡的に調べてもよい。さらに、PPSは、pHを下げた時通常析出するタンパク質(例えば、カゼイン、植物性タンパク質)を含有してもよい。もしさらにエマルジョンの粘性及び安定性を増加させる中性ヒドロコロイドが存在すれば、ホエータンパク質含有PPSは、加熱しても(70℃超)酸性pHの範囲で比較的相安定性のままである。この場合、そのような安定性テストを、PPSの希釈化に続けて行うことが必要である。
【0135】
変形例B及びCの製造方法によって取得可能なPPSによれば(図1及び3参照)、すなわち乳化前に油相が多糖類(好ましくは、非標準ペクチン)で濃厚にされており、多糖類の一部が油相に残り、油相の密度増加に寄与している。したがって、PPSの希釈及び遠心分離による油相の分離(任意に、プロテアーゼもしくはSDSの添加)後のPPSの油相は、変形例Aによって取得可能なPPSの従来のエマルジョンの油相と比較して、密度が増加している(例えば、>0.92g/cm)。単離後、油相中の多糖類をクロマトグラフ分析もしくは分光法的方法を用いて分析してもよい。
【0136】
変形例B及びCによるPPSで製造された製品は、油及び多糖類、特にペクチンの含有率がさらに高くてもよい。高い乾燥質量含有量をもつ製品において、水溶液の形状での添加によって食品の水相中のペクチン含有率が2〜3%を超えるようにすることは困難である。特に変形例B及びC中でのPPSの使用は、ペクチン含有率を容易に増加させる。
【0137】
実施例1: 変形例Aにかかるエマルジョンの提供例
エマルジョンの調製
ホエー及びハウチワマメタンパク質ならびに多糖類を、星型攪拌子を装備した撹拌装置RW16を用いて別々に溶解させ、続いて各タンパク質溶液及び多糖類溶液を異なる比率(用いられるタンパク質及び多糖類の濃度の変更、及びタンパク質/多糖類比率の変更による)で混合させた。ホエー及びハウチワマメタンパク質ならびにアルギン酸塩及びカラギーナンを、50℃で撹拌しながら溶解させ、分散したアミロペクチンを、軽い高粘性溶液が得られるまで、90℃まで加熱した。溶解性の実験においては、どの多糖類含有率において、水相が好適な流動性特性を維持するか、すなわちまだ流動可能であるかを判定した。
【0138】
図2Aに示したように、菜種油を95mlのタンパク質/多糖類溶液中に、星型攪拌子(撹拌装置RW16ベーシック、IKA Labortechnik, 1,500rpm;5mlピペットを介してゆっくり添加)を用いて分散させ、30秒間、後乳化させ、続いてローター/ステーター分散ロッドCAT X 620(M. Zipperer GmbH, Staufen)を用いて24,000rpmで15秒間、後乳化させた。このようにして得られたプレエマルションを、実験室圧力のホモジナイザー(球形バルブを装備したHH20、DE 195 30 247 A1)を用いて8MPaで微細に乳化させた。サンプルを減菌条件下で調製した。全ての容器及び装置を、アルコール含有消毒液「Softasept N」(B. Braun Melsungen)でさらに処理した。溶液の調製には、脱イオン水を使用した。これによって、図2に示したようにしてPPS20を製造した。
【0139】
図2Cは、ホエータンパク質の加水分解産物及びリンゴペクチン抽出物を使用したPPS24の製造を示す図である。ここでは、多糖類調製物を4%のショ糖と混合してブレンドを促進してもよい(水溶液への添加による凝集を避ける)。この態様において、好ましくは、2〜4%のNZMP7080及び3%のペクチンもしくはCMCナトリウムが用いられる。一方、Alatal821は、ペクチンと結合させることが好ましい。Herbapektの使用に関しては、6%又は9%のHerbapekt を添加して、ペクチン含有率を高める(PPS24中3%のペクチン)。経験により、ペクチンと相互作用してもよい高分子片(MW5〜10kDa)の含有率としては、加水分解物中35%未満であり、タンパク質含有率は、PPS24の組成物(3%のペクチンもしくはCMCナトリウム、2%のタンパク質、4%の糖、15%の油)と比較して2%から4又は6%まで上昇した。溶液及びエマルジョンの調製物は、図2Cの模式図から得られる。水相は、飲料水(ドイツの硬度で16.5〜19度)からなることが好ましい。
【0140】
さらに好ましいPPS変形例としては、例えば、ミルク及びミルク代用品に用いられる、3%のCMCナトリウム、4%の有機P50タンパク質及び脂肪分30%(脂肪分約5%に相当)の16.50%のクリームが用いられるPPS12、ならびに4%のタンパク質、3%のCMCナトリウム、15%の油を含有する、カードチーズデザートを調製するためのPPS20もしくは22が挙げられる;それらの調製のための態様を説明する図2Dも参照されたい。さらに、標準的なPPS変形例(それぞれ100%までの水を含む)としては、以下のものがある:
1.5%のCMCナトリウム、1%のホエータンパク質及び15%のヒマワリ油を含有するPPS17.5
3%のCMCナトリウム、2%のホエータンパク質及び15%の植物油を含有するPPS20
2.6%のペクチンAS501、2.65%のホエータンパク質、18.5%のヒマワリ油を含有するPPS24
2.6%のペクチン、3.63%のホエータンパク質、18.75%の植物油を含有するPPS25
【0141】
特に高い熱に安定性を有するPPSの変形例
上で既に述べたように、PPSは、熱処理してもよい(好ましくは、5秒間75℃)。基本的には、ホエータンパク質分離物等のタンパク質を減少させることによって、ペクチン及びPPS20とCMCナトリウムを含有するPPS25等の、より濃縮されたPPSにおいて、熱安定性が高められる(85℃で凝集物の形成を阻害する)。事前の配向性検査において、表3に記載のPPS組成物は、特に高い熱安定性(60分間、90℃まで)を有することがわかった。そのような製品の調製を、とりわけ、図2Eに示す。
【0142】
【表3】

熱安定性PPS製品の好ましい組成
【0143】
特に高い熱安定性を有するPPS製品は、熱保存される場合、または食品(ヨーグルト、ソース、ドレッシング、クリーム等)として用いられる場合特に意義がある。
【0144】
冷凍/解凍安定性の判定
高粘性の安定性エマルジョンをPEバッグに入れ、−17℃で少なくとも24時間保存し、続いて+20℃で1時間保存した。さらに、安定性及び低粘性エマルジョン(少なくとも24時間安定の場合)を5ml冷凍管に入れ、−17℃で少なくとも24時間保存し、続いて+20℃で1時間保存した。エマルジョンの外観(エマルジョンの安定度)を評価した。分離したエマルジョン(なめらかでない外観、水の分離)を冷凍/解凍非安定性と分類した。これらの実験では、油の分離(エマルジョンの「油の漏出れ」)は観察されなかった。表1及び2のエマルジョンならびに図2に示した組成物は、冷凍/解凍安定性であることが証明された。
【0145】
エマルジョンの相安定性
エマルジョンを、10ml遠心管に入れ、+16℃で保存した。保存過程において、相安定性を観察した(例えば、相分離、水の分離)。これらの実験では、油の分離は観察されなかった。表1及び2ならびに図2に記載の組成物のエマルジョンは、相安定性であることがわかった。相安定性は、Caイオンを含まない多糖類アルギン酸塩ナトリウムを含有するエマルジョン中(1.5重量%のアルギン酸塩及び1.5重量%のホエータンパク質を使用)でも達成された。さらに、相安定性は、エンドウマメのホエータンパク質、ダイズ及びハウチワマメのタンパク質(CMCナトリウムと高エステル型ペクチンの組合せにおいて)と置換することによっても達成される。しかしながら、もし極性多糖類を天然のアミロペクチンと置換すると、更なる食感の効果は観察されない。植物性タンパク質をアミロペクチンと組み合わせて含有するエマルジョンは、酸を添加すると安定でなくなる。硝酸塩基及びホエーもしくは植物性タンパク質を含有するラムダカラギーナンと組み合わせれば、アミロペクチンを含有するエマルジョンと比較して、わずかな安定性の上昇が観察されるが、カルボキシル基を含有する荷電した多糖類とタンパク質を組み合わせてエマルジョンを調製した場合、安定性は依然として低い。
【0146】
実施例2:本発明の方法の変形例BによるPPSエマルジョンの調製及び有機飲料の製造におけるその使用
飲料、特に有機飲料を製造するために、エマルジョンを、図1及び3の模式図に示したように、変形例Bによって、すなわち、油相と多糖類を撹拌しながら混合し、続いて得られた混合物を、タンパク質を含有する水相中に分散させることによって、高圧乳化剤を用いて、例えば、ドイツ特許出願DE10 2007 057 258.3("Ol-in-Wasser-Emulsion fur Bio-Lebensmittel sowie deren
Herstellung und Verwendung", 2007年11月27日出願)に記載のように調製することが好ましい。その開示内容、特に実施例を本願明細書中に引用によって援用する。
【0147】
文献DE 10 2007 057 258.3の、タイム、油濃縮物及びペクチンの混合物を含有する水中油型(O/W、20/80)エマルジョンを製造するための、及び有機飲料を製造するための実施例2を、本質的に、例示する目的で本明細書において説明する。
【0148】
水中油型エマルジョン(20/80)を、200重量部のタイム油濃縮物(密度0.921g/cm、E.G. Olmuhle & Naturprodukte GmbH/Kroppenstedt、文献DE 102 01 638 C2にしたがって、穏やかに乾燥させた有機タイム、Dr. Junghanns GmbH/Gros Schierstedt、及び皮むきされた有機ヒマワリ種、agaSaat/Neukirchen-Vluynによって調製される)及び800重量部のタンパク質溶液を用いて調製し、100重量部の高エステル型ペクチン(Classic AS 501, VE57%, Herbstreith & Fox/Neuenburg)を、分散ギアリムを備えた攪拌装置を用いて1,300rpmで15分間油中に撹拌し分散させた。分散処理において、油は濁度と高粘性の稠度(密度:約1.020g/cm)を得る。エマルジョンの水相を調製するために、20重量部の有機ホエータンパク質(Bio-P50、約60%のタンパク質含有、 BMI/Landshut)を780重量部の水に溶解させ、水中油型エマルジョン(20/80)の調製に用いる。ローター/ステーター分散装置(CAT-X620, M. Zipperer GmbH/Staufen)を20,500rpmで用いて、200重量部のタイム油濃縮物とペクチンの混合物を800重量部の前記水相中で撹拌し、その後続けて1分間乳化を行う。次いで高圧乳化剤EmulsiFlex C5 (AVESTIN/Canada)を用いて、50MPaでエマルジョンの微細分散を行う。エマルジョン中の油滴の平均径d32は、0.91μmである。
【0149】
有機飲料を調製するために、50重量部の有機リュウゼツランシロップ(Alfred L. Wolff Honey GmbH/Hamburg)を、935重量部の水(密度:約1.014g/cm)に溶解し、得られた溶液を9重量部のペクチン含有タイム油濃縮物を含むエマルジョン(O/W、20/80)に混合し、分散させる。続いて、6重量部の50%ハイビスカス抽出物の溶液(Plantextrakt/ Vestenbergsgreuth)添加して、pH値を約2.9に下げる。こうして得られた高濁度の飲料を好適なボトルに注入し、COガスを含浸させる。
【0150】
該高濁度の飲料は、好ましい清涼なタイムの風味を有し、酸味と甘味を満たしている。4週間+8℃で保存した後、まだ高い濁度が存在し、表面にも底にも析出物が存在せず、該飲料は相安定性を有している。
【0151】
VE57%のリンゴペクチンの代わりに、微細に粉末化された柑橘類のペクチンCM201(VE68〜76%)を用いてもよく、及び/又は、タイム油濃縮物の代わりに、有機ペパーミントリーフから、文献DE102 01 638 C2にしたがって調製されたペパーミントリーフ油濃縮物を用いてもよい。さらに、リュウゼツランシロップの代わりに、5重量%の小麦シロップSipa-Wheat F28(Sipal Partners S.A/Belgium)を甘味付け剤として用いてもよい。別の例では、ハーブ油濃縮物の代わりに、有機シーバックソーン果肉油(Sanddorn GbR, KbA、ドイツ)を着香料として用い、高エステル型柑橘ペクチンCM201と20℃で混合した後、O/Wエマルジョン20/80を調製する。エマルジョンを分散させるために、飲料溶液は、1,000重量部の飲料中に、任意に200重量部のアロエベラ有機植物果汁(Anton Hubner GmbH/Ehrenkirchen)を含有してもよい。
【0152】
エマルジョン中の油相の容量は、20/80〜40/60で増加させることもできる。
【0153】
実施例3:カクテル及び混合飲料中のPPS
この目的では、本発明のエマルジョンは、好ましくは、変形例A(図1、実施例1も参照)にしたがって、及び/又は、植物性タンパク質を用いて調製されることが好ましい。
a)192重量部のPPS20−CMと混合した、80重量部のミルク(3.5%脂肪)、2.4重量部の「シトロンバック(Citro-Back)」、24重量部の「カチ(Kathi)レモンシュガー、480重量部のワイン(Morio Muskat)、24重量部のウォッカ、及び任意に、16重量部のヒッチコックピュアレモンジュース(Hitchcock's pure lemon juice)からなるスグロッピーノ。
b)70重量部のPPS20−CMと混合した、140重量部のピニャ・コラーダ、280重量部のエキゾチックジュース(Rapp´s "Rosige Zeiten")及び140重量部のココナッツクリーム(Maruhn GmbH)からなるピニャ・コラーダ。
【0154】
上記飲料a)及びb)は、好ましく、クリーミーな風味を有し、典型的な香りを生じさせ、長期間保存しても相安定性と濁度安定性を有している。
【0155】
実施例4:植物油を有する強化スキムミルク
スキムミルクから、植物油で強化された、コクのあるミルクを生成することが考えられる。
【0156】
脂肪分0.1%のスキムミルクを用いた。脂肪分3.8%のミルクを比較例とした。一方、PPSを添加しないスキムミルクは、新鮮でなく、薄く、気の抜けた味になり、コクがなく、水っぽい口あたりになり、5重量%のPPS20−CMを添加することで、格段にクリーミーな口当たりになる。7.5重量%のPPS20−CMの添加を増やすことによって、強化スキムミルク(約1.1重量%の植物油)の口あたりは、脂肪分3.8%の全乳のコクに匹敵するものとなる。
【0157】
実施例5:ポリ不飽和脂肪酸の含有量を増加させたミルク
スキムミルクから、さらに生菌剤の特徴等の有利な点と、ポリ不飽和脂肪酸の含有量が増加した、官能的に好ましいミルクを生成することが考えられる。
【0158】
5.1 オリーブ油及びPPS20−CMの添加による強化
PPSと同時に存在させてオリーブ油によるスキムミルクの更なる強化が可能かどうかを試験した。4.5重量部のPPS20−CM及び9.5重量部のオリーブ油(PPS20からの0.7重量%のヒマワリ油及びミルク中の10重量%のオリーブ油に相当)を、86重量部のスキムミルク(0.1%脂肪分)に添加した。全乳(3.8%脂肪分)と比較して、ホモミルクは、わずかにクリーム状の稠度を有し、味にコクがあり、クリーミーで、やや風味豊かで、少し植物油に似ている。口あたりは絶対的にまろやかでコクがあり、クリーミーであるが、粘性は高過ぎない。こうして得られたミルクの唯一の欠点は、その脂肪分が約10.8%であることである。そのため、異なるPPS含有量で油の添加を減らして更なる検査を行った。
【0159】
5.2 オメガ−3脂肪酸を用いたミルクの直接的強化
実施例4の肯定的な結果によって、更なる健康的利点を有するミルクの製造に関する更なる試験の基礎として、5重量%PPS20−CMを含有するスキムミルク(0.1%脂肪分)を測定した。
【0160】
5.3 PPS20、オメガ−3脂肪酸及びイヌリンを用いたスキムミルクの強化
a)これらの実験のために、オメガ−3脂肪酸を、粉末形態で提供した(CPFn−3濃縮物)。この調製物は、好ましくなく、非常に油っこい味になった。CPFn−3濃縮物及びPPS20の添加の組合せが、この味を隠すことに寄与し得るかどうかを試験した。4.73重量部のPPS20−CM及び0.47重量部のCPFn−3濃縮物を添加し、94.80重量部のスキムミルクと混合した。この乳製品は、クリーミーでコクのある口あたりとなったが、まだやや油っこい味になった。スキムミルク含有量を0.56%重量部減少させ、それを、0.56重量部のイヌリンと置き換えると、ミルクの稠度は変わらなかった。これは、更なる着香によって、やや油っこい味を隠すという問題を呈した(5.4参照)。
【0161】
5.4 PPS20を含む、オメガ−3脂肪酸によって強化された着香ミルク
ショ糖と組み合わせた液体状バターバニラアロマ(BVA)の形状のバニラ香味を着香に使用した。
【0162】
2重量%のBVA及び3重量%のショ糖を添加することによって、実施例5.3においてPPS20及びオメガ−3脂肪酸によって強化されたスキムミルクの味を改善することができた。好ましい、コクのある味において、油っこい点はもはや検出されなかった。口あたりは、全乳のそれに等しい。
【0163】
実施例6:PPSを用いたヨーグルトの稠度の改善
PPS20−CMを10、20または30重量%、脂肪分1.5%のヨーグルトと混合した(ハンドミキサー)。官能評価によって、PPSを添加することで、オリジナルサンプルと比較して、なめらかでない、やや凝集したヨーグルトの水結合能を改善し、PPSを10重量%以上添加することで、ヨーグルトがかなりクリーム状になることが明らかになった。稠度と風味についての官能評価によれば、最適なPPS添加は、10〜15重量%の範囲である。
【0164】
実施例7:低脂肪カードチーズの稠度の改善
PPS20−CMを10〜30重量%、脂肪分0.2%のカードチーズ中で撹拌した。官能評価において、色の違いは殆んど検出されなかった。低脂肪カードチーズは水分離を示し、やや亀裂していたが、PPS20(10重量%以上)の添加は、その外観(亀裂が少ない、ほんの僅かに割れている、まだなめらかでない)を変え、その風味を改善した(よりクリーミー)。10重量%以上のPPS20の添加によって、口あたりがますますクリーミーでなめらかになる。最適なPPS20添加は、15重量%付近の範囲である。
【0165】
実施例8:バターミルクの稠度の改善
脂肪分1%のバターミルクを、10〜30重量%のPPS20−CMで強化した。一方、非強化バターミルクは、元のサンプル及び強化サンプルの官能評価において、やや灰色がかっており、非常に薄く、水っぽく、やや不均質であり、バターミルクサンプルは、PPS含有量を増加させることによってますますなめらかでクリーム状の稠度を示すことがわかった。バターミルクの風味は、PPSの添加によって殆んど影響を受けないが、そのミルクは、PPS含有量が増加するにつれて、その外観はますます全乳に類似するものとなる。20重量%付近のPPS20の添加が最適である。
【0166】
実施例9:ケフィアの稠度への影響
脂肪分1.5%のケフィアを、PPS20−CM(10〜30重量%)と混合した。元のサンプルは比較的なめらかで、水の分離は観察されない。10重量%のPPS20の添加により、明らかによりクリーミーで、よりなめらかな口あたりとなる。好ましいクリーミーさを達成するための最適範囲は、10〜20重量%である。
【0167】
実施例10:PPSを含むマヨネーズの精製
実施例1の変形例Aによって、ホエータンパク質及び高エステル型ペクチンを用いてPPS20−PEを調製する。バジル油濃縮物を油相として用いる。100重量部のデリマヨネーズ(脂肪分80%)を5重量部のPPS20−PEと混合する。デリマヨネーズは、よりクリーミーとなり、好ましいハーブの風味をもち、サラダの着香にすぐれて好適である。そのクリーミーさ及び潤滑性により、それは、チューブに注入するのに好適なものにもなる。ハーブ油濃縮物を、更に別のハーブ油濃縮物(タイム、ローズマリー、タラゴン、ワイルドガーリック、クミン等)と換えることによって、稠度に否定的な影響を及ぼすことなく、PPS含有量を介して強度が調整され得るマヨネーズの香味に広いバリエーションをもたらす。
【0168】
実施例11:レムラードソースの稠度への影響
15重量部のPPS20−CMを、160重量部のデリマヨネーズ、75重量部の新鮮に切ったハーブ及び100重量部の全乳からなる混合物に添加することによって、好ましいクリーミーでソフトな口あたりのマイルドなレムラードソースを調製することができる。PPSの添加なしでは、レムラードソースは、同様の好ましいクリーム状の稠度を示さない。そのようなレムラードソースの稠度は、15重量部のPPS20−CMの代わりに、変形例BまたはCによって調製された、エマルジョン中のペクチン含有量(高エステル型ペクチン)が3重量%のPPS20−PE(表1参照)を用いれば、流動性及び粘着性の点では容易に調整され得る。
【0169】
実施例12:マスタードドレッシングの特性への影響
PPSを添加せずに、150重量部のオリーブ油、75重量部のバルサミコ酢、50重量部のタラゴンマスタード、50重量部の全乳、11重量部の食卓塩、3重量部の氷砂糖、3重量部のオニオンパウダー及び1重量部のブラックペッパーから調製したマスタードドレッシングは、非常に偏ったスパイシーで、酢の味が強すぎる。15重量部のPPS20−CMを添加することで、マスタードドレッシングは、口あたりが幾分より濃厚で、よりマイルドで、よりクリーミーとなり、味がよりまろやかになり、ならびに外観がより明るくなる。
【0170】
実施例13:カレーディップの特性への影響
250重量部の生クリーム、250重量部のホイップクリーム(脂肪分35%)、20重量部のカレー粉(Fuchs Gewurze)、10重量部の食卓塩及び1重量部のガーリック粉末から調製したカレーディップは、調製後、なめらかでない、凝集した外観を有している。その味は幾分偏っており、極端で、強い。PPS20−CMを10〜15重量%添加することによって、製品は、よりまろやかで、よりソフトな味、ならびによりクリーミー稠度特性を得る。
【0171】
実施例14:ペストの精製
PPS20−CMを10〜15重量%(ハンドミキサーで攪拌しながら)添加することによって、元のペスト(その典型的な油の分離を有する)は、よりなめらかで、より軽くなる。20重量%以上では、油の分離は観察されない。特に、PPS20(最大20重量%)の添加によって、強い風味に否定的な影響を及ぼすことなく、油の分離は減少する。
【0172】
実施例15:イタリアントマトソースの稠度及び安定性の改善
PPS20−CMを(10〜15重量%添加、ハンドミキサーを用いて)混和することによって、トマトソースの相分離をなくすことができる。該製品は、口あたりに関してよりなめらかで、ソフトになり、ならびに、色がやや明るくなる。
【0173】
実施例16:熱処理されたソーセージ
熱処理されたソーセージまたは挽肉のような肉製品の製造は、原則として公知である。例えば、ドイツ特許出願DE199 38 434 A1及びDE 10 2006 026 514 A1を参照されたい。その開示内容を本明細書において引用によって援用する。熱処理されたソーセージを製造するために、例えば、10kgのビーフ及び5kgのポークネック脂を用いる。その肉を立方体に切り、通常の量のピクルス用の塩を用いて塩漬けにし、冷保存室で一晩保存する。次の日、2mm肉挽き器のディスクを用いて、その肉を細かく切り、冷凍されたPPS20−CM(予め切られている)を添加し、所望の細かさが得られるまでボウルカットを行う。その後細かく予め切られているポークの脂及びスパイスを添加し、その後もう一度ボウルカットステップを行い所望の細かさの塊を得る。PPSの量は、肉の塊1kgあたり250gである。こうして得られたソーセージは、脂肪分が減少しており、揚げ調理を行った後の口あたりがよいことを特徴とする。
【0174】
実施例17:挽肉製品の改良
ミートローフ、ミートボール、バーガー等の製造においては、ビーフ及びポークを従来のように用いる。先の実施例で述べたように、肉の塊1,000重量部あたり250重量部のPPS20−CMを添加する。こうして得られたソーセージは、脂肪分が減少し、口あたりがよいことを特徴とする。
【0175】
実施例18:レバースプレッドの稠度の改善
ポーク、レバー、及び更に従来の成分(乳化剤を含まない)からなる細かいレバースプレッドの製造にあたり、実施例15及び16に記載のようにポーク1,000重量部あたり250重量部のPPS20−CMを添加する。PPS20を添加しないレバースプレッドと比較して、よりクリーミーな、スプレッド特性が改善され、脂肪分布が均等で、よりなめらかな口あたりの、レバースプレッドが得られる。
【0176】
実施例19:ソース漬け魚の缶詰(ニシンフライ「ホームスタイル」スパイシーマリネード漬け、PPSを20重量%含有)
ニシン、ワイン/ブランデービネガー、植物油、小麦パン粉、タマネギ、砂糖、トマトペースト、ヨード化食卓塩、ワイン、調味料、香味及びスパイスからなるからなる、家庭用に調理されスパイシーなマリネードに漬けて提供された軟らかいニシンフライを、PPS20−CMを20重量%添加することによって精製した。辛くてスパイシーな元の製品は、PPSによって、すなわち、口あたり全般に(酸っぱさが抑えられた、なめらかなマリネード)及び外観(より魅力的な外観)関して改善することができた。
【0177】
実施例20:練り生地及び焼いた製品(PPSを7.5重量%含有するピザ生地)
300gの小麦粉、20gのイースト、1/8リットルのぬるま湯、塩小さじ1/2杯、オリーブ油大さじ2杯を、7.5重量%のPPS20と混合し、練り生地を作る。膨らませた後、練り生地に、切ったトマトを載せ、従来通りの温度でオーブンで焼く。ピザのベースはふわふわして、好ましい風味をもつ。
【0178】
実施例21:フルーツスムージーの稠度の改善
オレンジ、マンゴー、パッションフルーツ等のスムージーならびにリンゴジュース(41%)、オレンジジュース(16%)、マンゴー果肉(15%)、バナナ果肉(14.5%)、パッションフルーツジュース(7%)、オレンジ果肉(2.5%)、切ったリンゴ(2%)及び切ったマンゴー(2%)からなるミックススムージーのような、フルーツの含有量が100%の製品を、PPS20(7.5重量%)と混合する。PPS20を含むスムージー製品の強化によって、全体的により魅力的で、クリーミーでマイルドな風味の点で引き立つ魅力のある稠度特性(酸味が強過ぎない)、ならびに改善した相安定性をもたらされた。
【0179】
実施例22:プロバイオティック製品の稠度の改善
水、スキムミルク、グルコース/フルクトースシロップ、マルチトールシロップ、デキストリン、着香料、甘味付け剤、酸性化剤及び生菌剤からなるプロバイオティック製品を、PPS20(7.5重量%)と混合した。PPSを含有する製品は、より濃厚で、よりクリーミーで、コクのある、好ましい口あたりとなる。
【0180】
実施例23:コーヒー/ミルク混合飲料の官能的特性の改善
そのような混合飲料は多様であるが、その多様性は、主にコーヒーの含有量及び種類、及び更に用いられる組成物中の成分による(図7参照)。同じ意味で、乳製品と着香成分の他の混合物も達成できるかもしれない。
【0181】
例えば、カプチーノは、高含有量(約90%)のスキムミルク、さらにコーヒー抽出物、任意にカカオ、砂糖及び増粘剤(例えば、カラギーナン)を含有する。5〜8重量%でPPS20を添加することで、よりまろやかで、より調和のとれた風味となり、有意にコクが増し、口あたりがよりクリーミーになる。これによってカプチーノの官能的な質が格段に高められる。
【0182】
実施例24:アイスクリームの構成及び食感の改善
アイスクリーム製品の基本材料は、ミルク、乳脂肪、フルーツ、フルーツ調製物、さらに香味付け成分(例えば、コーヒー、カカオ)、砂糖及び、最終製品において特定の効果を達成するための添加物である。用いられる成分によって、例えば、ミルクベースのアイスクリーム、クリームベースのアイスクリーム、フルーツアイス、アイスクリーム、乳脂肪分を減らしたアイスクリーム、人工アイスクリーム(水氷)等、異なるタイプのアイスクリームが実現される。アイスクリームの製造の重要な要素は、冷凍プロセスで形成される結晶構造であり、保存温度によって、特に、冷凍保存中の温度変動によって、多くの場合、否定的に決定的な影響を受ける。これによって、顆粒状または砂利のような構造が形成され、元に戻らなくなり、稠度及び口あたりに否定的な影響を及ぼす。この印象は、PPS、例えば、PPS20の添加によって、既に(already)数パーセントの含有量で、有意に減らすかもしれず、さらにはなくすかもしれない。
【0183】
このむしろ一般的な所見の他に、PPSをアイスクリームの領域で用いることに関する多くの好適な可能性がある。その具体的な例としては:
−脂肪及びエネルギー含有量の減少
−添加物の減少及び完全な代用
−乳糖を含まないアイス/アイスクリームの製造
−全く新規な製品及び組成物の実現
【0184】
実施例25:PPSの乾燥
乾燥製品の製造においても、便利さは重要な役割を果たし、液体もしくはペースト状の最終製品を得るための基本材料と中間製品としての化合物の使用で開始し、例えば、水もしくはミルクだけに溶ける完成製品を達成する。
【0185】
全ての乾燥方法は、多かれ少なかれ穏やかに行われる脱水に基づいている。したがって、PPSを乾燥させるための、ドラム乾燥から直接スプレー乾燥する広く適用可能な方法まで、種々の方法を用いて、凍結乾燥過程を行えばよい。
【0186】
ドラム乾燥プロセスによって、PPSのフレークを生成する。これは、再水和によって、非乾燥の状態のPPSと同じ化学物理的特性を有する。
【0187】
スプレー乾燥を行うためには、乾燥質量含有量が40%を超えるPPSを用いる必要がある。スプレー乾燥プロセスによってPPSのビーズを生成する。これは、溶解性の点でインスタント製品に必要とされる要件を満たさないが、再水和によって、新鮮なPPSの全ての関連する特性を発揮することができる。
【0188】
凍結乾燥プロセスによって、全ての要件を満たす乾燥製品ができる。しかしながら、香味は、PPSとは無関係であり、凍結乾燥は最も巧みな乾燥技術であるので、別のアプローチを介して、インスタント特性を達成することになる。
【0189】
実施例26: インスタント特性を有する、乾燥PPS及びPPS含有乾燥製品の製造
インスタント特性には、実質的に機械的なサポートを必要とせずに、溶解を容易にする構成再生能が要求される。乾燥方法と容易に組み合わせることができる1つの方法は、個別の乾燥粒子から、例えば、ビーズから、粒子クラスターが形成される凝集であり、そこでは、物理的な力が、急速な水和に影響し、したがって乾燥質量の、例えば、撹拌等を行わない可溶化に影響を及ぼす。このように、例えば、続く凝集を伴うスプレー乾燥は、インスタント特性を付与するかもしれず、液体の場合、消費者にとって望ましい。
【0190】
1つの可能な例は、PPSベースの混合ミルク飲料を調製し、そのような製品にもPPSを使用したのと同じ官能的利点を付与することである。このようにして、実施例22の混合ミルク飲料、例えば、コーヒー/ミルク混合飲料は、下記のようにして調製すればよい:
−コーヒー/ミルクの組合せの調製
−特定の乾燥質量含有量(製品の粘性による)へのプレ(予備)濃縮
−スプレー乾燥
−凝集ステップ、及び
−したがって、インスタント特性の実現
−酸素が奪われた雰囲気中での包装
−水の添加及び、その後新鮮に生成された、または調製された製品に対応する製品の可溶化
【0191】
インスタント調製物の製造方法は、当該技術分野の当業者に公知であり、文献に記載されている;例えば、ドイツ実用新案文献DE 20 2007 012 897 U1を参照されたい。その開示内容を本明細書において引用によって援用する。
【0192】
他のPPS変形例、例えば、植物性タンパク質を用いて、好ましくは、図4〜7に記載のように、異なる食品や食品分類について、上記実施例を行い、同様の肯定的な結果を得る。
【0193】
実施例27:カルバクローを用いたクリーム状のエマルジョンの調製
オレガノハーブ油濃縮物を用いて製造されたPPS20−PEは、皮膚に容易に拡がり、油膜を残さない。抗生物質効果を有するエマルジョンが、皮膚に急速に吸収され、圧縮に好適なものとなる。それは、暖かい飲料もしくは冷たい飲料に容易に希釈することができ、油分離を示さない。
【0194】
実施例28:皮膚用クリームの調製
油含有率が30%のPPS34−PEは、15%の天然のアルガン油、15%のカモミールハーブ油濃縮物及び2.5%のデクスパンテノールからなる。その粘性のクリームは、容易に拡がり、急速に吸収される。
【0195】
実施例29:皮膚クリームの改良
10%のPPS20−CMを、15%のカモミールハーブ油濃縮物を含有する市販のケアクリームと混合する。得られたクリームは、よりなめらかな稠度を有し、より急速に皮膚に吸収される。
【0196】
実施例30:環境に優しい接着剤
PEを2%又は4%含有するPPS20−PEは、ファイバーボード、金属、ガラス、PET材料または繊維上に容易に広げられ、カードボード、紙、有孔材及び繊維布によって容易に吸収される。PPSを乾燥させるとすぐ(加熱により速くなる)、コーティングされ、圧力をかけられたサイトは堅固に結合する。上清PPSは、明るい色の膜を形成する。PPS接着剤はまた、油相において芳香性成分(例えば、ラベンダーハーブ油濃縮物)と混合される。PPS接着剤は、非永久的結合が望まれる場合に、材料を結合するのに優れて好適であり、例えば、水で濡らすもしくは水に浸すことによって、または、機械的力によって、損傷なく容易に再び分離することができる。PPSは、有機溶媒が用いられておらず、用いられる原料は天然由来であり、結合部位は高い機械的強度を有するが、濡らすことによって容易に分離され、結合された材料は、目に見える結合部位を示すことなく、他の目的に使用してもよいため有利である。
【0197】
PPS接着剤の成分は環境に優しく、その結合特性、稠度及びそれぞれの材料への密着性の特徴は、バイオポリマー及び分散された油の含有量を介して容易に調整し得る。分散相としてアマニ油を使用することで、ゴム化によって、続く結合安定性を容易にする。
【0198】
実施例31:塗料及び塗料媒体の装飾
HEペクチンを4%含有するPPS20−PEは、1%
ブリリアントブルー粉末(E133)によって強化される。得られたPPSは、強い青色を有し、親水性及び疎水性表面(木材、カードボード、金属、合成材料)への優れた密着性ゆえに、修飾用塗料として一般に用いられている。その塗料は、水溶液を使用して容易に除去することができる。
【0199】
染料粉末含有量が増加したPPSを細片(カードボード、合成材料)またはスティック(木材、合成材料、金属)上で乾燥させれば、これらは、水溶液中に(例えば、イースターエッグまたは繊維の色を染めるため)導入することによって、塗装溶液の簡単な調製物に用いてもよい。乾燥されたPPS染料溶液は、機械的影響に非常に抵抗力があり、乾燥状態でしみにならない。
【0200】
上記実施例は、他のPPS変形例、例えば、植物性タンパク質等を使用して行っても同様に肯定的な結果をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥質量含有率が5〜60重量%であり、エマルジョンの全重量に対して以下の成分:
(i)0.2〜10.0重量%のタンパク質;
(ii)0.3〜10.0重量%の極性多糖類;
(iii)0.1〜60.0重量%の脂肪/油成分;
(iv)0〜30.0重量%のポリオール;
を含有する、相安定性水中油(O/W)型エマルジョンを製造する方法であって、
実質的には前記脂肪/油成分(油相)(iii)からなり、多糖類(ii)又はその一部と混合されてもよい相が、前記タンパク質(i)と、任意に多糖類(ii)又はその一部を含有する水相に分散され、続いて前記エマルジョンが微細に乳化される、方法。
【請求項2】
(a)実質的には前記脂肪/油成分(油相)からなる相は、前記タンパク質及び前記多糖類を含有する水相に分散され;又は、
(b)前記油相は、前記多糖類と混合され、続いて前記タンパク質を含有する水相に分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水相は、前記タンパク質を含有する溶液を、前記多糖類を含有する溶液に混合させることによってステップ(a)で作製される、前記請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水相は、オリゴ糖及び/又はポリオールを含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エマルジョンは、実質的に、更なる重み付け剤、オリゴ糖類、ポリオール、乳化剤及び/又は分散剤を含まない、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エマルジョンは、実質的に、着香料、着色剤、防腐剤、酸及び/又は、更なる賦形剤を含まない、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質は、ホエータンパク質分離物、乳タンパク質濃縮物、ナトリウムカゼイネートまたはスキムミルク粉末を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質は、植物性タンパク質である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記植物性タンパク質は、エンドウマメタンパク質、ダイズタンパク質、ハウチワマメタンパク質またはジャガイモタンパク質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記多糖類は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはペクチン(PE)を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
PEは、高エステル型ペクチンまたはアミド化低エステル型ペクチンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
タンパク質と多糖類の比率は、4:1乃至1:4の範囲である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記脂肪/油成分は、植物油、精油、液体植物性脂肪、動物性脂肪、鉱油及びMCT油からなる群から選択される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記エマルジョンは、実質的には、前記成分(i)〜(iii)からなる、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記エマルジョンは、実質的には、0.75〜5.0重量%のタンパク質、0.5〜2.5重量%の多糖類、及び5.0〜50.0重量%の脂肪/油成分からなる、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エマルジョンは、実質的には、下記表に記載の組成物の1つを有する、請求項15に記載の方法。
【表4】

【請求項17】
前記エマルジョンの前記乾燥質量(DM)含有率は、7.0重量%〜55.0重量%である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記エマルジョンは、1.5重量%を超えるタンパク質及び/又は1.0重量%を超える多糖類を含有し、合計乾燥質量(DM)含有率は、約20重量%以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
得られるエマルジョンにおいて、分散された油滴または脂肪滴の粒子サイズは、最大分散でx50.3≦10μm(体積関連中央値)であり、好ましくは、x50.3<1.5μmである、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)に続いて、更なるステップにおいて、pH値を減少させる、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記エマルジョンを濃縮させる、及び/または、乾燥させるステップを更に含む、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥方法は、ドラム乾燥である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エマルジョンは、凍結乾燥される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
先行する請求項のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物。
【請求項25】
前記組成物は、流動可能で、濃厚で、粘性のある、濃密なクリーム状の液体、クリーム状のペースト、または濃密なクリーム状のペーストの塊りである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
乾燥した固体物質である、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
含水率が10重量%未満である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
請求項24乃至27のいずれか一項に記載の組成物を含有する製造物であって、前記製造物は、食品製品、ヘルスケア製品、医薬品、農業製品及び工業製品からなる群から選択される、製造物。
【請求項29】
前記製造物は、食品製品である、請求項28に記載の製造物。
【請求項30】
前記食品製品に通常存在する脂肪成分は、完全に、または部分的に、請求項24乃至27のいずれか一項に記載の組成物と置き換えられる、請求項29に記載の製造物。
【請求項31】
官能的、機能的及び/又は栄養生理学的特性について改変された食品の製造方法であって、前記方法は、
(a)エマルジョンの全重量に対して、下記成分を含有する水中油(O/W)型エマルジョンを提供するステップ;
(i)0.2〜10.0重量%のタンパク質;
(ii)0.3〜10.0重量%の極性多糖類;
(iii)0.1〜60.0重量%の脂肪/油成分;
(iv)0〜30.0重量%の着香油成分;
(v)0〜30.0重量%のポリオール;
(vi)0〜1.0重量%の着香料;
(vii)0〜1.0重量%の酸、を含有し、
(viii)分散された油滴または脂肪滴の粒子サイズは、好ましくは最大分散x50.3≦10μm(体積関連中央値)であり、
(ix)前記エマルジョンの乾燥質量含有率は、5〜60重量%であり;及び
(b)前記エマルジョンと、食品を製造するための食品基材とを混合するステップであって、前記エマルジョンは、前記食品基材に対して0.1〜75重量%の比率で存在するステップ、を含む方法。
【請求項32】
前記エマルジョンの提供は、実質的には、請求項1乃至22に記載のいずれか1つの方法によって行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記食品基材及び/又は前記製造された食品は、乳製品または乳代用品である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記食品基材及び/又は前記製造された食品は飲料ではない、請求項31乃至33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記油相は、重み付け剤を含有する、請求項31乃至34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記重み付け剤は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、脂肪酸グリセリドのコハク酸エステル及び/又は油相で結合する多糖類である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記食品基材は、実質的には、中性または酸性のpH値を有する、請求項31乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(b)に続いて、更なるステップにおいて、前記pHを減少させる、請求項31乃至37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記食品を保存するステップをさらに含む、請求項31乃至38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記食品を濃縮させる及び/または乾燥させるステップをさらに含む、請求項31乃至39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記食品は、凍結乾燥される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記食品は、好適な容器に包装される、請求項31乃至41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
請求項29または30に記載された、または請求項31乃至42のいずれか一項に記載の方法によって得られる食品。
【請求項44】
ミルク及び乳製品、スムージー、菓子類、特別食品製品、スープ、ソース、マリネード、乳児用調製乳、アイスクリーム製品、肉製品、練り生地または焼いた製品からなる群から選択される食品である、請求項43に記載の食品。
【請求項45】
前記食品は、食餌療法食、食品添加物またはパワー食品である、請求項43または44に記載の食品。
【請求項46】
前記食品は、インスタント製品である、請求項43乃至45のいずれか一項に記載の食品。
【請求項47】
前記エマルジョンは、乾燥質量含有率の>50重量%を構成する、請求項43乃至46のいずれか一項に記載の食品。
【請求項48】
前記エマルジョンは、乾燥質量含有率の>75重量%を構成する、請求項47に記載の食品。
【請求項49】
前記食品基材は、実質的には、0.05〜1%のミルクである、請求項47または48に記載の食品。
【請求項50】
前記製造物は、ヘルスケア製品であり、請求項24乃至27のいずれか一項に記載の組成物は、前記ヘルスケア製品の活性成分のための担体もしくは賦形剤である、請求項28に記載の製造物。
【請求項51】
前記製品は、ローション、ハンドクリーム、ボディーローション、ボディークリーム、入浴剤、シャンプー、コンディショナー、日焼け止めローション、リップスティック、アイシャドー、タルカンパウダー、食品粉末、油剤、ビタミン、抗生物質及び防カビ剤からなる群から選択されるいずれかである、請求項50に記載の製造物。
【請求項52】
前記製造物は、医薬品であり、請求項24乃至27のいずれか一項に記載の組成物は、前記医薬品の1以上の活性成分のための担体もしくは賦形剤である、請求項28に記載の製造物。
【請求項53】
前記製造物は、塗料、インク、つや出し、塗料剥離剤、洗浄剤、接着剤、潤滑剤、トナー、掘削スラッジ、シーリング及び建築材料からなる群から選択される工業製品である、請求項28に記載の製造物。
【請求項54】
粘稠化剤、懸濁剤、結着剤、凝結遅延剤または保水剤としての、請求項24乃至27のいずれか一項に記載の製造物の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−525123(P2012−525123A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507643(P2012−507643)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002654
【国際公開番号】WO2010/124870
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511258189)オプティセンス ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】OPTISENS GMBH
【住所又は居所原語表記】Br der‐Grimm‐Stra e 13, 60314 Frankfurt/Main,Germany
【Fターム(参考)】