説明

濃縮液状調製物

本発明は、エネルギー密度が少なくとも1.45kcal/mlである、悪液質患者に与えるのに適した液状完全栄養組成物関する。本組成物は、100ml当たり7.8〜12g(0.31〜0.48kcal)のタンパク質分画と、炭水化物分画と、脂質分画とを含む。タンパク質分画の少なくとも70重量%を、限外ろ過処理等で牛乳を脱塩することによって得ることができる。炭水化物分画(100ml当たり17〜27g)は、0〜35重量%のスクロース、15〜45重量%の他の非還元性の単糖類、二糖類、及び/又は三糖類、特にトレハロース、5〜50重量%の他の単糖類及び二糖類、並びに5〜40重量%の三糖類及び高次の糖類を含む。本製品は、少量包装(10〜150ml)に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
濃厚液状食
本発明は、濃縮液状栄養製品(concentrated liquid nutritional products)及びその製造方法、並びに栄養不足に関係する重篤な体調不良の状態である悪液質の治療法に関する。
【0002】
臨床上の問題
患者によっては、完全栄養が含まれた液状物を、なるべく少ない量で摂取する必要がある。これらの患者は、悪液質患者、又は、末期のエイズ患者、癌患者若しくは癌治療中の患者、COPD(慢性閉塞性肺疾患)等の重度の肺疾患患者、結核患者並びに他の感染症患者、或いは大手術後の患者若しくはやけど等による外傷患者である。更に、食道癌又は口内炎等の咽喉疾患患者又は口腔疾患患者及び嚥下が困難な人々など咀嚼に障害のある人々は、1回分の摂取量が少なくてよい(low-volume)特別な液状の栄養を必要とする。また、1回分の摂取量が少なくてよい液状食品(low-volume liquid food)は、単に食欲の低下又は味覚の喪失に苦しむ人々にとっても好ましい。
【0003】
これらの患者は、食品の濃度及び粘度、口腔内の感触、味、香り、色等の栄養剤の官能特性に対して非常に敏感である。また、これらの患者はラクトース又はグルテンに対して敏感になっている場合があり、重篤なアレルギー反応が起こることがある。
【0004】
本発明の根底をなす課題は、患者が摂取したくなるような液状製品(Liquid product)であって、非常に高度の栄養素密度を有し、上述の患者の栄養補給と健康とを補助する液状製品を提供することにある。
【背景技術】
【0005】
本課題を解決するために、これまで多くの試みがなされてきた。現在販売されている、簡易液状製品(Liquid ready-to-drink products) に含有される乾物(dry matter)は、28重量%以下である。栄養摂取を授ける成分を更に含有させると、該成分が沈殿及び堆積する。液状物を濃縮した場合にも、成分の相互作用が起こる機会が増える。その結果、特に加熱時及び長期保存時に安定性が低下するが、これは好ましいことではない。乾物の量が増えると粘性も高まる。これらの現象は、非線形動力学を伴うことが多く、これは、成分濃度が28%を超えると重大な問題となる。
【0006】
したがって、現在入手可能な市販の栄養剤の多くは、タンパク質レベルが7.5%未満である。タンパク質レベルをより高くするには、全タンパク質の一部をペプチド又は遊離アミノ酸に替えることになる。これによって、著しく味の評価が下がるので、患者が自らかかる製品を摂取しようとする機会は減少する。
【0007】
コンデンスミルク等の濃縮食品の多くには、栄養的に完全でない、ラクトースレベルが高すぎる、口腔内に粘つき感をもたらす、粘性が高い、過度に甘い、浸透価が高いといった難点があり、消費者からは高く評価されていない。これらの濃縮食品の多くは、摂取後の満腹感を急速に高める。したがって、一度栄養剤が少量摂取されると、更に多くの量を摂取しようとする衝動は急速に低下する。
【0008】
通常、悪液質の患者は極度に衰弱しており、そのため、多くの場合、垂直位に座ることができず、パッケージから食品を飲む能力や、更に食品をストローで吸い込む能力までも損なわれている。
【0009】
適切な濃縮完全栄養物の製造は困難である。使用する原料は多くの基準を満たしていなくてはならない。原料は純粋でなくてはならず、汚染されていたり、腐敗していてはならない。また、原料は食品用として認められるものでなくてはならず、アレルギー反応、特にラクトース又はグルテンに対するアレルギー反応の原因となるものであってはならない。特異アミノ酸、ビタミン、ミネラル、及び脂肪酸の必要量等の栄養必要量を、全ての栄養素が満たすような使用量でなくてはならない。患者にとって有害な構成成分、例えば酸化生成物、又は味を低下させるような構成成分は避けなくてはならない。
【0010】
現状の技術水準の成分を溶解すると、保存期間又は加工中のいずれかにおいて、特に加熱処理中に、沈殿、タンパク質の凝固、無乳化特性、乳化(creaming)、ゲル化、又は粘性の上昇という問題が一つ又は複数生じることがわかる。そのため、ほとんどの先行技術の栄養剤では通常、インタクトなタンパク質のレベルが8%を大きく下回っている。
【0011】
多量の可溶性炭水化物を含有させると、ミネラル、タンパク質及び他の可溶性成分の溶解率が低下するため、通常、可溶性炭水化物の量は19g/100ml未満に調整されている。繊維は、特に水溶性繊維の場合、更に溶解率を低下させる。また、粘性を更に高める場合がある。
【0012】
完全液状製品(complete liquid formulae)のエネルギー密度は、通常1.4kcal/ml未満であり、これは大抵の場合において栄養必要量と機能的要件とを満たす現実的な解決方法である。エネルギー密度が高くなくてはならない場合(1.45kcal/moleより高い場合)、付加的量の脂質を使用してもよい。しかし、脂質量が増加すると、均質であるか及び/又は均一な高濃度であるかが問題となる。
【0013】
欧州特許第0747395号には、エネルギー密度が1.6〜2.25kcal/mlであり、遊離アミノ酸とホエータンパク質とを含む、腎臓病患者を治療するための製品であって、必須アミノ酸の非必須アミノ酸に対する割合が2〜4:1であることを特徴とする製品が記載されている。遊離アミノ酸を使用することによって、粘性を高めることなくアミノ酸組成が改善されている。しかしながら、味は、悪液質患者又は適切な量の食物を食べることが困難な人々にとって、高く評価することのできないものである。タンパク質の量は、製品100ml当たり3〜4gである。
【0014】
WO99/42001号(米国特許第6,200,950号)には、エネルギー密度が1.4〜1.8kcal/mlであり、100ml当たりの糖質含有量(マルトデキストリン)が19g、タンパク質含有量が6g、及び脂質含有量が5.9gである栄養剤が開示されている。かかるタンパク質は加水分解されたホエータンパク質であるため、短ペプチドとアミノ酸の量が多い。したがって、かかる製品は、非常に味の良い栄養分を少量摂取することしかできない患者の要求を満たしていない。
【0015】
他の先行技術の濃縮液状栄養製品は、十分な密度とするために、タンパク質源として大豆タンパク質を、糖質源としてコーンシロップを含有している。しかし、大豆タンパク質を含有してもアミノ酸特性は最適とはならず、大豆タンパク質の味は悪い。また、フラクトースのレベルが高いため、コーンシロップによって過度に甘くなる。したがって、これらの栄養剤は、完全食品というよりも、エネルギー源のサポートとして随時投与することしかできない。
【0016】
【特許文献1】欧州特許第0747395号
【非特許文献2】WO99/42001号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明に従って解決されるべき課題は、悪液質患者等の経口摂取に問題のある人々の摂取に適した栄養組成物を提供することであり、かかる栄養組成物は以下の特徴を含む。
バランスの良い組成物であるため、唯一の食物供給源として摂取することが可能である。
比較的粘度の低い液状組成物であるため、容易に摂取できる。
少なくとも1.45kcal/mlの高密度であるため、一日の必要栄養量を満たすためには1リットル未満で十分である。
十分なレベルの必須アミノ酸、特にリジン、メチオニン、及びシステインを含有する。
存在する遊離アミノ酸及び短ペプチドが最小限で、味も受け入れられる。
浸透圧が比較的低いため、胃を早く通過する。
アレルギーの問題と退色の問題とを防ぐために、ラクトースのレベルがかなり低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の説明
望ましい官能特性を有し、栄養素密度が非常に高く、効率的であり、製造時に問題の起こらない、低濃度の液状経腸栄養剤が製造可能であることがわかった。
【0019】
本発明の製品は液状組成物であり、本製品100ml当たり以下を含む。
【表1】

【0020】
本製品は、好ましくは栄養的に完全である。これは、本成分の一日当たりの最大推奨摂取量1500ml中に全てのビタミンが含まれていることを意味する。また、下記の例に示した量の0.6〜1.5倍量のビタミン(例えば葉酸、ビタミンB6、B12、及びパントテン酸を、含有させることができる。本発明は、乾燥(粉末)製品又は濃縮製品にも関する。これらの製品に水を加えると、上述の低濃度の液状栄養剤が得られる。
【0021】
一態様においては、本発明は、タンパク質組成が改善され、バランスの取れた濃縮液状食品を提供する。従属する他の態様においては、本発明は、糖質組成が改善され、バランスの取れた液状濃縮食品を提供する。
【0022】
タンパク質画分(protein fraction)
タンパク質画分は、100ml当たり少なくとも7.6g、好ましくは7.8〜12gとなる。これは約0.31〜0.48kcal/ml(1.30〜1.59kJ/ml)に相当する。必須アミノ酸の量は栄養必要量を満たしている。通常、非必須アミノ酸(グリシン、アラニン、プロリン、チロシン、セリン、システイン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン)の量に対する、必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジン、リジン)の量を、0.6〜1.1(w/w)とし、好ましくは0.75〜1.05(w/w)、最も好ましくは0.85〜1.0(w/w)とする。更に、タンパク質画分が、好ましくは、少なくとも8.6重量%のリジン残基、少なくとも2.5重量%のメチオニン残基、及び少なくとも0.5重量%のシステイン残基を備え、より好ましくは、少なくとも10重量%のリジン残基、少なくとも2.7重量%のメチオニン残基、及び/又は少なくとも1.0重量%のシステイン残基を備える。
【0023】
かかるタンパク質画分が、組成物のエネルギー含有量の19〜33%となることが好ましく、20〜27%となることが好ましい。タンパク質含有量は大部分(通常は、少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%)がインタクトなタンパク質のみで構成される。遊離アミノ酸の量は、好ましくは総アミノ酸量の5重量%未満であり、特に好ましくは2重量%未満であり、好ましくは製品100ml中0.4g未満であり、特に好ましくは0.2g未満である。好ましくは、乳製品由来のタンパク質が少なくとも90重量%である。カゼインを主なタンパク質構成成分とすることができ、例えば、タンパク質の60〜90%を占める。一方、10〜40重量%、好ましくは20〜37重量%、又は25〜37重量%までも、最も好ましくは25〜35重量%がホエータンパク質である。
【0024】
好ましくは、タンパク質の主要部分は、脱脂乳(スキムミルク)を脱塩することによって得られる。この主要部分は、タンパク質画分の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%である。カゼイン製品とホエータンパク質製剤とを組み合わせると粘性が高まるが、このようなタンパク質画分を用いると、粘性が過度にならずに、完全食品の濃縮濃度を高めることが可能となることがわかった。好ましくは、少なくとも97%、特に少なくとも99%のラクトースを牛乳から除去しながら、必須のインタクトなタンパク質を残すという方法で、脱塩を行う。かかるタンパク質は、ナトリウム、カリウム及び他の電解質に比べてカルシウムが強化されている。これは、限外ろ過処理を使用して行うことができる。このような脱塩された乳タンパク質は乳タンパク質単離物と呼ばれることもある。
【0025】
本発明の組成物のタンパク質画分は、同様の方法でカゼインを脱塩することによって得ることもでき、その後、ホエータンパク質(ホエータンパク質単離物)を随意に加える。ルピナス(lupine)、トウモロコシ、コメ、ダイズ、エンドウマメ、又はジャガイモといった植物性タンパク質等の他のタンパク質も含めることができるが、これらが、組成物のタンパク質含有量の10%(w/w)より多く、特に5%(w/w)より多くの割合を占めないことが好ましい。
【0026】
脂質画分(lipid fraction)
脂質画分は、100ml当たり、約41〜約72kcal(4.5〜8.0g)を提供する。本組成物のエネルギー量の23〜40エネルギー%を占めることが好ましく、28〜35エネルギー%を占めることが好ましい。30〜60重量%の動物性脂肪又は藻類由来の脂肪(algal fat) 、40〜70重量%の植物性脂肪、及び随意に0〜20重量%の中鎖脂肪酸トリグリセリド(主にC8及びC10トリグリセリド:MCT)を、脂質画分が含有することが好ましい。乳脂肪中に含まれる動物性脂肪画分を低くすることが好ましい。すなわち、脂質画分の乳脂肪含有量は6%未満、特に3%未満である。特に、コーンオイル、エッグオイル及び/又はキャノーラオイル並びに特定の品質の魚油の混合物を使用することができる。エッグオイル、魚種及び藻油(algal oil) は植物性脂肪以外では好ましい脂質源である。異臭(off-flavors)を防ぐために、また魚臭い後味を減らすために、ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量が比較的低い原料、すなわち脂質画分に対してDHAが6重量%未満、好ましくは4重量%未満である原料を選択することが推奨される。DHAを含む魚油は、本製品中、好ましくは脂肪画分の25%未満、より好ましくは15%のレベルで存在する。一方、エイコサペンタエン酸(EPA)を含有させることは、最大の健康効果を得るために、非常に望ましい。375mlの食品組成物を投与する場合、脂質画分のEPA重量比は、好ましくは4〜15%、より好ましくは8〜13%であり、一日当たりの摂取量では0.8〜2.3gとなり、最も好ましくは1.2〜1.9gである。EPAとDHAとの重量比は、少なくとも6:4が好都合であり、例えば2:1〜10:1である。
【0027】
炭水化物画分(carbohydrate fraction)
炭水化物画分は、製品100ml当たり17〜27g(2.84〜4.51kJ/ml)の量であることが好ましい。炭水化物が、消化性の糖質と、好ましくは難消化性炭水化物とを含むことが好ましい。消化性の糖質の画分は、100ml当たり約17〜24g(0.68〜1.0kcal/ml、2.84〜4.01kJ/ml)となり、好ましくは17.5〜23.5g/100ml、特に18〜22g/100mlとなる。炭水化物画分が本組成物のエネルギー含有量の38〜66%を占めることが好ましく、40〜60エネルギー%、特に45〜55エネルギー%を占めることがより好ましい。
【0028】
炭水化物画分の組成においては、粘性、甘み、褐色変性(メイラード反応)及び浸透圧がそれぞれ過度にならないようにしなくてはならない。糖質の鎖長の平均を1.5〜6、好ましくは1.8〜4に調整することによって、許容可能な粘度と浸透圧とが得られる。過度に甘くなることを避けるために、スクロースとフルクトースの全体のレベルを、炭水化物画分、特に消化性の糖質の画分の52%未満、好ましくは40%未満とする。デンプン、デンプン画分及びマイルドなデンプン加水分解物(mild starch hydrolysates) (DP6、DE<20)等の長鎖消化性糖質を含めてもよいが、炭水化物画分の25重量%未満、特に15重量%未満の量であることが好ましく、液状食100ml当たり6g未満であり、4g未満であることが好ましい。
【0029】
更に、全炭水化物画分の還元力が、グルコース重量と等量の還元力の40%未満、特に30%未満であることが好ましく、25%未満であることが最も好ましい。低度の粘性も低度の還元力も必要であることから、炭水化物画分が、20〜75重量%、好ましくは20〜65重量%の難消化性の還元性単糖類、二糖類、及び三糖類、特に単糖類と二糖類、最も好ましくは二糖類を含むことになる。非還元性の糖類の適切な例は、スクロース(過度に甘くなることを防ぐため、そのレベルを35%未満に限定することが好ましい)及びトレハロースである。トレハロースは、スクロースを除く他の非還元性の糖類と随意に共に用いられるが、そのトレハロースの好適な量は、好ましくは炭水化物画分の12〜50重量%、より好適には18〜45重量%であり、具体的には消化性の糖質画分の13〜55重量%、特に20〜55重量%である。具体的には、グルコースシロップ、トレハロース、及びスクロースの混合物を使用することができる。
【0030】
上述のエネルギーを提供する糖質に加え、炭水化物画分は、本組成物100ml当たり0.5〜6gの量の難消化性炭水化物(食物繊維)を含むことが好ましい。かかる繊維は、平均DPが2〜20、好ましくは2〜10の難消化性糖類を含む。かかるオリゴ糖は、これらのDP範囲外の糖類を多量に含まず(5重量%未満)、可溶性であることがより好ましい。これらには、例えば、フラクトオリゴ糖(FOS)、トランスガラクトオリゴ糖(TOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、大豆オリゴ糖等が含まれる。随意に、分子量のより大きな化合物、例えばイヌリン、セルロース、難消化性デンプン等を組み入れることもできる。セルロース等の不溶性繊維の量は、好ましくは繊維成分の20重量%未満及び/又は100ml当たり0.4g未満である。カラギナン、キサンタン、ペクチン、ガラクトマンナン、及び他の高分子量(DP>50)の難消化性多糖類等の増粘多糖類の量は、低いことが好ましく、繊維成分の20%未満又は100ml当たり1g未満であることが好ましい。その代わりに、ペクチンやガラクトマンナンの加水分解物等の多糖類の加水分解物を好適に含むことができる。
【0031】
好適な繊維成分は、鎖長(DP)が2〜10の難消化性オリゴ糖である。例えば、ファイバーゾル(難消化性オリゴグルコース)、具体的には水分を添加したファイバーゾル、又はフルクトオリゴ糖若しくはガラクトオリゴ糖等の鎖長が2〜10のオリゴ糖混合物が挙げられる。フルクトオリゴ糖若しくはガラクトオリゴ糖は、高次の糖類(例えばDP11〜20)を少量含んでいてもよい。これらのオリゴ糖は、好ましくは繊維画分の50〜90重量%又は成分100ml当たり0.5〜3gである。他の適切な繊維成分には、部分消化される又は部分的に還元力を有する単糖類、例えばタガトース、パラチノース並びにトレハルロース、及びLitesse Ultra (登録商標)のオリゴデキストロース(oligodextrose)等のケトース末端オリゴ糖(ketose-terminated oligosaccharides)が含まれる。
【0032】
以下の炭水化物組成が特に好ましい。
【表2】

【0033】
糖の大きさ(sugar size)の機能として炭水化物画分を説明すると、単糖類(例えばグルコース)の0〜15重量%(好ましくは2〜10重量%)、二糖類(例えばマルトース、スクロース、トレハロース)の50〜100重量%(好ましくは60〜90重量%)、三糖類(例えばマルトトリオース、ケストース、ラフィノース)の0〜40重量%(好ましくは10〜25重量%)、DP4〜6のオリゴ糖の0〜30重量%及び高次の糖類の0〜25重量%(好ましくは0〜15重量%)が含まれる。
【0034】
その他の成分
二価イオン量は100ml当たり170〜230mgであり、好ましくは180〜220mgである。好ましくはカルシウム量が100ml当たり155〜185mgであり、好ましくは160〜180mgである。リン含有量はタンパク質g当たり10mgを超えてもよく、カルシウム対リンの重量比が1.0〜2.0、好ましくは1.1〜1.7である。100ml当たり8〜1000mgの量のカルニチンを好都合に含有してもよく、好ましくは製品100ml当たり10〜100mgを含有してもよい。カルニチンは、カルニチン、アルキルカルニチン、アシルカルニチン、又は他のカルニチン誘導体の形態を取ってもよい。有機酸は、好ましくは、100ml当たり0.1〜0.6gのレベル、特に100ml当たり0.25〜0.5gのレベルで存在する。これらの酸には、酢酸等の短鎖脂肪酸、乳酸等のヒドロキシ酸、グルコン酸、及びリンゴ酸やクエン酸等の多価ヒドロキシ酸が含まれる。
【0035】
本液状組成物の粘性は低度でなくてはならない。すなわち、せん断速度100s−1、20℃で50mPa・s、好ましくは20〜40mPa・sである。組成物の浸透圧は、好ましくは360〜480mOsm、好ましくは390〜430mOsmである。組成物の密度は1.05〜1.18g/ml、特に1.08〜1.15g/mlである。本液状組成物のエネルギー密度は、好ましくは1.45以上約2.25kcal/ml以下(6.06〜9.4kJ/ml)、より好ましくは1.52kcal/ml以上2.0kcal/ml未満(6.35〜8.35kJ/ml)である。
【0036】
本発明の製品は、低濃度の液体であり、1回分の少量の用量ずつ包装されていることが好ましい。好ましい包装単位は、5〜250ml、特に80〜200ml、具体的には100〜150ml、若しくは5〜30mlである。1ml当たり少なくとも1.45kcalを含み、好ましくは100ml当たり少なくとも7.6gのタンパク質を含む液状食品の、パッケージのサイズが上述のようであることは、食物の経口摂取に問題のある患者に十分な食物を投与する際に非常に有効である。これらのパッケージのサイズは、本発明の特別な形態を構成する。本液体は100ml当たり、少なくとも7.6g以上のタンパク質を含んでいなくてはならず、好ましくは、特定の炭水化物、特定の脂質、ビタミン等の、上述の成分の1つ以上を含む。パッケージは、例えばストローで飲むことができる角型のカートンや、取り外し可能なカバー付きのカートン若しくはプラスチック製ビーカー、又は80〜200mlの少量サイズのボトル、及び例えば10〜30mlサイズの小さなカップの形を取ることができる。他の適切なパッケージの形態は、少量の液体(例えば10〜20ml)を食用の固体又は半固体の殻又はカプセルに包含させたものであって、例えばチョコレートで覆ったもの(ボンボンタイプ)、ゼラチン様のもので覆ったものである。
【0037】
製品の調製
例えば、始めに液状タンパク質画分を調製することによって、本製品を調製することができる。したがって、牛乳を限界ろ過して得た残留物であって乾燥状態のものを水溶液に溶解して、低濃度の液体を得ることができる。次に、炭水化物(例えば、マルトデキストリン、スクロース、トレハロース、及び任意で難消化性オリゴ糖)、水溶性ビタミン、及び他の成分を、一度に加え又は二段階に分けて加え、混合し、適切な粘性に調整する。その後、脂溶性ビタミンを含む脂質画分を添加し、均質化し、熱処理を施し、包装する。
【0038】
効果
本発明による組成物は、悪液質患者等の、十分な量の食物の経口摂取に問題のあるあらゆる患者に適する。本組成物を投与することによって、より多くの量の食物を摂取することが可能となり、除脂肪量(LBM)の減少を減らすことができ、病状の患者の状態や合併症を改善させることができる。本発明の製品に従うと、消費エネルギーに対する供給エネルギーの比率は、従来製品と比較して改善される。
【実施例1】
【0039】
悪液質患者を対象とした製品の組成物
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー密度が少なくとも1.45kcal/ml(少なくとも6.06kJ/ml)である、悪液質患者に与えるのに適した液状完全栄養成分であって、100ml当たり17〜27gの炭水化物画分(0.68〜1.08kcal)と、100ml当たり7.8〜12gのタンパク質画分(0.31〜0.48kcal)と、脂質画分とを含み、タンパク質画分の少なくとも70重量%が牛乳を脱塩することによって得られ、タンパク質画分が25〜37重量%のホエータンパク質を含むことを特徴とする、液状完全栄養組成物。
【請求項2】
脱塩が限外ろ過によって行われることを特徴とする、請求項1記載の液状組成物。
【請求項3】
エネルギー密度が少なくとも1.45kcal/ml(少なくとも6.06kJ/ml)である、悪液質患者に与えるのに適した液体完全栄養組成物であって、100ml当たり17〜27gの炭水化物画分(0.68〜1.0kcal)と、タンパク質画分と、脂質画分とを含み、炭水化物画分が、0〜35重量%のスクロース、15〜45重量%の他の非還元性の単糖類、二糖類、及び/又は三糖類、5〜50重量%の他の単糖類並びに二糖類、並びに、5〜40重量%の他の三糖類及び高次の糖類を含むことを特徴とする、液状完全栄養組成物。
【請求項4】
非還元性の二糖類がトレハロースを含むことを特徴とする、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
エネルギー密度が少なくとも1.45kcal/ml(少なくとも6.06kJ/ml)である、悪液質患者に与えるのに適した液状完全栄養組成物であって、100ml当たり17〜27gの炭水化物画分(0.68〜1.08kcal)と、100ml当たり7.8〜12gのタンパク質画分(0.31〜0.48kcal)と、脂質画分とを含み、タンパク質画分の少なくとも70重量%が牛乳を脱塩することによって得られ、タンパク質画分が5重量%未満の遊離アミノ酸を含むことを特徴とする、液状完全栄養組成物。
【請求項6】
100ml当たりの消化性の炭水化物の量が18〜23.5g、好ましくは18〜22gであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか記載の液状組成物。
【請求項7】
100ml当たり0.5〜6gの繊維を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか記載の液状組成物。
【請求項8】
100ml当たりのタンパク質画分の量が少なくとも8.5g、好ましくは8.7g以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか記載の液状組成物。
【請求項9】
タンパク質画分が少なくとも8.6重量%のリジン残基、少なくとも2.5重量%のメチオニン残基、及び少なくとも0.5重量%のシステイン残基を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか記載の液状組成物。
【請求項10】
タンパク質画分が本質的にインタクトなタンパク質からなり、カゼインを60〜90重量%、好ましくは65〜78%含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか記載の組成物。
【請求項11】
脂質画分の量が100ml当たり5.0〜7.0g(0.45〜0.63kcal/ml)であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか記載の組成物。
【請求項12】
せん断速度100s−1における温度20℃の液体の粘性が50mPa・s未満であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか記載の組成物。
【請求項13】
水に溶解すると請求項1〜12のいずれか記載の組成物が得られる粉末。
【請求項14】
一包装単位当たり、請求項1〜13のいずれか記載の組成物を5〜250ml含む包装された食品。
【請求項15】
一包装単位当たり、少なくとも1.45kcal/mlのエネルギー密度を有する液体食品を5〜150ml含み、100ml当たり少なくとも7.6gのタンパク質を含み、炭水化物、脂肪、及び任意でビタミンを含むことを特徴とする包装された食品。
【請求項16】
液体タンパク質画分を調製し、続いて炭水化物画分及び脂肪画分と混合する、請求項1〜13のいずれか記載の液状製品の調製方法であって、乾燥脱塩した乳製品を水溶液に溶解するが、これは他の水溶性成分の部分と共に溶解してもよく、得られた懸濁液を50mPa・s未満の粘性(100s−1における)に調整し、その後懸濁液を水又は脂肪画分を含む残りの原料と混合し、最終的な組成物を得ることを特徴とする調製方法。


【公表番号】特表2007−532534(P2007−532534A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507260(P2007−507260)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000269
【国際公開番号】WO2005/096845
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】