説明

濾過膜及びその洗浄方法

【課題】濾過孔を広げ若しくは変形させることにより、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる濾過膜を提供すること。
【解決手段】金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、金属繊維により綾畳織の膜を形成するとともに、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を綾畳織の横糸1に用いることにより、Ni−Ti系形状記憶合金を膜に略均等に用いるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過膜及びその洗浄方法に関し、特に、濾過孔を広げ若しくは変形させることにより、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる濾過膜及びその洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
濾過膜は、主として固体と液体の分離に用いられ、例えば、廃水処理の汚泥微生物と被処理水との分離に用いられている。
この濾過膜は、従来より気泡によるケーキ剥ぎ取りと一定の時間間隔で行われる逆洗により洗浄されている。
また、補助的に超音波振動を照射する方法や、ディスク状に製作したエレメント自体を回転させながら濾過する方法(特許文献1)や、回転ブラシによりケーキを掻き落とす方法(特許文献2)等、様々な方法が考案されている。
【0003】
ところで、上述した精密濾過フィルタの洗浄方法において、現在主流となっているのは曝気による洗浄法と逆圧をかける逆洗法であり、薬品洗浄と併用されることもある。
しかしながら、曝気法による洗浄は膜表面の洗浄効果しか得られず、最も問題となる膜内部への固形物粒子の蓄積は、逆洗によってのみ取り除かれ得るが、実際の濾過膜においては一定形状の濾過孔が一様に開いている訳ではないので、例えば一度洗浄された抵抗の少ない経路ができてしまうと、枝葉に当る他の濾液経路にまでは逆洗水が行き渡り難くなり、結果として完全に元の状態にまで回復させることは難しかった。
【特許文献1】特開2001−079360号公報
【特許文献2】特開平11−267472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の濾過膜及びその洗浄方法が有する問題点に鑑み、濾過孔を広げ若しくは変形させることにより、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる濾過膜及びその洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本第1発明の濾過膜は、金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を膜に略均等に用いたことを特徴とする。
【0006】
また、同じ目的を達成するため、本第2発明の濾過膜は、金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を略均等に用いた金網を膜と焼結して一体化したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の濾過膜の洗浄方法は、上記本発明の濾過膜に温水を当てて逆洗を行うことを特徴とする。
【0008】
この場合において、温水と冷水を交互に当てて逆洗を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本第1発明の濾過膜によれば、金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を膜に略均等に用いることから、逆洗時に温水を用いることによって、濾過孔を広げ、若しくは形状を変化させて、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、冷却水によって元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる。
【0010】
また、本第2発明の濾過膜によれば、金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を略均等に用いた金網を膜と焼結して一体化することから、逆洗時に温水を用いることによって、濾過孔を広げ、若しくは形状を変化させて、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、冷却水によって元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる。
【0011】
一方、本発明の濾過膜の洗浄方法によれば、上記本発明の濾過膜に温水を当てて逆洗を行うことから、濾過孔を広げ、若しくは形状を変化させて、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、冷却水によって元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる。
【0012】
また、温水と冷水を交互に当てて逆洗を行うことにより、形状記憶合金を変形させて揉み洗いのような効果を得ることができ、これにより、膜内部に入り込んだ固形物粒子を効率的に取り除くことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の濾過膜及びその洗浄方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に、本発明の濾過膜及びその洗浄方法の第1実施例を示す。
この濾過膜は、金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を膜に略均等に用いている。
具体的には、金属繊維により綾畳織の膜を形成するとともに、Ni−Ti系形状記憶合金を前記綾畳織の横糸1に用いている。
【0015】
この場合、縦糸2のみ若しくは横糸1のみ、又は縦糸2及び横糸1のすべてをNi−Ti系形状記憶合金糸に置き換える場合もあり得るが、一般には、これら縦糸2又は横糸1の数本に1本の間隔でNi−Ti系形状記憶合金糸を採用することができる。
すなわち、Ni−Ti系形状記憶合金は、膜を構成する金属繊維の一部若しくは全部に使用することができる。
【0016】
この濾過膜は、濾過中は通常の濾過膜として機能するが、逆洗時に温水を通すことで、組み込まれた形状記憶合金の横糸1が目を広げる方向に変形し、逆洗を容易にする。
さらに、冷水を通すことによって、形状記憶合金の横糸1が目を狭める方向に変形することから、交互に通水することにより、濾過膜全体の揉み洗い効果を期待することができる。
【0017】
以上は、織布状の濾過膜を例として示しているが、不織布状の濾過膜を構成する繊維の一部又は全部を形状記憶合金に置き換えて濾過膜を形成することも可能である。
【0018】
また、織布又は不織布状の膜において、膜自体は通常のステンレス等の金属繊維とし、これを補強する金網にNi−Ti系形状記憶合金の糸を適当量略均等に使用し、不織布膜と金網とを焼結して一体化した金属膜を作ることも可能である。
【0019】
また、このような濾過膜を用いて作られるフィルタエレメントの形状は、特に限定されるものではないが、これらの膜を格子状の枠の両面に張り付けたような平膜状のエレメントとしたり、筒状に巻いて溶接し、両端又は一端から濾液を吸引するようなチューブ状のエレメントとするのが簡便である。
なお、これらのフィルタエレメントの洗浄に際しては上述したようなエレメントの内部から逆洗に加えて、エレメント外部からも空気による洗浄を行うことが好ましい。
【0020】
かくして、本実施例の濾過膜は、金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を膜に略均等に用いることから、逆洗時に温水を用いることによって、濾過孔を広げ、若しくは形状を変化させて、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、冷却水によって元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる。
【0021】
また、金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を略均等に用いた金網を膜と焼結して一体化することにより、逆洗時に温水を用いることによって、濾過孔を広げ、若しくは形状を変化させて、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、冷却水によって元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる。
【0022】
一方、本実施例の濾過膜の洗浄方法は、上記本実施例の濾過膜に温水を当てて逆洗を行うことから、濾過孔を広げ、若しくは形状を変化させて、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、冷却水によって元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すことができる。
また、温水と冷水を交互に当てて逆洗を行うことにより、形状記憶合金を変形させて揉み洗いのような効果を得ることができ、これにより、膜内部に入り込んだ固形物粒子を効率的に取り除くことが可能となる。
【0023】
以上、本発明の濾過膜及びその洗浄方法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の濾過膜及びその洗浄方法は、濾過孔を広げ若しくは変形させることにより、濾過膜内部に入り込んだ固形物粒子を浮かせるとともに、元の形状に戻る際に濾過孔の形状変化と逆洗圧によって固形物粒子を膜内部から追い出すという特性を有していることから、例えば、上下水道の濾過等の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の濾過膜の一実施例を示し、(a)は通常温度での膜断面形状を示す拡大図、(b)は逆洗時における温水雰囲気下での膜断面形状を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1 横糸
2 縦糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を膜に略均等に用いたことを特徴とする金属膜。
【請求項2】
金属繊維により織布又は不織布状の膜を形成した濾過膜において、温度差により変形するNi−Ti系形状記憶合金を略均等に用いた金網を膜と焼結して一体化したことを特徴とする濾過膜。
【請求項3】
請求項1又は2記載の濾過膜に温水を当てて逆洗を行うことを特徴とする濾過膜の洗浄方法。
【請求項4】
温水と冷水を交互に当てて逆洗を行うことを特徴とする請求項3記載の濾過膜の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−297297(P2006−297297A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123517(P2005−123517)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】