説明

濃縮[11C]一酸化炭素を用いるUV光による[11C]ホスゲンの合成方法及び装置

UV光によるホスゲンの標識合成の方法及びシステムが提供される。また、標識ホスゲンからの、PETトレーサーとして有用な標識化合物の合成方法も提供される。得られる炭素同位体で標識した化合物は放射性医薬品、特に陽電子放射断層撮影に使用するのに有用である。PET研究のための付随するキットも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識合成において一酸化炭素同位体を使用する方法及び装置に関する。さらに具体的には、本発明は、最初の[11C]二酸化炭素ガス混合物から[11C]一酸化炭素の濃縮されたガス混合物を製造し、製造されたガス混合物をUV光によるホスゲンの標識合成に用いる方法及び装置に関する。放射標識ホスゲンは放射標識一酸化炭素と塩素ガスを前駆体として得られる。
【背景技術】
【0002】
短命の陽電子放射線核種(例えば、11C、t1/2=20.3分)で標識したトレーサーは、陽電子線断層撮影(PET)と一緒に、様々な非侵襲性インビボ研究にしばしば用いられる。標識物質の放射能、短い半減期及び微小モル量のため、これらのトレーサーの製造には特別の合成手順が必要である。これらの手順の精緻さにおける重要な部分は、新しい11C標識前駆体の開発並びに取り扱いである。これは、新しい型の化合物を標識化することだけではなく、所与の化合物の異なる位置を標識化することの可能性を増加させるために重要である。短寿命の放射線核種を用いる合成標識方法の開発を通じて、化学的な収率と同じ範疇の因子として時間を認識することが重要である。
【0003】
過去二十年間の間に、一酸化炭素を用いるカルボニル化の化学反応は大きく進展した。パラジウム触媒作用によるカルボニル化結合反応などの、最近の方法の開発によって、一酸化炭素を異なるカルボニル化合物へ変換するための穏やかで効率的な手法が提供されている。
【0004】
生物学的活性物質はしばしばカルボニル基又はカルボニル基から誘導することのできる官能性を有するので、[11C]一酸化炭素を用いるカルボニル化反応は、PETトレーサー合成に重要な価値を有する。合成は、大部分の官能基を受け入れることができ、これはカルボニル化段階で複雑な構造ブロックを組み立てて、目標化合物を生成することが可能であることを意味する。これは、合成時間を減少させ、したがって未補正放射化学収率を最適化するために、反応手順の中で標識化されない基質を標識化前駆体とできるだけゆっくり結合させなければならないPETトレーサー合成において特に価値がある。
【0005】
化合物に11Cで標識化するとき、通常、比放射能を最大にすることが重要である。これを達成するために、同位体希釈及び合成時間を最小化しなければならない。[11C]二酸化炭素が標識反応に用いられるとき、実質的に大気の二酸化炭素から同位体を希釈することができる。一酸化炭素は反応性及び大気濃度(0.1ppm対3.4×10ppmのCO)が低いので、この問題は[11C]一酸化炭素を用いる反応では低減される。
【0006】
亜鉛、活性炭、又はモリブデンなどの還元剤を含む加熱されたカラムを用いて、[11C]二酸化炭素から[11C]一酸化炭素を合成することは、以前にもいくつかの刊行物に記述された。
【0007】
冷却トラップ技術は、特に[11C]二酸化炭素の場合、11C標識前駆体の取り扱いに広く用いられる。しかし、手順は単一段階でのみ行われ、標識化合物は冷却トラップの加熱と同時に常に連続的なガス流中に放出された。さらに、標識化合物を捕捉するために用いられる材料の体積は、標識化合物を輸送するシステムに比べて比較的大きかった。したがって、この技術を標識化合物の基本的な濃縮及び合成システムの小型化に用いる選択肢は探究されなかった。これは、11C標識化合物の量が通常20〜60ナノモルである事実を考えれば、特に注目すべきことである。
【0008】
11C]一酸化炭素の製造及び使用に関する最近の技術開発によって、この化合物は標識合成に有用なものになった。国際公開第02/102711号は、最初の二酸化炭素同位体ガス混合物から一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物を製造し使用するためのシステム及び方法について記述している。[11C]一酸化炭素は、サイクロトロンで製造された[11C]二酸化炭素から高い放射化学収率で得ることができ、比放射能の高い目標化合物を生成するのに使用することができる。この反応器は上記問題の困難性を克服し、[11C]一酸化炭素を用いて、パラジウム又はセレニウム触媒作用反応での11C標識化合物の合成に有用である。それらの方法で、広範囲のカルボニル化合物を標識化することができる(Kilhlberg,T.;Langstrom,B.J.,Org.Chem.64、1999、9201〜9205。Kihlberg,T.;Karimi,F.;Langstrom,B.,J.,Org.Chem.67、2002、3687〜3692)。
【0009】
カルバモイル基は医薬品などの生物学的活性化合物において一般的であり、したがって11C標識の重要な目標である。しかし、カルバモイル化合物合成のセレニウム触媒反応は、強い求核性の第一級アミン又は好ましい閉環の使用に限定される。他方、[11C]ホスゲンは、非常に反応性があり、原理的に全ての種類のカルバモイル化合物の標識化に使用することができる。この理由により、[11C]ホスゲンの使用はカルバモイル化合物を11C標識化するための一般的な手法であった。
【0010】
しかし、既存の[11C]ホスゲン製造法は、多くの欠点を有する。例えば、[11C]ホスゲンは、[11C]一酸化炭素から塩素化剤としてのPtCl高温の流れで作ることができる(Roeda,D.、Crouzel,C.及びVan Zanten,B.、Radiochem.Radioanal.Lett.、33、175(1978))。しかし、この手法を用いて再現性のある結果を得るためには、温度制御は非常に重要且つ困難であり、収率は特に高くはない。さらに、この手順は、PtCl中に既に存在する不活性一酸化炭素のため、多量のキャリアホスゲンを必要とする。
【0011】
他の手法は、Roedaらによって記述される(Roeda,D.、Westera,G.、International Journal of Applied Radiation & Isotope.、931〜932、Vol.32、1981)。これは、[11C]一酸化炭素と塩素ガスとのUV照射によって誘起された反応を用いて、インフロー[11C]ホスゲン製造システムを用いる。しかし、この手法は塩素の比較的高体積且つ多量の連続的なガス流のシステムを用いる。その結果、塩素ガスがキャリアホスゲンの主要源であるので、システムが嵩高になり、本方法の比放射能レベルは比較的低い。
【0012】
また、[11C]メタンの使用に基づく他の方法は、低レベルの比放射能、並びに合成システムが複雑で信頼性が低いという欠点を有する。
【特許文献1】国際公開第02/102711号パンフレット
【非特許文献1】Kilhlberg,T.;Langstrom,B.J.Org.Chem.64、1999、9201〜9205
【非特許文献2】Kihlberg,T.;Karimi,F.;Langstrom,B.J.Org.Chem.67、2002、3687〜3692
【非特許文献3】Roeda,D.、Crouzel,C.及びVan Zanten,B.、Radiochem.Radioanal.Lett.、33、175(1978)
【非特許文献4】Roeda,D.、Westera,G.、International Journal of Applied Radiation & Isotope.、931〜932、Vol.32、1981
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、上記の問題を克服し、有用なPETトレーサー調製の重要な出発材料として、[11C]ホスゲンの有用性をさらに高める目標構造を与えるシステム及び方法が必要である。
【0014】
本明細書中の参考文献に関する議論又は引用は、その参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものと解釈すべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
(a)反応室とUV光源とを備えるUV反応器アセンブリであって、高圧反応室が凹ミラーに面する窓と、第1ガス入口と、第2ガス入口とを有するUV反応器アセンブリを準備する段階
(b)標識すべき所定体積の試薬を準備する段階と、
(c)第1ガス入口を経由して、一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物をUV反応器アセンブリの反応室に導入する段階と、
(d)第2ガス入口を経由して、Clガスを反応室に導入する段階と、
(e)UV光源を点灯し、標識合成が行われる間、所定時間待機する段階と、
(f)反応室から標識ホスゲンを取り除く段階と
を含むホスゲンの標識合成方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、反応室及びUV光源を含むUV反応器アセンブリを含み、該反応室は、UV光源に面する窓と、その頂部面及び/又は底部面の第1ガス入口及び第2ガス入口とを有し、UV光源からのUV光線は反応室の窓に入る標識合成システムを提供する。
【0017】
本発明は、本発明の方法によって合成された[11C]ホスゲンを用いた、PETトレーサーとしての標識化合物の合成方法をさらに提供する。
【0018】
さらに他の実施形態では、本発明は、本発明によって製造された[11C]ホスゲンを用いて合成された11C標識化合物も提供する。さらに他の実施形態では、本発明は、それらの11C標識化合物を含むPETトレーサーとして使用するキットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の目的は、先行技術の装置の欠点を克服する、標識合成における一酸化炭素同位体の製造及び使用のための方法及びシステムを提供することである。これは本発明において特許請求された方法及びシステムによって達成される。
【0020】
それらの方法及びシステムの利点は、塩素ガスの量を大幅に低減することができ、[11C]ホスゲンのほぼ定量的な減衰補正放射化学収率を達成できることである。
【0021】
本発明の方法及びシステムには、いくつかの他の利点がある。ガス拡散防止材料からなる閉じたシステムの使用は、感受性の高い化合物の安定性を高め、適正製造規範(GMP)に関しても有利なはずである。
【0022】
さらに、得られる標識化合物が高濃度に濃縮される利点、及び合成システムの小型化によって、自動化、急速合成、精製、及び同位体希釈の最小化による比放射能の最適化が容易になる他の利点が達成される。
【0023】
ここで、図を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
本明細書を通して用いられる用語の炭素同位体は、好ましくは11Cを指すが、望むならば、11Cは13C及び14Cなどの他の炭素同位体に置き換えることができることを理解すべきである。
【0025】
図1は、本発明による方法のフロー図を示し、第1に一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物の製造を含み、第2に標識合成手順を含む。さらに詳細には、方法の製造部分は、
以下で詳細に説明する種類の適切なキャリアガス中の一酸化炭素同位体を準備する段階と、
以下で詳細に説明する反応器装置にガス混合物を導入して二酸化炭素同位体を一酸化炭素同位体に変換する段階と、
二酸化炭素同位体は捕捉されるが一酸化炭素同位体又はキャリアガスは捕捉されない二酸化炭素除去装置(二酸化炭素除去装置は以下で詳細に説明する)中に、変換したガス混合物を通過させることによって、二酸化炭素同位体の痕跡を取り除く段階と、
一酸化炭素同位体は捕捉されるがキャリアガスは捕捉されない一酸化炭素捕捉装置(一酸化炭素捕捉装置は以下で詳細に説明する)中に一酸化炭素同位体を捕捉する段階と、
捕捉された一酸化炭素同位体を捕捉装置から放出し、それによって一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物の容量が得られる段階とを含む。
【0026】
最初の二酸化炭素同位体ガス混合物が、二酸化炭素同位体と、窒素などの類似の分子特性等のため一酸化炭素用のキャリアガスとして不適切な第1キャリアガスとからなるならば、製造段階は、最初の二酸化炭素同位体ガス混合物用のキャリアガスを変更する段階をさらに含むことができる。さらに詳細には、He、Arなどの適切な第2キャリアガス中の二酸化炭素同位体を準備する段階は、
二酸化炭素同位体は捕捉されるが第1キャリアガスは捕捉されない二酸化炭素除去装置(二酸化炭素除去装置は以下で詳細に説明する)中に、最初の二酸化炭素同位体を通過させる段階と、
二酸化炭素捕捉装置に適切な第2キャリアガスを流して、第1キャリアガスの残渣を除去する段階と、
捕捉された二酸化炭素同位体を適切な第2キャリアガス中に放出する段階とを含む。
【0027】
製造段階に続くことのできる標識合成段階は、製造された二酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物を標識試薬として用いる。さらに詳細には、標識合成の段階は、
UV光源及びその頂部及び/又は底部にClガス試薬入口と標識試薬入口を有する反応室を含むUV反応器アセンブリ(UV反応器アセンブリ及び反応室は以下で詳細に説明する)を準備する段階と、
薬剤として使用する所定体積のClガス試薬の容量を準備する段階と、
一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物を標識試薬入口を経由して反応室に導入する段階と、
Clガス試薬をClガス試薬入口を経由して反応室に導入する段階と、
UV光源を起動し、標識合成が行われる間、所定時間待機する段階と、
標識ホスゲンを反応室から取り除く段階とを含む。
【0028】
所定時間待機する段階は、標識合成を促進するように反応室の温度を調節する段階をさらに含むことができる。
【0029】
図2は、本発明による[11C]二酸化炭素製造及び標識化システムの概要を示す。システムは、3つの主要ブロックからなり、各々製造及び標識化方法の3つの主要段階の1つを取り扱う。
【0030】
最初の二酸化炭素同位体ガス混合物が、二酸化炭素同位体と、一酸化炭素用のキャリアガスとして不適切な第1キャリアガスとからなるならば、ブロックAは、最初の二酸化炭素同位体ガス混合物用キャリアガスを変更するために用いられる。
【0031】
ブロックBは、二酸化炭素同位体から一酸化炭素同位体へ変換し、変換された一酸化炭素同位体ガス混合物を精製し濃縮するために用いられる。
【0032】
ブロックCは、炭素同位体ホスゲン合成を行うために用いられる。
【0033】
二酸化炭素同位体は、窒素及び0.1%酸素を含む目標ガス中で17MeVのプロトンを衝突させて、14N(p,α)11C反応を用いて通常製造され、それによって最初の二酸化炭素同位体ガス混合物がキャリアガスとして窒素を含むという事実のため、ブロックAが通常必要とされる。しかし、一酸化炭素に比べて窒素は分子特性に或る類似性を示し、例えば、捕捉装置等中でそれらを互いに分離することが困難であり、それによってそれらのガス混合物中で一酸化炭素同位体の濃度を増加させることが困難である。替りに、適切なキャリアガスは、ヘリウム、アルゴン等とすることができる。また、ブロックAは、外部システムがブロックB及びCに必要なガス圧に許容性がない場合に、キャリアガスの圧力を変化させる(例えば、1〜4バール)ために用いることができる。代替の実施形態では、最初の二酸化炭素同位体ガス混合物は、二酸化炭素同位体と、一酸化炭素用キャリアガスとして好適な第1キャリアガスとからなり、それによってブロックAを単純化し又は省略することさえできる。
【0034】
好ましい実施形態(図2)によれば、ブロックAは第1バルブV1、二酸化炭素捕捉装置8、及び第2バルブV2からなる。
【0035】
第1バルブV1は、最初の二酸化炭素同位体ガス混合物源12に結合された二酸化炭素入口10と、ヘリウム、アルゴン等の適切なキャリアガス源16に結合されたキャリアガス入口14とを有する。第1バルブV1は、第2バルブV2の第1入口20に結合された第1出口18と、二酸化炭素捕捉装置8に結合された第2出口22とをさらに有する。バルブV1は2つのモードA、Bで動作することができ、モードAにおいて、二酸化炭素入口10は第1出口18に結合され、キャリアガス入口14は第2出口22に結合され、モードBにおいて、二酸化炭素入口10は第2出口22に結合され、キャリアガス入口14は第1出口18に結合される。
【0036】
第1入口20に加えて、第2バルブV2は二酸化炭素捕捉装置8に結合された第2入口24を有する。第2バルブV2は、廃棄物出口26と、ブロックBの生成物入口30に結合された生成物出口28とをさらに有する。バルブV2は、2つのモードA、Bで動作することができ、モードAにおいて、第1入口20は廃棄物出口26に結合され、第2入口24は生成物出口28に結合され、モードBにおいて、第1入口20は生成物出口28に結合され、第2入口24は廃棄物出口26に結合される。
【0037】
二酸化炭素捕捉装置8は、二酸化炭素が捕捉されるが第1のキャリアガスは捕捉されない装置であり、その後捕捉された二酸化炭素を制御して放出することができる。これは、好ましくは、冷却状態にある材料(例えば、液体窒素として−196℃、又は液体アルゴンとして−186℃)を含むカラムなど、冷却トラップを用いて達成することができ、二酸化炭素を選択的に捕捉し、暖かい状態(例えば、+50℃)で捕捉された二酸化炭素を放出する。(本明細書において、「冷却トラップ」は低温装置の使用に制限されない。したがって、室温で局所用の化合物を捕捉し、より高温でそれを放出する材料が含まれる。)適切な材料の例は、シリカ及びporapac Q(登録商標)である。シリカカラム又はporopacカラムの捕捉挙動は、双極子−双極子相互作用、又はおそらくファンデルワールス相互作用に係わる。カラム8は、捕捉材料の容量が十分大きくて二酸化炭素同位体を効率的に(>95%)捕捉し、捕捉した二酸化炭素のブロックBへの移動が遅延しない程度に十分小さく形成されることが好ましい。porapac Q(登録商標)及び100ml窒素/分の流量の場合、容量は50〜150μlとすべきである。さらに二酸化炭素捕捉装置8の冷却及び加熱は、例えば、自動的にカラムを液体窒素中に降し、そこから加熱配置へ動かすことによって、自動化工程で行われるように構成することができる。
【0038】
図2の好ましい実施形態によれば、ブロックBは、二酸化炭素同位体が一酸化炭素同位体に変換される反応器装置32と、二酸化炭素除去装置34と、チェックバルブ36と、一酸化炭素捕捉装置38とから構成され、全て1つのラインに結合される。
【0039】
好ましい実施形態では、反応器装置32は、正しい温度間隔で加熱されるとき、二酸化炭素同位体を一酸化炭素同位体に変換する材料を含む反応炉である。二酸化炭素を一酸化炭素へ変換する能力のある広範囲の異なる材料、例えば、亜鉛若しくはモリブデン、又は類似の還元特性を有する任意の他の元素若しくは化合物を用いることができる。反応器装置32が亜鉛炉であるならば、それは350℃〜400℃の温度に加熱すべきであり、温度は高い精度に制御することが重要である。亜鉛の融点は420℃であり、亜鉛炉は、温度が410℃以上に達すると、おそらくは表面特性の変化により、急速に二酸化炭素を一酸化炭素へ変換するその能力を失う。材料の量は、少量の使用を保証することのできる有効量とすべきであり、これは、放射能を二酸化炭素捕捉装置8から後続の一酸化炭素捕捉装置38へ輸送するのに必要な時間を最小にする。炉中の材料の量は、炉の実際の寿命(少なくとも7日間)を保証するために十分大きくすべきである。亜鉛顆粒の場合、容量は100〜1000μlとすべきである。
【0040】
二酸化炭素除去装置34は、反応器装置32を出るガス混合物から二酸化炭素同位体の痕跡を除去するために用いられる。二酸化炭素除去装置34において、二酸化炭素同位体は捕捉されるが、一酸化炭素同位体やキャリアガスは捕捉されない。二酸化炭素除去装置34はascarite(登録商標)(すなわち、シリカ上の水酸化ナトリウム)を含むカラムから構成される。反応器装置32に到達しなかった二酸化炭素同位体は、一酸化炭素同位体が通過する間に、このカラム中に捕捉される(水酸化ナトリウムと反応すれば炭酸ナトリウムに変化する)。二酸化炭素除去装置34中の放射能が高い値に監視されることは、反応器装置32が適切に機能していないことを示す。
【0041】
二酸化炭素捕捉装置8のように、一酸化炭素捕捉装置38は捕捉状態及び放出状態を有する。捕捉状態において、一酸化炭素同位体は選択的に捕捉されるがキャリアガスは捕捉されず、放出状態において、捕捉された一酸化炭素同位体は制御された形で放出される。これは、シリカ又はモレキュラーシーブなど類似特性の材料を含むカラムなどの冷却トラップを用いて達成できることが好ましい。それらの冷却トラップは、−100℃以下、例えば、液体窒素で−196℃、又は液体アルゴンで−186℃の冷却状態で、一酸化炭素を選択的に捕捉し、暖かい状態(例えば、+50℃)で捕捉された一酸化炭素を放出する。シリカカラムの捕捉挙動は、双極子−双極子相互作用、又は多分ファンデルワールス相互作用が係わる。シリカカラムの一酸化炭素同位体の捕捉能力は、放射能を運ぶヘリウムが窒素を含むならば低下する。原理は、窒素の物理的特性が一酸化炭素に類似するので、窒素がシリカ上の捕捉部位について一酸化炭素と競合するためである。
【0042】
図2の好ましい実施形態によれば、ブロックCは、第1及び第2反応室バルブV3及びV5と、排気/閉鎖バルブV4と、UV光源91及び反応室50を含むUV反応器アセンブリ51とから構成される。
【0043】
第1反応室バルブV3は一酸化炭素捕捉装置38に結合されたガス混合物入口40と、閉鎖位置42と、廃棄物出口46と、反応室50の第1ガス入口52に結合された反応室結合口48とを有する。第1反応室バルブV3は2つの動作モードA及びBを有する。モードAにおいて、ガス混合物入口40は廃棄物出口46に結合され、閉鎖位置42は反応室結合口48に結合される。モードBにおいて、閉鎖位置42は廃棄物出口46に結合され、ガス混合物入口40は反応室結合口48に結合される。
【0044】
排気/閉鎖バルブV4は、反応室バルブV3に結合された入口70と出口72とを有する。排気/閉鎖バルブは2つの動作モードA及びBを有する。モードAにおいて、入口70と出口72は結合される。モードBにおいて、入口70と出口72は結合されない。
【0045】
図3はUV反応器アセンブリ51の概要図である。それはUV光源91と反応室50とを含む。適切なUV光源は、反応器近くのUVランプ、又はUVランプと、光学合焦システムと、UV光を反応器窓に導く光ファイバーとを含む装備とすることができる。好ましい実施形態では、それはベンチ93と保護筐体94も含み、全ての部品は保護筐体内に配置されベンチ上に搭載される。それは、適宜凹ミラー92を含むことができ、UVビームは合焦することができる。最も好ましい実施形態では、それはモーター95と、磁石攪拌器96と、磁石攪拌子97と、熱電対98とをさらに含む(図5参照)。
【0046】
好ましい実施形態では、全ての部品はベンチ上に搭載される。それらは、UV照射に対して保護するために外側の薄い保護筐体で遮蔽される。圧縮空気は筐体の頂部面に固定された入口を経由して供給され、装置を換気し、UV光源に通常の運転条件を与える。
【0047】
光学図は図4に示される。UV光源からのUV光線は反応器空洞に直接導くことができ、又は代替の実施形態として、適宜球状凹ミラーを使用してアークの出力を集め、それを反応器空洞に導くことができる。球状凹ミラーが用いられるとき、UV光源がミラーで集められた光を遮断しないように、光源及び反応器はミラーの光学軸から外される。これは、UVランプが使用されるとき、バルブの過熱を防止する。反応器とUV光源の間の距離は、アーク像を最小にするために最小に保たれる。
【0048】
反応室51は、室の頂部及び/又は底部面で終端するように配置された第1ガス入口52と第2ガス入口54を有する。また、第2ガス入口54は、標識が終了した後に生成物出口として用いることもできる。動作の間、一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物は第1ガス入口52を経由して反応室51に導入され、Clガスは第2ガス入口54を経由して反応室51に入る。標識が終了した後、標識した内容物は、第2ガス入口/生成物出口54を経由して、殆ど定量的に反応室からヘリウムなどのキャリアガスと共に輸送され、第1反応室バルブV3はモードBであり第2反応室バルブV5はモードCである。
【0049】
特定の実施形態では、図5はステンレス(Valco(登録商標))カラム端部金具から作られた反応室を示す。それにはサファイア窓が設けられ、短波長のUV照射に透明な硬質材料である。窓は、ドリル孔明けされたカラム端部金具内部の2個のTeflonワッシャー間に押圧され、反応器は気密にされる。温度測定は反応器の外側に半田液滴で固定された熱電対98で行われる。磁石攪拌器は反応室内に置かれた小さなTeflon被覆磁石を駆動する。磁石攪拌器はアセンブリの反応室側部に取り付けることができる。磁石攪拌器と反応器間の距離は最小にすべきである。
【0050】
図6は、光源によって生成した過剰の熱を除去し、反応質を一定温度に保つために使用される装置を示す。銅管は、合金を充填した、短くより大きな直径の銅管の一片中に配置することができる。六角形の孔を作り、反応室のナットに気密に固定することができる。反応器と恒温槽間の熱伝達を高めるために、熱伝導性シリコングリースを用いることができる。次いで、熱電対はゴム管で独立型の水浴熱電対に結合することができる。
【0051】
図2に戻って参照すれば、第2反応室バルブV5はClガス入口57と、閉鎖部58と、アンチモンカラム64への出口62と、開口55とを有する。第2反応室バルブV4は、4つの動作モードA〜Dを有する。反応室結合口56は、モードAにおいてClガス入口57に結合され、モードBにおいて閉鎖部58に結合され、モードCにおいて出口62に結合され、モードDにおいて開口55に結合される。
【0052】
一酸化炭素捕捉装置38中のシリカ容量が少ないことを除いて、二酸化炭素捕捉装置8並びに全ての関連先行技術に比べて重要な差は、一酸化炭素を放出するために用いられる手順である。一酸化炭素捕捉装置8で一酸化炭素を捕捉した後、バルブV4はモードAからBへ変更され、一酸化炭素捕捉装置38からの流れを閉鎖し、一酸化炭素捕捉装置38のガス圧力を設定供給ガス圧力(3〜5バール)まで高くする。次いで、一酸化炭素捕捉装置38は加熱され、キャリアガス中の一酸化炭素の容量を著しく膨張させずにシリカ表面から一酸化炭素を放出する。バルブV3はモードAからBに変更される。このとき、一酸化炭素は明確に規定されたマイクロプラグで急速に且つ殆ど定量的に反応室50中に輸送される。マイクロプラグは反応室50の容量の10%未満のガス容量と定義され、局所用の物質を含む(例えば1〜20μL)。閉じた出口を有する小さな反応室50に効率的に質量を輸送するこの独特の方法には、以下の必要条件がある。
【0053】
以下のように画定されたマイクロカラム38を用いるべきである。捕捉材料(例えば、シリカ)の容量は、一酸化炭素同位体を効率的に捕捉する(>95%)ために十分大きく、一酸化炭素同位体の最大濃度を可能にするために十分小さくなければならない。(後続の反応室50の容量の<1%)。シリカ及び反応室50の容量が200μLである場合、シリカの容量は0.1〜2μLとすべきである。
【0054】
シリカカラムと反応室50を結合する配管とバルブの無効容量は、最小にすべきである(マイクロオートクレーブ容量の<10%)。
【0055】
キャリアガスの圧力は輸送前の反応室50の圧力(1気圧)よりも3〜5倍高くすべきである。
【0056】
特定の好ましい実施形態の仕様において、材料及び成分は以下のように選択される。Valco(登録商標)、Reodyne(登録商標)又はCheminert(登録商標)からの高圧バルブが用いられる。移動を容易にするために外径1/32インチのステンレス配管が用いられるシリカカラム若しくはporapacカラム8、シリカカラム38、反応室50への結合を除いて、外径1/16インチのステンレス配管が用いられる。V1、V2、V3の間の結合は、内径0.2〜1mmを有すべきである。必要なことは、内径が、システムを通るHeの最適な流れ(2〜50ml/分)を達成する可能性を妨害しないように十分大きく、シリカ又はporapacカラム8からシリカカラム38への放射能の輸送に必要な時間を遅延しないように十分小さくなければならないことである。V3とオートクレーブ間の結合の無効容量は、最小にすべきである(オートクレーブ容量の<10%)。結合の内径(0.05〜0.1mm)は最適なHe流れ(2〜50ml/分)が可能なように十分大きくなければならない。V3と反応室50間の結合の無効容量は、オートクレーブ容量の10%未満とすべきである。
【0057】
カラム8がporapacカラムであるとき、Porapac Q(登録商標)を充填しステンレススクリーンを固定したステンレス管(外径=1/8インチ、内径=2mm、l=20mm)から構成されることが好ましい。シリカカラム38は、端部に空洞(d=1mm、h=1mm、V=0.8μl)を有するステンレス管(外径=1/16インチ、内径=0.1mm)から構成されることが好ましい。空洞にはGC静止相型のシリカ粉体(100/80メッシュ)が充填される。カラムの端部はステンレススクリーンに対して固定される。
【0058】
アンチモンカラム64は入口及び出口を有し、Clガスに対して不活性な材料から作られた管から構成される。カラムは50〜1000mgの顆粒アンチモン(例えば10〜50メッシュ)で充填され、過剰のClガスを消費するのに十分である。アンチモンは2個のフリットでその位置を保持することができる。
【0059】
11C]二酸化炭素及び[11C]一酸化炭素捕捉装置には、広範囲の異なる材料を使用できることに留意すべきである。GC材料が選択されるならば、基準は、二酸化炭素と一酸化炭素それぞれの良好な減速及び良好なピーク形状になるはずである。後者は放射能の最適な回収を確実にする。
【0060】
上述の例示的システムを用いる炭素同位体を製造する方法が、以下で詳細に説明される。
【0061】
システムの調製は、1〜5の段階で行われる。
(1)位置AにおけるV1、位置AにおけるV2、位置AにおけるV3、位置AにおけるV4、位置BにおけるV3、位置CにおけるV5、最大圧力5バールでのヘリウムの流れ。この設定で、ヘリウム流は[11C]二酸化炭素捕捉カラム、亜鉛炉へ流れ、[11C]一酸化炭素捕捉カラム、反応室54、及びアンチモンカラムへ流れる。システムはヘリウムで調節され、ヘリウムが少なくとも10ml/分でシステムを通過することができることを確認することができる。
(2)亜鉛炉を起動し、360〜400℃に設定する。
(3)[11C]二酸化炭素と[11C]一酸化炭素捕捉カラムは液体窒素で冷却される。−196℃で、[11C]二酸化炭素捕捉カラムと[11C]一酸化炭素捕捉カラムは、それぞれ効率的に二酸化炭素同位体と一酸化炭素同位体を捕捉する。
(4)V3は位置Aにあり、したがってV5は位置Aにある。反応器54にはここで塩素ガスが充填される。
(5)V5は位置B(閉鎖)にある。
【0062】
二酸化炭素同位体の製造は、段階6〜7によって行われる。
(6)二酸化炭素同位体は、14N(p,α)11C反応を用い、窒素(AGA、Nitrogen 6.0)と0.1%酸素(AGA、Oxygen 4.8)を含む目標ガス中で17MeVプロトンを衝突させて製造される。
(7)二酸化炭素同位体は100ml/分の流速の窒素を用いて装置へ輸送される。
【0063】
その後、炭素同位体ホスゲンの合成は段階8〜14によって行われる。
(8)位置BのV1、及び位置BのV2。二酸化炭素同位体を含む窒素流はここで[11C]二酸化炭素捕捉カラム(−196℃に冷却される)を通って導かれ、廃棄物ラインを通って排出される。[11C]二酸化炭素捕捉カラムに捕捉された放射能は監視される。
(9)放射能がピークに達すると、V1は位置Aに変更される。ここで、ヘリウム流が
11C]二酸化炭素捕捉カラムを通って導かれ、廃棄物ライン(26)を通って排出される。この運転によって、配管及び[11C]二酸化炭素捕捉カラムから窒素が排除される。
(10)V2は位置Aにあり、[11C]二酸化炭素捕捉カラムは約50℃に加熱される。ここで、放射能は[11C]二酸化炭素捕捉カラムから放出され、10ml/分の流速のヘリウム流で亜鉛炉中に輸送され、そこで一酸化炭素同位体へ変換される。
(11)[11C]一酸化炭素捕捉カラム(−196℃に冷却される)に到達する前に、ガス流はascariteカラムを通る。一酸化炭素同位体はここで[11C]一酸化炭素捕捉カラムに捕捉される。[11C]一酸化炭素捕捉カラムの放射能は監視され、値がピークに達するとV4は位置Bに設定される。
(12)[11C]一酸化炭素捕捉カラムが約50℃まで加熱され、一酸化炭素同位体が放出される。V3は位置Bに設定され、一酸化炭素同位体は15秒内で反応室54に輸送される。
(13)V3は位置Aに設定され、反応器54はUV光で照射される。
(14)十分な反応時間(10秒〜2分間)の後、V5は位置Cに設定され、次いでV3は位置Bに設定される。反応室50の内容物はアンチモンカラムを経由して[11C]ホスゲンが捕捉され標識化反応に使用される区画へ輸送される。
【0064】
最近開発された、本発明による完全に自動化された反応室50システムでは、11Cで標識したトレーサー用前駆体としての[11C]一酸化炭素の価値は、[11C]ヨウ化メチルに匹敵するようになった。現在、[11C]ヨウ化メチルは、製造及び取り扱いが容易であり、[11C]ヨウ化メチルでの標識に適した基(例えば、メチル基に結合したヘテロ原子)は、生物学的活性物質の中で一般的であるので、最もしばしば用いられる11C前駆体である。また、都合よく合成され[11C]一酸化炭素で標識化することのできるホスゲンは、生物学的活性物質合成の重要な出発材料である。多くの場合、この手段はより有利でさえある。PETトレーサーを製造するために、[11C]一酸化炭素及び[11C]ホスゲンを使用することは、したがって、[11C]ヨウ化メチルの興味深い補完物になることができる。さらに、類似の技術の使用によって、この方法は13C及び14C置換化合物の合成に適用できそうである。
【0065】
本発明の主な利点は、高い比放射能を有する[11C]ホスゲンを合成するための小型で効率的なシステム及び方法を提供することである。このようにして合成された[11C]ホスゲンは、多くの物質と反応して、価値のあるPETトレーサーとして使用できる有用な11C標識生成物を与えることができる。一般的な反応式を以下に示す。
【0066】
【化1】

式中、XはN、O、S、又はSeから選択され、R、R′、R″、及びR″′は独立に存在しないか、或いはH、直鎖若しくは環状低級アルキル又は置換アルキル、アリール若しくは置換アリールであり、カルボニル、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、ニトリル、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート官能基、炭素−炭素二重結合若しくは炭素−炭素三重結合を含むことができる。さらに、R、R′、R″、及びR″′は、閉環反応の場合、連結することができる。得られる標識生成物は、X、R、R′、R″及びR″′が上記のように定義される式を有する。それらは様々なPET研究のための価値のあるPETトレーサーを与える。得られる標識生成物は、[11C]LU29−066、[11C]及び[11C]尿素を含む。本発明の実施形態では、これらの標識生成物をPET像形成に使用するためのPETトレーサーとしての使用方法が提供される。本発明の他の実施形態では、得られる11C標識生成物を含むPETトレーサーとして使用するためのキットが提供される。
【0067】
それらのキットは、人間への投与、例えば、血流への直接注入に適した殺菌製品を与えるように設計される。適切なキットは、アドレナリン作動性妨害物質及びアドレナリン作動性イメージング剤の前駆体を収容する容器(例えば、隔壁封止バイアル)を含む。
【0068】
キットは、適宜、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調整剤又は充填剤など、追加の成分をさらに含む。
【0069】
用語「放射線防護剤」は、水の放射線分解から生じる含酸素遊離ラジカルなど、反応性の高い遊離ラジカルを捕捉することによって、酸化還元工程などの分解反応を抑制する化合物を意味する。本発明の放射線防護剤は、アスコルビン酸、パラアミノ安息香酸(すなわち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(すなわち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、及び生物適合性のあるその塩から適切に選択される。
【0070】
用語「抗菌防腐剤」は、バクテリア、酵母、カビなど、有害な可能性のある微生物の成長を抑制する薬剤を意味する。また、抗菌防腐剤は、投与量に応じていくらか殺菌特性を呈する。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、医薬組成物の後再構成、すなわち、放射線診断製品自体におけるそれらの微生物の成長を抑制することである。しかし、抗菌防腐剤を適宜使用して、再構成前に、本発明のキットの1種以上の成分中の有害な可能性のある微生物成長を抑制することができる。適切な抗菌防腐剤は、パラベン、すなわちメチル、エチル、プロピル若しくはブチルパラベン、又はその混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド、及びチオマーサルを含む。好ましい抗菌防腐剤はパラベンである。
【0071】
用語「pH調整剤」は、再構成したキットのpHが許容限度内(約4.0〜10.5のpH)にあることを保証する化合物若しくは化合物の混合物を意味する。適切なそれらのpH調整剤は、トリシン、リン酸塩又はTRIS[すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]などの医薬品的に許容できる緩衝剤、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、又はその混合物など、医薬品的に許容できる塩基を含む。酸塩形成にリガンド複合体が用いられるとき、キットの使用者が多段階手順の部分としてpHを調整することができるように、別のバイアル又は容器にpH調整剤を適宜供給してもよい。
【0072】
用語「充填剤」は、製造及び凍結乾燥の間、材料取り扱いを容易にすることのできる医薬品的に許容できる増量剤を意味する。適切な充填剤は、塩化ナトリウムなどの無機塩、スクロース、マルトース、マンニトール、又はトレハロースなどの水溶性糖又は糖アルコールを含む。
【実施例】
【0073】
以下の実施例において、本発明をさらに説明するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0074】
実施例−実験装備
11C]二酸化炭素製造をUppsala IMANETにおいて、Scanditronix MC−17サイクロトロンを用いて行った。窒素(Nitrogen 6.0)と0.1%の酸素(Oxygen 4.8)を含むガス標的中で17MeVプロトンを衝突させる14N(p,α)11C反応を用いた。[11C]一酸化炭素は、本明細書で述べた[11C]二酸化炭素の還元によって得られた。[11C]二酸化炭素での合成は、「Synthia 2000」システムの部分の自動化モジュールで行った。
【0075】
特定の実施形態、参照文献の記載
本発明は、本明細書に述べた特定の実施形態によって範囲が制限されない。実際に、当業者であれば、前述の説明及び添付図面から、本明細書に述べたものに加えて本発明の様々な改変が明らかになるであろう。それらの改変は添付した特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0076】
様々な刊行物及び特許出願が本明細書に記載され、その開示は、その全体を参照して本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による方法に関するフロー図である。
【図2】本発明による一酸化炭素同位体製造及び標識化システムの概要図である。
【図3】UV反応器アセンブリの主要部分を示す。
【図4】UV反応器アセンブリの光学システムの概要図である。
【図5】反応室の断面図である。
【図6】反応室及びその冷却套を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスゲンの標識方法であって、
(a)高圧反応室とUV光源とを備えるUV反応器アセンブリであって、高圧反応室が凹ミラーに面する窓と、第1ガス入口と、第2ガス入口とを有するUV反応器アセンブリを準備する段階と、
(b)標識すべきClガスを準備する段階と、
(c)第1ガス入口を経由して、一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物をUV反応器アセンブリの反応室に導入する段階と、
(d)第2ガス入口を経由して、Clガスを反応室中に導入する段階と、
(e)UV光源を点灯し、標識合成が行われる間、所定時間待機する段階と、
(f)標識ホスゲンを反応室から取り出す段階と
を含む方法。
【請求項2】
一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物が、
(a)適切なキャリアガス中の二酸化炭素同位体を準備する段階と、
(b)反応器装置中にガス混合物を導入して二酸化炭素同位体を一酸化炭素同位体に変換する段階と、
(c)一酸化炭素同位体は捕捉されるがキャリアガスは捕捉されない一酸化炭素捕捉装置中に一酸化炭素同位体を捕捉する段階と、
(d)捕捉された一酸化炭素同位体を捕捉装置から、明確に規定されたマイクロプラグに放出し、それによって、所定体積の一酸化炭素同位体の濃縮されたガス混合物を得る段階とを含む方法によって製造される請求項1記載の方法。
【請求項3】
炭素同位体が、11C、13C、又は14Cである請求項1記載の方法。
【請求項4】
炭素同位体が11Cである請求項1記載の方法。
【請求項5】
UV光源がUVランプである請求項1記載の方法。
【請求項6】
所定時間待機する段階が、標識合成を促進するように反応室中を攪拌する段階を含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
所定時間待機する段階が、標識合成を促進するように反応室の温度を調節する段階をさらに含む請求項7記載の方法。
【請求項8】
(a)高圧反応室を含むUV反応器アセンブリと、
(b)UV光源とを含む標識合成システムであって、
高圧反応室が、UV光源に面する窓と、その頂部及び/又は底部面に第1ガス入口及び第2ガス入口とを有し、UV光線が反応室の窓に入るシステム。
【請求項9】
高圧反応室の窓に面する凹ミラーをさらに含み、凹ミラーがUV光源からのUV光線を合焦することができる請求項8記載のシステム。
【請求項10】
モーターと、磁石と、反応室内の磁石攪拌子とをさらに含む請求項8記載のシステム。
【請求項11】
窓がサファイア窓である請求項8記載のシステム。
【請求項12】
保護筐体と、反応室、UVランプ、及び凹ミラーを搭載することのできるベンチとをさらに含む請求項9記載のシステム。
【請求項13】
請求項1記載の方法によって合成された炭素同位体ホスゲンと以下の式(I)の化合物及び式(II)の化合物とを反応させて以下の式(III)の標識化合物を得る段階を含む放射線標識化方法。
【化1】

式中、XはN、O、S、又はSeから選択され、R、R′、R″、R″′は独立に存在しないか、或いはH、直鎖若しくは環状低級アルキル又は置換アルキル、アリール若しくは置換アリールである。
【請求項14】
R、R′、R″、及びR″′が、カルボニル、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、ニトリル、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート官能基、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を含むことができる請求項13記載の方法。
【請求項15】
R、R′、R″、及びR″′が、閉環反応の場合に結合することができる請求項13記載の方法。
【請求項16】
一酸化炭素同位体が[11C]一酸化物である請求項13記載の方法。
【請求項17】
請求項13記載の方法によって合成された次式(III)の炭素同位体標識化合物。
【化2】

式中、XはN、O、S、又はSeから選択され、R、R′、R″、R″′は独立に存在しないか、或いはH、直鎖若しくは環状低級アルキル又は置換アルキル、アリール若しくは置換アリールである。
【請求項18】
R、R′、R″、R″′が、カルボニル、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、ニトリル、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート官能基、炭素−炭素二重結合若しくは炭素−炭素三重結合を含むことができる請求項17記載の炭素同位体標識化合物。
【請求項19】
R、R′、R″、R″′が、閉環反応の場合に結合することができる請求項17記載の炭素同位体標識化合物。
【請求項20】
式(III)の炭素同位体標識化合物を含むPET研究用キット。
【化3】

式中、XはN、O、S、又はSeから選択され、R、R′、R″、R″′は独立に存在しないか、或いはH、直鎖若しくは環状低級アルキル又は置換アルキル、アリール若しくは置換アリールである。
【請求項21】
放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調整剤、又は充填剤をさらに含む請求項20記載のキット。
【請求項22】
放射線防護剤が、アスコルビン酸、パラアミノ安息香酸、ゲンチシン酸、及びその塩から選択される請求項21記載のキット。
【請求項23】
抗菌防腐剤が、パラベン、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド、チオマーサルから選択される請求項21記載のキット。
【請求項24】
pH調整剤が、医薬的に許容された緩衝剤若しくは医薬的に許容された塩基、又はその混合物である請求項21記載のキット。
【請求項25】
充填剤が、無機塩、水溶性糖又は糖アルコールである請求項21記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−525394(P2007−525394A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542043(P2006−542043)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003907
【国際公開番号】WO2005/054128
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】