濾過装置
【課題】逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる濾過装置を提供することを目的とする。
【解決手段】原水を膜濾過するための第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bには、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とを連絡する連絡ライン23と、MF膜モジュール3からの濾過水をMF膜モジュール3の2次側に供給する逆洗ライン31とが設けられている。また、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2B双方の逆洗ライン31同士は逆洗連絡ライン37を介して連絡され、第2濾過ユニット2Bの逆洗時には、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3からの濾過水が逆洗連絡ライン37を通って第2濾過ユニット2Bに供給される。その結果、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bの双方に独立した逆洗配管を設ける場合に比べて逆洗のための設備負荷が低減される。
【解決手段】原水を膜濾過するための第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bには、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とを連絡する連絡ライン23と、MF膜モジュール3からの濾過水をMF膜モジュール3の2次側に供給する逆洗ライン31とが設けられている。また、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2B双方の逆洗ライン31同士は逆洗連絡ライン37を介して連絡され、第2濾過ユニット2Bの逆洗時には、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3からの濾過水が逆洗連絡ライン37を通って第2濾過ユニット2Bに供給される。その結果、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bの双方に独立した逆洗配管を設ける場合に比べて逆洗のための設備負荷が低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密ろ過膜や限外ろ過膜などの膜によって原液を濾過して濾過液を得る濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密ろ過膜や限外ろ過膜などの膜モジュールを利用した膜濾過装置が知られている。膜濾過装置では、膜モジュールの目詰まりを解消するため、膜モジュールの2次側から1次側に向けて濾過液を逆流させて膜洗浄する逆洗が行われる。例えば、特許文献1には、外圧式中空糸膜モジュールにおいて逆洗が行われる旨の記載がある。この種の膜モジュールを備えた膜濾過装置の場合、通常は濾過水を逆洗タンクなどで蓄えておき、逆洗タンクに蓄えた濾過水を膜モジュールの2次側に供給することで逆洗が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−220446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら逆洗タンクや逆洗ポンプを要する従来の膜濾過装置では、敷地内での占有面積が大きくなり易く、所定の敷地内で水処理能力を高めるための効果的な構築が困難であった。特に、精密濾過膜によって前処理された濾過水を逆浸透膜で2次処理するような膜濾過装置などでは、逆洗タンクや逆洗ポンプの設置に伴う配管の構成が複雑で入り組んだものになり易く、その結果、流路を開閉するバルブの数なども増大して設備負荷の増大を招集した。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原液を濾過する前段膜を有する複数の前段膜モジュールと、前段膜よりも膜分離性能の高い後段膜を有する後段膜モジュールとが組み込まれた濾過ユニットを備え、原液を前段膜モジュールで濾過し、前段膜モジュールから排出された濾過液を後段膜モジュールで濾過する濾過装置において、濾過ユニットを複数備え、濾過ユニットは、前段膜モジュールの2次側と後段膜モジュールの1次側とを連絡すると共に、濾過液が流動する連絡ラインと、連絡ラインに設けられると共に、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながら濾過液を圧送する濾過液圧送ポンプと、濾過液圧送ポンプから吐出された濾過液が流動する下流側と前段膜モジュールの2次側とを連絡する逆洗ラインと、を有し、複数の濾過ユニットそれぞれの逆洗ライン同士は濾過液が流動する逆洗連絡ラインを介して連絡され、逆洗時には逆洗対象以外の濾過ユニットの前段膜モジュールから排出された濾過液が逆洗連絡ラインを通って逆洗対象の濾過ユニットに供給されることを特徴とする。
【0007】
本発明では、前段膜モジュールから排出される濾過液は濾過液圧送ポンプによって圧送される。ここで、例えば、前段膜モジュールから濾過液圧送ポンプまでの間を中間タンクなどで縁切りすることなく連続的に連絡すると、濾過液圧送ポンプの吸い込み側と吐出側とでバランスが崩れてしまった場合に濾過液圧送ポンプの吸い込み側でキャビテーションが発生してしまう虞がある。しかしながら本発明に係る濾過液圧送ポンプは、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながら前段膜モジュールからの濾過液を圧送するため、キャビテーションの発生を効果的に防止でき、濾過液圧送ポンプで濾過液を圧送するための中間タンクなどが不要になる。さらに、本発明では、濾過液圧送ポンプが逆洗液の移送という機能にも兼用されるので、逆洗ポンプを別途設ける必要は無く設備負担が低減する。
さらに、本発明では、逆洗対象以外の濾過ユニットの前段膜モジュールから排出された濾過液が、逆洗液として逆洗連絡ラインを通り、逆洗対象の濾過ユニットに供給される。従って、濾過ユニットそれぞれでは、逆洗専用の独立した逆洗配管や、これら逆洗配管の流路を開閉するバルブなどを省略でき、代わりに逆洗連絡ラインを共有する形で複数の濾過ユニットそれぞれで交互に逆洗を行うことが可能になる。その結果として、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【0008】
さらに、前段膜は精密濾過膜であり、後段膜は逆浸透膜であると好適である。原液中の比較的粒径の大きな濁質は予め精密濾過膜で除去されるので逆浸透膜の寿命を延ばすことができる。
【0009】
さらに、濾過ユニットは複数の前段膜モジュールを備えており、濾過ユニットそれぞれの前段膜モジュールの数は同数であると好適である。逆洗対象以外の濾過ユニットの前段膜モジュールの数が逆洗対象の濾過ユニットの前段膜モジュールよりも多い場合、逆洗対象となる前段膜モジュールの数に合わせて逆洗用に利用される濾過液の流量を減らす必要がある。しかしながら、上記構成によれば、濾過ユニットそれぞれの前段膜モジュールの数は同数であるので逆洗時の濾過液の流量調整などの制御が簡便になり、シンプルな構成を実現する上で有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る濾過装置を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態に係る濾過装置の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】操作盤の機能的構成を模式的に示す図である。
【図6】本実施形態に係る濾過装置の濾過処理に係る手順を示すフローチャートである。
【図7】濾過運転時の流体の流れを示す図である。
【図8】第2濾過ユニットの逆洗運転時の流体の流れを示す図である。
【図9】第1濾過ユニットの逆洗運転時の流体の流れを示す図である。
【図10】第1,第2ユニットのフラッシング処理の流体の流れを示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る濾過装置を模式的に示す図であるある。
【図12】本発明の第3実施形態に係る濾過装置を模式的に示す図であるある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態に係る濾過装置について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1〜図5に示されるように、濾過装置1Aは、生活廃水、工業用水、工場廃水または河川水といった原水(原液)を受け入れ、膜濾過によって浄化処理する装置である。濾過装置1Aは、複数の濾過ユニット2A,2Bを備えており、濾過ユニット2A,2Bそれぞれには、複数のMF膜モジュール3と複数のRO膜モジュール5とが組み込まれている。濾過ユニット2A,2Bに受け入れられた原水は、最初にMF膜モジュール3に供給されて粒径の比較的大きな濁質が除去され、次に、RO膜モジュール5に供給されて2次処理が施される。濾過ユニット2A,2Bは、複数のMF膜モジュール3と複数のRO膜モジュール5とをコンテナ7内に収容することで、搬送可能な態様を実現している。
【0014】
本実施形態に係る濾過装置1Aは、二台の濾過ユニット2A,2Bを備えており、一方の濾過ユニット(以下、「第1濾過ユニット」という)2Aと他方の濾過ユニット(以下、「第2濾過ユニット」という)2Bとは同一の要素を備えている。以下の説明では、第1濾過ユニット2Aを中心に詳細に説明し、第2濾過ユニット2Bの説明は一部省略する。
【0015】
第1濾過ユニット2Aは、MF膜モジュール3やRO膜モジュール5を収容するコンテナ7を備えている。コンテナ7は、通常貨物輸送に使われる箱状の海上コンテナ7であり、コンテナ7の底部に配置された平板状のベース7aと、ベース7aに取付けられた蓋部7bとから構成されて略直方体形状になっている。蓋部7bの長手方向の一端には、ドアが設けられている。コンテナ7の全長は、約6m(20フィート)又は12m(40フィート)の各態様を採用できる。
【0016】
第1濾過ユニット2Aは、複数のMF膜モジュール3を備えている。MF膜モジュール3は、中空糸膜からなるMF膜(精密濾過膜)3aと、多数本のMF膜3aの束を収容する略円筒状のケース3aとを備えており、MF膜3aの束はケース3aの両端付近に設けられた接着層を介してケース3aに固定されている。
【0017】
MF膜モジュール3は、MF膜3aを挟んで1次側の領域UAと2次側の領域DAとに区分され、1次側は原水を受け入れる上流側の領域UAであり、2次側は、MF膜3aを透過した濾過水の流出先となる下流側の領域DAである。そして、MF膜モジュール3の一方の端部には1次側に連通する原水導入部3cが設けられている。また、MF膜モジュール3の他方の端部には、2次側に連通する濾過水排出部3dと、1次側に連通してMF膜3aを透過しなかった原水や逆洗水が排出される洗浄水排出部3eとが設けられている。
【0018】
複数のMF膜モジュール3は、同数の二つのグループに分かれて設置されている。本実施形態では、計14本のMF膜モジュール3が7本ずつに分かれており、各グループに属する複数のMF膜モジュール3は二列に並んで配置されている。なお、MF膜モジュール3の本数などは、所望の水処理能力やコンテナ7の大きさなどに対応して適宜に選択することができる。
【0019】
一方のグループに属するMF膜モジュール3を中心に説明すると、MF膜モジュール3は、上側に配置された濾過水排出ヘッダ管9と下側に配置された原水導入ヘッダ管11との間に立設されている。原水導入ヘッダ管11は、コンテナ7の下側、すなわちベース7aに沿って設置されている。原水導入ヘッダ管11には、MF膜モジュール3の本数に対応した複数の枝管が設けられており、MF膜モジュール3の原水導入部3cは継手管を介して原水導入ヘッダ管11の枝管に接続されている。
【0020】
また、濾過水排出ヘッダ管9はコンテナ7の上側、すなわち蓋部7bの天井に沿って設置されている。濾過水排出ヘッダ管9には、MF膜モジュール3の本数に対応した複数の枝管が設けられており、MF膜モジュール3の濾過水排出部3dは継手管を介して濾過水排出ヘッダ管9の枝管に接続されている。
【0021】
また、MF膜モジュール3の上側には、濾過水排出ヘッダ管9に並んで洗浄水排出ヘッダ管13が設置されている。洗浄水排出ヘッダ管13には、MF膜モジュール3の本数に対応した複数の枝管が設けられており、MF膜モジュール3の洗浄水排出部3eは、継手管を介して洗浄水排出ヘッダ管13の枝管に接続されている。
【0022】
図1、図2及び図4に示されるように、RO膜モジュール5は、RO膜(逆浸透膜)5aと、複数のRO膜5aが一列に並んで収容される略円筒状のケース(「ベッセル」ともいう)5bとを備えている。RO膜モジュール5は、RO膜5aを挟んで1次側の領域UAと2次側の領域DAとに区分される。1次側は濾過液を受け入れる上流側の領域UAであり、2次側はRO膜5aを透過した2次透過水の流出先となる下流側の領域DAである。
【0023】
RO膜モジュール5の一方の端部には、1次側に連通する濾過水導入部5cが設けられており、他方の端部には、2次側に連通する透過水排出部5dと、1次側に連通する濃縮水排出部5eが設けられている。濃縮水排出部5eからは、RO膜5aを透過しなかった濾過水が排出される。
【0024】
複数のRO膜モジュール5は、コンテナ7の長手方向に沿うように横になった状態で架台15に固定されている。複数のRO膜モジュール5同士の連結態様は様々な形態を採用できるが、本実施の形態に係る複数のRO膜モジュール5は多段となるように連結されている。具体的に説明すると、1段目には4本のRO膜モジュール5が配置され、2段目には2本のRO膜モジュール5が配置され、3段目には1本のRO膜モジュール5が配置されている。
【0025】
1段目のRO膜モジュール5は、濾過水導入部5cが上流側ヘッダ管17に接続されており、透過水排出部5dが下流側ヘッダ管19に接続されている。また、2段目のRO膜モジュール5の濾過水導入部5cは1段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eに連絡し、透過水排出部5dは下流側ヘッダ管19に接続されている。また、3段目のRO膜モジュール5の濾過水導入部5cは2段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eに連絡し、透過水排出部5dは下流側ヘッダ管19に接続されている。また、3段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eは濾過水を排出する管路に接続されている。このような連結態様にすることで、2次透過水の流量を増やすことが可能になる。
【0026】
次に濾過装置1Aの配管の構成について図1を参照して説明する。なお、図1では、二つのグループに分かれる複数のMF膜モジュール3のうち、一方のグループに属する一本を代表して示しており、また、他方のグループに属する一本を代表して示している。さらに、複数のRO膜モジュール5のうち、一本を代表して示している。
【0027】
濾過装置1Aの第1濾過ユニット2Aには、図示しない原水貯留タンクから原水を受け入れる導入ライン21が設けられている。導入ライン21は、所定の管径を有する管路21aを備えて構成されている。導入ライン21の管路21aは二方向に分岐し、各分岐部は、MF膜モジュール3に連絡する原水導入ヘッダ管11にそれぞれ接続されている。
【0028】
また、導入ライン21には、MF送液ポンプ(原液供給ポンプ)21bが設置されており、MF送液ポンプ21bによって原水がMF膜モジュール3に所定流量で供給される。また、導入ライン21の各分岐部には流路を開閉する第1のバルブV1が設けられている。第1のバルブV1は、操作盤(制御手段)41による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には手動弁であってもよい。
【0029】
また、第1濾過ユニット2Aには、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とを連絡する連絡ライン23が設けられており、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とは、中間タンクなどを介せずに連絡ライン23によって直接に接続されている。
【0030】
連絡ライン23は、所定の管径を有する管路23a,23bと、濾過水を所定の高圧でRO膜モジュール5に圧送するRO送液ポンプ(濾過液圧送ポンプ)23dとを備えており、MF膜モジュール3で濾過された濾過水はRO送液ポンプ23dによって直接にRO膜モジュール5に供給される。
【0031】
連絡ライン23の管路23a,23bは、RO送液ポンプ23dを挟んで上流側管路23aと下流側管路23aとに分かれている。上流側管路23aは、二つのグループに分かれているMF膜モジュール3に対応して上流側の一部分が二方向に分岐しており、各分岐部はMF膜モジュール3に連絡する濾過水排出ヘッダ管9にそれぞれ接続されている。各分岐部には流路を開閉する第2のバルブV2が設けられている。第2のバルブV2は、操作盤(制御手段)41による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0032】
また、上流側管路23aには、管路内を流れる濾過水の流量を測定する流量計23eが設けられている。また、上流側管路23aの下流端はRO送液ポンプ23dの吸い込み部に接続されており、さらにRO送液ポンプ23dの吸い込み部の近傍には、RO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力を検出する圧力センサ23fが設けられている。
【0033】
連絡ライン23の下流側管路23aは、上流端がRO送液ポンプ23dの吐出部に接続され、下流端がRO膜モジュール5に連絡する上流側ヘッダ管17に接続されている。また、下流側管路23aには、流路を開閉する第3のバルブV3が設けられている。第3のバルブV3は、操作盤(制御手段)41による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0034】
また、第1濾過ユニット2Aには、MF膜モジュール3から逆洗水または原水を排出する逆洗水排出ライン25が設けられている。逆洗水排出ライン25は、所定の管径を有する管路25aを備えて構成されている。逆洗水排出ライン25の上流側の管路は二方向に分岐し、各分岐部はMF膜モジュール3の1次側に連絡する洗浄水排出ヘッダ管13にそれぞれ接続されている。また、各分岐部には流路を開放する第4のバルブV4が設けられている。そして、逆洗水排出ライン25の下流側は、図示しない廃液タンクに連絡している。なお、逆洗の際には、逆洗水排出ライン25を逆洗水が流動して排出されるが、フラッシング処理の際には、原水が流動して排出される。
【0035】
また、第1濾過ユニット2Aには、RO膜モジュール5を透過した2次透過水を排出する透過水排出ライン27と、RO膜モジュール5の1次側と廃液タンク30とを連絡する濃縮水排出ライン29とが設けられている。
【0036】
透過水排出ライン27は、下流側ヘッダ管19を介してRO膜モジュール5の2次側に連絡している。透過水排出ライン27は、所定の管径を有する管路27aと、管路27a内を流れる2次透過水の流量を測定する流量計27bと、流路を開閉する第5のバルブV5とを有する。第5のバルブV5は、操作盤による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。RO膜モジュール5で濾過された2次透過水は、透過水排出ライン27を通ってコンテナ7外に送り出される。
【0037】
濃縮水排出ライン29は所定の管径を有する管路29aを備えて構成されている。濃縮水排出ライン29の管路29aは、3段目(最終段目)のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eに接続しており、その結果として、RO膜モジュール5の1次側に連通する態様を実現している。多段に配置されたRO膜モジュール5において、いずれのRO膜5aも透過しなかった濃縮水は、3段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eを介して濃縮水排出ライン29に排出される。
【0038】
また、濃縮水排出ライン29には流路を所定の開度に調整可能な制御バルブVaが設けられている。濾過運転時には、制御バルブVaによって開度を絞るとRO膜モジュール5から流出する2次透過水の流量は僅かに増加し、逆に開くと透過水の流量は僅かに減少する。従って、制御バルブVaによって開度を調整することで、2次透過水の流量の微調整が可能になる。また、制御バルブVaよりも下流側には、必要に応じて管路29a内を流れる液体の流量を検出する流量計29bが設けられている。
【0039】
また、第1濾過ユニット2Aには、連絡ライン23から分岐して間接的にMF膜モジュール3の2次側に連絡する逆洗ライン31が設けられている。逆洗ライン31は、所定の管径を有する管路31aを備えている。逆洗ライン31の管路31aは、濾過水が流動する上流側の端部が連絡ライン23の下流側管路23aに接続され、その接続部位はRO送液ポンプ23dの吐出部と第3のバルブV3との間に設けられている。また、下流側の端部は、連絡ライン23の上流側管路23aに接続され、その接続部位はRO送液ポンプ23dの吸い込み部と流量計23eとの間に設けられている。
【0040】
また、逆洗ライン31には、管路31a内の流路を開閉する第6のバルブV6及び第7のバルブV7が設けられている。以上の逆洗ライン31の構成により、RO送液ポンプ23dから吐出された濾過水が流動する下流側とMF膜モジュール3の2次側とを連絡する態様を具現化している。
【0041】
また、第1濾過ユニット2Aは、MF膜モジュール3にエアスクラビング用の圧縮空気を供給する高圧空気供給部33を備えている。高圧空気供給部33は、圧縮空気を送り出すコンプレッサ(図示省略)と、コンプレッサによって送り出された圧縮空気をMF膜モジュール3の1次側に供給する高圧空気供給管33aとを備えている。
【0042】
高圧空気供給管33aの下流部分はMF膜モジュール3の本数に対応して複数の枝管に分岐している。高圧空気供給管33aの各枝管は複数のMF膜モジュール3それぞれの1次側に連通するように、MF膜モジュール3の下部に接続されている。また、高圧空気供給管33aには、MF膜モジュール3側に連絡する枝管の流路を開閉する第8のバルブV8が設けられている。第8のバルブV8は、操作盤による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0043】
また、第1濾過ユニット2Aは、例えば、NaOH貯槽35a、スケール防止剤貯槽35b、還元剤貯槽35c、NaClO貯槽35dなどの薬液槽と、各薬液槽35a〜35dに対応した送液ポンプ(図示省略)と備えている。還元剤貯槽35cに貯留されるSBS(sodium bisulfite)やスケール防止剤貯槽に貯留される及びスケール防止剤は、RO膜モジュール5を洗浄するときに使用される。また、NaClO貯槽35dに貯留されるNaClO溶液は、MF膜モジュール3を逆洗する際に使用されるものである。
【0044】
以上、第1濾過ユニット2Aにおける配管構成について説明したが、第2濾過ユニット2Bも同様な構成を備えている。そして、第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31と第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31とは、逆洗連絡ライン37を介して連絡している。
【0045】
逆洗連絡ライン37は、所定の管径を有する管路37aを備えて構成されている。管路37aの一方の端部は、第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31の管路31aに接続され、他方の端部は第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31の管路31aに接続されている。また、逆洗連絡ライン37の管路37aと第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31の管路31aとの接続部位は、第6のバルブV6と第7のバルブV7との間であり、同様に、逆洗連絡ライン37の管路37aと第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31の管路31aとの接続部位は、第6のバルブV6と第7のバルブV7との間である。
【0046】
また、逆洗連絡ライン37の管路37aには、管路37aにかかる圧を抜くために流路を開閉する第9のバルブV9が設けられている。第9のバルブV9は、操作盤による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0047】
また、濾過装置1Aは、通常の濾過運転に加えて、逆洗運転を行うための流路の開閉制御などを行う操作盤41を備えている。操作盤41は、制御CPU(Central Processing Unit)、記憶装置(Strage Unit)、入力装置(Input Device)及び出力装置(Output Device)などを備えて構成されており、所定のプログラムに従って動作することで、バルブ制御部43、MFポンプ制御部45、ROポンプ制御部47、2次透過水制御部49、及び逆洗制御部50としての各機能を実現する(図5参照)。
【0048】
なお、本実施形態に係る操作盤41は、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bの双方に設けられ、第1濾過ユニット2A側の操作盤41と第2濾過ユニット2B側の操作盤41とは制御信号の送受信が可能となるように有線または無線によって互いに接続されている。なお、本発明を具現化する態様としては、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bそれぞれに操作盤41を設ける態様に限定されず、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bのどちらか一方のみに操作盤41を設け、この操作盤41で第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bの両方の統一的な制御を行うようにしてもよい。また、本実施形態では、例えば、第1濾過ユニット2A側の操作盤41が第1濾過ユニット2Aにおけるバルブ制御部43、MFポンプ制御部45、ROポンプ制御部47、2次透過水制御部49、逆洗制御部50の全ての機能を実現する態様を想定しているが、複数の制御装置(制御手段)を分散して配置し、制御装置それぞれで各機能を分担させるようにしてもよい。
【0049】
第1濾過ユニット2A側の操作盤41と第2濾過ユニット2B側の操作盤41とは濾過運転時に実質的に同一の動作制御を実行し、逆洗運転時には互いに調整を図りながら相互で異なる動作制御を実行する。以下、第1濾過ユニット2A側の操作盤41を主体的に説明して第2濾過ユニット2B側の操作盤41については重複する説明を省略する。
【0050】
操作盤41は、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第3のバルブV3に制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。バルブ制御部43として機能する操作盤41から第1〜第3のバルブV1〜V3へ制御信号が送信されると、その制御信号を第1〜第3のバルブV1〜V3が受け付け、そして第1〜第3のバルブV1〜V3は受け付けた制御信号に従って流路を開放し、または閉鎖する。
【0051】
また、操作盤41は、連絡ライン23に設けられた流量計23eに有線または無線によって接続されており、流量計23eで検出された流量データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、MF送液ポンプ21bに制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0052】
MFポンプ制御部45として機能する操作盤41は、流量計23eで検出された流量データを監視しており、流量データが所定の閾値(例えば25m3/hを中心として一定の誤差範囲)よりも低い場合には、MF送液ポンプ21bを高速運転にして流量を増やし、流量データが所定の閾値よりも高い場合には、MF送液ポンプ21bを低速運転にして流量を減らす。その結果、MFポンプ制御部45は、連絡ライン23を通過する濾過水の流量を所定の設定流量に保持する自動制御を行い、その結果として、所定流量の原水をMF膜モジュール3及び第2MF膜モジュール3の少なくとも一方に供給する。なお、濾過水の流量設定は、オペレータなどによる操作盤41の入力操作によって実行され、入力操作を受け付けた操作盤41は、入力値を濾過水の流量の閾値としてメモリなどに設定登録する。
【0053】
また、操作盤41は、連絡ライン23に設けられた圧力センサ23fに有線または無線によって接続されており、圧力センサ23fで検出された圧力データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、RO送液ポンプ23dに制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0054】
ROポンプ制御部47として機能する操作盤41は、圧力センサ23fで検出された圧力データを監視しており、圧力データが所定の閾値(例えば水柱5mを中心として一定の誤差範囲)よりも低い場合には、RO送液ポンプ23dを低速運転にして圧送流量を減らし、圧力データが所定の閾値よりも高い場合には、RO送液ポンプ23dを高速運転にして圧送流量を増やす。その結果、ROポンプ制御部47によって制御されたRO送液ポンプ23dは、吸い込み部側での圧力を所定の設定圧力に保持するように自動制御を行う。なお、RO送液ポンプ23dの吸い込み部側での圧力設定は、オペレータなどによる操作盤41の入力操作によって実行され、入力操作を受け付けた操作盤41は、入力値をRO送液ポンプ23dの吸い込み部側での圧力の閾値としてメモリなどに設定登録する。
【0055】
また、操作盤41は、透過水排出ライン27に設けられた流量計27bに有線または無線によって接続されており、流量計27bで検出された流量データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、濃縮水排出ライン29に設けられた流量計29bに有線または無線によって接続されており、流量計29bで検出された流量データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、透過水排出ライン27に設けられた第5のバルブV5及び濃縮水排出ライン29に設けられた制御バルブVaに制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0056】
2次透過水制御部49として機能する操作盤41は、透過水排出ライン27の流量計27bで検出された流量データと必要に応じて濃縮水排出ライン29の流量計29bで検出された流量データとを監視している。そして操作盤41は、透過水排出ライン27の流量計27bで検出された流量データが所定の設定流量となるように保持する自動制御を行う。なお、2次透過水の設定流量は、オペレータなどによる操作盤41の入力操作によって実行され、入力操作を受け付けた操作盤41は、入力値を2次透過水の流量の閾値としてメモリなどに設定登録する。
【0057】
また、操作盤41は、逆洗ライン31に設けられた第6のバルブV6及び第7のバルブV7に制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。また、操作盤41は、逆洗水排出ライン25に設けられた第4のバルブV4、高圧空気供給部33に設けられた第8のバルブV8に制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0058】
逆洗制御部50として機能する操作盤41は、第1濾過ユニット2Aが逆洗対象となる場合、第1のバルブV1、第3のバルブV3、第5のバルブV5、第6のバルブV6、及び第9のバルブV9を閉鎖し、第2のバルブV2、第4のバルブV4、第7のバルブV7及び第8のバルブV8を開放して第2濾過ユニット2Bから供給された濾過水を逆洗水として受け入れる。さらに操作盤41は、逆洗水をMF膜モジュール3の2次側に供給してMF膜3aを逆洗し、MF膜3aを透過した逆洗水を逆洗水排出ライン25から排出させる。一方で、操作盤41は、第1濾過ユニット2Aが逆洗対象以外となる場合、第3のバルブV3、第4のバルブV4、第5のバルブV5、第7のバルブV7、及び第8のバルブV8を閉鎖し、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第6のバルブV6、及び第9のバルブV9を開放し、MF膜モジュール3からの濾過水を逆洗連絡ライン37に送り込む。
【0059】
次に、本実施形態に係る濾過装置1Aを用いた処理フローについて図6〜図9を参照して説明する。図6は、濾過装置1Aの運転手順を示すフローチャートである。また、図7は、濾過運転を行っている状態での液体の流れを示す図であり、図8は第2濾過ユニット2Bの逆洗処理を行っている状態での液体の流れを示す図であり、図9は第1濾過ユニット2Aの逆洗処理を行っている状態での液体の流れを示す図である。また、図10は、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとの両方にフラッシング処理を施している状態での液体の流れを示す図である。
【0060】
濾過装置1Aを運転する際には、初期設定として濾過装置1Aの処理能力や要求性能などに応じた設定値を入力する必要がある。本実施形態では、例えば、通常の濾過が27分、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の逆洗が1分、第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の逆洗が1分、そして第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3と第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3とのフラッシング処理が1分の計30分の運転が行われ、その運転を行うための入力操作がオペレータによって行われる。更に、濾過水の設定流量は25m3/h、RO送液ポンプ23dの吸い込み側の設定圧力は水柱5m、2次濾過水の設定流量は20m3/hというデータがオペレータの操作入力によって設定される。
【0061】
図6に示されるように、原水の濾過処理を開始すると、操作盤41は、通常の濾過運転を開始する(ステップS1)。ここで、操作盤41(図1及び図7参照)は、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第3のバルブV3、第5のバルブV5を開放し、第4のバルブV4、第6のバルブV6、第7のバルブV7、第8のバルブV8を閉鎖する。以上のバルブ制御により、導入ライン21、連絡ライン23、透過水排出ライン27、及び濃縮水排出ライン29の流路は開放された状態になり、逆洗ライン31、逆洗連絡ライン37及び逆洗水排出ライン25の流路は閉鎖された状態になる。
【0062】
次に、MF送液ポンプ21bを駆動し、圧力センサ23fで検出された圧力データが所定圧力(水柱5m)まで到達するとRO送液ポンプ23dを駆動してRO膜モジュール5に濾過水を供給する。また、RO膜モジュール5から排出される2次透過水の流量が所定の設定流量(20m3/h)を保持するように制御バルブVaの開度を微調整する。
【0063】
通常の濾過運転について更に詳しく説明する。濾過装置1Aでは、流量制御、圧力制御、流量制御といったMF−RO直結制御が行われている。具体的には、流量計23eによって検出された濾過水の流量データは、操作盤41の制御CPU(図示せず)に入力される。制御CPUは、流量計23eで検出された流量データに基づいてPID(Proportional Integral Derivative)演算を行い、その結果に基づいてMF送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、MF送液ポンプ21bのモータ回転数制御が実行され、MF膜モジュール3への原水の供給量が変動する。なお、MF送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態では濾過水の流量を25m3/hに維持するための出力演算である。
【0064】
また、圧力センサ23fで取得されたRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力データは、操作盤41の制御CPUに入力される。制御CPUは、圧力センサ23fで検出された圧力データに基づいてPID演算を行い、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、RO送液ポンプ23dのモータ回転数制御が実行され、RO送液ポンプ23dの吐出量が変動する。なお、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態ではRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力を水柱5mに維持するための出力演算である。
【0065】
また、透過水排出ライン27に設けられた流量計27bによって検出された2次濾過水の流量データは、操作盤41の制御CPUに入力される。制御CPUは、流量計27bで検出された流量データに基づいてPID演算を行い、その結果に基づいて制御バルブVaの開度制御を行う。これによって、RO膜モジュール5から排出される濃縮水の流量が変動し、これに伴って2次透過水の流量が変動する。なお、制御バルブVaの開度制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態では2次透過水の流量を20m3/hに維持するための出力演算である。
【0066】
上記のMF−RO直結制御を行うことで、例えば、MF膜差圧が大きくなってきた場合は、MF送液ポンプ21bの回転数が上昇して濾過水の流量が25m3/hで維持され、RO膜差圧が大きくなってきた場合は、RO送液ポンプ23dの回転数が上昇して2次透過水の流量が20m3/h(濃縮水の流量5m3/h)で維持される。従って、RO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力が水柱5mで安定している状態(すなわち、押し込み流量とRO送液ポンプ23dの引込み流量がバランスしている状態)を継続でき、これによって、RO送液ポンプ23dの吸い込み側でのキャビテーションの発生を防止できる。
【0067】
上述の濾過運転時間(27分)が経過すると、濾過装置1Aは、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとの間での交互逆洗運転を開始する。なお、最初の逆洗対象は第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3であり、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3は逆洗対象以外となる。
【0068】
第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の逆洗運転を開始すると(ステップS2)、第1濾過ユニット2Aの操作盤41は逆洗水供給制御を実行し、一方で、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は逆洗水受け入れ制御を実行する。具体的には、第1濾過ユニット2Aの操作盤41(図1及び図8参照)は、MF送液ポンプ21b及びRO送液ポンプ23dの駆動を継続した状態で第3のバルブV3を閉鎖し、第6のバルブV6を開放する。一方で、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は、第1のバルブV1、第3のバルブV3、第4のバルブV4、及び第7のバルブV7を閉鎖し、MF送液ポンプ21b及びRO送液ポンプ23dの駆動を停止する。
【0069】
第1濾過ユニット2Aの逆洗水供給制御及び第2濾過ユニット2Bの逆洗水受け入れ制御により、第1濾過ユニット2Aから第2濾過ユニット2Bへ逆洗水が流動する逆洗ライン31及び逆洗連絡ライン37の流路が開放される。そして、第1濾過ユニット2Aからの濾過水(逆洗水)は、RO送液ポンプ23dによって圧送され、逆洗連絡ライン37を流動して第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31に供給される。第2濾過ユニット2Bでは、逆洗ライン31で受け入れた逆洗水が連絡ライン23を逆流してMF膜モジュール3の2次側に供給され、MF膜3aを透過した逆洗水は逆洗水排出ライン25を流動して排出される。なお、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は、第8のバルブV8を開放すると共に、図示しないコンプレッサを駆動し、エアスクラビング用の空気をMF膜モジュール3の1次側に供給してMF膜モジュール3のエアスクラビングも同時に行う。
【0070】
ここで、第2濾過ユニット2Bの逆洗運転に伴う制御について更に詳しく説明する。濾過装置1Aの第1濾過ユニット2Aでは、流量制御、圧力制御といったMF−RO直結制御が行われている。具体的には、流量計23eによって検出された濾過水の流量データは、操作盤41の制御CPU(図示せず)に入力される。制御CPUは、流量計23eで検出された流量データに基づいてPID(Proportional Integral Derivative)演算を行い、その結果に基づいてMF送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、MF送液ポンプ21bのモータ回転数制御が実行され、MF膜モジュール3への原水の供給量が変動する。なお、MF送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態では濾過水の流量を25m3/hに維持するための出力演算である。
【0071】
また、圧力センサ23fで取得されたRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力データは、操作盤41の制御CPUに入力される。制御CPUは、圧力センサ23fで検出された圧力データに基づいてPID演算を行い、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、RO送液ポンプ23dのモータ回転数制御が実行され、RO送液ポンプ23dの吐出量が変動する。なお、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態ではRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力を水柱5mに維持するための出力演算である。
【0072】
上記のMF−RO直結制御を行うことで、例えば、加圧側であるMF膜モジュール3のMF膜差圧が大きくなってきた場合は、MF送液ポンプ21bの回転数が上昇して濾過水の流量が25m3/hで維持される。一方で、逆洗対象である第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3のMF膜差圧が大きくなってきた場合はRO送液ポンプ23dの回転数が上昇して吸い込み側の圧力を水柱5mで維持するのでRO送液ポンプ23dの吐出量(逆洗量)も25m3/hに継続して保たれる。これによって、RO送液ポンプ23dの吸い込み側でのキャビテーションの発生を防止できる。
【0073】
次に、濾過装置1Aは、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の逆洗運転を開始する(ステップS3)。第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の逆洗運転では、第1濾過ユニット2Aの操作盤41は逆洗水受け入れ制御を実行し、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は逆洗水供給制御を実行する。
【0074】
第1濾過ユニット2Aの逆洗水受け入れ制御及び第2濾過ユニット2Bの逆洗水供給制御により、第2濾過ユニット2Bから第1濾過ユニット2Aへ逆洗水が流動する逆洗ライン31及び逆洗連絡ライン37の流路は開放される。そして、第2濾過ユニット2Bからの濾過水(逆洗水)は(図9参照)、第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31に供給される。さらに、この逆洗水はMF膜モジュール3の2次側に供給され、MF膜3aを透過した逆洗水は逆洗水排出ライン25を流動して排出される。なお、第1濾過ユニット2Aでは、MF膜モジュール3のエアスクラビングも同時に行われる。
【0075】
濾過装置1Aは、交互逆洗処理が終了すると第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bのフラッシング処理を開始する(ステップS4)。ここで第1濾過ユニット2Aの操作盤41は、第2のバルブV2、及び第7のバルブV7を閉鎖し、また、第4のバルブV4は開放したままで第1のバルブV1を開放する。さらに、操作盤41は、MF送液ポンプ21bを駆動して原水をMF膜モジュール3の1次側に供給する。同様に、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は、第2のバルブV2、及び第6のバルブV6を閉鎖し、また、第1のバルブV1は開放したままで第4のバルブV4を開放する。さらに、操作盤41は、MF送液ポンプ21bの駆動を継続して原水をMF膜モジュール3の1次側に供給する。
【0076】
上記のフラッシング処理(図10参照)では、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の1次側と第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の1次側との両方に原水が供給され、MF膜モジュール3の1次側に残留する洗浄水や濁質などが洗い流される。以上のステップS1〜ステップS4までの処理を繰り返し実行することで濾過処理のための運転が行われる。
なお、前記フラッシング処理は、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとをそれぞれの逆洗工程の後に交互に行っても良い。これにより、逆洗時に浮遊した濁質物質を確実に除去できる。
【0077】
次に、本実施形態に係る濾過装置1Aの作用及び効果について説明する。濾過装置1Aでは、MF膜モジュール3から排出される濾過水はRO送液ポンプ23dによって圧送される。ここで、例えば、MF膜モジュール3からRO送液ポンプ23dまでの間を中間タンクなどで縁切りすることなく連続的に連絡すると、RO送液ポンプ23dの吸い込み側と吐出側とでバランスが崩れてしまった場合にRO送液ポンプ23dの吸い込み側でキャビテーションが発生してしまう虞がある。しかしながら濾過装置1AのRO送液ポンプ23dは、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながらMF膜モジュール3からの濾過水を圧送するため、キャビテーションの発生を効果的に防止でき、RO送液ポンプ23dで濾過水を圧送するための中間タンクなどが不要になる。さらに、濾過装置1Aでは、RO送液ポンプ23dが濾過水(逆洗水)の移送という機能にも兼用されるので、逆洗ポンプを別途設ける必要は無く設備負担が低減する。
【0078】
さらに、濾過装置1Aでは、例えば、第2濾過ユニット2Bが逆洗対象の場合、逆洗対象以外の第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3から排出された濾過水が、逆洗水として逆洗連絡ライン37を通り、第2濾過ユニット2Bに供給される。従って、第1、第2濾過ユニット2A,2Bそれぞれでは、逆洗専用の独立した逆洗配管や、これら逆洗配管の流路を開閉するバルブなどを省略でき、代わりに逆洗連絡ライン37を共有する形で第1、第2濾過ユニット2A,2Bそれぞれでの交互逆洗が可能になる。その結果として、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【0079】
さらに、濾過装置1Aの第1、第2濾過ユニット2A,2Bは、コンテナ7内にMF膜モジュール3やRO膜モジュール5を収容して搬送可能なユニットを構成しており、例えば、コンテナ7のサイズによって一台当りの水処理能力を定めて標準化または規格化を図ることも可能である。特に、濾過装置1Aでは、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とは連続的に連絡しており、両者の間に縁切りのための中間タンクなどは設けられていない。例えば、中間タンクなどを備えた態様では、処理能力に応じて中間タンクの容量を調整する必要があってコンテナ内という狭いエリア内に効率よく収めることが非常に難しく、標準化も困難である。しかしながら、濾過装置1Aでは、中間タンクなどは設けられておらず、逆洗専用の独立した逆洗配管なども不要なので標準化が容易になり、その結果として所望の水処理能力に応じた設備の増設なども容易になる。
【0080】
また、第1濾過ユニット2Aは、RO膜5aを組み込んだRO膜モジュール5の前工程にMF膜3aを組み込んだMF膜モジュール3を配置しており、第2濾過ユニット2Bも同様に、RO膜5aを組み込んだRO膜モジュール5の前工程にMF膜3aを組み込んだMF膜モジュール3を配置している。その結果、原水中の比較的粒径の大きな濁質は予めMF膜3aで除去されるのでRO膜5aの寿命を延ばすことができる。
【0081】
さらに、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとはそれぞれ複数のMF膜モジュール3を備えており、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の数と第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の数とは同数になっている。ここで、例えば、逆洗対象以外の第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の数が逆洗対象の第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の数よりも多い場合、第1濾過ユニット2Aでは、第2濾過ユニット2BでのMF膜モジュール3の数に合わせて逆洗用に利用される濾過水の流量を減らす必要がある。しかしながら、本実施形態によれば、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2BとのMF膜モジュール3の数は同数であるので逆洗時の濾過水の流量調整などの制御が簡便になり、シンプルな構成を実現する上で有効である。
(第2実施形態)
【0082】
次に、図11を参照して本発明の第2実施形態に係る濾過装置1Bについて説明する。なお、第2実施形態に係る濾過装置1Bは、第1実施形態に係る濾過装置1Aと同等の要素や部材等を備えており、第1実施形態と同等の要素や部材等については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図11では、二つのグループに分かれる複数のMF膜モジュール3のうち、一方のグループに属する一本を代表して示しており、また、他方のグループに属する一本を代表して示している。さらに、複数のRO膜モジュール5のうち、一本を代表して示している。
【0083】
本実施形態に係る濾過装置1Bは第1濾過ユニット2Cと第2濾過ユニット2Dとを備えており、第1濾過ユニット2Cと第2濾過ユニット2Dとは実質的に同一の構成からなる。以下、第1濾過ユニット2Cを中心に説明する。
【0084】
第1濾過ユニット2Cは、第1実施形態に係る第1濾過ユニット2Aとは異なり、連絡ライン23の下流側管路23bから分岐する逆洗ライン31は設けられていない。代わりに、濃縮水排出ライン29から分岐して間接的にMF膜モジュール3の2次側に連絡する逆洗ライン51が設けられている。逆洗ライン51は所定の管径を有する管路51aを備えており、管路51a内を流動する逆洗水(濾過水)の上流側の端部は濃縮水排出ライン29の管路29aに接続され、下流側の端部は連絡ライン23の上流側管路23aに接続されている。また、逆洗ライン51には、第1実施形態に係る逆洗ライン31と同様に、流路を開閉する第6のバルブV6及び第7のバルブV7が設けられおり、第6のバルブV6と第7のバルブV7との間で逆洗連絡ライン37の管路37aに接続されている。以上の逆洗ライン51の構成により、RO送液ポンプ23dから吐出された濾過水が流動する下流側とMF膜モジュール3の2次側とを連絡する態様を具現化している。
【0085】
本実施形態に係る濾過装置1Bによれば、第1実施形態に係る濾過装置1Aと同様の効果を期待でき、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
(第3実施形態)
【0086】
次に、図12を参照して本発明の第3実施形態に係る濾過装置1Cについて説明する。なお、第3実施形態に係る濾過装置1Cは、第1実施形態に係る濾過装置1Aと同等の要素や部材等を備えており、第1実施形態と同等の要素や部材等については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0087】
濾過装置1Cは、第1濾過ユニット2E、第2濾過ユニット2F、第3濾過ユニット2G、及び第4濾過ユニット2Hを備えている。さらに、各濾過ユニット2E〜2Hそれぞれの逆洗ライン31は、逆洗連絡ライン3761によって連絡されている。
【0088】
本実施形態に係る濾過装置1Cでは、例えば、第3及び第4の濾過ユニット2G,2Hが逆洗対象の場合、第1及び第2濾過ユニット2E,2Fからの濾過水が逆洗水として第3及び第4の濾過ユニット2G,2Hに供給される。
【0089】
本実施形態に係る濾過装置1Cによれば、第1実施形態に係る濾過装置1Aまたは第2実施形態に係る濾過装置1Bと同様に逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【0090】
以上、本発明を各実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記の各実施形態のみに限定されるものではない。例えば、濾過ユニットの数は二基または四基に限定されず、三基または五基以上であってもよく、必要となる2次透過水の流量などに応じて適宜に選択できる。また、前段膜はMF膜(精密濾過膜)に限定されず、限外濾過膜などであってもよく、また、後段膜はRO膜(逆浸透膜)に限定されず、前段膜よりも膜分離性能の高い膜を適宜に用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
1A,1B,1C…濾過装置、2A,2C,2E…第1濾過ユニット、2B,2D,2F…第2濾過ユニット、2G…第3濾過ユニット、2H…第4濾過ユニット、3…MF膜モジュール(前段膜モジュール)、3a…MF膜(前段膜)、5…RO膜モジュール(後段膜モジュール)、5a…RO膜、23…連絡ライン、23d…RO送液ポンプ(濾過液圧送ポンプ)、31…逆洗ライン、37…逆洗連絡ライン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密ろ過膜や限外ろ過膜などの膜によって原液を濾過して濾過液を得る濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密ろ過膜や限外ろ過膜などの膜モジュールを利用した膜濾過装置が知られている。膜濾過装置では、膜モジュールの目詰まりを解消するため、膜モジュールの2次側から1次側に向けて濾過液を逆流させて膜洗浄する逆洗が行われる。例えば、特許文献1には、外圧式中空糸膜モジュールにおいて逆洗が行われる旨の記載がある。この種の膜モジュールを備えた膜濾過装置の場合、通常は濾過水を逆洗タンクなどで蓄えておき、逆洗タンクに蓄えた濾過水を膜モジュールの2次側に供給することで逆洗が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−220446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら逆洗タンクや逆洗ポンプを要する従来の膜濾過装置では、敷地内での占有面積が大きくなり易く、所定の敷地内で水処理能力を高めるための効果的な構築が困難であった。特に、精密濾過膜によって前処理された濾過水を逆浸透膜で2次処理するような膜濾過装置などでは、逆洗タンクや逆洗ポンプの設置に伴う配管の構成が複雑で入り組んだものになり易く、その結果、流路を開閉するバルブの数なども増大して設備負荷の増大を招集した。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原液を濾過する前段膜を有する複数の前段膜モジュールと、前段膜よりも膜分離性能の高い後段膜を有する後段膜モジュールとが組み込まれた濾過ユニットを備え、原液を前段膜モジュールで濾過し、前段膜モジュールから排出された濾過液を後段膜モジュールで濾過する濾過装置において、濾過ユニットを複数備え、濾過ユニットは、前段膜モジュールの2次側と後段膜モジュールの1次側とを連絡すると共に、濾過液が流動する連絡ラインと、連絡ラインに設けられると共に、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながら濾過液を圧送する濾過液圧送ポンプと、濾過液圧送ポンプから吐出された濾過液が流動する下流側と前段膜モジュールの2次側とを連絡する逆洗ラインと、を有し、複数の濾過ユニットそれぞれの逆洗ライン同士は濾過液が流動する逆洗連絡ラインを介して連絡され、逆洗時には逆洗対象以外の濾過ユニットの前段膜モジュールから排出された濾過液が逆洗連絡ラインを通って逆洗対象の濾過ユニットに供給されることを特徴とする。
【0007】
本発明では、前段膜モジュールから排出される濾過液は濾過液圧送ポンプによって圧送される。ここで、例えば、前段膜モジュールから濾過液圧送ポンプまでの間を中間タンクなどで縁切りすることなく連続的に連絡すると、濾過液圧送ポンプの吸い込み側と吐出側とでバランスが崩れてしまった場合に濾過液圧送ポンプの吸い込み側でキャビテーションが発生してしまう虞がある。しかしながら本発明に係る濾過液圧送ポンプは、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながら前段膜モジュールからの濾過液を圧送するため、キャビテーションの発生を効果的に防止でき、濾過液圧送ポンプで濾過液を圧送するための中間タンクなどが不要になる。さらに、本発明では、濾過液圧送ポンプが逆洗液の移送という機能にも兼用されるので、逆洗ポンプを別途設ける必要は無く設備負担が低減する。
さらに、本発明では、逆洗対象以外の濾過ユニットの前段膜モジュールから排出された濾過液が、逆洗液として逆洗連絡ラインを通り、逆洗対象の濾過ユニットに供給される。従って、濾過ユニットそれぞれでは、逆洗専用の独立した逆洗配管や、これら逆洗配管の流路を開閉するバルブなどを省略でき、代わりに逆洗連絡ラインを共有する形で複数の濾過ユニットそれぞれで交互に逆洗を行うことが可能になる。その結果として、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【0008】
さらに、前段膜は精密濾過膜であり、後段膜は逆浸透膜であると好適である。原液中の比較的粒径の大きな濁質は予め精密濾過膜で除去されるので逆浸透膜の寿命を延ばすことができる。
【0009】
さらに、濾過ユニットは複数の前段膜モジュールを備えており、濾過ユニットそれぞれの前段膜モジュールの数は同数であると好適である。逆洗対象以外の濾過ユニットの前段膜モジュールの数が逆洗対象の濾過ユニットの前段膜モジュールよりも多い場合、逆洗対象となる前段膜モジュールの数に合わせて逆洗用に利用される濾過液の流量を減らす必要がある。しかしながら、上記構成によれば、濾過ユニットそれぞれの前段膜モジュールの数は同数であるので逆洗時の濾過液の流量調整などの制御が簡便になり、シンプルな構成を実現する上で有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る濾過装置を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態に係る濾過装置の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】操作盤の機能的構成を模式的に示す図である。
【図6】本実施形態に係る濾過装置の濾過処理に係る手順を示すフローチャートである。
【図7】濾過運転時の流体の流れを示す図である。
【図8】第2濾過ユニットの逆洗運転時の流体の流れを示す図である。
【図9】第1濾過ユニットの逆洗運転時の流体の流れを示す図である。
【図10】第1,第2ユニットのフラッシング処理の流体の流れを示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る濾過装置を模式的に示す図であるある。
【図12】本発明の第3実施形態に係る濾過装置を模式的に示す図であるある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態に係る濾過装置について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1〜図5に示されるように、濾過装置1Aは、生活廃水、工業用水、工場廃水または河川水といった原水(原液)を受け入れ、膜濾過によって浄化処理する装置である。濾過装置1Aは、複数の濾過ユニット2A,2Bを備えており、濾過ユニット2A,2Bそれぞれには、複数のMF膜モジュール3と複数のRO膜モジュール5とが組み込まれている。濾過ユニット2A,2Bに受け入れられた原水は、最初にMF膜モジュール3に供給されて粒径の比較的大きな濁質が除去され、次に、RO膜モジュール5に供給されて2次処理が施される。濾過ユニット2A,2Bは、複数のMF膜モジュール3と複数のRO膜モジュール5とをコンテナ7内に収容することで、搬送可能な態様を実現している。
【0014】
本実施形態に係る濾過装置1Aは、二台の濾過ユニット2A,2Bを備えており、一方の濾過ユニット(以下、「第1濾過ユニット」という)2Aと他方の濾過ユニット(以下、「第2濾過ユニット」という)2Bとは同一の要素を備えている。以下の説明では、第1濾過ユニット2Aを中心に詳細に説明し、第2濾過ユニット2Bの説明は一部省略する。
【0015】
第1濾過ユニット2Aは、MF膜モジュール3やRO膜モジュール5を収容するコンテナ7を備えている。コンテナ7は、通常貨物輸送に使われる箱状の海上コンテナ7であり、コンテナ7の底部に配置された平板状のベース7aと、ベース7aに取付けられた蓋部7bとから構成されて略直方体形状になっている。蓋部7bの長手方向の一端には、ドアが設けられている。コンテナ7の全長は、約6m(20フィート)又は12m(40フィート)の各態様を採用できる。
【0016】
第1濾過ユニット2Aは、複数のMF膜モジュール3を備えている。MF膜モジュール3は、中空糸膜からなるMF膜(精密濾過膜)3aと、多数本のMF膜3aの束を収容する略円筒状のケース3aとを備えており、MF膜3aの束はケース3aの両端付近に設けられた接着層を介してケース3aに固定されている。
【0017】
MF膜モジュール3は、MF膜3aを挟んで1次側の領域UAと2次側の領域DAとに区分され、1次側は原水を受け入れる上流側の領域UAであり、2次側は、MF膜3aを透過した濾過水の流出先となる下流側の領域DAである。そして、MF膜モジュール3の一方の端部には1次側に連通する原水導入部3cが設けられている。また、MF膜モジュール3の他方の端部には、2次側に連通する濾過水排出部3dと、1次側に連通してMF膜3aを透過しなかった原水や逆洗水が排出される洗浄水排出部3eとが設けられている。
【0018】
複数のMF膜モジュール3は、同数の二つのグループに分かれて設置されている。本実施形態では、計14本のMF膜モジュール3が7本ずつに分かれており、各グループに属する複数のMF膜モジュール3は二列に並んで配置されている。なお、MF膜モジュール3の本数などは、所望の水処理能力やコンテナ7の大きさなどに対応して適宜に選択することができる。
【0019】
一方のグループに属するMF膜モジュール3を中心に説明すると、MF膜モジュール3は、上側に配置された濾過水排出ヘッダ管9と下側に配置された原水導入ヘッダ管11との間に立設されている。原水導入ヘッダ管11は、コンテナ7の下側、すなわちベース7aに沿って設置されている。原水導入ヘッダ管11には、MF膜モジュール3の本数に対応した複数の枝管が設けられており、MF膜モジュール3の原水導入部3cは継手管を介して原水導入ヘッダ管11の枝管に接続されている。
【0020】
また、濾過水排出ヘッダ管9はコンテナ7の上側、すなわち蓋部7bの天井に沿って設置されている。濾過水排出ヘッダ管9には、MF膜モジュール3の本数に対応した複数の枝管が設けられており、MF膜モジュール3の濾過水排出部3dは継手管を介して濾過水排出ヘッダ管9の枝管に接続されている。
【0021】
また、MF膜モジュール3の上側には、濾過水排出ヘッダ管9に並んで洗浄水排出ヘッダ管13が設置されている。洗浄水排出ヘッダ管13には、MF膜モジュール3の本数に対応した複数の枝管が設けられており、MF膜モジュール3の洗浄水排出部3eは、継手管を介して洗浄水排出ヘッダ管13の枝管に接続されている。
【0022】
図1、図2及び図4に示されるように、RO膜モジュール5は、RO膜(逆浸透膜)5aと、複数のRO膜5aが一列に並んで収容される略円筒状のケース(「ベッセル」ともいう)5bとを備えている。RO膜モジュール5は、RO膜5aを挟んで1次側の領域UAと2次側の領域DAとに区分される。1次側は濾過液を受け入れる上流側の領域UAであり、2次側はRO膜5aを透過した2次透過水の流出先となる下流側の領域DAである。
【0023】
RO膜モジュール5の一方の端部には、1次側に連通する濾過水導入部5cが設けられており、他方の端部には、2次側に連通する透過水排出部5dと、1次側に連通する濃縮水排出部5eが設けられている。濃縮水排出部5eからは、RO膜5aを透過しなかった濾過水が排出される。
【0024】
複数のRO膜モジュール5は、コンテナ7の長手方向に沿うように横になった状態で架台15に固定されている。複数のRO膜モジュール5同士の連結態様は様々な形態を採用できるが、本実施の形態に係る複数のRO膜モジュール5は多段となるように連結されている。具体的に説明すると、1段目には4本のRO膜モジュール5が配置され、2段目には2本のRO膜モジュール5が配置され、3段目には1本のRO膜モジュール5が配置されている。
【0025】
1段目のRO膜モジュール5は、濾過水導入部5cが上流側ヘッダ管17に接続されており、透過水排出部5dが下流側ヘッダ管19に接続されている。また、2段目のRO膜モジュール5の濾過水導入部5cは1段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eに連絡し、透過水排出部5dは下流側ヘッダ管19に接続されている。また、3段目のRO膜モジュール5の濾過水導入部5cは2段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eに連絡し、透過水排出部5dは下流側ヘッダ管19に接続されている。また、3段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eは濾過水を排出する管路に接続されている。このような連結態様にすることで、2次透過水の流量を増やすことが可能になる。
【0026】
次に濾過装置1Aの配管の構成について図1を参照して説明する。なお、図1では、二つのグループに分かれる複数のMF膜モジュール3のうち、一方のグループに属する一本を代表して示しており、また、他方のグループに属する一本を代表して示している。さらに、複数のRO膜モジュール5のうち、一本を代表して示している。
【0027】
濾過装置1Aの第1濾過ユニット2Aには、図示しない原水貯留タンクから原水を受け入れる導入ライン21が設けられている。導入ライン21は、所定の管径を有する管路21aを備えて構成されている。導入ライン21の管路21aは二方向に分岐し、各分岐部は、MF膜モジュール3に連絡する原水導入ヘッダ管11にそれぞれ接続されている。
【0028】
また、導入ライン21には、MF送液ポンプ(原液供給ポンプ)21bが設置されており、MF送液ポンプ21bによって原水がMF膜モジュール3に所定流量で供給される。また、導入ライン21の各分岐部には流路を開閉する第1のバルブV1が設けられている。第1のバルブV1は、操作盤(制御手段)41による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には手動弁であってもよい。
【0029】
また、第1濾過ユニット2Aには、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とを連絡する連絡ライン23が設けられており、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とは、中間タンクなどを介せずに連絡ライン23によって直接に接続されている。
【0030】
連絡ライン23は、所定の管径を有する管路23a,23bと、濾過水を所定の高圧でRO膜モジュール5に圧送するRO送液ポンプ(濾過液圧送ポンプ)23dとを備えており、MF膜モジュール3で濾過された濾過水はRO送液ポンプ23dによって直接にRO膜モジュール5に供給される。
【0031】
連絡ライン23の管路23a,23bは、RO送液ポンプ23dを挟んで上流側管路23aと下流側管路23aとに分かれている。上流側管路23aは、二つのグループに分かれているMF膜モジュール3に対応して上流側の一部分が二方向に分岐しており、各分岐部はMF膜モジュール3に連絡する濾過水排出ヘッダ管9にそれぞれ接続されている。各分岐部には流路を開閉する第2のバルブV2が設けられている。第2のバルブV2は、操作盤(制御手段)41による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0032】
また、上流側管路23aには、管路内を流れる濾過水の流量を測定する流量計23eが設けられている。また、上流側管路23aの下流端はRO送液ポンプ23dの吸い込み部に接続されており、さらにRO送液ポンプ23dの吸い込み部の近傍には、RO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力を検出する圧力センサ23fが設けられている。
【0033】
連絡ライン23の下流側管路23aは、上流端がRO送液ポンプ23dの吐出部に接続され、下流端がRO膜モジュール5に連絡する上流側ヘッダ管17に接続されている。また、下流側管路23aには、流路を開閉する第3のバルブV3が設けられている。第3のバルブV3は、操作盤(制御手段)41による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0034】
また、第1濾過ユニット2Aには、MF膜モジュール3から逆洗水または原水を排出する逆洗水排出ライン25が設けられている。逆洗水排出ライン25は、所定の管径を有する管路25aを備えて構成されている。逆洗水排出ライン25の上流側の管路は二方向に分岐し、各分岐部はMF膜モジュール3の1次側に連絡する洗浄水排出ヘッダ管13にそれぞれ接続されている。また、各分岐部には流路を開放する第4のバルブV4が設けられている。そして、逆洗水排出ライン25の下流側は、図示しない廃液タンクに連絡している。なお、逆洗の際には、逆洗水排出ライン25を逆洗水が流動して排出されるが、フラッシング処理の際には、原水が流動して排出される。
【0035】
また、第1濾過ユニット2Aには、RO膜モジュール5を透過した2次透過水を排出する透過水排出ライン27と、RO膜モジュール5の1次側と廃液タンク30とを連絡する濃縮水排出ライン29とが設けられている。
【0036】
透過水排出ライン27は、下流側ヘッダ管19を介してRO膜モジュール5の2次側に連絡している。透過水排出ライン27は、所定の管径を有する管路27aと、管路27a内を流れる2次透過水の流量を測定する流量計27bと、流路を開閉する第5のバルブV5とを有する。第5のバルブV5は、操作盤による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。RO膜モジュール5で濾過された2次透過水は、透過水排出ライン27を通ってコンテナ7外に送り出される。
【0037】
濃縮水排出ライン29は所定の管径を有する管路29aを備えて構成されている。濃縮水排出ライン29の管路29aは、3段目(最終段目)のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eに接続しており、その結果として、RO膜モジュール5の1次側に連通する態様を実現している。多段に配置されたRO膜モジュール5において、いずれのRO膜5aも透過しなかった濃縮水は、3段目のRO膜モジュール5の濃縮水排出部5eを介して濃縮水排出ライン29に排出される。
【0038】
また、濃縮水排出ライン29には流路を所定の開度に調整可能な制御バルブVaが設けられている。濾過運転時には、制御バルブVaによって開度を絞るとRO膜モジュール5から流出する2次透過水の流量は僅かに増加し、逆に開くと透過水の流量は僅かに減少する。従って、制御バルブVaによって開度を調整することで、2次透過水の流量の微調整が可能になる。また、制御バルブVaよりも下流側には、必要に応じて管路29a内を流れる液体の流量を検出する流量計29bが設けられている。
【0039】
また、第1濾過ユニット2Aには、連絡ライン23から分岐して間接的にMF膜モジュール3の2次側に連絡する逆洗ライン31が設けられている。逆洗ライン31は、所定の管径を有する管路31aを備えている。逆洗ライン31の管路31aは、濾過水が流動する上流側の端部が連絡ライン23の下流側管路23aに接続され、その接続部位はRO送液ポンプ23dの吐出部と第3のバルブV3との間に設けられている。また、下流側の端部は、連絡ライン23の上流側管路23aに接続され、その接続部位はRO送液ポンプ23dの吸い込み部と流量計23eとの間に設けられている。
【0040】
また、逆洗ライン31には、管路31a内の流路を開閉する第6のバルブV6及び第7のバルブV7が設けられている。以上の逆洗ライン31の構成により、RO送液ポンプ23dから吐出された濾過水が流動する下流側とMF膜モジュール3の2次側とを連絡する態様を具現化している。
【0041】
また、第1濾過ユニット2Aは、MF膜モジュール3にエアスクラビング用の圧縮空気を供給する高圧空気供給部33を備えている。高圧空気供給部33は、圧縮空気を送り出すコンプレッサ(図示省略)と、コンプレッサによって送り出された圧縮空気をMF膜モジュール3の1次側に供給する高圧空気供給管33aとを備えている。
【0042】
高圧空気供給管33aの下流部分はMF膜モジュール3の本数に対応して複数の枝管に分岐している。高圧空気供給管33aの各枝管は複数のMF膜モジュール3それぞれの1次側に連通するように、MF膜モジュール3の下部に接続されている。また、高圧空気供給管33aには、MF膜モジュール3側に連絡する枝管の流路を開閉する第8のバルブV8が設けられている。第8のバルブV8は、操作盤による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0043】
また、第1濾過ユニット2Aは、例えば、NaOH貯槽35a、スケール防止剤貯槽35b、還元剤貯槽35c、NaClO貯槽35dなどの薬液槽と、各薬液槽35a〜35dに対応した送液ポンプ(図示省略)と備えている。還元剤貯槽35cに貯留されるSBS(sodium bisulfite)やスケール防止剤貯槽に貯留される及びスケール防止剤は、RO膜モジュール5を洗浄するときに使用される。また、NaClO貯槽35dに貯留されるNaClO溶液は、MF膜モジュール3を逆洗する際に使用されるものである。
【0044】
以上、第1濾過ユニット2Aにおける配管構成について説明したが、第2濾過ユニット2Bも同様な構成を備えている。そして、第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31と第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31とは、逆洗連絡ライン37を介して連絡している。
【0045】
逆洗連絡ライン37は、所定の管径を有する管路37aを備えて構成されている。管路37aの一方の端部は、第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31の管路31aに接続され、他方の端部は第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31の管路31aに接続されている。また、逆洗連絡ライン37の管路37aと第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31の管路31aとの接続部位は、第6のバルブV6と第7のバルブV7との間であり、同様に、逆洗連絡ライン37の管路37aと第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31の管路31aとの接続部位は、第6のバルブV6と第7のバルブV7との間である。
【0046】
また、逆洗連絡ライン37の管路37aには、管路37aにかかる圧を抜くために流路を開閉する第9のバルブV9が設けられている。第9のバルブV9は、操作盤による自動的な制御、例えばシーケンス制御を想定して電動弁などを採用できるが、手動での切り替えを行う場合には、手動弁であってもよい。
【0047】
また、濾過装置1Aは、通常の濾過運転に加えて、逆洗運転を行うための流路の開閉制御などを行う操作盤41を備えている。操作盤41は、制御CPU(Central Processing Unit)、記憶装置(Strage Unit)、入力装置(Input Device)及び出力装置(Output Device)などを備えて構成されており、所定のプログラムに従って動作することで、バルブ制御部43、MFポンプ制御部45、ROポンプ制御部47、2次透過水制御部49、及び逆洗制御部50としての各機能を実現する(図5参照)。
【0048】
なお、本実施形態に係る操作盤41は、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bの双方に設けられ、第1濾過ユニット2A側の操作盤41と第2濾過ユニット2B側の操作盤41とは制御信号の送受信が可能となるように有線または無線によって互いに接続されている。なお、本発明を具現化する態様としては、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bそれぞれに操作盤41を設ける態様に限定されず、第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bのどちらか一方のみに操作盤41を設け、この操作盤41で第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bの両方の統一的な制御を行うようにしてもよい。また、本実施形態では、例えば、第1濾過ユニット2A側の操作盤41が第1濾過ユニット2Aにおけるバルブ制御部43、MFポンプ制御部45、ROポンプ制御部47、2次透過水制御部49、逆洗制御部50の全ての機能を実現する態様を想定しているが、複数の制御装置(制御手段)を分散して配置し、制御装置それぞれで各機能を分担させるようにしてもよい。
【0049】
第1濾過ユニット2A側の操作盤41と第2濾過ユニット2B側の操作盤41とは濾過運転時に実質的に同一の動作制御を実行し、逆洗運転時には互いに調整を図りながら相互で異なる動作制御を実行する。以下、第1濾過ユニット2A側の操作盤41を主体的に説明して第2濾過ユニット2B側の操作盤41については重複する説明を省略する。
【0050】
操作盤41は、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第3のバルブV3に制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。バルブ制御部43として機能する操作盤41から第1〜第3のバルブV1〜V3へ制御信号が送信されると、その制御信号を第1〜第3のバルブV1〜V3が受け付け、そして第1〜第3のバルブV1〜V3は受け付けた制御信号に従って流路を開放し、または閉鎖する。
【0051】
また、操作盤41は、連絡ライン23に設けられた流量計23eに有線または無線によって接続されており、流量計23eで検出された流量データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、MF送液ポンプ21bに制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0052】
MFポンプ制御部45として機能する操作盤41は、流量計23eで検出された流量データを監視しており、流量データが所定の閾値(例えば25m3/hを中心として一定の誤差範囲)よりも低い場合には、MF送液ポンプ21bを高速運転にして流量を増やし、流量データが所定の閾値よりも高い場合には、MF送液ポンプ21bを低速運転にして流量を減らす。その結果、MFポンプ制御部45は、連絡ライン23を通過する濾過水の流量を所定の設定流量に保持する自動制御を行い、その結果として、所定流量の原水をMF膜モジュール3及び第2MF膜モジュール3の少なくとも一方に供給する。なお、濾過水の流量設定は、オペレータなどによる操作盤41の入力操作によって実行され、入力操作を受け付けた操作盤41は、入力値を濾過水の流量の閾値としてメモリなどに設定登録する。
【0053】
また、操作盤41は、連絡ライン23に設けられた圧力センサ23fに有線または無線によって接続されており、圧力センサ23fで検出された圧力データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、RO送液ポンプ23dに制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0054】
ROポンプ制御部47として機能する操作盤41は、圧力センサ23fで検出された圧力データを監視しており、圧力データが所定の閾値(例えば水柱5mを中心として一定の誤差範囲)よりも低い場合には、RO送液ポンプ23dを低速運転にして圧送流量を減らし、圧力データが所定の閾値よりも高い場合には、RO送液ポンプ23dを高速運転にして圧送流量を増やす。その結果、ROポンプ制御部47によって制御されたRO送液ポンプ23dは、吸い込み部側での圧力を所定の設定圧力に保持するように自動制御を行う。なお、RO送液ポンプ23dの吸い込み部側での圧力設定は、オペレータなどによる操作盤41の入力操作によって実行され、入力操作を受け付けた操作盤41は、入力値をRO送液ポンプ23dの吸い込み部側での圧力の閾値としてメモリなどに設定登録する。
【0055】
また、操作盤41は、透過水排出ライン27に設けられた流量計27bに有線または無線によって接続されており、流量計27bで検出された流量データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、濃縮水排出ライン29に設けられた流量計29bに有線または無線によって接続されており、流量計29bで検出された流量データを取得可能に構成されている。また、操作盤41は、透過水排出ライン27に設けられた第5のバルブV5及び濃縮水排出ライン29に設けられた制御バルブVaに制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0056】
2次透過水制御部49として機能する操作盤41は、透過水排出ライン27の流量計27bで検出された流量データと必要に応じて濃縮水排出ライン29の流量計29bで検出された流量データとを監視している。そして操作盤41は、透過水排出ライン27の流量計27bで検出された流量データが所定の設定流量となるように保持する自動制御を行う。なお、2次透過水の設定流量は、オペレータなどによる操作盤41の入力操作によって実行され、入力操作を受け付けた操作盤41は、入力値を2次透過水の流量の閾値としてメモリなどに設定登録する。
【0057】
また、操作盤41は、逆洗ライン31に設けられた第6のバルブV6及び第7のバルブV7に制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。また、操作盤41は、逆洗水排出ライン25に設けられた第4のバルブV4、高圧空気供給部33に設けられた第8のバルブV8に制御信号を送受信可能となるように有線または無線によって接続されている。
【0058】
逆洗制御部50として機能する操作盤41は、第1濾過ユニット2Aが逆洗対象となる場合、第1のバルブV1、第3のバルブV3、第5のバルブV5、第6のバルブV6、及び第9のバルブV9を閉鎖し、第2のバルブV2、第4のバルブV4、第7のバルブV7及び第8のバルブV8を開放して第2濾過ユニット2Bから供給された濾過水を逆洗水として受け入れる。さらに操作盤41は、逆洗水をMF膜モジュール3の2次側に供給してMF膜3aを逆洗し、MF膜3aを透過した逆洗水を逆洗水排出ライン25から排出させる。一方で、操作盤41は、第1濾過ユニット2Aが逆洗対象以外となる場合、第3のバルブV3、第4のバルブV4、第5のバルブV5、第7のバルブV7、及び第8のバルブV8を閉鎖し、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第6のバルブV6、及び第9のバルブV9を開放し、MF膜モジュール3からの濾過水を逆洗連絡ライン37に送り込む。
【0059】
次に、本実施形態に係る濾過装置1Aを用いた処理フローについて図6〜図9を参照して説明する。図6は、濾過装置1Aの運転手順を示すフローチャートである。また、図7は、濾過運転を行っている状態での液体の流れを示す図であり、図8は第2濾過ユニット2Bの逆洗処理を行っている状態での液体の流れを示す図であり、図9は第1濾過ユニット2Aの逆洗処理を行っている状態での液体の流れを示す図である。また、図10は、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとの両方にフラッシング処理を施している状態での液体の流れを示す図である。
【0060】
濾過装置1Aを運転する際には、初期設定として濾過装置1Aの処理能力や要求性能などに応じた設定値を入力する必要がある。本実施形態では、例えば、通常の濾過が27分、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の逆洗が1分、第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の逆洗が1分、そして第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3と第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3とのフラッシング処理が1分の計30分の運転が行われ、その運転を行うための入力操作がオペレータによって行われる。更に、濾過水の設定流量は25m3/h、RO送液ポンプ23dの吸い込み側の設定圧力は水柱5m、2次濾過水の設定流量は20m3/hというデータがオペレータの操作入力によって設定される。
【0061】
図6に示されるように、原水の濾過処理を開始すると、操作盤41は、通常の濾過運転を開始する(ステップS1)。ここで、操作盤41(図1及び図7参照)は、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第3のバルブV3、第5のバルブV5を開放し、第4のバルブV4、第6のバルブV6、第7のバルブV7、第8のバルブV8を閉鎖する。以上のバルブ制御により、導入ライン21、連絡ライン23、透過水排出ライン27、及び濃縮水排出ライン29の流路は開放された状態になり、逆洗ライン31、逆洗連絡ライン37及び逆洗水排出ライン25の流路は閉鎖された状態になる。
【0062】
次に、MF送液ポンプ21bを駆動し、圧力センサ23fで検出された圧力データが所定圧力(水柱5m)まで到達するとRO送液ポンプ23dを駆動してRO膜モジュール5に濾過水を供給する。また、RO膜モジュール5から排出される2次透過水の流量が所定の設定流量(20m3/h)を保持するように制御バルブVaの開度を微調整する。
【0063】
通常の濾過運転について更に詳しく説明する。濾過装置1Aでは、流量制御、圧力制御、流量制御といったMF−RO直結制御が行われている。具体的には、流量計23eによって検出された濾過水の流量データは、操作盤41の制御CPU(図示せず)に入力される。制御CPUは、流量計23eで検出された流量データに基づいてPID(Proportional Integral Derivative)演算を行い、その結果に基づいてMF送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、MF送液ポンプ21bのモータ回転数制御が実行され、MF膜モジュール3への原水の供給量が変動する。なお、MF送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態では濾過水の流量を25m3/hに維持するための出力演算である。
【0064】
また、圧力センサ23fで取得されたRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力データは、操作盤41の制御CPUに入力される。制御CPUは、圧力センサ23fで検出された圧力データに基づいてPID演算を行い、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、RO送液ポンプ23dのモータ回転数制御が実行され、RO送液ポンプ23dの吐出量が変動する。なお、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態ではRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力を水柱5mに維持するための出力演算である。
【0065】
また、透過水排出ライン27に設けられた流量計27bによって検出された2次濾過水の流量データは、操作盤41の制御CPUに入力される。制御CPUは、流量計27bで検出された流量データに基づいてPID演算を行い、その結果に基づいて制御バルブVaの開度制御を行う。これによって、RO膜モジュール5から排出される濃縮水の流量が変動し、これに伴って2次透過水の流量が変動する。なお、制御バルブVaの開度制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態では2次透過水の流量を20m3/hに維持するための出力演算である。
【0066】
上記のMF−RO直結制御を行うことで、例えば、MF膜差圧が大きくなってきた場合は、MF送液ポンプ21bの回転数が上昇して濾過水の流量が25m3/hで維持され、RO膜差圧が大きくなってきた場合は、RO送液ポンプ23dの回転数が上昇して2次透過水の流量が20m3/h(濃縮水の流量5m3/h)で維持される。従って、RO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力が水柱5mで安定している状態(すなわち、押し込み流量とRO送液ポンプ23dの引込み流量がバランスしている状態)を継続でき、これによって、RO送液ポンプ23dの吸い込み側でのキャビテーションの発生を防止できる。
【0067】
上述の濾過運転時間(27分)が経過すると、濾過装置1Aは、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとの間での交互逆洗運転を開始する。なお、最初の逆洗対象は第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3であり、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3は逆洗対象以外となる。
【0068】
第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の逆洗運転を開始すると(ステップS2)、第1濾過ユニット2Aの操作盤41は逆洗水供給制御を実行し、一方で、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は逆洗水受け入れ制御を実行する。具体的には、第1濾過ユニット2Aの操作盤41(図1及び図8参照)は、MF送液ポンプ21b及びRO送液ポンプ23dの駆動を継続した状態で第3のバルブV3を閉鎖し、第6のバルブV6を開放する。一方で、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は、第1のバルブV1、第3のバルブV3、第4のバルブV4、及び第7のバルブV7を閉鎖し、MF送液ポンプ21b及びRO送液ポンプ23dの駆動を停止する。
【0069】
第1濾過ユニット2Aの逆洗水供給制御及び第2濾過ユニット2Bの逆洗水受け入れ制御により、第1濾過ユニット2Aから第2濾過ユニット2Bへ逆洗水が流動する逆洗ライン31及び逆洗連絡ライン37の流路が開放される。そして、第1濾過ユニット2Aからの濾過水(逆洗水)は、RO送液ポンプ23dによって圧送され、逆洗連絡ライン37を流動して第2濾過ユニット2Bの逆洗ライン31に供給される。第2濾過ユニット2Bでは、逆洗ライン31で受け入れた逆洗水が連絡ライン23を逆流してMF膜モジュール3の2次側に供給され、MF膜3aを透過した逆洗水は逆洗水排出ライン25を流動して排出される。なお、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は、第8のバルブV8を開放すると共に、図示しないコンプレッサを駆動し、エアスクラビング用の空気をMF膜モジュール3の1次側に供給してMF膜モジュール3のエアスクラビングも同時に行う。
【0070】
ここで、第2濾過ユニット2Bの逆洗運転に伴う制御について更に詳しく説明する。濾過装置1Aの第1濾過ユニット2Aでは、流量制御、圧力制御といったMF−RO直結制御が行われている。具体的には、流量計23eによって検出された濾過水の流量データは、操作盤41の制御CPU(図示せず)に入力される。制御CPUは、流量計23eで検出された流量データに基づいてPID(Proportional Integral Derivative)演算を行い、その結果に基づいてMF送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、MF送液ポンプ21bのモータ回転数制御が実行され、MF膜モジュール3への原水の供給量が変動する。なお、MF送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態では濾過水の流量を25m3/hに維持するための出力演算である。
【0071】
また、圧力センサ23fで取得されたRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力データは、操作盤41の制御CPUに入力される。制御CPUは、圧力センサ23fで検出された圧力データに基づいてPID演算を行い、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御を行う。これによって、RO送液ポンプ23dのモータ回転数制御が実行され、RO送液ポンプ23dの吐出量が変動する。なお、RO送液ポンプ用インバータ周波数制御のためのPID演算としては、例えば設定値との偏差による出力演算が挙げられ、本実施形態ではRO送液ポンプ23dの吸い込み側の圧力を水柱5mに維持するための出力演算である。
【0072】
上記のMF−RO直結制御を行うことで、例えば、加圧側であるMF膜モジュール3のMF膜差圧が大きくなってきた場合は、MF送液ポンプ21bの回転数が上昇して濾過水の流量が25m3/hで維持される。一方で、逆洗対象である第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3のMF膜差圧が大きくなってきた場合はRO送液ポンプ23dの回転数が上昇して吸い込み側の圧力を水柱5mで維持するのでRO送液ポンプ23dの吐出量(逆洗量)も25m3/hに継続して保たれる。これによって、RO送液ポンプ23dの吸い込み側でのキャビテーションの発生を防止できる。
【0073】
次に、濾過装置1Aは、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の逆洗運転を開始する(ステップS3)。第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の逆洗運転では、第1濾過ユニット2Aの操作盤41は逆洗水受け入れ制御を実行し、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は逆洗水供給制御を実行する。
【0074】
第1濾過ユニット2Aの逆洗水受け入れ制御及び第2濾過ユニット2Bの逆洗水供給制御により、第2濾過ユニット2Bから第1濾過ユニット2Aへ逆洗水が流動する逆洗ライン31及び逆洗連絡ライン37の流路は開放される。そして、第2濾過ユニット2Bからの濾過水(逆洗水)は(図9参照)、第1濾過ユニット2Aの逆洗ライン31に供給される。さらに、この逆洗水はMF膜モジュール3の2次側に供給され、MF膜3aを透過した逆洗水は逆洗水排出ライン25を流動して排出される。なお、第1濾過ユニット2Aでは、MF膜モジュール3のエアスクラビングも同時に行われる。
【0075】
濾過装置1Aは、交互逆洗処理が終了すると第1濾過ユニット2A及び第2濾過ユニット2Bのフラッシング処理を開始する(ステップS4)。ここで第1濾過ユニット2Aの操作盤41は、第2のバルブV2、及び第7のバルブV7を閉鎖し、また、第4のバルブV4は開放したままで第1のバルブV1を開放する。さらに、操作盤41は、MF送液ポンプ21bを駆動して原水をMF膜モジュール3の1次側に供給する。同様に、第2濾過ユニット2Bの操作盤41は、第2のバルブV2、及び第6のバルブV6を閉鎖し、また、第1のバルブV1は開放したままで第4のバルブV4を開放する。さらに、操作盤41は、MF送液ポンプ21bの駆動を継続して原水をMF膜モジュール3の1次側に供給する。
【0076】
上記のフラッシング処理(図10参照)では、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の1次側と第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の1次側との両方に原水が供給され、MF膜モジュール3の1次側に残留する洗浄水や濁質などが洗い流される。以上のステップS1〜ステップS4までの処理を繰り返し実行することで濾過処理のための運転が行われる。
なお、前記フラッシング処理は、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとをそれぞれの逆洗工程の後に交互に行っても良い。これにより、逆洗時に浮遊した濁質物質を確実に除去できる。
【0077】
次に、本実施形態に係る濾過装置1Aの作用及び効果について説明する。濾過装置1Aでは、MF膜モジュール3から排出される濾過水はRO送液ポンプ23dによって圧送される。ここで、例えば、MF膜モジュール3からRO送液ポンプ23dまでの間を中間タンクなどで縁切りすることなく連続的に連絡すると、RO送液ポンプ23dの吸い込み側と吐出側とでバランスが崩れてしまった場合にRO送液ポンプ23dの吸い込み側でキャビテーションが発生してしまう虞がある。しかしながら濾過装置1AのRO送液ポンプ23dは、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながらMF膜モジュール3からの濾過水を圧送するため、キャビテーションの発生を効果的に防止でき、RO送液ポンプ23dで濾過水を圧送するための中間タンクなどが不要になる。さらに、濾過装置1Aでは、RO送液ポンプ23dが濾過水(逆洗水)の移送という機能にも兼用されるので、逆洗ポンプを別途設ける必要は無く設備負担が低減する。
【0078】
さらに、濾過装置1Aでは、例えば、第2濾過ユニット2Bが逆洗対象の場合、逆洗対象以外の第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3から排出された濾過水が、逆洗水として逆洗連絡ライン37を通り、第2濾過ユニット2Bに供給される。従って、第1、第2濾過ユニット2A,2Bそれぞれでは、逆洗専用の独立した逆洗配管や、これら逆洗配管の流路を開閉するバルブなどを省略でき、代わりに逆洗連絡ライン37を共有する形で第1、第2濾過ユニット2A,2Bそれぞれでの交互逆洗が可能になる。その結果として、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【0079】
さらに、濾過装置1Aの第1、第2濾過ユニット2A,2Bは、コンテナ7内にMF膜モジュール3やRO膜モジュール5を収容して搬送可能なユニットを構成しており、例えば、コンテナ7のサイズによって一台当りの水処理能力を定めて標準化または規格化を図ることも可能である。特に、濾過装置1Aでは、MF膜モジュール3とRO膜モジュール5とは連続的に連絡しており、両者の間に縁切りのための中間タンクなどは設けられていない。例えば、中間タンクなどを備えた態様では、処理能力に応じて中間タンクの容量を調整する必要があってコンテナ内という狭いエリア内に効率よく収めることが非常に難しく、標準化も困難である。しかしながら、濾過装置1Aでは、中間タンクなどは設けられておらず、逆洗専用の独立した逆洗配管なども不要なので標準化が容易になり、その結果として所望の水処理能力に応じた設備の増設なども容易になる。
【0080】
また、第1濾過ユニット2Aは、RO膜5aを組み込んだRO膜モジュール5の前工程にMF膜3aを組み込んだMF膜モジュール3を配置しており、第2濾過ユニット2Bも同様に、RO膜5aを組み込んだRO膜モジュール5の前工程にMF膜3aを組み込んだMF膜モジュール3を配置している。その結果、原水中の比較的粒径の大きな濁質は予めMF膜3aで除去されるのでRO膜5aの寿命を延ばすことができる。
【0081】
さらに、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2Bとはそれぞれ複数のMF膜モジュール3を備えており、第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の数と第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の数とは同数になっている。ここで、例えば、逆洗対象以外の第1濾過ユニット2AのMF膜モジュール3の数が逆洗対象の第2濾過ユニット2BのMF膜モジュール3の数よりも多い場合、第1濾過ユニット2Aでは、第2濾過ユニット2BでのMF膜モジュール3の数に合わせて逆洗用に利用される濾過水の流量を減らす必要がある。しかしながら、本実施形態によれば、第1濾過ユニット2Aと第2濾過ユニット2BとのMF膜モジュール3の数は同数であるので逆洗時の濾過水の流量調整などの制御が簡便になり、シンプルな構成を実現する上で有効である。
(第2実施形態)
【0082】
次に、図11を参照して本発明の第2実施形態に係る濾過装置1Bについて説明する。なお、第2実施形態に係る濾過装置1Bは、第1実施形態に係る濾過装置1Aと同等の要素や部材等を備えており、第1実施形態と同等の要素や部材等については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図11では、二つのグループに分かれる複数のMF膜モジュール3のうち、一方のグループに属する一本を代表して示しており、また、他方のグループに属する一本を代表して示している。さらに、複数のRO膜モジュール5のうち、一本を代表して示している。
【0083】
本実施形態に係る濾過装置1Bは第1濾過ユニット2Cと第2濾過ユニット2Dとを備えており、第1濾過ユニット2Cと第2濾過ユニット2Dとは実質的に同一の構成からなる。以下、第1濾過ユニット2Cを中心に説明する。
【0084】
第1濾過ユニット2Cは、第1実施形態に係る第1濾過ユニット2Aとは異なり、連絡ライン23の下流側管路23bから分岐する逆洗ライン31は設けられていない。代わりに、濃縮水排出ライン29から分岐して間接的にMF膜モジュール3の2次側に連絡する逆洗ライン51が設けられている。逆洗ライン51は所定の管径を有する管路51aを備えており、管路51a内を流動する逆洗水(濾過水)の上流側の端部は濃縮水排出ライン29の管路29aに接続され、下流側の端部は連絡ライン23の上流側管路23aに接続されている。また、逆洗ライン51には、第1実施形態に係る逆洗ライン31と同様に、流路を開閉する第6のバルブV6及び第7のバルブV7が設けられおり、第6のバルブV6と第7のバルブV7との間で逆洗連絡ライン37の管路37aに接続されている。以上の逆洗ライン51の構成により、RO送液ポンプ23dから吐出された濾過水が流動する下流側とMF膜モジュール3の2次側とを連絡する態様を具現化している。
【0085】
本実施形態に係る濾過装置1Bによれば、第1実施形態に係る濾過装置1Aと同様の効果を期待でき、逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
(第3実施形態)
【0086】
次に、図12を参照して本発明の第3実施形態に係る濾過装置1Cについて説明する。なお、第3実施形態に係る濾過装置1Cは、第1実施形態に係る濾過装置1Aと同等の要素や部材等を備えており、第1実施形態と同等の要素や部材等については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0087】
濾過装置1Cは、第1濾過ユニット2E、第2濾過ユニット2F、第3濾過ユニット2G、及び第4濾過ユニット2Hを備えている。さらに、各濾過ユニット2E〜2Hそれぞれの逆洗ライン31は、逆洗連絡ライン3761によって連絡されている。
【0088】
本実施形態に係る濾過装置1Cでは、例えば、第3及び第4の濾過ユニット2G,2Hが逆洗対象の場合、第1及び第2濾過ユニット2E,2Fからの濾過水が逆洗水として第3及び第4の濾過ユニット2G,2Hに供給される。
【0089】
本実施形態に係る濾過装置1Cによれば、第1実施形態に係る濾過装置1Aまたは第2実施形態に係る濾過装置1Bと同様に逆洗のための設備負荷を低減しながら、所望の処理能力を有する装置の構築が容易になる。
【0090】
以上、本発明を各実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記の各実施形態のみに限定されるものではない。例えば、濾過ユニットの数は二基または四基に限定されず、三基または五基以上であってもよく、必要となる2次透過水の流量などに応じて適宜に選択できる。また、前段膜はMF膜(精密濾過膜)に限定されず、限外濾過膜などであってもよく、また、後段膜はRO膜(逆浸透膜)に限定されず、前段膜よりも膜分離性能の高い膜を適宜に用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
1A,1B,1C…濾過装置、2A,2C,2E…第1濾過ユニット、2B,2D,2F…第2濾過ユニット、2G…第3濾過ユニット、2H…第4濾過ユニット、3…MF膜モジュール(前段膜モジュール)、3a…MF膜(前段膜)、5…RO膜モジュール(後段膜モジュール)、5a…RO膜、23…連絡ライン、23d…RO送液ポンプ(濾過液圧送ポンプ)、31…逆洗ライン、37…逆洗連絡ライン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液を濾過する前段膜を有する複数の前段膜モジュールと、前記前段膜よりも膜分離性能の高い後段膜を有する後段膜モジュールとが組み込まれた濾過ユニットを備え、原液を前記前段膜モジュールで濾過し、前記前段膜モジュールから排出された濾過液を前記後段膜モジュールで濾過する濾過装置において、
前記濾過ユニットを複数備え、
前記濾過ユニットは、前記前段膜モジュールの2次側と前記後段膜モジュールの1次側とを連絡すると共に、前記濾過液が流動する連絡ラインと、前記連絡ラインに設けられると共に、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながら前記濾過液を圧送する濾過液圧送ポンプと、前記濾過液圧送ポンプから吐出された前記濾過液が流動する下流側と前記前段膜モジュールの2次側とを連絡する逆洗ラインと、を有し、
複数の前記濾過ユニットそれぞれの前記逆洗ライン同士は前記濾過液が流動する逆洗連絡ラインを介して連絡され、逆洗時には逆洗対象以外の前記濾過ユニットの前記前段膜モジュールから排出された前記濾過液が前記逆洗連絡ラインを通って逆洗対象の前記濾過ユニットに供給されることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記前段膜は精密濾過膜であり、前記後段膜は逆浸透膜であることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾過ユニットは複数の前記前段膜モジュールを備えており、
前記濾過ユニットそれぞれの前記前段膜モジュールの数は同数であることを特徴とする請求項1または2記載の濾過装置。
【請求項1】
原液を濾過する前段膜を有する複数の前段膜モジュールと、前記前段膜よりも膜分離性能の高い後段膜を有する後段膜モジュールとが組み込まれた濾過ユニットを備え、原液を前記前段膜モジュールで濾過し、前記前段膜モジュールから排出された濾過液を前記後段膜モジュールで濾過する濾過装置において、
前記濾過ユニットを複数備え、
前記濾過ユニットは、前記前段膜モジュールの2次側と前記後段膜モジュールの1次側とを連絡すると共に、前記濾過液が流動する連絡ラインと、前記連絡ラインに設けられると共に、吸い込み側の圧力を設定圧力に維持しながら前記濾過液を圧送する濾過液圧送ポンプと、前記濾過液圧送ポンプから吐出された前記濾過液が流動する下流側と前記前段膜モジュールの2次側とを連絡する逆洗ラインと、を有し、
複数の前記濾過ユニットそれぞれの前記逆洗ライン同士は前記濾過液が流動する逆洗連絡ラインを介して連絡され、逆洗時には逆洗対象以外の前記濾過ユニットの前記前段膜モジュールから排出された前記濾過液が前記逆洗連絡ラインを通って逆洗対象の前記濾過ユニットに供給されることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記前段膜は精密濾過膜であり、前記後段膜は逆浸透膜であることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾過ユニットは複数の前記前段膜モジュールを備えており、
前記濾過ユニットそれぞれの前記前段膜モジュールの数は同数であることを特徴とする請求項1または2記載の濾過装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−177654(P2011−177654A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44496(P2010−44496)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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