説明

濾過方法および濾過装置

【課題】フィルタエレメントから逆洗分離した濾過助剤を繰返し有効利用できるようにすることで、濾過助剤の消費量を抑えるとともに産業廃棄物の発生を抑え、これらからコスト低減を図れる濾過方法および濾過装置を提供する。
【解決手段】濾過助剤プリコート回路15で、プリコートタンク11内の濾過助剤液12が含む濾過助剤をフィルタケース13内に装着したフィルタエレメント14に付着積層させ濾過助剤層を形成する。濾過回路18で、メインタンク16内の濾過処理液17中のスラッジをフィルタエレメント14の濾過助剤層により除去する。逆洗回路19で、濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメント14から逆洗分離させプリコートタンク11に循環させる。濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返した後、回収装置21で、フィルタエレメント14から逆洗分離した濾過助剤およびスラッジを外部へ取出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過助剤を付着積層させたフィルタエレメントによる濾過方法および濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外面に突起部を有する針金がコイル状に巻回され、この突起部が隣接輪との間に介在することによって、隣接輪相互間に僅かな濾過間隙が形成されたスプリングフィルタにおいて、このスプリングフィルタの外側面に珪藻土などの濾過助剤を付着積層させて濾過助剤層を形成したフィルタエレメントが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなフィルタエレメントで工作機械から排出されたクーラント液などを濾過処理していると、濾過助剤層の表面にスラッジ層が集積して、濾過助剤層を塞いでしまう。
【0004】
これでは、フィルタエレメントの濾過機能が損なわれるので、フィルタエレメントに液を逆流させて、濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから分離させる、いわゆる逆洗をしている。
【0005】
従来、フィルタエレメントに一度用いられた後、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤は、産業廃棄物として廃棄処理されている。
【特許文献1】特開平8−196821号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにフィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤は、産業廃棄物として処理されているので、多量の濾過助剤が必要であるとともに、多量の産業廃棄物が発生し、これらからコストがかさむ問題も生じている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤を繰返し有効利用できるようにすることで、濾過助剤の消費量を抑えるとともに産業廃棄物の発生を抑え、これらからコスト低減を図れる濾過方法および濾過装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、プリコートタンク内に収容された濾過助剤を含む濾過助剤液をフィルタエレメントに順方向に流してプリコートタンクに循環させることでフィルタエレメントに濾過助剤を付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート工程と、プリコートタンクとは独立に設置されたメインタンク内に収容された濾過処理液を上記フィルタエレメントに順方向に流してメインタンクに循環させることで濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去する濾過工程と、上記フィルタエレメントの濾過助剤層がスラッジ層により目詰まりしたときにプリコートタンク内の濾過助剤液を上記フィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させる逆洗工程とを具備し、そして、プリコートタンク内の濾過助剤液中に含まれる濾過助剤をフィルタエレメントに付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート工程と、メインタンク内の濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去する濾過工程と、上記フィルタエレメントの濾過助剤層がスラッジ層により目詰まりしたときにプリコートタンク内の濾過助剤液を上記フィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させる逆洗工程とを複数回繰返すことで、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤を繰返し有効利用できるようにしたので、濾過助剤の消費量を抑えるとともに産業廃棄物の発生を抑え、さらに、これらからコスト低減を図れる濾過方法を提供する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の濾過方法において、濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返した後、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤およびスラッジを外部へ取出す回収工程と、この回収工程で外部へ取出された分の濾過助剤をプリコートタンクに補充する濾過助剤投入工程とを具備した濾過方法であり、そして、濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返した後、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤およびスラッジを回収工程により外部へ取出し、取出された分の濾過助剤を濾過助剤投入工程でプリコートタンクに補充するので、機能低下した濾過助剤を新しいものと交換しつつ、スラッジを濾過系外へと排出することが可能となる。
【0010】
請求項3記載の発明は、プリコートタンク内に収容された濾過助剤を含む濾過助剤液をフィルタエレメントに順方向に流してプリコートタンクに循環させることでフィルタエレメントに濾過助剤を付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート回路と、プリコートタンクとは独立に設置されたメインタンク内に収容された濾過処理液を上記フィルタエレメントに順方向に流してメインタンクに循環させることで濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去する濾過回路と、上記フィルタエレメントの濾過助剤層がスラッジ層により目詰まりしたときにプリコートタンク内の濾過助剤液を上記フィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させる逆洗回路とを具備した濾過装置であり、そして、濾過助剤プリコート回路によりプリコートタンク内の濾過助剤液中に含まれる濾過助剤をフィルタエレメントに付着積層させて濾過助剤層を形成し、濾過回路によりメインタンク内の濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去し、逆洗回路によりプリコートタンク内の濾過助剤液をスラッジ層により目詰まりしたフィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させることで、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤を繰返し有効利用できるようにしたので、濾過助剤の消費量を抑えるとともに産業廃棄物の発生を抑え、さらに、これらからコスト低減を図れる濾過装置を提供する。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の濾過装置におけるフィルタエレメントを、コイル状に形成された一連の金属濾材が伸縮自在に設けられ、この金属濾材の隣接する螺旋部間に濾過間隙が形成され、この螺旋部間の濾過間隙は、濾過時には圧縮方向に付勢された力により最小に設定され、逆洗時には金属濾材内に供給された逆洗液圧により拡大されるようにした濾過装置であり、そして、コイル状の金属濾材で伸縮自在に設けられたフィルタエレメントは、金属濾材の隣接する螺旋部間に形成された濾過間隙が、濾過時には圧縮方向に付勢された力により最小に設定されるので、金属濾材に対して濾過助剤が確実に付着積層されて濾過助剤層が形成され、また、金属濾材の螺旋部間の濾過間隙が、逆洗時には金属濾材内に供給された逆洗液圧により拡大されるので、金属濾材から濾過助剤が確実に逆洗分離される。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の濾過装置において、逆洗回路から濾過助剤およびスラッジを外部へ取出す回収装置と、この回収装置で外部へ取出された分の濾過助剤をプリコートタンクに補充する濾過助剤投入装置とを具備した濾過装置であり、そして、逆洗回路から濾過助剤およびスラッジを回収装置により外部へ取出し、取出された分の濾過助剤を濾過助剤投入装置によりプリコートタンクに補充するので、機能低下した濾過助剤を新しいものと交換しつつ、スラッジを濾過系外へと排出することが可能となる。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか記載の濾過装置において、プリコートタンク内に設けられた濾過助剤液の液面レベルを検出する液面センサと、液面センサにより検出された液面レベルが下限設定値以下であるときに濾過回路内で循環中の濾過処理液をプリコートタンク内へと切換える切換弁とを具備した濾過装置であり、そして、プリコートタンク内に設けられた濾過助剤液の液面レベルを液面センサにより検出し、液面レベルが下限設定値以下のときは、濾過回路内で循環中の濾過処理液を切換弁によりプリコートタンク内へ供給するので、プリコートタンクに対して独立の給水回路を設置する必要がない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、プリコートタンク内の濾過助剤液中に含まれる濾過助剤をフィルタエレメントに付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート工程と、メインタンク内の濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去する濾過工程と、上記フィルタエレメントの濾過助剤層がスラッジ層により目詰まりしたときにプリコートタンク内の濾過助剤液を上記フィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させる逆洗工程とを複数回繰返すことで、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤を繰返し有効利用できるようにしたので、濾過助剤の消費量を抑えることができるとともに産業廃棄物の発生を抑えることができ、さらに、これらからコスト低減を図れる濾過方法を提供できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返した後、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤およびスラッジを回収工程により外部へ取出し、取出された分の濾過助剤を濾過助剤投入工程でプリコートタンクに補充するので、機能低下した濾過助剤を新しいものと交換しつつ、スラッジを濾過系外へと排出することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、濾過助剤プリコート回路によりプリコートタンク内の濾過助剤液中に含まれる濾過助剤をフィルタエレメントに付着積層させ、濾過回路によりメインタンク内の濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去し、逆洗回路によりプリコートタンク内の濾過助剤液をスラッジ層により目詰まりしたフィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させることで、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤を繰返し有効利用できるようにしたので、濾過助剤の消費量を抑えることができるとともに産業廃棄物の発生を抑えることができ、さらに、これらからコスト低減を図れる濾過装置を提供できる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、コイル状の金属濾材で伸縮自在に設けられたフィルタエレメントは、金属濾材の隣接する螺旋部間に形成された濾過間隙が、濾過時には圧縮方向に付勢された力により最小に設定されるので、金属濾材に対して濾過助剤を確実に付着積層させ濾過助剤層を形成することができ、また、金属濾材の螺旋部間の濾過間隙が、逆洗時には金属濾材内に供給された逆洗液圧により拡大されるので、金属濾材から濾過助剤を確実に逆洗分離させることができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、逆洗回路から濾過助剤およびスラッジを回収装置により外部へ取出し、取出された分の濾過助剤を濾過助剤投入装置によりプリコートタンクに補充するので、機能低下した濾過助剤を新しいものと交換しつつ、スラッジを濾過系外へと排出することができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、プリコートタンク内に設けられた濾過助剤液の液面レベルを液面センサにより検出し、液面レベルが下限設定値以下のときは、濾過回路内で循環中の濾過処理液を切換弁によりプリコートタンク内へ供給するので、プリコートタンクに対して独立の給水回路を設置する必要がなく、設備を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を、図1および図2に示された一実施の形態を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示されるように、プリコートタンク11内の濾過助剤液12に含まれる濾過助剤をフィルタケース13内に装着されたフィルタエレメント14の外側面に付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート回路15と、メインタンク16内の濾過処理液17中のスラッジをフィルタエレメント14の濾過助剤層により除去する濾過回路18と、濾過助剤層およびこの濾過助剤層の表面で成長したスラッジ層を破壊してフィルタエレメント14から逆洗分離させプリコートタンク11に循環させる逆洗回路19と、この逆洗回路19から濾過助剤およびスラッジを外部へ取出す回収装置21と、濾過助剤をプリコートタンク11に補充する濾過助剤投入装置22とが設置されている。
【0022】
濾過助剤は、主として珪藻土であるが、パルプ粉末や活性炭粉末などを添加しても良い。この濾過助剤を含む濾過助剤液をフィルタエレメント14の外側から内側へ透過させるようにして繰返し循環させることで、フィルタエレメント14の外側面に濾過助剤を付着積層させ、濾過助剤層を形成することができ、この濾過助剤層により微細なスラッジ、粒子を捕捉することができる。
【0023】
前記濾過助剤プリコート回路15は、プリコートタンク11内にプリコートポンプ24の吸込管路25が挿入され、このプリコートポンプ24の吐出管路26が3方切換弁形の電磁弁27、管路28,29を経てフィルタケース13の下部に連通され、このフィルタケース13の上部に固定されたフィルタエレメント14の内部が、管路31、3方切換弁形の電磁弁32、管路33、3方切換弁形の電磁弁34、管路35を経てプリコートタンク11に連通された構造であり、プリコートタンク11内に収容された濾過助剤を含む濾過助剤液12をフィルタエレメント14に順方向に流してプリコートタンク11に循環させることで、フィルタエレメント14の外側面に濾過助剤を付着積層させ濾過助剤層を形成するものである。
【0024】
前記濾過回路18は、メインタンク16の未処理槽部16a内にメインポンプ41の吸込管路42が挿入され、メインポンプ41の吐出管路43が開閉弁形の電磁弁44、管路45を経てフィルタケース13の下部に連通され、このフィルタケース13の上部に固定されたフィルタエレメント14の内部が、管路31、3方切換弁形の電磁弁32、管路46を経てメインタンク16の処理済槽部16bに連通された構造であり、プリコートタンク11とは独立に設置されたメインタンク16の未処理槽部16a内に工作機械より配管Aを経て供給された未処理の濾過処理液17aを、上記フィルタエレメント14に順方向に流してメインタンク16の処理済槽部16bに循環させることで、濾過処理液17a中のスラッジをフィルタエレメント14およびこのフィルタエレメント14の外側面に形成された濾過助剤層により除去するものである。処理済みの濾過処理液17bは、メインタンク16の処理済槽部16bより図示されないポンプにより配管Bを経て工作機械へ戻される。
【0025】
前記逆洗回路19は、プリコートポンプ24の吐出管路26が3方切換弁形の電磁弁27、管路47、3方切換弁形の電磁弁34、管路33、3方切換弁形の電磁弁32および管路31を経てフィルタエレメント14の内部に連通され、フィルタケース13の下部が、管路48、この管路48中の開閉弁形の電磁弁49を経てプリコートタンク11上に連通された構造であり、上記フィルタエレメント14の濾過助剤層がスラッジ層により目詰まりしたときにプリコートタンク11内の濾過助剤液12を上記フィルタエレメント14に逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメント14から逆洗分離させプリコートタンク11に循環させるものである。
【0026】
前記回収装置21は、逆洗回路19からの濾過助剤およびスラッジが入り混じった廃棄物51を外部へ取出すものであり、沈澱槽52の下部に廃棄物51を溜める廃棄物溜部53が設けられ、この廃棄物溜部53の下部に昇降装置54により昇降可能に設けられた金網フィルタ55が設けられ、この金網フィルタ55の上昇位置と下降位置との間の一側に廃棄物51を押出すためのプッシャシリンダ56が配置され、他側に落下する廃棄物51を案内するシュート57が配置され、このシュート57の下側に廃棄物51を収容する容器58が配置され、また、沈澱槽52の中間部には、フィルタケース13の下部が管路61および開閉弁形の電磁弁62を経て接続され、金網フィルタ55の下側容器55a内は、管路63を経て3方切換弁形の電磁弁64により、前記管路47に連通された管路65と、プリコートタンク11に連通する管路66とのいずれか一方に連通可能に設けられ、さらに、沈澱槽52の上部には、エアコンプレッサなどの空圧源67が3方切換弁形の電磁弁68および管路69を経て接続され、この管路69は、電磁弁68によりプリコートタンク11上の管路70にも連通可能とした構造である。
【0027】
前記濾過助剤投入装置22は、回収装置21で外部へ取出された分の濾過助剤をプリコートタンク11に補充するために、このプリコートタンク11上に突出された濾過助剤投入口部71を有する。
【0028】
また、プリコートタンク11内には、濾過助剤液12の液面レベルを検出する上限設定用の液面センサ72および下限設定用の液面センサ73がそれぞれ設けられ、下限設定用の液面センサ73により液面レベルが下限設定値以下であることを検出したときに濾過回路18内で循環中の濾過処理液17をプリコートタンク11内へと切換える切換弁として、前記3方切換弁形の電磁弁32,34などが設けられている。
【0029】
さらに、フィルタ入口側の管路45にはフィルタ入口圧を検出する圧力センサ74が設けられ、フィルタ入口圧に応じたポンプ回転速度が得られるように、圧力センサ74の信号を受けてポンプ回転速度を制御するインバータ75,76が、プリコートポンプ24およびメインポンプ41に対して設けられている。
【0030】
図2に示されるように、前記フィルタエレメント14は、前記管路31に接続するための穴81およびねじ82を有する上側部材83から下方へ複数の長尺部材84が突設され、これらの長尺部材84の比較的下部間に下側スプリング受材85が一体に設けられ、また、上側部材83に対して上下動自在の下側部材86から上方へ複数の長尺部材87が突設され、これらの長尺部材87の比較的上部間に上側スプリング受材88が一体に設けられ、両方のスプリング受材85,88間に圧縮コイルスプリング89が設けられ、この圧縮コイルスプリング89により下側スプリング受材85に対し上側スプリング受材88が押上げられ、さらに長尺部材87を介して下側部材86が上方へ附勢されている。
【0031】
この下側部材86の中央部に下側からねじ棒91が螺入されて一体化され、このねじ棒91が、前記下側スプリング受材85に固着された係止板92の穴93に挿入され、この穴93から上方へ突出されたねじ棒91の上端部にナット94が螺合されて回止め処理され、このナット94と係止板92との間に、下側部材86が若干下降し得るだけの軸方向間隙95が設けられている。
【0032】
このような取付関係の上側部材83と下側部材86との間に、コイル状に形成された一連の金属濾材96が伸縮自在に設けられている。このコイル状の金属濾材96は、隣接する各々の螺旋部96a,96a間に、螺旋部96aと一体成形された僅かな高さの凸部が介在することにより、各々の螺旋部96a,96a間を密着しても、それらの間に僅かな濾過間隙97が形成されている。
【0033】
このように、フィルタエレメント14の螺旋部96a,96a間の濾過間隙97は、濾過時には圧縮コイルスプリング89により圧縮方向に付勢された力により最小に設定され、逆洗時には上側部材83の穴81から金属濾材96内に供給された逆洗液圧により軸方向間隙95の範囲内で拡大されるように構成されている。
【0034】
前記長尺部材84,87は、圧縮コイルスプリング89の外周部に等間隔で位置して圧縮コイルスプリング89の案内部材として機能するとともに、金属濾材96の内周部に等間隔で位置して金属濾材96の案内部材としても機能する。
【0035】
次に、この実施の形態の作用を説明する。
【0036】
(濾過助剤プリコート工程)
プリコートタンク11内に収容された濾過助剤を含む濾過助剤液12をフィルタエレメント14に順方向に流してプリコートタンク11に循環させることでフィルタエレメント14に濾過助剤を付着積層させ濾過助剤層を形成する。
【0037】
この濾過助剤プリコート工程では、プリコートタンク11内の濾過助剤を含む濾過助剤液12を、プリコートポンプ24で汲み上げ、吐出管路26より電磁弁27、管路28,29を経てフィルタケース13の下部内に供給し、このフィルタケース13の上部に固定されたフィルタエレメント14の金属濾材96の濾過間隙97より内部に流入させる段階で、濾過助剤液12中の濾過助剤を金属濾材96の外側面に付着積層させて濾過助剤層を形成する。液は、上側部材83の穴81から管路31に流出し、3方切換弁形の電磁弁32、管路33、3方切換弁形の電磁弁34、管路35を経てプリコートタンク11に戻される。
【0038】
(濾過工程)
プリコートポンプ24を停止し、電磁弁44を開き、電磁弁32を切換えて、メインポンプ41を駆動することで、プリコートタンク11とは独立に設置されたメインタンク16内に収容された濾過処理液17を上記フィルタエレメント14に順方向に流してメインタンク16に循環させることで、濾過処理液17中のスラッジをフィルタエレメント14の濾過助剤層により除去する。
【0039】
この濾過工程では、メインポンプ41が、メインタンク16の未処理槽部16a内の濾過処理液17aを汲み上げ、吐出管路43、電磁弁44および管路45を経てフィルタケース13内に供給し、フィルタエレメント14の外周部から内部へ濾過処理液17が透過する際に、濾過処理液17中のスラッジをフィルタエレメント14の濾過助剤層により除去し、そして、このスラッジが除去された濾過処理液17bは、管路31、電磁弁32および管路46を経てメインタンク16の処理済槽部16bに移送され、さらに工作機械に供給される。
【0040】
この濾過作用時は、図2に示されるように、フィルタエレメント14の圧縮コイルスプリング89の反撥力により上側部材83に対し下側部材86が上方へ附勢され、上側部材83と下側部材86との間のコイル状の金属濾材96は最短状態に圧縮され、この状態で金属濾材96の外側面に積層形成された濾過助剤層および隣接する螺旋部96a,96a間の僅かな濾過間隙97を経て、フィルタケース13内の液が金属濾材96内に移動するので、濾過間隙97より微細なスラッジも濾過助剤層によって液から分離除去される。
【0041】
(逆洗工程)
上記フィルタエレメント14の濾過助剤層が、この濾過助剤層の表面で成長したスラッジ層により目詰まりしたときは、プリコートタンク11内の濾過助剤液12を上記フィルタエレメント14に逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメント14から逆洗分離させプリコートタンク11に循環させる。
【0042】
すなわち、プリコートポンプ24から吐出管路26に吐出された濾過助剤液12を、電磁弁27により管路47に切換え、電磁弁34により管路33に切換え、電磁弁32および管路31を経てフィルタエレメント14の内部へ供給し、濾過する時と逆方向の内部から外部への流れの液圧力でフィルタエレメント14を逆洗する。
【0043】
この逆洗時には、フィルタエレメント14の金属濾材96内の内圧が上昇して、ナット94が係止板92と係合する軸方向間隙95だけ下側部材86が下降することにより、螺旋部96a,96a間の濾過間隙97が拡大されるようにしたから、この金属濾材96の螺旋部96a,96a間の拡大動作と、濾過間隙97から外側へ噴出する逆洗液圧とによって、スラッジ層および濾過助剤層が破壊され、金属濾材96からフィルタケース13内に剥れ落ちた濾過助剤およびスラッジは、管路48および電磁弁49を経てプリコートタンク11内に戻される。
【0044】
(濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程の繰返し)
以上のような濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返し行なう。その際、プリコートタンク11内の濾過助剤液中には、濾過助剤液とともにスラッジも混入しているが、このスラッジは、再度の濾過助剤プリコート工程でフィルタエレメント14の外側面に濾過助剤層が形成されたときは、この濾過助剤層中に分散されているので、再度の濾過工程により濾過助剤層の表面にスラッジ層が形成されるまでは濾過作用を妨げることはない。
【0045】
(回収工程)
以上のような濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返した後、回収装置21によりフィルタエレメント14から逆洗分離された濾過助剤およびスラッジを外部へ取出す。
【0046】
回収装置21は、フィルタエレメント14から逆流された濾過助剤およびスラッジを含む液を、管路61および電磁弁62を経て沈澱槽52内に収容した後、電磁弁62を閉じて、空圧源67より電磁弁68および管路69を経て供給された空気圧により沈殿槽52内の液面を加圧し、液を廃棄物溜部53および金網フィルタ55を通して、下側容器55aから、管路63、電磁弁64および管路66を経てプリコートタンク11に排出しながら、その液中の濾過助剤およびスラッジを金網フィルタ55上に濾し取るようにする。
【0047】
金網フィルタ55上に濾し取られた濾過助剤およびスラッジは、廃棄物溜部53内で定形の廃棄物51となるので、昇降装置54により金網フィルタ55を下げることで、この廃棄物51も下降させ、一側のプッシャシリンダ56によりこの廃棄物51を他側へ押出して、シュート57を介し容器58に収納する。
【0048】
(濾過助剤投入工程)
回収装置21によりスラッジとともに外部へ取出された分の濾過助剤を濾過助剤投入装置22によりプリコートタンク11に補充する。
【0049】
また、このプリコートタンク11内に液も補充する。すなわち、プリコートタンク11内に設けられた濾過助剤液12の液面レベルを液面センサ72,73により検出し、液面レベルが液面センサ73で設定された下限設定値以下のときは、濾過回路18内で循環中の濾過処理液17、すなわちメインタンク16内からメインポンプ41によりフィルタエレメント14に供給された濾過処理液17を電磁弁32,34の切換により管路35を経てプリコートタンク11内へ供給する。そして、プリコートタンク11内の液面レベルが、液面センサ72によって設定された上限設定値に達したら、液の補充を停止する。
【0050】
次に、この実施の形態の効果を説明する。
【0051】
濾過助剤プリコート回路15により、プリコートタンク11内の濾過助剤液12中に含まれる濾過助剤をフィルタエレメント14の外側面に付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート工程と、濾過回路18により、メインタンク16内の濾過処理液17中のスラッジをフィルタエレメント14の濾過助剤層により除去する濾過工程と、上記フィルタエレメント14の濾過助剤層がこの濾過助剤層の表面で成長したスラッジ層により目詰まりしたときに逆洗回路19によりプリコートタンク11内の濾過助剤液12をフィルタエレメント14に逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメント14から逆洗分離させプリコートタンク11に循環させる逆洗工程とを、複数回繰返すことにより、フィルタエレメント14から逆洗分離された濾過助剤を繰返し有効利用できるようにしたので、濾過助剤の消費量を抑えることができるとともに産業廃棄物の発生を抑えることができ、さらに、これらからコスト低減を図れる。
【0052】
濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返した後、逆洗回路19によりフィルタエレメント14から逆洗分離された濾過助剤およびスラッジを、回収装置21により外部へ取出し、また、取出された分の濾過助剤を濾過助剤投入装置22からプリコートタンク11に補充するので、機能低下した濾過助剤を新しいものと交換しつつ、スラッジを濾過系外へと排出することができる。
【0053】
コイル状の金属濾材96で伸縮自在に設けられたフィルタエレメント14は、金属濾材96の隣接する螺旋部96a,96a間に形成された濾過間隙97が、濾過時には圧縮方向に付勢された力により最小に設定されるので、金属濾材96に対して濾過助剤を確実に付着積層させ濾過助剤層を形成することができ、また、逆洗時には、金属濾材96の螺旋部96a,96a間の濾過間隙97が、金属濾材96内に供給された逆洗液圧により拡大されるので、金属濾材96の外側面に形成された濾過助剤層およびスラッジ層を容易に破壊して確実に逆洗分離させることができる。
【0054】
プリコートタンク11内に設けられた濾過助剤液12の液面レベルを液面センサ72,73により検出し、液面レベルが液面センサ73の下限設定値以下のときは、濾過回路18内で循環中のメインタンク16内の濾過処理液17を電磁弁32,34の切換によりプリコートタンク11内へ供給するので、プリコートタンク11に対して独立の給水回路を設置する必要がなく、設備を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る濾過方法および濾過装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】同上濾過装置のフィルタエレメントを示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
11 プリコートタンク
12 濾過助剤液
13 フィルタケース
14 フィルタエレメント
15 濾過助剤プリコート回路
16 メインタンク
17 濾過処理液
18 濾過回路
19 逆洗回路
21 回収装置
22 濾過助剤投入装置
32,34 切換弁としての電磁弁
72,73 液面センサ
96 金属濾材
96a,96a 螺旋部
97 濾過間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリコートタンク内に収容された濾過助剤を含む濾過助剤液をフィルタエレメントに順方向に流してプリコートタンクに循環させることでフィルタエレメントに濾過助剤を付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート工程と、
プリコートタンクとは独立に設置されたメインタンク内に収容された濾過処理液を上記フィルタエレメントに順方向に流してメインタンクに循環させることで濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去する濾過工程と、
上記フィルタエレメントの濾過助剤層がスラッジ層により目詰まりしたときにプリコートタンク内の濾過助剤液を上記フィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させる逆洗工程とを具備し、
濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返す
ことを特徴とする濾過方法。
【請求項2】
濾過助剤プリコート工程、濾過工程および逆洗工程を複数回繰返した後、フィルタエレメントから逆洗分離された濾過助剤およびスラッジを外部へ取出す回収工程と、
この回収工程で外部へ取出された分の濾過助剤をプリコートタンクに補充する濾過助剤投入工程と
を具備したことを特徴とする請求項1記載の濾過方法。
【請求項3】
プリコートタンク内に収容された濾過助剤を含む濾過助剤液をフィルタエレメントに順方向に流してプリコートタンクに循環させることでフィルタエレメントに濾過助剤を付着積層させ濾過助剤層を形成する濾過助剤プリコート回路と、
プリコートタンクとは独立に設置されたメインタンク内に収容された濾過処理液を上記フィルタエレメントに順方向に流してメインタンクに循環させることで濾過処理液中のスラッジをフィルタエレメントの濾過助剤層により除去する濾過回路と、
上記フィルタエレメントの濾過助剤層がスラッジ層により目詰まりしたときにプリコートタンク内の濾過助剤液を上記フィルタエレメントに逆方向に流すことで濾過助剤層およびスラッジ層を破壊してフィルタエレメントから逆洗分離させプリコートタンクに循環させる逆洗回路と
を具備したことを特徴とする濾過装置。
【請求項4】
フィルタエレメントは、
コイル状に形成された一連の金属濾材が伸縮自在に設けられ、
この金属濾材の隣接する螺旋部間に濾過間隙が形成され、
この螺旋部間の濾過間隙は、濾過時には圧縮方向に付勢された力により最小に設定され、逆洗時には金属濾材内に供給された逆洗液圧により拡大される
ことを特徴とする請求項3記載の濾過装置。
【請求項5】
逆洗回路から濾過助剤およびスラッジを外部へ取出す回収装置と、
この回収装置で外部へ取出された分の濾過助剤をプリコートタンクに補充する濾過助剤投入装置と
を具備したことを特徴とする請求項3または4記載の濾過装置。
【請求項6】
プリコートタンク内に設けられた濾過助剤液の液面レベルを検出する液面センサと、
液面センサにより検出された液面レベルが下限設定値以下であるときに濾過回路内で循環中の濾過処理液をプリコートタンク内へと切換える切換弁と
を具備したことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−102589(P2006−102589A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290159(P2004−290159)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000226002)株式会社ニクニ (25)
【Fターム(参考)】