説明

濾過装置

【課題】本発明は、フィルタエレメントを効率よく交換できる濾過装置を提供する。
【解決手段】濾過装置10は、ヘッド20と、フィルタエレメント40と、ハウジング30と、を備える。ヘッド20は、液圧回路5に接続されて濾過すべき作動油L1が流入する流入路24を備える。フィルタエレメント40は、濾過すべき作動油L1を濾過する。ハウジング30は、フィルタエレメント40が通る開口30bを有して内側にフィルタエレメント40を収容する。フィルタエレメント40は、エレメント本体48と、エレメント押さえ部47と、を備える。エレメント押さえ部47は、エレメント本体48に設けられる。エレメント押さえ部47は、ハウジング30の内面30aに向かう方向および離れる方向に変位可能な接触部53を備える。ハウジング30に、接触部53を収容する溝35を設ける。接触部53は、溝35から出るまで変位可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧アクチュエータなどを備えた液圧機器の液圧回路を循環する液を濾過するための濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧シリンダなどのアクチュエータを有する機器は、液圧回路を循環する作動油などの液を濾過するために濾過装置を備えている。濾過装置は、内部に濾過すべき液を濾過するフィルタエレメントを備えている。
【0003】
濾過装置では、所定の期間が過ぎると、フィルタエレメントが目詰まりを起こすなどして、その濾過機能が低下する。それゆえ、フィルタエレメントは、交換される。
【0004】
この種の濾過装置では、液圧回路に組み込まれるとともに濾過すべき液を流入する流入路と濾過された液を液圧回路に戻す流出路とを備えるヘッドと、フィルタエレメントと、フィルタエレメントを収容するとともにヘッドに組みつけられるハウジングと、を備えている。ヘッドからハウジングを外すことによってフィルタエレメントを交換することができる。
【0005】
しかし、機器において濾過装置が組みつけられる箇所は、必ずしも濾過装置の組み付け作業に適した箇所ではない。
【0006】
つまり、濾過装置が組みつけられる箇所によっては、ハウジング内にフィルタエレメントを収容した後にこれらのユニットをヘッドに組み付けようとしても、このユニットを傾けなくてはならいことが考えられる。このような場合では、ハウジング内からフィルタエレメントが出てしまうことが考えられる。
【0007】
それゆえ、濾過装置を液圧回路に組み付ける際に、ヘッドにあらかじめフィルタエレメントを組み付けて固定し、その後にハウジングをヘッドに組み付けることが行われている。
【0008】
しかし、一般に、ハウジングは、一端が塞がれる筒状であって、他端の開口からフィルタエレメントを収容するとともに、該開口がヘッドによって塞がれる。
【0009】
それゆえ、上記のようにフィルタエレメントがヘッドに組みつけられた後にハウジングをヘッドに組み付けるようにすると、ハウジングは、フィルタエレメントを収容しながらヘッドに組みつけられるようになる。
【0010】
つまり、ハウジングの組み付け時には、その作業スペースとして、フィルエレメントの高さとハウジングの高さと合わせた高さを収容できるだけのスペースが必要になる。上記のようなスペースを確保することは、難しい。
【0011】
それゆえ、ハウジングからフィルタエレメントが出ないようにするエレメント押さえ部材をフィルタエレメントとは別途に備える濾過装置が提案されている。この種の濾過装置では、フィルタエレメントをハウジング内に収容した後、エレメント押さえ部材を設置することによって、フィルタエレメントをハウジング内に固定する。これによって、フィルタエレメントは、ハウジング内から出ることが阻止される。
【0012】
この種の濾過装置では、ハウジングをヘッドに組み付ける際の作業スペースを小さく押さえることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記のようにエレメント押さえ部材を備える構造であると、ハウジング内にフィルタエレメントを固定する際には、ハウジング内にフィルタエレメントを収容し、その後にエレメント押さえ部材を設置するといった工程となる。
【0014】
つまり、フィルタエレメントをハウジング内に収容する作業と別途にエレメント押さえ部材をハウジング内に収容しなければならくなるので、フィルタエレメントをハウジング内に固定する作業の効率が悪くなる。これは、ハウジング内からフィルタエレメントを取り出す作業においても同様である。このため、フィルタエレメントの交換作業の効率が悪くなる。
【0015】
したがって、本発明は、フィルタエレメントを効率よく交換できる濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の濾過装置は、ヘッドと、フィルタエレメントと、ハウジングと、を備える。前記ヘッドは、濾過すべき液が流動する流路に接続されて前記濾過すべき液が流入する流入路を備える。前記フィルタエレメントは、前記濾過すべき液を濾過する。前記ハウジングは、前記フィルタエレメントが通る開口を有して内側に前記フィルタエレメントを収容し、かつ前記流入路と連通するとともに前記開口を塞ぐように前記ヘッドに取り付く。前記フィルタエレメントは、エレメント本体と、エレメント押さえ体と、を備える。前記エレメント本体は、濾材を備える。前記エレメント押さえ体は、前記エレメント本体に設けられる。前記エレメント押さえ体は、前記ハウジングの内面に向かう方向および離れる方向に変位可能な接触部を備える。前記ハウジングに、前記接触部と接触することによって前記フィルタエレメントが前記ハウジング内から出ることを阻止する阻止部を設ける。前記接触部は、前記阻止部との接触が解除される位置まで変位可能である。
【0017】
このように構成される濾過装置では、フィルタエレメントに一体にエレメント押さえ体が設けられることによって、フィルタエレメントをハウジング内に固定するための押さえ部材を別途に必要としない。
【0018】
それゆえ、フィルタエレメントをハウジング内に収容する作業を行うことによって、同時にエレメント押さえ体もハウジング内に収容さえることになる。つまり、フィルタエレメントとエレメント押さえ体とを別々にハウジング内に収容することがないので、フィルタエレメントをハウジング内に固定する作業の効率が向上する。同様に、ハウジング内からフィルタエレメントを取り出す場合であっても、エレメント押さえ体を別途に取り出すということがなくなる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記エレメント押さえ体は、ばね部を有する。前記接触部は、前記ばね部の弾性によって前記ハウジングの内面に向かって付勢されている。
【0020】
この構成によれば、接触部は、ばね部の弾性によってその位置を変位できるようになっている。それゆえ、接触部の位置を変位する際に、接触部を押圧するだけでよい。つまり、接触部を変位するために、複雑な操作を必要としない。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記接触部は、前記ばね部を挟んで向かい合うように複数設けられる。前記接触部に、把持部を形成する。
【0022】
この構成によれば、フィルタエレメントを把持するために把持部に指を掛けるなどすると、自然に各接触部は、ばねのたわむ方向に押圧される。その結果、ばね部が自然にたわむ。つまり、フィルタエレメントを支持する操作と、ばね部をたわます操作とがいっしょに行われる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記阻止部は、前記接触部の少なくとも一部を収容するとともに前記フィルタエレメントが前記ハウジングから出る方向に前記接触部の少なくとも一部と接触可能な面部を有する溝である。
【0024】
この構成によれば、接触部と溝の面部とが互いに接触することによって、フィルタエレメントのハウジングから出る方向への移動が阻止される。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記阻止部は、前記ハウジングの内面である。前記接触部と前記阻止部との間に生じる摩擦によって、前記フィルタエレメントが前記ハウジングから出ることを抑制する。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記エレメント押さえ体は、前記エレメント本体に対して着脱可能である。
【0027】
この構成によれば、エレメント本体からエレメント押さえ体を取り外すことによって、エレメント押さえ体は、再利用される。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記フィルタエレメントは、樹脂製である。
【0029】
この構成によれば、交換されたフィルタエレメントの後処理は、比較的容易になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、フィルタエレメントを効率よく交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の第1の実施形態に係る濾過装置10を、図1から図8を用いて説明する。
【0032】
図1は、本実施形態の濾過装置10の断面図である。図1に示すように、本実施形態の濾過装置10は、例えば油圧アクチュエータを備える重機などの液圧回路5に組み込まれている。液圧回路5中には、作動油Lが流動している。
【0033】
作動油Lは、図中右側から濾過装置10に流入する。作動油Lにおいて、濾過装置10に流入する直前のものは、濾過すべき作動油L1である。濾過すべき作動油L1は、本発明で言う、濾過すべき液の一例である。濾過装置10によって濾過された作動油L2は、液圧回路5に戻される。
【0034】
図2は、濾過装置10が分解された状態を示す断面図である。図2に示すように、濾過装置10は、ヘッド20と、ハウジング30と、フィルタエレメント40と、を備えている。
【0035】
ヘッド20は、第1の部材21と、第2の部材22と、リリーフ弁23と、などを備えている。
【0036】
第1の部材21は、流入路24と、流出路25と、を有している。図1に示すように、流入路24は、液圧回路5の流出部5aに接続されている。流入路24は、略L字状に折れ曲がっている。なお、流入路24は、ヘッド20に組み付く後述するフィルタエレメント40に向かって折れ曲がっている。
【0037】
図2に示すように、第1の部材21は、略中央に突部26が形成されている。突部26は、ヘッド20に組み付く後述するフィルタエレメント40に向かって突出している。流出路25の一部は、突部26内に形成されている。流出路25の一端は、突部26の先端に開口している。図1に示すように、流出路25の他端は、液圧回路5の流入部5bに接続されている。
【0038】
図2に示すように、流入路24と流出路25とは、互いに壁部27を隔てて隣り合っている。リリーフ弁23は、流入路24と流出路25とを隔てる壁部27に設けられている。リリーフ弁23が開くと流入路24と流出路25とは、連通する。流入路24に流入した作動油L1の圧力が所定値以上になるとリリーフ弁23は、開く。
【0039】
第2の部材22は、例えば略円筒状である。第2の部材22は、突部26を囲むように第1の部材21に組みつけられている。第1の部材21と第2の部材22とは、例えば互いに螺合している。突部26と第2の部材22の周壁22aとの間に規定される空間Aは、流入路24と連通している。
【0040】
ハウジング30は、第1の部材31と、第2の部材32と、を備えている。第1の部材31は、一端が閉塞された円筒状である。
【0041】
第2の部材32は、円筒状の部材である。第2の部材32の内周は、第1の部材31の内周よりも若干大きい。第2の部材32の一端は、第2の部材32の内部空間が第1の部材31の内部空間と連通するように、第1の部材31の開口端に例えば溶接されて固定されている。ヘッド20の第2の部材22は、ハウジング30の第2の部材32に略嵌合する大きさである。
【0042】
ハウジング30の第2の部材32の内周部には、雌ねじ部32aが形成されている。ヘッド20の第2の部材22の外周部には、雄ねじ部22bが形成されている。図1に示すように、ヘッド20の雄ねじ部22bがハウジング30の雌ねじ部32aと螺合することによって、ハウジング30は、ヘッド20に着脱可能に固定される。ヘッド20の第2の部材22とハウジング30の第2の部材32との間には、Oリング33が設けられている。Oリング33は、ヘッド20の第2の部材22とハウジング30の第2の部材32との間を液密にシールしている。
【0043】
上記のようにハウジング30とヘッド20とが互いに組みつけられることによって、ヘッド20の第1の部材21の突部26は、ハウジング30内に突出する。突部26は、ハウジング30と略同心上に配置されている。
【0044】
フィルタエレメント40は、ハウジング30の開口30b(第2の部材32の開口)からハウジング30内に収容される。図2に示すように、フィルタエレメント40は、濾材41と、内筒42と、第1の支持部材43と、第2の支持部材44と、を備えている。
【0045】
濾材41は、樹脂製であって、例えばプリーツ状に丸められている。それゆえ、濾材41は、略円筒状である。内筒42は、円筒状である。内筒42の高さは、濾材41の高さと同じである。内筒42の周壁には、該周壁を径方向に貫通する貫通孔45が複数形成されている。
【0046】
内筒42は、濾材41の内側に収容されている。内筒42は、濾材41と略同心上に配置されている。濾材41が内側に向かって付勢された場合なでは、内筒42は濾材41と接触することによって濾材41を支持し、濾材41が内側に向かって変形することを抑制する。
【0047】
第1の支持部材43は、濾材41の下端と、内筒42の下端と、を支持している。第1の支持部材43は、樹脂製である。
【0048】
第2の支持部材44は、支持部46と、エレメント押さえ部47と、を有している。エレメント押さえ部47は、本発明で言う、エレメント押さえ体の一例である。
【0049】
支持部46は、濾材41の上端と、内筒42の上端と、を支持している。本実施形態では、濾材41と、内筒42と、第1の支持部材43と、支持部46とは、本発明で言う、エレメント本体48を構成している。本発明で言うエレメント本体とは、フィルタエレメントにおいて、エレメント押さえ体を除く部分の概念である。
【0050】
エレメント押さえ部47は、本体49と、ばね部52と、接触部53と、を有している。エレメント押さえ部47は、支持部46と一体に形成されている。例えば、エレメント押さえ部47は、支持部46と一体に成形されている。第2の支持部材44は、樹脂製である。
【0051】
本体49は、円筒状である。本体49は、支持部46と一体になっている。本体49は、支持部46と同心に配置されている。本体49は、支持部46の上方に位置している。本体49と支持部46とには、ヘッド20の突部26が嵌合する貫通孔50が形成されている。貫通孔50の縁と突部26の外周部との間には、Oリング51が設けられている。Oリング51は、貫通孔50の内周部と突部26の外周部との間を液密にシールする。
【0052】
貫通孔50は、内筒42の内部と連通している。それゆえ、内筒42の内部と流出路25とは、互いに連通する。
【0053】
図3は、第2の支持部材44を上方から見た平面図である。図3に示すように、ばね部52は、本体49の外周部49aに一対形成されている。具体的には、各ばね部52は、本体49を挟んで互いに対向する位置に配置されている。
【0054】
ばね部52の一端52aは、本体49に接続されている。各ばね部52は、本体49の外周部49aと所定距離離間した状態を保ったまま本体49の周囲に沿って延びている。それゆえ、各ばね部52は、本体49の外周部49aとの間に規定された距離を埋めるように、フィルタエレメント40の径方向にたわむことができる。
【0055】
接触部53は、各ばね部52の他端52bに一体に形成されている。各接触部53は、本体49と各ばね部52とを挟んで対向するように配置されている。図4は、ばね部52がたわむ前の状態とたわんだ後の状態とを示す、第2の支持部材44を上方から見た平面図である。
【0056】
図4に示すように、ばね部52がたわむことによって、各接触部53は、2点鎖線で示された初期位置P1から、実線で示すように径方向内側に向かってその位置を変位することができる。
【0057】
なお、初期位置P1とは、ばね部52がたわんでいない状態における接触部53の位置である。接触部53には、該接触部53を貫通する貫通孔54が形成されている。貫通孔54は、本発明で言う把持部の一例である。
【0058】
フィルタエレメント40がハウジング30内に収容された状態では、各接触部53は、ばね部52をたわませたり、またはたわんだ状態を解除することによって、ハウジング30の内面30a(第1の部材31の内面31aと第2の部材32の内面32bによって構成される)に向う方向および離れる方向に位置を変位可能となる。
【0059】
図2に示すように、ハウジング30の第2の部材32には、雌ねじ部32aよりも下方に、溝35が形成されている。溝35は、接触部53が変位する方向、本実施形態では、フィルタエレメント40の径方向外側に向かって凹む形状である。
【0060】
図5は、ハウジング30内にフィルタエレメント40が収容された状態を示す断面図である。図5に示すように、接触部53の大きさまたはフィルタエレメント40の径方向に沿うばね部52の長さは、ハウジング30内にフィルタエレメント40が収容されたときに接触部53の一部が溝35に略嵌合するように調整されている。
【0061】
さらに、本実施形態では、接触部53の先端53aが溝35の側端面35a(径方向外側の側端面)に当接するように、接触部53の大きさまたはフィルタエレメント40の径方向に沿うばね部52の長さは、調整されている。
【0062】
つまり、接触部53の一部が溝35内に収容された状態では、ばね部52は、若干たわんだ状態となる。このように、接触部53の一部が溝35内に収容された状態において接触部53の先端53aが溝35の側端面35aに接触することによって、フィルタエレメント40がハウジング30内に収容された状態では、フィルタエレメント40が径方向にずれることが抑制される。
【0063】
図6は、ハウジング30内にフィルタエレメント40が収容された状態を上方から見た平面図である。各接触部53の一部が溝35に略嵌合することによって、フィルタエレメント40がハウジング30内から出る方向に移動すると、図中点線で示すように接触部53の一部53bが溝35の上端面35bと接触する。それゆえ、ハウジング30内からフィルタエレメント40が出ることが抑制される。
【0064】
図7は、接触部53が溝35内から出た状態を示す断面図である。図7に示すように、ハウジング30内にフィルタエレメント40を収容する際、またはハウジング30からフィルタエレメント40を取り出す際には、各ばね部52をフィルタエレメント40の径方向内側に向かってたわますことによって、接触部53を溝35の上端面35bと干渉しない位置まで接触部53を変位する。それゆえ、ばね部52は、接触部53が溝35の上端面35bと干渉しなくなる位置まで接触部53を変位できるように調整されている。具体的には、ばね部52と本体49との間に規定される空間が調整されるなどする。
【0065】
図1に示すように、このように構成される濾過装置10では、液圧回路5の流出部5aから濾過すべき作動油L1がヘッド20の流入路24内に流入する。作動油L1は、流入路24と突部26と第2の部材22との間に規定される空間Aとを通って、濾材41とハウジング30の内面30aとの間に達する。
【0066】
濾材41の外側に達した作動油L1は、矢印に示すように、濾材41内を通る過程で濾過される。濾材41通り濾過された作動油L2は、内筒42の貫通孔45を通過して内筒42の内側に出る。
【0067】
ついで、濾過された作動油L2は、流出路25を通って液圧回路5の流入部5bに流入し、液圧回路5に戻る。
【0068】
つぎに、フィルタエレメント40の交換作業の一例を説明する。
【0069】
まず、ヘッド20からハウジング30を取り外す。ついで、図4に示すように、接触部53に形成された貫通孔54に指を通すなどしてフィルタエレメント40を把持する。このとき、接触部53を把持する(貫通孔54に指を通す)ことによって、自然に各ばね部52が径方向内側にたわむ。各ばね部52がたわむことによって、各接触部53が径方向内側に変位する。
【0070】
図7に示すように、接触部53が溝35の上端面35bと干渉しない位置まで接触部53が変位すると、図8に示すように、フィルタエレメント40は、ハウジング30内から取り出される。
【0071】
フィルタエレメント40は、樹脂製である。それゆえ、使用済みのフィルタエレメント40の後処理は、比較的容易になる。
【0072】
ついで、新しいフィルタエレメント40をハウジング30内に収容する。このときも同様に、接触部53の貫通孔54内に指を通すことによってフィルタエレメント40を把持すると、自然に各ばね部52がたわむ。それゆえ、フィルタエレメントは、そのままハウジング30内に収容される。
【0073】
ハウジング30内にフィルタエレメント40が収容されると、貫通孔54から指を離すなどして接触部53を溝35内に嵌合する。
【0074】
ついで、ハウジング30とフィルタエレメント40とによるユニットを、ヘッド20に取り付ける。以上の作業によって、フィルタエレメント40が交換される。
【0075】
このように構成される濾過装置10では、フィルタエレメント40に一体にエレメント押さえ部47が形成されることによって、フィルタエレメント40をハウジング30内に固定するための押さえ部材を別途に必要としない。
【0076】
それゆえ、フィルタエレメント40をハウジング30内に収容する作業を行うことによって、同時にエレメント押さえ部47もハウジング30内に収容さえることになる。つまり、フィルタエレメント40とエレメント押さえ部47とを別々にハウジング30内に収容することがないので、フィルタエレメント40をハウジング30内に固定する作業の効率が向上する。
【0077】
同様に、ハウジング30内からフィルタエレメント40を取り出す場合であっても、エレメント押さえ部47を別途に取り出すということがなくなる。したがって、フィルタエレメント40を交換する作業の効率が向上する。
【0078】
また、接触部53は、ばね部52の弾性によってその位置を変位できるようになっている。それゆえ、接触部53の位置を変位する際に、接触部53を径方向内側に押圧するだけでよい。つまり、接触部53を変位するために、複雑な操作を必要としないので、フィルタエレメント40の交換作業の効率が向上する。
【0079】
また、接触部53は、本体49を挟んで、つまりばね部52を挟んで互いに向かい合うように一対設けられている。そして、接触部53には、把持部としての貫通孔54が形成されている。
【0080】
それゆえ、フィルタエレメント40を把持するために貫通孔54内にそれぞれ指を通すなどすると、自然に各接触部53は、径方向内側に押圧される。その結果、ばね部52が自然にたわむ。つまり、フィルタエレメント40を支持する操作と、ばね部52をたわます操作とがいっしょに行えるので、フィルタエレメント40の交換作業の効率が向上する。
【0081】
また、阻止部の一例として溝35が採用されることによって、接触部53と溝35の上端面35bとが互いに接触するので、フィルタエレメント40がハウジング30から出ることが効果的に抑制される。
【0082】
また、フィルタエレメント40は、樹脂製であるので、交換後の処理が比較的容易になる。
【0083】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る濾過装置10を、図9と図10とを用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
本実施形態では、フィルタエレメント40の構造が第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。この点について、詳細に説明する。
【0085】
図9は、本実施形態のフィルタエレメント40の断面図である。図10は、フィルタエレメント40が分解された状態を示す断面図である。
【0086】
図9と図10とに示すように、フィルタエレメント40は、濾材41と、内筒42と、第1の支持部材43と、第2の支持部材44と、エレメント押さえ部材60と、を備えている。
【0087】
第2の支持部材44は、濾材41と内筒42との上端を覆っている。第2の支持部材44の中央には、貫通孔50が形成されている。本実施形態の第2の支持部材44は、エレメント押さえ部を有していない。
【0088】
エレメント押さえ部材60は、本体49と、ばね部52と、接触部53と、を有している。エレメント押さえ部材60は、本発明で言う、エレメント押さえ体の一例である。本実施形態では、濾材41と、内筒42と、第1の支持部材43と、第2の支持部材44とが、エレメント本体48を構成する。
【0089】
第2の支持部材44の貫通孔50の内周部には、雌ねじ部50aが形成されている。エレメント押さえ部材60の本体49は、貫通孔50内に略嵌合する大きさである。本体49の外周部49aには、雄ねじ部50aに螺合する雄ねじ部49bが形成されている。雄ねじ部49bと雌ねじ部50aとが互いに螺合することによって、
本実施形態では、エレメント押さえ部材60は、エレメント本体48に対して着脱可能である。それゆえ、第1の実施形態の効果に加えて、エレメント本体48からエレメント押さえ部材60を取り外すことによって、エレメント押さえ部材60を再利用することができる。
【0090】
つぎに、本発明の第3の実施形態に係る濾過装置10を、図11を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
本実施形態では、阻止部の構造と、エレメント押さえ部47の構造とが、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。この点について詳細に説明する。
【0092】
図11は、ハウジング30内にフィルタエレメント40が収容された状態を示す断面図である。図11に示すように、本実施形態の阻止部は、溝形状ではない。阻止部は、接触部53の先端53aと接触する面部70である。面部70は、ハウジング30の内面30aの一部である。面部70は、接触部53の先端53aとの間に生じる摩擦を大きくするために、例えば表面が荒く形成されてもよい。
【0093】
本実施形態では、接触部53の先端53aと面部70との間に生じる摩擦によって、フィルタエレメント40がハウジング30内から出ることを抑制するものである。それゆえ、ばね部52は、接触部53を充分に面部70に向かって付勢できるように調整されている。
【0094】
本実施形態では、面部70を阻止部とするので、阻止部を形成するために大きな加工を必要としない。それゆえ、第1の実施形態の効果に加えて、ハウジング30を比較的容易に形成することができるようになる。
【0095】
また、接触部53の先端53aが面部70に径方向に接触するので、フィルタエレメント40が径方向にずれることが抑制される。それゆえ、ハウジング30とフィルタエレメント40とからなるユニットをヘッド20に組み付ける際に、突部26を貫通孔45に導きやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る濾過装置の断面図。
【図2】図1に示された濾過装置が分解された状態を示す断面図。
【図3】図1に示された第2の支持部材を上方から見た平面図。
【図4】図1に示されたばね部がたわむ前の状態とたわんだ後の状態とを示す、第2の支持部材を上方から見た平面図。
【図5】図1に示されたハウジング内にフィルタエレメントが収容された状態を示す断面図。
【図6】図1に示されたハウジング内にフィルタエレメントが収容された状態を上方から見た平面図。
【図7】図1に示された接触部が溝内から出た状態を示す断面図。
【図8】図1に示されたフィルタエレメントがハウジング内から取り出される様子、またはハウジング内にフィルタエレメントを収容する様子を示す断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る濾過装置のフィルタエレメントの断面図。
【図10】図9に示されたフィルタエレメントが分解された状態を示す断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る濾過装置のハウジング内にフィルタエレメントが収容された状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0097】
5…液圧回路(流路)、10…濾過装置、24…流入路、30…ハウジング、30a…内面、30b…開口、35…溝(阻止部)、35b…上端面(接触する面部)、40…フィルタエレメント、47…エレメント押さえ部(エレメント押さえ部)、48…エレメント本体、52…ばね部、53…接触部、54…貫通孔(把持部)、60…エレメント押さえ部材(エレメント押さえ体)、70…面部(阻止部)、L1…濾過すべき作動油(濾過すべき液)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過すべき液が流動する流路に接続されて前記濾過すべき液が流入する流入路を備えるヘッドと、
前記濾過すべき液を濾過するフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントが通る開口を有して内側に前記フィルタエレメントを収容し、かつ前記流入路と連通するとともに前記開口を塞ぐように前記ヘッドに取り付くハウジングと、
を具備し、
前記フィルタエレメントは、
濾材を備えるエレメント本体と、
前記エレメント本体に設けられるエレメント押さえ体であって、前記ハウジングの内面に向かう方向および離れる方向に変位可能な接触部を具備するエレメント押さえ体と、を具備し、
前記ハウジングには、前記接触部と接触することによって前記フィルタエレメントが前記ハウジング内から出ることを阻止する阻止部が設けられ、
前記接触部は、前記阻止部との接触が解除される位置まで変位可能であることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記エレメント押さえ体は、ばね部を有し、
前記接触部は、前記ばね部の弾性によって前記ハウジングの内面に向かって付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記接触部は、前記ばね部を挟んで向かい合うように複数設けられるとともに、前記接触部には、把持部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記阻止部は、前記接触部の少なくとも一部を収容するとともに前記フィルタエレメントが前記ハウジングから出る方向に前記接触部の少なくとも一部と接触可能な面部を有する溝であることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記阻止部は、前記ハウジングの内面であって、
前記接触部と前記阻止部との間に生じる摩擦によって、前記フィルタエレメントが前記ハウジングから出ることを抑制することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記エレメント押さえ体は、前記エレメント本体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項7】
前記フィルタエレメントは、樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−105638(P2007−105638A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299420(P2005−299420)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000178675)ヤマシンフィルタ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】