説明

濾過板の支持構造

【課題】濾布を弛むことなく張設でき、かつ、濾過面積の減少を防止できる、濾過板の支持構造を提供する。
【解決手段】この濾過板の支持構造は、支持体22の外周を袋状に形成された濾布24で覆い、濾布24の内部を濾過室Rとした濾過板20を、濾過槽2内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持させると共に、濾過板20の外周には、濾過板20を囲む濾過枠30が配置され、濾布24の上辺部S1は、濾過枠30の上辺部31に吊り下げ支持され、濾布24の下辺部S2には第1おもり部材50が取付けられ、その重さにより濾布24の下辺部S2が張設されており、濾布24の両側辺部S3,S3は、濾過枠30の両側辺部33,33の内周に張設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場等における汚泥の濃縮に用いる濾過板の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、浄水場や下水処理場から排出される汚泥は、通常90%以上の水分を含有している。そこで、これらの汚泥を処理するにあたって、まず、脱水処理を行って、汚泥を濃縮して減量化を図り、そして焼却や埋め立て等を行っている。
【0003】
これら汚泥の脱水処理には、加圧や真空等による機械脱水が一般的である。しかしながら、これら機械脱水では、処理に要するエネルギーが大きい。そのため、サイフォンの原理を利用して、濾布等の濾過手段の表面に汚泥を吸引付着させ、汚泥中の水分(濾液)を吸引して濃縮し、機械脱水でのエネルギー負荷を軽減している。
【0004】
下記特許文献1には、サイフォンの原理を利用した濾過濃縮装置として、濾過室のまわりに濾布網で囲んでなる濾過板(濾過盤)を濾過槽の汚泥室内に懸架し、汚泥中の水分を濾過室内へ濾過させ、濾過室と連通して設けられた濾液排出管を通して濾液を排出するようにしたものにおいて、上記濾液排出管の排出口端或いは途中に空気侵入防止装置を設けたものが開示されている。また、より効率的に濾過処理をするためには、濾過板の濾過面積を大きく確保することが好ましい。そのため、濾過室内には、複数の濾過板を配置させることが多い。
【0005】
しかしながら、濾過槽内に複数の濾過板を配置させた場合、濾過板が汚泥に浸漬され、ナイロン等により形成された濾布に汚泥が付着したままの状態が長く続くと、濾布が膨潤し次第に弛んでしまって、隣接する濾布どうしが互いに接触して、濾過面積が減少してしまうことがあった。
【0006】
そのため、下記特許文献2には、隣接する濾布どうしの接触を防止するため、図7に示す濾過板の固定方法が開示されている。すなわち、濾布24を有する濾過板20と、その外周に配置され濾過槽内に形成された案内溝に嵌入される固定枠12とを有し、前記濾過板20と前記固定枠12との間に複数の弾性部材37を介在させ、該弾性部材37の両端部が濾過板20と固定枠12とにそれぞれ取付けられている。また、弾性部材37は、濾過板20の上下左右の全周に亘って複数配置され、それらの弾性部材37により濾布24が張設されて、濾布24の弛みが抑制されている。
【特許文献1】特公昭62−58762号公報
【特許文献2】特公平3−23203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2における濾過板20を構成する濾布24は、濾布表面に徐々に付着する汚泥の重さと、水分により膨潤する濾布24の性質とによって、濾布上辺側の弾性部材37が長く引き伸ばされると共に、濾布下辺側の弾性部材37が過度に押し縮められることがあった。このため、濾布下辺側の弾性部材37による張力が作用しない状態となり、濾布24の下辺部を十分な張力でしっかりと張設することが難しくなり、濾布24が下方に大きく垂れ下がってしまうことがあった。
【0008】
その結果、濾布24が弛んでしまって、汚泥払い落し時にばたつきが生じたり、濾布24の膨潤による伸びによって、濾布24が膨らんで、隣接する濾布24どうしがくっついてしまって、濾過面積が減少してしまうことがあった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、濾布を弛むことなく張設できると共に、濾過面積の減少を防止することができる、濾過板の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の濾過板の支持構造の第1は、支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾過板の外周には、濾過板を囲む濾過枠が配置され、
前記濾布の上辺部は、前記濾過枠の上辺部に吊り下げ支持され、前記濾布の下辺部には第1おもり部材が取付けられ、その重さにより濾布の下辺部が張設されており、
前記濾布の両側辺部は、前記濾過枠の両側辺部内周に張設されていることを特徴とする。
【0011】
上記発明によれば、濾布の下辺部が、第1おもり部材によって常時下方に引張られるので、濾布を常に弛むことなく張設することができる。このため、濾過室内に圧縮空気等を吹き込んで濾布表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際の濾布のばたつきや、濾布を構成する化学繊維が膨潤して濾布自体の伸びによる変形が発生してきた際の濾布の弛みが防止され、隣接する濾布どうしがくっつき合って濾過面積が減少することを防止できる。
【0012】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記濾布の両側辺部は、前記濾過枠の両側辺部内周に弾性部材を介して張設されていることが好ましい。これによれば、濾布の両側辺部が両側辺部内周に弾性部材を介して張設されているので、濾布の弛みを更に良好に防止できる。
【0013】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記濾過枠の両側辺部内周及び前記濾布の両側辺部に、ワイヤ引き掛け部が上下方向に所定間隔でそれぞれ設けられ、前記濾過枠の上辺部に支持されたワイヤが、両ワイヤ引き掛け部に交互に引き掛けられて、その下端部に第2おもり部材を取付けられており、前記濾布の両側辺部は、前記第2おもり部材によって引張られるワイヤを介して、前記濾過枠の両側辺部に張設されていることが好ましい。これによれば、濾布の両側辺部が、第2おもり部材によって引張られるワイヤを介して、濾過枠の両側辺部に向けて引張られるので、濾布の弛みを更に良好に防止できる。
【0014】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記ワイヤ引き掛け部は、前記濾過枠の両側辺部内周及び前記濾布の両側辺部に取付けた滑車で構成されていることが好ましい。これによれば、ワイヤを滑車に引き掛けることにより、第2おもり部材によってワイヤがスムーズに引張られるので、濾布の両側辺部を濾過枠の両側辺部に向けて効果的に引張ることができる。
【0015】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記第1おもり部材及び/又は前記第2おもり部材は、前記濾過枠の下辺部の両側を通って下方に伸びる連結部材を介して取付けられていることが好ましい。これによれば、第1おもり部材及び/又は第2おもり部材が、濾過枠の下辺部の両側を通って下方に伸びる連結部材を介して取付けられているので、濾過室内に圧縮空気等を吹き込んで濾布表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際、濾布がばたついても、連結部材が濾過枠の下辺部の両側を通っているため、濾過枠によって動きを規制され、おもりが大きく揺動することを防止できる。
【0016】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記第1おもり部材及び/又は前記第2おもり部材は、前記濾過枠の下辺部を貫通して下方に伸びる連結部材を介して取付けられていることが好ましい。これによれば、第1おもり部材及び/又は第2おもり部材が、濾過枠の下辺部を貫通して下方に伸びる連結部材を介して取付けられているので、濾過室内に圧縮空気等を吹き込んで濾布表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際、濾布がばたついても、連結部材が濾過枠の下辺部を貫通しているため、濾過枠によって動きを規制され、おもりが大きく揺動することを防止できる。
【0017】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記第1おもり部材及び/又は前記第2おもり部材は、側方から見た断面が逆U字状をなし、その両側壁が前記濾過枠の下辺部の両側を通って下方に伸びていることが好ましい。これによれば、第1おもり部材及び/又は第2おもり部材は、側方から見た断面が逆U字状をなし、その両側壁が前記濾過枠の下辺部の両側を通って下方に伸びているので、濾過室内に圧縮空気等を吹き込んで濾布表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際、濾布がばたついても、おもり部材が濾過枠の下辺部の両側を跨ぐように配置されているので、濾過枠によって動きを規制され、おもりが大きく揺動することを防止できる。また、おもりは側方から見た断面が逆U字状をなしているので、汚泥剥離時におもりの上部に濃縮汚泥が堆積しにくくすることができる。
【0018】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記第1おもり部材は、弾性部材を介して前記連結部材又は前記濾布に連結されていることが好ましい。これによれば、第1おもり部材は、弾性部材を介して連結部材又は濾布に連結されているので、濾布下辺部の各接続場所によって濾布の伸びが異なっていても、おもりの荷重が濾布に均等にかかるようにすることができる。
【0019】
本発明の濾過板の支持構造においては、前記第1おもり部材は、前記濾布の下辺部に内包されて取付けられていることが好ましい。これによれば、第1おもり部材を濾布の下辺部に内包させることにより、第1おもり部材を取付けるための連結部材等のスペースを省略して、濾布による濾過面積を大きくとることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、濾布の下辺部が、第1おもり部材によって常時下方に引張られるので、濾布を常に弛むことなく張設することができる。このため、濾過室内に圧縮空気等を吹き込んで濾布表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際の濾布のばたつきや、濾布を構成する化学繊維が膨潤して濾布自体の伸びによる変形が発生してきた際の濾布の弛みが防止され、隣接する濾布どうしがくっつき合って濾過面積が減少することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の濾過板の支持構造の実施形態を説明する。図1,2には、本発明による濾過板の支持構造の第1実施形態が示されている。図1(a)は、同濾過板の支持構造を用いた汚泥濃縮処理装置の概略構成図で、図1(b)は、同処理装置の内部に、濾過板を取付ける際の取付け状態を示す説明図である。図2は、濾過板の支持構造が示されており、(a)はその概略構成を示す説明図、(b)は(a)のA−A矢示線における断面図である。
【0022】
図1を参照して、本発明の濾過板の支持構造が採用された汚泥濃縮処理装置1(以下、「処理装置1」という)の構造について説明する。この処理装置1は、汚泥を脱水処理して濃縮するための濾過槽2と、該濾過槽2内に複数配置され、汚泥を濾過すると共にその脱水処理を行う濾過板20と、前記濾過槽2の外部に配置され、汚泥を脱水処理して得られる濾過水を貯留するための濾液貯留槽3とで主に構成されている。
【0023】
濾過槽2は、後述する濾過板20を複数並列して配置できるように、所定方向に延設された有底の箱状をなし、その下方は底壁に向かって先細りとなるように構成されている。この濾過槽2の下部側壁には、汚泥給配管4の一端が連通して接続され、その管路途中には汚泥給排弁V1を介して汚泥給排ポンプPが接続されている。それにより、汚泥給排ポンプPを稼動し汚泥給排弁V1を開弁させることで、濾過槽2内に汚泥(未濃縮汚泥)を送入し或いは引き抜き可能となっている。また、濾過槽2の底壁には、濃縮汚泥引き抜き管5の一端が連通して接続されている。この濃縮汚泥引き抜き管5の途中には汚泥排出弁V2が設けられ、この汚泥排出弁V2を開弁することで、濾過槽2の下部から濃縮汚泥を外部へ排出可能となっている。
【0024】
一方、処理装置の外部に配置される濾液貯留槽3には、その底壁に給水弁V3を備えた給水管6が連通して接続され、水道水が給水されるようになっている。同じく濾液貯留槽3の底壁には、管路途中に引き抜き弁V4が配置された濾液排出管7が連通して接続されており、濾液貯留槽3内に貯留された濾液を外部へ排出可能となっている。また、濾液貯留槽3の側壁には、濾過板20に連結される分配管9の一端が連通して接続されている。同濾液貯留槽3の上壁には、その管路途中に空気流入弁V5が配置された空気流入管8が連通して接続されており、他端に接続されたコンプレッサーCからの圧縮空気を分配管9に送風可能となっている。
【0025】
次に、上記濾過槽2内に複数配置される濾過板20について、図2を参照して説明する。この濾過板20は、支持体22と、その外周を覆う袋状の濾布24とを有している。前記支持体22は、ネットやメッシュ網等により長方形、または正方形状に形成され、所定の剛性を有する中空枠状をなしている。この支持体22の外周を覆う袋状の濾布24は、例えば、一対の矩形状の布体を重ね合わせて周縁部どうしを固着したり、一枚の布体を所定位置で折り曲げて、折り曲げ部両側を重ね合わせて周縁部どうしを固着したりして、袋状に形成される。
【0026】
そして、支持体22外周を濾布24で覆った状態で、その幅方向(上下方向に直交する方向)に所定間隔を設け、かつ、上下方向に沿って設けられた縫い目26を介して、支持体22に濾布24が縫い付けられている。それにより、上下に伸びると共に幅方向に複数配列された濾過室R(図2(b)参照)を、内部に画成した濾過板20が構成される。
【0027】
また、図2(a)に示すように、この実施形態における濾布24は、上辺部S1、下辺部S2、及び、左右一対の側辺部S3,S3を有する略四角形状をなしている。同濾布24の各辺部S1、S2、S3には、所定間隔を設けて環状リングよりなるハトメ28が装着されている。
【0028】
また、濾過板20の上方内部には、所定長さで伸びる配管10が、幅方向に沿って配置され、該配管10に複数設けられた図示しない通孔が、各濾過室Rにそれぞれ位置するようになっている。この配管10の所定位置には、濾液貯留槽3の側壁に接続された分配管9が連結され、この分配管9は濾過板20の上辺部S1から挿出されると共に、後述する濾過枠30の上辺部31から突き出るようになっている。
【0029】
上記濾過板20の外周には、濾過板20を囲む濾過枠30が配置される。この濾過枠30は、上下に配置された上辺部31及び下辺部32と、これらの上辺部31及び下辺部32の両端部どうしをそれぞれ連結する、左右一対の側辺部33,33とからなる、略四角形の枠状をなしている。各辺部31、32、33は、前記濾布24の各辺部S1、S2、S3に対して所定間隔を設けて配置され、濾過枠30内に濾過板20が配置されている。
【0030】
また、濾過枠30の左右の側辺部33,33と、濾布24の左右の側辺部S3,S3との間には、複数の弾性部材37が配置されている。この実施形態の弾性部材37は、コイルバネよりなる。そして、各弾性部材37は、その一端部が濾布24のハトメ28に引き掛けられ、他端部が濾過枠30の側辺部33に支持されている。その結果、濾過枠30の両側辺部33,33と、それに対応する位置に配置された濾布24の両側辺部S3,S3とが、弾性部材37を介して連結され、濾布24の両側辺部S3,S3は、濾過枠30の両側辺部33,33の内周に張設されるようになっている。
【0031】
更に、濾布24の上辺部S1に装着されたハトメ28には、シャックル等の接続部材39の一端部が引き掛けられ、この接続部材39の他端部が、前記濾過枠30の上辺部31に固定されている。それにより、濾過枠30の上辺部31の内周に、濾布24の上辺部S1が吊り下げ支持されている。なお、接続部材39としては特に指定はなく、濾過板20を吊り下げた際の荷重に耐えられるものであれば良い。また、接続部材39は、濾布24の上辺部S1と、濾過枠30の上辺部31との隙間を出来るだけ小さくすることが可能なものであることが好ましい。
【0032】
上記のように、濾過枠30上辺部31に吊り下げ支持された濾布24は、その下辺部S2に所定重量の第1おもり部材50が取付けられ、それによって濾布24の下辺部S2が張設されるようになっている。この構造について説明すると、濾布24の下辺部S2に装着された複数のハトメ28には、濾過枠30の下辺部32の両側を通って下方に伸びる形状をなした、第1連結部材40が複数取付けられている。
【0033】
図2の部分拡大図に示すように、この第1連結部材40は、いわゆるシャックルと呼ばれる吊り金具で、上方に平行に伸びる一対の延出部41a,41aを有する略U字状の本体41と、各延出部41a先端の孔41b,41bに挿通されて固定される連結棒43とを備える。前記連結棒43は、所定長さのボルト及びそれに螺合するナットからなる。
【0034】
また、同部分拡大図に示すように、第1連結部材40の各延出部41a,41aは、その間隔が濾過枠30の下辺部32よりも幅広とされ、更に濾過枠30の下辺部32の両側を通って、その先端部が濾布24の下辺部S2に至る長さで伸びている。なお、前記延出部41aの長さは、取付ける濾布24のサイズによって異なり、濾布24の上下方向の伸縮幅を考慮して決定する。
【0035】
そして、第1連結部材40の延出部41a,41aの先端が、濾布24の下辺部S2の両側に配置され、延出部41a先端の孔41b及びハトメ28に連結棒43が挿通支持されて、第1連結部材40が、左右方向に揺動可能に濾布24の下辺部S2に取付けられている。
【0036】
一方、第1おもり部材50は、この実施形態の場合、所定重量の横長の角柱状をなし、その上端から複数の引き掛け孔51aを有する突片51が突設されている。そして、前記と同様な、コイルバネよりなる弾性部材37の一端が、第1連結部材40の底部に引き掛けられ、他端が第1おもり部材50の引き掛け孔51aに引き掛けられている。その結果、第1おもり部材50は、弾性部材37及び第1連結部材40を介して、濾布24の下辺部S2に取付けられている。
【0037】
このように、この第1おもり部材50は、複数の弾性部材37及び第1連結部材40を介して、濾布24の下辺部32に取付けられているので、濾布24の下辺部32の各接続場所によって濾布24の伸びが異なっていても、濾布24の下辺部S2側の各弾性部材37が適宜伸び縮みして、第1おもり部材50の荷重が、濾布24の下辺部32に均等にかかるようにすることができる。また、第1おもり部材50の重さは、濾布24のサイズによって異なるが、1つの第1連結部材40に対して、1〜2kg程度の荷重が作用するような、重さとすることが好ましい。
【0038】
上記構造をなす濾過枠30は、図1(a)に示すように、所定の固定手段11によって、濾過槽2の内壁に支持固定されるようになっている。この実施形態における固定手段11としては、図1(b)に示すように、濾過槽2の内面に所定間隔を設けて突出した一対のガイド板2a,2aと、濾過枠30の上辺部31の両側から伸びる延出部材31aの上面に取付けられ、前記ガイド板2a,2aの間隔よりも幅広とされた係合板31bとで構成されている。そして、濾過枠30の上辺部31をガイド板2a,2aの間に挿入することにより、ガイド板2a,2aに前記係合板31bが係合して、濾過枠30の上辺部31が支持されるようになっている。
【0039】
そして、濾過板20を内方した濾過枠30が、上記固定手段11を介して濾過槽2内に複数支持固定される。その結果、濾過槽2の内部に、濾布24が、その平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列されて支持されるようになっている。
【0040】
次に、この濾過板の支持構造を用いた、汚泥濃縮装置による汚泥の濃縮方法について説明する。
【0041】
まず、汚泥給排弁V1を開放し、汚泥給排ポンプPを稼動させて、脱水処理の対象物となる汚泥(未濃縮汚泥)を、濾過槽2内に配置された濾過板20の上方に至るまで供給する。そして、給水弁V3を開き、分配管9、濾液貯留槽3、濾液排出管7内に水を充満させる。濾液貯留槽3内の水位が所定の値に上昇した時点で給水弁V3を閉じて、濾液貯留槽3への給水を停止し、引き抜き弁V4を開く。
【0042】
このようにすると、サイフォン効果により、濾液排出管7の長さに応じた負圧が濾過板20内部の各濾過室Rに作用する。それにより、濾布24に接する未濃縮汚泥の含有水が、濾布24により濾過されつつ濾過室R内に吸引され、濾過板20上部に配置された配管10及びそれに接続された分配管9を通って濾液貯留槽3に供給される。こうして、未濃縮汚泥中から水分を濾過除去することができる。また、濾布24表面には、水分が除去された汚泥(濃縮汚泥)が堆積されていく。
【0043】
このとき、図7に示す従来の濾過板の固定方法においては、濾布24に付着した汚泥の重みに、濾布下辺側の弾性部材37が耐えきれず、その張力が作用せずに、濾布24が弛むことがあった。これに対して、この濾過板の支持構造においては、濾布24の下辺部S2が、第1おもり部材50によって常時下方に引張られるので、濾布24を常に弛むことなく張設することができるようになっている。その結果、水分吸収による化学繊維の膨潤や汚泥の付着等によって、濾布24自体が伸びて変形が生じた際に、濾布24の弛みを防止して、隣接する濾布24どうしがくっつき合ってしまうことを抑制し、濾布24の濾過面積が減少することを確実に防止することができる。
【0044】
また、この濾過板の支持構造においては、濾布24の両側辺部S3,S3は、濾過枠30の両側辺部33,33の内周に、第1弾性部材37を介して張設されているので、濾布24の弛みを更に良好に防止できるようになっている。
【0045】
上記濾過処理を所定時間実施した後、汚泥給排弁V1を開き、汚泥(未濃縮汚泥)を濾過槽2の系外に引き抜き、引き抜き弁V4を閉じる。その後、空気流入弁V5を開いて、コンプレッサーCから圧縮空気を分配管9及び配管10を通して、濾過板20の各濾過室R内に送風し、それにより濾布24を膨らませて、濾布24表面に付着堆積した濃縮汚泥を剥離させることができる。
【0046】
また、前述したように、第1おもり部材50は、濾過枠30の下辺部32の両側を通って、下方に伸びる第1連結部材40及び弾性部材37を介して取付けられている。そのため、濾布24表面に付着堆積した汚泥を払い落とすべく、濾過室R内に圧縮空気等が吹き込まれ、図2の矢印に示す方向に濾布24がばたついても、濾過枠30の下辺部32の両側に、第1連結部材40の延出部41aが当接して、濾過枠30により第1連結部材40の動きが規制されるので、第1おもり部材50が、濾過板20の平面部に直交する方向に、大きく揺動することを防止できる。
【0047】
そして、濾布24から剥離された濃縮汚泥は、汚泥排出弁V2を開放して、濾過槽2の系外に排出される。
【0048】
図3には、本発明による濾過板の支持構造の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。この支持構造においては、濾過枠30の左右の両側辺部33,33に対する、濾布24の左右の両側辺部S3,S3の連結構造が前記第1実施形態と異なっている。
【0049】
図3に示すように、濾布24の左右の側辺部S3,S3には、ハトメ28を介して、滑車支持部材55が上下に所定間隔を設けて取付けられており、その先端には滑車56が回転可能に装着されている。一方、濾過枠30の左右の側辺部33,33の内周にも、濾布24側の滑車支持部材55に対応する位置に、滑車支持部材55が固設されており、その先端に滑車56が回転可能に装着されている。濾布24側の滑車56と、濾過枠30側の滑車46とは、対向した位置に配置されている。また、濾過枠30の上辺部31の両端には、前記と同様の滑車支持部材55が垂設されており、その下端に滑車56が回転可能に装着されている。
【0050】
そして、図3に示すように、濾過枠30の上辺部31の滑車56に、無端状のワイヤ57の上端部が引き掛けられると共に、同ワイヤ57が濾過枠30側の滑車56及び濾布24側の滑車56に、左右交互に引き掛けられていて、その下端部に前述した第1連結部材40が連結棒43を介して取付けられている。この第1連結部材40の底部が、第2おもり部材70の上端から突設した突片71に形成された引き掛け孔71aに挿通され、第2おもり部材70が第1連結部材40を介してワイヤ57に引き掛けられている。
【0051】
その結果、図3に示すように、横長の第1おもり部材50の左右両側には、第2おもり部材70,70が配置されるようになっている。また、第2おもり部材70は、その下端が第1おもり部材50の下端に至る程度の長さで伸びている。そのため、第1,第2おもり部材50,70が左右に揺れ動いても、それらが互いに衝突して、各おもり部材50,70の過度の揺動が防止されるようになっている。
【0052】
上記のように、この第2実施形態では、濾過枠30の両側辺部33,33と、濾布24の両側辺部S3,S3とが、複数の滑車56に上下方向に沿って交互に引き掛けられたワイヤ57を介して連結されている。このワイヤ57に第2おもり部材70を取付けることにより、ワイヤ57が所定荷重で引張られて所定の張力で保持されて、ワイヤ57の弛みや緩みを防止できるようになっている。そして、濾布24の両側辺部S3,S3が、第2おもり部材70によって引張られるワイヤ57を介して、濾過枠30の両側辺部33,33に向けて引張られるので、濾布24の弛みを更に良好に防止できる。
【0053】
なお、前記滑車56が本発明におけるワイヤ引き掛け部をなしている。また、ワイヤ引き掛け部は滑車56に限定されるものではなく、例えば、U字状のフック等を採用してもよく、ワイヤ57を引き掛けることができればよい。
【0054】
また、この実施形態では、ワイヤ引き掛け部として、滑車支持部材55に回転可能に支持された滑車56を採用したので、ワイヤ57が第2おもり部材70によって引張られるときに、スムーズに引張られることとなり、濾布24の両側辺部S3,S3を濾過枠30の両側辺部33,33に向けて効果的に引張ることができる。
【0055】
図4には、本発明による濾過板の支持構造の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。この支持構造においては、前記第2実施形態に対して、第1,第2おもり部材50,70を、それぞれ濾布24の下辺部S2及びワイヤ57の下端部に引き掛けるための、連結部材の形状が異なっている。
【0056】
すなわち、この第3実施形態の連結部材である、第2連結部材60は、図4に示すように、濾過枠30の下辺部32に上下方向に貫通して形成された開口部34を通って、下方に伸びる棒状をなしている。また、棒状の第2連結部材60の上下両端部には、図示しない挿通孔がそれぞれ設けられている。
【0057】
この第2連結部材60は、連結具65や弾性部材37を用いて、濾布24の下辺部S2及びワイヤ57の下端部に、第1,第2おもり部材50,70をそれぞれ取付けるための部材である。ここで、連結具65は、U字状の本体66と、本体66の両端部に挿通固定される連結棒67とを有し、前記第1連結部材40とほぼ同じシャックル構造をなすものである。
【0058】
そして、濾過枠30の開口部34に挿通された第2連結部材60の上端部に、濾布24の下辺部S2のハトメ28に連結棒67を介して装着された連結具65が連結される。また、開口部34から下方に突き出された第2連結部材60の下端部に、弾性部材37の一端が引き掛けられ、同弾性部材37の他端に第1おもり部材50が引き掛けられている。その結果、第1おもり部材50が、連結具65、第2連結部材60及び弾性部材37を介して、濾布24の下辺部S2に取付けられている。
【0059】
同様に、開口部34の上方に挿出された第2連結部材60の上端部に、ワイヤ57の下端部に連結棒67を介して取付けられた連結具65が連結される。また、開口部34の下方から突出した第2連結部材60の下端部に、連結棒67を介してもう一つの連結具65が連結され、この連結具65に第2おもり部材70が引き掛けられている。その結果、第2おもり部材70が、第2連結部材60及び上下一対の連結具65を介して、ワイヤ57の下端部に取付けられている。
【0060】
この実施形態によれば、第1おもり部材50及び第2おもり部材70の両者が、濾過枠30の下辺部32を貫通して下方に伸びる第2連結部材60を介して、濾布24及びワイヤ57にそれぞれ取付けられているので、濾過室R内に圧縮空気等を吹き込んで濾布24表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際に、濾布24がばたついても、第2連結部材60が濾過枠30の下辺部32を貫通しているため、濾過枠30の内周に当接して、その揺動動作が規制され、各おもり部材50,70が大きく揺動することを防止できる。
【0061】
図5には、本発明による濾過板の支持構造の第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。この支持構造においては、前記第2,第3実施形態に対して、第1,第2おもり部材の形状が異なっている。
【0062】
すなわち、第1おもり部材50a、及び、第2おもり部材70aは、側方から見た断面が逆U字状をなし、所定間隔を設けて平行に配置された両側壁53,53、及び、73,73が、濾過枠30の下辺部32の両側を通って下方に伸びる構造をなしている。
【0063】
そして、濾布24の下辺部S2のハトメ28に、弾性部材37の一端が引き掛けられ、他端が第1おもり部材50aの引き掛け孔51aに引き掛けられて、第1おもり部材50aが、弾性部材37を介して、濾布24の下辺部S2に取付けられている。
【0064】
一方、ワイヤ57の下端部には、連結棒67を介して連結具65が取付けられ、この連結具65の底部が、第2おもり部材70aの引き掛け孔71aに挿通されて、連結具65を介して第2おもり部材70aがワイヤ57の下端部に取付けられている。
【0065】
上記のように、この実施形態の各おもり部材50a,70aは、側方から見た断面が逆U字状をなし、その両側壁53、73が濾過枠30の下辺部32の両側を通って下方に伸びている。そのため、濾過室R内に圧縮空気等を吹き込んで濾布表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際、濾布24がばたついても、各おもり部材50a,70aが濾過枠30の下辺部32の両側を跨ぐように配置されているので、濾過枠30によって動きを規制され、各おもり部材50a,70aが大きく揺動することを防止できる。また、各おもり部材50a,70aは、側方から見た断面が逆U字状をなしているので、汚泥剥離時に各おもり部材50a,70aの上部に濃縮汚泥が堆積しにくくすることができる。
【0066】
図6には、本発明による濾過板の支持構造の第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。この支持構造は、図3に示す第2実施形態に対して、第1おもり部材の取付け構造が異なる以外は、同一の構造をなしている。
【0067】
すなわち、この実施形態での第1おもり部材50bは、横方向に長く伸びる円柱状をなしており、それが濾布24の筒状に形成された下辺部S2内に挿入されて、下辺部S2に内方されて取付けられている。そして、この実施形態によれば、第1おもり部材50bを、濾布24の下辺部S2に内包させたので、第1おもり部材50bを取付けるための連結部材等のスペースを省略して、濾布24による濾過面積を大きくとることができる。
【0068】
なお、図2に示す第1実施形態以外は、濾布24の両側辺部S3,S3は、ワイヤ57により張設される構造となっているが、前記第3〜5の各実施形態の特徴部分を、弾性部材37により濾布24の両側辺部S3,S3が張設される実施形態に適用してもよい。すなわち、(a)図3に示す第3実施形態の、濾過枠30を貫通する連結部材を介して第1おもり部材50が取付けられること、(b)図4に示す第4実施形態の、濾過枠30を跨いで下方に伸びる第1おもり部材50aを用いること、(c)図5に示す第5実施形態の、濾布24の下辺部S2に第1おもり部材50bが内方されていることを、弾性部材37により濾布24の両側辺部S3,S3が張設される実施形態に適用して、別の実施形態とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)は本発明の濾過板の支持構造を用いた、汚泥濃縮処理装置の概略構成図で、(b)は同処理装置の内部に、濾過板を取付ける際の取付け状態を示す説明図である。
【図2】同濾過板の支持構造の第1実施形態を示し、(a)は概略構成図、(b)は(a)のA−A矢示線における断面図である。
【図3】本発明の濾過板の支持構造の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図4】本発明の濾過板の支持構造の第3実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明の濾過板の支持構造の第4実施形態を示す概略構成図である。
【図6】本発明の濾過板の支持構造の第5実施形態を示す概略構成図である。
【図7】従来の濾過板の支持構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 汚泥濃縮処理装置(処理装置)
2 濾過槽
2a ガイド板
3 濾液貯留槽
4 汚泥給配管
5 濃縮汚泥引き抜き管
6 給水管
7 濾液排出管
8 空気流入管
9 分配管
10 配管
11 固定手段
12 固定枠
20 濾過板
22 支持体
24 濾布
26 縫い目
28 ハトメ
30 濾過枠
31 上辺部
31a 延出部材
31b 係合板
32 下辺部
33 側辺部
34 開口部
37 弾性部材
39 接続部材
40 第1連結部材
41 本体
41a 延出部
41b 孔
43 連結棒
50,50a,50b 第1おもり部材
51 突片
51a 引き掛け孔
53 側壁
55 滑車支持部材
56 滑車
57 ワイヤ
60 第2連結部材
65 連結具
66 本体
67 連結棒
70,70a 第2おもり部材
71 突片
71a 引き掛け孔
73 側壁
C コンプレッサー
P 汚泥給排ポンプ
R 過室
S1 上辺部
S2 下辺部
S3 側辺部
V1 汚泥給排弁
V2 汚泥排出弁
V3 給水弁
V4 引き抜き弁
V5 空気流入弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾過板の外周には、濾過板を囲む濾過枠が配置され、
前記濾布の上辺部は、前記濾過枠の上辺部に吊り下げ支持され、前記濾布の下辺部には第1おもり部材が取付けられ、その重さにより濾布の下辺部が張設されており、
前記濾布の両側辺部は、前記濾過枠の両側辺部内周に張設されていることを特徴とする濾過板の支持構造。
【請求項2】
前記濾布の両側辺部は、前記濾過枠の両側辺部内周に弾性部材を介して張設されている請求項1記載の濾過板の支持構造。
【請求項3】
前記濾過枠の両側辺部内周及び前記濾布の両側辺部に、ワイヤ引き掛け部が上下方向に所定間隔でそれぞれ設けられ、前記濾過枠の上辺部に支持されたワイヤが、両ワイヤ引き掛け部に交互に引き掛けられて、その下端部に第2おもり部材を取付けられており、
前記濾布の両側辺部は、前記第2おもり部材によって引張られるワイヤを介して、前記濾過枠の両側辺部に張設されている請求項1記載の濾過板の支持構造。
【請求項4】
前記ワイヤ引き掛け部は、前記濾過枠の両側辺部内周及び前記濾布の両側辺部に取付けた滑車で構成されている請求項3記載の濾過板の支持構造。
【請求項5】
前記第1おもり部材及び/又は前記第2おもり部材は、前記濾過枠の下辺部の両側を通って下方に伸びる連結部材を介して取付けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載の濾過板の支持構造。
【請求項6】
前記第1おもり部材及び/又は前記第2おもり部材は、前記濾過枠の下辺部を貫通して下方に伸びる連結部材を介して取付けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載の濾過板の支持構造。
【請求項7】
前記第1おもり部材及び/又は前記第2おもり部材は、側方から見た断面が逆U字状をなし、その両側壁が前記濾過枠の下辺部の両側を通って下方に伸びている請求項1〜4のいずれか1つに記載の濾過板の支持構造。
【請求項8】
前記第1おもり部材は、弾性部材を介して前記連結部材又は前記濾布に連結されている請求項1〜7のいずれか1つに記載の濾過板の支持構造。
【請求項9】
前記第1おもり部材は、前記濾布の下辺部に内包されて取付けられている請求項1記載の濾過板の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−214086(P2009−214086A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63526(P2008−63526)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】