説明

濾過媒体

上にポリマーコーティングを堆積するようにプラズマ堆積プロセスにさらすことによって繊維表面が変化された静電気濾過媒体などの繊維濾過媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに再使用可能であるか、または長期使用もしくは静電濾過などの特定の環境下での使用を意図した繊維濾過媒体、とくに不織もしくは織濾過媒体、ならびにそれらの特性、とくにそれらの濾過効率および凝固防止特性の点で高めるようにこれらを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または気体からの固体の濾過は、生物科学、工業プロセス、実験室試験、食品および飲料、電子工学ならびに水処理を含む多くの分野で広く使用されている。広くいろいろな材料が、多孔質膜または他のタイプの媒体を含むようなプロセスを実行するために使用され得る。
【0003】
メンブランフィルタは、これらのタイプの作業を実施するために使用される多孔質または微孔質膜である。メンブランフィルタは、スピン成形、ディップ成形およびドクターブレード成形などの成型方法を含む様々な方法によって作製される。
【0004】
しかし、他のタイプの材料、とくに繊維材料は、ある状況下、とくに、たとえば塵粒子を空気から除去するために使用される。空気で運ばれる塵粒子、とくに体液に不溶である塵粒子には主要な健康危険が存在し、その塵粒子は呼吸器疾患を起こすか悪化させることができる。したがって、それらは、たとえば、空調システム、とくに呼吸器疾患を有する患者を治療するために使用される呼吸装置で除去されることが多い。
【0005】
繊維濾過媒体は、細孔のサイズがその織物の縦糸および横糸の相対的配置によって決まるところの従来の織物である。しかし、多くの場合、不織物が使用される。これらは、比較的ランダムに配置された繊維の層またはシートを備えることによって、たとえば、従来のカーディング手順を使用し、次いで有刺針または所望のサイズの編み針を使用してラッピングおよび機械的結合を行うことによって構成され得る。ひとかたまりにされた繊維を通る針の動きは、それらを一緒に結合する効果を有し、同時に、布の中に規定の大きさ分布の気孔構造を作り出す。
【0006】
これらの媒体は、一般的に、ポリマー材料、とくに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、セルロースジアセテート、モダクリリックおよびアクリルなどの強固なポリマー材料である。しかし、それらは、また、羊毛、綿もしくは絹などの天然繊維または樹脂を含み得る。それらは、広く様々な用途を有する強固で信頼性の高い濾過媒体である。
【0007】
しかし、それらは、確実に、塵で詰まらないようにするために、一定の間隔で掃除する必要がある。掃除は、エアブラストなどの技術を使用して行ってもよい。しかし、固体の塊または粒子のケーク(cake)が媒体上に形成される場合、問題が生じ得る。これらのケークは、従来のエアブラストプロセスの間に、完全にまたは容易に除去できないという程度まで付着し得る。
【0008】
今のところ、その問題は、液体化学的処理を適用することによって扱われてきており、とくにフルオロカーボン処理が適用されてきた。しかし、達成可能な結果は限られている。
【0009】
さらに、これらの繊維媒体のいくつかは、静電濾過の分野における特定の用途を有している。静電気濾過媒体の使用は、微粒子呼吸装置では、ありふれている。エレクトレットは、半永久的な電界を有し(ちょうど磁石が永久的な磁界を有するように)、エレクトレット繊維上のその静電荷は、純粋な機械的フィルターを越えて濾過効率を改善する。
【0010】
追加の有利な点は、同様の性能の機械的フィルター媒体に比べての静電気媒体の大きな孔サイズである。したがって、静電気フィルター媒体を使用する濾過装置は、機械的フィルター媒体からの同等品に比べて、より重量を軽くして、およびより小型にして作られ得る。
【0011】
これらの濾過装置の構造で使用される繊維は、電荷を保持することができ(摩擦で帯電し)、ポリプロピレン、セルロースジアセテート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリ塩化ビニル、モダクリリックおよびアクリル、ならびに、塩素処理または他の処理をおこなってもよく、さもなければ、たとえば、ナイロンでコーティングすることによる処理が好適であり得る綿、絹または羊毛などの特定のポリマーでなければならない。
【0012】
とくに、正に帯電した繊維および負に帯電した繊維の両方の混合物が、静電気フィルターの良好な基礎を形成する。好適な混合物の例が、引用することによって本明細書に組み入れられる Smith 他によるJournal of Electorostatics, 21, (1988) 81-98 に記載されている。
【0013】
しかし、静電気フィルター媒体の効率は、特定のエーロゾルにさらされることによって、機械的フィルターに比べて非常に大きな程度で減少し得る。濾過効率のこの潜在的減少は、とくに、呼吸装置などの性能の維持が極めて重要である場合に問題である。
【0014】
この現象を説明するために多くの仕組みが提案されてきた。たとえば、捕獲されたエーロゾル粒子の反対の電荷による繊維上の電荷の中和が要因かもしれないと考えられている。また、捕獲された粒子の層が、帯電している繊維を遮蔽しているかもしれない。液体エーロゾルの場合、繊維上の液体膜を通ってイオン伝導が起こり、その結果、エレクトレットが放電する可能性がある。最後に、繊維およびエーロゾルの性質によっては、エーロゾルが、化学反応または溶解によりエレクトレット繊維自体を変化させている可能性もある。
【0015】
プラズマ堆積技術は、表面のある範囲への、とくに布の表面へのポリマーコーティングの堆積のために、極めて広く使用されてきている。この技術は、従来の湿式化学的方法に比べて少ない廃物を作り出す、清浄で乾燥した技術であるとして認められている。この方法を使用すると、電界を受けた有機分子からプラズマが生じる。基板が存在する中でこれが行われた場合、プラズマ中の化合物の遊離基は基板上で重合する。従来のポリマー合成は、モノマー種に対しての強い類似点を備えた繰り返し単位を含む構造を作り出す傾向にあり、一方、プラズマを使用して作り出されたポリマーネットワークは、極めて複雑であり得る。この結果として生じたコーティングの性質は、基板の性質ならびに使用されたモノマーの性質と、それを堆積したときの状況によって決まり得る。
【0016】
表面上の試薬の保持を防止するためのプラズマ重合プロセスを使用する濾過薄膜の処理は、国際公開第2007/0813121号パンフレットに記載されている。しかし、その場合、その薄膜は、一般に、セルロースまたはニトロセルロースなどの安価な材料であり、これらは、単独で使用され、したがって、「実験室の消耗品」と見なされている。
【0017】
しかし、繊維濾過媒体での、とくに静電濾過で使用される繊維媒体のタイプでの上記処理の効果は、以前は報告されてこなかった。したがって、上記媒体の性能および信頼性における上記処理の効果は理解されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
出願人は、上記プロセスを使用して繊維濾過媒体を処理することによって、媒体の性能が著しく高くなり得ることを見出した。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリマーコーティングを表面の上に堆積するようなプラズマ堆積プロセスを受けさせることによって表面が変化させられた繊維濾過媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、今、例のつもりで、以下の付随する概略図を参照して、とくに記載されるであろう。
【図1】図1は、本発明によって処理されたおよび処理されない繊維濾過媒体で実行された空気透過性試験の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、濾過試験(以下を参照)で使用された粒子について測定された粒子の大きさ分布を示す。
【図3】図3は、濾過ケーク剥離性能を決定するために使用された試験装置を説明する概略図である。
【図4】図4は、処理濾過媒体および未処理濾過媒体に関してケーク剥離結果を示すグラフである。
【図5】図5は、塩化ナトリウムエーロゾル試験で使用される装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この方法での処理は、媒体の空気透過性において著しい影響を有しないことを見出した。これは、その上に堆積されたポリマーコーティング層は、ほんの数分子の厚みにすぎないという事実によるであろう。しかし、それは、堆積された材料の性質、繊維濾過媒体の特性によって、たとえば、媒体の凝固防止特性によって決まる。静電気濾過媒体の場合、エーロゾル試験によって説明されるように、その性能は著しく高められ得る。
【0022】
さらに、ポリマーコーティング材料は、表面と分子的に結合され、そして取り除くことができない。すなわち、変化が媒体の一部になる。
【0023】
媒体は前もって形成され、その後、適切なプラズマ堆積プロセスを受けてもよい。または、従来の方法を使用して繊維が媒体へ形成される前に、媒体を形成するために使用する繊維が処理されてもよい。プラズマは、孔の中へ、またはかたまった繊維の中に深く入り込むので、プラズマ処理の高い貫通性は、処理される材料の形成は重要ではないことを意味する。布の組み立ての前に繊維がプラズマ処理される場合、結果として得られる布で達成される静電気の帯電のレベルを制御するために、処理された繊維が、様々な割合で未処理の繊維と混合されるようにしてもよい。
【0024】
ポリマーコーティングは疎水性コーティングを含んでもよい。疎水性コーティングは、ガスまたは空気を媒体に通過させながら、液体の浸入を防止する。これは、通気用途、たとえば、医療、電子工学および自動車の用途での使用に、たとえば、センサ、ヘッドランプ、補聴器、携帯電話、交換器、実験装置などにとくに有用である。
【0025】
本発明によって処理された媒体は、液体および気体のフィルターで、ガラス繊維濾過媒体で、ならびに血液透析、創傷包帯剤および外科用煙フィルターで使用されるフィルターなどの医療および健康管理の用途で使用してもよい。たとえば、空気で運ばれる塵粒子の除去のために使用される静電気フィルター媒体に、それはとくに好適である。したがって、空気がそれらを通過し続けることができる間、粒子、とくに塵粒子は、媒体の中で捕捉されるであろう。
【0026】
モノマーおよびプロセスの条件(たとえば、パルスサイクル、圧力およびパワー)の選択は、遊離基開始剤の存在が重合の開始に必要ないように選択される。使用される条件は、プラズマプロセス中にモノマーの少なくともいくらかのフラグメンテーションが存在するところの「硬イオン化」へ導く。このフラグメンテーションは、重合のための活性種を作り出す。
【0027】
さらに、モノマーおよびプロセス条件は、繊維濾過媒体または繊維が、プラズマ堆積プロセスの後で表面の硬さの変化を全く経験しないように選択される。さらに、モノマーおよびプロセス条件は、繊維濾過媒体の孔のサイズが、プラズマ堆積プロセスの後で変化しないままであるようにされる。
【0028】
プラズマの重合または表面の変化を受けて好適なポリマーコーティング層または表面変化を濾過媒体の表面上に形成する任意のモノマーは、好適に使用されてもよい。上記モノマーの例には、プラズマ重合によって基材上に疎水性ポリマーコーティングを作り出すことができることを先行技術で知られているものが挙げられ、たとえば、反応性官能基を有する炭素質化合物、とくに、実質的に−CF3が占めるパーフルオロ化合物(国際公開第97/38801号パンフレット参照)、パーフルオロ化アルケン(Wang 他,Chem Mater, 1996, 2212-2214)、ハロゲン原子または少なくとも10個の炭素原子のパーハロゲン化有機化合物を所望により含有する水素含有不飽和化合物(国際公開第98/58117号パンフレット参照)、2つの二重結合を含む有機化合物(国際公開第99/64662号パンフレット)、所望により置換された、少なくとも5つの炭素原子の飽和アルキ(alky)鎖を有し、ヘテロ原子が所望により挿入されている飽和有機化合物(国際公開第00/05000号パンフレット)、所望により置換されたアルキン(国際公開第00/20130号パンフレット)、ポリエーテル置換アルケン(米国特許第6,482,531B号明細書)および少なくとも1種のヘテロ原子を含有する大環(macrocycles)(米国特許第6,329,024B号明細書)が挙げられ、これらのすべての内容は参照することによって本明細書に組み入れられる。
【0029】
本発明の媒体を作製するために使用され得るモノマーの特定の基は、一般式(I)
【化1】

(ここで、R1、R2およびR3は、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキルまたは所望によりハロで置換されたアリールから独立して選択され、R4は、−X−R5基(ここで、R5はアルキルまたはハロアルキル基であり、Xは、結合、一般式−C(O)O−の基、一般式−C(O)O(CH2nY−の基(ここで、nは1〜10の整数であり、Yはスルホンアミド基である)、または−(O)p6(O)q(CH2t−基(ここで、R6は所望によりハロで置換されたアリールであり、pは0または1であり、qは0または1であり、tは0または1〜10の整数であり、もしqが1の場合、tは0以外である)である)である)の化合物を含み、充分な時間の間、表面上にポリマー層を形成させることができる。
【0030】
本明細書で使用されているように、用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素をいう。とくに好ましいハロ基はフルオロである。用語「アリール」は、フェニルまたはナフチルなどの芳香族環状基をいい、とくにフェニルである。用語「アルキル」は、炭素原子の、好適には長さが20個までの炭素原子の直鎖または分枝鎖をいう。用語「アルケニル」は、不飽和の直鎖または分枝鎖をいい、好適には2〜20個の炭素原子を有する。「ハロアルキル」は、上記で規定されたアルキル鎖をいい、少なくとも1つのハロ置換基を有する。
【0031】
1、R2、R3およびR5に関して、好適なハロアルキル基は、フルオロアルキル基である。アルキル鎖は、直鎖でも分枝鎖でもよく、環状部分を含んでもよい。
【0032】
5に関して、アルキル鎖は、2つ以上の炭素原子を、好適には2〜20個の炭素原子を、好ましくは4〜12個の炭素原子を好ましくは含む。
【0033】
1、R2およびR3に関して、アルキル鎖は、1〜6つの炭素原子を有することが一般に好ましい。
【0034】
好ましいR5はハロアルキルであり、より好ましくはパーハロアルキル基であり、とくに一般式Cm2m+1のパーフルオロアルキル基(ここで、mは1以上の整数であり、好適には1〜20であり、好ましくは4〜12であり、たとえば、4、6または8である)である。
【0035】
1、R2およびR3に関して、好適なアルキル基は、1〜6つの炭素原子を有する。
【0036】
一態様では、R1、R2およびR3の少なくとも1つが、水素である。特定の態様では、R1、R2、R3が全て水素である。しかし、さらなる態様では、R3は、メチルまたはプロピルなどのアルキル基である。
【0037】
Xが−C(O)O(CH2nY−基である場合、nは、好適なスペーサー(spacer)基を与える整数である。とくにnは1〜5であり、好ましくはおよそ2である。
【0038】
Yについて好適なスルホンアミド基には、一般式−N(R7)SO2-(ここで、R7は、水素またはC1-4アルキルなどのアルキルであり、とくにメチルまたはエチルである)のものが挙げられる。
【0039】
一態様では、一般式(I)の化合物は、一般式(II)
CH2=CH−R5 (II)
(ここで、R5は一般式(I)と関係して上述のように規定される)の化合物である。
【0040】
一般式(II)の化合物では、一般式(I)でX−R5基の中の「X」は結合である。
【0041】
しかし、好ましい態様では、一般式(I)の化合物は、一般式(III)
CH2=CR7aC(O)O(CH2n5 (III)
(ここで、nおよびR5は一般式(I)との関係で上述のように規定され、R7aは、水素、C1-10アルキルまたはC1-10ハロアルキルである)
のアクリレートである。とくに、R7aは水素またはメチルなどのC1-6アルキルである。一般式(III)の化合物の特定の例は、一般式(IV)
【化2】

(ここで、R7aは、上述のように規定され、とくに水素であり、xは、1〜9の整数であり、たとえば、4〜9であり、好ましくは7である)の化合物である。その場合、一般式(IV)の化合物は、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートである。
【0042】
特定の態様によれば、1種または2種以上の有機モノマー化合物を含むプラズマに濾過媒体をさらすことによってポリマーコーティングは形成され、そのモノマー化合物の少なくとも1種は、ポリマー層が表面上に形成できるのに充分な時間の間、2つの炭素−炭素二重結合を含む。
【0043】
好適なことに2以上の二重結合を有する化合物は、一般式(V)
【化3】

(ここで、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキルまたは所望によりハロで置換されたアリールから全て独立して選択され、Zは架橋基である)の化合物を含む。
【0044】
一般式(V)の化合物での使用のための好適な架橋基Zの例は、ポリマーの技術で知られているものである。とくに、それらには、所望により置換されたアルキル基があり、それは酸素原子が挿入されていてもよい。架橋基Zのための好適な任意選択的な置換基には、パーハロアルキル基、とくにパーフルオロアルキル基が挙げられる。
【0045】
とくに好適な態様では、架橋基Zには、1種または2種以上のアシルオキシまたはエステル基が挙げられる。とくに、一般式Zの架橋基は、副一般式(VI)
【化4】

(ここで、nは1〜10の整数であり、好適には1〜3であり、R14およびR15のそれぞれは、水素、ハロ、アルキルまたはハロアルキルから独立して選択される)の基である。
【0046】
好適には、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は、フルオロアルキルなどのハロアルキルまたは水素である。とくにそれらは全て水素である。
【0047】
好適には、一般式(V)の化合物は、少なくとも1種のハロアルキル基、好ましくはパーハロアルキル基を含む。
【0048】
一般式(V)の化合物の特定の例には、以下のものがある。
【化5】

ここで、R14およびR15は上述のように規定され、R14またはR15のうちの少なくとも一方は水素以外である。そのような化合物の特定の例は、一般式Bの化合物である。
【化6】

【0049】
さらなる態様では、ポリマーコーティングは、モノマー飽和有機化合物を含むプラズマに濾過媒体をさらすことによって形成される。その化合物は、表面上にポリマー層が形成できるのに充分な時間の間、所望により置換された、ヘテロ原子が所望により挿入されている少なくとも5つの炭素原子のアルキル鎖を含む。
【0050】
本明細書に使用されているように、用語「飽和」は、モノマーが、芳香環の一部でない2つの炭素原子の間に複数結合(すなわち、二重または三重結合)を含まないということを意味する。用語「ヘテロ原子」には、酸素、硫黄、ケイ素または窒素原子が挙げられる。アルキル鎖に窒素原子が挿入された場合、第3級または第4級アミンが形成されるように、それは置換されるであろう。同様に、ケイ素は、たとえば、2つのアルコキシ基と適切に置換されるであろう。
【0051】
とくに好適なモノマー有機化合物は、一般式(VII)
【化7】

(ここで、R16、R17、R18、R19およびR20は、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルまたは所望によりハロで置換されたアリールから独立して選択され、R21は、X−R22基(ここで、R22はアルキルまたはハロアルキル基であり、Xは、結合または一般式−C(O)O(CH2xY−の基(ここで、xは1〜10の整数であり、Yは結合またはスルホンアミド基である)である)、または−(O)p23(O)s(CH2t−基(ここで、R23は所望によりハロで置換されたアリールであり、pは0または1であり、sは0または1であり、tは0または1〜10の整数であり、もし、sが1の場合、tは0以外である)である)のものである。
【0052】
16、R17、R18、R19およびR20に関して好適なハロアルキル基はフルオロアルキル基である。アルキル鎖は直鎖でも分枝鎖であってもよく、環状部分を含んでもよく、たとえば、1〜6の炭素原子を有していてもよい。
【0053】
22に関して、アルキル鎖は、1つまたは2つ以上の炭素原子、好適には1〜20個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を好適には含む。
【0054】
好ましくは、R22はハロアルキルであり、より好ましくはパーハロアルキル基であり、とくに一般式Cz2z+1のパーフルオロアルキル基(ここで、zは、1または2以上の、好適には1〜20の、好ましくは6〜12の、たとえば、8または10の整数である)である。
【0055】
ここで、Xは、−C(O)O(CH2yY−基であり、yは、好適なスペーサ(spacer)基を提供する整数である。とくにyは、1〜5であり、好ましくはおよそ2である。
【0056】
Yに関して、好適なスルホンアミド基には、一般式−N(R23)SO2-(ここで、R23は、水素、アルキル、またはC1-4アルキル、とくにメチルもしくはエチルなどのハロアルキルである)のものが挙げられる。
【0057】
使用されるモノマー化合物は、所望によりハロゲンで置換されC6-25アルカン、とくにパーハロアルカン、とくにパーフルオロアルカンを好ましくは含む。
【0058】
別の態様によれば、ポリマーコーティングは、ポリマー層が表面上に形成できるのに充分な時間の間、所望により置換されたアルキンを含むプラズマに構成要素の繊維または濾過媒体自体をさらすことによって形成される。
【0059】
好適には、使用されるアルキン化合物は、1つまたは2つ以上の炭素−炭素三重結合を含む炭素原子鎖を含む。その鎖は、ヘテロ原子が所望により挿入されてもよく、環状および他の官能基を含む置換基を備えていてもよい。好適な鎖は、直鎖でも分枝鎖であってもよく、2〜50個の炭素原子、より好適には6〜18個の炭素原子を有する。それらは、出発材料として使用されるモノマーの中に存在していてもよいか、プラズマの適用におけるモノマーの中で、たとえば、たとえば開環によって作り出されてもよいかのいずれかである。
【0060】
とくに好適なモノマー有機化合物は、一般式(VIII)
24−C≡C−X1−R25 (VIII)
(ここで、R24は、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキルまたは所望によりハロで置換されたアリールであり、X1は結合または架橋基であり、R25はアルキル、シクロアルキルまたは所望によりハロゲンで置換されたアリール基である)のものである。
【0061】
好適な架橋基X1には、一般式−(CH2s−、−CO2(CH2p−、−(CH2pO(CH2q−、−(CH2pN(R26)CH2q−、−(CH2pN(R26)SO2−の基が挙げられる。ここで、sは0または1〜20の整数であり、pおよびqは、1〜20の整数から独立して選択され、R26は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。R26に関して、特定のアルキル基には、C1-6アルキル、とくにメチルまたはエチルが挙げられる。
【0062】
ここで、R24は、アルキルまたはハロアルキルであり、1〜6つの炭素原子を有していることが一般に好ましい。
【0063】
24に関して、好適なハロアルキル基には、フルオロアルキル基が挙げられる。そのアルキル鎖は、直鎖でも分枝鎖であってもよく、環状部分を含んでいてもよい。しかし、好ましくは、R24は水素である。
【0064】
好ましくは、R25はハロアルキルであり、より好ましくはパーハロアルキル基であり、とくに一般式Cr2r+1のパーフルオロアルキル基である。ここで、rは、1または2以上の、好適には1〜20の、好ましくは6〜12の、たとえば8または10である整数である。
【0065】
特定の態様では、一般式(VIII)の化合物は一般式(IX)
CH≡C(CH2s−R27 (IX)
(ここで、sは上記のように規定され、R27はハロアルキル、とくにパーハロアルキル、たとえば、C613のようなC6-12パーフルオロ基である)の化合物である。
【0066】
別の態様では、一般式(VIII)の化合物は、一般式(X)
CH≡C(O)O(CH2p27 (X)
(ここで、pは1〜20の整数であり、R27は上記の一般式(IX)との関係で上記のように規定され、とくにC817基である)の化合物である。この場合、好ましくは、pは、1〜6の整数であり、もっとも好ましくはおよそ2である。
【0067】
一般式(I)の化合物の他の例は、一般式(XI)
CH≡C(CH2pO(CH2q27, (XI)
(ここで、pは上記のように規定され、しかし、とくに1であり、qは上記のように規定され、しかし、とくに1であり、R27は、一般式(IX)との関係で上記のように規定され、とくにC613基である)の化合物であるか、
または、一般式(XII)
CH≡C(CH2pN(R26)(CH2q27 (XII)
(ここで、pは上記のように規定され、しかし、とくに1であり、qは上記のように規定され、しかし、とくに1であり、R26は上記のように規定され、とくに水素であり、R27は、一般式(IX)との関係で規定され、とくにC715基である)の化合物であるか、
または、一般式(XIII)
CH≡C(CH2pN(R26)SO227 (XIII)
(ここで、pは上記のように規定され、しかし、とくに1であり、R26は上記のように規定され、とくにエチルであり、R27は一般式(IX)との関係で規定され、とくにC817基である)の化合物である。
【0068】
別の態様では、そのプロセスにおいて使用されたアルキンモノマーは一般式(XIV)
28C≡C(CH2nSiR293031 (XIV)
(ここで、R28は、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキルまたは所望によりハロで置換されたアリールであり、R29、R30およびR31は、アルキルまたはアルコキシから独立して選択され、とくにC1-6アルキルまたはアルコキシである)の化合物である。
【0069】
好ましいR28基は、水素またはアルキルであり、とくにC1-6アルキルである。
【0070】
好ましいR29、R30およびR31基は、C1-6アルコキシであり、とくにエトキシである。
【0071】
一般に、処理すべき濾過媒体は、気体状態で堆積されるべき材料と一緒にプラズマチャンバーの中に配置され、グロー放電がチャンバー内で発生し、そして、好適な電圧が印加され、それはパルス化されてもよい。
【0072】
ポリマーコーティングは、パルス波および連続波の両方のプラズマ堆積条件下で作製されてもよい。しかし、コーティングをより細かく制御することができ、その結果より均質なポリマー構造を形成することができるので、パルスプラズマが好ましい。
【0073】
本明細書で使用されたように、表現「気体状態で」は、単体または混合状態でのガスまたは蒸気、ならびにエーロゾルをいう。
【0074】
効果的な方法でプラズマ重合が起こる正確な条件は、ポリマーの性質、濾過媒体が作られた材料および孔のサイズの両方などを含む処理された濾過媒体の性質などの要因によって変わり、日常的な方法および/または技術を使用して決定されるであろう。
【0075】
本発明の方法での使用のための好適なプラズマには、高周波(RF)、マイクロ波または直流(DC)によって作り出されるものなどの非平衡プラズマが挙げられる。従来技術で知られているように、それらは大気圧または亜大気圧で作用してもよい。しかし、とくにそれらは高周波(RF)によって作り出される。
【0076】
ガス状プラズマを作り出すために様々な形態の装置を使用してもよい。一般に、これらは、中でプラズマが作り出され得る容器またはプラズマチャンバーを含む。そのような装置の特定の例は、たとえば、国際公開第2005/089961号パンフレットおよび国際公開第02/28548号パンフレットに記載されている。しかし、他の従来のプラズマ発生装置の多くを利用できる。
【0077】
プラズマチャンバー内に存在するガスは、モノマー単体の蒸気を含んでもよい。しかし、それは、必要があれば、キャリヤーガス、とくにヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスと混合されてもよい。ヘリウムはモノマーのフラグメンテーションを最小限にすることができるので、とくに、ヘリウムが好ましいキャリヤーガスである。
【0078】
混合ガスとして使用される場合、キャリヤーガスに対するモノマー蒸気の相対量は、先行技術のおける従来の手順にしたがって好適に決定される。添加されるモノマーの量は、使用される特定のモノマーの性質、処理される基材の性質、プラズマチャンバーのサイズなどによってある程度決まるであろう。一般に、従来のチャンバーの場合、モノマーは、50〜250mg/分の量で、たとえは100〜150mg/分の量で供給される。しかし、選択された反応装置のサイズおよび一度に処理するのに必要な基材の数によってその量は変わるであろうことを理解されるであろう。同様に、これは、毎年の必要な処理能力および資本支出などの考慮すべきことによって決まる。
【0079】
ヘリウムなどのキャリヤーガスは、好適には、一定の量、たとえば、5〜90標準立方センチメートル/分(sccm)、たとえば、15〜30sccmの量で管理される。いつかの例では、キャリヤーガスに対するモノマーの比は100:0〜1:100の範囲内であり、たとえば、10:0〜1:100の、とくに約1:0〜1:10の範囲内であろう。正確な比は、プロセスに必要な流量が確実に達成される達成されるように選択されるであろう。
【0080】
いくつかの場合、たとえば15秒〜10分の間、たとえば2〜10分の間、チャンバー内で予備連続パワープラズマを生じさせてもよい。これは、表面予備処理のステップとして作用し、モノマーが自分で表面と容易に確実に結合し、その結果、重合が起こるにしたがって、コーティングは、表面上で「成長」する。その予備処理ステップは、モノマーがチャンバーの中に導入される前に、不活性ガスのみが存在する中で、行ってもよい。
【0081】
その後、少なくともモノマーが存在するときに重合を進行させるために、そのプラズマは、パルスプラズマに好適に切り換えられる。
【0082】
すべての場合では、たとえば、13.56MHzの高周波電圧を印加することによって、グロー放電は好適に発生する。これは、電極を使用して印加され、電極はチャンバーの内部にあってもよいし,外部にあってもよい。しかし、より大きなチャンバーの場合、一般に内部である。
【0083】
好適には、ガス、蒸気またはガス混合物は、少なくとも1標準立方センチメートル/分(sccm)の量で、このましくは1〜100sccmの範囲内の量で供給される。
【0084】
モノマー蒸気の場合、これは、80〜300mg/分、たとえば約120mg/分での量で好適に供給され、それは、パルス化された電圧が印加されている間の特定の運転の間におけるモノマーの性質、チャンバーのサイズおよび生産物の表面積によって決まる。しかし、それが、工業規模の使用とって、既定のプロセス時間に関連して変わり、モノマーの性質および必要な技術的効果によってまた決まるであろう固定される全モノマー供給を有するのにより適切であってもよい。
【0085】
ガスまたは蒸気は、任意の従来の方法を使用してプラズマチャンバーの中に供給されてもよい。たとえば、それらは、プラズマ領域の中へ吸い込まれたり、注入されたり、ポンプで輸送されたりしてもよい。とくに、プラズマチャンバーが使用される場合、ガスまたは蒸気は、排気ポンプの使用による結果として生じるチャンバー内の圧力の減少の結果としてチャンバーの中へ吸い込まれてもよい。また、それらは、液体の取り扱いで一般的であるように、チャンバーの中へポンプにより輸送されたり、噴霧されたり、浸されたり、静電気的にイオン化されたり、注入されたりしてもよい。
【0086】
重合は、0.1〜400ミリトル(mtorr)、好適には約10〜100ミリトルの圧力に維持された、たとえば一般式(I)の化合物の蒸気を使用して、好適に引き起こされる。
【0087】
印加される電界は、好適には5〜500Wの電力のものであり、たとえば、20〜500Wであり、好適には約100Wのピーク電力であり、連続またはパルス化された電界として印加される。使用される場合、非常に低い平均電力を生じさせるシーケンスで、たとえば、オン時間:オフ時間の比が1:100〜1:1500の範囲内、たとえば、約1:650であるところのシーケンスで、パルスが好適に印加される。そのようなシーケンスの特定の例は、20〜50μ秒、たとえば、約30μ秒の間、パワーがオンになり、1000〜30000μ秒、とくに約20000μ秒の間、パワーがオフになるところのシーケンスである。この方法によって得られた典型的な平均電力は、0.1〜0.2Wである。
【0088】
電界は、好適には、30秒〜90分、好ましくは5〜60分印加され、それは、一般式(I)の化合物および繊維濾過媒体もしくは処理された繊維の塊の性質によって決まる。
【0089】
好適には、使用されるプラズマチャンバーは、複数の媒体を収容するのに充分な容積があるものであり、そこでこれらは前もって形成される。
【0090】
とくに好適な装置および本発明による濾過媒体を製造する方法は、国際公開第2005/089961号パンフレットに記載されており、その内容は引用することによって本明細書に取り入れられる。
【0091】
とくに、このタイプの大容量チャンバーを使用する場合、プラズマは、0.001〜500W/m3の、たとえば0.001〜100W/m3、好適には0.005〜0.5W/m3の平均電力でのパルス電界としての電圧で作り出される。
【0092】
これらの条件は、大きなチャンバー、たとえば、プラズマゾーンが、500cm3よりも大きな、たとえば0.1m3以上、たとえば、0.5〜10m3、好適には約1m3の容積を有するところのチャンバーの中で、良好な特性の均質なコーティングを堆積させるためにとくに好適である。この方法で形成された層は、良好な機械的強度を有する。
【0093】
そのチャンバーの寸法は、特定の濾過媒体シートまたは処理されるべき繊維のバッチを収容するように選択されるであろう。たとえば、一般的に立方体のチャンバーは、広い範囲の用途にとって好適であり得る。しかし、必要となれば、縦長のまたは長方形のチャンバーを組み立ててもよく、さらに円柱形または他の好適な任意の形状でもよい。
【0094】
チャンバーは、バッチプロセスを可能にするために密閉可能な容器であってもよい。また、それは、インラインシステムとして連続プロセスで利用できるようにするために濾過媒体のための入口と出口とを含んでいてもよい。とくに後者の場合、チャンバー内でのプラズマ放電を作り出すために必要な圧力条件は、たとえば、「ホイッスリングリーク(whistling leak)」を有する従来の装置のように高容量ポンプを使用して維持される。しかし、大気圧で、または大気圧に近い圧力で濾過媒体のシートまたは繊維のバッチを処理することもまた可能であり、「ホイッスリングリーク」に対する必要性がなくなるであろう。
【0095】
本発明のさらなる態様は、上述したように繊維濾過媒体を作製する方法を含む。その方法は、上記媒体または上記媒体が組み立てられる繊維を、その上にポリマーコーティングが形成されるように、上述したようにプラズマ重合プロセスにさらすこと、およびそして、必要があれば、その後にその繊維から繊維濾過媒体を形成することを含む。
【0096】
本発明の別の態様は、前記請求項のいずれか1項による繊維濾過媒体を作製する方法を含む。その方法は、(i)繊維濾過媒体または(ii)繊維のいずれかを、遊離基開始剤が存在しないプラズマプロセスで、表面上にポリマー層を形成するように炭化水素またはフルオロカーボンモノマーを含むプラズマにさらすこと、および(ii)の場合、上記繊維から繊維濾過媒体を形成することを含み、そのプラズマはパルス化されている。
【0097】
表面に形成されたそのポリマー層は疎水性であってもよい。
【0098】
さらに他の態様では、本発明は、気体または液体などの流体を濾過する方法を提供する。その方法は、上述したように濾過媒体に流体を通過させることを含む上記方法を含む。とくに、流体は空気であり、媒体は、塵粒子などの固体粒子を空気から除去する静電気媒体である。
【0099】
さらに別の態様では、本発明は、繊維濾過媒体の凝固防止特性を高めるためのプラズマ重合プロセスによって堆積され、重合されたフルオロカーボンまたは炭化水素のコーティングの使用を提供する。
【0100】
さらに、本発明は、繊維静電気濾過媒体の性能を高めるためのプラズマ重合プロセスによって堆積され、重合されたフルオロカーボンまたは炭化水素のコーティングの使用を提供する。
【0101】
好適なフルオロカーボンおよび炭化水素のコーティングは上述のようにして得ることができる。
【0102】
例1
空気透過性試験
プラズマ処置を受けたおよび受けない繊維濾過媒体で一連の試験が実行された。媒体は以下のように特徴付けられる。
【0103】
【表1】

【0104】
それぞれの媒体の試料は、300リットルまでのプロセス容積を有するプラズマチャンバーの中に配置された。そのチャンバーは、マスフローコントローラおよび/または液体マスフローメータおよび混合注入器または適切なモノマーリザーバを通して必要なガスまたは蒸気の供給と接続されていた。
【0105】
80ミリトルの圧力に達するまでチャンバーの中に20sccmでヘリウムを入れる前に、チャンバーは3ミリトルと10ミリトルとの間の基底圧に排気された。その後、連続パワープラズマが、13.56MHzで300Wの高周波を使用して4分間生じた。
【0106】
この期間の後、化学式
【化8】

の1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(CAS # 27905−45−9)が、120ミリグラム/分の量でチャンバーの中に送られ、プラズマが、30ミリ秒のオン−時間および20ミリ秒のオフ−時間で100Wのピークパワーで40分間、パルスプラズマに切り替えられた。40分の終了で、プラズマパワーがプロセスガスおよび蒸気と一緒に止められた。そして、チャンバーは、基底圧に排気された。その後、チャンバーは、大気圧へと通気され、媒体試料は除去された。
【0107】
均質異方性多孔質不織構造を通過する流体の流れは、ダルシー(Darcy)の法則
【数1】

によって記載することができる。
【0108】
ここで、qは流体の流れの体積流量であり、ηは流体の粘度であり、Δpは流体の流れの導管長さに沿った圧力降下であり、kおよびtは、それぞれ比透過率および不織濾過媒体の厚みである。
【0109】
比透過率の値は、布の厚みおよび流体のタイプの影響を除いた布の固有の透過率を示し、異なる厚みの意味深長な不織構造を比較することができる。
【0110】
材料の空気透過率および厚みを測定される場合、不織布の比透過率を計算することができる。
【0111】
BS EN ISO 9237:1995にしたがって、それぞれの濾過媒体FM1〜FM5の空気透過率を、「シャーリー(Shirley)」空気透過性試験機を使用して測定した。この装置を使用して、布の試験領域を横断した所与の圧力差で、布の所与の領域を垂直に通過する空気の流れの速度が測定される。
【0112】
試験条件は、以下のようであった。
試験領域:5cm2
空気圧:50Pa/100Pa
【0113】
処理済みおよび未処理のそれぞれの媒体は、10回の試験を受けた。試験結果を以下の図1および表1に示す。
【0114】
【表2】

ここで、Uは未処理
Tは処理済み
SDは、標準偏差
CoVは、変動係数
【0115】
濾過媒体の平均厚みは、2.00gcm-2の負荷の下、布の厚みを測定するFast−1(織物物性評価システム(Fabric Assurance by Simple Testing))圧縮試験器を使用して媒体の別個の領域上の5点の個々の読み取りから測定された。
【0116】
ダルシーの法則を使用して、以下の式を使用して比透過率kを計算することができる。
【数2】

【0117】
媒体に関して、計算された比透過率値を表2に示す。
【0118】
表2−測定された厚み、および媒体に関する計算された比透過率値
【表3】

【0119】
結果は、その処理は、PTFE膜含有媒体(FM4)を除いて試験された濾過媒体の空気透過性に著しい影響をまったく有さないということを示す。この媒体は、2枚の別個のA4サイズのシートとして供給され、上述されたように、そのうちの1枚は処理され、1枚は処理されなかった。この場合の媒体は、最小の孔のサイズ(<7μm)を有していた。
【0120】
例2
濾過ケーク試験
二酸化ケイ素の細かい粒子からなる試験塵が作製された。試験塵の粒子サイズは、レーザー回折技術を使用して測定された。粒子は、集束したレーザービームを通過し、それらのサイズに逆比例した角度で光を散乱した。作り出された散乱光の角度強度を感光検出器で測定した。塵の粒子大きさ分布を図2に示す。
【0121】
それぞれの布(例1のFM1〜FM4)が、濾過試験装置(図3)で、3回同じ方法で試験された。重さを測定した濾過媒体の試料は、供給管(2)の出口と通気口(3)との間に順番に挿入されたフィルターハウジング(1)の中に固定された。空気の供給(4)は、ノズル(5)を通って送り込まれ、塵供給チャンバー(6)を通って供給管(2)の中に入る空気の流れを作り出した。1.00gの試験塵が、30秒の期間を超えて、塵供給(7)から供給チャンバー(6)の中に供給された。装置がさらに30秒間の間作動した。その後、フィルターおよびハウジング(1)は、除去され、重さが測定され、反対の位置に交換された。フィルターは、30秒の空気の噴射を受け、ケーク化した塵を除去した。そのフィルターおよびハウジング(1)は、重さが測定され、ケーク剥離の割合を計算した。
【0122】
結果を図4に示す。これらは、その処理は、FM1、FM2およびFM3でフィルター塵ケーク剥離に関して有益な効果を有するように見えるということを示す。これらの場合、処理した濾過媒体は、同等の未処理の濾過媒体に比べてより優れているケーク剥離特性を示した。FM3に関する結果は、化学的処理は、本発明の処理に比べてあまり効果がないということを示す。
【0123】
FM4の試料はこの結果を示さなかったが、これは、試料に関する問題によるものであろう(上記の透過率の結果でのコメント参照)。
【0124】
例3
摩擦帯電濾過媒体試験
塩化ナトリウムエーロゾルは、空気濾過試験について一般に使用される。例1に記載されたプラズマ処理を行った、および行われていないアクリルステープルファイバーの試料は、ポリプロピレンと混合され、静電気の帯電を減少させるためにカーディングされ、クロスラッピングが行われ、ニードルパンチが行われ、不織濾過媒体を作製した。
【0125】
その後、これらの試料は、BS EN 13274−7:2002、塩化ナトリウムエーロゾル試験をベースとした方法を使用して、図5で説明されている装置を使用して試験された。
【0126】
圧縮された空気の流れは、空気濾過器(8)で濾過され、矢印の方向へ進みエーロゾル発生器(9)の中に入る。その発生器の中では、約0.6μmの平均粒子径を有する粒子の多分散分布の形態で塩化ナトリウムエーロゾルが作製される。その後、これは、試験フィルターを含む試験チャンバーを通過される。一方、並行する流れ(11)はこのチャンバーを迂回する。試験フィルターを通過する前および後のエーロゾルの中の粒子の濃度は、炎光測光法の方法によって測定される。炎光光度計(12)は、分析されるべきエーロゾルが流れる垂直燃焼管の中に収納されている水素バーナーを含む。燃焼管を通過する、空気中の塩化ナトリウム粒子は気化し、589nmの特徴的なナトリウム発光を示す。この発光の強度は、空気の流れの中のナトリウムの濃度に正比例する。正確な測定は、<0.001〜100%のフィルター透過の範囲で可能である
【0127】
最初におよび7日後に得られた結果を表3に示す。
【0128】
【表4】

【0129】
これらの結果は、処理された静電気(摩擦帯電)濾過媒体は、性能の著しい改善を付与するということを示した。エーロゾルによって起こった濾過性能の減少は、認められている問題であり、その処理は、この問題を軽減する明らかな方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上にポリマーコーティングを堆積するようにプラズマ堆積プロセスにさらすことによって繊維の表面が変化されている繊維濾過媒体。
【請求項2】
前記濾過媒体に組み立てる前に、前記繊維は前記プラズマ堆積プロセスにさらされる請求項1に記載の繊維濾過媒体。
【請求項3】
形成された前記媒体が前記プラズマ堆積プロセスにさらされる請求項1に記載の繊維濾過媒体。
【請求項4】
静電気(摩擦帯電)濾過媒体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維濾過媒体。
【請求項5】
前記繊維媒体は、ポリプロピレン、セルロースジアセテート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリ塩化ビニル、モダクリリック、アクリル、所望により塩素化され、および/またはナイロンまたはその混合物でコーティングされてもよい綿、絹、または羊毛を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維濾過媒体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維濾過媒体を作製する方法であって、
前記方法は、ポリマー層が表面上に形成するように、(i)繊維濾過媒体または(ii)繊維のどちらかを炭化水素またはフルオロカーボンのモノマーを含むプラズマにさらす工程、および
(ii)の場合、前記繊維から繊維濾過媒体を形成する工程を含む方法。
【請求項7】
前記プラズマがパルス化されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーが一般式(I)
【化1】

(ここで、R1、R2およびR3が、水素、ハロアルキル、ハロ、アルキルまたは所望によりハロで置換されたアリールから独立して選択され、R4は、X−R5基(ここで、R5はアルキルまたハロアルキル基であり、Xは結合、一般式−C(O)O(CH2nY−の基(ここで、nは1〜10の整数であり、Yは結合またはスルホンアミド基である)、または−(O)p6(O)q(CH2t−基(ここで、R6は所望によりハロで置換されたアリールであり、pは0または1であり、qは0または1であり、tは0または1〜10の整数であり、もしqが1である場合、tは0以外である)である)である)の化合物である請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
一般式(I)の前記化合物は、一般式(II)
CH2=CH−R5 (II)
(ここで、R5は請求項8のように規定される)の化合物であるか、または、一般式(III)
CH2=CR7aC(O)O(CH2n5 (III)
(ここで、nおよびR5は請求項1のように規定され、R7aは、水素、C1-10アルキルまたはC1-10ハロアルキルである)の化合物である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一般式(I)の前記化合物が、一般式(III)の化合物である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一般式(III)の前記化合物が、一般式(IV)
【化2】

(ここで、R7aは、請求項8のように規定され、xは、1〜9の整数である)の化合物である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一般式(IV)の前記化合物が、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記濾過媒体または繊維はプラズマ堆積チャンバーの中に配置され、前記チャンバーの中でグロー放電が発生し、電圧がパルス場として印加される請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記印加される電圧は、40〜500Wのパワーである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
オンの時間:オフの時間の比が1:100〜1:1500の範囲内であるところのシーケンスで、前記電圧がパルス化される請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
予備ステップで、連続パワープラズマが、前記繊維媒体または前記繊維に適用される請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記予備ステップは、不活性ガスが存在する中で行われる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングは疎水性コーティングである請求項6〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維濾過媒体または繊維は、遊離基開始剤が存在しないで前記プラズマにさらされる請求項6〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維濾過媒体を作製する方法であって、
前記方法は、プラズマプロセスで、遊離基開始剤が存在しないでポリマー層が表面上に形成するように、(i)繊維濾過媒体または(ii)繊維のどちらかを炭化水素またはフルオロカーボンのモノマーを含むプラズマにさらす工程、および
(ii)の場合、前記繊維から繊維濾過媒体を形成する工程を含み、
前記プラズマはパルス化される方法。
【請求項21】
前記ポリマー層は疎水性である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
気体または液体などの流体を濾過する方法であって、
前記方法は、上述したように濾過媒体に流体を通過させる工程を含む方法を含む方法。
【請求項23】
前記流体は空気であり、前記媒体は、前記空気から固体粒子を除去する静電気媒体である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
繊維濾過媒体の凝固防止特性を高めるために、プラズマ重合プロセスによって堆積された、重合したフルオロカーボンまたは炭化水素のコーティングの使用。
【請求項25】
静電気繊維濾過媒体の性能を高めるために、プラズマ重合プロセスによって堆積された、重合したフルオロカーボンまたは炭化水素のコーティングの使用。
【請求項26】
上にポリマーコーティングが堆積されるように、請求項6〜21のいずれか1項に記載の方法によるプラズマ堆積プロセスにさらすことによって繊維の表面が変化された繊維濾過媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524799(P2011−524799A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512209(P2011−512209)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050596
【国際公開番号】WO2009/147422
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508216699)ピーツーアイ リミティド (12)
【Fターム(参考)】