説明

濾過器

【課題】特別な封止構造を要することなく濾過袋内に濾過対象の直接的に流体を導き、かつ、濾過袋のメンテナンスも容易にできるようにした濾過器を提供する。
【解決手段】本体容器1と、本体容器1の容器蓋2と、本体容器内に収容され、柔軟性を有すると共に流体を透過させる素材により形成される濾過袋20と、流体を透過させる穴が形成されると共に、その内部に、濾過袋20を収容するための袋支持籠10と、濾過対象の流体を濾過袋20内に流入管30と、濾過された流体を本体容器1外部に流出させるための流出管40と、を備えた濾過器であって、流入管30は、本体容器1側に取り付けられる第1流入管部分31と、濾過袋20側に取り付けられる第2流入管部分32とにより構成され、第1流入管部分31と第2流入管部分32とが着脱可能な状態で連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体容器と、本体容器の蓋部と、本体容器内に収容され、柔軟性を有すると共に流体を透過させる素材により形成される濾過袋と、流体を透過させる穴が形成されると共に、その内部に、前記濾過袋を収容するための袋支持体と、濾過対象の流体を濾過袋内に導く流入管と、濾過された流体を本体容器外部に流出させるための流出管と、を備えた濾過器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる濾過器は、飲料水、農業用水、発電所等の種々の産業分野で水あるいは海水等の流体を濾過するために用いられる。濾過器に用いられる濾過エレメントとしては、本体容器に内装され、金属製の金網により形成されるのが一般的である。濾過器の濾過性能を維持するためには、濾過エレメントを目つまりさせる異物を定期的に除去するなどのメンテナンスが必要である。そのために、濾過エレメントの洗浄を行う機構が濾過器内に組み込まれているものがある。
【0003】
また、あおこなどの植物性プランクトンはエレメント表面にへばりつき、シジミやタニシなどの卵がエレメント表面に付着すると、生育して大きくなり、濾過エレメントの穴をふさいでしまうなどの問題が生じる。これらの異物は、洗浄機構で除去することが難しく、濾過エレメントを取り外しで作業員の労力によりブラシ等で除去することになるが、その負担が多大なものになっていた。
【0004】
一方、濾過エレメントを使い捨てにすれば、作業員の労力が軽減されるが、金属製の濾過エレメントはコストの面から廃棄することは難しい。そこで、安価な濾過エレメントを用いた濾過器が下記特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1は、周壁に無数の小孔が形成された濾過籠と、濾過籠に内装される網状のスクリーンを有しており、前記スクリーンの内側に不織布により構成される底付き円筒状のフィルター(濾過袋)が着脱自在に内装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4279609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1においては、濾過袋の上部に大きな開口部を形成し、流入管からの流体を開口部から流入させるように構成している。従って、流入した流体が濾過されずに直接流出管へ向かうことを防止する機構が必要である。従って、フィルターの上部を封止するための機構が必要であり、フィルター自身を環状のスプリングにより、取り付け用の溝に押圧して固定している。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、特別な封止構造を要することなく濾過袋内に濾過対象の流体を直接的に導き、かつ、濾過袋のメンテナンスも容易にできるようにした濾過器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る濾過器は、
本体容器と、本体容器の蓋部と、前記本体容器内に収容され、柔軟性を有すると共に流体を透過させる素材により形成される濾過袋と、流体を透過させる穴が形成されると共に、その内部に、前記濾過袋を収容するための袋支持体と、濾過対象の流体を前記濾過袋内に導く流入管と、濾過された流体を本体容器外部に流出させるための流出管と、を備えた濾過器であって、
前記流入管は、前記本体容器側に取り付けられる第1流入管部分と、前記濾過袋側に取り付けられる第2流入管部分とにより構成され、前記第1流入管部分と前記第2流入管部分とが着脱可能な状態で連結されていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成による濾過器の作用・効果を説明する。本発明においては、流入管により流入される流体を直接的に濾過袋内に導くように構成する。流体に含まれる異物は、濾過袋内に残されて、濾過された流体が濾過袋から出ていき、さらに流出管から流出される。流入管は、第1流入管部分と第2流入管部分により構成され、第1流入管部分は本体容器側に取り付けられ、第2流入管部分は濾過袋に取り付けられる。このように構成することで、流体を直接的に濾過袋内に導くことができ、流入される流体が他の場所に漏れるのを防止することができる。また、流入管は、第1流入管部分と第2流入管部分が着脱自在に連結されるので、メンテナンスの時は、これらの連結を解除することで、本体容器内部の濾過袋を取り出すことができる。取り出された濾過袋は、洗浄してもよいし、場合によっては廃棄する処置も可能である。従って、特別な封止構造を要することなく濾過袋内に濾過対象の流体を直接的に導き、かつ、濾過袋のメンテナンスも容易にできるようにした濾過器を提供することができる。
【0011】
本発明において、前記濾過袋の内容積は、前記袋支持体の内容積よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。
【0012】
濾過袋は柔軟性を有しているので、内容積を袋支持体の内容積よりも大きくすることで、表面積を大きくとることができ、濾過効率を高めることができる。
【0013】
本発明に係る前記濾過袋は、ファスナーにより開閉自在に構成されていることが好ましい。これにより、ファスナーを開けて、内部の異物を取り出して清掃することができる。
【0014】
本発明において、前記濾過袋の表面に襞を形成するための襞形成手段を濾過袋に取り付けていることが好ましい。表面に襞を形成することで、濾過袋の表面積を増やすことができ、濾過効率を高めることができる。
【0015】
本発明において、前記襞形成手段は、前記濾過袋の径よりも小径のリング部材により構成されることが好ましい。
【0016】
濾過袋の径よりも小径のリングを複数並べることで、小径のリングとリングの間に濾過袋の大径部分を形成することができ、大径部分と小径部分が交互に並ぶような形状を形成することができる。従って、リングを用いるという簡素な構成により、濾過袋の表面に襞を形成することができ、濾過効率を高めることができる。
【0017】
本発明において、前記濾過袋の内部を流体の流れ方向に沿って複数の濾過室に区画すると共に、上流側の濾過室と下流側の濾過室の間に弁を配置し、上流側の濾過室が目つまりにより内圧が上昇したときに、前記弁が開放し、下流側の濾過室を予備室として機能させ、かつ、前記予備室として機能した時に外部表示をさせる表示手段を設けたことが好ましい。
【0018】
この構成によると、濾過袋の内部は複数の濾過室に区画される。そして、上流側の濾過室が目詰まりにより機能低下すると、下流側にある濾過室が予備室として機能し、その旨を外部表示させる。これにより、濾過袋の使用状況を把握することができ、メンテナンスの必要性を事前に察知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図
【図1A】第1実施形態に係る濾過器の水平方向の断面図
【図1B】流入管と濾過袋の連結部分の構成を示す拡大図
【図1C】丸め込み部の構成を示す拡大図
【図2】第2実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図
【図2A】流入管と濾過袋の連結部分の構成を示す拡大図
【図2B】図2Aの更に部分拡大図
【図2C】襞形成手段の構成を示す拡大図
【図2D】逆洗時の動作を示す断面図
【図3】第3実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図
【図3A】流入管と濾過袋の連結部分の構成を示す拡大図
【図3B】袋支持籠の構成を示す斜視図
【図3C】運転開始時の濾過袋の状態を示す図
【図3D】予備室が機能した時の濾過袋の状態を示す図
【図3E】ラプチャー弁が設けられている箇所の構成を示す拡大図
【図4】第4実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図
【図4A】袋支持籠の構成を示す外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明に係る濾過器の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図である。
【0021】
本体容器1は、円筒形の金属製であり、内部に濾過エレメントが収容される。本体容器1は、好ましくはSUS304により形成される。本体容器1の上部には、フランジ1aが形成される。本体容器1の上部は開口されており、容器蓋2(蓋部に相当)により閉塞される。容器蓋2と本体容器1とは、フランジ1aの部分でボルト3により締結される。容器蓋2の中央には突出壁2aが形成され、穴が形成される。この穴を閉塞するために、補助蓋4が設けられる。補助蓋4は、カムロック方式により、容器蓋2に固定され、レバー5を操作することによりロックを解除することができる。レバー5を想像線の位置まで倒すことでロックを解除することができる。
【0022】
本体容器1の内部には、袋支持体として機能する袋支持籠10が設けられ、この袋支持籠10の内部に濾過機能を有する濾過袋20が収容される。袋支持籠10は、上部が開口しており、この上部から濾過袋20の出し入れを行うことができる。袋支持籠10は、円筒部及び底面部がSUS304のパンチング板により形成される。円筒部及び底面部には、多数の小孔10xが形成されており、自由に流体を通過させることができる。
【0023】
また、袋支持籠10の上縁部には、フランジ10aが形成され、このフランジ10aが、本体容器1のフランジ1aと容器蓋2に挟持されることで、袋支持籠10が安定した状態で本体容器1に固定される。袋支持籠10の底面部には、複数の脚部10bが設けられており、本体容器1の底面部に載置される。
【0024】
濾過袋20は柔軟性を有すると共に、濾過対象の流体を自由に通過させることができる。ただし、流体中に含まれる種々の異物は通過させないような素材が選択される。濾過袋20は、例えば、外側をナイロンネット(昭和ニット株式会社製のナイロン平織)、内側をP−アラミド不織布(日本バイリーン株式会社製のXL−1030)の積層構造の素材を用いることができる。
【0025】
本体容器1の図1の左側に流入管30が設けられ、右側に流出管40が設けられる。図1Aは、水平方向の断面図である。この図を見てもわかるように、流入管30と流出管40は、直線上にあり、共に、本体容器1の中心を通過するように配置される。例えば、既存の配管の途中に本発明に係る濾過器を挿入する場合は、配管の途中を切断して、濾過器を組み込むことができる。
【0026】
図1Bは、流入管30と濾過袋20の連結部分の構成を示す拡大図である。流入管30は、第1流入管部分31と第2流入管部分32により構成される。第1流入管部分31は、本体容器1の側壁面に取り付けられ、一体化している。第2流入管部分32は、第1流入管部分31に対して着脱自在であり、濾過袋20の側に取り付けられる。流出管40も本体容器1に一体化した状態で取り付けられている。
【0027】
第2流入管部分32は、水平筒部21に連結され、これは濾過袋20と同じ材質で形成され、柔軟性を有する。水平筒部21を取り付ける位置に、濾過袋20には穴を開けて、水平筒部21を縫製(ミシン掛け)により結合する。さらに、縫製部分に接着剤(例えば、信越化学工業株式会社製のシリコーンレジンKR242A)により接着して、結合強度を強化する。
【0028】
上記水平筒部21の内部に金属製のパイプにより製作される第2流入管部分32が挿入される。第2流入管部分32には、雄ねじ部32aと溝部32bが形成される。図1Bは、水平筒部21に第2流入管部分32を挿入する前の状態を示しているが、第2流入管部分32を挿入した後、締め付け具33により第2流入管部分32を水平筒部21に固定する。締め付け具33は、例えば、株式会社プロフレックス社製のステンレス304製ホースバンドを用いることができる。第2流入管部分32は、SUS304により製作される。
【0029】
第2流入管部分32の溝部32bの位置に締め付け具33を設置し、締め付け動作を行うことで、第2流入管部分32が水平筒部21に結合される。また、水平筒部21の先端部には丸め込み部21aが形成される。水平筒部21の先端部をぐるぐる巻きするように巻きこむことで、図1B、図1Cの拡大図に示すように径の大きな丸め込み部21aが形成される。径が大きな部分を設けることで、締め付け具33が水平筒部21から離脱することを防止し、第2流入管部分32と濾過袋20とを強固に一体化することができる。なお、上記丸め込み部21aもシリコンワニス等の接着剤で固めることが好ましい。
【0030】
第1流入管部分31の先端部には雌ねじ31aが形成されており、第2流入管部分32に形成された雄ねじ32aと螺合する。これにより、第1流入管部分31と第2流入管部分32を連結し流入管32を構成することができる。なお、流入管30が設置される箇所において、袋支持籠10には開口部10cが形成されている。
【0031】
濾過袋20に形成される開口穴は、第2流入管部分32を取り付ける部分のみであり、それ以外は完全に閉じた空間を形成している。また、濾過袋20には、上下方向に開口用のファスナー22が縫製により取り付けられている。ファスナー22としては、例えば、YKK株式会社製のビスロンファスナーVFWT型を用いることができる。これにより、ファスナー22を開くことで、内部の異物の除去及び清掃を行うことができる。
【0032】
濾過袋20の内容積あるいは外径は、袋支持籠10の内径と同じか少し大きめに設定することが好ましい。これにより、できる限り袋支持籠10の内容積を大きくとることができ、濾過効率を高めることができるとともに、濾過袋20の破裂を防止できる。
【0033】
<第1実施形態の作用>
次に、第1実施形態に係る濾過器の動作を説明する。図1において、流入管30を介して左側から送られてきた流体(異物を含む液体)は、流入管30から直接、濾過袋20の内部に流入する。流体に含まれる異物は、濾過袋20を通過することはできず、流体のみが通過する。通過した流体は濾過されており、流出管40から流出される。袋支持籠10には多数の穴が形成されているので、濾過された流体が通過するのに支障は全くない。
【0034】
濾過袋20の内部に異物が蓄積してくると、濾過袋20を取り出して異物を除去する必要がある。その場合は、補助蓋4を開放すると共に、第1流入管部分31と第2流入管部分32のボルトナット結合を解除する。これにより、濾過袋20が第1流入管部分31から分離し、補助蓋4から取り出すことができる。濾過袋20のメンテナンスが終了した後、再び、本体容器1の内部に挿入し、濾過袋20を取り付けることができる。また、濾過袋20の機能が低下している場合は、取り出した濾過袋20を廃棄処分してもよい。
【0035】
本実施形態に係る濾過器は、逆浸透膜による純水の製造の前処理、工場循環水中の異物除去に有用である。
【0036】
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図である。第1実施形態と同様に、本体容器1、容器蓋2、袋支持籠10、濾過袋20、流入管30、流出管40を備えている。本体容器1、容器蓋2、流入管30、流出管40は、SUS329Jにより形成される。本体容器1は、円筒状に形成されており、上部にフランジ1aが形成される。容器蓋2は、ドーム状に形成され、下部にフランジ2bが形成される。
【0037】
本体容器1と容器蓋2のフランジ同士をクランプ6により連結する。クランプ6としては、例えば、オサメ工業株式会社製のW−FERRULEを使用することができる。
【0038】
濾過袋20は、ポリエチレン不織布(例えば、米国デュポン社製のタイベック1073B)を用いる。濾過袋20は、流入管30との接続箇所を除き閉鎖した空間を形成している。濾過袋20の内部には、垂直方向に沿って支持棒7が配置される。支持棒7の上下には、円盤状の支持プレート7aが設けられ、逆洗時(後述)に濾過袋20がつぶれないように支持するものである。支持棒7は、SUS329Jにより製作される。
【0039】
袋支持籠10(袋支持体)は円筒状に形成され、上面と底面は開口している。袋支持籠10は、SUS329Jにより製作される平織金網により形成される。袋支持籠10の側面には、流入管30を通すための穴が形成される。袋支持籠10は、側面の円周方向を帯状の部材で補強する。流入管30が挿入される上記の穴の周囲はリング状の金属板で補強することが好ましい。
【0040】
濾過袋20の側面には流入管30と連結されるための穴が形成されるが、穴の周辺を絞り込むことで、水平筒部21を一体形成する。図2Aは、流入管3との接続構造を示す拡大図である。流入管30は、第1流入管部分31と第2流入管部分32により構成され、第1流入管部分31は本体容器1に取り付けられ、第2流入管部分32は濾過袋20の水平筒部21に取り付けられる。
【0041】
第1流入管部分31の外径は、第2流入管部分32の内径よりもわずかに小径であり、第1流入管部分31を第2流入管部分32に挿入した後、ピン34により連結する。ピン34を挿脱することで、第1流入管部分31と第2流入管部分32を連結あるいは解除することができる。
【0042】
第2流入管部分32には、溝部32bが形成されており、締め付け具33により第2流入管部分32を濾過袋20の水平筒部21に固定することができる。溝部32bを形成することで、濾過袋20から第2流入管部分32が滑り抜けないようにすることができる。締め付け具33として、例えば、米国バンドウィットコーポレーション社製のステンレススチールバンドを用いることができる。
【0043】
また、水平筒部21の先端部には、第1実施形態と同様に、丸め込み部21aが形成されている。丸め込み部21aの中心部には、ポリエチレン製のリング21bが芯として設けられており、このリング21bを中心として丸め込みが行われる。丸め込み部21aは、熱溶着により固めることで、丸め込みが解けないようにすることができる。これにより、確実に濾過袋20が第2流入管部分32から抜け落ちないようにすることができる。
【0044】
図2に示すように、濾過袋20には、襞形成手段8により垂直方向に沿って多数の襞が形成されるように構成される。図2Cは、襞形成手段8の構成を示す拡大図である。襞形成手段8は、一対の第1リング部材8aと第2リング部材8bの組み合わせにより構成される。第1リング部材8aは、濾過袋20の外側に位置し、第2リング部材8bは濾過袋20の内側に位置する。
【0045】
第1リング部材8aは、断面円形であり、第2リング部材8bは、断面が半円弧形状である。第2リング部材8bは、パイプ部材の1/2カットにより形成することができ、これにより、第1リング部材8aと第2リング部材8bを係合した状態で組み立てることができる。第1リング部材8aと第2リング部材8bは、ネジにより結合することができる。これにより、襞形成手段8を濾過袋20に強固に固定することができる。これら第1・第2リング部材8a,8bは、いずれもSUS329Jにより製作される。
【0046】
これら第1・第2リング部材8a,8bのリング径は、濾過袋20の外径の2/3程度に設定する。これにより、図2に示すように、濾過袋20の垂直方向に沿って多数の襞を形成することができる。襞を形成することで、濾過袋20の表面積を増やすことができ、濾過機能を高めることができる。すなわち、流入管30から流体が入ってくると、その流体圧力により、濾過袋20に襞が形成され、蛇腹状に変形させられる。
【0047】
濾過袋20は、シート状の原反から必要な個所を熱融着して筒状の袋に形成することができる。襞が形成されない状態での濾過袋20の外径は、袋支持籠10の外径の1.2倍になるように設定される。これにより、袋支持籠10内の空間を有効利用しながら、表面積が最大になるように濾過袋20を形成することができる。また、上記寸法に設定することで襞を形成しやすくなる。
【0048】
流出管40は、本体容器1に固定される。本実施形態においても、流入管30と流出管40は、一直線上に配置され、さらに、本体容器1の中心を通るように設定される。
【0049】
<第2実施形態の作用>
次に、第2実施形態に係る濾過器の動作を説明する。図2において、流入管30を介して左側から送られてきた流体は、流入管30から直接、濾過袋20の内部に流入する。流体に含まれる異物は、濾過袋20を通過することはできず、流体のみが通過する。通過した流体は濾過されており、流出管40から流出される。袋支持籠10には多数の穴が形成されているので、濾過された流体が通過するのに支障は全くない。
【0050】
また、流入する流体の圧力により上下のリング部材8a,8bの間に突出部が外側に向けて形成され、その結果、上下方向に多数の襞が形成される。これにより、表面積を大きくとることができ、濾過機能を高めることができる。
【0051】
使用時間が長くなってくると、濾過袋20の網目部分には異物が付着して目が詰まってくる。そこで、かかる目詰まりを防止するために清浄水による逆洗を行う。逆洗とは、流出管40の方向から逆に流体を送り込み、流入管30から排出させる動作である。この時の濾過器の状態を図2Dに示す。
【0052】
逆洗時には、流体の圧力により、濾過時とは逆方向に襞が突出する。すなわち、図2Dに示すように、上下のリング部材8a,8bの間に突出部が内側に向けて形成される。このような動きをすることで、濾過袋20の内表面にこびりついた異物を表面から剥離させるように作用させることができる。従って、濾過機能を回復させ、さらに、濾過袋20としての寿命を延ばすことができる。特に、濾過分離径が10〜100μmサイズの場合は、上記の動作をさせることが効果的である。洗浄する時は、逆洗方向と通常の濾過方向とに流体の流れを交互に切り換えることで、より効果的な洗浄を行うことができる。すなわち、襞の部分が凸になったり凹になったりすることで、剥離効果を高めることができる。
【0053】
逆洗する場合は、次亜塩素酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、硝酸水、過酢酸を注入する方法で、濾過袋20内に捕捉した細菌、海洋微生物を化学的に酸化分解することも可能である。
【0054】
濾過袋20の内部に異物が蓄積し、逆洗を行っても濾過機能が回復しない場合は、濾過袋20を取り出して廃棄処分をする。その場合は、容器蓋2を開放すると共に、第1流入管部分31と第2流入管部分32の結合を解除する。これにより、濾過袋20が第1流入管部分31から分離し、本体容器1の上部から取り出すことができる。
【0055】
本実施形態に係る濾過器は、縦置きではなく、横置きあるいは傾斜して使用してもよい。
【0056】
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図である。第1実施形態と同様に、本体容器1、容器蓋2、袋支持籠10、濾過袋20、流入管30、流出管40を備えている。本体容器1、流出管40は、ガラス繊維強化FRPにより製作される。また、流出管30のうち、第1流入管部分31は、ガラス繊維強化FRP(例えば、日本板硝子株式会社のガラス繊維クロスREW580及び昭和高分子株式会社の不飽和ビニルエステル樹脂リポキシR806)により製作され、第2流入管部分32は、軟質塩化ビニルにより製作される。
【0057】
容器蓋2は、本体容器1のフランジ1aにおいて、ボルト3により締結される。容器蓋2は、SUS304の板金加工により製作することができる。容器蓋2には、突出壁2aが形成され、その部分に補助蓋4が設けられる。濾過袋20を交換するときは、補助蓋4を開けて濾過袋20の挿脱を行う。補助蓋4は、クランプ6により容器蓋2の上面に取り付けられる。クランプ6は、例えば、株式会社トヨックス社製の633−DB型を用いることができる。補助蓋4は、例えば、株式会社トヨックス社製の634−B型を用いることができる。
【0058】
また、容器蓋2には、サイトグラス9(表示手段に相当)が設けられ、内部を観察できるようにしている。サイトグラス9は、透明なガラスであり、例えば、日本クリンゲージ株式会社のクリンポートKPT3が用いられる。
【0059】
図3Aは、流入管30の部分の構造を示す拡大図である。第1流入管部分31は、本体容器1と一体形成される。第1流入管部分31の先端部を第2流入管部分32の端部に挿入することで、両者を連結することができる。第2流入管部分32は、柔軟性を有する塩化ビニルにより形成されるので、接続部分は緊密な状態で(シールされた状態で)連結することができる。また、第1・第2流入管部分31,32は、着脱自在な状態で連結される。
【0060】
第2流入管部分32の他方の端部には、カプラー機構35が取り付けられる。カプラー機構35は、第1カプラー部材35aと第2カプラー部材35bにより構成される。第1カプラー部材35aは、第2流入管部分32に取り付けられ、第2カプラー部材35bは、濾過袋20の側に取り付けられる。両者を結合することで、濾過袋20に第2流入管部分32を取り付けることができる。第1カプラー部材35aは、例えば、株式会社トヨックス社のトヨロック カプラーTLCKを用いることができ、第2カプラー部材35bは、例えば、株式会社トヨックス社のトヨロック アダプタTLEKを用いることができる。第2カプラー部材35bと濾過袋20とを強固に連結するために締め付け具を用いたり接着剤を用いてもよい。
【0061】
図3Bは、袋支持籠10の構成を示す斜視図である。袋支持籠10は、格子状に縦パイプ10dと横パイプ10eが交差するように組み合わされている。縦パイプ10dと横パイプ10eは、ガラス繊維強化FRPにより形成される。袋支持籠10の上面と下面には蓋を設けることが好ましいが、蓋はなくてもよい。
【0062】
次に、濾過袋20について説明する。濾過袋20は、上流側の第1濾過袋20Aと下流側の第2濾過袋20Bにより構成され、両者はラプチャー弁23(破壊弁)により連結される。第1濾過袋20Aも第2濾過袋20Bも細長い筒状に形成される。第1濾過袋20Aの内径は、流入管30の外径よりも大きくなるように設定される。第2濾過袋20Bの内径は、第1濾過袋20Aの内径よりも小さくなるように設定され、補助蓋4が設けられる穴の内径よりも小さくなるように設定される。
【0063】
第1濾過袋20Aと第2濾過袋20Bの内容積の合計は、袋支持籠10の内容積よりも大きくなるように設定される。第1濾過袋20Aは、白色ポリエステルヤーン糸を丸編み機を使用し、円筒状のニットの微細孔を有する形状に編み上げたものである。第2濾過袋20Bは、赤色のポリエステルヤーン糸を使用して編み上げたものである。第1濾過袋20Aにより、上流側の濾過室が構成され、第2濾過袋20Bにより下流側の濾過室、すなわち、予備室が構成される。
【0064】
運転開始時において、図3Cに示すように、第1濾過袋20Aのみが機能し、第2濾過袋20Bの方は、袋が潰れた状態になっている。第1濾過袋20Aの濾過機能が低下すると、予備的に第2濾過袋20Bが機能するようになる。この点は、後述する。
【0065】
第1濾過袋20の内部には、形状を保持して内部空間に流路を確保するため、閉塞防止コイル36(スパイラル管)が挿入されている。また、第1・第2濾過袋20A,20Bの外部にも密着防止コイル37が設けられている。この密着防止コイル37は、SUS304の可撓性を有するコイルバネを用いることが好ましい。
【0066】
第1・第2濾過袋20A,20Bは、細長い袋を上下で折り曲げながら袋支持籠10内に収容することになるが、上記折り曲げ部において閉塞が生じる可能性がある。これを防止するために、内部に中空の割れ目ありチューブを折れ曲がり部に挿入することが好ましい。これにより、濾過袋内の流路を確保し、所望の濾過機能を確保することができる。上記チューブは、例えば、森宮電機株式会社製のポリエチレン・スパイラル中央部SEを用いることができる。
【0067】
図3Eは、ラプチャー弁23が設けられている箇所の構成を示す拡大図である。第1濾過袋20Aの端部に第1部材23aが設けられ、第2濾過袋20Bの端部に第2部材23bが設けられる。これら第1・第2部材23a,23bは、ネジにより連結されており、取り外すことができる。ラプチャー弁23は、ラプチャーディスクを備えており、所定以上の圧力が作用すると破裂して、弁を開けるように作用する。
【0068】
<作用>
次に、第3実施形態に係る濾過器の動作を説明する。図3において、流入管30を介して左側から送られてきた流体は、流入管30から直接、上流側の第1濾過袋20Aの内部に流入する。流体に含まれる異物は、第1濾過袋20Aの内部に蓄積し、濾過された流体は第1濾過袋20Aを透過し、流出管40から排出される。
【0069】
第1濾過袋20Aによる濾過作用を続けていくと、目が次第に詰まってくる。そうすると、袋内の内圧が徐々に高くなっていき、所定の圧力を超えると、ラプチャー弁23が開く。これにより、流体は第1濾過袋20Aから第2濾過袋20Bの方へと移動可能になる。第2濾過袋20Bは、当初はしぼんだ状態になっているが、流体が侵入してくることで流体圧により膨らむことができる。この状態を図3Dに示す。
【0070】
第2濾過袋20Bは赤色の外観を呈しているが、サイトグラス9を介して、膨らんだ状態を視認することができる。赤色に形成しているので、予備的に設けている第2濾過袋20Bの膨出状態を容易に視認することができる。また、特にセンサーを設けることなく、第2濾過袋20Bが機能し始めたことを表示させることができる。これにより、濾過袋20のメンテナンスが必要な時期が来ていることを作業者に伝えることができ、突然濾過不能になる事態を避けることができる。
【0071】
濾過袋20の交換は、補助蓋4を開けて濾過袋20を取り出すことにより行われる。第2流入管部分32を第1流入管部分31から外した後、濾過袋20を取り出して、新しいものと交換することができる。
【0072】
本実施形態において、サイトグラス9を用いる代わりに、第2濾過袋20Bが動作し始めたことを電気的に検出して、これを液晶やLED等により表示してもよい。また、第1濾過袋20Aの内部の圧力をセンサーにより検出し、所定の圧力以上を検出した時に、弁を自動的に開放して第2濾過袋20Bを機能させるように構成してもよい。
【0073】
本実施形態では、第1濾過袋20Aと第2濾過袋20Bの2つを連結して構成しているが、3つ以上の濾過袋を連結して構成してもよい。
【0074】
本実施形態に係る濾過器は、例えば、栽培漁業、飲料水の高度処理に至る前の事前処理において、用いることができる。
【0075】
<第4実施形態>
図4は、第4実施形態に係る濾過器の内部構成を示す断面図である。他の実施形態と同様に、本体容器1、容器蓋2、袋支持籠10、濾過袋20、流入管30、流出管40を備えている。本体容器1、容器蓋2、流入管30、流出管40は、SS400により製作される。
【0076】
図4Aは、袋支持籠10の構成を示す外観斜視図である。袋支持籠10の下部は、複数本の丸棒10fとスプリング10gにより構成される。これら丸棒10fとスプリング10gは、SUS316又はSUS410により製作される。丸棒10fとスプリング10gの交点は、溶接することで結合される。
【0077】
また、上部には、円筒部10hが設けられ、この円筒部10hはSUS316又はSUS410により製作される。流入管30が挿入される箇所には、開口穴10cが形成される。袋支持籠10の上面は開口部が形成されており、底面は、本体容器1の底面により閉鎖された状態である。上記のような円筒部10hを設けている理由は、開口穴10cの位置を確実に設定すると共に濾過袋20の設置操作の作業性を良くする為である。
【0078】
濾過袋20は、柔軟性を有する二層構造により構成され、外層はPP(ポリプロピレン)ネット(例えば、株式会社セミテック社のPH3636BK)により形成し、内層はPP不織布(例えば、三晶株式会社製のDP3155)により形成することができる。濾過袋20は、流入管30と接続する箇所以外は閉じた状態である。
【0079】
濾過袋20の外径は、袋支持籠10の内径よりも大きくなるように設定される。また、濾過袋20の高さは、袋支持籠10の高さよりも大きくなるように設定される。これにより、可能な限り表面積を取ることができ濾過機能を高めることができる。濾過袋20の内容積は、袋支持籠10の内容積とほぼ同じになるように設定される。
【0080】
濾過袋20の内部には、PET(ポリエステル)の綿24が充填される。これにより、流体中に含まれる油を吸収することができる。
【0081】
流入管30と流出管40は、直線上にあり、共に、本体容器1の中心を通過するように配置される。なお、流入管30の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0082】
<作用>
次に、第4実施形態に係る濾過器の動作を説明する。図4において、流入管30を介して左側から送られてきた流体は、流入管30から直接、濾過袋20の内部に流入する。流体に含まれる異物は、濾過袋20の内部に蓄積し、濾過された流体は濾過袋20を透過し、流出管40から排出される。また、流体に含まれる油やごみは、綿24により吸収され、効率よく異物を回収することができる。
【0083】
<別実施形態>
本発明に係る実施形態を種々説明してきたが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではない。また、ある実施形態の構成を他の実施形態に適用できることは、言うまでもない。例えば、第4実施形態において、濾過袋20の中に綿24を挿入する形態は、他の実施形態において採用してもよい。例えば、第1実施形態における流入管30の構造を他の実施形態に作用してもよい。
【0084】
本発明に係る濾過器は、例えば、飲料水、農業用水、下水浄化設備、養殖産業設備、船舶バラスト水、製鉄、製紙工場、水力発電、火力発電、原子力発電冷却用などの種々の産業分野で使用することができる。従って、濾過対象となる流体も、河川、湖沼、工業用水、海水中等から取水した水、海水等であり、その流体の中に含まれる各種異物を除去して水を浄化したり、浄化のための機械を保護することができる。これら流体に含まれる除去すべき異物である固形物には、魚、貝、藻、プランクトンなどの生物も含まれる。
【0085】
さらに、内海、河川、湖沼の赤潮、あおこ、流出油の除去、船舶バラスト水管理条約に基づく生物の除去による海洋汚染の防止にも、本発明に係る濾過器を応用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 本体容器
2 容器蓋
4 補助蓋
8 襞形成手段
8a 第1リング部材
8b 第2リング部材
9 サイトグラス
10 袋支持籠
20 濾過袋
20A 第1濾過袋
20B 第2濾過袋
21 水平筒部
22 ファスナー
23 ラプチャー弁
23a 第1部材
23b 第2部材
30 流入管
31 第1流入管部分
32 第2流入管部分
33 締め付け具
40 流出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器と、
本体容器の蓋部と、
前記本体容器内に収容され、柔軟性を有すると共に流体を透過させる素材により形成される濾過袋と、
流体を透過させる穴が形成されると共に、その内部に、前記濾過袋を収容するための袋支持体と、
濾過対象の流体を前記濾過袋内に導く流入管と、
濾過された流体を本体容器外部に流出させるための流出管と、を備えた濾過器であって、
前記流入管は、前記本体容器側に取り付けられる第1流入管部分と、前記濾過袋側に取り付けられる第2流入管部分とにより構成され、前記第1流入管部分と前記第2流入管部分とが着脱可能な状態で連結されていることを特徴とする濾過器。
【請求項2】
前記濾過袋の内容積は、前記袋支持体の内容積よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過器。
【請求項3】
前記濾過袋は、ファスナーにより開閉自在に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の濾過器。
【請求項4】
前記濾過袋の表面に襞を形成するための襞形成手段を濾過袋に取り付けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の濾過器。
【請求項5】
前記襞形成手段は、前記濾過袋の径よりも小径のリング部材により構成されることを特徴とする請求項4に記載の濾過器。
【請求項6】
前記濾過袋の内部を流体の流れ方向に沿って複数の濾過室に区画すると共に、上流側の濾過室と下流側の濾過室の間に弁を配置し、上流側の濾過室が目つまりにより内圧が上昇したときに、前記弁が開放し、下流側の濾過室を予備室として機能させ、かつ、前記予備室として機能した時に外部表示をさせる表示手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の濾過器。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図4A】
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【公開番号】特開2012−228653(P2012−228653A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98330(P2011−98330)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(302063400)