説明

濃縮装置及び濃縮方法

【課題】無機系のスラリーを減圧濃縮により濃縮する場合において、減圧濃縮の開始時におけるスラリーの濃度にかかわらず、高い濃縮効率を実現する。
【解決手段】濃縮装置1は、減圧濃縮を行う減圧濃縮部1aと、セラミック膜を用いたセラミックろ過を行うセラミック膜ろ過部1bとを有する。濃縮装置1は、セラミック膜ろ過部1bによるスラリー100のろ過と、減圧濃縮部1aによるスラリー100の濃縮とを切り替える切替制御部60を有する。切替制御部60は、スラリーの濃度が低い濃縮前期では、セラミック膜ろ過部1bを用いて前記混合物の濾過し、スラリーの濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮部1aによるスラリーの濃縮に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子と液体との混合物を濃縮する濃縮装置及び濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の原料として使用される無機系のスラリー(例えば、メタノール/水とシリカ)では、含有される無機化合物の微粒子化が進んでいる。このため、このようなスラリー、つまり、微小な固体粒子と液体とが混ざった泥状の混合物を濃縮する工程では、遠心分離や、濾布による濾過が難しく、タンク内を減圧した状態で、蒸気圧差を利用してスラリーから液体を分離することによってスラリーを濃縮する、いわゆる減圧濃縮が一般的に用いられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許3530085公報(段落[0114]など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、減圧濃縮による無機系のスラリーの濃縮方法には、次のような問題があった。すなわち、減圧濃縮の開始時において、スラリーの濃度が低いと、揮発させる溶液量が多く濃縮効率が悪い。
【0004】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、無機系のスラリーを減圧濃縮により濃縮する場合において、減圧濃縮の開始時におけるスラリーの濃度にかかわらず、高い濃縮効率を実現できる濃縮装置、及び濃縮方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、固体粒子と液体との混合物(スラリー)を濃縮する濃縮装置であって、セラミックスによって形成された多孔質膜(セラミックスフィルター11)を用いて前記混合物を濾過するセラミック膜濾過部(セラミック膜ろ過部1b)と、前記混合物を大気圧よりも減圧した減圧下において濃縮する減圧濃縮部(減圧濃縮部1a)と、前記減圧濃縮部による前記混合物の濃縮と、前記セラミック膜濾過部による前記混合物の濾過とを切り替える切替部(切替制御部60)とを備え、前記切替部は、前記混合物の濃度が低い前記混合物の濃縮前期では、前記セラミック膜濾過部を用いて前記混合物の濾過し、前記液体の濃度が前記濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、前記減圧濃縮部による前記混合物の濃縮に切り替えることを要旨とする。
【0006】
本発明の濃縮装置によれば、混合物の濃度が低い濃縮前期、すなわち、揮発させる溶液量が多いときには、セラミック膜濾過部を用いた濾過により、液体と固体粒子とが分離される。これにより、混合物が濃縮される。
【0007】
本発明の濃縮装置によれば、混合物の濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮部を用いた減圧濃縮により、液体が除去される。これにより、混合物が濃縮される。
【0008】
このように、濃縮装置は、混合物の濃度が低いとき、すなわち、揮発させる溶液量が多いときには濾過による濃縮を行い、混合物の濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮を行うことにより、混合物の濃度が低い段階から減圧濃縮によりスラリーを濃縮する場合に比べて、高い濃縮効率を実現することができる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記セラミック膜濾過部は、クロスフローろ過方式によって前記混合物をろ過することを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記多孔質膜は、セラミックスによって形成される多孔質の隔壁部(隔壁部114)と、前記隔壁部によって区画され、前記混合物が透過する複数の流路部(流路部113)とを有することを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、本発明の第3の特徴に係り、前記多孔質膜は、基材(フィルター基材111)と、前記基材上に形成される複数のろ過膜層(ろ過膜層141、ろ過膜層142、ろ過膜層143)とを有し、前記基材は、セラミックスによって形成された多孔質材料に前記隔壁部と流路部とが形成されたものであり、前記ろ過膜層は、前記流路部の内壁上に形成されることを要旨とする。
【0012】
本発明の第5の特徴は、本発明の第6の特徴に係り、前記流路部は、前記多孔質膜の径方向の断面視において、略円形であることを要旨とする。
【0013】
本発明の第6の特徴は、固体粒子と液体との混合物を濃縮する濃縮方法であって、セラミックスによって形成された多孔質膜を用いて前記混合物を濾過するろ過工程(S1)と、前記混合物を大気圧よりも減圧した減圧下において濃縮する減圧濃縮工程(S3)とを有し、前記混合物の濃度が低い前記濃縮前期では、前記ろ過工程が選択され、前記混合物の濃度が前記濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、前記減圧濃縮工程が選択されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の特徴によれば、無機系のスラリーを減圧濃縮により濃縮する場合において、減圧濃縮の開始時におけるスラリーの濃度にかかわらず、高い濃縮効率を実現できる濃縮装置、及び濃縮方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る液体混合物の分離装置及び液体混合物の分離方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的に、(1)濃縮装置の概略構成、(2)膜モジュールの構成、(3)セラミックスフィルターの構成、(4)スラリーの濃縮方法、(5)実施例、(6)作用・効果、(7)その他の実施形態について説明する。
【0016】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0017】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
(1)濃縮装置の概略構成
(1−1)濃縮装置の構成
図1は、本発明の実施形態に係る濃縮装置1の概略構成を説明する図である。濃縮装置1は、減圧濃縮を行う減圧濃縮部1aと、セラミック膜を用いたセラミックろ過を行うセラミック膜ろ過部1bとを有する。
【0019】
セラミック膜ろ過部1bは、固体粒子と液体との混合物(以下、スラリー100という)をろ過する膜モジュール10と、膜モジュール10に向けてスラリーを圧送する循環ポンプ20とを有する。ここで、固体粒子としては、シリカ(酸化ケイ素)、酸化チタン等の無機物の粒子があげられる。液体としては、水、エタノール等のアルコール類があげられる。
【0020】
膜モジュール10は、スラリー100をクロスフローろ過方式によってろ過する。すなわち、膜モジュール10に供給されたスラリー100は、膜モジュール10の膜表面に接触しながら膜モジュール10を通過するとともに、スラリー100の成分の一部は、膜モジュール10の膜を透過してろ液として取り出される。膜モジュール10の詳細は、後述する。
【0021】
濃縮装置1は、セラミック膜ろ過部1bの各構成を連結するスラリー送出管71、スラリー輸送管72、濃縮液輸送管73、及びろ液排出管74を有する。スラリー送出管71は、スラリータンク30と循環ポンプ20とを連結する。スラリー輸送管72は、循環ポンプ20と膜モジュール10とを連結する。スラリーは、循環ポンプ20によって膜モジュール10に向けて圧送される。
【0022】
スラリー輸送管72には、膜モジュール10に供給されるスラリー100の液量を測定する測定部80が配設される。また、濃縮液輸送管73には、膜モジュール10の入口部分における圧力損失を計測する測定部81と、膜モジュール10の出口部分における圧力損失を計測する測定部82とが配設される。
【0023】
濃縮液輸送管73は、膜モジュール10を通過することによって液体がろ過され、濃縮されたスラリー100をスラリータンク30へ供給する。
【0024】
減圧濃縮部1aは、スラリータンク30の内部を大気圧よりも減圧する減圧ポンプ40と、スラリータンク30を加熱する加熱部50とを有する。
【0025】
濃縮装置1は、スラリータンク30と減圧ポンプ40との間に、トラップ41を有する。スラリータンク30とトラップ41とは排気管75で連結される。トラップ41と減圧ポンプ40とは、排気管76で連結される。トラップ41は、スラリータンク30の内部のスラリー100から揮発した気体を捕集する。
【0026】
スラリータンク30を加熱する加熱部50には、蒸気取入管77と、蒸気排出管78とが連結されている。すなわち、加熱部50は、蒸気の熱により、スラリータンク30を加熱する。蒸気排出管78には、スチームトラップ51が設置される。
【0027】
濃縮装置1は、セラミック膜ろ過部1bによるスラリー100のろ過と、減圧濃縮部1aによるスラリー100の濃縮とを切り替える切替制御部60を有する。
【0028】
切替制御部60は、例えば、循環ポンプ20または減圧ポンプ40のオンオフ制御等を行っている。切替制御部60は、スラリーの濃度が低い濃縮前期では、セラミック膜ろ過部1bを用いて前記混合物の濾過し、スラリーの濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮部1aによるスラリーの濃縮に切り替える。
【0029】
上述した実施形態において、セラミック膜ろ過部1bは、セラミック膜濾過部を構成する。切替制御部60は、切替部を構成する。
【0030】
(2)膜モジュールの構成
図2は、膜モジュール10の構成を説明する構成図である。図2に示すように、膜モジュール10は、セラミックスフィルター11と、チャンバー12とを有する。セラミックスフィルター11は、多孔質膜である。チャンバー12は、セラミックスフィルター11を収納する。チャンバー12は、円筒型を有する。チャンバー12の上部には円筒型の上部エレメント保持部121が設けられる。チャンバー12の下部には円筒型の下部エレメント保持部122が設けられる。
【0031】
セラミックスフィルター11は、釉薬部112a(後述する)において、上部エレメント保持部121を介して、チャンバー12に真空密閉状態で固定される。セラミックスフィルター11は、釉薬部112b(後述する)において、下部エレメント保持部122を介して、チャンバー12に真空密閉状態で固定される。
【0032】
スラリー輸送管72は、セラミックスフィルター11の1次側に連結される。ろ液排出管74は、セラミックスフィルター11の2次側に連結される。濃縮液輸送管73は、セラミックスフィルター11の流路部(後述する)に連結される。すなわち、濃縮液輸送管73は、セラミックスフィルター11を透過し、濃縮されたスラリーを循環させる。ここで、1次側とは、スラリーがセラミックスフィルター11の表面と接触する側である。また、2次側とは、ろ液が取り出される側である。スラリーは、セラミックスフィルター11によるクロスフローろ過方式により、膜表面に微粒子等が堆積することなくろ過される。
【0033】
(3)セラミックスフィルターの構成
膜モジュール10を構成するセラミックスフィルター11の構成について、図3,図4を用いて説明する。図3は、セラミックスフィルター11の外観を説明する斜視図である。また、図4は、セラミックスフィルター11の長軸方向に沿った断面図である。
【0034】
セラミックスフィルター11は、フィルター基材111を有する。フィルター基材111は、円筒形状を有する。フィルター基材111の両端部は、ガラス質の膜(釉薬)により被覆されている。すなわち、図3に示すように、フィルター基材111の両端部には、釉薬部112aと釉薬部112bとが形成される。
【0035】
セラミックスフィルター11は、流路部113と、隔壁部114とを有する。隔壁部114には、図示しない細孔が形成されている。流路部113は、隔壁部114によって区画されており、セラミックスフィルター11の長軸方向に沿ってスラリーが透過する通路を形成する。
【0036】
本実施形態では、流路部113は、径方向の断面視において円形を有する。図4に示すように、本発明の実施形態に係るセラミックスフィルター11の流路部113の内壁面には、更に、ろ過膜層141、ろ過膜層142、ろ過膜層143が形成される。
【0037】
セラミックスフィルター11は、親水性である。セラミックスフィルター11は、親水性であり、水に対する選択透過性が高い。そのため、スラリーに含まれる水(或いはアルコール)がセラミックスフィルター11を透過することができる。
【0038】
フィルター基材111は、セラミックスよりなる多孔質材料から形成され、セラミックスフィルター11の主要部を形成する。フィルター基材111には、流路部113と隔壁部114とが成形される。流路部113と隔壁部114は、押出成形などにより成形される。
【0039】
多孔質材料としては、例えば、コーディエライト、ムライト、炭化珪素等のセラミックス材料を使用できる。これらの材料は、耐食性と温度変化によるろ過部の細孔径の変化が少ない。また、充分な強度が得られる等の利点を有する。また、フィルター基材111としては、上記材料の他、アルミナを用いることができる。
【0040】
フィルター基材111上に形成されるろ過膜層141としては、例えば、フィルター基材111より微細なアルミナが挙げられる。ろ過膜層142としては、例えば、チタニア、ジルコニア等が挙げられる。ろ過膜層143としては、シリカ、ゼオライト、炭素等の単層、又は多層構造膜が挙げられる。
【0041】
一例として、流路部113の内径は、2.0mm〜3.0mmである。隔壁部114に設けられた細孔の平均孔径は、10μm〜20μmである。ろ過膜層141の厚さは、100μm程度である。ろ過膜層141に設けられた細孔の平均孔径は、0.1μm程度である。ろ過膜層142の厚さは、10μm程度である。ろ過膜層142に設けられた細孔の平均孔径は、3nm〜6nmである。ろ過膜層143の厚さは、1μm程度である。ろ過膜層143に設けられた細孔の平均孔径は、0.3nm〜0.6nmである。
【0042】
すなわち、セラミックスフィルター11は、実質的に、2.0μm以下の物質を透過可能な膜である。また、セラミックスフィルター11は、分画分子量が10000以上である。
【0043】
図3,図4に示すセラミックスフィルター11によれば、スラリーがセラミックスフィルター11の一方の端面から流路部113に導入されると、そのスラリーに含まれる一成分(例えば、水、エタノールなど)は、流路部113を透過する際に、ろ過膜層143、ろ過膜層142、ろ過膜層141、及び隔壁部114に設けられた細孔を透過してセラミックスフィルター11の最外壁から排出される。こうして、スラリーに含まれる液体と混合物とが分離される。つまり、ろ過膜層143、ろ過膜層142、ろ過膜層141が形成された隔壁部114を有するセラミックスフィルター11は、分離膜として機能する。
【0044】
(4)スラリーの濃縮方法
図5を用いて、濃縮装置1によるスラリーの濃縮方法について説明する。スラリーの濃縮方法は、ステップS1〜S3を有する。
【0045】
ステップS1において、セラミック膜ろ過部1bによるろ過が選択される。すなわち、クロスフローろ過方式により、スラリー100が濃縮される。ろ過条件としては、例えば、循環流速を一定、及びろ過差圧を一定とする定圧ろ過とする。
【0046】
ステップS1において、循環ポンプ20は、スラリー100をスラリータンク30から膜モジュール10に供給する。スラリー100は、膜モジュール10において、セラミックスフィルター11の流路部113に導入される。スラリー100は、流路部113を通過する成分と流路部113を透過する成分とに分離される。
【0047】
流路部113を通過するとともに、ろ過膜層143、ろ過膜層142、ろ過膜層141及び隔壁部114に形成された細孔を透過した成分(例えば、水、アルコール類など)は、ろ液排出管74から取り出される。
【0048】
一方、流路部113を通過する成分は、濃縮液輸送管73を通ってスラリータンク30に戻される。そして、セラミックスフィルター11に再び供給される。スラリー100は、このように循環されるうちに濃縮される。
【0049】
ステップS2において、濃縮装置1の切替制御部60は、スラリーの濃度が閾値以上か否か判定する。閾値を超えていなければ、セラミック膜ろ過部1bによるろ過が継続して行われる。
【0050】
閾値を超えている場合、ステップS3において、減圧濃縮部1aが選択される。すなわち、切替制御部60は、減圧ポンプ40及び加熱部50を稼動させる。所定の濃度に達するまで、減圧濃縮が行われる。
【0051】
スラリー100の濃度は、測定部81によって測定される膜モジュール10の入口部分における圧力損失、測定部82によって測定される膜モジュール10の出口部分における圧力損失、測定部80によって測定されるスラリー100の液量などから判定される。また、スラリー100の粘度から切替タイミングを判断してもよい。
【0052】
以上のように、濃縮装置1は、スラリー100の濃度が低い濃縮前期、すなわち、揮発させる溶液量が多いときには、セラミック膜ろ過部1bを選択しスラリー100の濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮部1aによるスラリーの濃縮に切り替える。
【0053】
セラミックスフィルター11の流路部113を通過するスラリー100の線速度、ろ過差圧等を調整することによって、ろ過効率の低下を防ぐことができる。
【0054】
(5)実施例
(5−1)実施例1
隔壁部に実質的に孔径0.1μmの孔を有するセラミックスフィルターを用いて、スラリーを濃縮した。濃縮時の各条件を以下に示す。
・スラリー
無機スラリー(メタノール/水+シリカ)、濃度:5wt%、液量:2000L
・セラミックスフィルター
外径30cm、長さ1000mm(分離係数20以上)
流路部の内径:3.0mm、(断面に対して、37個)
基材材質:アルミナ層
循環線速:3.0m/s、ろ過差圧:0.3MPaとする定圧ろ過方式
スラリー温度:70℃
逆洗条件:逆洗差圧0.2MPa、逆洗時間2秒間(30分間隔)・減圧濃縮条件
減圧時スラリータンク内圧力:−0.05MPa、減圧時タンク温度:70℃
上述した無機スラリーの液量を200L(50wt%)になるまで濃縮するのに必要な時間を計測した。
【0055】
実施例1では、スラリーの全液量が半分になるまで、すなわち、1000Lになるまでセラミックスフィルターを用いて濃縮し、1000Lから200Lになるまで減圧濃縮を行った。
【0056】
(5−2)比較例1
実施例1と同じセラミックスフィルターのみを用いて、実施例1と同じ無機スラリーの液量を200L(50wt%)になるまで濃縮するのに必要な時間を計測した。
【0057】
(5−3)比較例2
実施例1と同じ条件の減圧濃縮のみを行って、実施例1と同じ無機スラリーの液量を200L(50wt%)になるまで濃縮するのにかかる時間を計測した。
【0058】
(5−4)結果
上述した無機スラリーの液量を200L(50wt%)になるまで濃縮するのにかかる時間を比較した。スラリーの濃度が低い濃縮前期、すなわち、揮発させる溶液量が多いときにはセラミック膜ろ過による濃縮を行い、スラリーの濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮を行うことにより、濃縮時間を短縮することができる。すなわち、スラリーの濃度が低い段階から減圧濃縮を用いてスラリーを濃縮する従来方法に比べて、高い濃縮効率を実現することができると言える。
【0059】
(6)作用・効果
濃縮装置1によれば、スラリーの濃度が低い濃縮前期、すなわち、揮発させる溶液量が多いときには、セラミック膜ろ過部1bを用いた濾過により、液体と固体粒子とが分離される。これにより、スラリー100が濃縮される。
【0060】
濃縮装置1によれば、混合物の濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮部1aを用いた減圧濃縮により、液体(水、エタノールなどのアルコール類)が除去される。これにより、スラリー100が濃縮される。
【0061】
このように、濃縮装置1は、スラリー100の濃度が低いとき、すなわち、揮発させる溶液量が多いときには濾過による濃縮を行い、スラリー100の濃度が濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、減圧濃縮を行うことにより、スラリー100の濃度が低い段階から減圧濃縮によりスラリーを濃縮する場合に比べて、高い濃縮効率を実現することができる。
【0062】
(7)その他の実施形態
上記のように、本発明は、上述した実施形態によって説明したが、本発明は、この開示の一部をなす論述及び図面によって、限定されない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0063】
上述の実施形態では、切替制御部60は、スラリーの濃度に応じて、セラミック膜ろ過部1bと、減圧濃縮部1aとを切り替えると説明したが、切り替えのタイミングは、スラリーの濃度に限定されない。例えば、スラリーの濃度のほか、スラリーの液量、スラリーの粘度から判定してもよい。また、セラミック膜ろ過の開始時から所定時間が経過したことによって切り替えてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、セラミックスフィルター11の流路部113を通過するスラリー100の線速度、ろ過差圧等を調整することによって、ろ過効率の低下を防ぐと説明した。しかし、ステップS1では、セラミックスフィルター11に対して、いわゆる逆洗処理を行うことによって、ろ過効率の低下を抑制する効果を高めることもできる。この場合には、図1に示すろ液排出管74に逆洗ポンプ(不図示)を設置する。一例として、ろ液排出管74から排出されるろ液を逆洗液として用いることができる。
【0065】
図6は、ステップS1におけるクロスフローろ過を詳細に説明したフロー図である。図6に示すように、ステップS11において、循環ポンプ20は、スラリー100を膜モジュール10に向けて圧送する。
【0066】
ステップS12において、膜モジュール10の1次側におけるスラリー100の送り圧と、透過側(2次側)におけるスラリー100の送り圧との差であるろ過差圧に基づいて逆洗を実行するか否かを判定する。
【0067】
所定のろ過差圧に達すると、ステップS13において、所定の逆洗条件に基づいて逆洗処理を実行する。すなわち、ろ過差圧が所定の数値範囲を超えるまでクロスフローろ過を連続的に行う。ステップS13では、逆洗ポンプ(図1に不図示)が稼動されて、逆洗液が膜モジュール10の透過側から膜モジュール10の原液側に向けて圧送される。セラミックスフィルター11を透過する成分の流れる方向が通常のろ過方向とは反対になる。これにより、流路部113の表面に付着した固体粒子等を除去することができる。
【0068】
上述した実施形態では、セラミック膜ろ過部1bにおいて、例えば、スラリーの精製を行うこともできる。例えば、アルミナ水和物を含有するスラリーに、水と酸とを添加した混合物をスラリータンク30に入れて濃縮を開始すると、セラミック膜ろ過部1bにおいて、アルミナ水和物の脱塩処理が可能である。
【0069】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る濃縮装置を説明する構成図である。
【図2】本実施形態に係る膜モジュールを説明する構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係るセラミックスフィルターを説明する斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るセラミックスフィルターの長軸方向の断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る濃縮方法を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る濃縮方法におけるクロスフローろ過を詳細に説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1…濃縮装置、1a…減圧濃縮部、1b…セラミック膜ろ過部、10…膜モジュール、11…セラミックスフィルター、12…チャンバー、20…循環ポンプ、30…スラリータンク、40…減圧ポンプ、41…トラップ、50…加熱部、51…スチームトラップ、60…切替制御部、71…スラリー送出管、72…スラリー輸送管、73…濃縮液輸送管、74…ろ液排出管、75…排気管、76…排気管、77…蒸気取入管、78…蒸気排出管、80,81,82…測定部、100…スラリー、111…フィルター基材、112a,112b…釉薬部、113…流路部、114…隔壁部、121…上部エレメント保持部、122…下部エレメント保持部、141…ろ過膜層、142…ろ過膜層、143…ろ過膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子と液体との混合物を濃縮する濃縮装置であって、
セラミックスによって形成された多孔質膜を用いて前記混合物を濾過するセラミック膜濾過部と、
前記混合物を大気圧よりも減圧した減圧下において濃縮する減圧濃縮部と、
前記減圧濃縮部による前記混合物の濃縮と、前記セラミック膜濾過部による前記混合物の濾過とを切り替える切替部とを備え、
前記切替部は、前記混合物の濃度が低い前記混合物の濃縮前期では、前記セラミック膜濾過部を用いて前記混合物を濾過し、前記混合物の濃度が前記濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、前記減圧濃縮部による前記混合物の濃縮に切り替える濃縮装置。
【請求項2】
前記セラミック膜濾過部は、クロスフローろ過方式によって前記混合物をろ過する請求項1に記載の濃縮装置。
【請求項3】
前記多孔質膜は、
セラミックスによって形成される多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部によって区画され、前記混合物が透過する複数の流路部とを有する請求項1に記載の濃縮装置。
【請求項4】
前記多孔質膜は、基材と、前記基材上に形成される複数のろ過膜層とを有し、
前記基材は、セラミックスによって形成された多孔質材料に前記隔壁部と流路部とが形成されたものであり、
前記ろ過膜層は、前記流路部の内壁上に形成される請求項3に記載の濃縮装置。
【請求項5】
前記流路部は、前記多孔質膜の径方向の断面視において、略円形である請求項4に記載の濃縮装置。
【請求項6】
固体粒子と液体との混合物を濃縮する濃縮方法であって、
セラミックスによって形成された多孔質膜を用いて前記混合物を濾過するろ過工程と、
前記混合物を大気圧よりも減圧した減圧下において濃縮する減圧濃縮工程とを有し、
前記混合物の濃度が低い前記濃縮前期では、前記ろ過工程が選択され、前記混合物の濃度が前記濃縮前期よりも高くなった濃縮後期では、前記減圧濃縮工程が選択される濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−110743(P2010−110743A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288280(P2008−288280)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】