濾過装置
【課題】濾過精度が高く、目詰まりを生じにくい濾過装置を提供する。
【解決手段】濾過装置10は、濾過槽11と、スクレーパ21を有するコンベア13と、一次フィルタ40と、回転する筒形の二次フィルタ60とを備えている。濾過槽11の内部は、一次フィルタ40によって、第1の濾過槽部51と第2の濾過槽部52とに分かれている。第1の濾過槽部51の底に沈んだスラッジSは、スクレーパ21の第1の部分21aによってスラッジ排出部16に向けて搬送される。第1の濾過槽部51内の液Q1は一次フィルタ40によって濾過され、第2の濾過槽部52に流入する。第2の濾過槽部52内の液Q2は二次フィルタ60によって濾過され、クリーン槽12に送られる。二次フィルタ60に付着したスラッジSは、一次フィルタ40上に落とされ、スクレーパ21の第2の部分21bによって、第1の濾過槽部51に向けて排出される。
【解決手段】濾過装置10は、濾過槽11と、スクレーパ21を有するコンベア13と、一次フィルタ40と、回転する筒形の二次フィルタ60とを備えている。濾過槽11の内部は、一次フィルタ40によって、第1の濾過槽部51と第2の濾過槽部52とに分かれている。第1の濾過槽部51の底に沈んだスラッジSは、スクレーパ21の第1の部分21aによってスラッジ排出部16に向けて搬送される。第1の濾過槽部51内の液Q1は一次フィルタ40によって濾過され、第2の濾過槽部52に流入する。第2の濾過槽部52内の液Q2は二次フィルタ60によって濾過され、クリーン槽12に送られる。二次フィルタ60に付着したスラッジSは、一次フィルタ40上に落とされ、スクレーパ21の第2の部分21bによって、第1の濾過槽部51に向けて排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば削り屑や微粒子等が混入している液を浄化する濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削や研削等の機械加工を行なう工作機械などでは、ワークや工具を冷却するためにクーラント(切削液)が使用されている。機械加工に使用されたクーラントには、削り屑(切り粉)や微粒子等が混入している。特に、軽量化や耐腐食性が要求される分野では、アルミニウム、マグネシウム等の素材が使われるため、切り屑が多様化する傾向がある。このようなクーラントを浄化し、再使用するために、従来より種々の濾過装置が提案されている。
【0003】
例えば下記の特許文献1,2に開示されている濾過装置は、濾過槽と、スラッジ搬出用のスクレーパコンベアと、フィルタとして機能するメッシュドラムなどを備えている。またメッシュドラムの目詰まりを防止するために、メッシュドラムの内側に洗浄液噴射ノズルを配置し、メッシュドラムの内側からメッシュドラムに向けて洗浄液を噴射するようにしている。すなわち逆洗式のメッシュドラムが使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2904334号公報
【特許文献2】特許第3389126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆洗式のメッシュドラムは目詰まりを防ぐ上で有効であるが、洗浄液を噴射するための洗浄液噴射機構を必要とするため設備が大掛かりとなるし、コストも高くなる。しかもメッシュドラムの回転に伴い、洗浄液噴射ノズルから噴出する洗浄液の圧力がメッシュドラムに繰返し加わり、そのたびにメッシュドラムが変形する。このため短期間でメッシュドラムが疲労破壊を生じ、新品のメッシュドラムと交換する必要が生じるなど、メッシュドラムの寿命が短いという問題があった。破損したメッシュドラムは産業廃棄物として処理せざるをえず、処理にコストがかかるという問題もある。
【0006】
また従来のフィルタを用いた濾過装置は、切り屑の多様化に伴って発生する浮遊スラッジや、絡まって成長した切り屑などを円滑に排出できないことがあるなど、1台の濾過装置で処理できる濾過精度に限界があった。このため高い濾過精度を得るには、濾過装置とは別に二次処理装置が必要となり、濾過設備全体が大掛かりになるという問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、濾過精度が高く、目詰まりを生じにくい濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の濾過装置は、濾過すべき液(例えばクーラント)を収容する濾過槽と、前記濾過槽の前記液の液面よりも高い位置に設けられたスラッジ排出部と、前記濾過槽の底部から前記スラッジ排出部にわたって移動するスクレーパを有するコンベアと、前記濾過槽内に前記コンベアの移動方向に沿って配置され、前記液が通る一次流通孔を有する一次フィルタと、前記濾過槽の底部と前記一次フィルタとの間に形成された第1の濾過槽部と、前記濾過槽内で前記一次フィルタの上側に形成された第2の濾過槽部と、前記第2の濾過槽部に回転可能に配置され、前記液が通る二次流通孔を有する筒形の二次フィルタと、前記二次フィルタを回転させる機構とを具備している。本発明の実施形態では、前記二次流通孔の流路断面積(例えば二次流通孔の孔径)が、前記一次流通孔の流路断面積(例えば一次流通孔の孔径)よりも小さい。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、前記コンベアの前記スクレーパは、該コンベアの下側部分において前記濾過槽の底部に対向し該底部に沿って移動する第1の部分と、該コンベアの上側部分において前記一次フィルタの上面に対向し該上面に沿って移動する第2の部分とを備えている。
【0010】
前記濾過槽は、前記コンベアの前記下側部分において前記第2の部分が前記一次フィルタの下面に沿って移動するよう前記コンベアのチェーンを案内するガイド部材を有しているとよい。前記二次フィルタを回転させる機構の一例は、前記コンベアのチェーンに対して上方から噛合うスプロケットを有し、前記コンベアの移動に伴って前記スプロケットが従動回転することにより前記二次フィルタが回転するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の濾過装置は、一次フィルタと二次フィルタとの併用によって高精度の濾過を行なうことができる。しかもスラッジ排出用のコンベアによって一次フィルタをクリーニングすることができるため目詰まりを生じにくい。本発明によれば、二次処理用の設備(二次クリーン槽およびフィルタ、供給ポンプ等)を不要にすることができるため、コンパクトで濾過性能の高い濾過装置を提供できる。しかも二次フィルタをコンベアの上方に配置することができるため、コンベアのチェーンを外すことなく二次フィルタのメンテナンス等の作業を行なうことが可能である。
【0012】
また本発明の濾過装置は、従来の逆洗式メッシュドラムを備えた濾過装置のような洗浄液噴射機構が不要であるため構造が簡単となる。しかも従来の逆洗式メッシュドラムと比較して二次フィルタの耐久性が高く長寿命であるため、産業廃棄物の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置の断面図。
【図2】図1中のF2−F2線に沿う濾過装置の断面図。
【図3】図1に示された濾過装置の一部の斜視図。
【図4】図1に示された濾過装置の一次フィルタの一部の平面図。
【図5】図4中のF5−F5線に沿う一次フィルタの一部の断面図。
【図6】図1に示された濾過装置の二次フィルタの一部の平面図。
【図7】図6中のF7−F7線に沿う二次フィルタの一部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態に係る濾過装置について図1〜図7を参照して説明する。
【0015】
図1は、例えばマシニングセンターのような工作機械1に用いられるクーラント(切削液)から異物を除去する設備の概略を示している。工作機械1から排出されたクーラントは、濾過すべき液Q1の一例である。この液Q1に、加工される素材に応じて、例えば切削等によって発生したアルミニウム合金やマグネシウム合金の削り屑や鉄系金属などの削り屑、カーボン等の非金属微粒子などが混入している。
【0016】
削り屑や微粒子等を含む液Q1は、工作機械1から流路2を通じて濾過装置10に供給される。この液Q1は、濾過装置10によって一次濾過されて液Q2となり、さらにこの液Q2が二次濾過されてクリーン液Cとなる。浄化されたクリーン液Cは、ポンプ3によって汲み上げられた後、供給流路4を介して再び工作機械1に供給される。
【0017】
以下に濾過装置10の詳細について説明する。
図1と図2に示すように濾過装置10は、濾過すべき液Q1を収容する濾過槽11と、濾過後のクリーン液Cを収容するクリーン槽12と、スラッジ搬出用のコンベア(スクレーパコンベア)13を有している。濾過槽11には、濾過すべき液Q1が流路2から供給される。クリーン槽12は濾過槽11の近傍に形成されている。
【0018】
濾過槽11の端部に、スラッジ掻き上げ部15が形成されている。スラッジ掻き上げ部15は、濾過槽11の液面Q3を通って斜め上方に延び、濾過槽11の外部に延出している。スラッジ掻き上げ部15の上端にスラッジ排出部16が形成されている。スラッジ排出部16は、濾過槽11の液面Q3よりも高い位置に設けられている。スラッジ排出部16の近傍に、モータを駆動源とする駆動機構17が設けられている。
【0019】
コンベア13は、濾過槽11の底部11aからスラッジ掻き上げ部15およびスラッジ排出部16にわたって配置されている。このコンベア13は、チェーン20(図2と図3に示す)と、複数のスクレーパ21とを有している。チェーン20は、上側のスプロケット22と下側のスプロケット23とに巻き掛けられ、駆動機構17によって、図1に矢印Aで示す方向に無端走行するようになっている。チェーン20は、濾過槽11に設けられたガイド部材25,26(図2に示す)によって移動自在に支持されている。
【0020】
図1に示すようにコンベア13は、下側部分(往路部分)13aと、上側部分(戻り部分)13bとを有している。コンベア13の下側部分13aは、濾過槽11の底部11aとスラッジ掻き上げ部15の底面に沿って、スラッジ排出部16に向かって移動する。コンベア13の上側部分13bは、上側のスプロケット22から下側のスプロケット23に向って、下側部分13aの上方を下側部分13aとは反対方向に移動する。
【0021】
コンベア13の上側部分13bは、スラッジ掻き上げ部15に沿って斜め下方に移動する下降部13cと、濾過槽11の底部11aに沿ってほぼ水平方向に移動する横行部13dと、液面Q3に向かって斜め上方に移動する上昇部13eなどを含んでいる。コンベア13の移動方向が変わる箇所に、それぞれチェーンガイド31a,31b,31c,31dが設けられている。
【0022】
スクレーパ21は、チェーン20の長手方向に所定間隔ごとに取付けられている。図2に示すようにスクレーパ21は、第1の部分21aを有している。第1の部分21aは、コンベア13の下側部分13aにおいて、濾過槽11の底部11aに沿って移動する。さらにこのスクレーパ21には、第1の部分21aとは反対側を向く第2の部分21bが取付けられている。第2の部分21bは、全てのスクレーパ21に設けられていてもよいが、一部のスクレーパ21に所定ピッチで設けられていてもよい。第2の部分21bの一例は金属製のプレートであるが、ゴム等の弾性を有する材料からなるブレードが採用されてもよい。
【0023】
スクレーパ21の第1の部分21aによって、濾過槽11の底部11aに沈んでいる削り屑等のスラッジSが、濾過槽11の底部11aからスラッジ掻き上げ部15を経て、スラッジ排出部16に搬送されるようになっている。スラッジ排出部16に到達したスラッジSは、回収ボックス35に向けて落下する。
【0024】
この濾過装置10は一次フィルタ40を有している。一次フィルタ40は、ステンレス鋼製のパネル部材40aに、多数の一次流通孔41(図4と図5に一部を示す)を形成することにより構成されている。つまり一次フィルタ40はパンチングメタルからなる。一次流通孔41の径D1の一例はφ1mm、板厚t1の一例は1mmである。
【0025】
一次フィルタ40は、濾過槽11内において、コンベア13の下側部分13aと上側部分13bとの間に配置されている。しかもこの一次フィルタ40は、濾過槽11の内部において、コンベア13の移動方向に沿って配置されている。
【0026】
図1と図2に示すように一次フィルタ40は、底板部45と、前側の側板部46と、後側の側板部47とを有している。底板部45は、コンベア13の横行部13dに沿って、ほぼ水平に配置されている。図2に示すように一次フィルタ40の両側部は、濾過槽11の側壁に設けられた支持部11b,11cに取付けられている。
【0027】
図2に示すガイド部材25,26のうち、下側のガイド部材25はコンベア13の下側部分13aを支持している。しかもこのガイド部材25は、スクレーパ21の第2の部分21bが、一次フィルタ40の底板部45の下面に対し隙間G1を存して対向するように、コンベア13の下側部分13aを支持している。上側のガイド部材26は、スクレーパ21の第2の部分21bが一次フィルタ40の底板部45の上面に接するように、コンベア13の上側部分13bを支持している。
【0028】
一次フィルタ40の前側の側板部46は、底板部45の前端からスラッジ掻き上げ部15に沿って、斜め方向に延びている。しかもこの側板部46は、コンベア13の下降部13cに沿っている。後側の側板部47は、底板部45の後端から液面Q3に向かって斜め方向に延びている。しかもこの側板部47は、コンベア13の上昇部13eに沿って、斜め方向に延びている。一次フィルタ40が形成されたパネル部材40aの端部48は、液面Q3の高さと同等でもよいし、液面Q3の上方あるいは下方に位置していても実用上は差し支えない。
【0029】
一次フィルタ40に形成された一次流通孔41は、パネル部材40aの全体に形成されていてもよいが、コスト低減を図るために、底板部45を含む長さL(図3に示す)の範囲に形成されている。図3には、一次流通孔41とチェーン20の一部が示されている。
【0030】
濾過槽11の内部は、一次フィルタ40によって、第1の濾過槽部51と、第2の濾過槽部52とに仕切られている。第1の濾過槽部51は、濾過槽11の底部11aと一次フィルタ40との間に形成されている。第2の濾過槽部52は、濾過槽11内で一次フィルタ40の上側に形成されている。第1の濾過槽部51と第2の濾過槽部52とは、一次流通孔41を介して互いに連通している。
【0031】
さらにこの濾過装置10は、円筒形の二次フィルタ(ドラムフィルタ)60を有している。二次フィルタ60は、例えば厚さが0.2mm程度の薄いステンレス鋼のばね板からなり、フォトエッチングによって多数の二次流通孔61(図6と図7に示す)が形成されている。二次フィルタ60の両端部に、それぞれ端部材65が固定用部材66によって固定されている。これら端部材65に、それぞれスプロケット67が設けられている。これらスプロケット67は、コンベア13の上側部分13bのチェーン20に対して上方から噛合うようになっている。
【0032】
二次フィルタ60は、第2の濾過槽部52内において、一次フィルタ40の底板部45の上方で、かつ、コンベア13の上側部分13bの上方に配置されている。しかもこの二次フィルタ60は、濾過槽11に設けられた筒形の支持部材70(図2に示す)によって水平方向の軸線X回りに回転自在に支持され、二次フィルタ60の全周が液面Q3の下方に位置している。つまり二次フィルタ60の全体が液Q2中に浸漬されている。
【0033】
図2に示すように、支持部材70の内側にクリーン液流通部71が形成されている。クリーン液流通部71は、二次フィルタ60の内側の空間60aに連通している。すなわち二次フィルタ60の内側の空間60aは、クリーン液流通部71を介して、クリーン槽12と連通している。二次フィルタ60の内側の空間60aに流入したクリーン液Cは、クリーン液流通部71を通ってクリーン槽12に流入することができる。
【0034】
二次フィルタ60の前記スプロケット67の下部が、コンベア13のチェーン20に対して上方から噛合っている。このためコンベア13が図1中の矢印A方向に移動すると、スプロケット67が従動回転することにより、二次フィルタ60が矢印Bで示す方向に回転する。すなわちコンベア13のチェーン20とスプロケット67は、二次フィルタ60を回転させる機構(回転手段)を兼ねている。
【0035】
図6に示すように二次フィルタ60は、所定ピッチで形成された多数の二次流通孔61を有している。二次流通孔61の一例は円形であるが、円形以外であってもよい。図7に示すように二次フィルタ60の外周面75に二次流通孔61の流入口61aが開口している。二次フィルタ60の内周面76に二次流通孔61の流出口61bが開口している。濾過すべき液は、流入口61aから流出口61bに向かって流れる。
【0036】
二次流通孔61の径D2(図7に示す)の一例は、φ0.2mm、板厚t2が0.2mmである。すなわち二次流通孔61の流路断面積は、一次流通孔41の流路断面積よりも小さい。なお、一次フィルタ40と二次フィルタ60のそれぞれの板厚t1,t2と、一次流通孔41と二次流通孔61の大きさは、必要とされる濾過精度および流量などの諸条件に応じて選定されるため、前記数値に限定されるものではない。
【0037】
図7に示すように二次フィルタ60を板厚方向に切断した断面において、二次流通孔61はストレートな形状ではなく、板厚方向中間部の径が最小となっている。このような形状の二次流通孔61は、二次フィルタ60の材料であるステンレス鋼板を両面側から同時にエッチングすることによって得ることができる。エッチングによって形成された二次流通孔61は、パンチングメタルのような「ばり」が存在しない。しかも二次流通孔61の内面に剪断痕などの荒れが生じることもない。このため、削り屑が引っ掛かりにくく、目詰まりを生じにくいものである。
【0038】
図1に示すように、二次フィルタ60の外周面近傍に、掻き板として機能するブレード部材80が配置されている。ブレード部材80の先端は二次フィルタ60の外周面75に接触または近接している。
【0039】
次に前記構成の濾過装置10の作用について説明する。
工作機械1から排出された液Q1は、流路2を通じて濾過槽11の第1の濾過槽部51に供給される。第1の濾過槽部51の底に沈んだ削り屑などを含むスラッジS(図1に模式的に示す)は、コンベア13の移動に伴い、スクレーパ21の第1の部分21aによって、スラッジ排出部16に向けて搬送される。
【0040】
第1の濾過槽部51内の削り屑や微粒子等の少なくとも一部は、浮上しつつ、液Q1と共に一次フィルタ40の下面側から一次流通孔41を通り、第2の濾過槽部52に流入する。液Q1が一次流通孔41を通ることにより、比較的大きな削り屑の一次濾過がなされる。液Q1が一次流通孔41を通る際に、第1の濾過槽部51内に浮遊する削り屑や微粒子等が、一次流通孔41の入口付近において一次フィルタ40の下面に付着する。
【0041】
一次フィルタ40の下面に付着したスラッジは、コンベア13の下側部分13aのスクレーパ21が濾過槽11の底部11aに沿って移動する際に、スクレーパ21と共に移動する比較的大きな削り屑等のスラッジSの一部が触れることにより、一次フィルタ40の下面から剥がれ落ちる。このため、一次フィルタ40の下面に目詰まりが生じることを防止できる。なお、スクレーパ21の第2の部分21bの上端が一次フィルタ40の下面に接するようにコンベア13を配置することにより、第2の部分21bによって一次フィルタ40の下面を直接クリーニングするようにしてもよい。
【0042】
一次流通孔41を通って第2の濾過槽部52に流入した液Q2は、第2の濾過槽部52に配置された二次フィルタ60の二次流通孔61を通り、二次フィルタ60の内側の空間60aに流れ込む。二次流通孔61を通過できない大きさの削り屑や粒子等は、二次流通孔61の流入口61a付近に付着する。こうして二次フィルタ60の外周面75に堆積した削り屑や粒子等により、実質的に二次流通孔61の流路断面積が小さくなるため、二次流通孔61の濾過効果をさらに高めることができる。
【0043】
二次フィルタ60の外周面75に付着したスラッジSは、二次フィルタ60の回転に伴い、ブレード部材80によって除去され、一次フィルタ40上に落とされる。なお、ブレード部材80の先端が二次フィルタ60から多少離れていても、二次フィルタ60の外周面75に付着した削り屑がブレード部材80の先端に触れることにより、この削り屑を二次フィルタ60から落とすことができる。
【0044】
一次フィルタ40上に落ちた細かいスラッジSは、コンベア13の移動に伴い、スクレーパ21の第2の部分21bによって、一次フィルタ40の端部48に向けて運ばれ、端部48から第1の濾過槽部51内に落とされる。つまり一次フィルタ40の上面がスクレーパ21の第2の部分21bによってクリーニングされる。
【0045】
第1の濾過槽部51内に落とされたスラッジSは、流路2から第1の濾過槽部51内に流入する液Q1に含まれる削り屑と共に、第1の濾過槽部51に沈殿する。第1の濾過槽部51に沈殿したスラッジSは、スクレーパ21の第1の部分21aによってスラッジ排出部16に向けて搬送される。
【0046】
二次フィルタ60の内部に流入したクリーン液Cは、クリーン液流通部71を通ってクリーン槽12に流入する。クリーン槽12内のクリーン液Cは、ポンプ3によって汲み上げられるとともに、供給流路4を通って再び工作機械1に供給される。このため常に高精度に濾過された清浄なクーラント(クリーン液C)を工作機械1に供給することができ、工作機械1を正常に機能させることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のコンベア13の上側部分(戻り側部分)13bのスクレーパ21は、一次フィルタ40の上面をクリーニングする機能と、二次フィルタ60から一次フィルタ40上に落とされたスラッジSを第1の濾過槽部51に向けて移動させる機能とを兼ねている。
【0048】
一次フィルタ40は、二次フィルタ60が比較的クリーンな液Q2の中で濾過性能を十分に発揮できるように、濾過精度を低くしている。すなわち、比較的大きい削り屑が一次フィルタ40によって濾過されたのち、二次フィルタ60によってさらに細かな削り屑や粒子の濾過が行なわれる。このため、薄くて損傷しやすい二次フィルタ60が大きな削り屑によって損傷することを防止できる。
【0049】
また本実施形態の濾過装置10によれば、従来の逆洗式メッシュドラムのような洗浄液の噴射機構が不要であるため、構成が簡単であり、エネルギーの消費が少ない。しかも逆洗式メッシュドラムのような洗浄液の噴射によるフィルタの変形を回避でき、二次フィルタ60の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0050】
また本実施形態の二次フィルタ60はコンベア13の上方に配置されているため、二次フィルタ60のメンテナンス作業等を行なう際にコンベア13のチェーン20を外す必要がない。このため二次フィルタ60を扱う作業を容易に行なうことができる。しかも従来の高精度濾過に必要であった後処理装置も不要であるから、濾過精度が高く、エネルギー消費の少ない濾過装置10をコンパクトに構成することができる。
【0051】
なお、本発明を実施するに当たり、濾過装置を構成する濾過槽をはじめとして、コンベアや一次フィルタ、二次フィルタの具体的な構成や配置など、発明の構成要素を種々に変更して実施できることは言うまでもない。また、複数の二次フィルタをコンベアの移動方向に互いに平行に配置してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…濾過装置
11…濾過槽
13…コンベア
21…スクレーパ
21a…第1の部分
21b…第2の部分
40…一次フィルタ
41…一次流通孔
51…第1の濾過槽部
52…第2の濾過槽部
60…二次フィルタ
61…二次流通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば削り屑や微粒子等が混入している液を浄化する濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削や研削等の機械加工を行なう工作機械などでは、ワークや工具を冷却するためにクーラント(切削液)が使用されている。機械加工に使用されたクーラントには、削り屑(切り粉)や微粒子等が混入している。特に、軽量化や耐腐食性が要求される分野では、アルミニウム、マグネシウム等の素材が使われるため、切り屑が多様化する傾向がある。このようなクーラントを浄化し、再使用するために、従来より種々の濾過装置が提案されている。
【0003】
例えば下記の特許文献1,2に開示されている濾過装置は、濾過槽と、スラッジ搬出用のスクレーパコンベアと、フィルタとして機能するメッシュドラムなどを備えている。またメッシュドラムの目詰まりを防止するために、メッシュドラムの内側に洗浄液噴射ノズルを配置し、メッシュドラムの内側からメッシュドラムに向けて洗浄液を噴射するようにしている。すなわち逆洗式のメッシュドラムが使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2904334号公報
【特許文献2】特許第3389126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆洗式のメッシュドラムは目詰まりを防ぐ上で有効であるが、洗浄液を噴射するための洗浄液噴射機構を必要とするため設備が大掛かりとなるし、コストも高くなる。しかもメッシュドラムの回転に伴い、洗浄液噴射ノズルから噴出する洗浄液の圧力がメッシュドラムに繰返し加わり、そのたびにメッシュドラムが変形する。このため短期間でメッシュドラムが疲労破壊を生じ、新品のメッシュドラムと交換する必要が生じるなど、メッシュドラムの寿命が短いという問題があった。破損したメッシュドラムは産業廃棄物として処理せざるをえず、処理にコストがかかるという問題もある。
【0006】
また従来のフィルタを用いた濾過装置は、切り屑の多様化に伴って発生する浮遊スラッジや、絡まって成長した切り屑などを円滑に排出できないことがあるなど、1台の濾過装置で処理できる濾過精度に限界があった。このため高い濾過精度を得るには、濾過装置とは別に二次処理装置が必要となり、濾過設備全体が大掛かりになるという問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、濾過精度が高く、目詰まりを生じにくい濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の濾過装置は、濾過すべき液(例えばクーラント)を収容する濾過槽と、前記濾過槽の前記液の液面よりも高い位置に設けられたスラッジ排出部と、前記濾過槽の底部から前記スラッジ排出部にわたって移動するスクレーパを有するコンベアと、前記濾過槽内に前記コンベアの移動方向に沿って配置され、前記液が通る一次流通孔を有する一次フィルタと、前記濾過槽の底部と前記一次フィルタとの間に形成された第1の濾過槽部と、前記濾過槽内で前記一次フィルタの上側に形成された第2の濾過槽部と、前記第2の濾過槽部に回転可能に配置され、前記液が通る二次流通孔を有する筒形の二次フィルタと、前記二次フィルタを回転させる機構とを具備している。本発明の実施形態では、前記二次流通孔の流路断面積(例えば二次流通孔の孔径)が、前記一次流通孔の流路断面積(例えば一次流通孔の孔径)よりも小さい。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、前記コンベアの前記スクレーパは、該コンベアの下側部分において前記濾過槽の底部に対向し該底部に沿って移動する第1の部分と、該コンベアの上側部分において前記一次フィルタの上面に対向し該上面に沿って移動する第2の部分とを備えている。
【0010】
前記濾過槽は、前記コンベアの前記下側部分において前記第2の部分が前記一次フィルタの下面に沿って移動するよう前記コンベアのチェーンを案内するガイド部材を有しているとよい。前記二次フィルタを回転させる機構の一例は、前記コンベアのチェーンに対して上方から噛合うスプロケットを有し、前記コンベアの移動に伴って前記スプロケットが従動回転することにより前記二次フィルタが回転するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の濾過装置は、一次フィルタと二次フィルタとの併用によって高精度の濾過を行なうことができる。しかもスラッジ排出用のコンベアによって一次フィルタをクリーニングすることができるため目詰まりを生じにくい。本発明によれば、二次処理用の設備(二次クリーン槽およびフィルタ、供給ポンプ等)を不要にすることができるため、コンパクトで濾過性能の高い濾過装置を提供できる。しかも二次フィルタをコンベアの上方に配置することができるため、コンベアのチェーンを外すことなく二次フィルタのメンテナンス等の作業を行なうことが可能である。
【0012】
また本発明の濾過装置は、従来の逆洗式メッシュドラムを備えた濾過装置のような洗浄液噴射機構が不要であるため構造が簡単となる。しかも従来の逆洗式メッシュドラムと比較して二次フィルタの耐久性が高く長寿命であるため、産業廃棄物の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置の断面図。
【図2】図1中のF2−F2線に沿う濾過装置の断面図。
【図3】図1に示された濾過装置の一部の斜視図。
【図4】図1に示された濾過装置の一次フィルタの一部の平面図。
【図5】図4中のF5−F5線に沿う一次フィルタの一部の断面図。
【図6】図1に示された濾過装置の二次フィルタの一部の平面図。
【図7】図6中のF7−F7線に沿う二次フィルタの一部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態に係る濾過装置について図1〜図7を参照して説明する。
【0015】
図1は、例えばマシニングセンターのような工作機械1に用いられるクーラント(切削液)から異物を除去する設備の概略を示している。工作機械1から排出されたクーラントは、濾過すべき液Q1の一例である。この液Q1に、加工される素材に応じて、例えば切削等によって発生したアルミニウム合金やマグネシウム合金の削り屑や鉄系金属などの削り屑、カーボン等の非金属微粒子などが混入している。
【0016】
削り屑や微粒子等を含む液Q1は、工作機械1から流路2を通じて濾過装置10に供給される。この液Q1は、濾過装置10によって一次濾過されて液Q2となり、さらにこの液Q2が二次濾過されてクリーン液Cとなる。浄化されたクリーン液Cは、ポンプ3によって汲み上げられた後、供給流路4を介して再び工作機械1に供給される。
【0017】
以下に濾過装置10の詳細について説明する。
図1と図2に示すように濾過装置10は、濾過すべき液Q1を収容する濾過槽11と、濾過後のクリーン液Cを収容するクリーン槽12と、スラッジ搬出用のコンベア(スクレーパコンベア)13を有している。濾過槽11には、濾過すべき液Q1が流路2から供給される。クリーン槽12は濾過槽11の近傍に形成されている。
【0018】
濾過槽11の端部に、スラッジ掻き上げ部15が形成されている。スラッジ掻き上げ部15は、濾過槽11の液面Q3を通って斜め上方に延び、濾過槽11の外部に延出している。スラッジ掻き上げ部15の上端にスラッジ排出部16が形成されている。スラッジ排出部16は、濾過槽11の液面Q3よりも高い位置に設けられている。スラッジ排出部16の近傍に、モータを駆動源とする駆動機構17が設けられている。
【0019】
コンベア13は、濾過槽11の底部11aからスラッジ掻き上げ部15およびスラッジ排出部16にわたって配置されている。このコンベア13は、チェーン20(図2と図3に示す)と、複数のスクレーパ21とを有している。チェーン20は、上側のスプロケット22と下側のスプロケット23とに巻き掛けられ、駆動機構17によって、図1に矢印Aで示す方向に無端走行するようになっている。チェーン20は、濾過槽11に設けられたガイド部材25,26(図2に示す)によって移動自在に支持されている。
【0020】
図1に示すようにコンベア13は、下側部分(往路部分)13aと、上側部分(戻り部分)13bとを有している。コンベア13の下側部分13aは、濾過槽11の底部11aとスラッジ掻き上げ部15の底面に沿って、スラッジ排出部16に向かって移動する。コンベア13の上側部分13bは、上側のスプロケット22から下側のスプロケット23に向って、下側部分13aの上方を下側部分13aとは反対方向に移動する。
【0021】
コンベア13の上側部分13bは、スラッジ掻き上げ部15に沿って斜め下方に移動する下降部13cと、濾過槽11の底部11aに沿ってほぼ水平方向に移動する横行部13dと、液面Q3に向かって斜め上方に移動する上昇部13eなどを含んでいる。コンベア13の移動方向が変わる箇所に、それぞれチェーンガイド31a,31b,31c,31dが設けられている。
【0022】
スクレーパ21は、チェーン20の長手方向に所定間隔ごとに取付けられている。図2に示すようにスクレーパ21は、第1の部分21aを有している。第1の部分21aは、コンベア13の下側部分13aにおいて、濾過槽11の底部11aに沿って移動する。さらにこのスクレーパ21には、第1の部分21aとは反対側を向く第2の部分21bが取付けられている。第2の部分21bは、全てのスクレーパ21に設けられていてもよいが、一部のスクレーパ21に所定ピッチで設けられていてもよい。第2の部分21bの一例は金属製のプレートであるが、ゴム等の弾性を有する材料からなるブレードが採用されてもよい。
【0023】
スクレーパ21の第1の部分21aによって、濾過槽11の底部11aに沈んでいる削り屑等のスラッジSが、濾過槽11の底部11aからスラッジ掻き上げ部15を経て、スラッジ排出部16に搬送されるようになっている。スラッジ排出部16に到達したスラッジSは、回収ボックス35に向けて落下する。
【0024】
この濾過装置10は一次フィルタ40を有している。一次フィルタ40は、ステンレス鋼製のパネル部材40aに、多数の一次流通孔41(図4と図5に一部を示す)を形成することにより構成されている。つまり一次フィルタ40はパンチングメタルからなる。一次流通孔41の径D1の一例はφ1mm、板厚t1の一例は1mmである。
【0025】
一次フィルタ40は、濾過槽11内において、コンベア13の下側部分13aと上側部分13bとの間に配置されている。しかもこの一次フィルタ40は、濾過槽11の内部において、コンベア13の移動方向に沿って配置されている。
【0026】
図1と図2に示すように一次フィルタ40は、底板部45と、前側の側板部46と、後側の側板部47とを有している。底板部45は、コンベア13の横行部13dに沿って、ほぼ水平に配置されている。図2に示すように一次フィルタ40の両側部は、濾過槽11の側壁に設けられた支持部11b,11cに取付けられている。
【0027】
図2に示すガイド部材25,26のうち、下側のガイド部材25はコンベア13の下側部分13aを支持している。しかもこのガイド部材25は、スクレーパ21の第2の部分21bが、一次フィルタ40の底板部45の下面に対し隙間G1を存して対向するように、コンベア13の下側部分13aを支持している。上側のガイド部材26は、スクレーパ21の第2の部分21bが一次フィルタ40の底板部45の上面に接するように、コンベア13の上側部分13bを支持している。
【0028】
一次フィルタ40の前側の側板部46は、底板部45の前端からスラッジ掻き上げ部15に沿って、斜め方向に延びている。しかもこの側板部46は、コンベア13の下降部13cに沿っている。後側の側板部47は、底板部45の後端から液面Q3に向かって斜め方向に延びている。しかもこの側板部47は、コンベア13の上昇部13eに沿って、斜め方向に延びている。一次フィルタ40が形成されたパネル部材40aの端部48は、液面Q3の高さと同等でもよいし、液面Q3の上方あるいは下方に位置していても実用上は差し支えない。
【0029】
一次フィルタ40に形成された一次流通孔41は、パネル部材40aの全体に形成されていてもよいが、コスト低減を図るために、底板部45を含む長さL(図3に示す)の範囲に形成されている。図3には、一次流通孔41とチェーン20の一部が示されている。
【0030】
濾過槽11の内部は、一次フィルタ40によって、第1の濾過槽部51と、第2の濾過槽部52とに仕切られている。第1の濾過槽部51は、濾過槽11の底部11aと一次フィルタ40との間に形成されている。第2の濾過槽部52は、濾過槽11内で一次フィルタ40の上側に形成されている。第1の濾過槽部51と第2の濾過槽部52とは、一次流通孔41を介して互いに連通している。
【0031】
さらにこの濾過装置10は、円筒形の二次フィルタ(ドラムフィルタ)60を有している。二次フィルタ60は、例えば厚さが0.2mm程度の薄いステンレス鋼のばね板からなり、フォトエッチングによって多数の二次流通孔61(図6と図7に示す)が形成されている。二次フィルタ60の両端部に、それぞれ端部材65が固定用部材66によって固定されている。これら端部材65に、それぞれスプロケット67が設けられている。これらスプロケット67は、コンベア13の上側部分13bのチェーン20に対して上方から噛合うようになっている。
【0032】
二次フィルタ60は、第2の濾過槽部52内において、一次フィルタ40の底板部45の上方で、かつ、コンベア13の上側部分13bの上方に配置されている。しかもこの二次フィルタ60は、濾過槽11に設けられた筒形の支持部材70(図2に示す)によって水平方向の軸線X回りに回転自在に支持され、二次フィルタ60の全周が液面Q3の下方に位置している。つまり二次フィルタ60の全体が液Q2中に浸漬されている。
【0033】
図2に示すように、支持部材70の内側にクリーン液流通部71が形成されている。クリーン液流通部71は、二次フィルタ60の内側の空間60aに連通している。すなわち二次フィルタ60の内側の空間60aは、クリーン液流通部71を介して、クリーン槽12と連通している。二次フィルタ60の内側の空間60aに流入したクリーン液Cは、クリーン液流通部71を通ってクリーン槽12に流入することができる。
【0034】
二次フィルタ60の前記スプロケット67の下部が、コンベア13のチェーン20に対して上方から噛合っている。このためコンベア13が図1中の矢印A方向に移動すると、スプロケット67が従動回転することにより、二次フィルタ60が矢印Bで示す方向に回転する。すなわちコンベア13のチェーン20とスプロケット67は、二次フィルタ60を回転させる機構(回転手段)を兼ねている。
【0035】
図6に示すように二次フィルタ60は、所定ピッチで形成された多数の二次流通孔61を有している。二次流通孔61の一例は円形であるが、円形以外であってもよい。図7に示すように二次フィルタ60の外周面75に二次流通孔61の流入口61aが開口している。二次フィルタ60の内周面76に二次流通孔61の流出口61bが開口している。濾過すべき液は、流入口61aから流出口61bに向かって流れる。
【0036】
二次流通孔61の径D2(図7に示す)の一例は、φ0.2mm、板厚t2が0.2mmである。すなわち二次流通孔61の流路断面積は、一次流通孔41の流路断面積よりも小さい。なお、一次フィルタ40と二次フィルタ60のそれぞれの板厚t1,t2と、一次流通孔41と二次流通孔61の大きさは、必要とされる濾過精度および流量などの諸条件に応じて選定されるため、前記数値に限定されるものではない。
【0037】
図7に示すように二次フィルタ60を板厚方向に切断した断面において、二次流通孔61はストレートな形状ではなく、板厚方向中間部の径が最小となっている。このような形状の二次流通孔61は、二次フィルタ60の材料であるステンレス鋼板を両面側から同時にエッチングすることによって得ることができる。エッチングによって形成された二次流通孔61は、パンチングメタルのような「ばり」が存在しない。しかも二次流通孔61の内面に剪断痕などの荒れが生じることもない。このため、削り屑が引っ掛かりにくく、目詰まりを生じにくいものである。
【0038】
図1に示すように、二次フィルタ60の外周面近傍に、掻き板として機能するブレード部材80が配置されている。ブレード部材80の先端は二次フィルタ60の外周面75に接触または近接している。
【0039】
次に前記構成の濾過装置10の作用について説明する。
工作機械1から排出された液Q1は、流路2を通じて濾過槽11の第1の濾過槽部51に供給される。第1の濾過槽部51の底に沈んだ削り屑などを含むスラッジS(図1に模式的に示す)は、コンベア13の移動に伴い、スクレーパ21の第1の部分21aによって、スラッジ排出部16に向けて搬送される。
【0040】
第1の濾過槽部51内の削り屑や微粒子等の少なくとも一部は、浮上しつつ、液Q1と共に一次フィルタ40の下面側から一次流通孔41を通り、第2の濾過槽部52に流入する。液Q1が一次流通孔41を通ることにより、比較的大きな削り屑の一次濾過がなされる。液Q1が一次流通孔41を通る際に、第1の濾過槽部51内に浮遊する削り屑や微粒子等が、一次流通孔41の入口付近において一次フィルタ40の下面に付着する。
【0041】
一次フィルタ40の下面に付着したスラッジは、コンベア13の下側部分13aのスクレーパ21が濾過槽11の底部11aに沿って移動する際に、スクレーパ21と共に移動する比較的大きな削り屑等のスラッジSの一部が触れることにより、一次フィルタ40の下面から剥がれ落ちる。このため、一次フィルタ40の下面に目詰まりが生じることを防止できる。なお、スクレーパ21の第2の部分21bの上端が一次フィルタ40の下面に接するようにコンベア13を配置することにより、第2の部分21bによって一次フィルタ40の下面を直接クリーニングするようにしてもよい。
【0042】
一次流通孔41を通って第2の濾過槽部52に流入した液Q2は、第2の濾過槽部52に配置された二次フィルタ60の二次流通孔61を通り、二次フィルタ60の内側の空間60aに流れ込む。二次流通孔61を通過できない大きさの削り屑や粒子等は、二次流通孔61の流入口61a付近に付着する。こうして二次フィルタ60の外周面75に堆積した削り屑や粒子等により、実質的に二次流通孔61の流路断面積が小さくなるため、二次流通孔61の濾過効果をさらに高めることができる。
【0043】
二次フィルタ60の外周面75に付着したスラッジSは、二次フィルタ60の回転に伴い、ブレード部材80によって除去され、一次フィルタ40上に落とされる。なお、ブレード部材80の先端が二次フィルタ60から多少離れていても、二次フィルタ60の外周面75に付着した削り屑がブレード部材80の先端に触れることにより、この削り屑を二次フィルタ60から落とすことができる。
【0044】
一次フィルタ40上に落ちた細かいスラッジSは、コンベア13の移動に伴い、スクレーパ21の第2の部分21bによって、一次フィルタ40の端部48に向けて運ばれ、端部48から第1の濾過槽部51内に落とされる。つまり一次フィルタ40の上面がスクレーパ21の第2の部分21bによってクリーニングされる。
【0045】
第1の濾過槽部51内に落とされたスラッジSは、流路2から第1の濾過槽部51内に流入する液Q1に含まれる削り屑と共に、第1の濾過槽部51に沈殿する。第1の濾過槽部51に沈殿したスラッジSは、スクレーパ21の第1の部分21aによってスラッジ排出部16に向けて搬送される。
【0046】
二次フィルタ60の内部に流入したクリーン液Cは、クリーン液流通部71を通ってクリーン槽12に流入する。クリーン槽12内のクリーン液Cは、ポンプ3によって汲み上げられるとともに、供給流路4を通って再び工作機械1に供給される。このため常に高精度に濾過された清浄なクーラント(クリーン液C)を工作機械1に供給することができ、工作機械1を正常に機能させることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のコンベア13の上側部分(戻り側部分)13bのスクレーパ21は、一次フィルタ40の上面をクリーニングする機能と、二次フィルタ60から一次フィルタ40上に落とされたスラッジSを第1の濾過槽部51に向けて移動させる機能とを兼ねている。
【0048】
一次フィルタ40は、二次フィルタ60が比較的クリーンな液Q2の中で濾過性能を十分に発揮できるように、濾過精度を低くしている。すなわち、比較的大きい削り屑が一次フィルタ40によって濾過されたのち、二次フィルタ60によってさらに細かな削り屑や粒子の濾過が行なわれる。このため、薄くて損傷しやすい二次フィルタ60が大きな削り屑によって損傷することを防止できる。
【0049】
また本実施形態の濾過装置10によれば、従来の逆洗式メッシュドラムのような洗浄液の噴射機構が不要であるため、構成が簡単であり、エネルギーの消費が少ない。しかも逆洗式メッシュドラムのような洗浄液の噴射によるフィルタの変形を回避でき、二次フィルタ60の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0050】
また本実施形態の二次フィルタ60はコンベア13の上方に配置されているため、二次フィルタ60のメンテナンス作業等を行なう際にコンベア13のチェーン20を外す必要がない。このため二次フィルタ60を扱う作業を容易に行なうことができる。しかも従来の高精度濾過に必要であった後処理装置も不要であるから、濾過精度が高く、エネルギー消費の少ない濾過装置10をコンパクトに構成することができる。
【0051】
なお、本発明を実施するに当たり、濾過装置を構成する濾過槽をはじめとして、コンベアや一次フィルタ、二次フィルタの具体的な構成や配置など、発明の構成要素を種々に変更して実施できることは言うまでもない。また、複数の二次フィルタをコンベアの移動方向に互いに平行に配置してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…濾過装置
11…濾過槽
13…コンベア
21…スクレーパ
21a…第1の部分
21b…第2の部分
40…一次フィルタ
41…一次流通孔
51…第1の濾過槽部
52…第2の濾過槽部
60…二次フィルタ
61…二次流通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過すべき液を収容する濾過槽と、
前記濾過槽の前記液の液面よりも高い位置に設けられたスラッジ排出部と、
前記濾過槽の底部から前記スラッジ排出部にわたって移動するスクレーパを有するコンベアと、
前記濾過槽内に前記コンベアの移動方向に沿って配置され、前記液が通る一次流通孔を有する一次フィルタと、
前記濾過槽の底部と前記一次フィルタとの間に形成された第1の濾過槽部と、
前記濾過槽内で前記一次フィルタの上側に形成された第2の濾過槽部と、
前記第2の濾過槽部に回転可能に配置され、前記液が通る二次流通孔を有する筒形の二次フィルタと、
前記二次フィルタを回転させる機構と、
を具備したことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記二次流通孔が前記一次流通孔よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記コンベアの前記スクレーパは、該コンベアの下側部分において前記濾過槽の底部に対向し該底部に沿って移動する第1の部分と、該コンベアの上側部分において前記一次フィルタの上面に対向し該上面に沿って移動する第2の部分とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記濾過槽は、前記コンベアの前記下側部分において前記第2の部分が前記一次フィルタの下面に沿って移動するよう前記コンベアの前記下側部分のチェーンを案内するガイド部材を備えたことを特徴とする請求項3に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記二次フィルタを回転させる機構は、前記コンベアの前記上側部分のチェーンに対して上方から噛合うスプロケットを有し、前記コンベアの移動に伴って前記スプロケットが従動回転することにより前記二次フィルタが回転することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項1】
濾過すべき液を収容する濾過槽と、
前記濾過槽の前記液の液面よりも高い位置に設けられたスラッジ排出部と、
前記濾過槽の底部から前記スラッジ排出部にわたって移動するスクレーパを有するコンベアと、
前記濾過槽内に前記コンベアの移動方向に沿って配置され、前記液が通る一次流通孔を有する一次フィルタと、
前記濾過槽の底部と前記一次フィルタとの間に形成された第1の濾過槽部と、
前記濾過槽内で前記一次フィルタの上側に形成された第2の濾過槽部と、
前記第2の濾過槽部に回転可能に配置され、前記液が通る二次流通孔を有する筒形の二次フィルタと、
前記二次フィルタを回転させる機構と、
を具備したことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記二次流通孔が前記一次流通孔よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記コンベアの前記スクレーパは、該コンベアの下側部分において前記濾過槽の底部に対向し該底部に沿って移動する第1の部分と、該コンベアの上側部分において前記一次フィルタの上面に対向し該上面に沿って移動する第2の部分とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記濾過槽は、前記コンベアの前記下側部分において前記第2の部分が前記一次フィルタの下面に沿って移動するよう前記コンベアの前記下側部分のチェーンを案内するガイド部材を備えたことを特徴とする請求項3に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記二次フィルタを回転させる機構は、前記コンベアの前記上側部分のチェーンに対して上方から噛合うスプロケットを有し、前記コンベアの移動に伴って前記スプロケットが従動回転することにより前記二次フィルタが回転することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−96139(P2012−96139A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244072(P2010−244072)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【特許番号】特許第4830043号(P4830043)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(594204756)株式会社ブンリ (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【特許番号】特許第4830043号(P4830043)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(594204756)株式会社ブンリ (11)
【Fターム(参考)】
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