説明

濾過装置

【課題】中空糸の濾過性能に影響を及ぼすことなく、中空糸の表面に付着、堆積する懸濁成分を剥離除去する。
【解決手段】複数本の中空糸を懸濁成分を含む被処理液中に浸漬し、該被処理液の固液分離を行って処理液を透過させる濾過装置であって、二つ折りした前記中空糸と、前記中空糸の開口側の端部と連通させる処理液集水手段と、前記各中空糸の他端側の折曲部を空隙をあけて保持する保持材と、前記中空糸の他端側より開口側の端部に向けて清浄用の気体を噴射する気体噴射手段とを備え、前記保持材として棒状あるいは平板形状のロッドを用い、前記複数本の二つ折された中空糸はすだれ状に並列し、その折曲部の対向する両側部の間に前記保持材を通して該折曲部を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の並列した中空糸を懸濁成分を含む被処理液中に浸漬して、該被処理液の固液分離を行って処理液を透過させる浸漬型吸引濾過装置または外圧式濾過装置に関し、特に、中空糸面に付着する懸濁成分を除去する簡単な構造の清浄手段を備えたものである。
【背景技術】
【0002】
複数本の中空糸を円形状に集束して配置し、その片端部あるいは両端部を開口状態で固定部材にて固定して集水部とした膜モジュールが、浸漬型吸引濾過装置あるいは外圧式濾過装置に装着されて使用されている。
この種の膜モジュールは、河川水、湖沼水の浄化といった所謂浄水処理の分野において広く使用されているが、近時、この浄水分野に限らず、下水の二次処理、三次処理や、排水、産業廃水、工業用水等の濾過といった高汚濁性水処理用としても用いられる傾向にある。
高汚濁性水処理の利用の一つとして、膜モジュールを用いた膜分離活性汚泥法による排水処理システムが広まりつつある。膜分離活性汚泥法は、高濃度活性汚泥下で運転できるため、ばっ気槽の容量を小さくできるうえ、沈殿槽・汚泥濃縮槽が不要になるため従来の合併浄化槽方式に比べ設置面積を小さくすることができるという利点がある。それに加え、従来よりも処理水の水質の向上を図ることができるという利点も有する。
【0003】
浄水及び高汚濁性水処理のいずれの場合も、膜モジュールを用いた濾過装置により濾過処理を継続すると、膜表面又は膜間に、被処理液中に含まれる懸濁成分が堆積し、これが膜閉塞の原因となる。すなわち、堆積物を介して中空糸同士が固着一体化して膜モジュール内の中空糸の有効膜面積が減少し、透過流量の低下を招く。
このため、膜面の堆積物を取り除く清浄操作は必須である。清浄は浸漬槽内に被処理液を満たした状態で膜モジュールの下部から空気を導入し、供給される気泡により中空糸に振動を与えるエアバブリングと供給吸気により生じる液体の流れを利用して膜面の堆積物を剥離する方法がとられる場合が多い。
【0004】
例えば、特開平7−24264号公報(特許文献1)では、図26に示すように、シート状の平型中空糸モジュール101の下方に設けた散気板102の散気孔102aから供給される気泡により中空糸103に対してエアーバブリングを連続的若しくは断続的に行いながら液体を濾過する方法において、シート面が垂直方向に、中空糸が水平方向となるように膜モジュール101を配設し、中空糸膜103のみをエアーバブリングにより振動させ旋回流を生じる濾過方法が開示されている。
【0005】
また、特公平7−61420号公報(特許文献2)では、図27に示すように、多数の中空糸濾過膜110を外筒111内に配列し、中空糸束中に多孔質パイプ112を配管させることにより、多孔質パイプ112の下方から空気を導入し、気泡を多孔質パイプ112に沿って上昇させ、中空糸を振動させる上昇流を生じさせ、エアーバブリングを行う濾過器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−24264号公報
【特許文献2】特公平7−61420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図26に示す特開平7−24264号公報に記載の濾過方法では、散気板102の散気孔102aから中空糸103の全域にわたって散気を行うものであるため、散気を十分に行うためには、隣接するシート状の平型中空糸モジュール101をある程度離間させて配置する必要があり、膜を高密度で設置することは難しい。したがって、膜設置部の容積が大きくなる。また、膜モジュール101の下方から全体的に散気を行うだけでは、中空糸103の表面のみが散気され、膜間、特に膜の閉塞が進みがちな集水部近辺への散気が不十分となる問題がある。また、集水部付近、すなわち中空糸の接着部付近が膜の振幅が大きくなり負荷がかかるため破断しやすいなどの問題もある。
【0008】
また、図27に示す特公平7−61420号公報に記載の濾過器では、多数の中空糸濾過膜110を円形状に配列した中空糸束中に複数本の多孔質パイプ112を混入させているだけであるので、膜間への散気が不十分となる問題がある。
【0009】
これらの問題を改善するため、パイプに複数の気体噴射穴を設けて、各中空糸にできるだけ大きな散気効果をもたらすことが考えられる。しかし、複数の気体噴射穴を設けると、結果として必要以上に多くの空気を発生させてしまい、余分なランニングコストがかかることになる。また気体噴射穴から出る空気量もバラツキが大きくなりエアー源からの距離により大きく差異がでるなどの弊害も生じる。
【0010】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、中空糸膜濾過の継続により中空糸表面又は膜間に堆積した懸濁成分を、気泡により効率よく剥離除去して清浄化できる濾過装置を提供することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、複数本の中空糸を懸濁成分を含む被処理液中に浸漬し、該被処理液の固液分離を行って処理液を透過させる浸漬型吸引濾過装置または外圧式濾過装置であって、
二つ折りした前記中空糸と、
前記中空糸の折曲側と反対側の開口端部と連通させる処理液集水手段と、
前記中空糸の折曲部を空隙をあけて保持する棒状あるいは平板形状のロッドからなる保持材と、
前記中空糸の折曲側より前記開口端部側に向けて清浄用の気体を噴射する気体噴射手段と、
を備え、
前記複数本の二つ折りされた中空糸はすだれ状に並列し、その折曲部の対向する両側部の間に前記保持材を通して、該折曲部を保持し
前記保持材により保持される中空糸と保持材の間あるいは/および中空糸同士の間の少なくとも一部には、前記気体噴射手段より噴射される気体流通用の空隙をあけていることを特徴とする濾過装置を提供している。
【0012】
前記本発明の濾過装置は被処理液中に、通常は、中空糸は軸線方向を縦方向として配置し、前記開口端部は上方配置する一方、前記保持材で支持する他端側は下方配置とし、該保持材の下方に前記気体噴射手段を配置している。
【0013】
前記本発明の濾過装置によれば、各中空糸を保持材により空隙をあけて保持することにより、気体噴射手段から噴射する気体を前記空隙を通して、中空糸の外周面(膜面)に沿って軸線方向へと流すことができる。この気体の流れおよびそれに伴い発生する被処理液の流れによって、各中空糸をくまなく確実に、かつ効率的に揺らすことができ、かつ表面の液体の流れによって、膜面に付着する懸濁成分の剥離除去効果を得ることができる。
また、本発明では、各中空糸を二つ折りにして折曲部で保持材に係止しているため、中空糸同士の間に空隙をあけて保持材で保持することができ、保持材の下方から噴射される気体の中空糸の膜面に沿った気体通路を形成できる。かつ、中空糸の最下部の折曲部を含む下部側にも十分に気体を負荷できるので、下方に固形分の堆積が起こりにくくすることができる。そのため、有効膜面積の減少による濾過機能の低下が起こりにくくなり、処理水量を低減することなく、安定させることができる。
さらに、中空糸を二つ折りして、その一端を保持材で保持することにより、処理液集水手段と連結側の反対側の中空糸端部を固定する部材を不要とでき、構造を簡単にすることができる。
【0014】
清浄用の前記気体噴射手段は、保持材の下方位置に配置され、気体を中空糸の他端側より一端側に向けて配置するが、本発明では保持材と各中空糸の間に空隙があるため、1本の加圧気体供給管から供給される気体でも、前記各空隙を通して確実に各中空糸の膜面に沿って流して、バブリングを発生させることができる。そのため、効率良く中空糸表面の懸濁成分を剥離除去することができ、気体噴射に要するコストを抑えることができる。前記気体噴射手段は、保持材より100mm〜500mm程度の下方に設けておくことが好ましい。
【0015】
前記清浄用として導入する気体としては空気を用い、該空気の圧力は10〜70kPaの範囲、より好ましくは20〜50kPaの加圧空気が好適に用いられる。加圧空気はブロアを用いて供給してもよいし、コンプレッサーでもよいが、コンプレッサーは空気圧力が強くなり過ぎると共に、コスト的にもブロアの方が有利であるため、ブロアが好適に用いられる。
また、気体導入量は、ブロアの運転に消費する電力、即ち、ランニングコストの面から少ない程よいが、例えば、中空糸膜モジュールの設定濾過水量100L/hrに対して、0.1〜5Nm/hr、好ましくは0.5〜2Nm/hrの範囲で、濾過水量と分離する固形量に応じて適宜設定される。
【0016】
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【0017】
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【0018】
のように、保持材は複数本の二つ折された中空糸はすだれ状に並列し、その折曲部の対向する両側部の間に棒状あるいは平板形状のロッドからなる前記保持材を通して、該折曲部を保持する構成としている
【0019】
即ち、中空糸を二つ折り状態を保持する保持材として、折り返し用ロッドを設け、該折り返し用ロッドを二つ折りした中空糸を並列した状態で、各両側部に挟まれた中央空間に折り返し用ロッドを貫通させて配置している。
該構成とすると、各中空糸の折り返した両側部を貫通穴に通す作業が不要となり、複数本の中空糸を一括して二つ折り状態に保持することができる。
【0020】
前記ロッドの軸線方向に並列させる前記中空糸同士は密接あるいは間隔あけると共に、複数本毎に2.0〜10.0mmの間隔をあけて並列していることが好ましい。
即ち、濾過性能を高めるには中空糸は所要間隔をあけて密に配置することが好ましいが、前記噴射する気体の通路を確保して各中空糸を確実に揺らし、各中空糸の表面に液体の流れを作ることで中空糸の膜面に付着する懸濁成分を剥離除去することができる空間を確保する必要がある。よって、4本〜6本程度の中空糸を1つのブロックとして比較的小さい隙間をあけて並列し、各ブロック間では大きな気体通路を確保できるように2.0〜10mmの隙間をあけることが好ましい。
【0021】
前記折り返し用ロッドの上面には、使用経過に応じて、次第に懸濁成分が堆積していき、懸濁成分が堆積すると二つ折した中空糸の両側部が互いに離反する方向に拡がり、隙間をあけて配置した隣接の中空糸の側部との隙間が狭くなり、ついには、互いに接触する場合もある。このように隣接する中空糸間の隙間が微小または無くなると、中空糸に水が入りにくくなり、濾過性能が低下する。
前記問題を解消するため、複数本の折り返し用ロッドを軸線方向と直交方向に平行に配置する場合には、隣接配置するロッドの上下高さを変えてもよい。
該構成とすると、前記ロッドの上部に懸濁成分が堆積して両側の中空糸が拡がっても、隣接位置の中空糸の拡がり位置が相違するため、隣接する中空糸間に隙間が無くなったり、接触することを防止することができる。
さらにまた、U形状とした拡き防止枠を設け、各中空糸の折曲部から両側部を前記ロッドの上方位置まで外側から囲む構成とし、前記ロッド上部に堆積する懸濁成分により中空糸両側の拡がりを防止してもよい。
【0022】
さらに、前記ロッドに上下方向に貫通する気体流路を設けてもよい。このようにロッド自体に気体流路を設けると、ロッドの上面に懸濁成分が堆積するのを抑制、防止することができる。
該気体流路はロッドの長さ方向に連続した1つの細尺な貫通穴でも良いし、所要間隔をあけて穿設した貫通穴でもよい。
【0023】
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【0024】
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【0025】
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【0026】
なお、複数本の中空糸を懸濁成分を含む被処理液中に浸漬して、該被処理液の固液分離を行って処理液を透過させ浸漬型吸引濾過装置または外圧式濾過装置であって、
一端は開口させていると共に他端は閉鎖している前記中空糸と、
前記中空糸の一端側の開口と連通させる処理液集水手段と、
前記各中空糸の他端側の閉鎖部空隙をあけて保持すると共に、隣接する中空糸間も空隙をあけて保持する保持材と、
前記保持材の下方位置に配置され、前記中空糸の他端側より一端側に向けて気体を噴射する気体噴射手段を備え、
前記気体が前記空隙を通して前記並設する中空糸間に中空糸の軸線方向に沿って噴射される構成としていることを特徴とする濾過装置とすることも可能である。
【0027】
前記濾過装置では、本発明のように二つ折り形状とはせずに、処理液集水側と反対側の中空糸の先端は閉鎖し、これら中空糸間に空隙を設けた状態で保持材により保持している。
本構成によっても、気体噴射手段から噴射する気体を各中空糸の膜面に効率的に付与することができる。
【0028】
前記濾過装置の保持材の形状も限定されないが、例えば、保持材は中空糸の軸線方向と平行配置する固定プレートからなり、該固定プレートの一面に前記各中空糸の外周面の一部を固着している構成とすることができる。
固定プレートへの前記中空糸の固着は接着等の方法を用いて行ってもよく、各中空糸の外周面を対向する2枚の狭持板で狭持して固定する構成としてもよい。
【0029】
本発明において、前記清浄用の気体を噴射する気体噴射手段として、前記保持材の下方に配置した1本の加圧気体供給管を備え、該加圧気体供給管に1個、あるいは複数個の気体噴射穴を設けていることが好ましい。
該気体噴射穴は前記加圧気体供給管のいずれの外周面に設けてもよいが、気体供給の間欠運転時および運転休止時に中空糸から剥離した懸濁成分を気体噴射穴に混入させないようにするため、該加圧気体供給管の下部、即ち、中空糸の張架側と反対側に設けることが好ましい。
【0030】
本発明の濾過装置は、前記中空糸を複数本並設する中空糸膜モジュールを設け、該中空糸膜モジュールの複数本の中空糸の開口した一端側は固定部材に接着固定すると共に、該固定部材に集水ヘッダーからなる前記処理液集水手段を取り付け、前記集水ヘッダーを集水管に接続し、該集水管に濾過処理後の処理液を吸引し、かつ、
該中空糸膜モジュールの複数本の中空糸の他端側は前記保持材で保持している。
【0031】
前記加圧気体供給管に間隔をあけて穿設する気体噴射穴は、前記中空糸膜モジュール1個につき1個の気体噴射穴を配置するのが好ましい。1つの中空糸膜モジュールにつき複数個の気体噴射穴を配置してもよいが、気体噴射穴を増やせば増やすほど膜の量すなわち処理量に対して過剰の空気を噴射することになる。そのため、過大なランニングコストがかかることに繋がり、好ましくない。
本発明の濾過装置においては、保持材を備えることにより中空糸表面に効率的に空気を行き渡らせることができるため、気体噴射穴の数が少なくても十分な懸濁成分の剥離除去効果を得ることができる。該気体噴射穴は例えば外径を4mm〜8mmとするのが好ましい。
【0032】
前記加圧気体供給管は基端部を気密状態で着脱自在に連結する空気導入用ヘッダーを介してブロアやコンプレッサー等の空気供給源と連結される。
前記構成とすると、濾過処理の継続中、たとえ加圧気体供給管の気体噴射穴に閉塞が生じたとしても、閉塞した加圧気体供給管を空気導入用ヘッダーから引き抜き離脱して詰まりを清掃することができる。そして、清掃後加圧気体供給管を挿入装着するだけで、容易に機能回復ができる。
【0033】
前記中空糸膜モジュール1つにつき、1つの前記保持材を設ける場合、該保持材の外周に沿って前記気体噴射手段の方向に突出したスカート部を設け、該スカート部に囲まれた領域から前記噴射される気体を散逸させない構成としていることが好ましい。
該スカート部を設けることにより、加圧噴射された気体が逸脱することなく、該スカート部の内部に保持される。そのため、噴射された空気は損失されることなく、効果的に利用される。さらに、前記保持材下部の全面に渡って空気溜まりが形成され、該空気溜まりの中で空気圧が均一となった空気が貫通穴を通じて中空糸表面に供給されるため、中空糸膜モジュール内の中空糸表面に均一に空気を噴射することができる。
その結果、1つの中空糸膜モジュールにつき、気体噴射穴を少なく配置しても、十分な懸濁成分の剥離除去効果が得られるため、供給する空気量が少なくて済み、ランニングコストの低減を図ることができる。
前記スカート部は、保持材の外周に沿って前記気体噴射手段の方向に突出して配置していれば形状は問わない。
【0034】
さらに、前記スカート部の内部を仕切るように散気穴を1つまたは複数個穿設した空気分配用の板を設けていることが好ましい。
該空気分配用の板を設けることにより、さらに空気を均一に分散させることができ、より均一に中空糸表面に空気を付与することができるため有効である。
【0035】
前記中空糸膜モジュールは、例えば、複数本の前記中空糸を所要の空隙をあけて水平断面円形あるいは水平断面矩形状に集束配置し、隣接する前記中空糸の中心距離(ピッチ)は2〜6mmとすることが好ましい。
【0036】
さらに、前記中空糸膜モジュールは、中空糸は軸線方向を縦方向として配置し、開口した一端側は上方配置する一方、前記保持材で支持する他端側は下方配置とし、該保持材の更に下方に前記気体噴射部を配置していることが好ましい。
【0037】
また、前記中空糸膜モジュールの複数本の中空糸の両端を剛性を有する連結支持材で連結してもよい。
前記連結支持材として多孔パイプを用い、該多孔パイプも加圧気体を噴射する第2の加圧気体供給管として用いてもよい。
このように、中空糸膜モジュールの両端を剛性を有する連結支持材で連結し、固定部材間の寸法を規定しておくと、この間に取り付けられる多数の中空糸を加圧気体の噴射による振動が負荷されても、撓むことなく直線状態に保持することができる。
なお、そのためには各中空糸に抗張力が要求されるが、後述するように、PTFE等の抗張力を有する素材からなる中空糸を形成することで、加圧空気を直接に中空糸間の隙間に噴射可能としている。
かつ、前記連結支持材を多孔パイプで形成し、該多孔パイプの軸線方向に穿設されている孔から加圧気体を中空糸に向けて噴射する構成とすると、中空糸の軸線方向の全域に均一に空気を供給することができ、中空糸の表面に懸濁成分が付着堆積することを抑制できる。
【0038】
前記中空糸は、該中空糸が保持材と接触する部分で、1本ずつ或いは2本以上がまとめられて、保護材が取り付けられていることが好ましい。
保護材としては、各種プラスチック材料により形成されたチューブ、テープ、フィルムなどを用いればよく、加工が容易なことから熱収縮ポリエチレンチューブを用いることが好ましい。さらに多孔質のプラスチック材料を用いれば、保護材の装着部の濾過機能を低下させることがないので、より好ましい。その他、液状のシリコンゴムやフッ素ゴムなどの高分子材料をチューブ膜の表面に塗布するか、もしくは該高分子材料に浸漬した後、硬化させ被覆材としてもよい。また、ABSをMEKのような溶剤に溶解または分散させ、該高分子材料に塗布した後、溶剤を除去させて被覆させてもよい。
【0039】
前記中空糸は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質材料を含むフッ素系樹脂からなることが好ましい。PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の多孔質材料を含むフッ素系樹脂で形成されていてもよい。特に延伸PTFEから構成することが好ましく、延伸PTFEとすることにより、酸、アルカリ、溶剤に対して安定で、かつ、素材の有する優れた非粘着性のため懸濁成分を付着しにくくすることができるだけでなく、柔軟性にも優れているため、二つ折り形状とするような加工にも適している。
特に、中空糸の抗張力を30N以上とし、強い抗張力を付与しておくことにより、バブリングによる加圧空気の流れやそれに伴う被処理液の流れによる激しい振動にも十分に耐え、中空糸に撓みや損傷を発生させない。これを実現する意味でもPTFE膜が望ましい。
なお、中空糸の素材は前記に限定されず、ポリスルフォン系樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフイン、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、多孔質アルミナ、多孔質窒化ケイ素等のセラミック等の各種の材料からなるものが使用できる。また、これらの樹脂の共重合体や一部に置換基を導入したものであってもよく、二種以上の樹脂を混合した樹脂であってもよい。さらに、他の高分子固定、置換基導入、金属めっきなどの各種複合化されたものであってもよい。
【0040】
中空糸は、その内径0.3〜12mm、外径0.8〜14mm、超微細孔径10nm〜1000nm、膜厚0.2〜1mm、気孔率50〜90%、膜間差圧0.1〜1.0MPaの耐圧性を備えたものとすることが好ましい。
前記した中空糸を用いると多様な懸濁成分を含む被処理液の濾過に適用することができる。
【発明の効果】
【0041】
上述したように、本発明の濾過装置によれば、加圧気体噴射手段側に位置させる複数本の各中空糸の端部側を保持材により空隙をあけて支持しているため、支持と同時に各中空糸の空隙を通る気体を中空糸の膜面に負荷でき、膜面を確実に揺らし、かつ、表面の液体の流れによって、膜表面又は膜間に堆積した懸濁成分を効率よく確実に剥離除去することができる。さらに、中空糸を集束した中空糸膜モジュール全体に十分な気泡が行き渡たらせることができるので、中空糸膜モジュール下部に固形分の堆積を防ぎ、安定した濾過機能を確保することができる。
【0042】
さらに、中空糸を二つ折りにして折曲部を空隙をあけて保持材で保持すると、各中空糸の最下部にも十分な気泡が行き渡るので、固形分の堆積が起こりにくくすることができる。そのため有効膜面積の減少による濾過機能の低下が起こりにくくなり、処理水量も安定する。さらに、中空糸を二つ折りにすることによって、両端を封鎖したタイプとするよりも大きな膜表面積を確保することができるため、処理水量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】参考第一実施形態の濾過装置を示す概略全体図である。
【図2】参考第一実施形態の中空糸膜モジュールの正面図である。
【図3】参考第一実施形態の中空糸膜モジュールの(A)は保持材の平面図、(B)は保持材に中空糸を挿通した状態を示す図面、(C)は保持材を設置した状態を示す斜視図である。
【図4】参考第一実施形態の中空糸膜モジュールの保持材に中空糸を挿通した状態およびダミー穴を示す図である。
【図5】参考第一実施形態の濾過装置の気体噴射手段を示す図面である。
【図6】参考第一実施形態の濾過装置の気体噴射手段とスカート部および散気板の使用状態を説明する図面である。
【図7】参考第一実施形態の中空糸膜モジュールの保持材の貫通穴に中空糸を2本挿通した状態を示す図面である。
【図8】参考第二実施形態の中空糸膜モジュールの(A)は保持材の平面図、(B)は保持材を設置した状態を示す斜視図である。
【図9】参考第二実施形態の第一変形例を示し、(A)は中空糸に保護シートを装着した状態を示す図、(B)は(A)の要部を示すA−A線断面図である。
【図10】参考第二実施形態の第二変形例を示し、(A)は中空糸に保護シートを装着した状態を示す図、(B)は(A)の要部を示すB−B線断面図である。
【図11】本発明の第一実施形態の中空糸膜モジュールの保持材を設置した状態を示す斜視図である。
【図12】第一実施形態の変形例を示し、(A)は中空糸に保護シートを装着した状態を示す図、(B)は(A)の要部を示すC−C線断面図である。
【図13】第実施形態を示し、(A)は中空糸に折返用のロッドを装着した状態を示す平面図、(B)は側方からみた図、(C)は概略正面図である。
【図14】折り返し用のロッドを用いた場合の問題点を示す図面である。
【図15】第実施形態の第1変形例を示す概略正面図である。
【図16】第実施形態の第2変形例を示し、(A)は概略正面図、(B)はロッドの平面図、(C)は変形例のロッドの平面図である。
【図17】第実施形態の第3変形例を示す概略正面図である。
【図18】参考第三実施形態を示し、(A)は中空糸の保持方法を示す図面、(B)は(A)のD−D線断面図、(C)は保持材を設置した状態を示す斜視図である。
【図19】参考第四実施形態を示し、(A)中空糸の保持方法を示す図面、(B)は(A)のE−E線断面図、(C)は保持材を設置した状態を示す斜視図である。
【図20】参考第五実施形態の加圧型の濾過装置を示す概略図である。
【図21】参考実施例1の濾過装置を示し、(A)は中空糸膜モジュールへの散気方法を示す図、(B)は中空糸膜モジュールの中空糸の下端部の保持方法を示す図、(C)は散気板の平面図である。
【図22】実施例の濾過装置を示し、(A)は中空糸膜モジュールへの散気方法を示す図、(B)は中空糸膜モジュールの中空糸の下端部の保持方法を示す図、(C)は散気板の平面図である。
【図23】参考実施例1及び実施例の実験方法を示す図である。
【図24】比較例1の濾過装置を示す図であり、(A)は中空糸膜モジュールへの散気方法を示す図、(B)は中空糸膜モジュールの中空糸の下端部の保持方法を示す図、(C)は散気管の位置を示す図である。
【図25】参考実施例1と実施例と比較例1の濾過日数と膜濾過圧の関係を示す図である。
【図26】従来例を示す図面である。
【図27】他の従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7に浸漬型吸引濾過装置に適用した参考第一実施形態を示す。該参考第一実施形態は後述する本発明と保持材の構成を代えている点で相違する。
参考第一実施形態の濾過装置は、図1に示すように、複数本の中空糸膜モジュール1(1A、1B,1C)を被処理液2が入った浸漬槽3内に吊り下げ、浸漬して用いている。本参考実施形態では、下水処理水からなる活性汚泥槽内に浸漬し、膜分離活性汚泥法により濾過処理を行なうものである。なお、図1では3個の中空糸膜モジュールを簡略的に示しているが、中空糸膜モジュールの個数は3個に限定されず、複数個であればよい。
【0045】
前記3つの中空糸膜モジュール1(1A、1B、1C)を、所要間隔をあけて集水管14に並列に連結している。
各中空糸膜モジュール1は、図2、図3に示すように、複数本(本実施形態では945本)の中空糸10をそれぞれ二つ折りし、U字状となる折曲部を他端側に位置させ、両端開口が隣接して位置する上端開口側を樹脂でモールドして、位置決め固定して成形した固定部材11を備えている。該固定部材11はエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の液状樹脂を硬化させて成形するか、あるいは、PFA、PP、PE樹脂などの熱溶融性プラスチック素材に中空糸サイズの孔を形成し、該孔に中空糸を納めて、そのまま熱溶融させて作製している。固定部材11で保持した状態で、前記各中空糸10の両端開口は集水ヘッダー13の内部に連通させ、該集水ヘッダー13を集水管14に連通している。
【0046】
前記各中空糸10の下端の屈曲は、図3(A)に示す矩形状の平板状プレートからなる保持材25に穿設した貫通穴28に通している。該保持材25は1つの中空糸膜モジュール1毎に1枚設けている。該保持材25の貫通穴28はX−Y方向に一定ピッチで設けており、図3(B)に示すように、一対の隣接する貫通穴28aと28bとに2つ折りした1本の中空糸10の両側部10aと10bを通し、両側部10aと10bの間の下端折曲部10cを保持材25の下面側に架け渡している。具体的には、一方の貫通穴28aに1本の中空糸10を上方から下向きに貫通させた後に折り曲げて他方の貫通穴28bに下方から上向きに貫通させ、上端位置に中空糸10の両端開口10dと10eとを並列させ、折曲部10cに近接した位置に保持材25を配置している。
このように、複数本の中空糸10の上端を固定部材11と集水ヘッダー13に固定すると共に下端側を1枚の保持材25で支持して、図3(C)のような中空糸膜モジュール1を形成している。
【0047】
前記保持材25の各貫通穴28の直径は中空糸10の外径よりも大とし、貫通穴28に中空糸10を遊挿し、中空糸10の外周と貫通穴28の外周面には気体流通用の空隙C1をあけている。
【0048】
前記中空糸10はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の多孔質材料から形成している。該PTFEからなる多孔質材料は柔軟性を有し、かつ強度も優れているので、保持材25の貫通穴28に挿通して二つ折りにしても損傷されることはない。
該中空糸10は、詳細には、内径が0.3〜12mm、外径が0.8〜14mm、膜厚が0.2〜1.0mm、有効長さが約200〜3000mm、超微細孔径が10nm〜1000nm、気孔率が50〜80%、抗張力が30N以上、膜間差圧0.1〜1.0MPaの耐圧性を備えるものを使用している。
参考実施形態では、保持材25に設けた3.8mmの貫通穴28に通すため、中空糸10は延伸PTFE製で、内径1.1mm、外径2.3mmで、有効長さ1530mm、超微細孔径が450nm、気孔率が75%のものを用いている。
【0049】
なお、保持材25は図4に示すように、貫通穴28を一定ピッチで設けずに、前記1本の中空糸10の両側部10aと10bとを貫通させる一対の貫通穴28aと28bは比較的近接配置して、他の一対の貫通穴との間は前記ピッチよりも比較的大きなピッチをあけている。また、保持材25には中空糸を挿通させないダミー穴50を設けて、気体や被処理液のみを挿通させる穴としている。
前記保持材25との接触可能位置に、保持材25との接触による損傷を防ぐために、中空糸10に1本ずつ熱収縮ポリエチレンチューブを装着してもよい。
【0050】
前記各中空糸膜モジュール1A、1B,1Cの中空糸10の上端部は、前記したように、固定部材11に固定し、該固定部材11の上部には集水ヘッダー13を液密に固定し、中空糸10の上端開口を開口状態のまま集水ヘッダー13に臨ませて、中空糸10の内部の濾過された処理済み液を集水ヘッダー13に集めている。
前記各中空糸膜モジュール1A、1B,1Cの集水ヘッダー13を集水管14に着脱自在に連結し、処理済み液を吸引ポンプ15で吸引している。本参考実施形態では中空糸10をU字形状としているため、処理済み液は全て上部に吸引される。
前記集水ヘッダー13は、機械的強度及び耐久性を有する材質で成形しており、例えば、ポリカーボネート、ポリスルン、ポリオレフイン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ABS樹脂、変性PPE樹脂、フッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP、PVDF等)を用いている。
【0051】
前記中空糸10の下端折曲部10cの部分に配置している前記保持材25の下方には、100〜500mmの間隔をあけて、図1および図5に示すように、加圧気体噴射手段として1本の清浄用パイプ20を水平方向に配置している。
図1に示すように清浄用パイプ20は長尺とし、間隔をあけて並設する3つの中空糸膜モジュール1A、1B、1Cを連続的に横断するように配置している。
【0052】
前記清浄用パイプ20には、各中空糸膜モジュール1(1A、1B、1C)の中心に相当する位置に、各1つの気体噴射穴21を穿設している。該気体噴射穴21は、前記清浄用パイプ20の下面側に設け、中空糸10の表面から剥離して落下する懸濁成分による穴詰まりを予防している。該気体噴射穴21は内径を4mm〜8mmとするのが好ましく、本実施形態では5mmとしている。該清浄用パイプ20はポリ塩化ビニルから成形し、内径を13mm、外径を18mmとしている。
【0053】
清浄用パイプ20の一端は、図1に示すような閉鎖端20aとしても良いし、並設する中空糸膜モジュールの両端側より空気が導入できるようにしても良い。閉鎖端とする場合、他端は空気導入用ヘッダー24に気密保持できるようにパッキン(図示せず)を介して着脱可能に連結している。空気導入用ヘッダー24は空気導入管26を介してブロア27と接続し、空気導入用ヘッダー24に20〜50kPaの加圧空気を導入している。
【0054】
さらに、各中空糸膜モジュール1では、図5に示すように、保持材25の外周に沿って下向きにスカート部29を突出し、該スカート部分29の中心の下方に前記清浄用パイプ20の気体噴射穴21を位置させている。このようにスカート部29を設けることで、清浄用パイプ20から噴射される気体をスカート部29内に集めて逸脱させないようにしている。
また、図6に示すように前記スカート部29の内部にはさらに空気を均一に分散するための散気穴30aを1つまたは複数個穿設した散気板30を設けていることが好ましい。
【0055】
次に、参考第一実施形態の濾過装置の作用を説明する。
浸漬槽3内に導入されて満たされた被処理液2は、吸引ポンプ15の駆動により各中空糸膜モジュール1(1A、1B、1C)の中空糸10を透過させて固液分離を行い、集水管14より処理済み液(処理液)として回収している。
【0056】
膜濾過を安定して継続させるため、中空糸10の表面又は膜間に堆積した懸濁成分を剥離除去しており、その際、前記ブロア27を作動させて空気導入管26及び空気導入用ヘッダー24から清浄用パイプ20に加圧空気を導入し、清浄用パイプ20の気体噴射穴21より加圧空気を噴射している。噴射された加圧空気はスカート部29により各中空糸膜モジュール1の下部領域内に集められ、保持材25の貫通穴28の内周面と中空糸10の外周面の間の空隙C1を通して保持材25の上面側に噴出し、隣接する中空糸10の隙間を通って中空糸10の表面に接しながら軸線方向に上昇し、中空糸10の表面に付着堆積する懸濁成分を強力に剥離除去する。
前記加圧空気を噴出して行なう懸濁成分の剥離除去は、常時行っても良いし、定期的に行ってもよい。
【0057】
なお、図6に示すように、スカート部29を仕切るように散気板30を設けた場合には、スカート部29内に流入した気体は散気板30の下部に空気溜まり31を形成した後に散気穴30aを通して均一に拡散されて、保持材25の下面側で全面に渡って拡がり、各貫通穴28と中空糸10との間の空隙C1より吹き出される。そのため、より均一かつ効率的に懸濁成分の剥離除去を行なうことができる。
【0058】
このように、参考第一実施形態によれば、中空糸10を2つ折りして、保持材25の貫通穴28を通して、下端折曲部10cで中空糸10を保持材25に空隙C1をあけて保持しているため、この空隙C1を通して各中空糸10の外周面に確実にバブリングされた気体を付与して中空糸10を振動させて懸濁成分を剥離除去でき、かつ、中空糸10の下端側の位置決め保持も同時に行うことができる。その結果、簡単な構成としながら、中空糸10の清浄を確実に行うことができる。
さらに、参考第一実施形態では、保持材25の1つの貫通穴28にそれぞれ中空糸10を1本ずつ挿通しているため、中空糸10の周囲には十分な空隙C1を確保できると共に、隣接する中空糸10との間隙もあけることができるため、中空糸10の表面に効果的に空気を付与することができる。
【0059】
なお、参考第一実施形態では保持材25の各貫通穴28に1本ずつ中空糸10を挿通しているが、貫通穴28を長円状として、2本あるいは3本の複数の中空糸10を1つの貫通穴28に挿通してもよい。その場合、図7に示すように、長円状の貫通穴28’の対向する周縁にリブ28−1を設けて、間隔をあけて中空糸10を位置決めし、保持することが好ましい。
【0060】
図8(A)(B)に参考第二実施形態の濾過装置に使用される中空糸膜モジュール1−2を示す。
図8(A)に示すように、参考第二実施形態の保持材25”には、長円状の貫通穴28を2個1対として複数対、平行に穿設している。この保持材25”に対して、図8(B)に示すように、一方の貫通穴28a”に、すだれ状に整列した中空糸10をまとめて挿通した後に屈曲させ、隣接するもう一方の貫通穴28b”にまとめて挿通して、中空糸10を二つ折りにしている。これを1つの中空糸膜モジュールにつき複数対設けている。
この参考第二実施形態の構成とすると、中空糸10を保持材25”に組みつける作業性を高めることができる。
【0061】
図9(A)(B)は参考第二実施形態の第一変形例を示す。図9(A)に示すように、保持材25”が接触する箇所の中空糸には中空糸10に損傷が発生しないように、保護シート35を予め貼り付けている。該保護シート35はPTFE等の多孔質材料から形成し、濾過の妨げとならないようにしている。
保護シート35は、図9(B)に示すように、中空糸10の折曲部両側が貫通穴28a”と28b”の内周面に直接接触しないように、すだれ状に整列した中空糸10を挟み込むように設置している。
【0062】
図10(A)(B)は参考第二実施形態の第二変形例を示す。
該第二変形例では、すだれ状に整列している中空糸10の両側面に対して、保持材25”の隣接する貫通穴28”を貫通する両側部から、下端の折曲位置の全体にかけて一対の保護シート35を貼着している。該構成とすると、隣接する貫通穴28”(例えば、28a”と28b”)を貫通する部分を連続した一対の保護シート35で保護することができる。
前記保護シート35は、図10(B)に示すように、中空糸10の下端折曲部付近では噴射された気体が通過できるように穴36を設けておいてもよい。
なお、他の構成および作用は参考第一実施形態と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
図11は、本発明の第一実施形態の濾過装置に使用される中空糸膜モジュール1−3を示す。
実施形態の中空糸膜モジュール1−3は、中空糸10をすだれ状に複数本整列配置し、中央を二つ折りにしてU字形状とした状態で、上部の固定部材11で固定している。二つ折りした中空糸10の下端のU字の中に丸棒状の折返用のロッド51を挿通し、中空糸10を保持しており、該折返用のロッド51が保持材となる。
本実施形態ではこれを1ユニットとして、1つの中空糸膜モジュールにつき複数ユニット(図11では4ユニット)を平行に設置している。
各ユニットのロッド51の両端は保持枠52に固定し、中空糸10がロッド51から抜け出るのを防止している。ロッド51は中空糸10を通した後に、矩形枠状フレームからなる保持枠52にロッド51の両端を固定して設置することが好ましい。
前記構成とすることで中空糸10の周りには空隙が形成されるので、下端に配置する清浄用パイプ(図示せず)から噴射する気体を各中空糸10の外周面に沿って流すことができる。
【0064】
図12(A)(B)は第実施形態の変形例を示し、前記図10に示す参考第二実施形態の第二変形例と同様に、中空糸10を保護するため、ロッド51と中空糸10の接触箇所には保護シート35を装着している。該保護シート35は、図12(B)に示すように、中空糸の折曲部付近の位置には、噴射された気体が通過できるように穴36を設けている。
なお、他の構成および作用は参考第一実施形態と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
図13(A)〜(C)に本発明の第二実施形態を示す。
実施形態では、第実施形態の丸棒状のロッド51に代えて、強度向上のためロッドの断面積を大きくする目的で断面矩形状の折り返し用のロッド70を用いている。該ロッド70は上下寸法が直交する幅寸法よりも大きく、二つ折りした中空糸10の下端折曲部10cの内周にロッド70の下面70aが接触して二つ折り状態を保持し、ロッド70の左右両側面70b、70cが中空糸10の両側部10a、10bと対向する。よって、二つ折りした中空糸10は下端の折曲部10cからロッド70の上面70dの上下区間において、両側部10aと10bの間にロッド70の左右両側面70bと70c間の幅方向寸法の空隙を確保している。
【0066】
前記ロッド70は図13(A)に示すように、複数本のロッド70を間隔をあけて平行に配置し、かつ、図13(B)に示すように、各ロッド70の軸線方向に沿って、二つ折りした中空糸10を並列配置している。これらロッド70の軸線方向に沿って並列配置する中空糸10は4本づつを一ブロックBとし、各ブロックB内では隣接する中空糸10の間隔S1を小さくしている一方、ブロックBの間は大きな間隔S2を設け、間隔S2は間隔S1の2倍程度としている。 この並列する中空糸10の間に設けた大きな間隔S2は、下方から噴射する気体の大流路とすることができる。本実施形態では間隔S1はmm、間隔S2は4mmとしている。
【0067】
中空糸10が撓み易いと共に、図14に示すように、ロッド70の上面70dには、次第に汚泥や懸濁成分が堆積しはじめ、ロッド上面70dから積み上がっていく。その結果、ロッド70の上方で中空部10の両側部10aと10bが外方へと拡がっていき、隣接配置した中空糸10と接触し、水および気体の流れを遮断することとなる。
【0068】
図15に第実施形態の第1変形例を示す。
第1変形例では、U形状とした拡き防止枠73を設け、各中空糸10の折曲部10cから両側部10a、10bをロッド70の上方位置まで外側から囲む構成としている。なお、前記拡き防止枠73は多孔板から形成していることが好ましい。
【0069】
図16(A)(B)(C)に第実施形態の第2変形例を示す。
第2変形例では、ロッド70の上面70dに汚泥や懸濁成分を堆積させないように、ロッド70に上下方向に貫通する水および気体の流路70fを設けている。
該流路70fは図16(B)に示すように、ロッド70の幅方向の中央部に軸線方向に連続する細幅のスリットから形成している。なお、図16(C)に示すように、軸線方向に間隔をあけた複数の丸穴としてもよい。
このように、ロッド70に水および気体の流路70fを設けると、流路70fの下方より流入する気体および水によりロッド上面70dに汚泥や懸濁成分が堆積するのを抑制、防止することができる。
【0070】
図17(A)(B)に第実施形態の第3変形例を示す。
該第3変形例では、平行配向配置するロッド70の上下高さを交互に代えて千鳥状に配置している。このように隣接するロッド70の高さを代えると、図17(B)に示すように、ロッド上面70dの上面に汚泥や懸濁成分が堆積して中空糸10の両側部10a、10bが拡いても、隣接する中空10と接触することを防止できる。
【0071】
図18(A)(B)(C)は参考第三実施形態を示す。
参考第三実施形態の中空糸膜モジュール1−4の中空糸10の保持材は、中空糸10の軸線方向と平行配置する連結プレート40と、該連結プレートの一面から間隔をあけて並列状態で突設させた両端開口の筒部41とからなる。前記連結プレート40および筒部41は剛体から形成している。
前記筒部41は、隣接する筒部41aと41bとをU字状に二つ折りする1つの中空糸10の両側部10a、10bを夫々貫通させるものとし、参考第一実施形態と同様に、筒部41aと41bの下部で下端折曲部10cを架け渡している。
各筒部41の内径は中空糸10の外径よりも大とし空隙をあけている。前記下端折曲部10cの下方には参考第一実施形態と同様に清浄用パイプ(図示せず)を配置している。 1つの中空糸膜モジュール1−4につき連結プレート40を複数枚配置している。
他の構成及び作用は参考第一実施形態と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
図19(A)(B)(C)に参考第四実施形態を示す。
参考第四実施形態では、図19(A)に示すように、中空糸10は二つ折りとはせず、各中空糸10の下端は開口周縁を密着させて閉鎖させている。これを上下方向に1本の直線状として、複数本を平行に配置して中空糸10の下端部10fより略10〜50mm上方の位置を、テープ材48を用いて固定用プレート47に固定している。固定用プレート47への固定はシート等を用いて行なってもよい。
固定用プレート47の固定部分は中空糸10全体に対して僅かな部分であるので、テープ材等と密着させて固定用プレート47に保持してもよいが、図19(B)に示すように、固定用プレート47とテープ材48を中空糸10の間隔を1本ずつ熱融着等により接着することにより、中空糸の周りに空間を設けつつ、中空糸10の位置決めを行なうこともできる。
図19(C)に示すように、固定用プレート47に固定してシート状とした中空糸10を、所定間隔をあけて、1つの中空糸膜モジュール1−5につき複数設けている。
なお、他の構成および作用は参考実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0073】
図20に、本発明の加圧型の濾過装置の参考第五実施形態を示す。
濾過装置の濾過槽となる浸漬層3はステンレス製のハウジングから構成し、ハウジングは底壁3a、周壁3bおよび蓋3cとからなり、周壁3bの上端近傍には中空糸膜モジュール1(1A、1B、1C)の固定部材11を嵌合保持する仕切板3dを備え、該仕切板3dの下側を被処理液を貯留した濾過室3eとし、上側を処理済みの液を集める集水室3fとしている。前記仕切板3dもステンレス製としている。また、周壁3には仕切板3d直下の位置にエアー抜き機構3gを備え、底壁3aにはドレン抜き機構3hを備えている。
【0074】
前記ハウジング底壁3aの中央には被処理液2の送給口3iを設け、該送給口3iを被処理液2を貯留している原水タンク53とパイプ54を介して連通し、該パイプ54にポンプ55を介設して、浸漬槽3内に被処理液2を加圧送給している。即ち、本濾過装置では、浸漬槽3内に加圧した被処理液2を送給することで、中空糸10内外周面から内周面へと通して、被処理液2を外圧濾過している。
前記加圧空気供給管となる清浄用パイプ20はブロア27より加圧空気を供給している。供給された濾過室3e内に溜まった空気は、エー抜き機構3gより浸漬槽3の外へ排出することができる。また、洗浄により生じた懸濁物質はドレン抜き機構3hより浸漬槽3の外へ排出することができる。
また、各中空糸10の上端開口と連通させた集水ヘッダー13の開口を、前記集水室3fへと集水管14で透過水を送給している。
参考実施形態は加圧型の濾過装置である点、図1に示す吸引型の濾過装置と相違するが、他の構成は同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
次に、本発明の実施例と比較例を示す。
参考実施例1の濾過装置を図21に示し、実施例の濾過装置を図22に示す。
参考実施例1)
中空糸10として、内径1mm、外径2mm、気孔率75%、孔径0.45μm、有効長さ1500mmの延伸PTFE中空糸を用い、1つの中空糸膜モジュール1は中空糸を945本を備えている。図21(B)に示すように、保持材25として、外径3mmの貫通穴を945個穿設した縦横150mm×150mm、厚さ5mmのPVC樹脂製プレートを用意した。
一対の隣接する貫通穴に2つ折りにした1本の中空糸の両端部を挿通し、中空糸の中心位置がU字状となるように配列した。
U字状とした中空糸の両端部は束ねて方形状に整列配置した状態で予め溝のあるABS樹脂製の集水ヘッダー13に挿入後、開口状態を保ちつつその両端部を固定用樹脂(ウレタン樹脂)で固定して固定部材11とした。
保持材の下方位置には外周に沿って、垂直に突出した高さ200mmのスカート部(板)29を設けて四方を密着させて囲んだ。スカート部(板)29で囲まれた空間の内部には保持材25の下方50mmの位置に、図21(C)に示すように、直径6mmの穴が4つ穿設した板(散気板30)を固定した。矩形状の固定部材11と保持材25は連通する4本の支持棒(図示せず)でその位置を固定し、中空糸膜モジュール1を作製した。
【0076】
この単一の中空糸膜モジュール1を、図21(A)および図23に示すように、浸漬槽100内に鉛直方向に設置した。中空糸膜モジュール1の下端から300mm位置には、外径30mmの空気供給用のパイプ(散気管)20を配置し、該パイプに設けられた直径6mmの穴から4Nm/hrの空気をブロア27より吐出させた。中空糸膜モジュール1の散気板30とスカート部29で囲まれた空間に空気を一度滞留させたのち、散気板30の穴から保持材25と中空糸10に空気を供給した。
圧力計付きの吸引ポンプを駆動し、定流量運転による吸引濾過を30日間行った。被処理液2としては、膜分離活性汚泥法が対象とする菌体を含んだ排水(10000mg/L)を用いた。
【0077】
(実施例
図22(A)(B)(C)に示すように、参考実施例1と同様に中空糸10を用い、参考実施例1の保持25の代わりにABS樹脂製の断面矩形状の折り返し用のロッド70を用いた。該ロッド70を用いて、中空糸を折り曲げてU字状とし、U字状とした中空糸の両端部を束ねて方形状に整列配置した状態で、予め溝のあるABS樹脂製の集水ヘッダー13に挿入後、開口状態を保ちつつ、その両端部を固定用樹脂(ウレタン樹脂)で固定して固定部材11としてモジュール作成した。中空糸の本数は参考実施例1と同様、945本とした。その他の条件は参考実施例1と同様として、吸引濾過を行った。
【0078】
(比較例1)
図24(A)(B)(C)は比較例を示す。参考実施例1と同じABS樹脂製の集水ヘッダー13に、同様の中空糸10を用い、充填率を同じにして中空糸10を密集させて挿入し、上端は開口状態を保ち、図24(B)に示すように、下端は封止するようにし、その上端部及び下端部を固定用樹脂(ウレタン樹脂)で固定して固定部材11および下端固定部材60として中空糸膜モジュールを作製した。中空糸の本数は参考実施例1と同様、945本とした。隣接する膜集束体間の空隙部に空気供給用のパイプを挿入してバブリングを行うと共に、吸引濾過を行った。その他の条件は参考実施例1と同様とした。
【0079】
(濾過条件)
設定濾過流量:6m/day
水温:20〜28℃(グラフは25℃補正値)
逆洗浄:頻度1回/10分、圧力200kPa、時間30秒
【0080】
図25は参考実施例1、実施例、比較例1の結果を示し、濾過日数と膜濾過圧の関係を表している。参考実施例1および実施例は濾過初期の段階においてやや膜濾過圧が上昇するものの、濾過日数が10日頃からはほぼ一定となり、30日まで良好な濾過性能を持続可能であることが確認できた。
一方、比較例1は、濾過日数の経過と共に、膜濾過圧の値が上昇を続け、濾過性能の回復が見られず、さらには濾過性能を持続できず、30日で停止した。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の濾過装置は、中空糸表面に気体噴射手段により供給した空気を付与して、中空糸の表面又は中空糸間に堆積した懸濁成分を効率よく剥離除去することができることから、浄水分野に限らず、膜分離活性汚泥法が対象とする下水分野に用いて最適である。また、産業排水、畜産排水等の処理分野にも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 中空糸膜モジュール
2 被処理液
3 浸漬槽
10 中空糸
11 固定部材
13 集水ヘッダー
14 集水管
20 清浄用パイプ
21 気体噴射穴
25 保持材
27 ブロア
28 貫通穴
29 スカート部
30 散気板
35 保護シート
40 連結プレート
41 筒部
45 シート材
47 固定用プレート
48 テープ材
70 折り返し用のロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の中空糸を懸濁成分を含む被処理液中に浸漬し、該被処理液の固液分離を行って処理液を透過させる浸漬型吸引濾過装置または外圧式濾過装置であって、
二つ折りした前記中空糸と、
前記中空糸の折曲側と反対側の開口端部と連通させる処理液集水手段と、
前記中空糸の折曲部を空隙をあけて保持する棒状あるいは平板形状のロッドからなる保持材と、
前記中空糸の折曲側より前記開口端部側に向けて清浄用の気体を噴射する気体噴射手段と、
を備え、
前記複数本の二つ折りされた中空糸はすだれ状に並列し、その折曲部の対向する両側部の間に前記保持材を通して、該折曲部を保持し
前記保持材により保持される中空糸と保持材の間あるいは/および中空糸同士の間の少なくとも一部には、前記気体噴射手段より噴射される気体流通用の空隙をあけていることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記中空糸は軸線方向を縦方向として配置し、前記開口端部は上方配置する一方、前記保持材で支持する他端側は下方配置とし、該保持材の下方に前記気体噴射手段を配置している請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記ロッドの軸線方向に並列させる前記中空糸同士は密接或いは間隔をあけると共に、複数本毎に2.0〜10.0mmの間隔をあけて並列している請求項1または請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
U形状とした拡き防止枠を設け、前記各中空糸の折曲部から両側部を外側から囲んでいる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項5】
複数本の前記ロッドを軸線方向と直交方向に平行に配置し、隣接配置するロッドの上下高さを変えている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記ロッドに上下方向に貫通する気体流路を設けている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項7】
前記清浄用の気体を噴射する気体噴射手段として、前記保持材の下方に配置した1本の加圧気体供給管を備え、該加圧気体供給管に1個、あるいは複数個の気体噴射穴を設けている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項8】
前記中空糸を複数本並設した中空糸膜モジュールを設け、該中空糸膜モジュールの複数本の中空糸の開口した一端側は固定部材に接着固定すると共に、該固定部材に集水ヘッダーからなる前記処理液集水手段を取り付け、前記集水ヘッダーを集水管に接続し、該集水管に濾過処理後の処理液を吸引し、かつ、
該中空糸膜モジュールの複数本の中空糸の他端側は前記保持材で保持している請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項9】
前記保持材の外周に沿って前記気体噴射手段の方向に突出したスカート部を設け、該スカート部に囲まれた領域から前記噴射される気体を散逸させない構成としている請求項8に記載の濾過装置。
【請求項10】
前記スカート部の内部に仕切るように、散気穴を1つまたは複数個穿設した空気分配用の板を設けている請求項9に記載の濾過装置。
【請求項11】
前記中空糸は、PTFE多孔質材料を含むフッ素系樹脂からなる請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−56346(P2013−56346A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286303(P2012−286303)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2008−522572(P2008−522572)の分割
【原出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】