濃縮治療用リン脂質組成物
本発明は、濃縮治療用リン脂質組成物;濃縮治療用リン脂質組成物を有効な量投与するステップを含む、心血管疾患に関連する疾病、メタボリック症候群、炎症およびそれに関連する疾病、神経発達障害、および神経変性疾患の治療または予防のための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年10月29日出願の米国仮出願第61/256,106号の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引用により本明細書の一部とする。本明細書に引用するすべての特許、特許出願、および文献は、それらの全内容を引用により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、濃縮治療用組成物に関する。本発明は、特に、疾病の治療または予防に有用な濃縮治療用リン脂質組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝的形質が、西洋型の食事およびライフスタイルに結びついて、心血管疾患/メタボリックシンドローム(MetS)は世界的に増加の一途をたどってきた。心血管代謝症候群とは、中心性肥満、高血圧、耐糖能異常、高血糖、脂質異常症を含む心血管リスク因子のクラスタをさす。脂質異常症は、アテローム性動脈硬化症および、関連する心血管疾患(CVD)(国の死因のトップである)をもたらす主要な修正可能な危険因子である。
【0004】
[心血管疾患]
心血管疾患は、米国民の3人に1人がその生涯のうちに罹患し、毎年発生する死亡者のほぼ3分の1を占めている(Rosamond W,ら,Circulation,115,e69−el71,(2007))。心血管疾患は、心臓や血管に悪影響を及ぼす疾患として定義されている。
【0005】
スタチンは、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−Cまたは「悪玉コレステロール」)を推奨目標レベルに低下させることに主に焦点をあてる、CVDのリスクのある被検体のための第一選択療法と考えられている。しかし、スタチンは、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−Cまたは「善玉コレステロール」)を上昇させる効果はほとんどなく、現在では心血管疾患を発症させる主なリスク因子であると認識されている。HDL−Cを上昇させる処置の選択肢は非常に限られていて、顔面紅潮を引き起こすこと、肝酵素の異常を引き起こすことが報告されているNiaspan(登録商標)(ナイアシンのブランド品)や、LDL−Cを40%増加させ、肝酵素、血液学的変化、胆石、膵炎、ならびにミオパシーの有意な増加を引き起こすTricor(登録商標)(フェノフィブラートのブランド品)などが挙げられる。処置の選択肢のなかには、血漿トリグリセリドを低下させるものがあるが、HDL−Cに関しては無視できる程度の効果しかない(Lovaza(登録商標))。他の治療の選択肢としてHDL−Cを上昇させるものもあるが、トリグリセリドに関しては効果が小さい。
【0006】
他にもLDL、TGに悪影響を及ぼさず、高血圧を引き起こすことなく、HDL−C(善玉コレステロール)を増加させる試みがなされたが成功していない。例えば、トルセトラピブは、HDLレベルを上昇させるとみられたが、TGおよびLDLに影響を及ぼさなかった。しかし、トルセトラピブは、第III相試験において重度の高血圧症および高い死亡率を生じた。総コレステロールを低下させることについての進歩にもかかわらず、脂質異常ならびに他の重篤な副作用が依然としてはびこっている。脂質異常症の管理における治療格差は、CVDの上位5つの主要な修正可能な危険因子の1つと考えられ、重要な未だ対処されていない治療上のニーズを表している。ほとんどの治療法は肝臓での固有のLDL−C合成のみを標的としているが、LDL−Cを増加させずにHDL−Cを増加させながら、さらにトリグリセリドを低減させる他の治療法が必要とされている。
【0007】
[神経発達障害および神経変性疾患]
神経発達および神経変性の疾患/障害および神経系平衡失調(神経伝達物質の平衡失調)は多数の人々に影響を及ぼし、運動、感覚、または認知系のニューロンの選択的および概ね対称的な消失によって特徴付けられる慢性の進行性の神経障害として定義されている。進行性の神経変性疾患の1つであるアルツハイマー病(AD)は、不可逆的に進行し、徐々に進行する認知低下、行動や性格の変化によって特徴付けられる。これらの症状は、神経化学変化、神経死滅、および神経間結合の破壊に関連している。多くの場合、短期記憶の喪失は最初の徴候で、その後複数の機能を含む認知の障害が続く。ADと軽度認知障害の初期段階は、記憶喪失や認知機能障害の軽度の形態として特徴付けられ、その後認知症およびADの発症が生じ得る。これらの可能な先行する状態を有する被験体における認知機能の一層の低下の予防は、ADの可逆的回復が不可能であることを考えると極めて重要である。
【0008】
米国において、現在約510万人のアルツハイマー病(AD)患者が存在すると推定され(アルツハイマー病協会、2007)、この数値は2050年までに1320万人に達すると予想されている(Hebertら,2003)。アルツハイマー病は、米国における死因のなかで全年齢層では7番目、65歳以上については5番目にランクされている(国立健康統計センター、2004)。カナダでは、65歳以上でADを罹患しているのは28万人と推定されており、2031年までには75万人が罹患することになると予想されている(カナダアルツハイマー協会、2006)。北米全体の70歳以上の10%が早期ADまたは軽度認知障害を罹患していると推定される。
【0009】
アルツハイマー病は、2つの主要な病理学的特徴:異常タンパク質τ(タウ)により形成される細胞内の神経原線維のもつれ;およびβ−アミロイドペプチド(Αβ)によって形成される細胞外神経突起斑によって特徴付けられる(Kuoら,1996)。Αβ42の過剰産生は遺伝的に誘導されるが、完全な症候性ADを発症するためには環境リスク要因が必要である(Grantら,2002)。これらのリスク因子のうち、ドコサヘキサエン酸(DHA)の低下は、ADのための最も重要な食事上のリスク因子の1つである(Morrisら,2005)。学習、記憶およびADとの関連におけるDHAの影響の理由は不明であるが、シナプスにおけるその損失から生じている可能性がある(Montineら,2004)。シナプスには、通常はDHAが豊富に存在し(Salemら,2001)、シナプス後伝達および神経保護のために特に重要な役目を果たしている(Bazan,2003)。動物モデルでの研究では、脳のn−3系脂肪酸の含有量は、食事摂取量と高齢化により大きく影響を受けることが一貫して示されている(Favrereら,2000;Youdimら,2000;CalonおよびCole,2007)。ただし、一部の報告は、高濃度のDHAは、神経疾患患者において有害な影響を与えると主張している。
【0010】
[オメガ3脂肪酸および炎症]
いくつかの動物実験では、増加したDHAの摂取量は、海馬におけるアセチルコリンとその誘導体であるニューロプロテクチンD1のレベルを増加させ、これによって細胞死が減少することが判明している(Aidら,2005;Lukiwら,2005)。老齢マウスで行われた研究では、DHA摂取が記憶能力を高めることが示された(Limら、2001)。別のアルツハイマー病のマウスモデルでは、食事摂取DHAが減少すると、樹状突起に局在していた酸化亢進に関連するシナプス後タンパク質が消失することが示された。ただし、DHA−制限されたマウスのグループがDHAを与えられた場合、そのマウスは、DHA摂取が樹状突起の病変に対してそれらを保護していることの兆候を示した。このことはDHAがアルツハイマー病の認知障害を予防するために有用であることを意味している(Calonら,2004)。
【0011】
いくつかの疫学的研究は、認知症と認識機能障害を減少させる、魚摂取(オメガ3脂肪酸の直接のソース)量の増加に関連する保護効果を示している(Kalmijinら,1997,Barberger−Gateauら,2002;Morrisら2003)。最近では、1つの大規模な無作為化二重盲検プラセボ対照試験により、1.6gのDHAと0.7のEPAがADのリスクを低減させるのに有益であり得ることが見出された。(Freund−Leviら,2006)。さらに、オメガ3脂肪酸の食餌性栄養補給が、気分、行動、うつ病、および認知症など、さまざまな精神状態で有益であり得ることを示す証拠が集まりつつある(Bourreら,2005;PeetおよびStokes,2005;Stollら,1999)。
【0012】
オメガ3脂肪酸の抗炎症作用が広く研究され、いくつかの慢性炎症性疾患について肯定的な結果が得られている。C反応性タンパク質(CRP)は炎症プロセスの間に劇的に増加し、一般的に炎症のマーカーとして測定されるタンパク質である。オメガ3多価不飽和脂肪酸の摂取量の増加は、CRPレベル上昇の有症率の低下と関連している。結腸炎の動物モデルは、オメガ3脂肪酸の天然の源である魚油が、結腸の損傷や炎症を減少させることが示している。炎症性大腸疾患(IBD)を罹患している被験体に魚油を補給すると、炎症性メディエーターのレベルが調節されることが判明しており、これは潰瘍性大腸炎の寛解をもたらし、それを維持するために有益であり得る。関節リウマチ(RA)および他の炎症性疾患の管理においては、副作用のために、サリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬の使用が制限される。臨床試験では、タラ肝油を補給したRAを罹患する被験者の39パーセントが、日常でのステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)の必要を30%超削減できたことが示された。また、オメガ3脂肪酸は、不整脈による突然死のリスクを軽減するためにも使用されている。
【0013】
さらに、オメガ3脂肪酸は、正常血糖値の男性および肥満症の個体におけるインスリン感受性と耐糖能を改善することが示されている。オメガ3脂肪酸はまた、炎症性表現型をもつ肥満と非肥満の被検体におけるインスリン抵抗性を改善することが示されている。脂質、グルコース、およびインスリンの代謝が、オメガ3脂肪酸による治療により、肥満で高血圧の被験体において改善されることも示されている。
【0014】
オメガ3脂肪酸は、イカ、魚、オキアミなどの海洋生物から得ることができ、栄養補助食品として販売されている。しかし、体内でオメガ3脂肪酸の摂取は効率的ではなく、これらの原料油には、LDL−Cの増加などの有害な副作用を引き起こすことが知られているトリグリセリドやコレステロールなどの他の物質が含まれている。特定の魚油は、医薬品グレードのオメガ3脂肪酸エチルエステルとして開発されている。そのようなオメガ3脂肪酸エチルエステルの1つは、ブランド名Lovaza(登録商標)で現在販売されている。研究の結果、Lovaza(登録商標)には被検体の血漿トリグリセリドレベルを減少させ得ること判明しているが、Lovaza(登録商標)は、善玉コレステロール(HDL−C)を上昇させることには無視できる程度の効果しかない。AMR101は、現在臨床試験段階にある、DHAはないといってよい程度しか含まないEPAをベースにした、別のオメガ3脂肪酸エチルエステルである。AMR101もトリグリセリドを低減させるとみられるが、HDL−Cを上昇させる点では無視できる程度しか効果がない。
【0015】
オメガ3脂肪酸のリン脂質組成物は、米国特許出願第2004/0234587号に開示されている。このリン脂質組成物は、リン脂質とエステル結合しているオメガ3脂肪酸を有する。このリン脂質組成物は、リン脂質濃度が約40%(w/w組成物)であり、高濃度のトリグリセリド(約45%)および遊離脂肪酸(約15%)含むことが報告されている。被験体で試験すると、この組成物はトリグリセリドの血漿中濃度を低下させることについてはほとんど効果が挙げられないことが実証された(11%未満の低下)。
【0016】
遊離脂肪酸および脂質(オメガ3脂肪酸とリン脂質を含む)を含む海洋生物油組成物は、国際公開第2000/23546号に開示されているが、該組成物が、ジグリセロールリン酸にエステル結合されたオメガ3脂肪酸、および非常に高濃度のトリグリセリドと遊離脂肪酸を有するものは開示しておらず、これらの理由から、該組成物は上記の米国特許出願第2004/0234587号に開示された組成物と同程度までトリグリセリドを減らすことは期待できない。
【0017】
したがって、疾患を治療または予防するために有用な、新しい形態のオメガ3脂肪酸が必要とされている。本明細書には、新規な濃縮治療用リン脂質組成物ならびにそれを含む医薬用組成物、およびそれらの使用方法が開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、一態様では、濃縮治療用リン脂質組成物が開示され、該組成物は、
式I
【化1】
の化合物を含み、
前記組成物における式Iの化合物のそれぞれについて、
各R1は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
各R2は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
前記組成物における式Iの化合物のそれぞれにおけるR1およびR2の少なくとも1つは、脂肪酸であり、
各Xは、−CH2CH2NH3、−CH2CH2N(CH3)3、または
【化2】
から独立して選択され、
前記組成物における式Iの化合物の総量は、45%(w/w)乃至約99%(w/w)の濃度である。
【0019】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約45%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約50%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約60%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約66%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である。
【0020】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約70%(w/w(リン脂質/全組成物))と約99%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約80%(w/w(リン脂質/全組成物))と約98%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約85%(w/w(リン脂質/全組成物))と約95%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約90%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である。
【0021】
いくつかの実施形態では、R1は、一価不飽和脂肪酸である。他の実施形態では、R1は、多価不飽和脂肪酸である。いくつかの実施形態では、R2は、一価不飽和脂肪酸である。他の実施形態では、R2は、多価不飽和脂肪酸である。他の実施形態では、多価不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸である。さらに他の実施形態では、R1およびR2の両方は、それぞれ独立してオメガ3脂肪酸から選択される。R1およびR2の少なくとも1つがオメガ3脂肪酸である場合、式Iの化合物を含む濃縮治療用リン脂質組成物は、オメガ3:リン脂質(OM3:PL)である。
【0022】
他の実施形態では、R1は、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。他の実施形態では、R2は一価不飽和脂肪酸であり、R1はDHAである。他の実施形態では、R2は多価不飽和脂肪酸であり、R1はDHAである。他の実施形態では、R2はオメガ3脂肪酸であり、R1はDHAである。さらに別の実施形態では、R2はEPAであり、R1はDHAである。さらに別の実施形態では、R2はDHAであり、R1はDHAである。
【0023】
他の実施形態では、R1は、エイコサペンタエン酸(EPA)である。他の実施形態では、R2は一価不飽和脂肪酸であり、R1はEPAである。他の実施形態では、R2は多価不飽和脂肪酸であり、R1はEPAである。他の実施形態では、R2はオメガ3脂肪酸であり、R1はEPAである。さらに別の実施形態では、R2はDHAであり、R1はEPAである。さらに別の実施形態では、R2はEPAであり、R1はEPAである。
【0024】
別の実施形態では、R2はDHAである。他の実施形態では、R1は一価不飽和脂肪酸であり、R2はDHAである。他の実施形態では、R1は多価不飽和脂肪酸であり、R2はDHAである。他の実施形態では、R1はオメガ3脂肪酸であり、R2はDHAである。
【0025】
他の実施形態では、R2はEPAである。他の実施形態では、R1は一価脂肪酸であり、R2はEPAである。他の実施形態では、R1は多価不飽和脂肪酸であり、R2はEPAである。他の実施形態では、R1はオメガ3脂肪酸であり、R2はEPAである。
【0026】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、式IのR2の位置に主にDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物が、EPAより多くDHAを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、60%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、70%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、80%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、90%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、95%超のDHAを有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物において、リン酸とエステル結合した脂肪酸に加えて遊離脂肪酸が存在する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物において、遊離脂肪酸が実質的に存在しない(0%遊離脂肪酸(FFA)とも表現する)。
【0028】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAとEPAの総量の比が、約1:1と1:0.1との間である。いくつかの実施形態では、該比は、約1:0.7と1:0.3との間である。他の実施形態では、該比は、約1:0.5である。
【0029】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物におけるEPAとDHAの総量の比が、約1:1と1:0.1との間である。いくつかの実施形態では、該比は、約1:0.7と1:0.3との間である。他の実施形態では、該比は、約1:0.5である。
【0030】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるオメガ3(OM3)脂肪酸の総量は、約20%と約50%との間である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるオメガ3(OM3)脂肪酸の総量は、約30%と約45%との間である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるオメガ3(OM3)脂肪酸の総量は、約40%である。
【0031】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAの総量は、約5%と約20%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAの総量は、約10%と約15%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAの総量は、約14%である。
【0032】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるEPAの総量は、約10%と約30%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるEPAの総量は、約15%と約25%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるEPAの総量は、約22%である。
【0033】
いくつかの実施形態では、Xは、−CH2CH2NH3である。他の実施形態では、Xは、−CH2CH2N(CH3)3である。いくつか実施形態は、Xは、
【化3】
である。
【0034】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、−CH2CH2N(CH3)3(ホスファチジル−N−トリメチルエタノールアミンとも称する)を含むリン脂質を主に含む。
【0035】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、抗酸化物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記抗酸化物質は、カロテノイドである。いくつかの実施形態では、前記抗酸化物質は、プロビタミンAである。いくつかの実施形態では、前記抗酸化物質は、フラボノイドである。他の実施形態では、前記フラボノイドは、ナリンギン、ナリンゲニン、ヘスペレチン/ケンフェロール、ルチン、ルテオリン、ネオヘスペリジン、ケルセチンから選択されたものである。他の実施形態では、前記フラボノイドは、
【化4】
である。
【0036】
いくつかの実施形態では、該フラボノイドの濃度が、約1mg/kg(w/w(組成物))と、約20mg/kg(w/w(組成物))との間である。他の実施形態では、該フラボノイドの濃度が、約10mg/kg(w/w(組成物))超である。
【0037】
別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、2000mg/kg(w/w(組成物))超の濃度のアスタキサンチンを含む。さらに他の実施形態では、アスタキサンチンの濃度は、約2000mg/kg(w/w(組成物))と約5500mg/kg(w/w(組成物))との間である。
【0038】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約22%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約15%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約10%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約5%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約1%(w/w(組成物))の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、1%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、0%(w/w(組成物))の濃度の遊離脂肪酸を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約1%(w/w)と約20%((w/w)との間の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約5%((w/w)と約17%((w/w)との間の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約10%((w/w)と約15%((w/w)との間の濃度の遊離脂肪酸を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約0%(w/w)と約30%((w/w)との間の濃度のトリグリセリドを有する。別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約5%(w/w)と約20%((w/w)との間の濃度のトリグリセリドを有する。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約10%(w/w)と約15%((w/w()との間の濃度のトリグリセリドを有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約15%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約10%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約5%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約1%の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、1%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約0%の濃度のトリグリセリドを有する。
【0042】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも50%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも15%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも9%がDHAであり、少なくとも0.1%(w/w)がアスタキサンチンである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも66%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも20%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAであり、少なくとも0.4%(w/w)がアスタキサンチンである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも90%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも22%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAであり、少なくとも0.4%(w/w)がアスタキサンチンである。
【0043】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも50%(w/w(組成物))含み、脂肪酸分の少なくとも15%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも9%がDHAである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも66%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも20%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも70%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも22%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも90%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも22%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAである。
【0044】
一態様では、心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防に有用な濃縮治療用リン脂質組成物が開示され、該組成物は、約66%(w/w(リン脂質/全組成物)の濃度の式の化合物と、6%(w/w(遊離脂肪酸/全組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、0%の濃度のトリグリセリドとを含む。いくつかの実施形態では、1gの前記濃縮治療用リン脂質組成物が、約387mgの総量のオメガ3(OM3)脂肪酸と、約5mgのアスタキサンチンとを含み、EPAは約215mg、DHAは約136mgである。
【0045】
一態様では、神経変性疾患および神経発達障害の治療および予防に有用な濃縮治療用リン脂質組成物が開示され、該組成物は、約70%(w/w(リン脂質/全組成物)の濃度の式の化合物と、約0%(w/w(遊離脂肪酸/全組成物))の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、約0%の濃度のトリグリセリドとを含む。
【0046】
一態様では、本発明はその一部において、濃縮治療用リン脂質組成物が、LDL−C値を上昇させることなく、血漿HDL−C値とともに血漿トリグリセチド値を調節するのに有用であるという予想外の驚くべき発見に基づいている。この予想外の驚くべき発見は、トリグリセチド値の上昇、LDL−C値の上昇、およびHLD−C値の低下に関連する疾患の治療または予防に有用である。そのような疾患または疾病としては、以下に限定されないが、心血管代謝疾患/メタボリック症候群(MetS)、神経変性疾患および神経発達障害、および炎症性疾患などが挙げられる。
【0047】
別の態様では、心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防方法であって、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、前記心血管代謝疾患は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈性心臓病(頸動脈疾患)(CHDまたはCAD)、急性冠症候群(ACS)、心臓弁膜症、大動脈弁および僧帽弁疾患、不整脈/心房細動、心筋症、心不全、狭心症、急性心筋梗塞(AMI)、高血圧、起立性低血圧、ショック状態、塞栓症(肺および静脈)、心内膜炎、動脈、大動脈とその分枝、末梢血管系の疾患(末梢動脈疾患、PAD)、川崎病、先天性心疾患(心臓血管異常)、および脳卒中(脳血管疾患)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高血圧、心不全、不整脈、低HDL血症、高LDL血症、安定狭心症、冠動脈性心疾患、急性心筋梗塞、二次心筋梗塞予防、心筋症、心内膜炎、2型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高コレステロール血症、脳卒中、高脂血症、高リポタンパク血症、慢性腎臓病、間欠性跛行、高リン血症、オメガ3系脂肪酸欠乏、リン脂質欠乏、頸動脈アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、糖尿病性腎症、HIV感染における高コレステロール血症、急性冠症候群(ACS)、非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD/NASH)、動脈閉塞性疾患、脳のアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脳血管障害、心筋虚血、血管内血栓形成に至る凝固障害、および糖尿病性自律神経障害から選択されたものである。いくつかの事例では、上記の心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防方法が、濃度が66%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃縮治療用リン脂質組成物を使用し得る。
【0048】
別の態様では、認識力および/または認知の疾病、疾患または障害(記憶、集中力、学習(障害))を治療、予防、または改善し、または神経変性疾患を治療または予防する方法であって、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、前記認知の疾病、疾患または障害は、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症/自閉症スペクトラム障害(ASD)、失読症、加齢に伴う記憶障害および学習障害、健忘症、軽度認知障害、非認知症の認知障害、発病前アルツハイマー病、アルツハイマー病、てんかん、ピック病、ハンチントン病、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、発病前認知症症候群、レビー小体型認知症、認知症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、筋萎縮性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、脳波の強度および/または脳のグルコース利用に影響を与える状態、ストレス、不安症、集中および注意障害、気分の低下、認知および精神の一般健康状態、神経発達障害および神経変性疾患、ホルモン障害、神経系平衡失調、またはこれらの任意の組み合わせから選択されたものである。特定の実施形態では、前記認知の疾患は、記憶障害である。いくつかの事例では、上記の認識力および/または認知の疾病、疾患または障害(記憶、集中力、学習(障害))を治療、予防、または改善する方法、または神経変性疾患を治療または予防する方法が、濃度が70%超(w/w(リン脂質/組成物))の濃縮治療用リン脂質組成物を使用し得る。
【0049】
別の態様では、炎症または炎症性疾患の防止、予防、または治療のための方法であって、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、前記炎症または炎症性疾患は、臓器移植拒否反応;臓器移植(心臓、肺、肝臓、および腎臓の移植を含むがこれらに限定されない)に起因する再酸素化傷害(Gruppら,J.Mol.Cell Cardiol.31:297−303(1999)参照);関節の慢性炎症性疾患(関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および骨吸収の増加に関連する骨疾患を含む);回腸炎、潰瘍性大腸炎(UC)、バレット症候群、クローン病(CD)などの炎症性腸疾患(IBD);喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの炎症性肺疾患;角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎と眼内炎を含む眼の炎症性疾患;歯肉炎および歯周炎を含む、歯肉の慢性炎症性疾患;尿毒症の合併症、糸球体腎炎。およびネフローゼを含む腎臓の炎症性疾患;硬化性皮膚炎、乾癬、および湿疹などの皮膚の炎症性疾患;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連の神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、てんかん、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性または自己免疫性脳炎、および子癇前症などの中枢神経系の炎症性疾患;慢性肝障害、脳や脊髄の外傷、および癌から選択されたものである。前記炎症性疾患は、グラム陽性またはグラム陰性ショック、出血性またはアナフィラキシーショック、または炎症性サイトカインに応答した癌の化学療法によって誘発されるショック状態(例えば、炎症性サイトカインに関連するショック状態)に代表される人体の全身性炎症であり得る。そのようなショック状態は、例えば癌の治療として投与される化学療法剤によって誘発され得る。他の疾患としては、うつ病、肥満、アレルギー性疾患、急性心血管系イベント、筋消耗疾患、および癌性悪液質などが挙げられる。また、外科手術や外傷によって生ずる炎症も、濃縮治療用リン脂質組成物で治療し得る。
【0050】
本発明の詳細は、以下の説明に記載されている。本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、本明細書には典型的な方法および材料が記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲の記載から明らかになろう。明細書および添付の特許請求の範囲の記載において、文脈が明確に異なることを示さない限り、単数形の表現は複数の概念も含まれている。別段の定義がされない限り、本発明で使用されるすべての科学技術の専門用語は、本発明の技術分野に属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で引用したすべての特許および刊行物は、引用によりその内容全体を本明細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】濃縮治療用リン脂質組成物を製造するためのプロセスの流れ図を示す。
【図1B】濃縮治療用リン脂質組成物を製造するためのプロセスの流れ図を示す。
【図1C】超臨界CO2抽出装置の概略図を示す。
【図2】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中トリグリセリド濃度を示す。
【図3】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度を示す。
【図4】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度のパーセンテージを示す。
【図5】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中LDL−コレステロール濃度を示す。
【図6】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中LDL−コレステロール濃度のパーセンテージを示す。
【図7】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中NEFA濃度を示す。
【図8】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中グルコース濃度を示す。
【図9】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中リン脂質濃度を示す。
【図10】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中ALT濃度を示す。
【図11】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの肝臓総コレステロール濃度を示す。
【図12】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの肝臓トリグリセリド濃度を示す。
【図13】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの循環血漿中トリグリセリド濃度を示す。
【図14】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度を示す。
【図15】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度のパーセンテージを示す。
【図16】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの肝臓総コレステロール濃度を示す。
【図17】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの肝臓トリグリセリド濃度を示す。
【図18】組成物3で処理されたApoA−1 CET Tgマウスの循環血漿中トリグリセリド濃度を示す。
【図19】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中総コレステロール濃度を示す。
【図20】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中総コレステロール濃度を示す。
【図21】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中HDL/LDL濃度を示す。
【図22】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中総コレステロール/HDL濃度を示す。
【図23】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットのプロトロンビン時間を示す。
【図24】28日間、組成物3で処理されたZDF雄ラットにおけるOGTTの曲線下面積データを示す。
【図25】28日間、組成物3で処理されたZDF雄ラットにおけるOGTTの曲線下面積データを示す。
【図26】28日間、組成物3で処理されたSD雄ラットにおけるOGTTの曲線下面積データを示す。
【図27】28日間、組成物3で処理されたZDF雄ラットにおけOGTTの曲線下面積データを示す。
【図28】年齢をマッチさせた対照と比較した、雄ZDFラットにおける血漿中総コレステロールに対する組成物3の効果を示す。
【図29】年齢をマッチさせた対照と比較した、雄ZDFラットにおける血漿中HDL−コレステロールに対する組成物3の効果を示す。
【図30】年齢をマッチさせた対照と比較した、雄ZDFラットにおける血漿中トリグリセリドに対する組成物3の効果を示す。
【図31】雄ZDFラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図32】雄ZDFラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図33】雄SDラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図34】雄SDラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図35】オメガ3指数に対する組成物3およびLovaza(登録商標)の比較効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
濃縮治療用リン脂質組成物は、代謝異常、心血管疾患、神経発達障害および神経変性疾患、および炎症性疾患の治療において驚くべき効果を発揮するという、予想外の発見がなされた。
【0053】
[定義]
以下の定義は、濃縮治療用リン脂質組成物と関連して使用されるものである。
【0054】
本明細書において使用される「濃縮治療用リン脂質組成物」および「濃縮治療用リン脂質組成物群」という用語は、式Iの化合物を含む濃縮された治療用のリン脂質組成物をさす。
【0055】
本明細書中で使用される、冠詞「a」、「an」は、冠詞の文法上目的とする単数個の意ではなく1または複数(即ち、少なくとも1つ)の意をあらわす。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2以上の要素を意味する。
【0056】
「および/または」という用語は、本明細書中で使用されて、特に断りがない限り、「および」または「または」のいずれかを意味する。
【0057】
用語「約」は、本明細書中で数値の記載とともに使用されるとき、記載される数値と当該数値の±5%を含めた大きさを意味する。例えば、約80%という表現は、80%と80%の±5%、即ち76%乃至84%を意味する。本明細書で使用される数値表現「約0%」は、検出可能な量が、1000分の1部未満であることを意味する。
【0058】
本明細書で使用される用語「脂肪酸」または「脂肪酸残留物」は、飽和または不飽和である、長い非分岐脂肪族鎖を有するカルボン酸を意味する。飽和脂肪酸の一般式は、CnH2n+1COOHである。飽和脂肪酸の例としては、以下に限定されないが、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘネイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、ヘナトリアコンタン酸、ドトリアコンタン酸、トリトリアコンタオン酸、テトラトリアコンタン酸、ペンタトリアコンタン酸、ヘキサトリアコンタン酸などが挙げられる。不飽和脂肪は、脂肪酸鎖において1個または複数個の二重結合が存在している脂肪や脂肪酸である。二重結合が1つ含まれている場合に脂肪分子は一価不飽和であり、二重結合が複数含まれている場合、脂肪分子は多価不飽和である。不飽和脂肪酸の例としては、以下に限定されないが、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびドコサペンタエン酸などが挙げられる。
【0059】
「被検体」とは哺乳動物、例えばヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、またはサル、チンパンジー、ヒヒ、およびアカゲザルなどの非ヒト霊長類である。
【0060】
代表的な「医薬上許容される塩」としては、例えば水溶性および水不溶性の塩であって、酢酸塩、アムソン酸塩(4,4−ジアミノ−2,2−ジスルホン酸)、ベンゼンスルホナート、ベンゾナート、重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、カルシウム・エデト酸塩、カムシレート(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシレート(edisylate)、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマール酸塩、グルセプテート(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコロイルアルサニレート(glycoloylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、マグネシウム、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メチルブロミド、メチルナイトレート、メチルサルフェート、ムケート(mucate)、ナプシレート(napsylate)、硝酸塩、N−メチルアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエート、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモエート(1,1−メテン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトエエート、エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、次サリチル酸塩、スラメート(suramate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート(teoclate)、トシラート、トリエチオジド(triethiodide)および吉草酸塩などが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される「代謝異常」という用語は、脂質異常症を含む疾患、疾病、および症候群をさし、代謝異常、代謝疾患、およびメタボリック症候群という用語は、本明細書において区別しないで用いられる。
【0062】
疾病または疾患の治療または予防のために有用な濃縮治療用リン脂質組成物の量を記載するために使用されるとき、「治療上有効な量」は、その特定の有効な量に関連する疾病または疾患に関して有効な量をさす。
【0063】
本明細書において使用される「担体」という用語は、担体、賦形剤および希釈剤を包含し、1つの臓器または身体の一部から他の臓器または身体の一部への薬剤を移動または輸送に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、またはカプセル化材料などの材料、組成物またはビヒクルを意味する。
【0064】
被検体に関する「治療」という用語は、その被検体の疾患の少なくとも1つの症状を改善することをさす。治療は、疾患を治癒、改善、または少なくとも部分的に寛解させることであり得る。
【0065】
用語「疾患(障害)」は、本明細書中で使用されるとき、特に断らない限り、用語、疾病、状態、または病気と同じ意味で、それらと区別しないで用いられる。
【0066】
本明細書中で用いられる用語「投与する」、「投与すること」、または「投与」とは、
化合物または化合物の医薬上に許容される塩、または組成物を被検体に対して直接投与することか、あるいは被検体の体内で等量の有効な化合物を形成できる化合物のプロドラッグ誘導体もしくは類似体または化合物もしくは組成物の医薬上許容される塩を被検体に対して直接投与することのいずれかをさす。
【0067】
[濃縮治療用リン脂質組成物の製造方法]
濃縮治療用リン脂質組成物は、当業者に公知の任意の方法によって作製または製造することができる。例えば、油を含むリン脂質を、天然の供給源から単離(米国特許出願公開第2004/0234587号、同第2009/0074857号、同第2008/0274203号を参照。これらの開示内容は引用によりその全体を本明細書の一部とする)し、次にそれを処理することができる。あるいは、図1Aに概要を示すプロセスに従えば、バルク原料のオキアミ油が得られ、これをさらに処理することができる。さらに、これらの油を含むリン脂質を向流超臨界C02抽出を用いて(Lucien,F.P.ら,Australas Biotechnol.1993,3,143−147)処理して組成物を濃縮し、本明細書に記載する濃縮治療用脂質組成物を作り出すことができる(図1B参照)。例えば、70℃、30MPa、C02/油比72での向流超臨界C02抽出を用いて、バルク原料のオキアミ油から、遊離脂肪酸の一部とともに、トリグリセリドのような特定の生体分子をすべて除去することができる(図1B参照)。バルク原料オキアミ油からTGと遊離脂肪酸が除去されるにつれて、リン脂質の濃度が増加する。このプロセスによってトリグリセリド(TG)が除去された場合、リン脂質組成物は、約66%の濃度(w/w(リン脂質/組成物))となり、5%未満の遊離脂肪酸(w/w)を含むことになる。このプロセスによって遊離脂肪酸(FFA)がさらに除去された場合、濃縮リン脂質組成物は、約70%〜約90%の濃度(w/w(リン脂質/組成物))となり、1%未満のTGおよび約0%のFFAを含むことになる。例えばイカや青ムール貝などの他の水生および/または海洋バイオマスを、出発材料として用いてもよい。追加の成分は、処理の前、処理中、または処理後に加えることができる。あるいは、リン脂質は合成することができ、一般的な合成方法は、いくつかあるもののうち、米国特許第7,034,168号明細書(引用によりその全内容を本明細書の一部とする)に記載されている手順があげられる。
【0068】
[濃縮治療用リン脂質組成物の使用方法]
本明細書において、循環血漿中のトリグリセリド濃度、LDL−コレステロール濃度、総コレステロール濃度、およびNEFA濃度を低下させる方法が開示され、該方法は、それを必要とする被検体に対して本発明の化合物を有効な量投与するステップを含む。
【0069】
また、血漿中のHDL−コレステロール濃度および肝臓のトリグリセリドおよび総コレステロール濃度を高める方法が開示され、該方法は、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を有効な量投与するステップを含む。
【0070】
別の態様では、LDLを増加させるリスクを生じることなくTGを低減させる方法が開示され、該方法は、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を有効な量投与するステップを含む。
【0071】
また、被検体における代謝異常、または代謝性疾患の症状を防止、予防、または治療するための方法が提供され、該方法は、それを必要とする被検体に対して有効な量の濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む。そのような疾患の例としては、以下に限定されないが、アテローム性動脈硬化症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高血圧、心不全、不整脈、低HDL血症、高LDL血症、安定狭心症、冠動脈性心疾患、急性心筋梗塞、二次心筋梗塞予防、心筋症、心内膜炎、2型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高コレステロール血症、脳卒中、高脂血症、高リポタンパク血症、慢性腎臓病、間欠性跛行、高リン血症、頸動脈アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、糖尿病性腎症、HIV感染における高コレステロール血症、急性冠症候群(ACS)、非アルコール性脂肪性肝疾患、動脈閉塞性疾患、脳のアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脳血管障害、心筋虚血、および糖尿病性自律神経障害などが挙げられる。
【0072】
また、被検体における炎症または炎症性疾患の防止、予防、または治療のための方法が提供される。該炎症は、炎症性疾患に関連するものであり得る。炎症性疾患は体組織に炎症が存在する場合に生じ得る。これらには、局所的炎症反応および全身性炎症が含まれる。そのような疾患の例として、以下に限定されないが、臓器移植拒否反応;臓器移植(心臓、肺、肝臓、および腎臓の移植を含むがこれらに限定されない)に起因する再酸素化傷害(Gruppら,J.Mol.Cell Cardiol.31:297−303(1999)参照);関節の慢性炎症性疾患(関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および骨吸収の増加に関連する骨疾患を含む);回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、クローン病などの炎症性腸疾患;喘息、成人呼吸窮迫症候群、および慢性閉塞性気道疾患などの炎症性肺疾患;角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎と眼内炎を含む眼の炎症性疾患;歯肉炎および歯周炎を含む、歯肉の慢性炎症性疾患;尿毒症の合併症、糸球体腎炎。およびネフローゼを含む腎臓の炎症性疾患;硬化性皮膚炎、乾癬、および湿疹などの皮膚の炎症性疾患;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連の神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性または自己免疫性脳炎、および子癇前症などの中枢神経系の炎症性疾患;II型糖尿病などの代謝疾患;I型糖尿病の予防;脂質異常症;糖尿病合併症(以下に限定されないが、緑内障、網膜症、微量アルブミン尿および進行性糖尿病性腎症などの腎症、多発性神経障害、アテローム性動脈硬化冠状動脈疾患、末梢動脈疾患、非ケトン性高血糖性高浸透圧性昏睡、モノニューロパシー、自律神経障害、関節障害、皮膚や粘膜の合併症(感染症、脛スポット(shin spot)、カンジダ感染症、または糖尿病性リポイド類壊死症など);免疫複合体血管炎、全身性エリテマトーデス、心臓の炎症性疾患(心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、およびアテローム性動脈硬化症など):ならびに、子癇前症など重要な炎症性部分をもち得る各種疾患;慢性肝障害、脳や脊髄の外傷、および癌などが挙げられる。前記炎症性疾患は、グラム陽性菌またはグラム陰性ショック、出血性またはアナフィラキシーショック、または炎症性サイトカインに応答した癌の化学療法によって誘発されるショック状態(例えば、炎症性サイトカインに関連するショック状態)に代表される人体の全身性炎症であり得る。そのようなショック状態は、例えば癌の治療として投与される化学療法剤によって誘発され得る。他の疾患としては、うつ病、肥満、アレルギー性疾患、急性心血管系イベント、筋消耗疾患、および癌性悪液質などが挙げられる。また、外科手術や外傷によって生ずる炎症も、濃縮治療用リン脂質組成物で治療し得る。
【0073】
また、被検体における高トリグリセリド血症を防止、予防、または治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、高トリグリセリド血症は、中等度の高トリグリセリド血症である。いくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。中等度の高トリグリセリド血症は、TG値が>3.9mmol/L(>350mg/dL)の被検体と定義される。
【0074】
また、被検体における空腹時血漿中低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)値を低減させる方法も提供される。空腹時血漿中低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)値を低下させるいくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0075】
また、被検体における空腹時血漿中高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)値を増加させる方法も提供される。空腹時血漿中高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)値を増加させるいくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0076】
また、被検体におけるオメガ3指数(OM3I)を増加させる方法も提供される。オメガ3指数は、赤血球(RBC)中のEPA+DHAの割合として定義され、次式:OM3I=(EPA+DHA)/RBC中の総脂肪酸、で表される。赤血球中のEPA+DHA値の低下は、心臓突然死のリスク増加と関連しており、冠状動脈性心臓疾患による死亡のリスク増加(実際のリスク因子)のマーカーとみなすことができる(Harris,2010)。他の実施形態では、オメガ3指数(OM3I)を高めて経口耐糖能異常(OGTT)を低減する方法が提供される。オメガ3指数を上昇させるいくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0077】
また、被検体において高感度C反応性タンパク質(hs−CRP)を低減させるための方法も提供される。高感度C反応性タンパク質(hs−CRP)を低下させるいくつかの実施形態では、被検体は、中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0078】
また、被検体における心血管疾患を防止、予防、または治療するための方法も提供される。心血管疾患としては、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、冠動脈疾患、心臓弁膜症、不整脈、心不全、高血圧、起立性低血圧、ショック状態、心内膜炎、大動脈とその分枝の疾患、末梢血管系の疾患、先天性心疾患などが挙げられる。
【0079】
また、被検体におけるメタボリック症候群を防止、予防、または治療するための方法も提供される。メタボリック症候群は、心血管疾患や糖尿病の発症リスクを高める内科的疾患の組み合わせである。5人に1人が罹患しており、年齢と共に有病率が増加する。いくつかの研究では、米国における有病率は人口の最大25%であると推定している。メタボリック症候群は、メタボリックシンドロームX、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、Reaven症候群、CHAOS(オーストラリア)としても知られている。
【0080】
また、被検体における認知障害を防止、予防、または治療するための方法も提供される。本明細書において用いられる「認知障害または疾患」という用語は、あらゆる認知の障害または疾患を含むものと理解されるべきである。そのような認知障害または疾患の、非限定的な例としては、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、失読症、加齢に伴う記憶障害および学習障害、健忘症、軽度認知障害、非認知症の認知障害、発病前アルツハイマー病、自閉症、ジストニアおよびトゥレット症候群、認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、脳波の強度および/または脳のグルコース利用に影響を与える状態、ストレス、不安症、集中力および注意障害、気分の低下、認知および精神の一般健康状態、神経変性疾患、ホルモン障害、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、該認知障害は、記憶障害である。
【0081】
本明細書において使用される表現「認知障害または認知疾患を罹患した被検体における状態を改善する」とは、疾患、障害、または病理学的状態に関連する望ましくない症状を改善すること;症状が発生する前にその発現を防止すること;疾患または障害の進行を遅くすること;疾患または障害の悪化を遅らせること;疾患または障害の進行段階(または慢性段階)において生ずる不可逆的な害を発生を遅らせること;(進行性の)疾患または障害の発症を遅らせること;疾患または障害の重症度を軽減させること;疾患または障害を治癒させること;(例えば一般的に病気になりやすい個体において)全般的に疾患または障害の発生を予防すること;または上記の事項の任意の組み合わせを包含するものと理解されるべきである。例えば、アルツハイマー病の結果として、記憶障害を罹患する被検体において、空間的短期記憶、想起および/または認識記憶の低下などの症状は、脂質濃縮された治療用リン脂質組成物の使用により改善される。
【0082】
また、被検体における神経変性疾患を防止、予防、または治療するための方法も提供される。神経変性疾患は、運動、感覚、または認知系のニューロンの選択的および概ね対称的な消失によって特徴付けられる慢性の進行性の神経障害として定義されている。神経変性疾患の非限定的な例としては、以下に限定されないが、アルツハイマー病、ピック病、レビー小体型認知症、の大脳基底核−ハンチントン病、パーキンソン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、運動筋萎縮性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、ルー・ゲーリック病、発病前認知症症候群、レビー小体型認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、筋萎縮性側索硬化症、および家族性痙性対麻痺が挙げられる。
【0083】
また、被検体における総合的な認知機能の低下を低減するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、総合的な認知機能の低下の低減は、神経心理学的テスト・バッテリー(NTB)によって測定することができる。いくつかの実施形態では、被検体は初期段階アルツハイマー病と診断されている。
【0084】
また、被検体における神経精神症状の悪化を低減するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経精神症状の悪化の低減は、精神症候評価尺度質問票(NPI)によって測定することができる。いくつかの実施形態では、被検体は初期段階アルツハイマー病と診断されている。
【0085】
また、アルツハイマー病に罹患した被検体における日常生活機能の活動とセルフケア能力を維持させる方法も提供される。いくつかの実施形態では、被検体は初期段階アルツハイマー病と診断されている。いくつかの実施形態では、日常生活機能の活動とセルフケア能力の維持は、認知症障害評価表(DAD)によって評価される。
【0086】
濃縮治療用リン脂質組成物により治療または改善することができるその他の健康上の障害または状態としては、以下に限定されないが、高い血中コレステロール値、高いトリグリセリド値、高い血中フィブリノーゲン値、低いHDL/LDL比、閉経期または閉経後の状態、ホルモン関連疾患、視覚障害、免疫疾患、肝疾患、慢性肝炎、脂肪症、脂質過酸化反応、細胞再生のリズム障害、細胞膜の不安定化、高血圧、癌、過度の緊張、老化、腎疾患、皮膚疾患、浮腫、胃腸疾患、末梢血管系疾患、アレルギー、気道疾患、および精神疾患などが挙げられる。
【0087】
[併用療法]
いくつかの実施形態では、被検体に対して、有効量の濃縮治療用リン脂質組成物を投与する。他の実施形態において、治療には、濃縮治療用リン脂質組成物と、抗脂質代謝異常薬などの治療薬との併用が含まれる。抗脂質代謝異常薬としては、例えばアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンなどが挙げられるが、これらの限定されない。
【0088】
他の実施形態では、治療には、濃縮治療用リン脂質組成物と、コリンエステラーゼ阻害薬との併用が含まれる。コリンエステラーゼ阻害薬としては、メトリフォネート(不可逆性)、カルバメート、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、アンベノニウム、デマルカリウム(demarcarium)、リバスチグミン、フェナントレン誘導体、ガランタミン、ピペリジン、ドネペジル、タクリン、エドロホニウム、フペルジンA、ラドスチギル、およびウンゲレミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態では、被検体には、ビタミン、ミネラル、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤、ステロール類、フィブラート系薬剤、抗高血圧薬、インスリン、コレステロール消化阻害剤(例えばエゼチミブ)、脂肪酸、オメガ3脂肪酸、抗酸化物質、およびメチルフェニデートクラスの化合物(例えばリタリンなど)のなかの少なくとも1種類と、濃縮治療用リン脂質組成物との組みあわせが投与される。他の実施形態では、従来の長期治療(例えばスタチンによる長期治療)の間に欠乏した要素を、濃縮治療用リン脂質組成物と組み合わせ。例えば、いくつかの実施形態では、COX−2、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、マグネシウム、または亜鉛のなかの少なくとも1種類を含む、濃縮治療量リン脂質組成物が提供される。他の実施形態では、カリウムを、濃縮治療量リン脂質組成物とともに含む併用療法が提供される。カリウムは、通常、利尿薬の長期服用中に欠乏する。併用療法により、副作用のリスクが減少し、利益が増加し、溶解度が高められ、および/または生物学的利用能が高められる。
【0090】
[投与方法]
濃縮治療用リン脂質組成物の投与は、治療薬の投与方法のいずれかを利用して行うことができる。これらの投与方法には、経口、非経口、経皮、皮下、または局所投与など全身または局所投与方法が含まれる。
【0091】
[医薬製剤]
意図された投与方法に応じて、該組成物は、固体、半固体または液体の剤形、例えば注射剤、錠剤、丸剤、徐放性カプセル剤、エリキシル剤、チンキ剤、乳剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤などとすることができ、場合によっては、単位用量を含み従来の薬務に準拠する形に製することができる。同様に、該組成物を、静脈内投与(ボーラス投与および注射の両方)、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与用の剤形で投与することができ、これらの使用する剤形はすべて製薬分野の当業者によく知られている。
【0092】
例示的な医薬組成物は、錠剤、ゼラチンカプセルであって、濃縮治療用リン脂質組成物のニート組成物を含むものであり、または必要ならば、医薬上許容される担体を含む。そのような担体としては、(a)希釈剤、例えば、精製水、トリグリセリド油(例えば、水素化植物油もしくは部分的水素化された植物油またはそれらの混合物、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニバナ油)、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、ナトリウム、サッカリン、グルコース、および/またはグリシンなど;(b)潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および/またはポリエチレングリコール;などが挙げられ、錠剤の場合にはさらに、(c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、炭酸マグネシウム、天然の糖(例えばグルコースまたはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味料、天然および合成ゴム(例えばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウムなど)、ワックス、および/またはポリビニルピロリドン;さらに必要に応じて(d)錠剤崩壊剤、例えば、でんぷん、寒天、メチルセルロース、ベントナイト、キサンタンガム、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;(e)吸収剤、着色剤、香味剤、および甘味料;(f)乳化剤すなわち分散剤、例えば、Tween 80、Labrasol、HPMC、DOSS、Caproyl909、Labrafac、Labrafil、Peceol、Transcutol、Capmul MCM、Capmul PG−12、Captex355、Gelucire、ビタミンE TGPS、または他の許容される乳化剤;および/または(g)化合物の吸収を高める薬剤、例えばシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、PEG400、PEG200などが挙げられる。
【0093】
液剤、特に注射剤の組成物は、例えば、溶解、分散等により調製することができる。例えば、該濃縮治療用リン脂質組成物を、医薬上許容される溶媒(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなど)中に溶解、またはそれと混合し、注射可能な等張溶液または懸濁液を形成する。タンパク質(アルブミン、カイロミクロン粒子、または血清タンパク質など)を用いて、濃縮治療用リン脂質組成物を可溶化することができる。
【0094】
他の例示的な局所投与用製剤としては、クリーム剤、軟膏、ローション剤、エアゾールスプレー剤、およびゲル剤などが挙げられ、この場合、濃縮治療用リン脂質組成物は約0.1%〜約15%(w/wまたはw/v)の濃度範囲である。
【0095】
[投薬]
濃縮治療用リン脂質組成物を利用した投薬レジメンは、タイプ、種、年齢、体重、性別、および被験体の病状;治療すべき症状の重症度;投与経路;被検体の腎機能または肝機能;および使用する特定の濃縮治療用リン脂質組成物などのさまざまな要因に応じて選択される。当分野で通常の知識を有する医師または獣医師であれば、病状の進行を防止、阻害、または阻止するために必要な有効な量の薬剤を容易に決定し、処方することができる。
【0096】
本発明の有効用量は、指定された効果のために使用される場合、濃縮治療用リン脂質組成物を1日あたり約20mg〜から約10000mgの範囲となる。生体内または試験管内の用途のための用量には、濃縮治療用リン脂質組成物の約20、50、75、100、150、250、500、750、1000、1250、2500、3500、5000、7500、または10000mgが含まれ得る。被検体への投与後の濃縮治療用リン脂質組成物の有効な血漿中レベルは、1日につき体重1kgあたり約0.002mg〜約100mgの範囲であり得る。濃縮治療用リン脂質組成物の適切な用量は、L.S.Goodman,ら,The Pharmacological Basis of Therapeutics,201−26(5th ed.1975)に記載のように決定することができる。
【0097】
濃縮治療用リン脂質組成物は、毎日1回投与で投与することも、毎日の総用量を1日2回、3回、または4回の分割用量で投与することもできる。経皮送達システムの形での投与のためには、用量投与は、投薬レジメン全体で断続的ではなく連続となり得る。併用療法のいくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物と治療薬剤とが同時に投与され得る。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物と治療薬剤とが連続して投与され得る。併用療法のさらに別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物を毎日投与し、治療薬剤の投与頻度は毎日1回未満とすることができる。併用療法のさらに別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物を毎日投与し、治療薬剤の投与頻度は毎日1回以上とすることができる。
【実施例】
【0098】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、この実施例は、本発明の範囲または精神をここに開示される特定の手順に限定するものと解されるべきではない。この実施例は特定の実施形態を例示するために提供されており、これによって本発明の範囲を制限する意図はないことを理解されたい。これらの実施例が当業者に示唆し得るさまざまな他の実施形態、改変形態、等価形態を、本発明の精神および/または特許請求の範囲に記載の範囲を逸脱することなく実現し得ることも理解されたい。
【0099】
[濃縮治療用リン脂質組成物]
以下の、本発明の限定を意図しない治療用組成物の実施例は、濃縮治療用リン脂質組成物の別の実施形態を例示するものである。実施例の欄に記載されているいずれの実施形態は、濃縮治療用リン脂質組成物の態様であり、したがって、上記の方法および組成物における使用に適していることを理解されたい。
【0100】
以下の方法は、濃縮治療用リン脂質組成物を作製するために用いることができる(図1Aおよび図1B)。
【0101】
[ステップ1]
冷凍オキアミを、機械的に粉砕し、アセトンと水との比9:1の溶媒とともに8℃で60−90分間インキュベートし、オキアミのバイオマスから異なる比率の脂質(PL、TG、およびFFA)を抽出する。脂質は、その後の圧力下で(50−60kPa)濾過することによりタンパク質およびオキアミ材料から分離する。固相は破棄する。水溶性抽出物は、減圧下で連続的に蒸留塔によって蒸発させ、溶媒(アセトン)を除去する。水性(水)画分の大部分は、デカンテーションによって脂質画分から分離され、残りの水は、減圧下で穏やかに加熱して蒸発させることによって除去する。それらの画分を添加し、分析し、ブレンドして中間物のオキアミ油製品を構成し、その中間物のオキアミ油製品を再解析して、所望の仕様、即ち±5%:EPA(15g/100g)、DHA(9g/100g)、総リン脂質(42g/100g)、およびアスタキサンチンの剤形(125mg/100g)を達成する。
【0102】
[ステップ2]
ステップ1からのオキアミ油の100.5gを、300ml抽出容器(ID=0.68”)に充填した。抽出器を密封し、55℃で予熱されたCO2を底部から導入し、抽出器中の圧力は、ダイヤフラムCO2ポンプを用いて5,000psiに維持した。C02の流れを抽出器を通して上昇流方向に継続し、圧力低減弁(PRV)を通して環境圧力に膨張させて、CO2中の溶解物質を沈殿させフラスコに回収した。フラスコから出てくるCO2の流量と容積を流量計と乾燥テストメーター(DTM)を用いて測定した。合計7200gのCO2を抽出器に通し(溶媒/供給比、S/F=72)、34.1%の充填物をCO2によって除去した。約25標準リットル/分のCO2の流量を試験中に維持し、抽出の総時間は約160分であった。抽出器を分離し、C02を大気中に放出させた。抽出器を開き、未抽出物質(ラフィネート生成物)を容器から除去した。
【0103】
[ステップ3]
SC C02抽出により90+%のOM3:PSを製造。9.44gの油を、不活性パッキングと合わせて、抽出器に充填した。ステップ2に記載の手順と同様だが、より積極的な抽出条件(抽出器中の圧力と温度を10,000psiおよび70℃に維持)を用いた点が異なる手順を実行した。全S/F比は200を使用し、f;したがって約1900gのCO2を抽出器を通して流した。CO2の流量は約10標準リットル/分に維持し、したがってこの試験の総実行時間は105分であった。試験中に、合計で充填物の56.3%をこの油から抽出した。抽出器を分離し、C02を大気中に放出させ、抽出器を開き、得られたラフィネート生成物を不活性パッキングから掻き落とした。この未抽出材料を解析すると、91%OM3:PSであった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0104】
[生物学的実施例]
[実施例1]
[3種のマウス表現型における脂質異常症の管理]
この試験の目的は、成熟度/性別をマッチさせた3種のマウスの表現型における組成物3の効果を検討することであった。3種のマウスの表現型は、(1)通常の健康な非肥満で正常血糖の対照(C57BL6)と、それに対する、(2)脂質異常症のLDL受容体遺伝子ノックアウトマウス(LDLr−/−)、または(3)ヒトapoA−Iトランスジェニックマウス(Jackson Labs)であり;これらは12週齢で、27.5±0.7g対25.6±0.7g対29.2±0.8群であり;n=7−10/群であって、通常の食餌対西洋型の食餌で給餌し、水は自由に摂取させ、地域および国の倫理規則に従って飼育した。データは、t検定(独立、両側)によって評価した統計、および平均±平均値の標準誤差(SEM)として提示する(GraphPad Prism V5使用)。
【0105】
上記の3種の未処理成熟雄マウスモデルにおける血漿脂質濃度(mg/dL)のプロファイルは、文献に報告されている通りであった。即ち、全コレステロール(TC):71.1±3.3対215.3±10.4対50.3±1.3;トリグリセリド(TG):59.5±4.5対65.1±3.8対53.0±12.9;低密度リポタンパク質(LDL):13.3±1.2対101.6±6.7対12.2±1.6;高密度リポタンパク質(HDL):53.4±3.2対88.8±3.6対24.8±2.6であった。C57BL6においては、組成物3で1日1回(QD)処置(104対208対417mg/kg(ヒト相当用量500、1,000、および2,000mg/日))を6週間行うと、血漿TGの有意な用量依存的な減少(最大60%)、LDLの上昇(最大28%)、HDLの減少(17%)が生じた、TCには影響しなかった(図2−12および表1を参照)。重症脂質異常症LDLr−KOマウスでは、組成物3により、血漿TGの用量依存的な減少、HDLのさらなる上昇が生じ、TCのわずかの上昇(投与中のみ)が生じたが、LDLには影響がなかった(図13−図17および表1を参照)。hApoA−Iトランスジェニックマウスでは、組成物3により、血漿TGの有意な低下、HDLの上昇が生じたが、TCには影響がなかった(図18および表1参照)。肝臓TC濃度は、3種の表現型すべてにおて同じであったが、TGは、対照C57BL6と比較して、LDLr−KOマウスで低下(19%;p<0.05)し、hApoA−Iで上昇(153%;p<0.01)した。組成物3による処置は、肝臓のTCおよびTG濃度を、C57BL6においてそれぞれ最大12%および27%上昇させ、LDLr−KOにおいてそれぞれ最大10%および36%上昇させ、hApo−Iマウスにおいては、肝臓TC濃度は最大10%上昇させたが、肝臓TG濃度についてはそれぞれ効果にばらつき(−13〜+12%)があった(表2参照)。
【表8】
【表9】
【0106】
これらのデータから、組成物3は、主として血漿中のTGおよびLDLの低下とHDLの上昇に関して脂質代謝の効果的な調節因子であることがわかる。これらのデータから、いくつかの実施形態において、濃縮治療用リン脂質組成物は、中等度乃至重症の高トリグリセリド血症の治療法として有効であり得ることが判明した。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、他の抗脂質代謝異常薬と併用することにより、難治性の高トリグリセリド血症の治療に効果的であり得る。
【0107】
[実施例2]
[12週齢雄ズッカー糖尿病肥満ラットにおける高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)の循環血漿濃度の上昇および総コレステロール(TC)/HDL比の増加]
この試験の目的は、肥満症、高脂血症でインスリン抵抗性を有する2型糖尿病のズッカー糖尿病肥満ラットげっ歯類モデル(ZDF;Gmi−fa/fa)対、成熟度/性別をマッチさせた通常の健康な非肥満で正常血糖の低脂肪対照のSDラット(Charles River Labsより入手;12週目、359±17対439±13群;n=9−12/群)のそれぞれにおける濃縮治療用リン脂質組成物の効果を検討することであった。組成物3のQD処置(52対260mg/kg(体重)(ヒト相当用量(HED)500および2500mg))の後、地域および国の倫理規則(Formulab high fat 5008(ZDF)対normal 5001(SD)食餌レジメンおよび水の自由摂取)に従って飼育し、1および2か月経過前に、脂質プロファイル(総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、およびTC/HDL比)を評価した。データは、独立、両側のt検定によって計算した統計的差異、および平均±標準偏差(SD)(n=2−10)として提示する(GraphPad Prism V5使用)。12週目において、循環血漿中のTC、TG、HDL濃度、およびTC/HDL比は、それぞれ4.6±0.9、11.6±5.9、2.3±1.1mmol/Lおよび2.16±0.62であった。SDラットにおける脂質プロファイルは、それぞれ1.9±0.4、1.2±0.4、1.3±0.2mmol/Lおよび1.45±0.11で有意に低かった。60日間の毎日の低用量および高用量処置は、TCおよびTG濃度に影響を与えなかったが、「善玉の」HDLコレステロールを1.7〜1.8倍(p0.01)増加させ、TC/HDL比を26−32%(p<0.01−0.05)低下させた。
【0108】
[実施例3]
[ズッカー糖尿病肥満ラットにおける組成物3投与後の耐糖能異常の改善]
この試験の目的は、高脂血症で肥満の2型糖尿病ラットモデルにおける組成物2の効果を検討することであった。ズッカー糖尿病肥満ラット(ZDF;Gmi−fa/fa)を、成熟度/性別をマッチさせた通常の健康な非肥満で正常血糖の低脂肪対照のSDラットに対して使用した(Charles River Labsより入手;12週目、359±17対439±13群;n=9−12/群)。組成物3の52対260mg/kg(ヒト相当用量(HED)500および2500mg)のQD強制投与による処置の前、およびその90日後に、耐糖能異常を、経口的ブドウ糖負荷試験(OGTT;夜間絶食の後、2g/kg(ラット体重)のグルコースを単回強制投与)を、180分間グルコメーターストリップ(Accu−Chek Aviva,Roche Diagnostics)を用いて行って評価した(モデルは、地域および国の倫理規則(Formulab high fat 5008(ZDF)対normal 5001(SD)食餌レジメンおよび水の自由摂取)に従って飼育した)。データは、独立、両側のt検定によって計算した統計的差異、および平均±標準偏差(SD)(n=2−10)として提示する(GraphPad Prism V5使用)。
【0109】
12週目において(T0)、グルコースの空腹時循環血漿濃度は、未処置ZDF対SDラットにおいて7.8±2.1対5.0±0.6mmol/L(p<0.0001)であった。非空腹時のZDFおよびSDラットグルコース値は、それぞれ22.0±4.2対8.6±0.6mmol/Lであった。1ヶ月後、ベースライン値は絶食ZDFで1.9倍(p<0.0001)増加したが、絶食SDでは変化がなかった。加齢は、非絶食ラットにおけるグルコース濃度に影響を及ぼさなかった。グルコース負荷は、未処置の絶食ZDFおよびSDにおける血漿グルコース濃度を、それぞれ30および60分後に最大2.5倍(p<0.0001)および1.6倍(p<0.0001)増加させ、180分後に概ね初期値に戻った。16週目において、30日の(T30)処置は、SDラットにおいてはグルコースのプロファイルにも最大上昇にも影響がなかったが、ZDFの処置は、血漿中グルコースの最大上昇を右側にシフトさせ(30分から60分に)、30分後の最大上昇を61−72%(p<0.02)低下させ、かつ組成物3の用量がいずれの場合でもAUCを50−60%(p<0.0001)低下させ、したがって、未処置のグルコース負荷SDラットにおいて測定されたAUCに戻った。20週目において、60日の処置は、いずれの用量でも、耐糖能異常をさらに低減させなかった。処置プロファイルのいずれも、非絶食ZDFまたはSDにおける血漿中および尿中のグルコース濃度(高血糖および糖尿)には影響を及ぼさなかった。これらのデータから、組成物3の短期および低用量長期投与は、重症高血糖症モデルにおける血糖値制御を有意に改善することが分かった。
【0110】
[実施例4]
[中等度高トリグリセリド血症の治療における濃縮治療用リン脂質組成物の安全性と効果の評価のための、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、用量設定、および多施設治験]
カナダ脂質治療ガイドライン(Canadian Lipid Treatment Guidelines)に従って医師による処置を受けた、中等度高トリグリセリド血症を発症している被検体に、濃縮リン脂質を1.0、2.0、または4.0gの用量で12週にわたって与える。有効性の主要項目は、ベースライン値(週1)と処置を行う12週の間での空腹時循環血清トリグリセリド値(TG)をパーセント変化率となる。副次評価項目は、:ベースライン値と6週後および処置の12週間との間での、(1)空腹時血漿TGの絶対的な変化;(2)目標空腹時血漿中TG濃度を達成した被検体の割合(%);(3)空腹時血漿中のLDL−C、VLDL−C、HDL−C、HDL2−C、HDL3−C、総コレステロール、hs−CRP、および非HDLの絶対的な変化;(4)空腹時血漿中のLDL−C、VLDL−C、HDL−C、HDL2−C、HDL3−C、総コレステロール、hs−CRP、および非HDLの濃度の変化の割合(%);(5)算出された比率:(a)総コレステロール:HDL−C;(b)LDL−C:HDL−C;(c)TG:HDL−C;(6)LDL−C関連のパラメータ:(a)粒子数;(b)粒径;(c)酸化;(7)バイオマーカーの空腹時血漿中濃度の絶対的な変化および変化率(%);(a)糖化ヘモグロビン値、(b)アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)、(c)アポリポタンパク質B−100(ApoB−100)、(d)アポリポタンパク質E(ApoE)、(e)リポタンパク質(a)(Lp(a))、(f)アジポネクチン、(g)グルコース、(h)インスリン;(8)算出されたApoB:ApoA−I比率;(9)空腹時血漿リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2活性(Lp−PLA2);(10)HOMA−IR(インスリン抵抗性のホメオスタシスモデル評価:[グルコース(mmol/L)×IRI(マイクロIU/L)/22.5];(11)全EPAおよびDHAの血漿中濃度(PK/PD−25被検体/群);(12)OM3I(オメガ3指数);(13)被検体の遺伝的多型:(a)レシチン−コレステロールアシルトラ ンスフェラーゼ(LCAT)、(b)コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)、(c)スカベンジャー受容体B1(SR−B1)、(d)ATP結合カセット輸送体1(ABCA1)であった。
【0111】
[実施例5]
[濃縮治療用リン脂質組成物単独の、またはスタチンとの併用時の、西洋型の食餌を給餌されたApoE欠損マウスにおける血中脂質濃度の調節およびアテローム性動脈硬化症病変の発達に対する影響]
それぞれApoetmlUnc変異について同型である、体重約18−20gの雄の成体マウス(n=135(15マウス/群)週齢5−6週目)に対して、ビヒクル(水または0.2%−0.5%カルボキシメチルセルロース);組成物3(1,000mg/日、HED);組成物3(2,000mg/日、HED);またはリピトール(20mg/日、HED);または組成物3(1,000mg/日、HED)+リピトール(20mg/日、HED)の(HOW)いずれかを投与する。0ヵ月目、3ヶ月目、または6ヵ月目において、次のものに対して以下の測定値の評価を行う:血中脂質:TC、TGを、LDL、HDL、非HDL、VLDL(0、3、6ヶ月)。(2)大動脈アテローム性動脈硬化症(0、3、6ヶ月):(a)胸部および腹部大動脈を、分離し、脂肪をトリミングし、撮影のためにブラックマトリクス上にレイアウトして固定し、スダンIVまたはオイルレッドOで染色する。(b)血管に対して、コンピュータ画像解析システム(Image ProPlusまたはNIHパッケージソフトウェア)を用いて表面の併発をイメージ化する。データを、群で計算して統計的に解析する。(c)脂質抽出:染色および形態解析の後、大動脈を抽出する(Bligh、Dyer)。(3)赤血球オメガ3指数(0、3、6ヶ月);(4)CRPの循環血漿濃度(0、3、6ヶ月)。
【0112】
[実施例6]
[オメガ3指数についての組成物3とLovaza(登録商標)との比較]
平均体重>375−425の雄の成体(14週)Sprague−Dawley(SD)ラットに、通常のラット固形飼料(diet5075−通常、標準ラット固形飼料)を与えた。被検体/群の数:n=56;n=8ラット/群。投与は、(i)ビヒクル、(ii)組成物352mpk 500mg/日、HED;(iii)組成物3、104mpk 1000mg/日、HED;(iv)組成物3、416mpk 4000mg/日、HED、(v)Lovaza(登録商標)416mpk 4000mg/日、HEDのいずれかで、12週にわたってQD(1日1回朝投与)で行った。結果を図35に示す。
【0113】
[実施例7]
[早期アルツハイマー病における高濃度リン脂質の単独療法試験]
被検体を、濃縮治療用リン脂質組成物1g、魚油(135mg EPA:108mg DHA)1g、またはプラセボ(大豆油)1gのいずれかの1日1回投与を受けるように無作為に割り当てた。主要評価項目は、ベースライン値と24週の処置との間でのNTBの変化とする。神経心理学的テスト・バッテリー(NTB)を用いて、重要な認知の変化をモニタリングし、評価する。次のNTBの9項目を用いて、その被検体についての結果を判定する:(1)ウェクスラー記憶検査、視覚即時再生(スコア範囲、0−18)、(2)ウェクスラー記憶検査、口頭即時再生(スコア範囲、0−24)、(3)レイ聴覚言語性記憶検査(Rey Auditory Verbal Learning, Test;RAVLT)、即時(スコア範囲、0−105)、(4)ウェクスラー記憶検査、数唱(Digit Span)(スコア範囲、0−24)、(5)Controlled Word Association試験(COWAT)、(6)カテゴリー流暢性試験(Category Fluency Test;CFT)、(7)ウェクスラー記憶検査、視覚遅延再生(スコア範囲、0−6)、(8)ウェクスラー記憶検査、口頭遅延再生(スコア範囲、0−8)、および(9)RAVLT、遅延(スコアの範囲は、0−30)(ハリソンら、2007)。RAVLT遅延評価基準は遅延再生と認識能項目から構成され、これらを合計して、0−30の範囲のスコアを算出し、被検体の能力について9種の評価基準を算出する。副次評価項目には、処置の24週目におけるNPIおよびDADの変化がある。精神症候評価尺度質問票(NPI)は、認知症において一般的な12項目の精神神経障害を評価する:即ち、妄想、幻覚、興奮、不快感、不安、無気力、神経過敏、多幸感、脱抑制、異常な運動行動、夜間の行動障害、および食欲摂食異常である。認知症障害評価表(DAD)は、認知症における手段的基本日常生活動作(衛生、着衣、脱衣、排泄、摂食、食事の準備、電話、外出、金銭管理、通信、服薬、余暇と家事)を評価するために使用される、介護者用の質問票手段である。また、NPIは、各精神神経障害によって生じる介護者の苦痛の量も評価する。血液を採取し、EPA、DHA、およびリン脂質の値を測定する。
【0114】
[等価形態]
当業者は、通常行う程度を超える実験を行うことなく、本明細書に具体的に記載した特定の実施形態の等価形態が多数あり得ることを認識または確認できるであろう。そのような等価形態は、請求項の記載範囲を包含されることが想定されている。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年10月29日出願の米国仮出願第61/256,106号の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引用により本明細書の一部とする。本明細書に引用するすべての特許、特許出願、および文献は、それらの全内容を引用により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、濃縮治療用組成物に関する。本発明は、特に、疾病の治療または予防に有用な濃縮治療用リン脂質組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝的形質が、西洋型の食事およびライフスタイルに結びついて、心血管疾患/メタボリックシンドローム(MetS)は世界的に増加の一途をたどってきた。心血管代謝症候群とは、中心性肥満、高血圧、耐糖能異常、高血糖、脂質異常症を含む心血管リスク因子のクラスタをさす。脂質異常症は、アテローム性動脈硬化症および、関連する心血管疾患(CVD)(国の死因のトップである)をもたらす主要な修正可能な危険因子である。
【0004】
[心血管疾患]
心血管疾患は、米国民の3人に1人がその生涯のうちに罹患し、毎年発生する死亡者のほぼ3分の1を占めている(Rosamond W,ら,Circulation,115,e69−el71,(2007))。心血管疾患は、心臓や血管に悪影響を及ぼす疾患として定義されている。
【0005】
スタチンは、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−Cまたは「悪玉コレステロール」)を推奨目標レベルに低下させることに主に焦点をあてる、CVDのリスクのある被検体のための第一選択療法と考えられている。しかし、スタチンは、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−Cまたは「善玉コレステロール」)を上昇させる効果はほとんどなく、現在では心血管疾患を発症させる主なリスク因子であると認識されている。HDL−Cを上昇させる処置の選択肢は非常に限られていて、顔面紅潮を引き起こすこと、肝酵素の異常を引き起こすことが報告されているNiaspan(登録商標)(ナイアシンのブランド品)や、LDL−Cを40%増加させ、肝酵素、血液学的変化、胆石、膵炎、ならびにミオパシーの有意な増加を引き起こすTricor(登録商標)(フェノフィブラートのブランド品)などが挙げられる。処置の選択肢のなかには、血漿トリグリセリドを低下させるものがあるが、HDL−Cに関しては無視できる程度の効果しかない(Lovaza(登録商標))。他の治療の選択肢としてHDL−Cを上昇させるものもあるが、トリグリセリドに関しては効果が小さい。
【0006】
他にもLDL、TGに悪影響を及ぼさず、高血圧を引き起こすことなく、HDL−C(善玉コレステロール)を増加させる試みがなされたが成功していない。例えば、トルセトラピブは、HDLレベルを上昇させるとみられたが、TGおよびLDLに影響を及ぼさなかった。しかし、トルセトラピブは、第III相試験において重度の高血圧症および高い死亡率を生じた。総コレステロールを低下させることについての進歩にもかかわらず、脂質異常ならびに他の重篤な副作用が依然としてはびこっている。脂質異常症の管理における治療格差は、CVDの上位5つの主要な修正可能な危険因子の1つと考えられ、重要な未だ対処されていない治療上のニーズを表している。ほとんどの治療法は肝臓での固有のLDL−C合成のみを標的としているが、LDL−Cを増加させずにHDL−Cを増加させながら、さらにトリグリセリドを低減させる他の治療法が必要とされている。
【0007】
[神経発達障害および神経変性疾患]
神経発達および神経変性の疾患/障害および神経系平衡失調(神経伝達物質の平衡失調)は多数の人々に影響を及ぼし、運動、感覚、または認知系のニューロンの選択的および概ね対称的な消失によって特徴付けられる慢性の進行性の神経障害として定義されている。進行性の神経変性疾患の1つであるアルツハイマー病(AD)は、不可逆的に進行し、徐々に進行する認知低下、行動や性格の変化によって特徴付けられる。これらの症状は、神経化学変化、神経死滅、および神経間結合の破壊に関連している。多くの場合、短期記憶の喪失は最初の徴候で、その後複数の機能を含む認知の障害が続く。ADと軽度認知障害の初期段階は、記憶喪失や認知機能障害の軽度の形態として特徴付けられ、その後認知症およびADの発症が生じ得る。これらの可能な先行する状態を有する被験体における認知機能の一層の低下の予防は、ADの可逆的回復が不可能であることを考えると極めて重要である。
【0008】
米国において、現在約510万人のアルツハイマー病(AD)患者が存在すると推定され(アルツハイマー病協会、2007)、この数値は2050年までに1320万人に達すると予想されている(Hebertら,2003)。アルツハイマー病は、米国における死因のなかで全年齢層では7番目、65歳以上については5番目にランクされている(国立健康統計センター、2004)。カナダでは、65歳以上でADを罹患しているのは28万人と推定されており、2031年までには75万人が罹患することになると予想されている(カナダアルツハイマー協会、2006)。北米全体の70歳以上の10%が早期ADまたは軽度認知障害を罹患していると推定される。
【0009】
アルツハイマー病は、2つの主要な病理学的特徴:異常タンパク質τ(タウ)により形成される細胞内の神経原線維のもつれ;およびβ−アミロイドペプチド(Αβ)によって形成される細胞外神経突起斑によって特徴付けられる(Kuoら,1996)。Αβ42の過剰産生は遺伝的に誘導されるが、完全な症候性ADを発症するためには環境リスク要因が必要である(Grantら,2002)。これらのリスク因子のうち、ドコサヘキサエン酸(DHA)の低下は、ADのための最も重要な食事上のリスク因子の1つである(Morrisら,2005)。学習、記憶およびADとの関連におけるDHAの影響の理由は不明であるが、シナプスにおけるその損失から生じている可能性がある(Montineら,2004)。シナプスには、通常はDHAが豊富に存在し(Salemら,2001)、シナプス後伝達および神経保護のために特に重要な役目を果たしている(Bazan,2003)。動物モデルでの研究では、脳のn−3系脂肪酸の含有量は、食事摂取量と高齢化により大きく影響を受けることが一貫して示されている(Favrereら,2000;Youdimら,2000;CalonおよびCole,2007)。ただし、一部の報告は、高濃度のDHAは、神経疾患患者において有害な影響を与えると主張している。
【0010】
[オメガ3脂肪酸および炎症]
いくつかの動物実験では、増加したDHAの摂取量は、海馬におけるアセチルコリンとその誘導体であるニューロプロテクチンD1のレベルを増加させ、これによって細胞死が減少することが判明している(Aidら,2005;Lukiwら,2005)。老齢マウスで行われた研究では、DHA摂取が記憶能力を高めることが示された(Limら、2001)。別のアルツハイマー病のマウスモデルでは、食事摂取DHAが減少すると、樹状突起に局在していた酸化亢進に関連するシナプス後タンパク質が消失することが示された。ただし、DHA−制限されたマウスのグループがDHAを与えられた場合、そのマウスは、DHA摂取が樹状突起の病変に対してそれらを保護していることの兆候を示した。このことはDHAがアルツハイマー病の認知障害を予防するために有用であることを意味している(Calonら,2004)。
【0011】
いくつかの疫学的研究は、認知症と認識機能障害を減少させる、魚摂取(オメガ3脂肪酸の直接のソース)量の増加に関連する保護効果を示している(Kalmijinら,1997,Barberger−Gateauら,2002;Morrisら2003)。最近では、1つの大規模な無作為化二重盲検プラセボ対照試験により、1.6gのDHAと0.7のEPAがADのリスクを低減させるのに有益であり得ることが見出された。(Freund−Leviら,2006)。さらに、オメガ3脂肪酸の食餌性栄養補給が、気分、行動、うつ病、および認知症など、さまざまな精神状態で有益であり得ることを示す証拠が集まりつつある(Bourreら,2005;PeetおよびStokes,2005;Stollら,1999)。
【0012】
オメガ3脂肪酸の抗炎症作用が広く研究され、いくつかの慢性炎症性疾患について肯定的な結果が得られている。C反応性タンパク質(CRP)は炎症プロセスの間に劇的に増加し、一般的に炎症のマーカーとして測定されるタンパク質である。オメガ3多価不飽和脂肪酸の摂取量の増加は、CRPレベル上昇の有症率の低下と関連している。結腸炎の動物モデルは、オメガ3脂肪酸の天然の源である魚油が、結腸の損傷や炎症を減少させることが示している。炎症性大腸疾患(IBD)を罹患している被験体に魚油を補給すると、炎症性メディエーターのレベルが調節されることが判明しており、これは潰瘍性大腸炎の寛解をもたらし、それを維持するために有益であり得る。関節リウマチ(RA)および他の炎症性疾患の管理においては、副作用のために、サリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬の使用が制限される。臨床試験では、タラ肝油を補給したRAを罹患する被験者の39パーセントが、日常でのステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)の必要を30%超削減できたことが示された。また、オメガ3脂肪酸は、不整脈による突然死のリスクを軽減するためにも使用されている。
【0013】
さらに、オメガ3脂肪酸は、正常血糖値の男性および肥満症の個体におけるインスリン感受性と耐糖能を改善することが示されている。オメガ3脂肪酸はまた、炎症性表現型をもつ肥満と非肥満の被検体におけるインスリン抵抗性を改善することが示されている。脂質、グルコース、およびインスリンの代謝が、オメガ3脂肪酸による治療により、肥満で高血圧の被験体において改善されることも示されている。
【0014】
オメガ3脂肪酸は、イカ、魚、オキアミなどの海洋生物から得ることができ、栄養補助食品として販売されている。しかし、体内でオメガ3脂肪酸の摂取は効率的ではなく、これらの原料油には、LDL−Cの増加などの有害な副作用を引き起こすことが知られているトリグリセリドやコレステロールなどの他の物質が含まれている。特定の魚油は、医薬品グレードのオメガ3脂肪酸エチルエステルとして開発されている。そのようなオメガ3脂肪酸エチルエステルの1つは、ブランド名Lovaza(登録商標)で現在販売されている。研究の結果、Lovaza(登録商標)には被検体の血漿トリグリセリドレベルを減少させ得ること判明しているが、Lovaza(登録商標)は、善玉コレステロール(HDL−C)を上昇させることには無視できる程度の効果しかない。AMR101は、現在臨床試験段階にある、DHAはないといってよい程度しか含まないEPAをベースにした、別のオメガ3脂肪酸エチルエステルである。AMR101もトリグリセリドを低減させるとみられるが、HDL−Cを上昇させる点では無視できる程度しか効果がない。
【0015】
オメガ3脂肪酸のリン脂質組成物は、米国特許出願第2004/0234587号に開示されている。このリン脂質組成物は、リン脂質とエステル結合しているオメガ3脂肪酸を有する。このリン脂質組成物は、リン脂質濃度が約40%(w/w組成物)であり、高濃度のトリグリセリド(約45%)および遊離脂肪酸(約15%)含むことが報告されている。被験体で試験すると、この組成物はトリグリセリドの血漿中濃度を低下させることについてはほとんど効果が挙げられないことが実証された(11%未満の低下)。
【0016】
遊離脂肪酸および脂質(オメガ3脂肪酸とリン脂質を含む)を含む海洋生物油組成物は、国際公開第2000/23546号に開示されているが、該組成物が、ジグリセロールリン酸にエステル結合されたオメガ3脂肪酸、および非常に高濃度のトリグリセリドと遊離脂肪酸を有するものは開示しておらず、これらの理由から、該組成物は上記の米国特許出願第2004/0234587号に開示された組成物と同程度までトリグリセリドを減らすことは期待できない。
【0017】
したがって、疾患を治療または予防するために有用な、新しい形態のオメガ3脂肪酸が必要とされている。本明細書には、新規な濃縮治療用リン脂質組成物ならびにそれを含む医薬用組成物、およびそれらの使用方法が開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、一態様では、濃縮治療用リン脂質組成物が開示され、該組成物は、
式I
【化1】
の化合物を含み、
前記組成物における式Iの化合物のそれぞれについて、
各R1は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
各R2は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
前記組成物における式Iの化合物のそれぞれにおけるR1およびR2の少なくとも1つは、脂肪酸であり、
各Xは、−CH2CH2NH3、−CH2CH2N(CH3)3、または
【化2】
から独立して選択され、
前記組成物における式Iの化合物の総量は、45%(w/w)乃至約99%(w/w)の濃度である。
【0019】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約45%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約50%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約60%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約66%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である。
【0020】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約70%(w/w(リン脂質/全組成物))と約99%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約80%(w/w(リン脂質/全組成物))と約98%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約85%(w/w(リン脂質/全組成物))と約95%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、約90%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である。
【0021】
いくつかの実施形態では、R1は、一価不飽和脂肪酸である。他の実施形態では、R1は、多価不飽和脂肪酸である。いくつかの実施形態では、R2は、一価不飽和脂肪酸である。他の実施形態では、R2は、多価不飽和脂肪酸である。他の実施形態では、多価不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸である。さらに他の実施形態では、R1およびR2の両方は、それぞれ独立してオメガ3脂肪酸から選択される。R1およびR2の少なくとも1つがオメガ3脂肪酸である場合、式Iの化合物を含む濃縮治療用リン脂質組成物は、オメガ3:リン脂質(OM3:PL)である。
【0022】
他の実施形態では、R1は、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。他の実施形態では、R2は一価不飽和脂肪酸であり、R1はDHAである。他の実施形態では、R2は多価不飽和脂肪酸であり、R1はDHAである。他の実施形態では、R2はオメガ3脂肪酸であり、R1はDHAである。さらに別の実施形態では、R2はEPAであり、R1はDHAである。さらに別の実施形態では、R2はDHAであり、R1はDHAである。
【0023】
他の実施形態では、R1は、エイコサペンタエン酸(EPA)である。他の実施形態では、R2は一価不飽和脂肪酸であり、R1はEPAである。他の実施形態では、R2は多価不飽和脂肪酸であり、R1はEPAである。他の実施形態では、R2はオメガ3脂肪酸であり、R1はEPAである。さらに別の実施形態では、R2はDHAであり、R1はEPAである。さらに別の実施形態では、R2はEPAであり、R1はEPAである。
【0024】
別の実施形態では、R2はDHAである。他の実施形態では、R1は一価不飽和脂肪酸であり、R2はDHAである。他の実施形態では、R1は多価不飽和脂肪酸であり、R2はDHAである。他の実施形態では、R1はオメガ3脂肪酸であり、R2はDHAである。
【0025】
他の実施形態では、R2はEPAである。他の実施形態では、R1は一価脂肪酸であり、R2はEPAである。他の実施形態では、R1は多価不飽和脂肪酸であり、R2はEPAである。他の実施形態では、R1はオメガ3脂肪酸であり、R2はEPAである。
【0026】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、式IのR2の位置に主にDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物が、EPAより多くDHAを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、60%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、70%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、80%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、90%超のDHAを有する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物は、95%超のDHAを有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物において、リン酸とエステル結合した脂肪酸に加えて遊離脂肪酸が存在する。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物において、遊離脂肪酸が実質的に存在しない(0%遊離脂肪酸(FFA)とも表現する)。
【0028】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAとEPAの総量の比が、約1:1と1:0.1との間である。いくつかの実施形態では、該比は、約1:0.7と1:0.3との間である。他の実施形態では、該比は、約1:0.5である。
【0029】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物の式Iの前記化合物におけるEPAとDHAの総量の比が、約1:1と1:0.1との間である。いくつかの実施形態では、該比は、約1:0.7と1:0.3との間である。他の実施形態では、該比は、約1:0.5である。
【0030】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるオメガ3(OM3)脂肪酸の総量は、約20%と約50%との間である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるオメガ3(OM3)脂肪酸の総量は、約30%と約45%との間である。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるオメガ3(OM3)脂肪酸の総量は、約40%である。
【0031】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAの総量は、約5%と約20%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAの総量は、約10%と約15%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるDHAの総量は、約14%である。
【0032】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるEPAの総量は、約10%と約30%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるEPAの総量は、約15%と約25%との間である。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物におけるEPAの総量は、約22%である。
【0033】
いくつかの実施形態では、Xは、−CH2CH2NH3である。他の実施形態では、Xは、−CH2CH2N(CH3)3である。いくつか実施形態は、Xは、
【化3】
である。
【0034】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、−CH2CH2N(CH3)3(ホスファチジル−N−トリメチルエタノールアミンとも称する)を含むリン脂質を主に含む。
【0035】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、抗酸化物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記抗酸化物質は、カロテノイドである。いくつかの実施形態では、前記抗酸化物質は、プロビタミンAである。いくつかの実施形態では、前記抗酸化物質は、フラボノイドである。他の実施形態では、前記フラボノイドは、ナリンギン、ナリンゲニン、ヘスペレチン/ケンフェロール、ルチン、ルテオリン、ネオヘスペリジン、ケルセチンから選択されたものである。他の実施形態では、前記フラボノイドは、
【化4】
である。
【0036】
いくつかの実施形態では、該フラボノイドの濃度が、約1mg/kg(w/w(組成物))と、約20mg/kg(w/w(組成物))との間である。他の実施形態では、該フラボノイドの濃度が、約10mg/kg(w/w(組成物))超である。
【0037】
別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、2000mg/kg(w/w(組成物))超の濃度のアスタキサンチンを含む。さらに他の実施形態では、アスタキサンチンの濃度は、約2000mg/kg(w/w(組成物))と約5500mg/kg(w/w(組成物))との間である。
【0038】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約22%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約15%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約10%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約5%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約1%(w/w(組成物))の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、1%(w/w(組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、0%(w/w(組成物))の濃度の遊離脂肪酸を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約1%(w/w)と約20%((w/w)との間の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約5%((w/w)と約17%((w/w)との間の濃度の遊離脂肪酸を有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約10%((w/w)と約15%((w/w)との間の濃度の遊離脂肪酸を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約0%(w/w)と約30%((w/w)との間の濃度のトリグリセリドを有する。別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約5%(w/w)と約20%((w/w)との間の濃度のトリグリセリドを有する。さらに他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、約10%(w/w)と約15%((w/w()との間の濃度のトリグリセリドを有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約15%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約10%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約5%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約1%の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、1%未満の濃度のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、約0%の濃度のトリグリセリドを有する。
【0042】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも50%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも15%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも9%がDHAであり、少なくとも0.1%(w/w)がアスタキサンチンである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも66%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも20%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAであり、少なくとも0.4%(w/w)がアスタキサンチンである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも90%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも22%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAであり、少なくとも0.4%(w/w)がアスタキサンチンである。
【0043】
他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも50%(w/w(組成物))含み、脂肪酸分の少なくとも15%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも9%がDHAである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも66%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも20%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも70%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも22%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAである。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物が、式Iの化合物を少なくとも90%(w/w)含み、脂肪酸分の少なくとも22%がEPAであり、脂肪酸分の少なくとも12%がDHAである。
【0044】
一態様では、心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防に有用な濃縮治療用リン脂質組成物が開示され、該組成物は、約66%(w/w(リン脂質/全組成物)の濃度の式の化合物と、6%(w/w(遊離脂肪酸/全組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、0%の濃度のトリグリセリドとを含む。いくつかの実施形態では、1gの前記濃縮治療用リン脂質組成物が、約387mgの総量のオメガ3(OM3)脂肪酸と、約5mgのアスタキサンチンとを含み、EPAは約215mg、DHAは約136mgである。
【0045】
一態様では、神経変性疾患および神経発達障害の治療および予防に有用な濃縮治療用リン脂質組成物が開示され、該組成物は、約70%(w/w(リン脂質/全組成物)の濃度の式の化合物と、約0%(w/w(遊離脂肪酸/全組成物))の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、約0%の濃度のトリグリセリドとを含む。
【0046】
一態様では、本発明はその一部において、濃縮治療用リン脂質組成物が、LDL−C値を上昇させることなく、血漿HDL−C値とともに血漿トリグリセチド値を調節するのに有用であるという予想外の驚くべき発見に基づいている。この予想外の驚くべき発見は、トリグリセチド値の上昇、LDL−C値の上昇、およびHLD−C値の低下に関連する疾患の治療または予防に有用である。そのような疾患または疾病としては、以下に限定されないが、心血管代謝疾患/メタボリック症候群(MetS)、神経変性疾患および神経発達障害、および炎症性疾患などが挙げられる。
【0047】
別の態様では、心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防方法であって、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、前記心血管代謝疾患は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈性心臓病(頸動脈疾患)(CHDまたはCAD)、急性冠症候群(ACS)、心臓弁膜症、大動脈弁および僧帽弁疾患、不整脈/心房細動、心筋症、心不全、狭心症、急性心筋梗塞(AMI)、高血圧、起立性低血圧、ショック状態、塞栓症(肺および静脈)、心内膜炎、動脈、大動脈とその分枝、末梢血管系の疾患(末梢動脈疾患、PAD)、川崎病、先天性心疾患(心臓血管異常)、および脳卒中(脳血管疾患)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高血圧、心不全、不整脈、低HDL血症、高LDL血症、安定狭心症、冠動脈性心疾患、急性心筋梗塞、二次心筋梗塞予防、心筋症、心内膜炎、2型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高コレステロール血症、脳卒中、高脂血症、高リポタンパク血症、慢性腎臓病、間欠性跛行、高リン血症、オメガ3系脂肪酸欠乏、リン脂質欠乏、頸動脈アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、糖尿病性腎症、HIV感染における高コレステロール血症、急性冠症候群(ACS)、非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD/NASH)、動脈閉塞性疾患、脳のアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脳血管障害、心筋虚血、血管内血栓形成に至る凝固障害、および糖尿病性自律神経障害から選択されたものである。いくつかの事例では、上記の心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防方法が、濃度が66%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃縮治療用リン脂質組成物を使用し得る。
【0048】
別の態様では、認識力および/または認知の疾病、疾患または障害(記憶、集中力、学習(障害))を治療、予防、または改善し、または神経変性疾患を治療または予防する方法であって、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、前記認知の疾病、疾患または障害は、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症/自閉症スペクトラム障害(ASD)、失読症、加齢に伴う記憶障害および学習障害、健忘症、軽度認知障害、非認知症の認知障害、発病前アルツハイマー病、アルツハイマー病、てんかん、ピック病、ハンチントン病、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、発病前認知症症候群、レビー小体型認知症、認知症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、筋萎縮性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、脳波の強度および/または脳のグルコース利用に影響を与える状態、ストレス、不安症、集中および注意障害、気分の低下、認知および精神の一般健康状態、神経発達障害および神経変性疾患、ホルモン障害、神経系平衡失調、またはこれらの任意の組み合わせから選択されたものである。特定の実施形態では、前記認知の疾患は、記憶障害である。いくつかの事例では、上記の認識力および/または認知の疾病、疾患または障害(記憶、集中力、学習(障害))を治療、予防、または改善する方法、または神経変性疾患を治療または予防する方法が、濃度が70%超(w/w(リン脂質/組成物))の濃縮治療用リン脂質組成物を使用し得る。
【0049】
別の態様では、炎症または炎症性疾患の防止、予防、または治療のための方法であって、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、前記炎症または炎症性疾患は、臓器移植拒否反応;臓器移植(心臓、肺、肝臓、および腎臓の移植を含むがこれらに限定されない)に起因する再酸素化傷害(Gruppら,J.Mol.Cell Cardiol.31:297−303(1999)参照);関節の慢性炎症性疾患(関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および骨吸収の増加に関連する骨疾患を含む);回腸炎、潰瘍性大腸炎(UC)、バレット症候群、クローン病(CD)などの炎症性腸疾患(IBD);喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの炎症性肺疾患;角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎と眼内炎を含む眼の炎症性疾患;歯肉炎および歯周炎を含む、歯肉の慢性炎症性疾患;尿毒症の合併症、糸球体腎炎。およびネフローゼを含む腎臓の炎症性疾患;硬化性皮膚炎、乾癬、および湿疹などの皮膚の炎症性疾患;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連の神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、てんかん、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性または自己免疫性脳炎、および子癇前症などの中枢神経系の炎症性疾患;慢性肝障害、脳や脊髄の外傷、および癌から選択されたものである。前記炎症性疾患は、グラム陽性またはグラム陰性ショック、出血性またはアナフィラキシーショック、または炎症性サイトカインに応答した癌の化学療法によって誘発されるショック状態(例えば、炎症性サイトカインに関連するショック状態)に代表される人体の全身性炎症であり得る。そのようなショック状態は、例えば癌の治療として投与される化学療法剤によって誘発され得る。他の疾患としては、うつ病、肥満、アレルギー性疾患、急性心血管系イベント、筋消耗疾患、および癌性悪液質などが挙げられる。また、外科手術や外傷によって生ずる炎症も、濃縮治療用リン脂質組成物で治療し得る。
【0050】
本発明の詳細は、以下の説明に記載されている。本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、本明細書には典型的な方法および材料が記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲の記載から明らかになろう。明細書および添付の特許請求の範囲の記載において、文脈が明確に異なることを示さない限り、単数形の表現は複数の概念も含まれている。別段の定義がされない限り、本発明で使用されるすべての科学技術の専門用語は、本発明の技術分野に属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で引用したすべての特許および刊行物は、引用によりその内容全体を本明細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】濃縮治療用リン脂質組成物を製造するためのプロセスの流れ図を示す。
【図1B】濃縮治療用リン脂質組成物を製造するためのプロセスの流れ図を示す。
【図1C】超臨界CO2抽出装置の概略図を示す。
【図2】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中トリグリセリド濃度を示す。
【図3】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度を示す。
【図4】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度のパーセンテージを示す。
【図5】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中LDL−コレステロール濃度を示す。
【図6】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中LDL−コレステロール濃度のパーセンテージを示す。
【図7】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中NEFA濃度を示す。
【図8】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中グルコース濃度を示す。
【図9】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中リン脂質濃度を示す。
【図10】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの循環血漿中ALT濃度を示す。
【図11】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの肝臓総コレステロール濃度を示す。
【図12】組成物3で処理されたC57BL/6マウスの肝臓トリグリセリド濃度を示す。
【図13】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの循環血漿中トリグリセリド濃度を示す。
【図14】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度を示す。
【図15】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの循環血漿中HDL−コレステロール濃度のパーセンテージを示す。
【図16】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの肝臓総コレステロール濃度を示す。
【図17】組成物3で処理されたLDLr KOマウスの肝臓トリグリセリド濃度を示す。
【図18】組成物3で処理されたApoA−1 CET Tgマウスの循環血漿中トリグリセリド濃度を示す。
【図19】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中総コレステロール濃度を示す。
【図20】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中総コレステロール濃度を示す。
【図21】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中HDL/LDL濃度を示す。
【図22】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットの循環血漿中総コレステロール/HDL濃度を示す。
【図23】成体雄SD、ZDF、SHR、およびJCR:LAラットのプロトロンビン時間を示す。
【図24】28日間、組成物3で処理されたZDF雄ラットにおけるOGTTの曲線下面積データを示す。
【図25】28日間、組成物3で処理されたZDF雄ラットにおけるOGTTの曲線下面積データを示す。
【図26】28日間、組成物3で処理されたSD雄ラットにおけるOGTTの曲線下面積データを示す。
【図27】28日間、組成物3で処理されたZDF雄ラットにおけOGTTの曲線下面積データを示す。
【図28】年齢をマッチさせた対照と比較した、雄ZDFラットにおける血漿中総コレステロールに対する組成物3の効果を示す。
【図29】年齢をマッチさせた対照と比較した、雄ZDFラットにおける血漿中HDL−コレステロールに対する組成物3の効果を示す。
【図30】年齢をマッチさせた対照と比較した、雄ZDFラットにおける血漿中トリグリセリドに対する組成物3の効果を示す。
【図31】雄ZDFラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図32】雄ZDFラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図33】雄SDラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図34】雄SDラットにおける耐糖能異常に対する組成物3の効果を示す。
【図35】オメガ3指数に対する組成物3およびLovaza(登録商標)の比較効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
濃縮治療用リン脂質組成物は、代謝異常、心血管疾患、神経発達障害および神経変性疾患、および炎症性疾患の治療において驚くべき効果を発揮するという、予想外の発見がなされた。
【0053】
[定義]
以下の定義は、濃縮治療用リン脂質組成物と関連して使用されるものである。
【0054】
本明細書において使用される「濃縮治療用リン脂質組成物」および「濃縮治療用リン脂質組成物群」という用語は、式Iの化合物を含む濃縮された治療用のリン脂質組成物をさす。
【0055】
本明細書中で使用される、冠詞「a」、「an」は、冠詞の文法上目的とする単数個の意ではなく1または複数(即ち、少なくとも1つ)の意をあらわす。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2以上の要素を意味する。
【0056】
「および/または」という用語は、本明細書中で使用されて、特に断りがない限り、「および」または「または」のいずれかを意味する。
【0057】
用語「約」は、本明細書中で数値の記載とともに使用されるとき、記載される数値と当該数値の±5%を含めた大きさを意味する。例えば、約80%という表現は、80%と80%の±5%、即ち76%乃至84%を意味する。本明細書で使用される数値表現「約0%」は、検出可能な量が、1000分の1部未満であることを意味する。
【0058】
本明細書で使用される用語「脂肪酸」または「脂肪酸残留物」は、飽和または不飽和である、長い非分岐脂肪族鎖を有するカルボン酸を意味する。飽和脂肪酸の一般式は、CnH2n+1COOHである。飽和脂肪酸の例としては、以下に限定されないが、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘネイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、ヘナトリアコンタン酸、ドトリアコンタン酸、トリトリアコンタオン酸、テトラトリアコンタン酸、ペンタトリアコンタン酸、ヘキサトリアコンタン酸などが挙げられる。不飽和脂肪は、脂肪酸鎖において1個または複数個の二重結合が存在している脂肪や脂肪酸である。二重結合が1つ含まれている場合に脂肪分子は一価不飽和であり、二重結合が複数含まれている場合、脂肪分子は多価不飽和である。不飽和脂肪酸の例としては、以下に限定されないが、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびドコサペンタエン酸などが挙げられる。
【0059】
「被検体」とは哺乳動物、例えばヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、またはサル、チンパンジー、ヒヒ、およびアカゲザルなどの非ヒト霊長類である。
【0060】
代表的な「医薬上許容される塩」としては、例えば水溶性および水不溶性の塩であって、酢酸塩、アムソン酸塩(4,4−ジアミノ−2,2−ジスルホン酸)、ベンゼンスルホナート、ベンゾナート、重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、カルシウム・エデト酸塩、カムシレート(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシレート(edisylate)、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマール酸塩、グルセプテート(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコロイルアルサニレート(glycoloylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、マグネシウム、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メチルブロミド、メチルナイトレート、メチルサルフェート、ムケート(mucate)、ナプシレート(napsylate)、硝酸塩、N−メチルアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエート、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモエート(1,1−メテン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトエエート、エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、次サリチル酸塩、スラメート(suramate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート(teoclate)、トシラート、トリエチオジド(triethiodide)および吉草酸塩などが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される「代謝異常」という用語は、脂質異常症を含む疾患、疾病、および症候群をさし、代謝異常、代謝疾患、およびメタボリック症候群という用語は、本明細書において区別しないで用いられる。
【0062】
疾病または疾患の治療または予防のために有用な濃縮治療用リン脂質組成物の量を記載するために使用されるとき、「治療上有効な量」は、その特定の有効な量に関連する疾病または疾患に関して有効な量をさす。
【0063】
本明細書において使用される「担体」という用語は、担体、賦形剤および希釈剤を包含し、1つの臓器または身体の一部から他の臓器または身体の一部への薬剤を移動または輸送に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、またはカプセル化材料などの材料、組成物またはビヒクルを意味する。
【0064】
被検体に関する「治療」という用語は、その被検体の疾患の少なくとも1つの症状を改善することをさす。治療は、疾患を治癒、改善、または少なくとも部分的に寛解させることであり得る。
【0065】
用語「疾患(障害)」は、本明細書中で使用されるとき、特に断らない限り、用語、疾病、状態、または病気と同じ意味で、それらと区別しないで用いられる。
【0066】
本明細書中で用いられる用語「投与する」、「投与すること」、または「投与」とは、
化合物または化合物の医薬上に許容される塩、または組成物を被検体に対して直接投与することか、あるいは被検体の体内で等量の有効な化合物を形成できる化合物のプロドラッグ誘導体もしくは類似体または化合物もしくは組成物の医薬上許容される塩を被検体に対して直接投与することのいずれかをさす。
【0067】
[濃縮治療用リン脂質組成物の製造方法]
濃縮治療用リン脂質組成物は、当業者に公知の任意の方法によって作製または製造することができる。例えば、油を含むリン脂質を、天然の供給源から単離(米国特許出願公開第2004/0234587号、同第2009/0074857号、同第2008/0274203号を参照。これらの開示内容は引用によりその全体を本明細書の一部とする)し、次にそれを処理することができる。あるいは、図1Aに概要を示すプロセスに従えば、バルク原料のオキアミ油が得られ、これをさらに処理することができる。さらに、これらの油を含むリン脂質を向流超臨界C02抽出を用いて(Lucien,F.P.ら,Australas Biotechnol.1993,3,143−147)処理して組成物を濃縮し、本明細書に記載する濃縮治療用脂質組成物を作り出すことができる(図1B参照)。例えば、70℃、30MPa、C02/油比72での向流超臨界C02抽出を用いて、バルク原料のオキアミ油から、遊離脂肪酸の一部とともに、トリグリセリドのような特定の生体分子をすべて除去することができる(図1B参照)。バルク原料オキアミ油からTGと遊離脂肪酸が除去されるにつれて、リン脂質の濃度が増加する。このプロセスによってトリグリセリド(TG)が除去された場合、リン脂質組成物は、約66%の濃度(w/w(リン脂質/組成物))となり、5%未満の遊離脂肪酸(w/w)を含むことになる。このプロセスによって遊離脂肪酸(FFA)がさらに除去された場合、濃縮リン脂質組成物は、約70%〜約90%の濃度(w/w(リン脂質/組成物))となり、1%未満のTGおよび約0%のFFAを含むことになる。例えばイカや青ムール貝などの他の水生および/または海洋バイオマスを、出発材料として用いてもよい。追加の成分は、処理の前、処理中、または処理後に加えることができる。あるいは、リン脂質は合成することができ、一般的な合成方法は、いくつかあるもののうち、米国特許第7,034,168号明細書(引用によりその全内容を本明細書の一部とする)に記載されている手順があげられる。
【0068】
[濃縮治療用リン脂質組成物の使用方法]
本明細書において、循環血漿中のトリグリセリド濃度、LDL−コレステロール濃度、総コレステロール濃度、およびNEFA濃度を低下させる方法が開示され、該方法は、それを必要とする被検体に対して本発明の化合物を有効な量投与するステップを含む。
【0069】
また、血漿中のHDL−コレステロール濃度および肝臓のトリグリセリドおよび総コレステロール濃度を高める方法が開示され、該方法は、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を有効な量投与するステップを含む。
【0070】
別の態様では、LDLを増加させるリスクを生じることなくTGを低減させる方法が開示され、該方法は、それを必要とする被検体に対して濃縮治療用リン脂質組成物を有効な量投与するステップを含む。
【0071】
また、被検体における代謝異常、または代謝性疾患の症状を防止、予防、または治療するための方法が提供され、該方法は、それを必要とする被検体に対して有効な量の濃縮治療用リン脂質組成物を投与するステップを含む。そのような疾患の例としては、以下に限定されないが、アテローム性動脈硬化症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高血圧、心不全、不整脈、低HDL血症、高LDL血症、安定狭心症、冠動脈性心疾患、急性心筋梗塞、二次心筋梗塞予防、心筋症、心内膜炎、2型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高コレステロール血症、脳卒中、高脂血症、高リポタンパク血症、慢性腎臓病、間欠性跛行、高リン血症、頸動脈アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、糖尿病性腎症、HIV感染における高コレステロール血症、急性冠症候群(ACS)、非アルコール性脂肪性肝疾患、動脈閉塞性疾患、脳のアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脳血管障害、心筋虚血、および糖尿病性自律神経障害などが挙げられる。
【0072】
また、被検体における炎症または炎症性疾患の防止、予防、または治療のための方法が提供される。該炎症は、炎症性疾患に関連するものであり得る。炎症性疾患は体組織に炎症が存在する場合に生じ得る。これらには、局所的炎症反応および全身性炎症が含まれる。そのような疾患の例として、以下に限定されないが、臓器移植拒否反応;臓器移植(心臓、肺、肝臓、および腎臓の移植を含むがこれらに限定されない)に起因する再酸素化傷害(Gruppら,J.Mol.Cell Cardiol.31:297−303(1999)参照);関節の慢性炎症性疾患(関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および骨吸収の増加に関連する骨疾患を含む);回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、クローン病などの炎症性腸疾患;喘息、成人呼吸窮迫症候群、および慢性閉塞性気道疾患などの炎症性肺疾患;角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎と眼内炎を含む眼の炎症性疾患;歯肉炎および歯周炎を含む、歯肉の慢性炎症性疾患;尿毒症の合併症、糸球体腎炎。およびネフローゼを含む腎臓の炎症性疾患;硬化性皮膚炎、乾癬、および湿疹などの皮膚の炎症性疾患;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連の神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性または自己免疫性脳炎、および子癇前症などの中枢神経系の炎症性疾患;II型糖尿病などの代謝疾患;I型糖尿病の予防;脂質異常症;糖尿病合併症(以下に限定されないが、緑内障、網膜症、微量アルブミン尿および進行性糖尿病性腎症などの腎症、多発性神経障害、アテローム性動脈硬化冠状動脈疾患、末梢動脈疾患、非ケトン性高血糖性高浸透圧性昏睡、モノニューロパシー、自律神経障害、関節障害、皮膚や粘膜の合併症(感染症、脛スポット(shin spot)、カンジダ感染症、または糖尿病性リポイド類壊死症など);免疫複合体血管炎、全身性エリテマトーデス、心臓の炎症性疾患(心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、およびアテローム性動脈硬化症など):ならびに、子癇前症など重要な炎症性部分をもち得る各種疾患;慢性肝障害、脳や脊髄の外傷、および癌などが挙げられる。前記炎症性疾患は、グラム陽性菌またはグラム陰性ショック、出血性またはアナフィラキシーショック、または炎症性サイトカインに応答した癌の化学療法によって誘発されるショック状態(例えば、炎症性サイトカインに関連するショック状態)に代表される人体の全身性炎症であり得る。そのようなショック状態は、例えば癌の治療として投与される化学療法剤によって誘発され得る。他の疾患としては、うつ病、肥満、アレルギー性疾患、急性心血管系イベント、筋消耗疾患、および癌性悪液質などが挙げられる。また、外科手術や外傷によって生ずる炎症も、濃縮治療用リン脂質組成物で治療し得る。
【0073】
また、被検体における高トリグリセリド血症を防止、予防、または治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、高トリグリセリド血症は、中等度の高トリグリセリド血症である。いくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。中等度の高トリグリセリド血症は、TG値が>3.9mmol/L(>350mg/dL)の被検体と定義される。
【0074】
また、被検体における空腹時血漿中低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)値を低減させる方法も提供される。空腹時血漿中低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)値を低下させるいくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0075】
また、被検体における空腹時血漿中高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)値を増加させる方法も提供される。空腹時血漿中高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)値を増加させるいくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0076】
また、被検体におけるオメガ3指数(OM3I)を増加させる方法も提供される。オメガ3指数は、赤血球(RBC)中のEPA+DHAの割合として定義され、次式:OM3I=(EPA+DHA)/RBC中の総脂肪酸、で表される。赤血球中のEPA+DHA値の低下は、心臓突然死のリスク増加と関連しており、冠状動脈性心臓疾患による死亡のリスク増加(実際のリスク因子)のマーカーとみなすことができる(Harris,2010)。他の実施形態では、オメガ3指数(OM3I)を高めて経口耐糖能異常(OGTT)を低減する方法が提供される。オメガ3指数を上昇させるいくつかの実施形態では、被検体は中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0077】
また、被検体において高感度C反応性タンパク質(hs−CRP)を低減させるための方法も提供される。高感度C反応性タンパク質(hs−CRP)を低下させるいくつかの実施形態では、被検体は、中等度の高トリグリセリド血症と診断されている。
【0078】
また、被検体における心血管疾患を防止、予防、または治療するための方法も提供される。心血管疾患としては、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、冠動脈疾患、心臓弁膜症、不整脈、心不全、高血圧、起立性低血圧、ショック状態、心内膜炎、大動脈とその分枝の疾患、末梢血管系の疾患、先天性心疾患などが挙げられる。
【0079】
また、被検体におけるメタボリック症候群を防止、予防、または治療するための方法も提供される。メタボリック症候群は、心血管疾患や糖尿病の発症リスクを高める内科的疾患の組み合わせである。5人に1人が罹患しており、年齢と共に有病率が増加する。いくつかの研究では、米国における有病率は人口の最大25%であると推定している。メタボリック症候群は、メタボリックシンドロームX、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、Reaven症候群、CHAOS(オーストラリア)としても知られている。
【0080】
また、被検体における認知障害を防止、予防、または治療するための方法も提供される。本明細書において用いられる「認知障害または疾患」という用語は、あらゆる認知の障害または疾患を含むものと理解されるべきである。そのような認知障害または疾患の、非限定的な例としては、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、失読症、加齢に伴う記憶障害および学習障害、健忘症、軽度認知障害、非認知症の認知障害、発病前アルツハイマー病、自閉症、ジストニアおよびトゥレット症候群、認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、脳波の強度および/または脳のグルコース利用に影響を与える状態、ストレス、不安症、集中力および注意障害、気分の低下、認知および精神の一般健康状態、神経変性疾患、ホルモン障害、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、該認知障害は、記憶障害である。
【0081】
本明細書において使用される表現「認知障害または認知疾患を罹患した被検体における状態を改善する」とは、疾患、障害、または病理学的状態に関連する望ましくない症状を改善すること;症状が発生する前にその発現を防止すること;疾患または障害の進行を遅くすること;疾患または障害の悪化を遅らせること;疾患または障害の進行段階(または慢性段階)において生ずる不可逆的な害を発生を遅らせること;(進行性の)疾患または障害の発症を遅らせること;疾患または障害の重症度を軽減させること;疾患または障害を治癒させること;(例えば一般的に病気になりやすい個体において)全般的に疾患または障害の発生を予防すること;または上記の事項の任意の組み合わせを包含するものと理解されるべきである。例えば、アルツハイマー病の結果として、記憶障害を罹患する被検体において、空間的短期記憶、想起および/または認識記憶の低下などの症状は、脂質濃縮された治療用リン脂質組成物の使用により改善される。
【0082】
また、被検体における神経変性疾患を防止、予防、または治療するための方法も提供される。神経変性疾患は、運動、感覚、または認知系のニューロンの選択的および概ね対称的な消失によって特徴付けられる慢性の進行性の神経障害として定義されている。神経変性疾患の非限定的な例としては、以下に限定されないが、アルツハイマー病、ピック病、レビー小体型認知症、の大脳基底核−ハンチントン病、パーキンソン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、運動筋萎縮性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、ルー・ゲーリック病、発病前認知症症候群、レビー小体型認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、筋萎縮性側索硬化症、および家族性痙性対麻痺が挙げられる。
【0083】
また、被検体における総合的な認知機能の低下を低減するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、総合的な認知機能の低下の低減は、神経心理学的テスト・バッテリー(NTB)によって測定することができる。いくつかの実施形態では、被検体は初期段階アルツハイマー病と診断されている。
【0084】
また、被検体における神経精神症状の悪化を低減するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経精神症状の悪化の低減は、精神症候評価尺度質問票(NPI)によって測定することができる。いくつかの実施形態では、被検体は初期段階アルツハイマー病と診断されている。
【0085】
また、アルツハイマー病に罹患した被検体における日常生活機能の活動とセルフケア能力を維持させる方法も提供される。いくつかの実施形態では、被検体は初期段階アルツハイマー病と診断されている。いくつかの実施形態では、日常生活機能の活動とセルフケア能力の維持は、認知症障害評価表(DAD)によって評価される。
【0086】
濃縮治療用リン脂質組成物により治療または改善することができるその他の健康上の障害または状態としては、以下に限定されないが、高い血中コレステロール値、高いトリグリセリド値、高い血中フィブリノーゲン値、低いHDL/LDL比、閉経期または閉経後の状態、ホルモン関連疾患、視覚障害、免疫疾患、肝疾患、慢性肝炎、脂肪症、脂質過酸化反応、細胞再生のリズム障害、細胞膜の不安定化、高血圧、癌、過度の緊張、老化、腎疾患、皮膚疾患、浮腫、胃腸疾患、末梢血管系疾患、アレルギー、気道疾患、および精神疾患などが挙げられる。
【0087】
[併用療法]
いくつかの実施形態では、被検体に対して、有効量の濃縮治療用リン脂質組成物を投与する。他の実施形態において、治療には、濃縮治療用リン脂質組成物と、抗脂質代謝異常薬などの治療薬との併用が含まれる。抗脂質代謝異常薬としては、例えばアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンなどが挙げられるが、これらの限定されない。
【0088】
他の実施形態では、治療には、濃縮治療用リン脂質組成物と、コリンエステラーゼ阻害薬との併用が含まれる。コリンエステラーゼ阻害薬としては、メトリフォネート(不可逆性)、カルバメート、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、アンベノニウム、デマルカリウム(demarcarium)、リバスチグミン、フェナントレン誘導体、ガランタミン、ピペリジン、ドネペジル、タクリン、エドロホニウム、フペルジンA、ラドスチギル、およびウンゲレミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態では、被検体には、ビタミン、ミネラル、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤、ステロール類、フィブラート系薬剤、抗高血圧薬、インスリン、コレステロール消化阻害剤(例えばエゼチミブ)、脂肪酸、オメガ3脂肪酸、抗酸化物質、およびメチルフェニデートクラスの化合物(例えばリタリンなど)のなかの少なくとも1種類と、濃縮治療用リン脂質組成物との組みあわせが投与される。他の実施形態では、従来の長期治療(例えばスタチンによる長期治療)の間に欠乏した要素を、濃縮治療用リン脂質組成物と組み合わせ。例えば、いくつかの実施形態では、COX−2、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、マグネシウム、または亜鉛のなかの少なくとも1種類を含む、濃縮治療量リン脂質組成物が提供される。他の実施形態では、カリウムを、濃縮治療量リン脂質組成物とともに含む併用療法が提供される。カリウムは、通常、利尿薬の長期服用中に欠乏する。併用療法により、副作用のリスクが減少し、利益が増加し、溶解度が高められ、および/または生物学的利用能が高められる。
【0090】
[投与方法]
濃縮治療用リン脂質組成物の投与は、治療薬の投与方法のいずれかを利用して行うことができる。これらの投与方法には、経口、非経口、経皮、皮下、または局所投与など全身または局所投与方法が含まれる。
【0091】
[医薬製剤]
意図された投与方法に応じて、該組成物は、固体、半固体または液体の剤形、例えば注射剤、錠剤、丸剤、徐放性カプセル剤、エリキシル剤、チンキ剤、乳剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤などとすることができ、場合によっては、単位用量を含み従来の薬務に準拠する形に製することができる。同様に、該組成物を、静脈内投与(ボーラス投与および注射の両方)、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与用の剤形で投与することができ、これらの使用する剤形はすべて製薬分野の当業者によく知られている。
【0092】
例示的な医薬組成物は、錠剤、ゼラチンカプセルであって、濃縮治療用リン脂質組成物のニート組成物を含むものであり、または必要ならば、医薬上許容される担体を含む。そのような担体としては、(a)希釈剤、例えば、精製水、トリグリセリド油(例えば、水素化植物油もしくは部分的水素化された植物油またはそれらの混合物、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニバナ油)、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、ナトリウム、サッカリン、グルコース、および/またはグリシンなど;(b)潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および/またはポリエチレングリコール;などが挙げられ、錠剤の場合にはさらに、(c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、炭酸マグネシウム、天然の糖(例えばグルコースまたはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味料、天然および合成ゴム(例えばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウムなど)、ワックス、および/またはポリビニルピロリドン;さらに必要に応じて(d)錠剤崩壊剤、例えば、でんぷん、寒天、メチルセルロース、ベントナイト、キサンタンガム、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;(e)吸収剤、着色剤、香味剤、および甘味料;(f)乳化剤すなわち分散剤、例えば、Tween 80、Labrasol、HPMC、DOSS、Caproyl909、Labrafac、Labrafil、Peceol、Transcutol、Capmul MCM、Capmul PG−12、Captex355、Gelucire、ビタミンE TGPS、または他の許容される乳化剤;および/または(g)化合物の吸収を高める薬剤、例えばシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、PEG400、PEG200などが挙げられる。
【0093】
液剤、特に注射剤の組成物は、例えば、溶解、分散等により調製することができる。例えば、該濃縮治療用リン脂質組成物を、医薬上許容される溶媒(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなど)中に溶解、またはそれと混合し、注射可能な等張溶液または懸濁液を形成する。タンパク質(アルブミン、カイロミクロン粒子、または血清タンパク質など)を用いて、濃縮治療用リン脂質組成物を可溶化することができる。
【0094】
他の例示的な局所投与用製剤としては、クリーム剤、軟膏、ローション剤、エアゾールスプレー剤、およびゲル剤などが挙げられ、この場合、濃縮治療用リン脂質組成物は約0.1%〜約15%(w/wまたはw/v)の濃度範囲である。
【0095】
[投薬]
濃縮治療用リン脂質組成物を利用した投薬レジメンは、タイプ、種、年齢、体重、性別、および被験体の病状;治療すべき症状の重症度;投与経路;被検体の腎機能または肝機能;および使用する特定の濃縮治療用リン脂質組成物などのさまざまな要因に応じて選択される。当分野で通常の知識を有する医師または獣医師であれば、病状の進行を防止、阻害、または阻止するために必要な有効な量の薬剤を容易に決定し、処方することができる。
【0096】
本発明の有効用量は、指定された効果のために使用される場合、濃縮治療用リン脂質組成物を1日あたり約20mg〜から約10000mgの範囲となる。生体内または試験管内の用途のための用量には、濃縮治療用リン脂質組成物の約20、50、75、100、150、250、500、750、1000、1250、2500、3500、5000、7500、または10000mgが含まれ得る。被検体への投与後の濃縮治療用リン脂質組成物の有効な血漿中レベルは、1日につき体重1kgあたり約0.002mg〜約100mgの範囲であり得る。濃縮治療用リン脂質組成物の適切な用量は、L.S.Goodman,ら,The Pharmacological Basis of Therapeutics,201−26(5th ed.1975)に記載のように決定することができる。
【0097】
濃縮治療用リン脂質組成物は、毎日1回投与で投与することも、毎日の総用量を1日2回、3回、または4回の分割用量で投与することもできる。経皮送達システムの形での投与のためには、用量投与は、投薬レジメン全体で断続的ではなく連続となり得る。併用療法のいくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物と治療薬剤とが同時に投与され得る。他の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物と治療薬剤とが連続して投与され得る。併用療法のさらに別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物を毎日投与し、治療薬剤の投与頻度は毎日1回未満とすることができる。併用療法のさらに別の実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物を毎日投与し、治療薬剤の投与頻度は毎日1回以上とすることができる。
【実施例】
【0098】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、この実施例は、本発明の範囲または精神をここに開示される特定の手順に限定するものと解されるべきではない。この実施例は特定の実施形態を例示するために提供されており、これによって本発明の範囲を制限する意図はないことを理解されたい。これらの実施例が当業者に示唆し得るさまざまな他の実施形態、改変形態、等価形態を、本発明の精神および/または特許請求の範囲に記載の範囲を逸脱することなく実現し得ることも理解されたい。
【0099】
[濃縮治療用リン脂質組成物]
以下の、本発明の限定を意図しない治療用組成物の実施例は、濃縮治療用リン脂質組成物の別の実施形態を例示するものである。実施例の欄に記載されているいずれの実施形態は、濃縮治療用リン脂質組成物の態様であり、したがって、上記の方法および組成物における使用に適していることを理解されたい。
【0100】
以下の方法は、濃縮治療用リン脂質組成物を作製するために用いることができる(図1Aおよび図1B)。
【0101】
[ステップ1]
冷凍オキアミを、機械的に粉砕し、アセトンと水との比9:1の溶媒とともに8℃で60−90分間インキュベートし、オキアミのバイオマスから異なる比率の脂質(PL、TG、およびFFA)を抽出する。脂質は、その後の圧力下で(50−60kPa)濾過することによりタンパク質およびオキアミ材料から分離する。固相は破棄する。水溶性抽出物は、減圧下で連続的に蒸留塔によって蒸発させ、溶媒(アセトン)を除去する。水性(水)画分の大部分は、デカンテーションによって脂質画分から分離され、残りの水は、減圧下で穏やかに加熱して蒸発させることによって除去する。それらの画分を添加し、分析し、ブレンドして中間物のオキアミ油製品を構成し、その中間物のオキアミ油製品を再解析して、所望の仕様、即ち±5%:EPA(15g/100g)、DHA(9g/100g)、総リン脂質(42g/100g)、およびアスタキサンチンの剤形(125mg/100g)を達成する。
【0102】
[ステップ2]
ステップ1からのオキアミ油の100.5gを、300ml抽出容器(ID=0.68”)に充填した。抽出器を密封し、55℃で予熱されたCO2を底部から導入し、抽出器中の圧力は、ダイヤフラムCO2ポンプを用いて5,000psiに維持した。C02の流れを抽出器を通して上昇流方向に継続し、圧力低減弁(PRV)を通して環境圧力に膨張させて、CO2中の溶解物質を沈殿させフラスコに回収した。フラスコから出てくるCO2の流量と容積を流量計と乾燥テストメーター(DTM)を用いて測定した。合計7200gのCO2を抽出器に通し(溶媒/供給比、S/F=72)、34.1%の充填物をCO2によって除去した。約25標準リットル/分のCO2の流量を試験中に維持し、抽出の総時間は約160分であった。抽出器を分離し、C02を大気中に放出させた。抽出器を開き、未抽出物質(ラフィネート生成物)を容器から除去した。
【0103】
[ステップ3]
SC C02抽出により90+%のOM3:PSを製造。9.44gの油を、不活性パッキングと合わせて、抽出器に充填した。ステップ2に記載の手順と同様だが、より積極的な抽出条件(抽出器中の圧力と温度を10,000psiおよび70℃に維持)を用いた点が異なる手順を実行した。全S/F比は200を使用し、f;したがって約1900gのCO2を抽出器を通して流した。CO2の流量は約10標準リットル/分に維持し、したがってこの試験の総実行時間は105分であった。試験中に、合計で充填物の56.3%をこの油から抽出した。抽出器を分離し、C02を大気中に放出させ、抽出器を開き、得られたラフィネート生成物を不活性パッキングから掻き落とした。この未抽出材料を解析すると、91%OM3:PSであった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0104】
[生物学的実施例]
[実施例1]
[3種のマウス表現型における脂質異常症の管理]
この試験の目的は、成熟度/性別をマッチさせた3種のマウスの表現型における組成物3の効果を検討することであった。3種のマウスの表現型は、(1)通常の健康な非肥満で正常血糖の対照(C57BL6)と、それに対する、(2)脂質異常症のLDL受容体遺伝子ノックアウトマウス(LDLr−/−)、または(3)ヒトapoA−Iトランスジェニックマウス(Jackson Labs)であり;これらは12週齢で、27.5±0.7g対25.6±0.7g対29.2±0.8群であり;n=7−10/群であって、通常の食餌対西洋型の食餌で給餌し、水は自由に摂取させ、地域および国の倫理規則に従って飼育した。データは、t検定(独立、両側)によって評価した統計、および平均±平均値の標準誤差(SEM)として提示する(GraphPad Prism V5使用)。
【0105】
上記の3種の未処理成熟雄マウスモデルにおける血漿脂質濃度(mg/dL)のプロファイルは、文献に報告されている通りであった。即ち、全コレステロール(TC):71.1±3.3対215.3±10.4対50.3±1.3;トリグリセリド(TG):59.5±4.5対65.1±3.8対53.0±12.9;低密度リポタンパク質(LDL):13.3±1.2対101.6±6.7対12.2±1.6;高密度リポタンパク質(HDL):53.4±3.2対88.8±3.6対24.8±2.6であった。C57BL6においては、組成物3で1日1回(QD)処置(104対208対417mg/kg(ヒト相当用量500、1,000、および2,000mg/日))を6週間行うと、血漿TGの有意な用量依存的な減少(最大60%)、LDLの上昇(最大28%)、HDLの減少(17%)が生じた、TCには影響しなかった(図2−12および表1を参照)。重症脂質異常症LDLr−KOマウスでは、組成物3により、血漿TGの用量依存的な減少、HDLのさらなる上昇が生じ、TCのわずかの上昇(投与中のみ)が生じたが、LDLには影響がなかった(図13−図17および表1を参照)。hApoA−Iトランスジェニックマウスでは、組成物3により、血漿TGの有意な低下、HDLの上昇が生じたが、TCには影響がなかった(図18および表1参照)。肝臓TC濃度は、3種の表現型すべてにおて同じであったが、TGは、対照C57BL6と比較して、LDLr−KOマウスで低下(19%;p<0.05)し、hApoA−Iで上昇(153%;p<0.01)した。組成物3による処置は、肝臓のTCおよびTG濃度を、C57BL6においてそれぞれ最大12%および27%上昇させ、LDLr−KOにおいてそれぞれ最大10%および36%上昇させ、hApo−Iマウスにおいては、肝臓TC濃度は最大10%上昇させたが、肝臓TG濃度についてはそれぞれ効果にばらつき(−13〜+12%)があった(表2参照)。
【表8】
【表9】
【0106】
これらのデータから、組成物3は、主として血漿中のTGおよびLDLの低下とHDLの上昇に関して脂質代謝の効果的な調節因子であることがわかる。これらのデータから、いくつかの実施形態において、濃縮治療用リン脂質組成物は、中等度乃至重症の高トリグリセリド血症の治療法として有効であり得ることが判明した。いくつかの実施形態では、濃縮治療用リン脂質組成物は、他の抗脂質代謝異常薬と併用することにより、難治性の高トリグリセリド血症の治療に効果的であり得る。
【0107】
[実施例2]
[12週齢雄ズッカー糖尿病肥満ラットにおける高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)の循環血漿濃度の上昇および総コレステロール(TC)/HDL比の増加]
この試験の目的は、肥満症、高脂血症でインスリン抵抗性を有する2型糖尿病のズッカー糖尿病肥満ラットげっ歯類モデル(ZDF;Gmi−fa/fa)対、成熟度/性別をマッチさせた通常の健康な非肥満で正常血糖の低脂肪対照のSDラット(Charles River Labsより入手;12週目、359±17対439±13群;n=9−12/群)のそれぞれにおける濃縮治療用リン脂質組成物の効果を検討することであった。組成物3のQD処置(52対260mg/kg(体重)(ヒト相当用量(HED)500および2500mg))の後、地域および国の倫理規則(Formulab high fat 5008(ZDF)対normal 5001(SD)食餌レジメンおよび水の自由摂取)に従って飼育し、1および2か月経過前に、脂質プロファイル(総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、およびTC/HDL比)を評価した。データは、独立、両側のt検定によって計算した統計的差異、および平均±標準偏差(SD)(n=2−10)として提示する(GraphPad Prism V5使用)。12週目において、循環血漿中のTC、TG、HDL濃度、およびTC/HDL比は、それぞれ4.6±0.9、11.6±5.9、2.3±1.1mmol/Lおよび2.16±0.62であった。SDラットにおける脂質プロファイルは、それぞれ1.9±0.4、1.2±0.4、1.3±0.2mmol/Lおよび1.45±0.11で有意に低かった。60日間の毎日の低用量および高用量処置は、TCおよびTG濃度に影響を与えなかったが、「善玉の」HDLコレステロールを1.7〜1.8倍(p0.01)増加させ、TC/HDL比を26−32%(p<0.01−0.05)低下させた。
【0108】
[実施例3]
[ズッカー糖尿病肥満ラットにおける組成物3投与後の耐糖能異常の改善]
この試験の目的は、高脂血症で肥満の2型糖尿病ラットモデルにおける組成物2の効果を検討することであった。ズッカー糖尿病肥満ラット(ZDF;Gmi−fa/fa)を、成熟度/性別をマッチさせた通常の健康な非肥満で正常血糖の低脂肪対照のSDラットに対して使用した(Charles River Labsより入手;12週目、359±17対439±13群;n=9−12/群)。組成物3の52対260mg/kg(ヒト相当用量(HED)500および2500mg)のQD強制投与による処置の前、およびその90日後に、耐糖能異常を、経口的ブドウ糖負荷試験(OGTT;夜間絶食の後、2g/kg(ラット体重)のグルコースを単回強制投与)を、180分間グルコメーターストリップ(Accu−Chek Aviva,Roche Diagnostics)を用いて行って評価した(モデルは、地域および国の倫理規則(Formulab high fat 5008(ZDF)対normal 5001(SD)食餌レジメンおよび水の自由摂取)に従って飼育した)。データは、独立、両側のt検定によって計算した統計的差異、および平均±標準偏差(SD)(n=2−10)として提示する(GraphPad Prism V5使用)。
【0109】
12週目において(T0)、グルコースの空腹時循環血漿濃度は、未処置ZDF対SDラットにおいて7.8±2.1対5.0±0.6mmol/L(p<0.0001)であった。非空腹時のZDFおよびSDラットグルコース値は、それぞれ22.0±4.2対8.6±0.6mmol/Lであった。1ヶ月後、ベースライン値は絶食ZDFで1.9倍(p<0.0001)増加したが、絶食SDでは変化がなかった。加齢は、非絶食ラットにおけるグルコース濃度に影響を及ぼさなかった。グルコース負荷は、未処置の絶食ZDFおよびSDにおける血漿グルコース濃度を、それぞれ30および60分後に最大2.5倍(p<0.0001)および1.6倍(p<0.0001)増加させ、180分後に概ね初期値に戻った。16週目において、30日の(T30)処置は、SDラットにおいてはグルコースのプロファイルにも最大上昇にも影響がなかったが、ZDFの処置は、血漿中グルコースの最大上昇を右側にシフトさせ(30分から60分に)、30分後の最大上昇を61−72%(p<0.02)低下させ、かつ組成物3の用量がいずれの場合でもAUCを50−60%(p<0.0001)低下させ、したがって、未処置のグルコース負荷SDラットにおいて測定されたAUCに戻った。20週目において、60日の処置は、いずれの用量でも、耐糖能異常をさらに低減させなかった。処置プロファイルのいずれも、非絶食ZDFまたはSDにおける血漿中および尿中のグルコース濃度(高血糖および糖尿)には影響を及ぼさなかった。これらのデータから、組成物3の短期および低用量長期投与は、重症高血糖症モデルにおける血糖値制御を有意に改善することが分かった。
【0110】
[実施例4]
[中等度高トリグリセリド血症の治療における濃縮治療用リン脂質組成物の安全性と効果の評価のための、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、用量設定、および多施設治験]
カナダ脂質治療ガイドライン(Canadian Lipid Treatment Guidelines)に従って医師による処置を受けた、中等度高トリグリセリド血症を発症している被検体に、濃縮リン脂質を1.0、2.0、または4.0gの用量で12週にわたって与える。有効性の主要項目は、ベースライン値(週1)と処置を行う12週の間での空腹時循環血清トリグリセリド値(TG)をパーセント変化率となる。副次評価項目は、:ベースライン値と6週後および処置の12週間との間での、(1)空腹時血漿TGの絶対的な変化;(2)目標空腹時血漿中TG濃度を達成した被検体の割合(%);(3)空腹時血漿中のLDL−C、VLDL−C、HDL−C、HDL2−C、HDL3−C、総コレステロール、hs−CRP、および非HDLの絶対的な変化;(4)空腹時血漿中のLDL−C、VLDL−C、HDL−C、HDL2−C、HDL3−C、総コレステロール、hs−CRP、および非HDLの濃度の変化の割合(%);(5)算出された比率:(a)総コレステロール:HDL−C;(b)LDL−C:HDL−C;(c)TG:HDL−C;(6)LDL−C関連のパラメータ:(a)粒子数;(b)粒径;(c)酸化;(7)バイオマーカーの空腹時血漿中濃度の絶対的な変化および変化率(%);(a)糖化ヘモグロビン値、(b)アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)、(c)アポリポタンパク質B−100(ApoB−100)、(d)アポリポタンパク質E(ApoE)、(e)リポタンパク質(a)(Lp(a))、(f)アジポネクチン、(g)グルコース、(h)インスリン;(8)算出されたApoB:ApoA−I比率;(9)空腹時血漿リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2活性(Lp−PLA2);(10)HOMA−IR(インスリン抵抗性のホメオスタシスモデル評価:[グルコース(mmol/L)×IRI(マイクロIU/L)/22.5];(11)全EPAおよびDHAの血漿中濃度(PK/PD−25被検体/群);(12)OM3I(オメガ3指数);(13)被検体の遺伝的多型:(a)レシチン−コレステロールアシルトラ ンスフェラーゼ(LCAT)、(b)コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)、(c)スカベンジャー受容体B1(SR−B1)、(d)ATP結合カセット輸送体1(ABCA1)であった。
【0111】
[実施例5]
[濃縮治療用リン脂質組成物単独の、またはスタチンとの併用時の、西洋型の食餌を給餌されたApoE欠損マウスにおける血中脂質濃度の調節およびアテローム性動脈硬化症病変の発達に対する影響]
それぞれApoetmlUnc変異について同型である、体重約18−20gの雄の成体マウス(n=135(15マウス/群)週齢5−6週目)に対して、ビヒクル(水または0.2%−0.5%カルボキシメチルセルロース);組成物3(1,000mg/日、HED);組成物3(2,000mg/日、HED);またはリピトール(20mg/日、HED);または組成物3(1,000mg/日、HED)+リピトール(20mg/日、HED)の(HOW)いずれかを投与する。0ヵ月目、3ヶ月目、または6ヵ月目において、次のものに対して以下の測定値の評価を行う:血中脂質:TC、TGを、LDL、HDL、非HDL、VLDL(0、3、6ヶ月)。(2)大動脈アテローム性動脈硬化症(0、3、6ヶ月):(a)胸部および腹部大動脈を、分離し、脂肪をトリミングし、撮影のためにブラックマトリクス上にレイアウトして固定し、スダンIVまたはオイルレッドOで染色する。(b)血管に対して、コンピュータ画像解析システム(Image ProPlusまたはNIHパッケージソフトウェア)を用いて表面の併発をイメージ化する。データを、群で計算して統計的に解析する。(c)脂質抽出:染色および形態解析の後、大動脈を抽出する(Bligh、Dyer)。(3)赤血球オメガ3指数(0、3、6ヶ月);(4)CRPの循環血漿濃度(0、3、6ヶ月)。
【0112】
[実施例6]
[オメガ3指数についての組成物3とLovaza(登録商標)との比較]
平均体重>375−425の雄の成体(14週)Sprague−Dawley(SD)ラットに、通常のラット固形飼料(diet5075−通常、標準ラット固形飼料)を与えた。被検体/群の数:n=56;n=8ラット/群。投与は、(i)ビヒクル、(ii)組成物352mpk 500mg/日、HED;(iii)組成物3、104mpk 1000mg/日、HED;(iv)組成物3、416mpk 4000mg/日、HED、(v)Lovaza(登録商標)416mpk 4000mg/日、HEDのいずれかで、12週にわたってQD(1日1回朝投与)で行った。結果を図35に示す。
【0113】
[実施例7]
[早期アルツハイマー病における高濃度リン脂質の単独療法試験]
被検体を、濃縮治療用リン脂質組成物1g、魚油(135mg EPA:108mg DHA)1g、またはプラセボ(大豆油)1gのいずれかの1日1回投与を受けるように無作為に割り当てた。主要評価項目は、ベースライン値と24週の処置との間でのNTBの変化とする。神経心理学的テスト・バッテリー(NTB)を用いて、重要な認知の変化をモニタリングし、評価する。次のNTBの9項目を用いて、その被検体についての結果を判定する:(1)ウェクスラー記憶検査、視覚即時再生(スコア範囲、0−18)、(2)ウェクスラー記憶検査、口頭即時再生(スコア範囲、0−24)、(3)レイ聴覚言語性記憶検査(Rey Auditory Verbal Learning, Test;RAVLT)、即時(スコア範囲、0−105)、(4)ウェクスラー記憶検査、数唱(Digit Span)(スコア範囲、0−24)、(5)Controlled Word Association試験(COWAT)、(6)カテゴリー流暢性試験(Category Fluency Test;CFT)、(7)ウェクスラー記憶検査、視覚遅延再生(スコア範囲、0−6)、(8)ウェクスラー記憶検査、口頭遅延再生(スコア範囲、0−8)、および(9)RAVLT、遅延(スコアの範囲は、0−30)(ハリソンら、2007)。RAVLT遅延評価基準は遅延再生と認識能項目から構成され、これらを合計して、0−30の範囲のスコアを算出し、被検体の能力について9種の評価基準を算出する。副次評価項目には、処置の24週目におけるNPIおよびDADの変化がある。精神症候評価尺度質問票(NPI)は、認知症において一般的な12項目の精神神経障害を評価する:即ち、妄想、幻覚、興奮、不快感、不安、無気力、神経過敏、多幸感、脱抑制、異常な運動行動、夜間の行動障害、および食欲摂食異常である。認知症障害評価表(DAD)は、認知症における手段的基本日常生活動作(衛生、着衣、脱衣、排泄、摂食、食事の準備、電話、外出、金銭管理、通信、服薬、余暇と家事)を評価するために使用される、介護者用の質問票手段である。また、NPIは、各精神神経障害によって生じる介護者の苦痛の量も評価する。血液を採取し、EPA、DHA、およびリン脂質の値を測定する。
【0114】
[等価形態]
当業者は、通常行う程度を超える実験を行うことなく、本明細書に具体的に記載した特定の実施形態の等価形態が多数あり得ることを認識または確認できるであろう。そのような等価形態は、請求項の記載範囲を包含されることが想定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮治療用リン脂質組成物であって、
式I
【化1】
の化合物を含み、
前記組成物における式Iの化合物のそれぞれについて、
各R1は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
各R2は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
式Iの化合物のそれぞれにおけるR1およびR2の少なくとも1つは、脂肪酸であり、
各Xは、−CH2CH2NH3、−CH2CH2N(CH3)3、または
【化2】
から独立して選択され、
前記組成物における式Iの化合物の総量は、45%(w/w)乃至約99%(w/w)の濃度である、組成物。
【請求項2】
式Iの前記化合物は、約50%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式Iの前記化合物は、約60%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式Iの前記化合物は、約66%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
式Iの前記化合物は、70%(w/w(リン脂質/全組成物))超から約99%(w/w(リン脂質/全組成物))までの濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式Iの前記化合物は、約80%(w/w(リン脂質/全組成物))と約95%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式Iの前記化合物は、約90%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
R1およびR2の両方は、それぞれ独立してオメガ3脂肪酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
R1が、DHAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
R2が、DHAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
R1が、EPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
R2が、EPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
R2が、DHAであり、R1がEPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
R2が、EPAであり、R1がEPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、おおむね同じ量のEPAおよびDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項16】
前記組成物が、式IのR2の位置に主にDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項17】
前記組成物が、EPAより多くDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項18】
前記組成物が、全脂肪酸の60%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項19】
前記組成物が、全脂肪酸の70%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項20】
前記組成物が、全脂肪酸の80%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項21】
前記組成物が、全脂肪酸の90%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項22】
前記組成物が、全脂肪酸の95%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項23】
前記遊離脂肪酸の濃度が、約0%(w/w)と約20%(w/w)の間の濃度である、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項24】
前記遊離脂肪酸の濃度が、約5%(w/w)と約17%(w/w)の間の濃度である、請求項23に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項25】
前記遊離脂肪酸の濃度が、約10%(w/w)と約15%(w/w)の間の濃度である、請求項24に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項26】
前記トリグリセリドの濃度は、約5%未満である、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項27】
前記トリグリセリドの濃度は、約0%である、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項28】
抗酸化物質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記抗酸化物質は、アスタキサンチン、カロテノイド、およびフラボノイドから選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記抗酸化物質が、カロテノイドである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記カロテノイドは、プロビタミンAである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記抗酸化物質が、フラボノイドである、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記フラボノイドは、ナリンギン、ナリンゲニン、ヘスペレチン/ケンフェロール、ルチン、ルテオリン、ネオヘスペリジン、ケルセチンから選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記フラボノイドが、
【化3】
である、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記抗酸化物質が、アスタキサンチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
アスタキサンチンの濃度が、2000mg/kg(w/w(組成物))超である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、
約66%(w/w(リン脂質/全組成物)の濃度の式Iの化合物と、
%(w/w(遊離脂肪酸/全組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、
0%の濃度のトリグリセリドとを含む、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項38】
前記組成物が、
70%(w/w(リン脂質/全組成物)超の濃度の式Iの化合物と、
0%の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、
0%の濃度のトリグリセリドとを含む、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項39】
式Iの化合物が、約90%の濃度である、請求項38に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項40】
心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防方法であって、それを必要とする被検体に対して請求項1の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項41】
前記心血管代謝疾患/メタボリック症候群は、アテローム性動脈硬化症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高血圧、心不全、不整脈、低HDL血症、高LDL血症、安定狭心症、冠動脈性心疾患、急性心筋梗塞、二次心筋梗塞予防、心筋症、心内膜炎、2型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高コレステロール血症、脳卒中、高脂血症、高リポタンパク血症、慢性腎臓病、間欠性跛行、高リン血症、オメガ3系脂肪酸欠乏、リン脂質欠乏、頸動脈アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、糖尿病性腎症、HIV感染における高コレステロール血症、急性冠症候群(ACS)、非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD/NASH)、動脈閉塞性疾患、脳のアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脳血管障害、心筋虚血、血管内血栓形成に至る凝固障害、および糖尿病性自律神経障害から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
認識力および/または認知の疾病、疾患または障害(記憶、集中力、学習(障害))を治療、予防、または改善する方法であって、それを必要とする被検体に対して請求項1の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項43】
前記認知の疾病、疾患または障害は、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、失読症、加齢に伴う記憶障害および学習障害、健忘症、軽度認知障害、非認知症の認知障害、発病前アルツハイマー病、自閉症、ジストニアおよびトゥレット症候群、認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、脳波の強度および/または脳のグルコース利用に影響を与える状態、ストレス、不安症、集中および注意障害、気分の低下、認知および精神の一般健康状態、神経変性疾患、ホルモン疾患、またはこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項42に記載の方法。(特定の実施形態では、該認知の疾患は、記憶障害である。)
【請求項44】
神経変性疾患の防止、予防、または治療方法であって、それを必要とする被検体に対して請求項1の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項45】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、ピック病、レビー小体型認知症、の大脳基底核−ハンチントン病、パーキンソン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、運動筋萎縮性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、ルー・ゲーリック病、発病前認知症症候群、レビー小体型認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、筋萎縮性側索硬化症、および家族性痙性対麻痺から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項1】
濃縮治療用リン脂質組成物であって、
式I
【化1】
の化合物を含み、
前記組成物における式Iの化合物のそれぞれについて、
各R1は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
各R2は、水素または任意の脂肪酸から独立して選択され、
式Iの化合物のそれぞれにおけるR1およびR2の少なくとも1つは、脂肪酸であり、
各Xは、−CH2CH2NH3、−CH2CH2N(CH3)3、または
【化2】
から独立して選択され、
前記組成物における式Iの化合物の総量は、45%(w/w)乃至約99%(w/w)の濃度である、組成物。
【請求項2】
式Iの前記化合物は、約50%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式Iの前記化合物は、約60%(w/w(リン脂質/全組成物))と最大70%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式Iの前記化合物は、約66%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
式Iの前記化合物は、70%(w/w(リン脂質/全組成物))超から約99%(w/w(リン脂質/全組成物))までの濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式Iの前記化合物は、約80%(w/w(リン脂質/全組成物))と約95%(w/w(リン脂質/全組成物))の間の濃度である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式Iの前記化合物は、約90%(w/w(リン脂質/全組成物))の濃度である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
R1およびR2の両方は、それぞれ独立してオメガ3脂肪酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
R1が、DHAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
R2が、DHAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
R1が、EPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
R2が、EPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
R2が、DHAであり、R1がEPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
R2が、EPAであり、R1がEPAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、おおむね同じ量のEPAおよびDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項16】
前記組成物が、式IのR2の位置に主にDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項17】
前記組成物が、EPAより多くDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項18】
前記組成物が、全脂肪酸の60%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項19】
前記組成物が、全脂肪酸の70%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項20】
前記組成物が、全脂肪酸の80%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項21】
前記組成物が、全脂肪酸の90%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項22】
前記組成物が、全脂肪酸の95%超のDHAを有する、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項23】
前記遊離脂肪酸の濃度が、約0%(w/w)と約20%(w/w)の間の濃度である、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項24】
前記遊離脂肪酸の濃度が、約5%(w/w)と約17%(w/w)の間の濃度である、請求項23に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項25】
前記遊離脂肪酸の濃度が、約10%(w/w)と約15%(w/w)の間の濃度である、請求項24に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項26】
前記トリグリセリドの濃度は、約5%未満である、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項27】
前記トリグリセリドの濃度は、約0%である、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項28】
抗酸化物質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記抗酸化物質は、アスタキサンチン、カロテノイド、およびフラボノイドから選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記抗酸化物質が、カロテノイドである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記カロテノイドは、プロビタミンAである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記抗酸化物質が、フラボノイドである、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記フラボノイドは、ナリンギン、ナリンゲニン、ヘスペレチン/ケンフェロール、ルチン、ルテオリン、ネオヘスペリジン、ケルセチンから選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記フラボノイドが、
【化3】
である、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記抗酸化物質が、アスタキサンチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
アスタキサンチンの濃度が、2000mg/kg(w/w(組成物))超である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、
約66%(w/w(リン脂質/全組成物)の濃度の式Iの化合物と、
%(w/w(遊離脂肪酸/全組成物))未満の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、
0%の濃度のトリグリセリドとを含む、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項38】
前記組成物が、
70%(w/w(リン脂質/全組成物)超の濃度の式Iの化合物と、
0%の濃度の遊離脂肪酸(FFA)と、
0%の濃度のトリグリセリドとを含む、請求項1に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項39】
式Iの化合物が、約90%の濃度である、請求項38に記載の濃縮治療用リン脂質組成物。
【請求項40】
心血管代謝疾患/メタボリック症候群の治療または予防方法であって、それを必要とする被検体に対して請求項1の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項41】
前記心血管代謝疾患/メタボリック症候群は、アテローム性動脈硬化症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高血圧、心不全、不整脈、低HDL血症、高LDL血症、安定狭心症、冠動脈性心疾患、急性心筋梗塞、二次心筋梗塞予防、心筋症、心内膜炎、2型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高コレステロール血症、脳卒中、高脂血症、高リポタンパク血症、慢性腎臓病、間欠性跛行、高リン血症、オメガ3系脂肪酸欠乏、リン脂質欠乏、頸動脈アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、糖尿病性腎症、HIV感染における高コレステロール血症、急性冠症候群(ACS)、非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD/NASH)、動脈閉塞性疾患、脳のアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脳血管障害、心筋虚血、血管内血栓形成に至る凝固障害、および糖尿病性自律神経障害から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
認識力および/または認知の疾病、疾患または障害(記憶、集中力、学習(障害))を治療、予防、または改善する方法であって、それを必要とする被検体に対して請求項1の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項43】
前記認知の疾病、疾患または障害は、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、失読症、加齢に伴う記憶障害および学習障害、健忘症、軽度認知障害、非認知症の認知障害、発病前アルツハイマー病、自閉症、ジストニアおよびトゥレット症候群、認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、脳波の強度および/または脳のグルコース利用に影響を与える状態、ストレス、不安症、集中および注意障害、気分の低下、認知および精神の一般健康状態、神経変性疾患、ホルモン疾患、またはこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項42に記載の方法。(特定の実施形態では、該認知の疾患は、記憶障害である。)
【請求項44】
神経変性疾患の防止、予防、または治療方法であって、それを必要とする被検体に対して請求項1の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項45】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、ピック病、レビー小体型認知症、の大脳基底核−ハンチントン病、パーキンソン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、運動筋萎縮性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、ルー・ゲーリック病、発病前認知症症候群、レビー小体型認知症、加齢に伴う認知低下、認知低下、中等度精神的機能障害、加齢の結果としての知能低下、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、フリードライヒ運動失調症、多系統萎縮症、脊髄小脳失調(1型、2型、3型、6型、7型)、筋萎縮性側索硬化症、および家族性痙性対麻痺から選択される、請求項44に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公表番号】特表2013−508431(P2013−508431A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535564(P2012−535564)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001720
【国際公開番号】WO2011/050474
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510269078)アカスティ ファーマ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001720
【国際公開番号】WO2011/050474
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510269078)アカスティ ファーマ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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