説明

濡れ米菓、もち菓子、及びその製造方法

【課題】保存時間の経過により硬化し、且つ、粘り気、香味の劣化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にする濡れ米菓、もち菓子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油、等から少なくとも1つを選択して調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造し、かくして得た該製品を10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度で保管する事により、保存時間の経過により硬化し、且つ、粘り気、香味の劣化する現象を解消することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半生米菓である濡れせんべい、濡れおかき、軟らかい食感を有するもち菓子等で製造される濡れ米菓、もち菓子、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常おかき、せんべい菓子等の米菓は、もち米を原料とし、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥、ホイロ処理、焼成、味付け、仕上乾燥工程を経て、水分含有量4重量%以下、Aw0.5以下の乾燥したサクット、又は、カリットした食感の干菓子であるが、近年、嗜好の多様化に伴い、焼成した米菓生地を調味液中に浸漬して、しっとりと軟らかい食感の濡れた状態の濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓が上市されている。
【0003】
これら半生状態の濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓は、通常、よりしっとりと軟らかい、湿り気のある食感が求められ、若者の嗜好にマッチし、新しい米菓のジャンルを築きつつある。
【0004】
従来の濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓の製造方法は、精米もち米、うるち米を原料し、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥、焼成した直後に調味液中に浸漬し、表面のみを乾燥することによって、含浸調味液の味により、おかき、せんべい全体に湿感を呈し、軟らかい食感を特徴とする濡れ米菓を製造するものである。
【0005】
一方で、このような従来の製造方法による濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓であって、特に糖質配合の多い、塩分濃度の低い調味液を米菓生地中への含浸量を多くした濡れ米菓については、保存時間が長くなるに従い、調味液を含浸した米菓生地中の澱粉が老化・硬化し、次第に硬い食感となり、且つ粘り気が消失し、香味も劣化し、嗜好性が劣る等の品質が劣化する問題が発生する難点がある。
【0006】
このため、軟らかい食感を維持する方法として、特許文献1の特開2001-8630号公報に開示されるものがあり、該特開2001-8630号公報には調味液中にトレハロースを重量比で10〜30%添加配合することによって、軟らかい食感を持続する方法が開示されている。
【0007】
又、食品添加物糖質としての表示が必要な化工澱粉の配合によって、老化による硬化現象を緩和する方法もある。
【0008】
更に、安倍川餅、羽重餅等のもち菓子類にあっては、餅生地に砂糖、水飴等の糖質を多く配合して、軟らかい食感を数日持たせる方法を得ているが、これらもち菓子類も、糖質のみによって軟らかい食感を数十日持たせることは難しく、アミラーゼ酵素を配合して
食感を保持する方法が採用されている。
【特許文献1】特開2001−8630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年、従来の製造方法による醤油配合量の多いものは塩分が多く、健康面の配慮により、塩分の多いものは敬遠されることから、糖質配合の多い、塩分濃度の低い調味液を米菓生地中へ含浸した濡れ米菓が多くなり、これらの塩分濃度の低い調味液を含浸した濡れ米菓は、保存時間の経過と共に硬化し、且つ粘り気が消失し、香味も劣化し、嗜好性が劣る等の現象が顕著に現れるという問題がある。これにより、硬化現象を解消し、品質の劣化等を防止することが求められていた。
【0010】
又、特開2001−8630号公報の如く、調味液中にトレハロースを重量比で10〜30%添加配合することによって、軟らかい食感を持続する方法であっても、調味液を含浸した米菓生地中の澱粉が老化・硬化する現象を完全に解決することはできず、且つ、トレハロースという難消化性の糖質の使用は、一過性下痢の要因にもなり、食品添加物表示も必要となるという問題がある。更に、このような制限因子のある糖質、化工澱粉の使用は、中高年の消費者に好まれる無添加物嗜好の消費傾向に対して好ましくない要件である。
【0011】
更に、安倍川餅、羽重餅等のもち菓子類にあっては、餅生地に砂糖、水飴等の糖質を多く配合して、軟らかい食感を数日持たせる方法を得ているが、これらもち菓子類も、糖質のみによって軟らかい食感を数十日持たせることは難しいという問題がある。又、アミラーゼ酵素を配合して食感を保持する方法を採用した場合であっても、その保持日数は10日を越すものではない。更に、該方法で得た製品の水分活性は高く、微生物汚染を起こし易い欠点を有している。
【0012】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、保存時間の経過により硬化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にする濡れ米菓、もち菓子及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、焼成もち生地に浸漬する調味液を調整して用い、且つ、10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存することにより、従来の製造方法と同様な通常の方法で濡れ米菓、もち菓子類を製造する場合であっても、保存時間の経過により硬化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の請求項1は、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存することを特徴とする濡れ米菓に係るものである。
【0015】
本発明の請求項2は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、醤油を主体とする調味液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓に係るものである。
【0016】
本発明の請求項3は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓に係るものである。
【0017】
本発明の請求項4は、濡れおかき又は濡れせんべいで製造することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の濡れ米菓に係るものである。
【0018】
本発明の請求項5は、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存し、水分活性値を0.85以下にすることを特徴とするもち菓子に係るものである。
【0019】
本発明の請求項6は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、糖質を主体とする調味液に対して、10重量%以下、5重量%以上であることを特徴とする請求項5に記載のもち菓子に係るものである。
【0020】
本発明の請求項7は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも一つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項5に記載のもち菓子に係るものである。
【0021】
本発明の請求項8は、水分活性値が0.85以下で製造することを特徴とする求項5〜7のいずれかに記載のもち菓子に係るものである。
【0022】
本発明の請求項9は、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に含浸し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存することを特徴とする濡れ米菓の製造方法に係るものである。
【0023】
本発明の請求項10は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、醤油を主体とする調味液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項9に記載の濡れ米菓の製造方法に係るものである。
【0024】
本発明の請求項11は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項5に記載の濡れ米菓の製造方法に係るものである。
【0025】
本発明の請求項12は、濡れおかき又は濡れせんべいを製造することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の濡れ米菓の製造方法に係るものである。
【0026】
本発明の請求項13は、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に含浸し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存し、水分活性値を0.85以下にすることを特徴とするもち菓子の製造方法に係るものである。
【0027】
本発明の請求項14は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、糖質を主体とする調味液に対して、10重量%以下、5重量%以上であることを特徴とする請求項13に記載のもち菓子の製造方法に係るものである。
【0028】
本発明の請求項15は、生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも一つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項13に記載のもち菓子の製造方法に係るものである。
【0029】
本発明の請求項16は、水分活性値は0.85以下とするもち菓子を製造することを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載のもち菓子の製造方法に係るものである。
【0030】
このように、本発明の濡れ米菓及びその製造方法によれば、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油から少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に2.5重量%以下、0.05重量%以上添加し、当該調味液を焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上浸漬させ、乾燥熱処理することより製造し、且つ、10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存し、濡れ米菓を得ることができ、この濡れ米菓は、保存時間の経過により硬化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にすることができる。又、濡れおかき、濡れせんべいを得るができる。
【0031】
本発明のもち菓子及びその製造方法によれば、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存し、水分活性値を0.85以下にし、もち菓子を得ることができ、このもち菓子は、水分活性値が0.85以下であるので、保存時間の経過により硬化する現象と、微生物の汚染を解消することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓と、水分活性値を0.85以下とするもち菓子について、保存時間の経過により硬化する現象を適切に防止する効果が顕著に発揮され、軟らかな食感と粘り気を消失せず、香味の劣化、微生物の汚染等の品質劣化防止を長期間に渡り有することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明の実施の形態例における濡れ米菓、もち菓子、及びその製造方法についてより具体的に説明する。
【0034】
本発明の実施の形態の製造方法では、従来の製造方法によって、精米したもち米、うるち米を原料にし、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を反復釜焼成機、運行釜を使用して焼成し、焼成もち生地を得る。
【0035】
次に、従来の製造方法で得た焼成もち生地を焼成後、速やかに調味液に浸漬させており、本発明の製法において、濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓で使用する調味液としては、醤油を主体とする調味液を使用し、もち菓子で使用する調味液としては、糖質を主体とする調味液を使用する。
【0036】
濡れ米菓で使用する調味液では、醤油を主体とする調味液に対し、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ(きあげ)醤油、又は生揚げ醤油を加熱処理しないでフィルターを使用して濾過除菌した、濾過除菌済みの、なま醤油等のいずれかを選択して添加しており、該調味液100重量部に対して、選択した醤油の添加量が2.5重量部以下、0.05重量部以上になるようにし、硬化防止用の調味液として調整する。
【0037】
一方、もち菓子に使用する調味液では、糖質を主体とする調味液に対し、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ(きあげ)醤油、又は生揚げ醤油を加熱処理しないでフィルターを使用して濾過除菌した、濾過除菌済みの、なま醤油等のいずれかを選択して添加しており、該調味液100重量部に対して、選択した醤油の添加量が10重量%以下、5重量%以上になるようにし、硬化防止用の調味液として調整する。
【0038】
続いて、濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓、もち菓子共に、該硬化防止用の調味液を、焼成もち生地1重量部に対して0.5重量部から2重量部で含浸させ、100℃以下、35℃以上に調温した乾燥機により、調味液を浸漬した焼成もち生地の表面を乾燥する。
【0039】
かくして得た、調味液含浸・乾燥処理したの濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓、もち菓子を10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存することにより、保存時間の経過により硬化する現象を解消して品質の劣化等を防止すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にすることができる。
【0040】
ここで、濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓及びその製造方法においては、醤油を主体とする調味液に対し、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ(きあげ)醤油、又は、非加熱処理でフィルターを使用した濾過除菌済みのなま醤油等を、2.5重量%以下、0.05重量%以上で添加・配合した場合には、保存時間の経過により硬化する現象を適切に解消することができる。一方で、該醤油を主体とする調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油、除菌済みのなま醤油等を2.5重量%を超える量で配合した場合には、硬化防止用の調味液を含浸した焼成もち生地が2日静置保存後に液体状態となり、濡れおかき、濡れせんべいの形状を残さず、製品とすることができない。又、醤油、糖質を主体する調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油、除菌済みのなま醤油等を0.05重量%未満の量で添加した場合には、保存時間が長くなるに従い硬化現象を起こし、本発明の効果が発揮されない。
【0041】
もち菓子及びその製造方法においては、糖質を主体とする調味液に対し、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ(きあげ)醤油、又は、非加熱処理でフィルターを使用した濾過除菌済みのなま醤油等を、10重量%以下、5重量%以上を調味液に添加・配合した場合に、保存時間の経過により硬化する現象を適切に解消することができる。又、糖質を主体とする調味液の場合には、技術的理由は明確ではないが、醤油を主体とする調味液に比較して、生揚げ(きあげ)醤油、除菌済みのなま醤油等を多く配合する事が必要となる。一方で、該糖質を主体とする調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油、除菌済みのなま醤油を10重量%超える量を配合した場合には、硬化防止用の調味液を含浸した焼成もち生地の塩味が強すぎ、もち菓子として嗜好性に難がある。又、該糖質を主体とする調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油、除菌済みのなま醤油等を5重量%未満の量を添加した場合には、保存時間が長くなるに従い硬化現象を起こし、本発明の効果が発揮されない。
【0042】
更に、濡れ米菓、もち菓子、その製造方法において、調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上にした場合には、保存時間の経過により硬化する現象を好適に解消することができる。
【0043】
ここで、もち菓子生地の場合、調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部を超える場合には、柔らか過ぎ、且つ、該もち菓子の水分活性値が、0.85を超え、保存中の微生物汚染の可能性が高く、好ましくない。又、焼成もち生地1重量部に対して、0.5重量部未満の場合には、焼成もち生地全体に、調味液が行き渡らず、保存期間中に硬化し好ましくない。
【0044】
本発明の製法は、かくして、焼成もち生地に調味液を含浸せしめた濡れおかき、濡れせんべい生地、もち菓子生地を乾燥熱処理して製造し、且つ該製品を10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存する場合には、保存時間の経過により硬化する現象を好適に解消することができる。
【0045】
ここで、糊化した澱粉類は、一般的に60℃以上の高温では老化は起こり難く、凍結させない限り、低温ほど老化を起こしやすく、0℃付近で老化が最も速やかであるとされており、通常の製法で得た、濡れおかき、濡れせんべいは、技術的理由は明確ではないが、10℃を超え、40℃以下の保存温度では温度の上昇により老化を起し、硬度が上昇する。これに対し、本発明の製法で得た、濡れおかき、濡れせんべい、もち菓子は、10℃を超え、40℃以下の保存温度条件下でも、硬度の上昇が押えられる。更に、本発明の製法で得た、濡れおかき、濡れせんべい、もち菓子において、10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存することにより、老化による硬化現象の防止と共に、粘り気のある食感が保持され、風味の劣化も防止する事が可能となる。
【0046】
本発明の製法において、濡れおかき、濡れせんべい、もち菓子製品を保存する最適温度は、10℃以下、−30℃以上が好ましいが、本発明の製品が凍結しない、10℃以下、−20℃以上がより好ましい。−20℃未満の低温でも問題ないが、低温下でも硬化を防止し、粘り気のある食感と、香味の保持を得る本発明の特徴から凍結させる必要はなく、又、5℃を超える保存温度条件では、温度の上昇と共に、色調、香味の劣化現象は促進されるゆえ、本発明の製品が凍結しない10℃以下、−20℃以上が最も好ましい。
【0047】
以下、濡れおかき(濡れ米菓)製品の濡れおかき製造条件、ぬれ度合、乾燥温度及び、調味液に対する生揚げ醤油の添加率と、保存条件、保存日数と硬さと食感との関係を表1、表2に、又、もち菓子製品の製造条件、ぬれ度合、乾燥温度及び、調味液に対する生揚げ醤油の添加率と、保存条件、保存日数と硬さと食感との関係を表3、表4に示す。
【0048】
[表1]は、濡れおかき製造条件、ぬれ度合、乾燥温度及び、生揚げ醤油の添加率の異なる試験区の試料について、保存温度・日数と硬さの変化について表したものである。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
[表1の簡単な説明]
表1中に記載の調味液は、醤油を主体とした調味液であって、濃い口醤油48重量部、みりん23重量部、上白糖25重量部、調味エキス3重量部を溶解槽に投入、攪拌・混合・溶解し、80℃に達するまで加温した後、容器に取り出し、室温に冷却後、柴沼醸造(株)製の生揚げ醤油を0重量%から3.0重量%添加したものである。濡れ度合は焼成生地1重量部に対して調味液量1.0〜2.0 に調整し、この調味液を含浸させた焼成もち生地を品温60℃で1時間乾燥して、濡れおかきの試験区試料を得たものである。次に、常温10日後、常温90日、10℃・90日、−20℃・90日後の硬度を測定した結果を示している。
【0052】
又、硬度の測定は当該試料を密閉容器に入れ、常温保存し、硬度を測定する検針により行う。具体的には、検針として頂点部が直径1.0mm半球型で底面部が直径7.0mmの円板状で長さ12mmの円錐形で、底面部より後方は底面部と同形の直径7.0mm、長さ130mmの円柱形とした測定治具を使用し、はかり皿上に測定する各試験区試料を載置し、該検針の頂点から12mm(底面部直径7.0mmの円板状の位置まで)までを3秒間で侵入させ、このときの応力をはかりの指示重量値により計測して測定する。
【0053】
[表2の簡単な説明]
表2中の食感官能評価は専門パネラー5名による評価値を示すものであり、硬度の専門パネラーによる評価基準としては、300gf(300×9.8mN)±100gf(100×9.8mN)の値の範囲が軟らかい食感と評価され、200gf(200×9.8mN)未満、50gf(50×9.8mN)以上では大変軟らかく、50gf(50×9.8mN)未満では製品の原型が保持できず製品化不能となる。又、400gf(400×9.8mN)を超え700gf(700×9.8mN)未満ではやや硬く、700gf(700×9.8mN)以上、1000gf(1000×9.8mN)以下では硬く、1000gf(1000×9.8mN)を超えると大変硬いと評価した。
【0054】
又、粘り気の評価は下記の基準により、専門パネラーにより評価した。
粘り気の評価基準
×××・・・全く粘り気なし
××・・・粘り気が殆どない
×・・・生地の大半がボソとした食感、
○○○・・・製造直後の粘り気を保持
○○粘り気を保持、
○やや消失するも粘り気を保持、
香味の評価基準
×××・・・全く香味が変化し劣化
××・・・香味が変化し劣化
×・・・やや香味が変化し劣化、
○○○・・・製造直後の香味を保持し良好
○○製造直後より弱いが良好な香味、
○やや香味変化するも劣化に至らず、
【0055】
表1の濡れおかきは、従来の製造方法と同様に、精米もち米を原料とし、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を反復釜焼成機により焼成し、焼成もち生地とした後、20秒放置した後、[表1の簡単な説明]で開示した、醤油を主体とした調味液に浸漬する。この時、浸漬する調味液を、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理していない生揚げ(きあげ)醤油を0.03重量%から3.0重量%を添加・配合し、硬化防止用の調味液としておく。次に焼成もち生地1重量部に対して硬化防止用の調味液を1.0〜2.0重量部含浸させ、硬化防止用の調味液含浸焼成もち生地を80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、濡れおかきの製品を得た。
【0056】
かくして得た、濡れおかき製品を、常温10日後、常温90日、10℃・90日、−20℃・90日保存し、保存日経過後、硬度を上記に示す[表1の簡単な説明]の項で記載した方法で測定した。又、試験区試験品[表1]の食感、粘り気、香味評価を[表2]に示す。
【0057】
表1に示す条件で得た試験区試料について、上記、[表1の簡単な説明]、[表2の簡単な説明]に示す食感官能評価の評価基準によって評価し、表1、表2に示した結果によれば、試験区1,2の濡れおかき試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を添加していない調味液を使用した場合には、試作後経過10日後に350gf(350×9.8mN)と軟らかい製品であったが、常温90日後には1800gf(1800×9.8mN)と大変硬い製品となった、又、10℃の低温庫に保存した製品も1500gf(1500×9.8mN)と硬い食感であり、粘り気は全く消失し、香味も劣化した製品であった。
【0058】
一方、表1、表2に示す試験区3、4、5、6の濡れおかき試料のように、浸漬する調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油を0.05重量%から2.5重量%を添加・配合した硬化防止調味液を、焼成もち生地1重量部に対して1.0、2.0重量部含浸させた場合には、常温保存で試作経過10日後に90gf(90×9.8mN)から150gf(150×9.8mN)と大変軟らかい製品であり、又、10℃、−20℃の条件下で90日保存後であっても、90gf(80×9.8mN) から250gf(250×9.8mN)と軟らかい製品であり、且つ、粘り気、香味の評価も製造直後と同等、やや低下するも劣化は見られず、硬化現象と粘り気、香味の劣化が完全に防止され、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象と粘り気の消失、香味の劣化を防止する効果が顕著に発揮されていた。
【0059】
又、表1、表2に示す試験区7の濡れおかき試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を0.03重量%添加・配合した硬化防止用の調味液を、焼成もち生地1重量部に対して2.0重量部含浸させた濡れおかき試料は、10℃保存の条件下で90日保存後、500gf(500×9.8mN)となり、硬くなる現象が現れ、調味液への生揚醤油添加重量が、少なすぎ、硬化防止効果は十分に発揮されなかった。
【0060】
他方、表1、表2に示す試験区8の濡れおかき試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を3重量%添加・配合した硬化防止用の調味液を、焼成もち生地1重量部に対して2.0重量部含浸させた場合には、常温保存で10日後には液状化し、過度に軟化し製品形状を保持できず、硬化防止効果が過度であることが明白となった。
【0061】
同様の効果は加熱加工しないでフィルターを使用して、濾過して除菌した、なま醤油にも認められた。かくして、本発明の製造方法において、生揚げ(きあげ)醤油、又は、濾過除菌済みのなま醤油を、2.5重量%以下、0.05重量%以上で調味液に添加・配合して硬化防止用の調味液とし、これを使用した場合には、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象を防止する効果が顕著に発揮される。ここで、フィルターは、セラミックフィルターやプラスチック製中空糸等が使用されており、フィルターの種類は、生揚げ醤油を濾過して除菌し得るならば特に限定されるものではない。
【0062】
更に、表1、表2に示す試験区9、10の濡れおかき試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を0.05〜2.0重量%添加・配合した醤油主体の調味液を、焼成もち生地1重量部に対して2.0重量部含浸させた製品、常温保存で90日保存した場合には、やや硬い製品となると共に、粘り気が消失し、香味も劣化し好ましい製品ではなく、劣化した製品であり、好ましい製品ではなかった。
【0063】
かくして、濡れおかき又は濡れせんべいを請求項1〜3に記載の方法で得た製品を10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の保存条件で保存することによって、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象と粘り気の消失、香味の劣化を防止する効果が顕著に発揮されることが判明した。
【0064】
更に、本発明の製法はもち菓子にも応用する事が明らかとなった。
その結果を表3,表4に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
[表3の簡単な説明]
表3中に記載の調味液は糖質を主体とした調味液であって、上白糖50重量部、洋酒(ク゛ランマニュアル)5重量部、水45重量部を溶解槽に投入、攪拌・混合・溶解し、100℃に達するまで加温した後、容器に取り出し、室温に冷却後、柴沼醸造(株)製の生揚げ醤油を0重量%から10重量%添加したものである。濡れ度合は焼成生地1重量部に対して調味液量1.0〜2.0 に調整し、この調味液を含浸させた焼成もち生地を品温60℃で1時間乾燥して、水分活性0.85のもち菓子の試験区試料を得たものである。次に、常温10日後、常温40日、10℃・90日、−20℃・90日後の硬度を測定した結果を示している。
【0067】
硬度の測定は当該試料を密閉容器に入れ、常温保存し、硬度を測定する検針により行う。具体的には、検針として頂点部が直径1.0mm半球型で底面部が直径7.0mmの円板状で長さ12mmの円錐形で、底面部より後方は底面部と同形の直径7.0mm、長さ130mmの円柱形とした測定治具を使用し、はかり皿上に測定する各試験区試料を載置し、該検針の頂点から12mm(底面部直径7.0mmの円板状の位置まで)までを3秒間で侵入させ、このときの応力をはかりの指示重量値により計測して測定する。
【0068】
表4は表3の試料についての食感、粘り気、香味の評価を示している。
【0069】
【表4】

【0070】
[表4の簡単な説明]
表4中の食感官能評価は専門パネラー5名による評価値を示すものであり、硬度の専門パネラーによる評価基準としては、300gf(300×9.8mN)±100gf(100×9.8mN)の値の範囲が軟らかい食感と評価され、200gf(200×9.8mN)未満、50gf(50×9.8mN)以上では大変軟らかく、50gf(50×9.8mN)未満では製品の原型が保持できず製品化不能となる。又、400gf(400×9.8mN)を超え700gf(700×9.8mN)未満ではやや硬く、700gf(700×9.8mN)以上、1000gf(1000×9.8mN)以下では硬く、1000gf(1000×9.8mN)を超えると大変硬いと評価した。
【0071】
又、粘り気の評価は下記の基準により、専門パネラーにより評価した。
粘り気の評価基準
×××・・・全く粘り気なし
××・・・粘り気が殆どない
×・・・生地の大半がボソとした食感
○○○・・・製造直後の粘り気を保持
○○粘り気を保持
○やや消失するも粘り気を保持、
香味の評価基準
×××・・・全く香味が変化し劣化
××・・・香味が変化し劣化
×・・・やや香味が変化し劣化
○○○・・・製造直後の香味を保持し良好
○○製造直後より弱いが良好な香味
○やや香味変化するも劣化に至らず
【0072】
表3に示す条件で得た試験区試料について、上記、[表3の簡単な説明]、[表4の簡単な説明]に示す食感官能評価の評価基準によって評価し、表3、表4に示した結果によれば、試験区11,12,13の餅菓子試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を添加していない、糖質を主体とする調味液を使用した場合には、試作後経過10日後に1800gf(1800×9.8mN)と大変硬い製品となり、常温40日後には2200gf(2200×9.8mN)と大変硬い製品となった、又、10℃の低温庫に90日保存した製品も2000gf(2000×9.8mN)と硬い食感であり、−20℃の冷凍庫に90日保存した製品も2000gf(2000×9.8mN)と硬い食感でとなり、共に、粘り気は全く消失し、香味も、−20℃保存品以外は劣化した製品であった。
【0073】
一方、表3、表4に示す試験区14,15,16のもち菓子試料のように、浸漬する、糖質を主体とする調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油を2重量%添加・配合した硬化防止調味液を、焼成もち生地1重量部に対して1.0、2.0重量部含浸させた場合であっても、濡れおかき試料の場合と異なり、技術的理由は明確ではないが、老化による防止効果は十分に発揮されず、硬い食感の餅菓子であり、又、−20℃保存試験区の香味の評価以外は、粘り気、香味の評価ともに劣る評価であった。
【0074】
又、表3、表4に示す試験区17,18,19のもち菓子試料のように、糖質を主体とする調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油5重量%を添加・配合した、硬化防止用の調味液を、焼成もち生地1重量部に対して、1.5〜2.0重量部含浸させたもち菓子試料は、常温保存40日後には、600gf(600×9.8mN)とやや硬くなるが、10℃の条件下で90日保存後に、300gf(300×9.8mN)と軟らかく、−20℃保存の条件下で90日保存後、200gf(200×9.8mN)と更に大変軟らかくなる。又、粘り気、香味の評価も、常温保存では劣化するものの、10℃以下の保存温度では粘り気、香味の劣化は少なく、更に、−20℃保存区では、完全に粘り気、香味の劣化が防止され、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象と粘り気の消失、香味の劣化を防止する効果が顕著に発揮されていた。
【0075】
更に、表3、表4に示す試験区20、21、22のもち菓子試料のように、糖質を主体とする調味液に対して、生揚げ(きあげ)醤油を10重量%添加・配合した、硬化防止用の調味液を、焼成もち生地1重量部に対して、1.0〜2.0重量部含浸させたもち菓子試料は、常温保存40日後には、400gf(400×9.8mN)と軟らかく、10℃の条件下で90日保存後に、150gf(150×9.8mN)と軟らかく、−20℃保存の条件下で90日保存後も同様に、150gf(150×9.8mN)と大変軟らかくなる。又、粘り気、香味の評価も、常温保存では僅かに劣化するものの、保存温度10℃以下−20℃保存試験区では粘り気、香味の劣化なく、完全に粘り気、香味の劣化が防止され、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象と粘り気の消失、香味の劣化を防止する効果が顕著に発揮されていた。
【0076】
同様の効果は加熱加工しないでフィルターを使用して、濾過して除菌した、なま醤油にも認められた。かくして、本発明の製造方法において、生揚げ(きあげ)醤油、又は、濾過除菌済みのなま醤油を、糖質を主体とする調味液に10重量%以下、5重量%以上で添加・配合して硬化防止用の調味液とし、これを使用し、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上含浸させたもち菓子試料は、10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の条件下で保存することによって、老化による硬化現象を起こさず、且つ、粘り気、香味の劣化なく、完全に粘り気、香味の劣化が防止され、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象と粘り気の消失、香味の劣化を防止する効果が顕著に発揮されていたもち菓子を得る事ができる。更に、かくして得たもち菓子生地は、表4に示す様に水分活性値は0.85以下となり、病原性微生物による汚染を受け難い中間水分製品を得ることが出来る。
【0077】
以下、実施例を例示して、本発明の濡れ米菓及びもち菓子の製造方法、製造方法に用いる調味液について更に詳細に説明する。
【0078】
[実施例1]
硬化防止用の調味液の内、醤油を主体とする調味液の1例は、濃い口醤油48重量部、みりん23重量部、上白糖25重量部、調味エキス3重量部を溶解槽に投入し、攪拌・混合・溶解し、80℃に達するまで加温し、加温処理後に容器に取り出し、室温に冷却して保存した調味液に対し、醤油醸造熟成が完了したモロミを絞って得た、加熱殺菌処理を施していない柴沼醸造(株)製の生揚げ醤油を0.05重量%で添加して硬化防止用の醤油を主体とする調味液とした。
【0079】
該醤油を主体とする調味液の1例を用いて濡れおかきを製造する場合には、初めに、従来の米菓製造方法により、精米もち米を、洗米し、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を、反復釜焼成機を使用して焼成し、3.2g/粒の焼成もち生地とした後、20秒放置して準備する。次に、焼成もち生地1重量部に対して、硬化防止用の調味液を2.0重量部含浸させ、9.6 g/粒の硬化防止用の含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、濡れおかきを得ることができる。
【0080】
[実施例2]
調味液の2例は、実施例1に開示の製造方法によって調整した醤油を主体とする調味液に対し、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油を、フィルターを使用して、濾過除菌した、柴沼醸造(株)製のなま醤油を2.5重量%配合して、硬化防止用の醤油を主体とする調味液とした。
【0081】
該醤油を主体とする調味液の2例を用いて濡れおかきを製造する場合には、実施例1に開示の方法で得た3.2g/粒の焼成もち生地を焼成後20秒放置し、焼成もち生地1重量部に対して、硬化防止用の調味液を1.0重量部含浸させ、6.4 g/粒の硬化防止用の調味液含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、濡れおかきを得ることができる。
【0082】
[実施例3]
一方、濡れせんべいを製造する場合には、同様な製造方法によって得た、うるち米を原料として成形乾燥せんべい生地を焼成して4.0g/枚の焼成せんべい生地とし、焼成後、速やかに、焼成せんべい生地に、実施例1と同様に生揚げ醤油0.3重量%を添加した硬化防止用の調味液を浸漬し、焼成せんべい生地1重量部に対して硬化防止用の調味液2重量部を含浸するように処理し、6.0 g/枚の濡れせんべいを得ることができる。又、実施例2のなま醤油を適用して濡れせんべいを得ることができる。
【0083】
以下、比較に用いた濡れ米菓及びその製造方法、製造方法に用いる調味液、を更に詳細に説明する。
【0084】
[比較実施例1]
比較用の醤油を主体とする調味液は、濃い口醤油48重量部、みりん23重量部、上白糖25重量部、調味エキス3重量部を溶解槽に投入し、混合し、80℃に達するまで加温し、容器に取り出し、室温に冷却して調整して調味液とした。
【0085】
比較用の濡れおかきを製造する場合には、実施例1に記載の方法で得た3.2g/粒の焼成もち生地を焼成後20秒放置し、焼成もち生地1重量部に対して、調味液を2.0重量部含浸させ、9.6 g/粒の該調味液含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、生揚醤油、なま醤油、酵素製剤等の硬化防止効果のある成分を全く添加しない濡れおかきを得ることができる。
【0086】
[実施例4]
硬化防止用の調味液の内、糖質を主体とする調味液の4例は、糖質を主体とした調味液であって、上白糖50重量部、水45重量部を溶解槽に投入、攪拌・混合・溶解し、100℃に達するまで加温した後、40℃まで冷却の後、洋酒(ク゛ランマニュアル)5重量部を添加混合し、容器に取り出し、室温に冷却後、柴沼醸造(株)製の生揚げ醤油を、5重量%を添加して硬化防止用の糖質を主体とする調味液とした。
【0087】
該糖質を主体とする調味液の4例を用いて、もち菓子を製造する場合には、初めに、従来の米菓製造方法により、精米もち米を、洗米し、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を、反復釜焼成機を使用して焼成し、3.2g/粒の焼成もち生地とした後、20秒放置して準備する。次に、焼成もち生地1重量部に対して、硬化防止用の調味液を2.0重量部含浸させ、9.6 g/粒の硬化防止用の含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、水分活性値0.85のもち菓子を得ることができる。
【0088】
[実施例5]
硬化防止用の調味液の内、糖質を主体とする調味液の5例は、糖質を主体とした調味液であって、上白糖50重量部、水45重量部を溶解槽に投入、攪拌・混合・溶解し、100℃に達するまで加温した後、40℃まで冷却の後、洋酒(ク゛ランマニュアル)5重量部を添加混合し、容器に取り出し、室温に冷却後、柴沼醸造(株)製の生揚げ醤油を、10重量%を添加して硬化防止用の糖質を主体とする調味液とした。
【0089】
該糖質を主体とする調味液の4例を用いて、もち菓子を製造する場合には、初めに、従来の米菓製造方法により、精米もち米を、洗米し、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を、反復釜焼成機を使用して焼成し、3.2g/粒の焼成もち生地とした後、20秒放置して準備する。次に、焼成もち生地1重量部に対して、硬化防止用の調味液を2.0重量部含浸させ、6.4 g/粒の硬化防止用の含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、水分活性値0.82のもち菓子を得ることができる。
【0090】
[比較実施例2]
比較用の糖質を主体とする調味液は、上白糖50重量部、水45重量部を溶解槽に投入、攪拌・混合・溶解し、100℃に達するまで加温した後、40℃まで冷却した後、洋酒(ク゛ランマニュアル)5重量部を添加混合し、容器に取り出し、室温に冷却して調整して調味液とした。
【0091】
比較用のもち菓子を製造する場合には、実施例4に記載の方法で得た3.2g/粒の焼成もち生地を焼成後20秒放置し、焼成もち生地1重量部に対して、調味液を2.0重量部含浸させ、9.6 g/粒の該調味液含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、生揚醤油、なま醤油の硬化防止効果のある成分を全く添加しないもち菓子を得ることができる。
【0092】
尚、本発明の濡れ米菓、もち菓子、及びその製造方法は、上記の実施例に限定されるものでなく、本発明の作用効果を奏するならば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存することを特徴とする濡れ米菓。
【請求項2】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、醤油を主体とする調味液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓。
【請求項3】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓。
【請求項4】
濡れおかき又は濡れせんべいで製造することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の濡れ米菓。
【請求項5】
醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存し、水分活性値を0.85以下にすることを特徴とするもち菓子。
【請求項6】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、糖質を主体とする調味液に対して、10重量%以下、5重量%以上であることを特徴とする請求項5に記載のもち菓子。
【請求項7】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも一つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項5に記載のもち菓子。
【請求項8】
水分活性値が0.85以下で製造することを特徴とする求項5〜7のいずれかに記載のもち菓子。
【請求項9】
醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に含浸し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存することを特徴とする濡れ米菓の製造方法。
【請求項10】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、醤油を主体とする調味液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項9に記載の濡れ米菓の製造方法。
【請求項11】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、醤油を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項5に記載の濡れ米菓の製造方法。
【請求項12】
濡れおかき又は濡れせんべいを製造することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の濡れ米菓の製造方法。
【請求項13】
醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、及び該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に含浸し、乾燥熱処理して製造し、且つ10℃以下、−30℃以上、より好ましくは10℃以下、−20℃以上の温度下で保存し、水分活性値を0.85以下にすることを特徴とするもち菓子の製造方法。
【請求項14】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも1つを選択した醤油の添加量が、糖質を主体とする調味液に対して、10重量%以下、5重量%以上であることを特徴とする請求項13に記載のもち菓子の製造方法。
【請求項15】
生揚げ醤油、及び濾過済みのなま醤油のうち少なくとも一つを選択して、糖質を主体とする調味液に添加し、添加した調味液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項13に記載のもち菓子の製造方法。
【請求項16】
水分活性値は0.85以下とするもち菓子を製造することを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載のもち菓子の製造方法。

【公開番号】特開2009−153439(P2009−153439A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334527(P2007−334527)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(500108736)株式会社京小町 (2)
【Fターム(参考)】