説明

濡れ戻り防止生地、肌着用生地、及び肌着

【課題】一般の人々が抵抗感なく使用でき、肌感触等の着心地に優れた薄形で速乾性に優れた濡れ戻り防止生地、肌着用生地、及び肌着を提供する。
【解決手段】肌側地組織2と裏側地組織3が単糸繊度の異なる原糸で編成された生地であって、肌側地組織2が、裏側地組織3を編成する原糸の単糸繊度より大きな単糸繊度の疎水性の原糸で編成されるとともにその表面が起毛処理されている濡れ戻り防止生地で、単糸繊度が3.0デシテックスから7.0デシテックスの範囲であり、フィラメント数が12本から48本の範囲の長繊維が肌側地組織を編成する原糸として採用され、単糸繊度が0.3デシテックスから3.5デシテックスの範囲であり、フィラメント数が12本から144本の範囲の疎水性の長繊維が裏側地組織を編成する原糸として採用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌側地組織と裏側地組織が単糸繊度の異なる原糸で編成された生地に関し、特に濡れ戻り防止生地、肌着用生地、及び肌着に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、女性は出産時の体への負荷や、加齢によるホルモンバランスの変化などが原因で、30代以降の世代で軽い「尿漏れ」があることが知られているが、男性にも同様に「尿漏れ」があることはあまり認知されていない。そのため周りに相談できず、軽い「尿漏れ」に悩む中高年男性が以外に多い現実がある。
【0003】
特許文献1には、表生地、保水層、吸水拡散層、防水生地がこの順番で設けられていることを特徴とする尿漏れ対策生地が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、吸水性に優れるとともに濡れ戻りが極めて少ない特殊布帛として、パイル布帛からなる特殊布帛であって、地組織を構成する繊維の50%以上が吸水性繊維であり、かつパイルを構成する繊維の50%以上が疎水性繊維で構成されていることを特徴とする特殊布帛が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−111181号公報
【特許文献2】特開平07−324250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された尿漏れ対策生地は、保水層を備え、成人用オムツやオムツ機能付きパンツなどの下着に用いられる厚手の生地であり、ごく軽い「尿漏れ」に悩む中高年層が、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感無く、容易に着用できるような肌着に適用することが困難であった。
【0007】
また、特許文献2に記載された特殊布帛は、主にタオル、ハンカチ、バスローブ、ピローケース等に用いられるものであり、地組織を構成する吸水性繊維の単糸繊度が大きく比較的厚手であるため、肌感触等の着心地が好ましくなく、また、速乾性も不十分であるため、日中に着用する肌着等には適しないという問題があった。
【0008】
さらに、「尿漏れ」という観点以外に、腋の発汗等、体液の上着への染み出しを回避するために、汗取りパッド等が衣服の内側に装着される場合が多いが、吸水層を含む多層構造が採用されるため厚手になり、肌に触れる生地として用いる場合には、装着感という観点等で一層の改良の余地もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、一般の人々が抵抗感なく使用でき、肌感触等の着心地に優れた薄形で速乾性に優れた濡れ戻り防止生地、肌着用生地、及び肌着を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による濡れ戻り防止生地の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、肌側地組織と裏側地組織が単糸繊度の異なる原糸で編成された生地であって、肌側地組織が、裏側地組織を編成する原糸の単糸繊度より大きな単糸繊度の疎水性の原糸で編成されるとともにその表面が起毛処理されている点にある。
【0011】
上述の構成によれば、裏側地組織が、肌側地組織を編成する原糸の単糸繊度より小さな原糸で編成されるため、比較的薄形で密な地組織が実現でき、その結果、密な地組織による良好な毛細管現象により水分が速やかに吸収され、生地の面方向へ拡散される。また、肌側地組織が、裏側地組織を編成する原糸の単糸繊度より大きな単糸繊度の疎水性の原糸で編成され、その表面が起毛処理されるため、起毛処理で形成されるループにより地組織と肌面との間に間隙が形成され、肌側地組織から裏側地組織に浸潤した水分による肌面への濡れ戻りが効果的に抑制される。そして、当該ループは裏側地組織より単糸繊度の大きな原糸で構成されるため、適度な弾性を有し、地組織と肌面との間に形成される空間を維持しながら良好な着心地を確保することができる。従って、肌側から生地に浸潤した水分による肌への濡れ戻りを効果的に抑制することができるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記肌側地組織を編成する原糸は、単糸繊度が3.0デシテックスから7.0デシテックスの範囲であり、フィラメント数が12本から48本の範囲の長繊維である点にあり、この範囲の原糸を用いることにより、地組織と肌面との間にループで形成される空間が確実に維持され、濡れ戻りを防止しつつ、良好な肌触りが確保できる。
【0013】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記裏側地組織を編成する原糸は、単糸繊度が0.3デシテックスから3.5デシテックスの範囲であり、フィラメント数が12本から144本の範囲の疎水性の長繊維である点にある。
【0014】
裏側地組織を編成する原糸として疎水性の原糸が用いられるので、原糸に水分が貯留されることなく、肌側地組織から取り込まれた水分が単糸繊度の小さな裏側地組織の毛細管現象により速やかに周囲に浸潤するため、肌側への濡れ戻りを防止しつつ、浸潤した水分が裏側地組織から速やかに蒸散されるようになる。
【0015】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記肌側地組織及び前記裏側地組織を編成する原糸は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンの何れかから選択される点にあり、これらの合成繊維によって、濡れ戻りが無く、肌触りが良好な肌着用生地を得ることができるようになる。
【0016】
本発明による肌着用生地は、同請求項5に記載した通り、吸水性の原糸で編成された表生地の裏側の少なくとも一部に、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた濡れ戻り防止生地が重畳されている点にある。
【0017】
上述の構成によれば、肌との接触側であって尿漏れ部や発汗部等少なくとも一部に、上述の濡れ戻り防止生地を配することにより、全体として軽量で快適な着心地の肌着用生地を得ることができ、薄形の濡れ戻り防止生地が表生地の裏側に重畳されているので、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感無く、容易に着用できるようになる。
【0018】
同第二の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記表生地の表面が撥水加工されている点にあり、濡れ戻り防止生地に比較的多めの水分が浸潤した場合であっても、ズボンやシャツ等のアウターウェアに滲み出すような不都合が解消される。
【0019】
同第三の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記表生地と前記濡れ戻り防止生地の間に、吸水性の原糸で編成された中間生地が重畳され、少なくとも前記中間生地の肌側表面が撥水加工されている点にあり、濡れ戻り防止生地に比較的多めの水分が浸潤した場合であっても、肌側表面が撥水加工された中間生地に水分が浸潤することが無い。
【0020】
本発明による肌着の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述した第一から第三の何れかに記載の肌着用生地が一部に縫製されている点にあり、例えば、パンツの前身ごろ中央部や、シャツの腋部分等に好ましく適用できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明によれば、一般の人々が抵抗感なく使用でき、肌感触等の着心地に優れた薄形で速乾性に優れた濡れ戻り防止生地、肌着用生地、及び肌着を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明による濡れ戻り防止生地の説明図、(b)は本発明による肌着用生地の説明図、(c)は本発明に用いる肌着の一例の説明図
【図2】本発明に用いるサテン編の経編地の編成組織図
【図3】本発明に用いるハーフトリコット編の経編地の編成組織図
【図4】(a)はクインズコード編の経編地の編成組織図、(b)はシャークスキンの経編地の編成組織図
【図5】(a)は本発明による濡れ戻り防止生地を用いた汗取り用パッドが縫製された肌着の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による濡れ戻り防止生地、肌着用生地、及び肌着を説明する。
図1(a)に示すように、本発明による濡れ戻り防止生地1は、肌側地組織2と裏側地組織3の二つの地組織を備え、肌側地組織2と裏側地組織3がそれぞれ単糸繊度の異なる原糸で編成され、肌側地組織2が、裏側地組織3を編成する原糸の単糸繊度より大きな単糸繊度の疎水性の原糸で編成され、編成後に肌側地組織2が起毛機で起毛処理され、引き出された原糸によるループ2aが形成されている。
【0024】
裏側地組織3を編成する原糸として、単糸繊度が0.3T(単位「T」は、デシテックスを示す。)から3.5Tで、フィラメント数が12F(単位「F」は、フィラメント数を示す。)から144Fの範囲の長繊維を使用することができる。単糸繊度が0.5Tから3.0Tで、フィラメント数が12Fから48Fの範囲の長繊維を使用することがより好ましい。後述するように、水分の良好な拡散性を確保でき、良好な風合いが得られるからである。
【0025】
また、肌側地組織2を編成する原糸は、単糸繊度が3.0Tから7.0Tで、フィラメント数が12Fから48Fの範囲の長繊維を使用することができる。単糸繊度が4.5Tから6.5Tで、フィラメント数が12Fから36Fの範囲の長繊維を使用することがより好ましい。
【0026】
単糸繊度が3.5Tより細くなると、フィラメントの強度が低下するため、起毛時にフィラメントが切断される可能性があり、そうなると肌に触れたときに痛みを感じるようになる。切断されずにループ状の起毛が形成されても、適度な弾性力が生じないため、肌との間に良好な空間が形成されず、濡れ戻り感が防止できなかったり、乾燥性が低下する。
【0027】
単糸繊度が7.0Tより太くなると、起毛機の針布がフィラメントに引っかからず起毛性が劣るという不都合が生じるばかりでなく、フィラメントが硬くなり生地の風合いも硬く、良好な着用感が得られない。さらには、太くなり過ぎると毛細管現象が低下して肌からの吸水性、吸水した水分の拡散性、乾燥性も低下する。そのため、各原糸は、上述した範囲の長繊維を使用することが必要となる。
【0028】
上述した範囲の長繊維を肌側地組織2及び裏側地組織3に使用する場合には、肌側地組織2が、裏側地組織3を編成する原糸の単糸繊度より大きな単糸繊度の原糸が選択される。尚、肌側地組織と裏側地組織が単糸繊度の異なる原糸で編成された生地として用いられている医療用生地等では、通常、肌側地組織を編成する原糸の単糸繊度が2.0T以下の細い原糸が用いられ、裏側地組織を編成する原糸の単糸繊度がそれより大きな単糸繊度の原糸が用いられるのに対して、本発明では、その逆の単糸繊度の原糸が用いられる。
【0029】
良好な濡れ戻り防止感及び着心地を確保する上で、裏側地組織3を編成する原糸の単糸繊度と、肌側地組織2を編成する原糸の単糸繊度の比が1:1.5〜1:4の範囲で選択されることが好ましく、1:1.8〜1:3の範囲で選択されることがさらに好ましい。
【0030】
肌側地組織2及び裏側地組織3を編成する原糸として、共に疎水性の原糸が選択され、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維が好適に用いられる。中でも、堅牢度、風合い、染色性等の観点からポリエステルを用いることが好ましい。
【0031】
裏側地組織3が、肌側地組織2を編成する原糸の単糸繊度より小さな原糸で編成されるため、比較的薄形で密な地組織が実現でき、また、肌側地組織2に対する起毛処理により引き出される肌側地組織2の原糸による張力によって、裏側地組織3がより肌側地組織2側に引き付けられる。
【0032】
その結果、肌側地組織2から浸潤した水分が、密な裏側地組織3による良好な毛細管現象により速やかに吸収され、生地の面方向へ拡散されるようになり、効果的に濡れ戻りが防止され、且つ、疎水性の原糸で編成された裏側地組織3では、原糸に水分が貯留されることなく、水分が裏側地組織の毛細管現象により速やかに周囲に拡散するため、肌側への濡れ戻りを防止しつつ、浸潤した水分が速やかに蒸散されるようになる。
【0033】
また、肌側地組織2が、裏側地組織3を編成する原糸の単糸繊度より大きな単糸繊度の疎水性の原糸で編成され、その表面が起毛処理されるため、起毛処理で形成されるループ2aにより地組織2と肌面との間に間隙が形成され、肌側地組織2から裏側地組織3に浸潤した水分による肌面への濡れ戻りが効果的に抑制される。そして、当該ループ2aは裏側地組織3より単糸繊度の大きな原糸で構成されるため、適度な弾性を有し、肌側地組織2と肌面との間に形成される空間を維持しながら良好な着心地を確保することができる。従って、肌側から生地に浸潤した水分による肌への濡れ戻りを効果的に抑制することができるようになる。
【0034】
濡れ戻り防止生地1は、少なくとも前筬及び後筬の二枚の筬を備えたトリコット機等の経編機、織機、または、丸編機等を用いて編成することができる。
【0035】
図2から図4には、経編機を用いて編成された経編地の編成組織図が示されている。図2は、前筬Fの経糸でシングルサテン編を、後筬Bの経糸でシングルトリコット編をしたサテン編の経編地を示し、図3は、前筬Fの経糸でシングルコード編を、後筬Bの経糸でシングルトリコット編をしたハーフトリコット編の経編地を示し、図4(a)は、前筬Fの経糸で鎖編を、後筬Bの経糸でシングルコード編等をしたクインズコード編の経編地が示され、図4(b)は、前筬Fの経糸でシングルトリコット編を、後筬Bの経糸でコード編をしたシャークスキン編の経編地を示している。
【0036】
本発明による濡れ戻り防止生地では、図2に示すサテン編の経編地が好適に用いられる。前筬Fの経糸により肌側地組織2が編成され、後筬Bの経糸により裏側地組織3が編成され、経編地の編成後に肌側地組織2が起毛機で起毛処理される。
【0037】
前筬を(4×1),(5×1)にすることも可能であるが、通常の(3×1)に設定するのが最も好ましい。特に起毛処理前のループの長さが2.5mmから3.5mmの範囲が好適である。ループが短い場合には、起毛機の針布がループに掛からずに円滑に起毛できず、ループが長過ぎる場合には、製品化した場合にループが引っ掛かり易いためである。
【0038】
さらに、図3に示すハーフトリコット編の経編地も濡れ戻り防止生地として使用可能であり、前筬Fの経糸により肌側地組織2が編成され、後筬Bの経糸により裏側地組織3が編成される。
【0039】
同様に起毛処理前のループの長さが2.5mmから3.5mmの範囲となるようなパイル編み等の他の編成組織も好適である。
【0040】
図4(a)のクインズコード編や、図4(b)のシャークスキンの経編地では、後筬Bに振りの大きい組織が配置され、この振りの大きな組織は前筬で編成される生地の中に入り、起毛処理するのに適した組織生地とはならないため、濡れ戻り防止生地として、好適に使用できない。
【0041】
図1(c)には、上述した濡れ戻り防止生地1が一部に縫製された男性用下着4の例であるボクサーブリーフが示されている。吸水性の原糸で編成された表生地5の裏側の少なくとも一部、図では前マチ部4aの裏面に上述した濡れ戻り防止生地1が重畳されている。
【0042】
当該濡れ戻り防止生地1は、裏側地組織3を編成する原糸として、単糸繊度が2.8Tで、フィラメント数が12Fのポリエステル繊維が使用され、肌側地組織2を編成する原糸として、単糸繊度が5.6Tで、フィラメント数が15Fのポリエステル繊維が使用されている。
【0043】
図1(b)に示すように、表生地5と濡れ戻り防止生地1の間に、吸水性の原糸で編成された表地と同様の中間生地6が重畳され、少なくとも中間生地6の外衣側表面6a、及び、表生地5の外衣側表面5aが撥水加工されている。
【0044】
従って、濡れ戻り防止生地1に比較的多めの水分が浸潤した場合であっても、中間生地6の外衣側表面6aが撥水加工されているため、水分が中間生地6を介して表生地5に滲み出し難くなり、また、濡れ戻り防止生地1に浸潤した水分は中間生地6の肌側表面側で速やかに吸収されて面状に拡散される。つまり、中間生地6が保水層として機能するようになる。さらに、表生地5の表面5aが撥水加工されているため、ズボンやシャツ等のアウターウェア7に滲み出すような不都合な事態も解消される。
【0045】
尚、表生地5を編成する原糸には、綿等の天然繊維、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、吸水性加工されたポリエステル等の合成繊維等、吸水性を有する極細繊維が用いられ、また、編地としてフライス編みや天竺編み等が好適である。また、表生地5の全面が撥水加工されていることが好ましい。
【0046】
さらに、上述した表生地5及び/または濡れ戻り防止生地1が、消臭・抗菌加工されていることが好ましく、これにより、尿や汗による臭気の発生を抑制して長時間快適な状態を確保することができる。
【0047】
例えば、特許第3787675号に開示されているように、原糸となる繊維をキトサン及び/または修飾キトサン、カルボン酸ポリマー、酸化亜鉛及びバインダー樹脂を含む処理液で処理し、これらの被覆層が形成された繊維を用いることにより、優れた消臭効果を奏し、かつ耐洗濯性(耐久性)の良好な肌着等の生地が得られる。
【0048】
つまり、本発明による肌着用生地は、吸水性の原糸で編成された表生地の裏側の少なくとも一部に、濡れ戻り防止生地1が重畳され、表生地の表面が撥水加工されていればよい。
【0049】
また、表生地と濡れ戻り防止生地の間に、吸水性の原糸で編成された中間生地が重畳され、少なくとも中間生地の外衣側表面が撥水加工されていればよい。
【0050】
そして、本発明による肌着は、上述した濡れ戻り防止生地1を用いた肌着用生地が発汗部や尿漏れ部等、濡れ戻り防止が必要となる箇所に縫製されていればよい。通常の肌着ばかりでなく、スポーツ用インナーに用いることも可能である。スポーツ用インナーに用いる場合には、濡れ戻り防止生地1のみで構成することも可能である。
【0051】
図5には、肌着用生地としての濡れ戻り防止生地1を用いた汗取りパッド8が、アームホール10に縫製された婦人用の肌着9の一例が示されている。汗取りパッド8は略半円形状に形成され、アームホール10の下部に一部が露出するように一体的に縫製されている。
【0052】
当該汗取りパッド8は、濡れ戻り防止生地1のみで構成することも可能であるが、濡れ戻り防止生地1に外衣側表面が撥水加工された表生地を重畳させて、装飾性を持たせてもよいし、表生地と濡れ戻り防止生地1の間に、吸水性の原糸で編成された中間生地を介装してもよい。この場合も、中間生地の外衣側表面が撥水加工されていることが好ましい。
【0053】
肌着以外にアウターとして着用するタンクトップやキャミソール等のアームホールの下部に、当該汗取りパッド8を一体的に縫製してもよい。
【0054】
さらに、当該汗取りパッド8は、衣服に直接縫製する用途ばかりではなく、衣服に着脱自在に取り付けて用いるように構成することも可能である。尚、汗取りパッド8の形状は特に制限されるものではなく、円形状、長円形状、半月状等、用途に応じて適宜選択することができる。
【0055】
このように、本発明による濡れ戻り防止生地を用いた肌着は、軽量且つ薄形で着心地に優れ、外観上他の一般の下着と何ら変わることが無いため、軽い尿漏れ等に悩む人にとって、抵抗感無く着用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明による濡れ戻り防止生地は、男女を問わず、不快な尿漏れや発汗による水分を速やかに吸収する肌着の裏地として、また、汗取りパッドや、乳児のオムツカバーの裏地として好適に使用でき、さらには、スポーツ用のインナー等多用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1:濡れ戻り防止生地
2:肌側地組織
2a:ループ
3:裏側地組織
4:男性用下着
4a:前マチ部
5:表生地
5a:外衣側表面
6:中間生地
6a:外衣側表面
7:アウターウェア
8:汗取りパッド
9:肌着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側地組織と裏側地組織が単糸繊度の異なる原糸で編成された生地であって、
肌側地組織が、裏側地組織を編成する原糸の単糸繊度より大きな単糸繊度の疎水性の原糸で編成されるとともにその表面が起毛処理されている濡れ戻り防止生地。
【請求項2】
前記肌側地組織を編成する原糸は、単糸繊度が3.0デシテックスから7.0デシテックスの範囲であり、フィラメント数が12本から48本の範囲の長繊維である請求項1記載の濡れ戻り防止生地。
【請求項3】
前記裏側地組織を編成する原糸は、単糸繊度が0.3デシテックスから3.5デシテックスの範囲であり、フィラメント数が12本から144本の範囲の疎水性の長繊維である請求項1または2記載の濡れ戻り防止生地。
【請求項4】
前記肌側地組織及び前記裏側地組織を編成する原糸は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンの何れかから選択される請求項1から3の何れかに記載の濡れ戻り防止生地。
【請求項5】
吸水性の原糸で編成された表生地の裏側の少なくとも一部に、請求項1から4の何れかに記載の濡れ戻り防止生地が重畳されている肌着用生地。
【請求項6】
前記表生地の表面が撥水加工されている請求項5記載の肌着用生地。
【請求項7】
前記表生地と前記濡れ戻り防止生地の間に、吸水性の原糸で編成された中間生地が重畳され、少なくとも前記中間生地の肌側表面が撥水加工されている請求項5または6記載の肌着用生地。
【請求項8】
請求項5から7の何れかに記載の肌着用生地が一部に縫製されている肌着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−214173(P2011−214173A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81213(P2010−81213)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】