説明

濾過装置

【課題】フィルターや洗浄液を頻繁に交換する必要のない濾過装置を提供すること。
【解決手段】水系洗浄液を濾過する濾過装置において、フィルターの濾過部材として少なくとも表面の一部に抗菌あるいは殺菌作用のある銅などの金属あるいはその合金が露出している網を使用る。網は、抗菌あるいは殺菌作用のある金属製の畳織り構造の網であってもよい。また、フィルターは回転すると共に内部に向かって洗浄液が濾過され、かつ内部から濾過された洗浄液が噴射されるドラムフィルターであってもよい。金属製の網によって切り粉等に対する耐久性が向上すると共に網にヘドロ状物質が付着し難くなり、目詰まりが減少してフィルターを交換せずに長時間使用可能である。また、洗浄液の腐敗が抑制され、洗浄液も長持ちする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置に関するものであり、特に、工作機械等から排出される水系洗浄液と切り粉とを分離し、水系洗浄液を濾過する濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、旋盤等の工作機械においては加工中に切り粉の除去や冷却に使用される洗浄液として水系の洗浄液を使用した洗浄方法が主流となっている。そして、工作機械等から排出される水系洗浄液と切り粉とを分離し、水系洗浄液を濾過する濾過装置として各種の濾過装置が提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、切削液の受入れ範囲が広く、濾過部材を小さくしても切削液を良く濾過して、濾過した液を能率良く排出することのできる切削液の濾過装置が開示されている。この濾過装置においては、切削機械のベッドの下部で切削液(洗浄液)が落下する部分に配置する濾過槽の一端を斜め上方に延設してその上端部にモ−タを装着すると共に、前記濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコンベアを内装し、該コンベアを前記モ−タにより駆動して、前記濾過槽の延設上端部側にコンベアの掻き取り部材により搬送された切り粉の排出部を形成している。
【0004】
一方、前記コンベアにより駆動されるロ−タをそれと一体的に取付けた中空軸を介して前記濾過槽の延設境界部辺の両側に回転自在に装着し、前記ロ−タの外周に瀘布を張着して濾過部材を形成すると共に、該濾過部材の内部に前記瀘布を内部から逆洗する噴射ノズルを配設し、同じく延設境界部辺両側に支持させた中空軸から濾過された切削液を排出するようになっている。
【特許文献1】特開平07−204427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の濾過装置においては、フィルター部材として瀘布を使用していたが、瀘布は長い切り粉が接触すると破損してしまうなど耐久性が乏しく、かつ廃液槽内に発生するヘドロ状物質などによって直ぐに目詰まりしてしまい、頻繁に交換する必要があるという問題点があった。また、水系洗浄液は時間が経過すると腐敗して悪臭が発生するという問題点もあり、洗浄液を頻繁に交換する必要があった。本発明は上記した課題を解決し、水系洗浄液を濾過する濾過装置において、フィルターや洗浄液を頻繁に交換する必要のない濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の濾過装置は、フィルターによって水系洗浄液を濾過する濾過装置において、前記フィルターの濾過部材として少なくとも表面の一部に抗菌あるいは殺菌作用のある金属あるいは前記金属の合金が露出している網を使用したことを主要な特徴とする。また、前記した濾過装置において、前記抗菌あるいは殺菌作用のある金属は、銅、銀、ニッケル、コバルト、錫、水銀のいずれかである点にも特徴がある。
【0007】
また、前記した濾過装置において、前記網は、抗菌あるいは殺菌作用のある金属製の畳織り構造の網である点にも特徴がある。また、前記した濾過装置において、前記フィルターは回転すると共に、外部から内部に向かって洗浄液が濾過され、かつ内部から濾過された洗浄液が噴射されるドラムフィルターである点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の濾過装置は上記したような構成によって、以下のような効果を奏する。(1)濾過部材として、少なくとも表面の一部に抗菌あるいは殺菌作用のある金属あるいは前記金属の合金が露出している網もしくは布を使用することにより、腐敗防止のための装置を別に設けることなく、洗浄液の腐敗が抑制され、洗浄液が長持ちする。
【0009】
(2)濾過部材として金属製の網を使用することにより、従来の布よりも切り粉等に対する耐久性が大幅に向上するので、交換せずに長時間使用可能である。
【0010】
(3)濾過部材として抗菌作用のある金属製の網を使用することにより、網にヘドロ状物質が付着し難くなり、ヘドロ状物質による目詰まりが減少し、交換せずに長時間使用可能である。
【0011】
(4)濾過部材として金属製の網を使用することにより耐久性が大幅に向上する結果、ドラムフィルターの内部からフィルターに向かって噴射される洗浄液の圧力をより高くすることが可能となり、フィルターの目詰まりがより減少し、交換せずに長時間使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の濾過装置の構成を示す側面図および平面図である。本発明の濾過装置は大きく、廃液槽20と濾過された洗浄液が溜まる濾過液槽10に分けられる。廃液槽20は濾過液槽10の内部に配置されている。廃液槽20の一端の上部には図示しない旋盤等の工作機械から切り粉(金属片)が混ざった使用済みの洗浄液(廃液)が流入する開口部21が設けられている。
【0014】
廃液槽20の中央には、軸が水平になるように設置され、チェーンコンベア26と係合して回転するドラムフィルター22が配置されており、ドラムフィルター22はドラム外部から内部へ廃液を濾過して廃液槽20の側面の開口部から濾過液槽10に流出させるようになっている。
【0015】
ドラムフィルター22の上部には保守点検用ののぞき窓29が設けられている。また、廃液槽20の側面には廃液の水位の上限を検出するフロートスイッチ34が装着されている。廃液槽20の上記開口部21と反対側の端部は斜め上方に延長されており、上端部にはチェーンコンベア26の軸を駆動するモーター36が装着されている。
【0016】
チェーンコンベア26は廃液槽20の長手方向の側面に沿って、開口部21の下部に設けられたチェーン折り返しのための円板29と上端部のモーター36によって駆動される歯車23との間に装着され、2本のチェーンの間には所定の間隔で、切り粉排出口25から切り粉収納箱31に切り粉を掻き出すための、断面がL字状の金属板27が装着されている。
【0017】
チェーン折り返しのための円板29は歯車でもよいが、円板の方が切り粉等が絡み難く、好適である。また、開口部21とドラムフィルター22の中間のチェーンコンベア26の上部には、ドラムフィルター22の底面の高さよりも低い位置まで延びた抑止板28が傾斜して装着されている。この抑止板28は、L字状の金属板27によって大量の切り粉がドラムフィルター22の下部に移動してフィルターが損傷することを防止するためのものである。
【0018】
廃液槽20の斜め上方への延長部との接続部分である底面の湾曲部にはチェーンコンベア26が底面から浮き上がらないようにガイドレール30が設けられているが、ドラムフィルター22をこの湾曲部に配置することにより、コンベアの浮き上がりを抑止し、ガイドレール30を省略することも可能である。
【0019】
濾過液槽10は廃液槽20の側面の開口部から流出した濾過液を溜めるものであり、濾過液槽10には水位計13、濾過液を図示しない工作機械へ送出するための複数のポンプ12、およびストレーナ(フィルタ)16および圧力計15を介して濾過液をドラムフィルター22へ送出するためのポンプ11とを備えている。キャスター14は濾過装置全体を移動させるための脚輪である。
【0020】
図2は、本発明の濾過装置内の洗浄液の流れを示す断面図である。図2上部は縦断面図であり、下部はA−A部分の水平断面図である。廃液槽20の一端の上部に設けられた開口部21には、図示しない旋盤等の工作機械から切り粉(金属片)が混ざった使用済みの洗浄液が流入する。流入した切り粉は廃液槽20の底に溜まり、チェーン26によって移動する金属板27により、排出口25へ掻き出される。
【0021】
廃液41はドラムフィルター22の周囲に装着された例えば金属製の網からなるフィルター部材44によって濾過され、ドラムの内部に流入し、更に廃液槽20の側面の開口部48から濾過液槽10に流出して溜まる。濾過液槽10に溜まった濾過液17はポンプ12によって図示しない工作機械へ送出されると共に、フィルター洗浄用のポンプ11によりストレーナのフィルタ42を介してドラムフィルター22へ送出され、ドラムフィルター22の中空軸を介して、液面より上部に配置されたノズル40からフィルター部材44の内面に噴射される。この洗浄液の噴射によってフィルター部材44の目詰まりを減少させ、濾過能力を回復させる。
【0022】
図3は、本発明の濾過装置のドラムフィルター22の構成を示す縦断面図である。また、図4は、本発明の濾過装置のドラムフィルター22の構成を示す横断面図である。ドラムフィルター22は略8角柱の形状であり、8角柱の両端面の円板35の縁はチェーンコンベアのチェーン26と係合する歯車53となっている。
【0023】
円板35のシール51より中心軸46に近い部分には濾過液が通過するための複数の開口47が設けられている。円板35はボールベアリング45によって中心軸46に回動可能に固着されている。中空の中心軸46は廃液槽20に固着されており、中心軸46の内部にはポンプ11から濾過液が供給されて、中心軸46と連結しているノズル40からフィルター部材44の内面に噴射される。
【0024】
円板35と対向する廃液槽20の内面には円板35の表面を摺動しながら液密状態を維持するリング状のシール50、51が2重に装着されており、このシール50、51によって廃液41と濾過液17とが分離されている。フィルター部材44によって濾過されてドラムフィルター22内部に流入した濾過液は、円板35の開口47、リング状のシール50、51の内側、廃液槽20の側面の開口部48を経て濾過液槽10内に流出し、溜まる。
【0025】
チェーンコンベア26のチェーンはドラムフィルター22の上部において円板35の歯車53と嵌合しており、チェーンコンベア26の移動に伴ってドラムフィルター22も回動する。但し、ドラムフィルター22の下部においては円板35の歯車53とチェーンコンベア26のチェーンは嵌合していない。
【0026】
フィルター部材44は8角柱の側面の隣接する2平面を接続した形状をなしている。円板35の内側にはフィルター部材44の周囲を支持するためのリブ49、およびリブ49と同一平面を備え、2枚の円板35の間の8角柱の側面の辺の部分に設けられた8本の支持板52が固着されている。4枚のフィルター部材44はリブ49および支持板52にボルトによって固定される。
【0027】
図5は、本発明の濾過装置のフィルター部材44の構成を示す平面図、断面図である。図5(a)は平面図であり、(b)、(c)、(d)はB−B断面の各層の形状を示す断面図、(e)、(f)は網72の横断面および縦断面を示す断面図である。フィルター部材44は前述したように8角柱の側面の隣接する2平面を接続した形状をなしている。
【0028】
フィルター部材44は、金属製のフィルター枠70、銅などの抗菌あるいは殺菌作用のある金属製の網72、パッキン73の3層からなっている。金属製のフィルター枠70にはドラムへの固定用の孔71が複数個設けられている。網72は、抗菌あるいは殺菌性があるとされている金属、例えば、銅、銀、ニッケル、コバルト、錫、水銀のいずれか、あるいは少なくともこれらの金属のいずれか1つを含む合金製の金網であってもよく、更に任意の材質(例えばステンレス)の金網に上記した金属あるいはその合金がめっきされるなどして少なくとも表面の一部に露出している金網であってもよい。
【0029】
例えば銅は経験的に抗菌あるいは殺菌性があることが知られており、フィルターとして例えば銅などの抗菌あるいは殺菌性がある金網を使用することにより、フィルター自体にヘドロ状物質が付着し難くなり、目詰まりが減少すると共に、抗菌あるいは殺菌性がある金属イオンが洗浄液中に溶け出すことによって洗浄液自体の腐敗が防止あるいは抑制され、悪臭やヘドロ状物質の発生が抑制されて洗浄液の寿命が延びると共に、人体に有害な病原菌等の繁殖も抑制される。
【0030】
金網72は例えば平畳織りあるいは綾畳織りと呼ばれる折り方で織られた金網を用いることにより平織りよりも耐久性に優れたフィルターを得ることができる。。図5(e)、(f)は平畳織りによって織られた網72の横断面および縦断面を示す断面図であり、縦糸75は直線状であり、横糸76が波状に屈曲している。隣接する横糸76同士は密接しており、縦糸75と2本の横糸76の交叉する部分にできた隙間がフィルターの目となる。金網の目の大きさは必要に応じて選択可能である。
【0031】
以上実施例を説明したが、本発明の濾過装置には以下のような変形例も考えられる。実施例においては、ドラムフィルターの形状が8角柱である例を開示したが、ドラムフィルターの形状は任意角数の多角柱あるいは円柱形状であってもよい。また、フィルターとして金属製の網に代えて細かい孔が多数開いている抗菌あるいは殺菌作用がある金属製の金属板を使用してもよい。
【0032】
フィルターとして金属製の網を使用した場合、金属の表面に酸化膜が生じ、抗菌あるいは殺菌作用が低下する恐れがある。そこで、ドラムフィルターの外部または内部にフィルターの金網表面の酸化膜を除去するために金網と接触する金属ブラシなどの酸化膜除去手段を装着してもよい。
【0033】
実施例としてはフィルターに抗菌あるいは殺菌作用がある金属を使用する例を開示したが、フィルターと共に例えばチェーンコンベアの金属板なども抗菌あるいは殺菌作用がある金属製にするか、あるいは前記金属をめっきするなどして表面に露出させてもよい。チェーンコンベアの金属板は切り粉と接触するので切り粉により酸化膜が削除され、殺菌効果がより長持ちする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の濾過装置の構成を示す側面図および平面図である。
【図2】本発明の濾過装置内の洗浄液の流れを示す断面図である。
【図3】本発明の濾過装置のドラムフィルターの構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の濾過装置のドラムフィルターの構成を示す横断面図である。
【図5】本発明の濾過装置のフィルター部材の構成を示す平面図、断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10…濾過液槽
11、12…ポンプ
13…水位計
14…キャスター
15…圧力計
16…ストレーナ(フィルタ)
17…濾過液
20…廃液槽
21…開口部
22…ドラムフィルター
23…歯車
25…切り粉排出口
26…チェーンコンベア
27…金属板
28…抑止板
29…のぞき窓
30…ガイドレール
31…切り粉収納箱
34…フロートスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターによって水系洗浄液を濾過する濾過装置において、
前記フィルターの濾過部材として少なくとも表面の一部に抗菌あるいは殺菌作用のある金属あるいは前記金属の合金が露出している網を使用したことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記抗菌あるいは殺菌作用のある金属は、銅、銀、ニッケル、コバルト、錫、水銀のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記網は、抗菌あるいは殺菌作用のある金属製の畳織り構造の網であることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記フィルターは回転すると共に、外部から内部に向かって洗浄液が濾過され、かつ内部から濾過された洗浄液が噴射されるドラムフィルターであることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137353(P2010−137353A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318927(P2008−318927)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(593222001)株式会社田中製作所 (4)
【Fターム(参考)】