説明

瀝青質結合剤およびその製造方法

【課題】瀝青質結合剤の温度に対する高い感受性、骨材への接着の限界、低温における特性の悪さ、疲労および衝撃に対する抵抗性の低さ等を改善する方法の提供。
【解決手段】瀝青質結合剤を製造するための方法と、瀝青質結合剤。瀝青質結合剤を調製するための方法は、0.05〜5重量%の酸と、0.5〜25重量%のラバークラムと、70〜99.5重量%の瀝青とを混合する段階を含む。また、結合剤を含む瀝青質コンクリート、その調製方法、およびその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、瀝青質結合剤を調製するための方法と、本発明の方法によって得ることができる瀝青質結合剤と、本発明の結合剤を含有する瀝青質コンクリートである。
【背景技術】
【0002】
瀝青質結合剤は、特に、道路、屋根材、表面塗装およびシーラント分野において使用される。アスファルトの使用は道路建設のために言及されることがある。
【0003】
本発明の意味において、「瀝青質結合剤」とは瀝青および/または瀝青を含有する任意の組成物を意味する。従って、瀝青質結合剤は、本発明において、純粋な瀝青を含有する結合剤および任意の種類の通常の添加剤、特にポリマーを含有する結合剤を意味する。本発明の範囲において、結合剤または瀝青質結合剤という用語は無差別に使用される。
【0004】
一般に、瀝青質コンクリートは瀝青質結合剤および骨材または鉱質充填材を含有する。これらは石または砂利、砂および粉鉱であってもよい。瀝青質コンクリートは瀝青質混合物と呼ばれることもある。
【0005】
しかし、この結合剤は、異なる適用にこのように使用する場合には、数多くの欠点がある:特に温度に対する高い感受性、骨材への接着の限界、低温における特性の悪さ、疲労および衝撃に対する抵抗性の低さが記載されることがある。
【0006】
また、瀝青質結合剤は取り扱いが困難であり、特殊な技術を必要とする。
【0007】
従って、道路、特に摩耗層については、主要な要素は、約95重量%の骨材、および結合剤として使用する約5重量%の瀝青からなる瀝青質コンクリートである。この場合には、結合剤としての瀝青の役割は、種々の機械的起源の応力:熱破壊、疲労およびわだち跡を受ける道路の特性に関しては卓越している。
【0008】
約-10℃の領域の低温では、結合剤はガラス状態へと展開し、脆弱になる。横断温度ひび割れ(transverse thermal cracking)と呼ばれる横方向の長い亀裂が温度応力により形成することがある。
【0009】
約0℃の高い温度でも、道路は疲労によりひび割れることがある。これにより、多数の、主に縦方向の相互接続したひび割れが生じる。
【0010】
最後に、約60℃以上のさらに高温では、結合剤は益々流動性が大きくなり、粘弾性状態から、粘度が益々低下しているニュートン粘度状態に変化する。従って、大型車、すなわち重量物運搬車を含む車両が道路を何度も通過すると、瀝青質混合物の永久的な変形、従って道路のその後の変形を伴う瀝青質結合剤の永久的な変形の一因となる。この現象はわだち跡を生じる。
【0011】
結合剤はまた、道路の防水性を保証し、それによって道路の基礎を防護する。
【0012】
道路、従って瀝青質結合剤に必要な主な特徴は、低温、典型的には約-15℃以下の温度におけるひび割れに対するすぐれた抵抗性と、高温、典型的には約60℃以上の温度における変形の少なさおよび耐久性を改善するための疲労に対するすぐれた抵抗性である。
【0013】
授業者は、一般に瀝青質結合剤の欠点を克服し、それによってそれらの特性、特にレオロジー特性を改善するために添加剤を使用する。
【0014】
これらの瀝青質結合剤に鉱酸またはリン化合物を添加することは特に既知である。例えば、国際特許国際公開公報第98/44047号(特許文献1)は、瀝青とポリマーとポリリン酸の混合物を記載している。酸の添加は、低温および高温における瀝青質結合剤の粘弾性を改善する。また、このような酸の添加により、混合物は、少量のポリマーを添加するだけですぐれた特性を維持することができる。国際特許国際公開公報第96/28513号(特許文献2)によると、瀝青と添加したポリマー混合物を酸型添加剤で処理すると、瀝青とポリマーの化学結合を促進することができる。
【0015】
これらの瀝青質結合剤に加硫クラムラバーを添加することも既知である。例えば、フランス特許出願第FR 2 764 897号(特許文献3)は、瀝青と、ラバークラム(rubber crumb)と、道路結合剤として使用するコポリマーの混合物を記載している。フランス特許出願第FR 2 732 702号(特許文献4)は、瀝青と、ラバークラムと、SBS、SBR、EVA、EMA、EPDM型のコポリマーなどのオレフィン系不飽和合成ポリマーおよびニトリルゴムである消化(digestion)触媒の混合物を記載している。フランス出願第FR 2 657 447号(特許文献5)は、瀝青-ゴム混合物を調製するための方法を記載している。
【0016】
瀝青にゴムを添加すると、混合物の特性を改善し、道路表面に大きな柔軟性を与え、低温における疲労抵抗性を改善し、騒音および光の反射現象を低下させることができる。この目的のためにゴムくずを使用することは、種々の起源の古いタイヤのリサイクルにも寄与する。
【0017】
ラバークラムは、砂と骨材の混合物に添加することによって、いわゆる「乾式」導入によって使用しても、または「湿式」導入として既知であるように、結合剤に直接高温導入してもよい。得られる特性は、使用する技術によって異なる。
【0018】
瀝青へのラバークラムの高温導入により、結合剤の特性を改変することができる。
【0019】
しかし、このラバークラムの使用は問題がないわけではない。その理由は、これらの製品は比較的高い割合で使用しなければならないので、瀝青への導入および得られる瀝青混合物の粘度に関する問題が生じるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際特許国際公開公報第98/44047号
【特許文献2】国際特許国際公開公報第96/28513号
【特許文献3】フランス特許出願第FR 2 764 897号
【特許文献4】フランス特許出願第FR 2 732 702号
【特許文献5】フランス出願第FR 2 657 447号
【発明の概要】
【0021】
驚くべきことに、出願人らは、瀝青にラバークラムおよび酸を導入することによって、瀝青質結合剤の特性、特にレオロジー特性を改善することができることを見出した。
【0022】
驚くべきことに、出願人らは、酸とラバークラムの相乗作用を確かめた。
【0023】
従って、本発明の主題は、
a) 0.05〜5重量%の酸と、0.5〜25重量%のラバークラムと、120〜220℃の温度に加熱した70〜99.5重量%の瀝青とを混合する段階、
b)混合物を、撹拌しながら15分〜10時間、有利には15分〜3時間、120〜220℃の温度に加熱する段階、ならびに
c)任意で、混合物中に存在する可能性のある気泡を脱気する段階を含む、瀝青質結合剤を調製するための方法である。
【0024】
本発明の意味において、酸は、任意のブレンステッドおよびルイス酸を意味する。それらは鉱酸であってもまたは有機酸であってもよい。
【0025】
本発明の意味において、鉱酸は、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、亜リン酸、ヒドロリン酸、リン酸、ポリ-リン酸、スルホン酸、またはこれらの酸の金属塩、例えば硝酸塩、硫酸塩、および鉄、セリウム、銅、アルミニウムの塩化物を意味する。
【0026】
本発明の意味において、有機酸は、炭素原子数1〜22のモノまたはポリカルボン酸、特に酒石酸、クエン酸、シュウ酸、スルホン酸、アジピン酸、有利には炭素原子数9以上であり、有機リン酸塩の酸、有機ホスホン酸塩の酸、特にアルキルホスホン酸(OPA)、有機ホスフィン酸塩(organophospinate)の酸、アミノ酸、アミノホスホン酸(AMPA)、アミノリン酸、アミノホスフィン酸、カルバミン酸、有機チオリン酸、有機チオホスホン酸、有機チオホスフィン酸、チオ酸を意味する。
【0027】
有利には、使用する酸は、硫酸、リン酸、ポリリン酸または有機リン酸塩の酸である。さらに有利には、添加する酸はリン酸またはポリリン酸である。
【0028】
有利には、リン酸は、式H3PO4を有するモノリン酸とも呼ばれるオルトリン酸である。本発明のポリリン酸は、書名「Phosphorus, an outline of its Chemistry, Biochemistry and Uses」第5版、D. E. C. Corbridge、Elsevier、1995年の170ページおよび180〜182ページに記載されているものの中から選択することができる。
【0029】
ポリリン酸は、有利には、式H4P2O7を有するピロリン酸または二リン酸、式H5P3O10を有するトリリン酸、式Hn+2PnO3n+1を有するポリリン酸、式HnPnO3nを有するメタリン酸またはそれらの混合物から選択される。
【0030】
上記の文献「Phosphorus, an outline of its Chemistry, Biochemistry and Uses」の181ページに示されているように、リン酸または市販のポリリン酸は、酸の重量に関する割合として表されるP2O5またはH3PO4当量によって特徴づけられる。
【0031】
従って、H3PO4当量が100を超えるいわゆるスーパーリン酸のクラスが存在する。これらのスーパーリン酸は最も有利なポリリン酸である。
【0032】
酸は遊離の形態で使用してもまたは塩の形態で使用してもよい。
【0033】
酸は液体または固体の形態であってもよい。酸を液体の形態で使用する場合には、多孔性鉱質支持体にオルトまたはポリリン酸を含浸させることによって粉末形態にしてもよい。多孔性鉱質支持体は多孔性が高い鉱質固体であり、その容積は、有利には、少なくとも1 ml/gであり、さらに有利には、少なくとも3 ml/gである。それは、特に、シリカ、アルミナ、シリコアルミネート(silicoaluminate)から選択される。
【0034】
多孔性が高い鉱質固体にリン酸またはポリリン酸を含有する化合物を付着させて使用する利点は、この化合物が粉末または顆粒の形態で存在するので、粘度の高い液体の酸溶液と比べて容易に取り扱うことができるということである。
【0035】
この化合物のさらなる利点は、特に高温における硬さに関して、この化合物を導入する瀝青質製品を強化することができることである。
【0036】
最後に、この化合物は、リン酸またはポリリン酸と同じ特性を維持する。
【0037】
本発明の有利な別形態によると、段階a)において添加される酸の重量は、混合物の総重量に対して0.5〜2重量%である。
【0038】
ラバークラムは、スチレン-ブタジエン型の天然もしくは合成ゴムから入手しても、またはタイヤ、ゴムマットもしくは靴底を粉砕することによって入手してもよい。
【0039】
ラバークラム組成の例として、以下のおおよその組成が与えられる:

【0040】
金属および布は、粉砕後、ラバークラムから除去されるのは明らかである。
【0041】
異なる種類のラバークラム間の本質的な差は、軽車両のタイヤの天然ゴムまたは大型車両のタイヤの天然ゴムに結合しているポリブタジエン、SBRなどの1種以上の合成エラストマーでありうるゴムの種類にある。
【0042】
ラバークラム粒子のDSC、示差走査熱量測定分析は、大型車両のタイヤ由来のラバークラムは-60℃程度の一定に近いガラス転移温度を示し、軽車両のタイヤ由来のラバークラムは-35〜-100℃と変動が大きい;このばらつきは使用されているエラストマーの多様性による可能性が高い。
【0043】
粒子サイズは、目的の用途に応じて数多くのグレードを提供する粉砕工場によって規定される。最も頻度の高いグレードは、0.5〜1.5 mm、1〜2 mm、1〜3 mm、1〜4 mm、1〜5 mmおよび1〜7 mmの粒子サイズに相当する。
【0044】
本発明の範囲において、ラバークラムは径が5 mm未満であり、有利にはラバークラムの径は0.0001〜2 mmであり、さらに有利には1.5 mm未満である。
【0045】
本発明の有利な別形態によると、段階a)において混合物に添加されるラバークラムの重量パーセントは、混合物の総重量に対して1〜10重量%であり、さらに有利には混合物の総重量に対して3〜7重量%である。
【0046】
混合物に添加される瀝青の総量は、混合物の総重量から酸とラバークラムの添加量を引いたものに相当する。
【0047】
本発明の意味において、瀝青は、任意の純粋な瀝青組成物および任意の種類の通常の添加剤、特にポリマーを含有する任意の瀝青系組成物を意味する。
【0048】
本発明の他の有利な別形態によると、段階a)において添加される瀝青は140〜190℃の温度に加熱される。
【0049】
次いで、有利には、段階b)で得られる混合物は140℃〜190℃の温度に加熱される。
【0050】
本発明の新規方法は、ラバークラムの膨潤を促進するために高温に加熱しなければならない従来の高温方法より穏やかな条件において実施される。これはまた、瀝青の酸化現象を制限し、従来のポリマー-瀝青混合物の均一化時間を短縮する。
【0051】
本発明の有利な別形態によると、段階a)は、瀝青と酸とを混合し、次にラバークラムを添加することによって実施される。
【0052】
本発明の他の有利な別形態によると、段階a)は、酸とラバークラムとを事前に混合してからそれらを瀝青に添加することによって実施される。
【0053】
さらなる有利な別形態によると、段階a)は、瀝青の少なくとも一部とラバークラムとを混合し、次に酸を添加し、任意で、最後に残りの量の瀝青を添加することによって実施される。
【0054】
本発明のさらなる主題は、上記に記載する方法を使用して得ることができる瀝青質結合剤である。
【0055】
ラバークラムを含むが、酸を含まない瀝青質結合剤、いわゆる酸不含結合剤と、本発明の瀝青質結合剤、いわゆる酸含有結合剤の135℃における粘度比は10〜70%であり、有利には10〜50%である。酸不含結合剤および酸含有結合剤の製作に使用する瀝青は同じであり、特にそれは酸を除いて、ポリマーなどの同じ添加剤を含有する。本発明の瀝青質結合剤は、同じくらいの温度では酸不含結合剤より粘度が低い。
【0056】
ラバークラムを含むが、酸を含まない瀝青質結合剤、いわゆる酸不含結合剤と、本発明の瀝青質結合剤、いわゆる酸含有結合剤の臨界温度差は1〜50℃であり、有利には1〜25℃である。酸不含結合剤および酸含有結合剤の製作に使用する瀝青は同じであり、特にそれは酸を除いて、ポリマーなどの同じ添加剤を含有する。本発明の瀝青質結合剤は、酸不含結合剤より臨界温度が高く、臨界温度は同じ操作モードを使用して測定される。
【0057】
AASHTO標準のように、臨界温度はいわゆる高温操作モードまたはいわゆる低温操作モードを使用して測定することができる。
【0058】
高温操作モードを使用する臨界温度の測定は標準的なHTPP5-98またはEN1427に記載されている。軟化点(臨界温度)は、いわゆるリング&ボール試験を使用して測定される。
【0059】
低温操作モードを使用する臨界温度の測定は標準的なHTPP1-98またはAASHTOに記載されている。ストレス下における変形温度は、ビーム曲げレオメータ試験(BBR)を使用して測定される。
【0060】
本発明の方法を用いると、ラバークラムの割合が低いがラバークラムの割合が高い従来技術の瀝青質結合剤と同じ特性、特に同じレオロジー特性を有する瀝青質結合剤を得ることが可能になる。
【0061】
本発明の瀝青質結合剤はまた、酸とラバークラムの望ましい濃度および望ましい特性、特にレオロジー特性を有する瀝青質結合剤を得るために、酸とラバークラムの濃度が高く、次いで純粋な瀝青および/または任意の瀝青質結合剤で高温希釈されるマスター混合物(master-mix)の形態で調製されてもよい。
【0062】
本発明の瀝青質結合剤は建築材料、特に屋根材に使用することができる。それはまたシーラント、表面塗装またはリフレクションクラック防護システムとしても使用することができる。
【0063】
本発明の瀝青質結合剤はまた、特に道路の摩耗層もしくは基礎表面、表面塗装またはリフレクションクラック防護システムとして使用することができる瀝青質コンクリートの高温または低温製造におけるポリマー瀝青としても使用することができる。
【0064】
本発明の主題はまた、本発明の結合剤と必要な量の骨材とを含有する瀝青質コンクリートである。
【0065】
本発明はまた、本発明の瀝青質コンクリートを調製するための方法に関する。
【0066】
本発明の有利な別形態によると、本発明の瀝青質コンクリートは、高温方法を使用して調製される。骨材は、120〜220℃の温度で撹拌しながら本発明の結合剤に添加される。有利には、骨材は、120〜190℃の温度で撹拌しながら、結合剤に添加される。
【0067】
本発明の有利な別形態によると、本発明の瀝青質コンクリートは低温方法を使用して調製される。瀝青質コンクリートを調製する低温方法は、
i)水と、本発明の瀝青質結合剤と、乳化剤とを周囲温度で混合することによって瀝青のエマルジョンを調製する段階、
ii)周囲温度で撹拌しながら、段階i)で得た瀝青エマルジョンに骨材を導入する段階、
iii)段階ii)で得たエマルジョンを広げて、段階ii)で得た混合物の均一な層を得る段階、
iv)瀝青エマルジョンを破砕する段階を含む。
【0068】
いかなる種類の乳化剤も段階i)において使用することができる。
【0069】
本発明の別形態によると、任意で、酸と事前に混合したラバークラムを、任意に酸を含有する瀝青に、骨材と同時に添加する。
【0070】
好ましくは、骨材は、瀝青/ラバークラム/酸の混合の後に、すなわち本発明の結合剤に添加される。
【0071】
本発明のコンクリートは道路の建設、特に道路の摩耗層に使用される。
【0072】
本発明のコンクリートはまた、表面塗装またはリフレクションクラック防護システムとしても使用することができる。
【0073】
本発明のさらなる主題は、瀝青質結合剤へのラバークラムの導入を促進するための酸の使用である。
【0074】
本発明はまた、0.02重量%〜91重量%の酸と、9〜99.98重量%のラバークラムとを含有するプレミックスに関する。有利には、それは5〜50重量%の酸と、50〜95重量%のラバークラムとを含有する。有利には、それは10〜20重量%の酸と、80〜90重量%のラバークラムとを含有する。有利には、このプレミックスは、本発明の瀝青質結合剤を調製するための方法に使用される。
【0075】
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明の特許請求の範囲は限定しない。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0076】
実施例1:改変型瀝青の調製
瀝青をビーカーに入れる。次いで、瀝青が完全に液化するまで、ホットプレートで170℃に加熱する。
【0077】
次いで、添加剤を導入する。添加剤は通常使用される任意の添加剤、特にポリマーおよび/または加硫ラバークラムおよび/または酸であってもよい。
【0078】
混合物は、回転式スターラーを使用して300 rpmで撹拌しながら、約170℃において120分維持する。瀝青の特性が劣化しないように、温度は180℃未満に厳密に維持する。
【0079】
混合後、形成されている可能性のあるいかなる気泡も除去するために、低速で撹拌しながら、混合物を約170℃において10分維持する。
【0080】
次いで、混合を終了し、使用準備完了とする。
【0081】
実施例2:改変型70/100SHELL瀝青のレオロジー特性の測定
SHELL、Petit Couronne、フランスから入手した70/100 Penグレードの瀝青を試験に使用した。
【0082】
1)レオロジー試験
熱変形は、瀝青質混合物を調製する際に考慮しなければならない決定要素である。結合剤の仕様は、対応する混合物がわだち跡にすぐれた抵抗性を有するように設計される。欧州では、高温における結合剤の特性は、リング&ボール試験によって評価される。米国では、SHRPが、動的な剪断流動性測定器(Dynamic Shear Rheometer)(DSR)試験を使用して評価される複合剪断係数/位相角比に基づいた基準を開発した。
【0083】
改変型瀝青のレオロジー特性は、SHRP標準(AASHTO-TP5-98)由来の手法を使用して特徴付けられる。
【0084】
使用される周波数は、25℃〜60℃の温度範囲に対して7.8 Hz〜200 Hzの範囲である。
【0085】
レオロジー試験は、Metravib RDS VA 2000ビスコアナライザーを使用して環状剪断において実施する。
【0086】
液体の瀝青を剪断セルに添加してから、110℃に加熱する。温度を約45℃に低下すると、瀝青は流動せず、構造物全体が成形体になり、測定の準備ができる。
【0087】
瀝青試料の厚さは1 mmである。
【0088】
試験は、異なる温度、30、40、50および60℃において、物質の挙動の追跡を可能にする周波数範囲、すなわち7.8-15.6-31.2-62.5-125および200 Hzにおいて実施する。
【0089】
2)加硫ゴム形態のポリマーの存在下における改変型瀝青のレオロジー特性
得られる結果は、複合剪断係数G*、弾性要素G'および係数の粘度要素G''並びに位相角δに関する。
【0090】
これらの結果は、温度に対する等周波数(等時間線)または周波数に対する等温度(等温度線)で表すことができる。
【0091】
この実施例では、瀝青調製方法およびレオロジー試験は、以前に記載されているように実施した。
【0092】
加硫ラバークラムは、大型車両のタイヤを低温粉砕することによって得られるクラム(粒子サイズDmax<500ミクロン)(Micronis)である。
【0093】
SBSポリマー(鎖状SBS)はミクロン化した粉末D1101 Kratonである。
【0094】
使用したポリリン酸(PPA)は105%縮合酸(Rhodia)である。
【0095】
4つの製品を比較した:
i)基準瀝青:添加剤なしのShell 70/100
ii)およびiii)加硫ラバークラムを添加した瀝青:5および10重量%
iv)スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)を添加した瀝青:3重量%。
【0096】
以下の表Iは、周波数7.8 Hzについて60℃で測定した値をまとめている。
【0097】
(表1)

【0098】
加硫ラバークラムまたはSBSによって提供される補強、すなわち硬化作用が明らかに見られる。10重量%加硫ラバークラムまたはSBSの存在下において、複合係数G*の増加が観察され、特に粘度要素G"の増加が観察される。
【0099】
位相角δは実質的に低下し、加硫ラバークラムまたはSBSを添加した瀝青の弾性挙動がはるかに大きいと解釈される。
【0100】
10重量%加硫ラバークラムの添加により、3重量%のSBSで得られるものに非常に近い、非常に顕著な弾性挙動を有する改変型瀝青が得られる。
【0101】
以下の表2は、25℃における係数G*の値と、40℃における位相角δの値と、周波数7.8 Hzについての臨界温度Tcをまとめている。
【0102】
臨界温度Tcは、SHRP手法から着想した基準を使用して測定される。Tcは、G*/sinδ比が1100 Paより大きい温度である。
【0103】
瀝青の熱感受性は感受性指数S.I.を使用して測定され、熱感受性指数S.I.は7.8 Hzにおける線log G*=f(T)の傾き、いわゆるaによって規定される。
【0104】
これは以下の等式を与える:

【0105】
(表2)

【0106】
臨界温度Tcは、5重量%加硫ラバークラムの添加時および添加後に、加硫ラバークラムの存在下において大幅に上昇する。
【0107】
同様に、5重量%の加硫ラバークラムを添加すると同時に、熱感受性指数SIの実質的な低下が見られる。
【0108】
40℃の温度における位相角δは大幅に減少し、改変型瀝青の弾性挙動が大きいと解釈される。この影響は、加硫ラバークラムの含量が高くなるほど顕著である。
【0109】
10重量%加硫ラバークラム添加時で、周囲温度25℃において、実質的な係数の増加、すなわち複合剪断係数G*、弾性係数G'および粘度係数G"の増加が見られる。
【0110】
3)加硫ゴム形態のポリマーの存在下においてポリリン酸で改変した瀝青のレオロジー特性
得られる結果は、複合係数G*、弾性要素G'および粘度要素G"並びに周波数および温度に関する位相角に関する。この実施例では、前実施例と同様にShell瀝青を使用し、瀝青調製方法およびレオロジー試験は、以前に記載されているように実施した。
【0111】
2つの製品を比較した:
i)添加剤を含有しない基準瀝青Shell 70/100
ii)5重量%加硫ラバークラムを添加し、1重量%ポリリン酸(PPA)で改変した瀝青。
【0112】
以下の表3は、周波数7.8 Hz、60℃において測定した値をまとめている。
【0113】
(表3)

【0114】
ポリリン酸(1重量%)の存在により、ラバークラム含量を大幅に低下すると同時に性能を維持することが可能になる。
【0115】
従って、ポリリン酸(1重量%PPA)の存在下において5重量%加硫ラバークラムを添加することにより、顕著に改善されたレオロジー特性を得ることが可能になる。係数値G'およびG"の増加は、位相角δの実質的な低下と共に観察される。これは、ポリリン酸と関連して加硫ラバークラムを添加することによって提供される補強作用、すなわち硬化作用を明らかに示している。改変型瀝青の挙動は明らかに弾性が大きく、すなわち回復不可能な変形に対する感受性が小さい。
【0116】
1重量%ポリリン酸および5重量%加硫ラバークラムを添加して60℃において得られる性能特徴は、3重量%SBSで観察されるものよりすぐれている。
【0117】
以下の表4は、25℃における係数G*値と、40℃における位相角δを、周波数7.8 Hzにおける臨界温度Tcと共にまとめている。
【0118】
臨界温度Tcは、SHRP手法から着想した基準を使用して測定される。Tcは、G*/sinδ比が1100 Paより大きい温度である。
【0119】
瀝青の熱感受性は、S.I.熱感受性指数を使用して求められる。
【0120】
(表4)

【0121】
周囲温度25℃における弾性特性は大幅に増加する:複合係数G*および係数値G'およびG"ははるかに高い。
【0122】
臨界温度Tcは、ポリリン酸(1重量%)および加硫ラバークラム(5重量%)の関連によってかなり上昇する。
【0123】
同様に、ポリリン酸(1重量%)および加硫ラバークラム(5重量%)で改変した瀝青の熱感受性指数SIの実質的な低下が観察される。
【0124】
ポリリン酸(1重量%)および加硫ラバークラム(5重量%)を添加した瀝青の40℃における位相角δは非常に大きく低下し、改変型瀝青の弾性挙動が大きいと解釈される。この角度は、3重量%SBSポリマー粉末で改変した瀝青を使用して得られるものより小さい。
【0125】
ポリリン酸(1%)と加硫ラバークラム(5重量%)の混合物で瀝青を改変すると、3重量%SBSポリマーを含有するポリマー改変型瀝青(PMB)の性能が得られる。
【0126】
ポリリン酸(1重量%)を使用すると、添加される加硫ラバークラムの量を大幅に削減できると同時に、得られる瀝青の特性を維持することができる:10重量%加硫ラバークラムで改変した同じ瀝青と比較して、これらは改善されている。
【0127】
加硫ラバークラム含量のこのような低下は、160℃における液体瀝青のレオロジーを実質的に改善する。
【0128】
4)加硫ゴム形態のポリマーの存在下においてポリリン酸で改変した瀝青のブルックフィールド粘度
上記のように調製した瀝青および改変型瀝青のブルックフィールド粘度を120℃〜160℃で測定した。
【0129】
5つの製品を比較した:
i)添加剤を含有しない基準瀝青Shell 70/100
ii)1重量%ポリリン酸(PPA)で改変した瀝青
iii)およびiv)加硫ラバークラム5および10重量%を添加した瀝青
iv)1重量%ポリリン酸および5重量%加硫ラバークラムで改変した瀝青。
【0130】
135℃における粘度値を表5に示す。
【0131】
(表5)

【0132】
改変型瀝青の粘度は、10重量%加硫ラバークラムを添加することによって大幅に増加する。
【0133】
ポリリン酸(1重量%)の存在の利点を明らかに見ることができる:1重量%ポリリン酸+5重量%加硫ラバークラムの組み合わせは瀝青に有利な粘度を与える。
【0134】
実施例3:改変型80/100 PROAS瀝青のレオロジー特性の測定
PROAS、スペインによって調製されたPenグレード80/100の瀝青をこれらの試験に使用した。
【0135】
1)添加剤の評価、改変型瀝青の調製
4つのグレードの加硫ラバークラムを比較した:
グレード1:Dmax<500ミクロン(Mesalles)
グレード2:Dmax<800ミクロン(Necaflex)
グレード3:Dmax<400ミクロン(Necaflex)
グレード4:Dmax<400ミクロン(Necaflex)。
【0136】
グレード1、2および3は機械的粉砕によって得た。グレード4は低温粉砕によって得た。
【0137】
使用したポリリン酸(PPA)は105%縮合酸(Rhodia)であった。
【0138】
瀝青/ラバークラム/酸混合物は、(実施例1に示すように)加熱(170℃)し、120分間撹拌して調製した。
【0139】
2)レオロジー試験
改変型瀝青のレオロジー特性は、SHRP手法(AASHTO-TP5-98)により実施した:動的な剪断流動特性測定器(DSR)試験。
【0140】
レオロジー試験は、Metravib RDS VA 2000ビスコアナライザーを使用して環状剪断で実施した。使用した周波数は、25℃〜60℃と変動する温度範囲に対して1.5 Hz〜125 Hzの範囲であった。
【0141】
液体の瀝青を、あらかじめ110℃に加熱しておいた剪断セルに入れた。温度を約45℃に低下すると、瀝青は流動せず、構造単位は成形体になり、測定試験の準備ができた。
【0142】
瀝青試料の厚さは1 mmである。
【0143】
試験は、25、30、40、50および60℃の異なる温度において、物質の挙動の追跡を可能にする周波数範囲、すなわち1.5-7.8-15.6-31.2-62.5および125 Hzにおいて実施した。
【0144】
3)加硫ラバークラムの存在下におけるポリリン酸で改変した瀝青のレオロジー特性、加硫ラバークラムおよびポリリン酸含量の影響(グレード1クラム)
得られる結果は、複合係数G*とも呼ばれるCoulomb係数、弾性G'要素および粘度要素G"および位相角δに関する。
【0145】
瀝青を調製する方法およびレオロジー試験を実施する方法は以前に記載されている。
【0146】
5つの製品を比較した:
i)添加剤を含有しない基準瀝青(80/100 Proas)
ii)ポリリン酸1重量%で改変した瀝青
iii)加硫ラバークラム(グレード1)10重量%で改変した瀝青
iv)加硫ラバークラム(5重量%)を添加し、ポリリン酸(1重量%)で改変した瀝青
v) 加硫ラバークラム(5重量%)を添加し、ポリリン酸(0.5重量%)で改変した瀝青。
【0147】
以下の表6は、25℃における係数G*の値、40℃における位相角δの値および1.5 Hzの周波数における臨界温度Tcの値をまとめている。
【0148】
(表6)

【0149】
補強作用、すなわちラバークラムの添加によって提供される硬化作用を明らかに見ることができる。G*係数の増加は、10重量%加硫ラバークラムの存在下において観察される。
【0150】
位相角δは実質的に低下し、これは改変型瀝青の弾性挙動が大きいと解釈される。
【0151】
臨界温度Tcは、5重量%クラムの添加時および添加後に、加硫ラバークラムの存在下において大幅に上昇する。
【0152】
40℃の温度における位相角δは大幅に低下し、これは改変型瀝青の弾性挙動が大きいと解釈される。
【0153】
最もすぐれた性能は、1重量%ポリリン酸+5重量%加硫ラバークラムで得られる。
【0154】
表7は、25℃における係数G*の値および熱感受性指数SIの値をまとめている。
【0155】
(表7)

【0156】
10重量%加硫ラバークラムを添加した場合、係数値、すなわち周囲温度25℃における複合係数G*、弾性係数G'および粘度係数G"の大幅な増加が見られる。
【0157】
同様に、5重量%加硫ラバークラムの添加時および添加後に熱感受性指数SIの実質的な低下が観察される。
【0158】
4)ポリリン酸および添加したラバークラムにより改変した瀝青のレオロジー特性、異なるラバークラム製品の比較
得られる結果は、複合係数G*、弾性要素G'、粘度要素G"および位相角δに関する。
【0159】
この実施例において、瀝青を調製する方法およびレオロジー試験は以前に記載されているように実施した。
【0160】
異なるグレードのラバークラムを1つの同じ組成(瀝青+1重量%ポリリン酸+5重量%加硫ラバークラム)に基づいて比較した。
i)酸およびグレード1のラバークラムで改変した瀝青
ii)酸およびグレード2のラバークラムで改変した瀝青
iii)酸およびグレード3のラバークラムで改変した瀝青
iv)酸およびグレード4のラバークラムで改変した瀝青。
【0161】
ポリリン酸(1重量%PPA)の存在下において5重量%の加硫ラバークラムを添加すると、顕著に改善されたレオロジー特性が得られる。係数値G'およびG''の増加並びに位相角δの大幅な低下が観察される。
【0162】
以下の表8は、周波数1.5 Hzを用い、異なる温度において測定した値をまとめている。
【0163】
(表8)

【0164】
改変型瀝青の挙動は明らかに弾性が大きい。
【0165】
試験した異なるグレードのラバークラムのうち、グレード2および3(Necaflex)は最もすぐれた特性を有すると思われる。粒子サイズは大きな影響を与えない:Dmax<800μmおよびDmax<400μm。
【0166】
グレード1(Mesalles)は、性能がわずかに低いと思われる。
【0167】
低温粉砕のグレード4(Necaflex)は、標準的な粉砕由来のグレード2より実質的に性能が劣る。
【0168】
表9は、25℃における係数値および熱感受性指数SIをまとめている。
【0169】
(表9)

【0170】
ラバークラムグレード2および3は、実質的に性能がすぐれていると思われる
【0171】
実施例4:ゴム導入時間の影響、PROAS 80/100(スペイン)
PROAS、スペインから購入可能な80/100 Penグレード瀝青を試験に使用した。
【0172】
使用したクラムは粒子サイズDmax<400ミクロン(グレード3)のNecaflexクラムであった。
【0173】
1重量%ポリリン酸で改変した瀝青に170℃において導入した。
【0174】
組成は、瀝青+1重量%105ポリリン酸+5重量%加硫ラバークラムであった。
【0175】
導入時間を試験した:
i)2時間
ii)10時間。
【0176】
以下の表10は、異なる温度および周波数1.5 Hzにおいて測定した値を示す(瀝青+1重量%ポリリン酸+5重量%グレード3クラム)。
【0177】
(表10)

【0178】
性能の顕著な改善は、混合時間と共に見られた(SBSの場合と同様):位相角δ(40℃)は実質的に低下し、臨界温度は87℃から95℃に上昇する。
【0179】
実施例5:酸/クラムプレミックスを添加した瀝青
PROAS、スペインから購入可能な80/100 Penグレード瀝青を試験に使用した。
【0180】
グレード2のラバークラムおよび実施例2に記載の105%縮合ポリリン酸を用いて周囲温度においてプレミックスを調製した。このプレミックスは、5/1の比(16.65 gの酸あたり83.30gのクラム(プレミックス100g))にした。
【0181】
1%の酸および5%のクラムを含有する改変型瀝青を得るために、実施例1に使用するものと同じ手法により、このプレミックスを高温の瀝青に添加した。
【0182】
結果を、実施例3のポイント4に記載するような直接混合で得られたものと比較した(表8を参照されたい)。
【0183】
以下の表11は、周波数1.5 Hzにおいて異なる温度で測定した値をまとめている(瀝青+1重量%ポリリン酸+5重量%クラム)。
【0184】
(表11)

【0185】
臨界温度は、異なる構成要素を瀝青に直接高温混合した場合には、実質的に高いことが確認されている。
【0186】
周囲温度において、高温瀝青に導入する前のプレミックスは、直接混合で達成されるものと同様またはほとんど劣らないすぐれた性能を生じる。
【0187】
実施例6:低温における挙動、80/100 PROAS(スペイン)
PROAS、スペインから購入可能な800/100 Penグレード瀝青を試験に使用した。
【0188】
低温ひび割れは、瀝青質混合物を調剤する際に考慮すべき重要な因子である。結合剤の仕様は、対応する混合物が低温にすぐれた抵抗性を有するように設計される。欧州では、低温における結合剤の特性は、一般に、Fraass破断点を使用して評価される。米国では、SHRPが、クリープ試験によって評価される瀝青試料の硬さ基づいた基準を開発した:ビーム曲げレオロジー試験(BBR)。
【0189】
低温における結合剤の特性にアプローチする別の方法は、示差走査熱量測定(DSC)または動的な機械的分析(DMA)によってガラス転移温度(Tg)を評価することである。
【0190】
論文「Evaluation of the Low Temperature Properties of Bituminous Binders Using Calorimetry and Rheology」(J. P. Plancheら、Eurobitume、Luxembourg、1995年)において、著者らは、(DSCまたはDMAによって測定される)Tg値とBBRクリープ試験(S=300 MPaおよびm>0.3)によって規定される臨界温度との間には良好な相関が存在することを示している。
【0191】
80/100 Proas瀝青のガラス転移温度TgをDSCによって測定した。10重量%加硫ラバークラムの添加の影響および1重量%ポリリン酸+5重量%加硫ラバークラムを含有するシステムを検討した。
【0192】
以下の表12は、特徴的な値Tgだけでなく、G*×sinδ(周囲温度における疲労基準)および臨界温度上限Tc+をまとめている。
【0193】
(表12)

【0194】
80/100 Proas瀝青のTgは比較的低い:Tg=-27℃。
【0195】
10重量%加硫ラバークラムの添加は、Tgを6℃上昇させる:Tg=-23℃。
【0196】
5重量%加硫ラバークラムおよび1重量%ポリリン酸を添加すると、Tgは2℃低下する:Tg=-29℃。
【0197】
この低いTgは、低温ひび割れに対する瀝青のすぐれた抵抗性に対応する。
【0198】
実施例7:ゴムの種類の影響、80/100 PROAS(スペイン)
PROAS、スペインから購入可能な80/100 Penグレード瀝青を試験に使用した。
【0199】
2種類のゴムを具体的に調製した(実験室):カーボンブラックを添加しない加硫ゴムおよび50パーセントのカーボンブラックN234 Cabot エラストマーを含有する加硫ゴム。
【0200】
クラムは低温粉砕によって得た(実験室スケール):Dmax粒子サイズ<500ミクロン。
【0201】
2種類のクラムを得た:
i)カーボンブラックを含有する加硫ラバークラム
ii)カーボンブラックを含有しない加硫ラバークラム。
【0202】
使用したポリリン酸は105%縮合酸であった(実施例2を参照されたい)。
【0203】
以下の表13は、周波数1.5 Hzにおいて異なる温度で測定した値をまとめている(瀝青+1重量%ポリリン酸+5重量%クラム)。
【0204】
(表13)

【0205】
カーボンブラックを含有しないクラムについてかなり高い臨界温度が確認された:これは高いゴム含量による可能性がある。
【0206】
カーボンブラックの存在およびカーボンブラックの種類は、改変型瀝青の性能にいかなる影響も与えないと思われる。
【0207】
実施例8:改変型瀝青の調製および老化なしまたは老化後の特性の測定
110 1/10 mmの浸透グレードおよび44℃のリング&ボール軟化温度を有する、Proas社製の道路瀝青Aを、本発明の方法および以下の表14に示す組成を使用して改変した。
【0208】
(表14)改変型瀝青1の組成

【0209】
使用した加硫ラバークラムの公称サイズは0〜500μmで、平均径320μmであった。
【0210】
使用したポリリン酸は105%縮合酸(Rhodia)であった。
【0211】
製造は、最初に加硫ラバークラムを瀝青に添加して90分間激しく撹拌し、次いでポリリン酸を添加し、30分間撹拌を維持することによって実験室で180℃において実施した。
【0212】
冷却後、改変型瀝青1を、すなわち模擬老化なしの場合並びに大気および温度の影響下での促進老化後(Rolling Thin Film Oven Test-PTFOT、標準的なEN 12607-1による)に、以下の表15に記載する試験を使用して評価した。
【0213】
(表15)改変型瀝青1、最初および老化後の試験結果


BBR試験で60s後に測定したクリープ係数Sが300 MPaであるような温度。

BBR試験で60s後に測定した時間対数に対するクリープ係数の対数曲線の傾きの絶対値mが0.3であるような温度。

DSR試験で10 rad/sにおいて測定した係数G*/sin dが1.1 kPa(または2.2 kPa)であるような温度。

PIは、下限温度の最高値(T S=300 MpaまたはT m=0.3)と上限温度の最低値(T 1kPaまたはT 2.2 kPa)の差と規定される。
【0214】
改変型瀝青1、最初または老化後について得られる結果は、従って、市販の種々のポリマー改変型瀝青で得られるものに匹敵する(B. BruleおよびJ. J. Potti、による論文、Carreteras 121, 2003)。この検討において提案された評価スケールによると、改変型瀝青はスコア9を得ており、市販の改変型瀝青に匹敵し、標準的な非改変型瀝青(70/100瀝青の典型的な値は3)で得られるものよりはるかに大きい。
【0215】
実施例9:工業スケールで改変された瀝青の調製
先の実施例8の組成を工業スケールで調製して、改変型瀝青1と同じ組成を有し、同じ成分を使用する数トンの改変型瀝青2を得た。この改変型瀝青2を、製造後に特徴づけた。試験および結果は、以下の表16にまとめられている。
【0216】
(表16)

【0217】
この改変型瀝青2を使用して、100部の乾燥骨材あたり4.8部の結合剤および5容量%の空隙率を有するスペイン標準グレードS12による半粒状瀝青質混合物0/12(混合物A)を製造し、適用した。
【0218】
調製した混合物のMarshall安定性を測定し、浸透グレード42 1/10 mmおよびリング&ボール(R&B)基準軟化点55℃を有するProas社製の非改変型 B 40/50瀝青を使用して調製した同じ混合物(混合物B)と比較した。結果を以下の表17に示す。
【0219】
(表17)本発明の改変型瀝青または非改変型瀝青から得られる混合物の比較

【0220】
従来の工事現場装置(表面処理)を使用した混合物Aの適用は、いかなる特定の問題も生じず、非常に満足であり、取り扱いの容易さに関して混合物Bに匹敵すると思われた。これは、従来の瀝青混合物と比較したとき、取り扱い性が低い現在の市販のポリマー改変型瀝青には当てはまらない。
【0221】
実施例10:異なる起源および組成のラバークラムを添加した瀝青の比較
種々の起源および組成の5種類の加硫ラバークラム製品を各々、以下の手法および組成を使用して、Penグレード78 1/10 mmおよびリング&ボール軟化点45.6℃のPetrogal社によって供給される道路瀝青Bと混合した。
瀝青b: 94重量%
加硫ラバークラム: 5重量%
ポリリン酸: 1重量%
【0222】
使用したポリリン酸は105%縮合酸(Rhodia)であった。
【0223】
瀝青は、最初に加硫ラバークラムを添加し、90分間激しい撹拌を維持し、次いでポリリン酸を添加し、30分間撹拌を維持することによって180℃において実験室で製造した。
【0224】
比較の目的で、5種類のラバークラム製品の各々および酸を添加しない瀝青Bを用いて、すなわち以下の組成により混合物を製造した。
瀝青B: 95重量%
加硫ラバークラム: 5重量%
【0225】
混合物は、加硫ラバークラムを添加し、120分間激しい撹拌を維持して、180℃において実験室で調製した。
【0226】
クラム製品は、Malvern Multisizer 2000でレーザー回折によって測定した体積平均径によって特徴づけた。結果は以下の表18にまとめられている。
【0227】
(表18)5種類のラバークラム製品の特徴づけ

【0228】
改変型瀝青は、以下の表19に示す試験を使用して評価した。
【0229】
(表19)

【0230】
全ての場合において、ポリリン酸の添加は、クラムの起源に関係なく、加硫ラバークラムで改変した瀝青の機械的特性の改善を生じ、保存安定性は無酸混合物と同じレベルを維持した。
【0231】
実施例11:本発明の改変型瀝青のエマルジョン
実施例10の混合物b1を、Emulbitumeによる実験室コロイドミルを使用して乳化した。この目的のために、改変型結合剤を170℃の温度にし、約200 mPa.sの粘度を与えた。
【0232】
本発明の2つの可能な適用に対応する2つの異なる組成を使用した:表面塗装のためのエマルジョン(エマルジョン1)および低温流動混合物のためのエマルジョン(エマルジョン2)。
【0233】
エマルジョンの各々の組成およびそれらの対応する特性を以下の表20にまとめている。
【0234】
(表20)本発明の改変型瀝青のエマルジョンの特性および組成


KaoによるASSIER(登録商標)130

KaoによるASSIER(登録商標)208
【0235】
従って、本発明の改変型結合剤は、実施に際して使用する技術で乳化することができ、その特性が対応する仕様を満たす表面エマルジョン(エマルジョン1型)または混合エマルジョン(エマルジョン2型)を生じる。
【0236】
実施例12:
Mesallesによって製造されたラバークラムを、Repsol Puertollanoによって供給される、浸透グレード80 1/10 mm、リング&ボール軟化点48.6℃の道路瀝青Cと混合して、以下の組成を有する濃縮された改変型結合剤を得た。
瀝青C 88重量%
ラバークラム 10重量%
ポリリン酸 2重量%
【0237】
使用したポリリン酸は105%縮合酸(Rhodia)であった。
【0238】
製造は実験室にて、180℃で最初にラバークラムを添加し、90分間激しい撹拌を維持し、次いでポリリン酸を添加し、30分間撹拌を維持することによって実施した。
【0239】
次いで、改変型濃縮結合剤を、浸透グレード91 1/10 mm、リング&ボール軟化点49.2℃のCepsa社製の瀝青Dで、50/50の重量比に希釈して、全体のクラム含量5%、ポリリン酸の全体の量1%を有する新規改変型瀝青を得た。
【0240】
濃縮結合剤および対応する改変型瀝青を、以下の表21に示す試験を使用して評価した。
【0241】
(表21)

【0242】
従って、濃縮された改変型結合剤を希釈することによって得られる改変型瀝青は、非改変型瀝青と比較して特性が改善されており、5%クラムおよび1%酸を直接添加する前実施例において得られるものに匹敵する結果を生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 0.05〜5重量%の酸と、0.5〜25重量%のラバークラム(rubber crumb)と、120〜220℃の温度に加熱した70〜99.5重量%の瀝青を混合する段階、
b)混合物を、撹拌しながら15分〜10時間、有利には15分〜3時間、120〜220℃の温度に加熱する段階、ならびに
c)任意で、混合物中に存在する可能性のあるいかなる気泡も脱気する段階
を含む瀝青質結合剤を調製するための方法。
【請求項2】
酸がリン酸またはポリリン酸であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階a)が、瀝青と酸を混合し、次にラバークラムを添加することによって実施されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
段階a)が、瀝青を添加する前に酸とラバークラムとを事前に混合することによって実施されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
段階a)が、120〜220℃の温度に加熱した瀝青の少なくとも一部とラバークラムとを混合し、次に酸を添加し、任意で、残りの瀝青を最後に添加することによって実施されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法を使用して得ることができる瀝青質結合剤。
【請求項7】
135℃における酸不含結合剤と酸含有結合剤との粘度比が10〜70%であり、有利には10〜50%であることを特徴とし、酸不含結合剤と酸含有結合剤の臨界温度の差が1〜50℃であり、有利には1〜25℃であることを特徴とする、請求項6記載の瀝青質結合剤。
【請求項8】
建築材、特に、屋根材における、請求項6または7記載の結合剤の使用。
【請求項9】
シーラント、表面塗装、またはリフレクションクラック防護システムとしての請求項6または7記載の結合剤の使用。
【請求項10】
請求項7記載の結合剤と必要な量の骨材とを含有する瀝青質コンクリート。
【請求項11】
骨材を、120〜220℃の温度で撹拌しながら請求項6または7記載の結合剤に添加することを特徴とする、請求項10記載の瀝青質コンクリートを調製するための方法。
【請求項12】
i)水、請求項6または7記載の瀝青質結合剤、および乳化剤を、周囲温度で混合することによって瀝青エマルジョンを調製する段階、
ii)周囲温度で撹拌しながら、段階i)で得た瀝青エマルジョンに骨材を導入する段階、
iii)段階ii)で得たエマルジョンを広げて、段階ii)で得た混合物の均一な層を得る段階、ならびに
iv)瀝青エマルジョンを破砕する段階
を含むことを特徴とする、請求項10記載の瀝青質結合剤を調製するための方法。
【請求項13】
道路建設、特に道路の摩耗層のための、表面塗装としてまたはリフレクションクラック防護システムとしての請求項10記載の瀝青質結合剤の使用。
【請求項14】
瀝青質結合剤へのラバークラムの導入を促進するための酸の使用。
【請求項15】
0.02重量%〜91重量%の酸と、9〜99.98重量%のラバークラムとを含有するプレミックス。

【公開番号】特開2011−57996(P2011−57996A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253461(P2010−253461)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【分割の表示】特願2006−505705(P2006−505705)の分割
【原出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【出願人】(505337700)
【出願人】(505338338)イノフォス インコーポレイティッド (3)
【Fターム(参考)】