説明

瀰漫性B大細胞型リンパ腫のマーカーおよびその使用方法

本発明はDLBCL患者の治療結果を予測し、DLBCLを診断し、およびDLBCL治療の有効性をモニタリングするための方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2008年6月4日に出願された米国仮特許出願出願番号61/131,027の優先権を主張する。該出願はその全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
癌は、米国および大部分の他の先進国における疾病率の主な原因である。例えば、2007年に、アメリカ癌社会監視研究所(American Cancer Society Surveillance Research)課は、1,444,920の人が癌と診断され、559,650人がかかる癌で亡く
なっていると推定した。癌は、すべてのアメリカ人の死亡のうちの4分の1を占め、死亡率の原因として心疾患だけがそれを少し上回っている。看護と治療の改善にもかかわらず、癌死亡率は米国では急増しており、日本で既にそうであるように、まもなく米国の死亡率の主な原因になると予想されている。
【0003】
癌の特徴は、細胞の分裂、増殖および/または分化の異常である。癌の初期の臨床症状は非常に様々であり、70種類を超える癌が事実上体のすべての器官および組織に発生する。さらに、同様に分類される癌の種類のうちの一部は、複数の異なる分子病を表わす場合がある。不運にも、癌の中には疾病の進行の末期まで事実上無症状である場合もあり、末期では治療がより困難であり、予後診断は厳しい。したがって、予後の改善および生存のよい良い機会を可能にする、特に初期における、癌の診断および検出の改善が必要とされている。
【0004】
さらに、癌と診察されたすべての患者の約4%において、観察された腫瘍は転移によるものであり、最初の腫瘍の起源が決定されない(非特許文献1参照)。したがって、組織特異的腫瘍形成の機械論の基礎を理解するために、癌生物学の主な目標は、診断法の開発と疾患治療のための薬剤の開発との両方のための、そして究極的には組織特異的な腫瘍発生のメカニズムの基礎を理解するための、特異的なヒト癌に固有な分子または分子セットの識別である。その発現が固有に種々の解剖学的起源の腫瘍の特徴となっている遺伝子の識別は、依然として新たな癌治療の開発に対する主な課題である。
【0005】
癌の治療法には、通常、外科手術、化学療法、および/または放射線治療が含まれる。これらの方法を使用すると癌患者のほぼ50パーセントは有効に治療可能であるが、現在の治療はいずれも生活の質(quality of life)を損なう重大な副作用を引き起こす。新た
な治療標的および診断マーカーの識別は、癌患者の診断、予後診断、および治療の改善にとって望ましい。
【0006】
高密度DNAマイクロアレイ技術の進歩により、遺伝子が腫瘍組織で活性か否かを判断するために何万もの遺伝子を同時にスクリーニングすることが可能となった。かかるアプローチを説明するために「遺伝子発現プロファイリング」という言葉が作られた。任意の細胞と同様に、腫瘍細胞の挙動が何千の遺伝子の発現により記述される。したがって、遺伝子発現プロファイリングの研究により、腫瘍バイオマーカー、薬剤となる標的、腫瘍サブタイプの分類子、および臨床成績の予測値が効率的に識別される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hillen, Postgrad. Med. J., 76:690-693, 2000
【発明の概要】
【0008】
第1態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2〜12個の間の遺伝子の発現産物のレベルを検出することであって、合計で16個以下の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法を提供する。
【0009】
上記第1態様の1つの好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む。この組み合わせは(CHOP)またはCHOP様化学療法薬として知られている。
【0010】
上記第1態様の別の好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、抗CD20抗体と、CHOPまたはCHOP様化学療法薬との組み合わせを含む。
上記第1態様の1つの好ましい実施形態では、対照は、対照患者集団の遺伝子の平均発現産物レベルを含む。別の好ましい実施形態では、方法は、治療結果を予測する際に患者の国際予後指標(IPI)を評価することをさらに含む。本発明の第1態様の様々なさらなる好ましい実施形態では、発現産物がmRNA発現産物およびタンパク質発現産物から成るグループから選択される。
【0011】
第2態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせと共にモノクローナル抗体治療薬を受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法を提供する。
【0012】
第2態様の1つの好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせはCHOPまたはCHOP様化学療法薬を含む。
上記第2態様の別の好ましい実施形態では、対照は、対照患者集団の1つまたは複数の遺伝子の平均発現産物レベルを含む。さらに好ましい実施形態では、方法は、治療結果を予測する際に患者の国際予後指標(IPI)を評価することをさらに含む。本発明の第2態様の様々なさらなる好ましい実施形態では、発現産物がmRNA発現産物およびタンパク質発現産物から成るグループから選択される。
【0013】
第3態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治
療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された1〜12個の間の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、
患者の国際予後指標(IPI)スコアを決定すること、
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
患者のIPIスコアと組み合わせた、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法を提供する。
【0014】
上記第3態様の1つの好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む。この組み合わせは(CHOP)またはCHOP様化学療法薬として知られている。
【0015】
上記第3態様の別の好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、抗CD20抗体と、CHOPまたはCHOP様化学療法薬との組み合わせを含む。この態様のさらに好ましい実施形態では、対照は、対照患者集団の遺伝子の平均発現産物レベルを含む。本発明の態様の種々のさらなる好ましい実施形態では、発現産物がmRNA発現産物およびタンパク質発現産物から成るグループから選択される。さらに好ましい実施形態では、患者の4から5までのIPIスコアと組み合わせた、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる。
【0016】
第4の態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療の効果をモニタする方法であって、DLBCLの治療を受けている患者から試験試料を得ること、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および試験試料中の1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルを、対照における1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、対照における1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルが患者の治療の効果の基準を提供する方法を提供する。
【0017】
第5の態様では、本発明は、DLBCL患者を治療する方法であって、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルを変更するのに有効な量の医薬組成物を患者に投与することを含むかまたは投与することからなる方法を提供する。
【0018】
第6の態様では、本発明は、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された2〜12個の間の遺伝子の発現産物を検出するための試薬を含むかまたは該試薬からなる組成物であって、該試薬は検出可能となるよう任意選択で標識される組成物を提供する。種々の好ましい実施形態では、試薬は、核酸プローブ、核酸プライマー、抗体、および/またはアプタマーを含むかまたはからなる。
【0019】
第7の態様では、本発明は、1つまたは複数の本発明の組成物を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】遺伝子発現レベルによるCHOP対R−CHOPで処理した患者における3つの遺伝子の例についての経年全生存率を示す。HLA−DRBは25%の上下でカットし(25より上と、25以下)、BCL6およびC−MYCは中央値(メジアン)でカットした。(A)CHOPで処理した場合、すべてのIPIスコア、パネル(i):HLA−DRB、パネル(ii):BCL6、パネル(iii):C−MYC(N=93)。(B)R−CHOPの場合、すべてのIPIスコア、HLA−DR、BCL6およびC−MYC(N=116)。
【図2A】IPIスコアおよびHLA−DRBおよび/またはC−MYCの発現レベルによるR−CHOPで処理した患者の経年全生存率を示す。カットポイントのレベルはいずれの遺伝子に対しても中央値より上と、中央値以下である。HLA−DRの有害遺伝子レベルは中央値以下の発現に対するものであり、C−MYCの有害遺伝子レベルは中央値より上の発現に対するものである。パネル(A)すべてのIPIグループ(N=116)、高c−MYCおよび低HLA−DRBの2つの有害遺伝子レベルがない(n=88)か、または高c−MYCおよび低HLA−DRBの2つの有害遺伝子レベルがある(n=28)。
【図2B】パネル(B)低IPIグループ(スコア0−2、N=72)、高c−MYCおよび低HLA−DRBの2つの有害遺伝子レベルがない(n=61)か、または高c−MYCおよび低HLA−DRBの2つの有害遺伝子レベルがある(n=11)。
【図2C】パネル(C)高IPIグループ(スコア3−5、N=36)、高c−MYCおよび低HLA−DRBの2つの有害遺伝子レベルがない(n=22)か、または高c−MYCおよび低HLA−DRBの2つの有害遺伝子レベルがある(n=14)。(B)および(C)のケースを組み合わせた数は、IPI情報が失われたケースがいくつかあるため(A)より少ない。
【図3A】HLA−DRB遺伝子の可変カットポイント分析。X軸を遺伝子発現レベル、y軸をログランク(log rank)スコアとし、並べ替えp値を示した。ログランクスコア中のピークは、全生存率の最大差を生じさせるデータにおける最上位カットポイントを示す。
【図3B】C−MYC遺伝子の可変カットポイント分析。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で引用した文献はすべてその全体が本明細書に組み込まれる。
本願では、他に別記されていなければ、使用される技術は以下のいくつかの周知の参照文献に見い出され得る:Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook, et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press), Gene Expression Technology (Methods in Enzymology, Vol. 185, edited by D. Goeddel, 1991. Academic Press, San Diego,
CA), “Guide to Protein Purification” in Methods in Enzymology (M.P. Deutshcer, ed., (1990) Academic Press, Inc.); stocktickerPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications ( Innis, et al. 1990. Academic Press, placeCitySan Diego, StateCA), Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 2nd Ed. (R.I. Freshney. 1987. Liss, Inc. New York, NY), Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E.J. Murray, The Humana Press Inc., Clifton, N.J.), and the Ambion 1998 Catalog (Ambion, Austin, TX).
本明細書に使用する場合、単数形(英語で「a」、「an」および「the」)は文脈が別段記述していない限り、複数の参照物を含む。本明細書に使用する場合、「および」は、別段明記されていない限り、「または」と互換的に使用される。
【0022】
本発明は、DLBCL患者の中の治療結果を予測し、DLBCLを診断し、DLBCL治療の効果をモニタリングする方法および組成物、ならびにDLBCL患者を治療する方法を提供する。
【0023】
第1態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2〜12個の間の遺伝子の発現産物のレベルを検出することであって、合計で16個以下の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法を提供する。
【0024】
「成績(結果)」とは、全生存率(OS)または無進行生存率に関する、治療に対する患者の応答の予後を意味する。以下により詳しく述べるように、成績が不良である(全体としてのDLBCL患者集団に比べて無病生存率が短い、無進行生存率が短い、全生存率がより短い)危険性のある個体は、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された2つ以上の遺伝子が、適切な対照と比較して差があるように発現されている個体である。好ましい実施形態では、成績は「ハザード比」(患者グループ用死亡率の、別の患者グループに対する比;一定の時点での死亡の可能性を提供する。)に関して測定される。別の好ましい実施形態では、予後は、1年、2年、3年、4年または他の適切な時点での全生存率の可能性を含む。本発明のすべての態様における成績不良の予後に関連する有意性が、当該技術分野の周知技術により測定される。例えば、有意性はオッズ比の計算で測定されてもよい。さらなる実施形態では、有意性は百分率(パーセンテージ)で測定される。1実施形態では、成績不良の有意な危険は、0.8以下または少なくとも約1.2のオッズ比として測定され、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、40.0が含まれるがこれらに限定されるわけではない。さらなる実施形態では、危険の有意な増加または減少は少なくとも約20%であり、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および98%を含むがこれらに限定されるわけではない。さらなる実施形態では、危険の有意な増加は少なくとも約50%である。したがって、本発明は、DLBCL患者に対して治療の決定を下す方法であって、本発明の種々の態様および実施形態に従ってDLBCL患者を予後診断する方法を実施すること、およびその後、DLBCL患者の治療のコースを決定する際に、他の公知の臨床上および臨床病理学上のリスクファクターに照らして結果を重み付けすること、を含む方法を提供する。例えば、化学療法薬の組み合わせにより成績不良の危険を増加させることが本発明の方法により示されたDLBCL患者は、より積極的な治療量、例えば放射線治療、末梢血幹細胞移植、骨髄移植、または臨床試験中の新規なまたは実験的な治療を含むがそれらに限定されるわけではない治療で治療することが可能である。
【0025】
本発明のすべての態様で使用されるように、用語「患者」または「対象」は、本明細書に使用する場合、哺乳動物(例えばヒトおよび動物)のことを指し、最も好ましくはヒト
を指す。
【0026】
本発明のすべての態様で使用されるように、「瀰漫性B大細胞型リンパ腫」すなわち「DLBCL」は、本明細書に使用する場合、胚中心の明色領域の中心細胞を起源とする非ホジキンリンパ腫(NHL)の急成長した侵攻型であり、NHLの最も一般的な種類のうちの1つである。病理学的研究および臨床病期分類法に基づいて、いくつかの種類のDLBCLが当該技術分野で周知である。例えば、形態学的な変形型には、胚中心細胞性DLBCL、免疫芽細胞性DLBCL、未分化DLBCL、形質芽球DLBCL、未分化リンパ腫キナーゼ陽性DLBCL等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。サブタイプには、縦隔(胸腺)B大細胞リンパ腫、血管内B大細胞リンパ腫、T細胞/組織球に富むB大細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症型B大細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0027】
本発明のすべての態様で使用されるように、「試験試料」は遺伝子発現産物を得ることが可能なDLBCLに罹患している患者から分離された生物標本を含む。リンパ腫に関係する任意の適切な試験試料を使用することが可能であり(リンパ腫は身体のどの場所でも生じるため)、それには血液またはリンパ液のような循環している流体、または血清または血漿のようなその分画;滑液、脳脊髄液、間質液;尿、母乳、唾液、汗、涙、粘液、乳頭吸引液、精液、膣液、射精前精液等;増殖培地等のインビトロで細胞を培養させる液体、または緩衝液等の細胞試料をホモジナイズさせる液体;組織、生検組織、組織切片、培養細胞、外科的に切除された腫瘍試料等;ならびに組織学的目的で採取された凍結切片またはホルマリン固定切片が含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましい実施形態では、試験試料は、DLBCL患者からの生検組織を含む。さらに好ましい実施形態では、試験試料は、DLBCL患者からのホルマリン固定した生検組織等の、ホルマリン固定した組織を含む。1つの好ましい実施形態では、核酸および/またはポリペプチドの発現産物は、当該技術分野の標準法を使用して、上記の種類の標準試料のうちの1つから得られる。そのような核酸および/またはポリペプチド発現産物は、以下により詳しく述べるように、分離されてもよいし、部分的に分離されてもよいし、または精製されなくてもよく、これは例えばin situ検出方法を使用した場合である。用語「単離される」は、
核酸(例えばDNAまたはRNA)およびポリペプチドに関して本明細書で使用する場合、組換DNA技術によって生産された場合には細胞材料、ウイルス材料、培地が実質的に存在しないことを、または化学合成の場合には化学先駆物質または他の化学物質が本質的に存在しないことを指す。本発明の方法で使用される核酸試料は、任意の適切な方法またはプロセスで調製されてよい。mRNAを単離する方法は当業者に周知である。例えば、核酸を単離および精製する方法は、Chapter 3 of Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, (1993) (editor) Elsevier Pressに詳しく記
載されている。かかる発現産物は、mRNA、mRNA発現産物から合成されたcDNA、cDNAから増幅されたDNA、および増幅されたDNAから転写されたRNAを含んでもよいし、またはそれらから成ってもよい。当業者は、ホモジネート中に存在するリボヌクレアーゼを阻害または破壊した後で、ホモジネートを使用可能とすることが望ましいことが理解されるだろう。好ましい実施形態では、核酸試料は、試料から核酸を抽出または精製しなくとも、溶解試薬で試料を処理することのみで調製され、より好ましくは、95℃で加熱する工程をさらに行うことにより調製される。
【0028】
本発明のすべての態様で使用されるように、そのレベルが測定される遺伝子の「発現産物」は、mRNAおよび/またはタンパク質であってもよい。上述したように、「mRNA発現産物」は、例えば逆転写−PCR反応または他の適切な増幅反応でmRNAから生成されたcDNAの測定により測定することが可能である。
【0029】
本発明のすべての態様に対して本明細書に使用する場合、用語「発現産物レベル」は、所与のmRNAまたはタンパク質である発現産物の測定可能な発現レベルを指す。以下により詳しく説明するように、発現産物レベルは当該技術分野で周知の方法により決定される。用語「差があるように発現」または「発現差」は、所与の発現産物の測定可能な発現レベルの増加または減少を指す。本明細書に使用する場合、「差があるように発現」または「発現差」は、発現産物の発現レベルの差が有意である(例えばp<0.05)ことを意味し、試験試料と適切な対照との間の発現産物レベルの差は、少なくとも1.2倍、または種々の好ましい実施形態では少なくとも1.4倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、またはそれより大きい。1実施形態では、発現産物レベルは、いずれも同じハウスキーパー遺伝子の発現産物レベルと比較され、続いて適切な参照基準と比較される、比較に使用される2つの試験試料で決定される。所望の場合、任意の適切な技術によって発現産物の発現のレベルの絶対量の決定を行ってもよく、それには1つまたは複数の対照発現産物の既知濃度を提供し、対照発現産物の量に基づく検量線を生成し、そして検量線に対して(標準検出分析を使用して)未知のものの強度から「未知の」発現産物の発現レベルを推定することを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0030】
本発明の任意の態様における発現産物レベルの検出は、核酸またはタンパク質レベルの測定のための任意の分析を使用して達成してよく、それにはノーザンブロット法、ヌクレアーゼ保護アッセイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、in situハイブリ
ダイゼーション、bDNA、シーケンシング、ディファレンシャルディスプレイ法、免疫ブロット法、ウェスタンブロッティング、酵素免疫吸着法(ELISA)、リガンド結合アッセイ、免疫組織化学アッセイ(定性的および定量的)、および免疫細胞化学アッセイが含まれるが、それらに限定されるわけではない。1つの好ましい実施形態では、当業者には周知のように、検出ステップがアレイまたはチップに基づく方法を使用して行なわれる。1つの好ましい実施形態では、mRNA発現産物レベルは定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(qNPA)を使用して測定され、この場合、試料(ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)を含むが、それらに限定されるわけではない)を溶解試薬で処理し、ヌクレアーゼ保護プローブを加え、試料中のオリゴヌクレオチドを標的とするようハイブリダイズさせる。その後、核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)S1を加えて過剰のヌクレアーゼ保護プローブおよびハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドを加水分解し、塩基を加えて加熱し、ヌクレアーゼ保護プローブハイブリッドに対して標的遺伝子オリゴヌクレオチドを分離し、混合物をアレイ上に移し、アレイにて検出プローブを使用してヌクレアーゼ保護プローブを捕捉および定量する。米国特許番号第6,232,066号および第6,238,869号に説明されているような定量的ヌクレアーゼ保護アレイ(qNPA)およびプローブが好ましくは使用される。
【0031】
本発明のすべての態様で使用されるように、「化学療法薬の組み合わせ」は、例えばDLBCLのような、腫瘍を処理するために化学療法の分野で使用される、任意の2つ以上の化学療法薬の組み合わせを指す。1つの好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン(ドキソルビシンまたはアドリアマイシンとしても知られている)、オンコボリン(ビンクリスチン)、およびプレドニゾンのうちの2以上の組み合わせを含む。別の好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む。さらに好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、「CHOP」化学療法薬と称される、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコボリンおよびプレドニゾンの各々の組み合わせを含む。別の実施形態では、併用療法薬はCHOP様化学療法薬を含む。CHOP様化学療法薬の例にはCEOP(ヒドロキシダウノルビシンがエピルビシンと置換されたCHOP)およびCNOP(ヒドロキシダウノルビシンがミトキサントロンと置換されたCHOPであって、ノヴァ
ントロンとしても知られる)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0032】
上記第1態様の別の好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせはモノクローナル抗体治療薬をさらに含む。腫瘍の治療に使用されるものであれば任意の適切なモノクローナル抗体治療薬を使用することが可能である。1つの特に好ましい実施形態では、モノクローナル抗体治療薬は抗CD20モノクローナル抗体治療薬を含む。本明細書に使用する場合「抗CD20抗体」はCD20エピトープに結合することが可能な任意の抗体である。抗CD20抗体は、例えばアルファ(α)、ベータ(β)またはガンマ(γ)放射線を放射する放射性同位元素で、任意選択で放射標識されてもよい。そのような抗CD20抗体の好ましい実施形態にはリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))が含まれるが、これに限定されるわけではない。市販されているそのような抗CD20放射標識抗体の好ましい実施形態には、イブリツモマブ チウクセタン(ZEVALIN(登録商標))およびトシツモマブ(BEXXAR(登録商標))が含まれるが、これらに限定されるわけではない。最も好ましい実施形態では、抗CD20抗体はリツキシマブである。
【0033】
本発明は、CHOP治療薬(またはCHOP様治療薬)の組み合わせで、かつ任意選択で抗CD20抗体免疫療法薬を合わせて治療された、DLBCL患者の予後判定を可能にする。CHOP(またはCHOP様治療薬)および抗CD20抗体のどんな組み合わせも検討され得る。そのような組み合わせの好ましい実施形態には、リツキシマブとCHOPの組み合わせ(R−CHOP)、リツキシマブとCEOPの組み合わせ(R−CEOP)、リツキシマブとCNOPの組み合わせ(R−CNOP)、イブリツモマブとCHOPの組み合わせ(I−CHOP)、イブリツモマブとCEOPの組み合わせ(I−CEOP)、イブリツモマブとCNOPの組み合わせ(I−CNOP)、トシツモマブとCHOPの組み合わせ(T−CHOP)、トシツモマブとCEOPの組み合わせ(T−CEOP)、およびトシツモマブとCNOPの組み合わせ(T−CNOP)が含まれる。最も好ましい実施形態では、本発明はR−CHOP治療下にあるDLBCL患者の予後判定をその対象とする。
【0034】
本発明のすべての態様で使用されるように、「対照」は、試験試料中の発現産物に対する比較を提供するのに適した任意の参照基準であり得る。1つの好ましい実施形態では、対照は、発現産物レベルが検出され、試験試料の発現産物レベルと比較される対象となる「対照試料」を得ることを含む。そのような対照試料は任意の適切な試料を含んでよく、それには既知の結果を有する対照DLBCL患者由来の試料(保存されていた試料または先の試料の測定であってよい);正常患者またはDLBCL患者等の対象から分離された正常組織または細胞、正常対象またはDLBCL患者等対象から分離された培養初代細胞/組織、DLBCL患者の同じ器官または身体位置から得られた隣接する正常細胞/組織、正常対象から分離された組織または細胞の試料、または、寄託機関から得られた初代細胞/組織(例えば、GEO受入れ番号:GSE1133のNovartisデータベース寄託機関)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。別の好ましい実施形態では、対照は任意の適切な供給源由来の参照基準発現産物レベルを含み、かかる供給源にはハウスキーピング遺伝子、正常組織(または他の以前に分析された対照試料)由来の発現産物レベル範囲、患者(例えばDLBCL患者)のグループ、すなわち特定の結果(例えば11,2,3,4年などの生存率)を有する患者の組に由来する試験試料における以前に決定された発現産物レベル範囲、または特定の治療の受入れ(例えばCHOPまたはR−CHOP)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の方法における対照としてかかる対照試料および参照基準発現産物レベルを組み合わせて使用できることが当業者には理解されるだろう。1つの好ましい実施形態では、対照は正常または非癌の細胞/組織試料を含んでもよい。別の好ましい実施形態では、対照は、例えばDLBCL患者等の患者のセットに対する、特定の治療(以下に説明するように例えばCHOPまたはR−CHOP)を受けたDLBCL患者のセットに対する、または1つの結果対別の結果を
有する患者のセットに対する発現レベルを含んでもよい。前者の場合、各患者の特異的発現産物レベルを、発現の百分率のレベルに割り当ててもよいし、または参照基準発現レベルの中間値または平均値よりも高いかまたは低いものとして表してもよい。別の好ましい実施形態では、対照は、正常細胞、化学療法薬の組み合わせ(例えばCHOPまたはR−CHOP)で治療された患者の細胞、および良性リンパ腫を有する患者の細胞を含んでもよい。別の好ましい実施形態では、対照はまた、例えば集団におけるハウスキーピング遺伝子の発現のレベルと比較した同じ集団における特定の遺伝子の発現の平均レベルの測定値を含んでもよい。そのような集団は正常対象、いかなる治療も受けていない(つまり治療未経験な)DLBCL患者、CHOP治療を受けているDLBCL患者、R−CHOP治療を受けているDLBCL患者、または良性リンパ腫を有する患者を含んでもよい。別の好ましい実施形態では、対照は、発現レベルの変換比を含み、それには試験試料中の2つの遺伝子の発現産物レベルの比を決定し、それを参照基準中の同じ2つの遺伝子の任意の適切な比と比較すること;試験試料中の2つ以上の遺伝子の発現産物レベルを決定し、それらの発現を試験試料中のハウスキーピング遺伝子の発現に対して正規化し、任意の適切な対象と比較すること;が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
特に好ましい実施形態では、対照は、試験試料と同じ系統(lineage)および/または種
類である対照試料を含む。別の好ましい実施形態では、対照は、すべてのLDBCL患者のような1組の患者サンプル内または患者サンプルに基づくパーセンタイルとしてグループ化された発現産物レベルを含んでもよい。1実施形態では、例えば特定のパーセンタイルに対して高いかまたは低いレベルの発現産物が予後を予測する根拠として使用される、対照発現産物レベルが確立される。別の好ましい実施形態では、対照発現産物レベルは、既知の結果を有するDLBCL対照患者の発現産物レベルを使用して確立され、試験試料の発現産物レベルが予後を予測する根拠として対照発現産物レベルと比較される。以下のデータにより実証されるように、本発明の方法は、対照に対して試験試料中の発現産物レベルを比較した特定のカットポイントの使用に限定されない。
【0035】
本発明の上記第1態様の方法は、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された2〜12個の間の遺伝子の発現産物のレベルを検出することを含み、16個以下の遺伝子(発現を標準化するハウスキーピング遺伝子等の任意の対照遺伝子を含む)の発現産物レベルがDLBCLを予測するために検出される。これらの遺伝子およびそのNCBIデータベース受入番号(mRNAとポリペプチド発現産物に対する)は、以下に続く実施例で評価された他の遺伝子と共に、表1に以下に提供される。これらの遺伝子に対して本明細書で使用した配列識別子は以下の通りである:
1.BCL6: 配列番号1(核酸)および配列番号2(ポリペプチド)
2.GCET1 配列番号3(核酸)および配列番号4(ポリペプチド)
3.PLAU 配列番号5(核酸)および配列番号6(ポリペプチド)
4.MYC 配列番号7(核酸)および配列番号8(ポリペプチド)
5.HLA−DQA1 配列番号9(核酸)および配列番号10(ポリペプチド)
6.HLA−DRA 配列番号11(核酸)および配列番号12(ポリペプチド)
7.HLA−DRB 配列番号13(核酸)および配列番号14(ポリペプチド)
8.ACTN1 配列番号15(核酸)および配列番号16(ポリペプチド)
9.COL3A1 配列番号17(核酸)および配列番号18(ポリペプチド)
10.LMO2 配列番号19(核酸)および配列番号20(ポリペプチド)
11.PDCD4 配列番号21(核酸)および配列番号22(ポリペプチド)
12.SOD2 配列番号23(核酸)および配列番号24(ポリペプチド)
上記第1態様の種々の好ましい実施形態では、方法は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または上記に記載された12個すべての遺伝子の間の発現産物のレベルを検出することを含んでもよい。上記第1態様の種々の他の好ましい実施形態では、合計で1
6、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物のレベルが、DLBCLの予後診断に検出される。上記に記載された遺伝子の2つ以上のいかなる組み合わせを本発明の方法に使用してもよい。本発明の上記第1態様の1つの好ましい実施形態では、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2−11個の遺伝子の発現産物レベルが検出される。さらに好ましい実施形態では、選択された遺伝子の少なくとも1つはMYC、HLA−DRBまたはPDCD4であり、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは全生存率が低いことを示す。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子は、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの2個以上を含み、かかる2個以上の遺伝子の低い発現レベルは全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも2個の遺伝子は、MYCとHLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;またはPDCD4とHLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;を含み、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2の低い発現レベルは、全生存率が低いことを示し、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、2つ以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1、LMO2およびPDCD4のうちの2、3、4、5、6、7または8個を含む。これらの実施形態の各々は、DLBCL患者のR−CHOP治療の結果を予測するのに特に好ましい。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DQA1およびPLAUのうちの2個以上を含むが、その理由はこれらの遺伝子の発現の差がCHOPまたはR−CHOP治療を受けたDLBCL患者における予後不良および/または生存率結果と関連することが分かっているためである。これらの実施形態はすべて、上記の好ましい実施形態と組み合わせることが可能であり、文脈が別段明記していない限り、合計で16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物レベルがDLBCLの予後診断のために検出される。
【0036】
第2態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2からなるグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせと共にモノクローナル抗体治療薬を受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法を提供する。
本発明の上記第2態様は、モノクローナル抗体治療薬と化学療法薬の組み合わせとの組み合わせで治療したDLBCL患者の結果を予測するのに特異的である。
【0037】
上記第2態様では、文脈が別段明記していない限り共通の用語がすべて本発明の第1態様と同様に定義され、本発明の第1態様のすべての実施形態を文脈が別段明記していない限り本発明の上記第2態様および他の態様で使用することが可能である。上記第2態様では、腫瘍の治療に使用される任意の適切なモノクローナル抗体治療薬を使用してよい。1つの特に好ましい実施形態では、モノクローナル抗体治療薬は抗CD20モノクローナル
抗体治療薬を含む。本明細書に使用する場合、「抗CD20抗体」はCD20エピトープに結合することが可能な任意の抗体である。抗CD20抗体は、例えばアルファ(α)、ベータ(β)またはガンマ(γ)放射線を放射する放射性同位元素で、任意選択で放射標識されてもよい。そのような抗CD20抗体の好ましい実施形態にはリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。市販されているそのような抗CD20放射標識抗体の好ましい実施形態には、イブリツモマブ チウクセタン(ZEVALIN(登録商標))およびトシツモマブが含まれるが、それらに限定されるわけではない。上述したように任意の適切な化学療法薬の組み合わせを使用することが可能である。1つの好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン(ドキソルビシンまたはアドリアマイシンとして知られている)、オンコボリン(ビンクリスチン)およびプレドニゾンのうちの2つ以上の組み合わせを含む。別の好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む。さらに好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、「CHOP」化学療法薬と呼ばれるシクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコボリンおよびプレドニゾンの各々の組み合わせを含む。別の実施形態では、療法薬の組み合わせはCHOP様化学療法薬を含む。CHOP様化学療法薬の例には、CEOP(ヒドロキシダウノルビシンがエピルビシンと置換されたCHOP)およびCNOP(ヒドロキシダウノルビシンがミトキサントロンと置換されたCHOPであって、ノヴァントロンとしても知られる)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0038】
本発明の上記第2態様の方法はGCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された少なくとも1つの遺伝子の発現産物のレベルを検出することを含む。これらの遺伝子およびそれらのNCBIデータベース受入番号を、以下の実施例で評価された他の遺伝子と共に、表1で以下に提供する。上記第2態様の種々の好ましい実施形態では、方法は、上記に記載された遺伝子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の発現産物のレベルを検出することを含んでもよい。上記に記載された遺伝子の2個以上の任意の組み合わせを本発明の方法に使用することが可能である。本発明の上記第2態様の1つの好ましい実施形態では、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2−11個の遺伝子の発現産物のレベルが検出される。さらに好ましい実施形態では、選択された遺伝子の少なくとも1つはMYC、HLA−DRBまたはPDCD4であり、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは、全生存率が低いことを示す。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子は、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの2個以上を含み、該2個以上の遺伝子の低い発現レベルは、全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも2個の遺伝子は、MYCと、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;またはPDCD4と、HLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;を含み、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2の低い発現レベルは、全生存率が低いことを示し、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは、全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子は、MYC、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1、LMO2およびPDCD4のうちの2、3、4、5、6、7または8個を含む。これらの実施形態の各々は、DLBCL患者のR−CHOP治療の結果を予測するのに特に好ましい。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DQA1およびPL
AUのうちの2個以上を含むが、その理由はこれらの遺伝子の発現差がCHOPまたはR−CHOP治療を受けるDLBCL患者に予後不良および/または生存結果と関連することが本明細書で判明しているためである。これらの実施形態はすべて、好ましい実施形態と組み合わせることが可能であり、文脈が別段明記しない限り、合計で16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物のレベルが、DLBCLの予後診断のために検出される。
【0039】
本発明の任意の態様の別の実施形態では、方法はさらに、治療結果を予測する際に患者の国際予後指標(IPI)を評価することを含む。リスクを割り当てるIPIの計算技術および方法は当該技術分野で周知であり、以下の実施例で説明する。一つのポイントが以下のリスクファクターの各々に対して割り当てられる:(1)60歳よりも高い年齢;(2)第III期またはIV期の疾病;(3)高い血清LDH;(4)2(徴候、一日のうちベッドにいるのが50%未満)、3(徴候、ベッドに50%超いるが寝たきりでない)、または4(寝たきり)のECOG/Zubrodパフォーマンス状態;および(5)1つよりも多い節外部位病変。IPIスコアはポイントの総数の合計により決定される。IPIはリンパ腫患者のリスク層化(重症度分類{じゅうしょう ど ぶんるい})の有用な臨床ツールであったが、これはDLBCL患者におけるモノクローナル抗体治療薬の使用より以前に開発されたものである。例えば、化学療法薬の組み合わせとリツキシマブを併用するとDLBCL患者の予後が劇的に改善された。したがって患者のリスク層化の新規な方法が必要である。
【0040】
さらなる実施形態では、方法は、3p11−p12(成績不良と関連する)に関する増加、c−myc転置、または他の染色体の変化に関するようなDLBCL患者の染色体の変化を評価することをさらに含む。
【0041】
第3態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された1〜12個の間の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、
患者の国際予後指標(IPI)スコアを決定すること、
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
患者のIPIスコアと組み合わせた、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法を提供する。
【0042】
上記第3態様では、文脈が別段明記していない限り共通の用語がすべて本発明の第1および第2の態様と同様に定義され、本発明の第1および第2の態様のすべての実施形態を文脈が別段明記していない限り本発明の上記第3態様および他の態様で使用することが可能である。上記第3態様では、腫瘍の治療に使用される任意の適切なモノクローナル抗体治療薬を使用してよい。1つの特に好ましい実施形態では、モノクローナル抗体治療薬は抗CD20モノクローナル抗体治療薬を含む。本明細書に使用する場合、「抗CD20抗体」はCD20エピトープに結合することが可能な任意の抗体である。抗CD20抗体は、例えばアルファ(α)、ベータ(β)またはガンマ(γ)放射線を放射する放射性同位元素で、任意選択で放射標識されてもよい。そのような抗CD20抗体の好ましい実施形態にはリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。市販されているそのような抗CD20放射標識抗体の好ましい実施形態には、イブリツモマブ チウクセタン(ZEVALIN(登録商標))およびトシツモマブ
が含まれるが、それらに限定されるわけではない。上述したように任意の適切な化学療法薬の組み合わせを使用することが可能である。1つの好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン(ドキソルビシンまたはアドリアマイシンとして知られている)、オンコボリン(ビンクリスチン)およびプレドニゾンのうちの2つ以上の組み合わせを含む。別の好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む。さらに好ましい実施形態では、化学療法薬の組み合わせは、「CHOP」化学療法薬と呼ばれるシクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコボリンおよびプレドニゾンの各々の組み合わせを含む。別の実施形態では、療法薬の組み合わせはCHOP様化学療法薬を含む。CHOP様化学療法薬の例には、CEOP(ヒドロキシダウノルビシンがエピルビシンと置換されたCHOP)およびCNOP(ヒドロキシダウノルビシンがミトキサントロンと置換されたCHOPであって、ノヴァントロンとしても知られる)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0043】
本発明の上記第3態様の方法は、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された少なくとも1つの遺伝子の発現産物のレベルを検出することを含む。これらの遺伝子およびそれらのNCBIデータベース受入番号を、以下の実施例で評価された他の遺伝子と共に、表1に以下に提供する。上記第3態様の種々の好ましい実施形態では、方法は、上記に記載された遺伝子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の発現産物のレベルを検出することを含んでもよい。上記に記載された遺伝子の2個以上の任意の組み合わせを本発明の方法に使用することが可能である。本発明の上記第3態様の1つの好ましい実施形態では、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2−11個の遺伝子の発現産物のレベルが検出される。さらに好ましい実施形態では、選択された遺伝子の少なくとも1つはMYC、HLA−DRBまたはPDCD4であり、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは、全生存率が低いことを示す。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子は、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの2個以上を含み、該2個以上の遺伝子の低い発現レベルは、全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも2つの遺伝子は、MYCと、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;またはPDCD4と、HLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;を含み、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2の低い発現レベルは、全生存率が低いことを示し、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは、全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子は、MYC、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1、LMO2およびPDCD4のうちの2、3、4、5、6、7または8個を含む。これらの実施形態の各々は、DLBCL患者のR−CHOP治療の結果を予測するのに特に好ましい。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DQA1およびPLAUのうちの2個以上を含むが、その理由はこれらの遺伝子の発現差がCHOPまたはR−CHOP治療を受けるDLBCL患者に予後不良および/または生存結果と関連することが本明細書で判明しているためである。これらの実施形態はすべて、好ましい実施形態と組み合わせることが可能であり、文脈が別段明記しない限り、合計で16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物のレベルが、DLBCLの予後診断のために検出される。
【0044】
さらに好ましい実施形態では、患者の4〜5のIPIスコアと組み合わせた、対照の遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料の遺伝子の発現産物レベルが、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる。以下の実施例に示されるように、有害HLA−DRBまたは有害c−Mycの一方と、4〜5の有害IPIスコアの組み合わせにより、20%の生存予後が予測され、4〜5のIPIスコアは40%の生存を予測する。したがって、本発明の方法は、既存のDLBCL患者層化方法よりも非常に改良されている。
【0045】
第4の態様では、本発明は、患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療の効果をモニタする方法であって、DLBCLの治療を受けている患者から試験試料を得ること、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および試験試料中の1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルを、対照における1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、対照における1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルが患者の治療の効果の基準を提供する方法を提供する。
【0046】
文脈が別段明記しない限り、本明細書に開示された他の態様のすべての実施形態はこの態様に同様に当てはまる。上記第4の態様の種々の好ましい実施形態では、方法は、上記に記載された遺伝子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個すべての発現産物のレベルを検出することを含んでもよい。上記第3態様の種々の他の好ましい実施形態では、合計で16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物のレベルが、DLBCLの予後診断のために検出される。上記に記載された遺伝子の2つ以上のいかなる組み合わせを本発明の方法に使用してもよい。本発明の上記第4の態様の1つの好ましい実施形態では、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2−11個の遺伝子の発現産物レベルが検出される。さらに好ましい実施形態では、選択された遺伝子の少なくとも1つはMYC、HLA−DRBまたはPDCD4であり、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは全生存率が低いことを示す。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子は、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの2個以上を含み、かかる2個以上の遺伝子の低い発現レベルは全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも2つの遺伝子は、MYCとHLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数の組み合わせ;またはPDCD4とHLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;を含み、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2の低い発現レベルは全生存率が低いことを示し、MYCの高い発現レベルはPDCD4が全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1、LMO2およびPDCD4のうちの2、3、4、5、6、7または8個を含む。これらの実施形態の各々は、DLBCL患者のR−CHOP治療の結果を予測するのに特に好ましい。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DQA1およびPLAUのうちの2個以上を含むが、その理由はこれらの遺伝子の発現差がCHOPまたはR−CHOP治療を受けたDLBCL患者における予後不良および/または生存予後に関連することが分かっているためである。これらの実施形態はすべて、上記の好ましい実施形態と組み合わせることが可能であり、文脈が別段明記していない限り、合計で16、15、1
4、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物レベルがDLBCL治療の効果をモニタするために検出される。
【0047】
第5の態様の中で、本発明は、DLBCL患者を治療する方法であって、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現産物レベルを変更するのに有効な量の医薬組成物を患者に投与することを含むかまたは投与することからなる方法を提供する。モジュレーターの一例は、既存の投薬計画(regimen)より優れた新規な治療用の投薬計画を含む
ことが可能であり、これは例えばCHOP化学療法の上に抗CD20抗体免疫療法薬を追加することである。文脈が別段明記しない限り、本明細書に開示された他の態様のすべての実施形態はこの態様に同様に当てはまる。上記第5の態様の種々の好ましい実施形態では、方法は、上記に記載された遺伝子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個すべての発現産物のレベルを変更することを含んでもよい。方法は、上記に記載された遺伝子の2個以上の任意の組み合わせによる発現産物レベルの変更を含んでもよい。そのような変更には、アップレギュレーション(例えば遺伝子治療、タンパク質治療または細胞治療による)またはダウンレギュレーション(例えばアンチセンスまたはsiRNA阻害剤、小分子阻害剤等の使用による)が含まれてよい。本発明の上記第5の態様の1つの好ましい実施形態では、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2−11個の遺伝子の発現産物のレベルが変更される。さらに好ましい実施形態では、発現産物が変更される遺伝子の少なくとも1つはMYC、HLA−DRBまたはPDCD4であり、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは全生存率が低いことを示し、したがって発現産物レベルのダウンレギュレーションが実行される。別の好ましい実施形態では、発現産物が変更される2個以上の遺伝子は、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの2個以上を含み、かかる2個以上の遺伝子の低い発現レベルは全生存率が低いことを示し、したがって発現レベルの増加が実行される。種々のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも2つの遺伝子は、MYCとHLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数の組み合わせ;またはPDCD4とHLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;を含む。種々のさらなる好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1、LMO2およびPDCD4のうちの2、3、4、5、6、7または8個を含む。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DQA1およびPLAUのうちの2個以上を含む。
【0048】
別の態様では、本発明は、対象のDLBCLの結果を調節することが可能である薬物をクリーニングする方法をさらに含み、方法は、腫瘍細胞を薬物と接触することと、前記腫瘍細胞におけるGCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを検出することを含む。文脈が別段明記しない限り、本明細書に開示された他の態様のすべての実施形態はこの態様に同様に当てはまる。上記第3態様の種々の好ましい実施形態では、方法は、上記に記載された遺伝子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個すべての発現産物のレベルを検出することを含んでもよい。この態様の種々の他の好ましい実施形態では、合計で16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物のレベルが、DLBCLの予後診断のために検出される。上記に記載された遺伝子の2個以上のいかなる
組み合わせを本発明の方法に使用してもよい。本発明のこの態様の1つの好ましい実施形態では、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2−11個の遺伝子の発現産物レベルが検出される。さらに好ましい実施形態では、選択された遺伝子の少なくとも1つはMYCまたはPDCD4であり、MYCまたはPDCD4の高い発現レベルは全生存率が低いことを示す。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子は、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの2個以上を含み、かかる2個以上の遺伝子の低い発現レベルは全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも2つの遺伝子は、MYCとHLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;またはPDCD4とHLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1つまたは複数との組み合わせ;を含み、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2の低い発現レベルは全生存率が低いことを示し、MYCの高い発現レベルはPDCD4が全生存率が低いことを示す。種々のさらなる好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1、LMO2およびPDCD4のうちの2、3、4、5、6、7または8個を含む。これらの実施形態の各々は、DLBCL患者のR−CHOP治療の結果を予測するのに特に好ましい。別の好ましい実施形態では、2個以上の遺伝子はMYC、HLA−DRB、HLA−DQA1およびPLAUのうちの2個以上を含むが、その理由はこれらの遺伝子の発現差がCHOPまたはR−CHOP治療を受けるDLBCL患者における予後不良および/または生存予後に関連することが分かっているためである。これらの実施形態はすべて、上記の好ましい実施形態と組み合わせることが可能であり、文脈が別段明記していない限り、合計で16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子(対照遺伝子を含む)の発現産物レベルがDLBCL治療をモニタするために検出される。
【0049】
本発明のすべての態様および実施形態の方法の1つの好ましい実施形態では、検出またはmRNA発現産物レベルは、検出されるmRNAに相同なオリゴヌクレオチドプローブの使用を含む。本明細書に使用する場合、「プローブ」は、1つまたは複数のタイプの化学的結合を通じて、好ましくは水素結合の形成によって対になる相補的塩基を通じて相補的配列の標的核酸に結合することが可能な、核酸として定義される。本明細書に使用する場合、プローブは天然(つまりA、G、U、CまたはT)であっても修飾されていてもよい塩基(7−デアザグアノシン、イノシン、固定化核酸(LNA)、PNA等)を包含し得る。さらに、プローブ中の塩基は、それがハイブリダイゼーションに干渉しない限り、リン酸ジエステル結合以外の結合により結合されてもよい。したがって、プローブは、構成塩基がリン酸ジエステル結合ではなくペプチド結合により結合されたペプチド核酸であってもよい。特に標的核酸にハイブリダイズさせるのに適したオリゴヌクレオチドプローブの設計は、本明細書および関連する遺伝子に対して提供される上記に記載の配列情報に基づけば、当該技術分野の通常の技能の範囲内にある。1つの好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、発現産物レベルで分析される遺伝子に依存して、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21または23の少なくとも10の連続するヌクレオチドを含む。種々のさらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、発現産物レベルで分析される遺伝子に依存して、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21または23の少なくとも15、20、25、30、35、40、50、75、100の、250、500、1000、またはそれよりも多い連続するヌクレオチドであってよい。オリゴヌクレオチドプローブは、in situハイブリ
ダイゼーション、分岐DNA、シーケンシング、ヌクレアーゼ保護アッセイ、または最も好ましくは定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(qNPA)を含むがこれらに限定されない検出技術に使用され得る。すべての実施形態で、オリゴヌクレオチドプローブは当該技術
分野における標準的方法を使用して、任意選択で検出可能なように標識される。本明細書で使用される場合、本明細書に記載された1つまたは複数に相補的なオリゴヌクレオチド配列は、上記遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドのことを指す。そのようなハイブリダイズすることが可能であるオリゴヌクレオチドは、通常、上記遺伝子とヌクレオチドレベルで少なくとも約75%の配列同一性を、好ましくは約80%または95%の配列同一性を、より好ましくは約100%の配列同一性を示すだろう。最も好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは標的mRNA発現産物と完全に相補的である。
【0050】
溶液中、アレイ上、またはin situでの核酸ハイブリッド形成は、単純に、プローブと
その相補的標的とが相補的塩基対合を通じて安定なハイブリッド二本鎖を形成することが可能な条件下で、プローブと標的核酸とを接触させることを含む(Lockhartら(1999)および国際公開第99/32660号を参照)。その後、ハイブリッド二本鎖を形成していない核酸を洗浄して、通常は取り付けられた検出標識の検出により検出される検出予定のハイブリダイズした核酸を残す。核酸は、温度を増加させるかまたは核酸を含む緩衝液の塩濃度を減少させることにより変性することが一般に理解されている。好ましい実施形態では、ヌクレアーゼ(例えばS1)を加えて、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド以外のオリゴヌクレオチドをすべて破壊し、次に、例えば塩基と熱を使用してハイブリッドを解離させ、続いてプローブを検出または定量的測定のためにアレイおよび/または他のプローブにハイブリダイズすることが可能である。低ストリンジェンシー条件(例えば低い温度および/または高濃度の塩)下では、アニールした配列が完全に相補的でなくても、ハイブリッド二本鎖(例えばDNA−DNA、RNA−RNAまたはRNA−DNA)は生ずるだろう。このように低ストリンジェンシーではハイブリッド形成の特異性が低減されストリンジェンシー(例えばより高い温度またはより低濃度の塩)では、ハイブリダイゼーションがうまくいくには誤対合がより少ないことが要求される。当業者には任意の程度のストリンジェンシーも提供するためにハイブリッド形成条件が選択され得ることが理解されるだろう。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは低ストリンジェンシーで行なわれ、この場合、6×SSPETで37℃である。ハイブリダイゼーションを確実にするために(0.005%のTriton x−100)と、続く洗浄とが、誤対合したハイブリッド二本鎖を除去すべく高ストリンジェンシー(例えば1×SSPETm、37℃)で行なわれる。所望のレベルのハイブリダイゼーション特異性が得られるまで、ストリンジェンシーをより高く増大させて(例えば0.25×SSPETと同程度の低さまで低下、37℃から50℃まで)、続けて洗浄を行なってもよい。ストリンジェンシーはホルムアミド等の活性物質の添加によっても増加可能である。ハイブリダイゼーションの特異性は、試験プローブとのハイブリダイゼーションを、存在し得る種々の対照(例えば発現レベル対照、正規化対照、誤対合対照等)とのハイブリダイゼーションと比較することにより評価可能である。
【0051】
一般に、ハイブリダイゼーションの特異性(ストリンジェンシー)と信号強度との間にはトレードオフがある。したがって、好ましい実施形態では、洗浄は、一貫した結果を生じさせ、かつ平均バックグラウンド強度の約2つの標準偏差よりもより大きな信号強度を提供する、最も高いストリンジェンシーで行なわれる。したがって、好ましい実施形態では、ハイブリダイズした配列は、連続的により高いストリンジェンシー溶液で複数回洗浄され、各洗浄間で測定値が読み取られ得る。このようにして生成されたデータセットの分析により、ハイブリダイゼーションパターンがあまり変更されず、対象の特定オリゴヌクレオチドプローブの適切な信号を提供する洗浄ストリンジェンシーが明らかとなるだろう。
【0052】
別の態様では、本発明は、本発明の方法の1つまたは複数の実施に有用なオリゴヌクレオチドアレイを提供する。オリゴヌクレオチドアレイで使用される単離オリゴヌクレオチ
ドは、オリゴヌクレオチドプローブに対して上述した通りであり、好ましくは長さが約15から約150のヌクレオチド、より好ましくは約20〜約100までのヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは天然オリゴヌクレオチドであっても合成オリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドはホスホアミダイト法(Beaucage and Carruthers,
Tetrahedron Lett. 22:1859-62, 1981)またはトリエステル法(Matteucci, et al., J.
Am. Chem. Soc 103:3185, 1981)により、もしくは当該技術分野で周知の他の化学的手
法により調製可能である。そのような配列は、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み得る。好ましくは、そのような配列は、上記遺伝子のうちの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個と特異的にハイブリダイズする複数のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。1つの好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドアレイは、16個以下の別個のmRNAのプローブを含む。種々のさらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドアレイは、本発明の方法に関して上述したような、対照を含めて15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5または4個以下の別個のmRNAのプローブを含んでもよい。文脈が別段明記しない限り、他の態様に対して本明細書に開示された好ましい実施形態は、この態様にも当てはまり、この態様に対して説明した好ましい実施形態と組み合わされてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドアレイは好ましくは、本発明の第1および第2の態様で上述したように使用される複数の遺伝子の種々の好ましい組み合わせに対するプローブを含むか、または該プローブから成る。1つの好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドアレイは好ましくは、MYCおよび/またはPDCD4に対するプローブを含むか、またはそれらから成る。別の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドアレイは好ましくは、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの2、3、4、5、6、7または8個に対するプローブ含むか、またはそれらから成る。種々のさらなる好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドアレイは好ましくは、MYC、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1、2、3、4、5、または6個の組み合わせ;またはPDCD4、HLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1、2、3、4、5、または6個の組み合わせ;に対するプローブを含むか、またはそれらから成る。これらの実施形態の各々は、DLBCL患者のR−CHOP治療の結果を予測する方法に使用されるのが特に好ましい。種々のさらなる好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドアレイは表1−3および5に列挙された他の遺伝子に対するオリゴヌクレオチドプローブをさらに含んでもよい。これらの実施形態はすべて、上述の好ましい実施形態と組み合わせることが可能であり、その場合、文脈が別段明記しない限り、合計で(対照遺伝子を含む)16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子に対するオリゴヌクレオチドプローブがアレイ上に存在する。好ましい方法は、上記の表中の遺伝子の全部またはほぼ全部を検出し得る。遺伝子のいかなる組み合わせを使用してもよく、それは例えば第1および第2の態様で記載したアップレギュレートされた1組の遺伝子およびダウンレギュレートされた1組の遺伝子である。
【0053】
本発明のすべてのアレイは、任意の適切な固体表面材料上に形成され得る。そのような固体表面材料の例には、ビーズ、カラム、光ファイバー、ワイプ(拭き取り紙)、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、ジアゾ化メンブレン(紙またはナイロン)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミックス、金属、メタロイド、半導体材料、コーティングされたビーズ、磁気微粒子;ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレン等のプラスチック;タンパク質(例えばゼラチン)、リポ多糖類、ケイ酸塩、アガロース、ポリアクリルアミド、メチルメタクリル酸ポリマー等のゲル形成材料;ゾル−ゲル剤;多孔性ポリマーヒドロゲル;ナノ構造化表面;ナノチュ
ーブ(例、カーボンナノチューブ)、およびナノ粒子(例、金ナノ粒子または量子ドット)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。固体支持体に結び付けられる場合、オリゴヌクレオチドプローブ(もしくは抗体および/またはアプタマー)は、支持体に直接結合されてもよいし、またはリンカーを介して表面に取り付けられてもよい。したがって、固体支持体へのオリゴヌクレオチドプローブ(または抗体および/またはアプタマー)の結合を促進するために、当該技術分野で周知の方法を使用して、固体支持体表面および/またはポリヌクレオチドを誘導体化してもよい。ただし、かかる誘導体化はオリゴヌクレオチドプローブ(もしくは抗体および/またはアプタマー)とその標的との間の結合の検出を除去しないものとする。基準または対照核酸、タンパク質、抗体および/またはアプタマーのような他の分子を、同様に任意選択で固体表面に任意選択で固定化してもよい。種々の固体表面に対するかかる分子の固定化方法は当業者に周知である。
【0054】
溶液ベースの測定形式および固体支持体ベースの測定形式を含めて、いかなるハイブリダイゼーション測定形式が使用されてもよい。本発明の、差があるように発現された遺伝子に対するオリゴヌクレオチドプローブを備えた固体支持体は、フィルタ、ポリ塩化ビニルディッシュ、シリコン、またはガラスベースのチップ等であってよい。例えば、そのようなウエハおよびハイブリダイゼーション法は、例えばBeattie(国際公開国際公開第9
5/11755号)に開示されたもののように広く利用可能である。オリゴヌクレオチドが結び付けられる固体表面は、その結合が共有結合であっても非共有結合であっても、直接または間接であってもよく、任意の固体表面を使用することが可能である。好ましい固体支持体は高密度アレイまたはDNAチップである。これらはアレイ上の所定位置に特定のオリゴヌクレオチドプローブを含んでいる。各所定位置は、プローブの1つまたは複数の分子を含み得るが、かかる所定位置内の分子は同一の配列を有する。かかる所定位置は特徴で名付けられる。例えば、1つの固体支持体上には約2、10、100、1000から10,000;100,000または400,000のそのような特徴がある。固体支持体、すなわちプローブが取り付けられる領域は、約1平方センチメートルであってよい。対象の標的核酸を結合する試験プローブに加えて、高密度アレイは多くの対照プローブを含むことが可能である。対照プローブは本明細書で以下のように呼ぶ3つのカテゴリに分類される;(1)正規化対照;(2)発現レベル対照;および(3)誤対合対照。正規化対照は、標識された参照オリゴヌクレオチドまたは核酸試料に加えられた他の核酸配列に相補的なオリゴヌクレオチドまたは他の核酸プローブである。発現レベル対照は、生体試料中の構成的に発現された遺伝子と特異的にハイブリダイズするプローブである。典型的な発現レベル対照プローブは、処理に関して試料間で不変であるが試料中の細胞数に従ってのみ変化する構成的に発現された「ハウスキーピング遺伝子」(例えば表5のもの)に相補的な配列を有し、それにはアクチン遺伝子、PRKG1遺伝子、TBP遺伝子、トランスフェリンレセプター遺伝子、GAPDH遺伝子等が含まれるが、それらに限定されるわけではない。誤対合対照も、発現レベル対照または正規化対照の代わりに、標的遺伝子に対するプローブのために提供されてよい。誤対合対照は、1つまたは複数の誤った塩基が存在することを除いて、対応する試験プローブまたは対照プローブと同一なオリゴヌクレオチドプローブまたは他の核酸プローブである。
【0055】
最小数の合成ステップでオリゴヌクレオチドの高密度アレイを形成する方法が知られている。オリゴヌクレオチドアナログアレイは種々の方法により固体基板上で合成することが可能であり、それには光で誘導された化学カップリングおよび機械的に誘導されたカップリングが含まれるが、それらに限定されない。Pirrungら1992米国特許第5,14
3,854号;Fodorら1998)米国特許第5,800,992号);Cheeら(1998
)米国特許第5,837,832号、Fodorら(国際公開第93/09668号)参照。
発現モニタリングのためのオリゴヌクレオチドプローブアレイが、当該技術分野で周知の任意の技術を使用して製造および使用可能である(例えばLockhart et al., (1996) Nat.
Biotechnol. 14, 1675-1680およびMcGall et al., (1996) Proc. Nat. Acad. Sci. USA
93, 13555-13460参照。そのようなプローブアレイは、本明細書に記載の遺伝子の1つま
たは複数に相補的な、またはかかる遺伝子の1つまたは複数にハイブリダイズする少なくとも1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。そのようなアレイは、本明細書に記載の遺伝子のうちの少なくとも4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、50、70、またはそれより多くに相補的な、またはかかる遺伝子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含んでもよい。好ましくは米国特許第6,232,066号および第6,238,869号に記載されているような定量的ヌクレアーゼ保護配列(qNPA)が使用され、かかるアレイに使用されるプローブは表1−3に開示されている1つまたは複数の遺伝子またはその相補的配列を有する。固定組織試料でqNPAアッセイを行なう方法がPCT/US08/58837に記載されており、この文献はその全体を本明細書に援用する。
【0056】
本発明のすべての態様および実施形態の方法の別の好ましい実施形態では、検出またはmRNA発現産物レベルは、検出されるmRNAに相同なオリゴヌクレオチドプライマー対の使用を含み、これはPCR、RT−PCR、RTQ−PCR、spPCRおよびqPCR等の増幅アッセイに使用することが可能である。適切なオリゴヌクレオチドプライマー対の設計は、本明細書および関連する遺伝子に対して提供される上記に記載の配列情報に基づけば、当該技術分野の通常の技能の範囲内にある。当該技術分野で周知のように、オリゴヌクレオチドプライマーは、該プライマーと相補的な標的の部分を増幅するために、種々のアッセイ(PCR、RT−PCR、RTQ−PCR、spPCR、qPCRおよび対立遺伝子特異的PCR等)に使用することが可能である。したがって、プライマー対は「順方向」プライマーと「逆方向」プライマーの両方を含み、一方はセンス鎖(すなわち本明細書で提供される配列で示される鎖)に相補的であり、一方はアンチセンス鎖(すなわち本明細書で提供される配列で示される鎖に相補的な鎖)であり、それらは増幅条件にさらされると対象標的から検出可能な増幅生成物を生成することが可能であるように標的にハイブリダイズするように設計されている。標的核酸の各々の配列が本明細書で提供されるため、本明細書の教示に基づいて、当業者は対象標的(またはその相補的配列)に相補的な適切なプライマー対を設計することが可能である。種々の好ましい実施形態では、プライマー対の各メンバは、発現産物標的に完全に相補的な、長さが少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、35、40、45、50、またはそれよりも長いヌクレオチドからなる一本鎖DNAポリヌクレオチドである。1つの好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマー対の各メンバは、発現産物レベルをアッセイされる遺伝子に依存して、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21または23の少なくとも10個の連続するヌクレオチドを含む。種々のさらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマー対の各メンバは、発現産物レベルをアッセイされる遺伝子に依存して、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21または23の少なくとも15、20、25、30、35、40、50、75、100、またはそれより長い連続するヌクレオチドを含む。最も好ましい実施形態では、プライマー対は、標的発現産物に対して、自身の全長が完全に相補的である。すべての実施形態で、オリゴヌクレオチドプライマーは当該技術分野の標準的方法を使用して、検出できるように任意選択で標識される。本明細書の教示に基づく当業者に周知の方法を使用して、PCR、RT−PCR、および定量的増幅技術を含む他の増幅技術を実行することが可能である。
【0057】
本発明のすべての態様および実施形態の方法の別の好ましい実施形態では、検出またはタンパク質発現産物レベルは、検出されるタンパク質に選択的に結合する抗体プローブまたはアプタマープローブの使用を含む。本明細書および関連する遺伝子に対して提供される上記に記載の配列情報に基づけば、適切な抗体およびアプタマーの設計は当該技術分野の通常の技能の範囲内にある。1つの好ましい実施形態では、抗体またはアプタマーは、発現産物レベルを測定される遺伝子に依存して、配列番号2、4、6、8、10、12、
14、16、18、20、22または24のタンパク質に選択的に結合する。抗体は、免疫ブロット法、ELISA、配位子結合アッセイおよびタンパク質アレイ分析検出技術を含むがこれらに限定されない技術に使用可能である。
【0058】
別の態様では、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22または24のタンパク質に選択的に結合する1つまたは複数の抗体および/またはアプタマー(特定の標的分子に結合する核酸またはペプチド)を有するかまたはそれらから成る抗体のマイクロアレイを提供する。用語「抗体」は、本明細書に使用する場合、任意のアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgE等)のすべての抗体を含むことを意図し、脊椎動物(例えば哺乳類)タンパク質に特異的に反応するその断片を含む。抗体は従来の技術を用いて断片化可能であり、断片は抗体全体の代わりに上述したように同じ方法で有用か否かをスクリーニングすることが可能である。したがって、抗体は、あるタンパク質に選択的に反応することが可能な抗体分子の、タンパク質分解により開裂された部分または組換え技術で調製された部分のセグメントを含む。そのようなタンパク質分解により開裂されたおよび/または組換え技術で調製された断片には、Fab、F(ab’)2、Fab ’、Fv、およびペプチドリンカーにより結合されたV[L]および/またはV[H]
領域を備えた一本鎖抗体(scFv)を含む。scFvは、2個以上の結合部位を有する抗体を形成するように共有結合でまたは非共有結合で結合されてもよい。本発明は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または他の抗体の精製調製物および組換え抗体を含んでいる。好ましくは、そのようなアレイは、上記に記載されたタンパク質発現産物のうちの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個と選択的に結合する複数の抗体および/またはアプタマーを含む。1つの好ましい実施形態では、抗体および/またはアプタマー配列は、16以下の別個のタンパク質用プローブを含む。種々のさらなる実施形態では、抗体および/またはアプタマーアレイは、本発明の方法で上述したように、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5または4個(対照を含む)以下の別個のタンパク質のプローブを含む。文脈が別段明記しない限り、他の態様に対して本明細書に開示された好ましい実施形態は本態様にも当てはまり、本態様に関して説明した好ましい実施形態と結み合わせてもよい。例えば、抗体および/またはアプタマーアレイは、本発明の第1および第2の態様で上述したように使用される複数の遺伝子の種々の好ましい組み合わせに対するプローブを含むか、または該プローブから成る。1つの好ましい実施形態では、抗体および/またはアプタマーアレイはMYCおよび/またはPDCD4に対するプローブを含むか、または該プローブから成る。別の好ましい実施形態では、抗体および/またはアプタマーアレイは、HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1、BCL6、ACTN1、COL3A1、LMO2またはPLAUのうちの1、2、3、4、5、6、7または8個に対するプローブに含むか、または該プローブから成る。種々のさらなる好ましい実施形態では、抗体および/またはアプタマーアレイは、MYCと、HLA−DRB、HLA−DRA、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1、2、3、4、5、または6個との組み合わせ;またはPDCD4と、HLA−DRB、PLAU、BCL6、ACTN1およびLMO2のうちの1、2、3、4、5、または6個との組み合わせ;を含むか、それらから成る。これらの実施形態の各々は、DLBCL患者のR−CHOP治療の結果を予測する方法に使用するのに特に好ましい。種々のさらなる好ましい実施形態では、抗体および/またはアプタマーアレイは促進してもよい、表1−3および5に列挙された他の遺伝子に対する抗体プローブを含む。これらの実施形態はすべて、上述の好ましい実施形態と組み合わせることが可能であり、その場合、文脈が別段明記しない限り、合計で(対照遺伝子を含む)16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個以下の遺伝子に対する抗体および/またはアプタマーがアレイ上に存在する。抗体および/またはアプタマー分子は検出可能な標識を含んでもよく、そのような分子の標識方法は当該技術分野で周知である。
【0059】
本発明はさらに、本発明の方法の1つまたは複数の実施に有用なキットを含む。キットは、本発明の1つまたは複数の組成物(例えばオリゴヌクレオチドプローブ、オリゴヌクレオチドプローブアレイ、オリゴヌクレオチドプライマー対、抗体、アプタマー、抗体アレイ、アプタマーアレイ)と、DLBCL患者の治療結果を予測すべく該組成物を使用するための取扱説明書とを備えている。本発明はさらに、種々の組み合わせの、高密度オリゴヌクレオチド、抗体および/またはアプタマーアレイ、該アレイに使用される試薬、信号検出およびアレイ処理装置、遺伝子発現データベースおよび分析、手順書、および上述のデータベース管理ソフトウェアを組み合わせた「キット」に関する。キットにパッケージされるデータベースは、ヒトまたは実験動物の遺伝子および遺伝子断片(表1−3および表5の遺伝子に対応)の発現パターンの編集物である。データは正常および病気の両方の動物組織の貯蔵場所から集められ、再現可能で定量的な結果(つまり遺伝子が所与の条件下でアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる程度)を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、キットは、上述した1つまたは複数のオリゴヌクレオチド配列を含んでよい。固体支持体は高密度オリゴヌクレオチドアレイであってもよい。キットはさらに、アレイに使用される1つまたは複数の試薬、1つまたは複数の信号検出および/またはアレイ処理装置、1つまたは複数の遺伝子発現データベース、および1つまたは複数の分析およびデータベース管理ソフトウェアパッケージを含んでよい。そのようなキットの用途の例には、in situハイブリッド形成用、PCR用、bDNA用、NanoSt
ring技術用、およびシーケンシング用のキットが含まれる。
【0060】
本発明は、例えば、配列情報(本発明の分析用の遺伝子に対する配列情報)、種々の細胞または組織試料の遺伝子発現情報、ならびに患者の治療および応答または予後の情報もしくは他の診断情報(例えばDLBCL等の疾病段階の決定)、または患者リスク評価(例えばIPIスコアによる)を含むリレーショナルデータベースを包含する。データベースは、所与の配列または組織試料に関連する情報、例えば配列情報に関連する遺伝子に関する記述的情報や、組織試料または試料の由来となっている患者の臨床状態に関する記述的情報を含んでよい。データベースは、異なる複数の部分、例えば配列データベースと遺伝子発現データベースを含むように設計されてもよい。そのようなデータベースの設定および構築方法は広く利用可能であり、例えばその全体を本明細書に援用するAkerblomら(1999)米国特許第5,953,727を参照されたい。本発明のデータベースは、外部データベースにリンクされてもよい。好ましい実施形態では、外部データベースはGenBankおよび全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)により管理された関連するデータベースである。本発明のデータベースを使用して、電子ノーザンブロットを生成し、ユーザが所与の遺伝子が発現されている細胞型または組織を決定し、かつ特定の組織または細胞中の所与の遺伝子の存在量または発現レベルの決定することが可能である。本発明のデータベースを使用して、組織中の少なくとも2つの遺伝子の発現レベルをデータベース中の遺伝子の発現レベルと比較することからなる、GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、および発現産物レベルを比較するステップを含むSOD2から成るグループから選択された少なくとも2つの遺伝子を含む1セットの遺伝子の組織または細胞での発現レベルを識別する情報を示してもよい。そのような方法を使用して、試料からの2個以上の遺伝子の発現産物レベルを、正常組織、ガン組織または悪性腫瘍、または同じ疾病(例えばDLBCL)と治療(例えばR−CHOP)を受けた患者、もしくは異なる臨床結果を有する他の患者で見出される発現レベルと比較することにより所与の組織の生理学的状態を予測することが可能である。そのような方法を、本明細書で説明したような薬物または活性物質のスクリーニングアッセイに使用してもよい。マイクロアレイと共に使用するよう設計されたデータベースおよびソフトウェアがBalabanら
の米国特許第6,229,911号(マイクロアレイの少数または多数から収集された、索引付の表として保存された情報を管理するコンピュータが実現する方法)および米国特許第6,185,561号(遺伝子発現レベルのデータを収集し、追加属性を加え、種々
のクエリ(質問)に対する回答を生成するようデータを再フォーマットするデータマイニング能力を備えたコンピュータベースの方法)に記載されている。Cheeらの米国特許第5,974,164号は、基準配列にハイブリダイズする野生型と変異型の配列間のプローブ蛍光強度の差に基づいて核酸配列の変異を識別するソフトウェアベースの方法を開示している。配列情報、遺伝子発現情報、およびデータベース中のまたは入力として提供された他の情報の間の必要な比較を行なうために、任意の適切なコンピュータプラットフォームが使用されてもよい。例えば、多数のコンピュータワークステーションがSilicon Graphics社から入手可能なもののような、種々の製造業者から入手可能である。クライアントサーバ環境、データベースサーバ、およびネットワークは、本発明のデータベース用の広く利用可能な適切なプラットフォームである。
【0061】
固定組織試料
固定された(または不溶性の)標本でqNPAアッセイを行う方法がPCT/US08/58837に記載されており、その全体を本明細書に援用する。遺伝子の、特に固定組織からの特定の遺伝子の発現の正確な測定は、多くの利点を有する。臨床試料の場合には、記載されたプロセスにより、標的オリゴヌクレオチドを、臨床業務の変更を必要とせずに−冷凍試料を準備しなくても固定組織から直接に−、測定することが可能である。バイオマーカーおよび標的遺伝子を識別かつ有効にする遡及的研究に、モニタリング、予後診断、または診断アッセイの開発および確認に、または遺伝子発現と安全性の関連づけに、もしくは疾患プロセスの理解のため等に、保管された固定材料の膨大な蓄積物を使用することが可能である。本発明は、固定化試料中の遺伝子発現の分析に関する制約を解決する。例えば、PCRまたはハイブリダイゼーション法による測定には、大量の組織が必要とされ、かつ複雑な抽出および試料調製方法を伴うことが知られている。さらに、測定の質が、組織がどの程度長い期間保管されたかの関数として減少することが観察されることが多い。対照的に、in situ測定(組織でRNAまたはタンパク質が標識付けされ、かつ可
視化される)は、新たに固定されたばかりの組織または保管された組織で行ない、同様な質のデータを生産することが可能である。したがって、本発明は、固定組織から発現産物レベルを検出する方法であって、組織からプローブを回収することからなり、未変性オリゴヌクレオチド自体ではなく該プローブが測定の基礎として機能することを提供する。本発明はさらに、固定組織からオリゴヌクレオチドを測定する方法としての、ヌクレアーゼ保護の使用に関する。したがって、本発明によって開示された方法は、可溶性オリゴヌクレオチドと同様、架橋されたオリゴヌクレオチドの測定を可能にする。固定化試料または保存されていた試料中の生物学的標的の測定は、技術的に困難な冒険である。タンパク質はプロセス中に変性し、抗原性(つまり抗体認識)をしばしば失うことが知られている。炭水化物、特に糖タンパク質部分のペプチドおよびタンパク質に関連したものを、化学的に変化させてもよい。核酸は、細胞環境内、互いに、および他の分子(例えばタンパク質、脂質および炭水化物)との間で架橋する場合がある。これらの分子の回収および分析は高価で時間のかかるプロセスである。
【0062】
固定化試料からの測定は、低密度でも高密度でもよく、かつ固定されたもの(アレイとして印刷された捕捉プローブ)でもプログラム可能でも(印刷されたアンカーと追加されたプログラミング/捕捉リンカーとの組み合わせ)よい単一のアレイを用いて、またはマイクロプレートのウェルまたは各試料中の複数の遺伝子を測定する溶液中のビーズを含むビーズアレイマイクロプレートのウェル中に印刷可能な複数のアレイを用いて、もしくは表面に固定しても固定しなくてもよいヌクレアーゼ保護タンパク質の標識とイメージングにより、またはゲル剤、電気泳動、クロマトグラフィ、質量分光法、シーケンシングの使用により、複数の混合物として、または各反応混合物中で検出される個々の標的として、(例えば従来のマイクロプレートアッセイでの)、またはヌクレアーゼ保護プローブのPCR(または他の増幅方法)により、またはハイブリッド捕捉により、もしくは当業者が使用し得る他の方法により、行うことが可能である。固定化試料からのオリゴヌクレオチ
ドの異なる形式の測定を、いずれも単一試料である場合も、試料間を比較する場合も(例えば疾患対正常、処理対対照、またはその任意の組み合わせ)行なうことが可能である。
【0063】
アプタマーまたは他のプローブを使用したタンパク質の測定も本発明では許容される。本発明は、適切なプローブを使用したタンパク質とオリゴヌクレオチドの同時測定にも関する。さらに別の実施形態では、本発明は、架橋された(また可溶な)RNAへのプローブのハイブリダイゼーション(または結合)と、その後のプローブまたはプローブ/標的分子)の除去および測定にも関し、この場合、標的分子が破損、破砕、または開裂されていてもよいが、プローブまたはプローブ複合体は完全(インタクト)であるか、十分に結びついているものとする。任意の方法を、架橋されるか表面に結合された標的分子(例えばオリゴヌクレオチド、または例えばRNA)と可溶性標的分子の両方に関連付けられたプローブ、または架橋されるか表面に結合された標的分子のみに関連付けられたプローブが、標的分子に対して分析可能な量に減少され、次に、組織から除去され測定される。
【0064】
本発明は、前記標的が前記組み合わせに結合するのに有効な条件下で、標的を含んでもよい試料と上述した組み合わせとを接触させることを含む、少なくとも1つの不溶性標的を検出する方法を提供する。別の実施形態は、RNA発現パターンを決定する方法であって、RNA標的をプローブに特異的にハイブリダイゼーションするのに有効な条件下で、少なくとも2つのRNA分子を含む試料を、上述の組み合わせと共にインキュベートすることを含み、上記組み合わせの少なくとも1つのプローブは、少なくとも1つの不溶性RNA標的に対して特異的(つまり選択的)な核酸(例えばオリゴヌクレオチド)である方法を提供する。別の実施形態は、RNA発現パターンを調節する活性分子(または条件)を識別する方法であって、かかる方法はRNA発現パターンの決定に対して上述した方法であり、上記活性物質(または条件)の存在下で生成したRNA発現パターンと、異なるセットの条件下で生成したRNA発現パターンとを比較することをさらに含む。遺伝子またはRNAの発現パターンを調節する組成物および活性物質、例えば、CHOP治療薬(抗CD20抗体免疫療法薬の有無に関わらず)については上記段落で説明した。
【0065】
定義
本明細書に使用する場合、用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、および適当な場合リボ核酸(RNA)等のポリヌクレオチドを指す。用語「核酸」は、等価物として、ヌクレオチド類似体から作製されたRNAまたはDNAの類似体を含むと共に、本明細書で説明している実施形態に適用可能なものとして、単鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖のポリヌクレオチドを含むものとする。染色体、cDNA、mRNA、rRNAおよびESTが核酸と呼ばれ得る分子の代表的な例である。
【0066】
本明細書に使用する場合、用語「標識」および「検出可能な標識」は、検出可能な分子を指し、それには放射性同位元素、蛍光団、化学発光部分、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、染料、金属イオン、リガンド(例えばビオチンまたはハプテン)等が含まれるが、それらに限定されるわけではない。用語「蛍光剤」は、検出可能な範囲で蛍光を示すことが可能な物質またはその部分を指す。本発明で使用されてもよい標識の特定の例には、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、NADPH、α−β−ガラクトシダーゼ、およびセイヨウワサビペルオキシダーゼが含まれる。
【0067】
用語「タンパク質」は、本明細書では「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語と互換的に使用される。
さらに詳しく説明しないが、当業者には、上記の説明および以下の例証的実施例を用いて、本発明の化合物を製造および使用し、また本発明の方法を実施できることと考えられる。したがって、以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を特に指摘したものであって
、開示の残りの部分をいかようにも制限するものとして解釈されないものとする。
【0068】
実施例
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照しながら以下に説明する。
実施例1
患者材料:
FFPETブロックの3つの5μmの未染色切断物(カット)を、主としてシクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコボリン(ビンクリスチン)およびプレドニゾン(CHOP)またはCHOP様化学療法薬で処理した93のDLBCL症例およびCHOPとリツキシマブで処理した116の症例から使用した。リンパ腫が変形した症例は除外した。CHOPのみの症例の凍結ブロックを、先行文献の一部として分析した。先に報告したように、これらの症例は血液病理学専門家のパネルによるコンセンサス調査を受け、DLBCLとして確認された。R−CHOPの症例は、アリゾナ大学ブリティッシュコロンビア癌機関学およびオレゴン州健康科学センターからの現在の症例のファイルから得た。これらの116のR−CHOP症例のうち、32の冷凍ブロックは別の研究にも使用し、専門家パネルによる調査を受けた(Lenz et al., Blood, 2007)。この遡及的研究に使用されたすべての組織は、IRBで許可されたプロトコルの下、過剰の診断組織を使用した前処理診断生検から生体組織検査から得た。
【0069】
アッセイ方法:
DLBCLで使用するためにカスタマイズされたArrayPlate(商標)アッセイの性能については本願発明者らのグループにより以前に説明された(Robertsら, 2007)。3つの
5μmの未染色組織切片を溶解、変性、およびHTG溶解緩衝液中での加熱により透過処理した。その後、試料を凍結し、分析のために移送した。対象遺伝子に特異的な50個のヌクレオチド配列からなるプローブを試料と共にインキュベートし、特異的プローブ−mRNA二本鎖を形成し、次に、ハイブリダイズしなかったプローブをS1ヌクレアーゼにより消化した。次に、アルカリ加水分解で二本鎖中のmRNAを破壊し、インタクトなプローブを元々存在する特異的mRNAの量に比例した化学量論濃度とした。中和後、試料をプローブ検出のためArrayPlate(商標)に移した。ArrayPlate(商標)は、各ウェルの底部の4×4グリッドにスポットされた16個の固有の供給結合された25個のヌクレオチド配列からなる「アンカー」オリゴヌクレオチドのユニバーサルアレイを含んでいた。このユニバーサルアレイを、一端でプローブの一方に結合する25個のヌクレオチドからなる配列と、多端でアンカーオリゴヌクレオチドの一つに結合する25個のヌクレオチドからなる配列とを含む50オリゴヌクレオチドからなるプログラミングリンカーオリゴヌクレオチドの混合物に暴露することにより、予め選択された位置で対象遺伝子に対する50ヌクレオチドからなるプローブに結合するよう修飾した。本願発明者らのアッセイですべての対象遺伝子を測定するには、3つのArrayPlate(商標)ウェルにわたって分配されたプログラミングリンカーオリゴヌクレオチドの異なる3つの混合物が必要であった。
【0070】
ハイブリダイゼーション後、試料からのプローブを、プログラミングリンカーオリゴヌクレオチドによりアレイエレメントに結合させた。検出リンカーオリゴヌクレオチドの混合物を加えた。50オリゴヌクレオチド検出リンカーは、一端にプログラミングリンカープローブにより結合されない端部に試料プローブが結合した25個のヌクレオチドからなる配列と、他端に検出プローブが結合した共通の25個のヌクレオチドからなる配列とを含んでいた。検出プローブを加えると、すべて検出リンカーに結合した。検出プローブには西洋ワサビペルオキシダーゼが結合されていた。化学発光ペルオキシダーゼ基質(Lumigen PS-atto, Lumigen社、ミシガン州サウスフィールド所在)を加えると、各アレイエレメントはその位置に結合した試料プローブの量に比例した光を発した。
【0071】
ArrayPlate(商標)の1,536個のエレメントすべてのシグナルを、CCDベースの
Omix imager(HTGを用いて底部からプレートをイメージングすることにより同時に記録した。イメージを、各エレメントの平均ピクセル強度を計算することで各遺伝子の発現レベルを決定するVuescriptソフトウェア(HTG)を用いて分析した。発現レベルはハウ
スキーピング遺伝子TBPに対して正規化した。
【0072】
以前と同様に、本願発明者らは、36個の対象遺伝子を説明するDLBCLの以前の4つの論文で予後診断に重要なものとして同定されたキー遺伝子を使用した。ヒト腫瘍試料の細胞組成が不均質であるため、本願発明者らは、B細胞(CD19、CD20)、T細胞(CD3)および組織球(CD68)に関して腫瘍組成を試験するよう設計されたプローブも含めた。種々の内因性発現遺伝子のハウスキーピング遺伝子としての有用性を評価した以前に発表した研究に基づいて、2つのハウスキーピング遺伝子(TBPおよびPRKG1)を選択し、qRT−PCRによりこれら2つの遺伝子を、種々のタイプのリンパ腫に適度なレベルまたは低レベルで安定して発現されるものとして同定した。これらの2つのハウスキーピング遺伝子は、アッセイを作成するために3つのウェルの各々の対角線の隅で重複させた。(オリゴdTプローブはポリAテイルを有するmRNAをすべて検出するはずであるため)試料中のmRNAの量を評価するために、オリゴdTプローブを加えた。しかしながら、アッセイのストリンジェンシーによる技術的な理由から、このプローブはうまく機能しなかったのでこれ以上利用しなかった。チトクロム酸化酵素用のプローブも、それがミトコンドリアDNA中にコード化されているため高濃度で発現されているはずであるため、当初は含めていた。このプローブはDNAとRNAの両方に結合することが判明し、したがって非常に明るくおおむね過飽和のシグナルを与えたため、アッセイに不十分な材料があるか否か、またはそれが完全に消失してしまったとすれば試料が使用するには劣化し過ぎていないか否かを識別するために使用可能である場合を除いては、これ以上考慮することはなかった。
【0073】
対象の44個の遺伝子の各々に対して、4個の特異的プローブを設計した(すべてを合成したわけではないが)。ArrayBuilder(商標)2.0ソフトウェア(HTG)を使用して
、16個のグループの標的転写物を測定するのに必要なオリゴヌクレオチドを設計した。簡単に説明すると、ユーザが標的遺伝子に受入番号を与え、アレイ配列中のそれらの位置を割り当てると、ソフトウェアはGenBankから各mRNA配列を検索し、それらの5’および3’を構成する25個のヌクレオチドの融解温度(Tm)にしたがって標的遺伝子配列の連続する50個のヌクレオチド体をランク付けし、2つの25個のヌクレオチドである半分体の各々のTmが68℃に最も近い50ヌクレオチドに優先順位を与える。16個の標的mRNA種の各々に対する4つの最も上位にランク付けされた非重複の50ヌクレオチドからなる配列を、相同な配列を同定するためにBLASTに供した。他の遺伝子との相同性のある配列は拒否し、順番にBLASTに供される次に上位にランク付けされている50ヌクレオチド配列と置き換えた。有意な相同性がない配列が保持された。その後、ソフトウェアは、アッセイで所与の50ヌクレオチドからなる標的を測定するのに必要な4個のオリゴヌクレオチド(プログラミングリンカー、保護プローブ、検出リンカーおよび減衰断片)の配列を含む出力ファイルを作成した。
【0074】
表2は、対象遺伝子の名称、プローブのその遺伝子に対する開始位置、および標的配列を列挙しており、設計されたプローブは記載された配列に逆相補的である。
36個の対象遺伝子を説明するDLBCLの以前の4つの論文で予後診断に重要なものとして同定されたキー遺伝子を、本研究で使用した(Rosenwald et al., N Engl J Med. 2002;346:1937-1947; Tome et al., Blood. 2005;106:3594-3601; Shipp et al., Nat Med. 2002;8:68-74; Lossos et al., N Engl J Med. 2004;350:1828-1837)。かかる遺伝子を、元の文献に列挙された順番で表1に列挙している。ハウスキーピング遺伝子であるTATAボックス結合タンパク質(TBP)を、q−RT−PCRを使用して11個の他の「ハウスキーピング」遺伝子と比較したところ、それが12個のリンパ腫細胞株および8
0個のBおよびT細胞リンパ腫試料で適度なレベルで安定に発現していることに基づき(Lossos et al., Leukemia. 2003;17:789-795)、かつArrayPlateアッセイでのかかる遺伝子がこれまでに試験されたすべての試料で最小の変化で適度に発現されることが示されるという以前の経験に基づき(Roberts et al., Laboratory Investigation. 2007;87:979-997)、データの正規化のために選択した。
【0075】
【表1】



【0076】
【表2】



統計分析:
Array Plate qNPA(商標)技術により測定した遺伝子発現と生存率との関連付けの統計分析を、CHOP−R治療した116症例およびCHOPまたはCHOP様投薬計画のみで治療した93症例に対して行なった。遺伝子発現値の対数を、1に等しい標準偏差を有するよう標準化した。
【0077】
患者の生存率に関連するHTG結果の初期評価(単変数解析、CHOP治療した症例の結果とR−CHOP治療した症例の結果との間の比較):
標準化した対数遺伝子発現レベルと患者の全生存率(OS)との間の一変数関連付けのためのハザード比(95%信頼区間)およびp値を、コックス比例ハザード回帰を使用して得た(Cox et al., Journal of the Royal Statistical Society B. 1972;B34:187-220)。比較的大きな数の検定統計量を説明するために、関連がないグローバル帰無仮説に対する仮説検定のセットの全体の統計的有意差を、「テイル強度」(TS)統計に基づく置換再サンプリングにより計算した(Taylor et al., Biostatistics. 2006;7:167-181)。遺伝子発現および処理の種類の全統計学的相互作用の検定を、同様の方法で考慮した。
【0078】
多変数解析:
最節約多変数モデルの探索的分析では、グローバルスコア・カイ二乗統計に基づく「最良」モデルを決定する部分集合選択を使用した(Furnival et al., Technometrics. 1974;16:499-511)。モデル構築プロセスで使用した候補遺伝子は、公称p値<0.05を達
成する遺伝子とした。1、2、3および4変数モデルの各々に対する上位3つのモデルを導き出した。説明のため、全体の最良同定モデルを含む各ファクターに対して、患者を高
対低遺伝子発現(中央値の上下)により分類した。その後、患者を有害リスクファクターの数によりグループ化し、生存率を調べた。
【0079】
臨床IPIスコアに関する2つの遺伝子モデルの調節:
最後に、臨床に基づくIPI指標に合わせて調節した後の、AP遺伝子リスクモデルが悪性細胞の生物学的態様の有意性を保持する能力を評価した(Shipp et al., N Engl J Med. 1993;329:987-994)。
【0080】
2つのキー遺伝子の可変カットポイント分析:
最もリスクの高い発現レベルの同定を最適化するために、多変数モデリングで同定されたファクターについて、カットポイント分析を別に行った。置換再サンプリングを用いてすべての評価されたカットポイント間の比例ハザードスコア検定の有意水準を調節した(LeBlanc et al., Assay Drug Dev Technol. 2002;1:61-71)。さらに、カットポイント分析の統計学的変動性を調節するために、患者合計の10%の最小のグループサイズを、分析のために設定した。
【0081】
結果
FFPETブロックにおけるアッセイの性能
試みた209症例のうち、十分に検出できる信号が生じなかったのは1例のみであった。ポリDTプローブ(Ventana Medical Systems, アリゾナ州トゥーソン所在)を使用し
たin situハイブリッド形成により、mRNAが分解された(データは図示しない)こと
が実証された。したがって、この失敗は分析自体の技術的な欠陥ではなく試料が不適当であることに起因した。本願発明者らの以前の研究におけるようにすべての試料中でTBPは適度かつ一般して発現され、対照遺伝子としてデータの正規化に使用された(本願発明者らの以前の研究におけるように)。
【0082】
統計分析の全体的な理論的解釈および配列
遺伝子発現測定値の対数を使用した、HTG結果の初期評価は、両方の治療群の患者の生存に関する個々の遺伝子レベルの単変数解析を含んでいた。潜在的に重要な遺伝子をさらに調査するために、死亡のハザード比を計算した。以前に報告された文献により予測された方向にハザード比が向かうか否かの評価がなされた。処理群に対し、遺伝子のパネルの全有意差をテイル強度統計値および置換再サンプリングを使用して評価した。一変数モデリングでの全生存率に有意に関連する(p<0.05)任意の遺伝子を、コックス回帰分析(Cox et al., 1972)を使用して、多変数リスクモデルへ包含される可能性について評価した。最良モデルを決定するために、グローバルスコア・カイ二乗統計に基づく「最良」モデルを決定する部分集合選択を決定した(Furnival文献)。このモデルは臨床IPIスコアに関して調節した。より適切なカットポイントがあるか否かを見るために、生物学的制約のある予め選択された第50パーセンタイルではなく、可変カットポイント分析が2つのキー遺伝子について行なわれた。置換サンプリングを使用して、カットポイント最適化の多重比較対象を調節した。
【0083】
CHOPの結果
化学療法薬のみ(主としてCHOP)で処理した症例の場合、36個の予後判定遺伝子のうち15個に関して、遺伝子発現レベルは全生存率と関連していた(p<0.05で)。かかる遺伝子には、主要組織適合クラスII遺伝子HLA−DRおよびHLA−DP、胚中心関連遺伝子BCL6、GCET1(SERPINA9)、間質関連遺伝子(ACTN1、COL3A1、CTGF、FN1)、増殖遺伝子MYC、CCND2、PRKCB1、およびPDCD4、TLE、B4GALT1、ならびにBCL−2が含まれる。これらの遺伝子は、Rosenwaldらの4個すべて、Shippらによって報告された13個の遺伝子のうちの4個、およびLossosらの6個の遺伝子のうちの3個の予後判定署名を示した。追加
の遺伝子CCL3は、0.062で境界線上の有意差であった。
【0084】
R−CHOPの結果
R−CHOPで処理した患者の場合、分析された36個の遺伝子のうちの11個はp<0.05のカットオフレベルで生存率に有意に関係していた。これらの遺伝子は、GCET1(SERPINA9)、HLA−DQA1、HLA−DRB、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2であった。追加の遺伝子FN1は、0.078のp値でわずかに有意であった。2つの処理段階に対して比較した単変数解析の結果を、横に並べて表3に示す。
【0085】
再現性のある重要性を備えた遺伝子を強調するために、0.05以下のp値を灰色のシェーディングで太字で強調表示し、0.1と0.05の間のp値を灰色のシェーディングで強調表示した。中間値の発現レベルの上下の各遺伝子カットに対する平均2年全生存率を、表3に要約する。単純な記述的要約統計量として2年生存率が選択されたことが留意する。同様な結果は3年全生存率や4年全生存率でも見られるが、打ち切り例がより多くなるため推定がより不安定となる。表に示されたp値は、遺伝子発現の連続対数を使用したCoxスコア検定に基づいており、したがって、示された生存率推定値の要約の選択に依
存しない。HLA−DRB(MHCクラスII遺伝子)、BCL6およびMYCに対する異なる処理段階における相対的全生存率曲線を図1に実証する。これらの実施例は、ArrayPlate分析が、患者の予後に関連付けられることが可能な意味のある定量的データを生成できることを実証している。この結果は、かかる周知の予後判定遺伝子に対して、R−CHOP処理患者で予後の関連性の継続的証拠があることを実証している。
【0086】
【表3】


両方の処理群の大部分の遺伝子について、死亡のハザード比の推定値は、元の研究により予測された方向に向かった(表4)。ハザード比(HR)は、対数発現レベルの1つの標準偏差の変化に相当し、1より高いハザード比は高発現(中央値より上)と予後不良の関連性を示し、1以下のハザード比は高発現と予後良の関連性を示す。したがって、大きさが非常に小さい(例えば0付近の)ハザード比の推定値は、高発現と長い生存との間の強い関連性のある遺伝子に相当する。
【0087】
【表4】


CHOPデータとR−CHOPデータの比較
パネル中の複数の遺伝子の試験に取り組むために、テイル強度(TS)統計および置換再サンプリングを使用して、36のp値の全体試験を行なった。CHOP処理患者(TS:p=0.007)およびR−CHOP患者(TS:p=0.013)の両方で、36個の遺伝子全体のパネルと予後との間には関連性の証拠がある(Taylor et al., Biostatistics. 2006;7:167-181)。各遺伝子と生存率の間の関連性(統計相互作用)の処理群による差異の全体的試験も考慮した。相互作用試験の力は制限されているが、2つの処理の種類間で36個全体の遺伝子発現のパネルの効果に差があるという証拠はなかった(TS:p=0.250)。
【0088】
重要な予後特徴の全体的評価として、2つの処理の種類における患者間のIPI分布を評価した。CHOPのみの患者では、41%が0−1のIPIを有し、48%が2−3のIPIを有し、11%が4−5のIPIを有していた。CHOP−R治療の患者では、40%が0−1のIPIを有し、56%が2−3のIPIを有し、4%が4−5のIPIを有していた。2つの処理群間に差があるという証拠はなかった(p=0.18)。表5は、2つの治療段階の患者間のIPIスコアの個々のファクターの分布について詳述している。
【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

予後モデル
多変数予後モデルの探索的分析として、最良部分集合分析によって決定される最良の1、2、3および4変数モデルを計算した(データは図示しない)。最良2変数モデルはMYCとHLA−DRBの組み合わせとし、モデルカイ平方は16.6であった。しかしながら、MYCとHLA−DQA1またはPLAUとを含む他の2つの変数モデルが、適度により小さいモデルカイ二乗統計値を有した。本研究における事例の数が比較的少数であること考えると、全最良モデルに関する決定的な記述は不可能である。3つの変数モデルがモデルフィットの任意の統計学的改良を生じさせるという証拠はなかった。患者は高レベルまたは低レベルのMYCおよびHLA−DRBを有するとして定義された。28人の患者(24%)がいずれの有害遺伝子レベルも有していた。これらの患者は、図2Aで示されるように、0または1個の有害遺伝子レベルを有する患者よりも生存率が非常に悪かった(2年全生存率38%対87%)。高IPI部分群と低IPI部分群の両方で差が示される(図2B−C)。有害遺伝子レベルの数とIPIグループ(p=0.88)の間の相互作用の証拠がなかったが、両方の有害遺伝子レベルを有する患者の生存率が不利であることは、高IPI(2年推定、14%対68%)患者で特に顕著に見られる。CHOPおよびR−CHOPデータの両方を組み合わせて、カットポイント分析を使用して、これら2つの遺伝子の発現と生存率との関連の性質をさらに探求した。HLA−DRBについては、最上位カットポイントを示す最も高いカイ平方値が、遺伝子発現のより低い第20パーセンタイルにあった(複数試験を説明する置換再サンプリングに基づきp=0.01)。MYCについては、最上位カットポイント(p=0.01)は発現の上部第80パー
センタイルにあった(図3)。カットポイントの適応性を考えると、本分析で識別されたカットポイントレベルに基づく任意の多変数モデルも、独立して最も有効とされるだろう。第80パーセンタイルはMYCに対する最適なカットポイントであるが(>15のカイ平方値および名目p<0.0001に対応)、名目上有意(p<0.025)な広範囲のカットポイント値があったことを強調しておく。これは、他のカットポイントでも面白い予後モデルに結びつき得ることを示している。
【0091】
追加のCMYC、HLA−DR分析
HLA−DRBおよびCMYCの修正カットポイントを考慮するために追加の分析を行なった。さらなる研究に使用したカットポイントは、HLA−DRBの遺伝子発現の下部第35パーセンタイルと、MYCの遺伝子発現の上部第30パーセンタイルの遺伝子発現であった。これらの分析(データは図示しない)は、有害HLA−DRBまたは有害Myc遺伝子発現の一方と4〜5の有害IPIスコアとの組み合わせにより、生存率結果が20%になることを示すが、4〜5のIPIのみであると40%生存率が予測され、本方法の予測値が改善されていることを示している。
【0092】
MYCおよびHLA−DRに対して提示したモデルは、他の遺伝子組合せに基づいて予後モデルを導き出すテンプレートとして使用することが可能である。同じアルゴリズムは、16個の選択された遺伝子間の他の多変数遺伝子モデルに当てはまる。カットポイントは、中間値または2つの試料のlogrank検定統計量を最適化する値のいずれかに基づいて指定される。このカットポイント規則は任意の遺伝子に対する2つのグループ(つまり良対不良成績者)を定義し、不良予後属性の数を数えることにより全予後グループが導き出される。臨床設定では、新しく診断された患者の予後予測は、不良属性の数によって決まる。比例ハザード回帰、lasso回帰または極限回帰を含む(がそれに限定されない
)モデル化戦略を、予後規則の代替手段として使用することが可能である。
【0093】
以下は、11個の一変数の有意な遺伝子からの考えられる55の組み合わせのうちの上位12のモデルの表である。11個の遺伝子はすべて、少なくとも一つのペアワイズモデルに含まれることを示す(すなわち11個の遺伝子の各々は上位12の予後マーカーペアの少なくとも1つに存在する)。各ペアワイズモデルは統計的有意差(未調節の予後p値)を示す。
【0094】
【表7】

次に本願発明者らは、本研究の予後判定の結果を、Losso et. al (2008)およびLenz et
. al(2008)により報告されているCHOP+Rを受けた患者に対して比較した。未加工データが利用可能でないことから、予後モデルのパフォーマンスの比較は可能でないが、推定生存曲線に基づいて、Rimsza et. alの結果は良リスクグループと不良リスクグループ
の間の差でうまくいった。
【0095】
1.本研究 良リスク:5年全生存率、78%(n=88);不良リスク:5年全生存率、37%(n=28)
2.Lenzら:四分位の1:3年全生存率、89%(n=58);四分位の2:3年全生存率、82%(n=58):四分位の3:3年全生存率、74%(n=59);四分位の4:3年全生存率、48%(n=58)
3.Lossosら:良リスク:2年全生存率、85%(n=67);不良リスク:2年全生存率、61%(n=65)
示された結果は、症例数、モデル構築戦略、不良および良リスクグループの症例数、および全生存率推定の時間点を含む、重要な様式で異なることに注意する。結果を本願発明者等の分析とより比較できるようにするために、本願発明者らは四分位数1−3の生存率の結果を(症例の約4分の3が良リスクグループとなるように)平均する。本願発明者等は未加工データを有しないため、これは粗平均であることに注意する。次に、3つの文献の各々に対して、全生存率(全生存率)が異なる時間で報告される。本願発明者らは、グループ間の予後の差の測定値として粗ハザード比を報告する。本願発明者らはこの数をlog(全生存率予後良好)/log(全生存率予後不良)により近似する。
【0096】
本研究 HR=4.0
Len zら HR=3.6
Lossosら HR=3.0
ハザード比がより大きいことは、予後の関連性の強度がより大きいことと関係するはずである。しかしながら、本モデルではより少数の変数しか使用しなかったことに留意すべきである。
【0097】
上記の実施例を、上記の実施例で使用されたものの代わりに本発明の包括的にまたは詳細に説明した反応物および/または動作条件を用いることにより、同様の成功をもたらすよう繰り返すことが可能である。
【0098】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的特質を容易に確認することが可能であり、本発明の範囲の精神および範囲から逸脱せずに本発明を種々の使用方法および条件に適合すべく本発明の種々の変更および改変をなすことが可能である。上記に引用したおよび以下に列挙したすべての刊行物および特許は本明細書に援用する。
【0099】
これ以上詳述しなくとも、当業者は、上記説明を用いて、最も完全な程度に以下の発明を利用することが可能であると考えられる。したがって、以下の特定の好ましい実施形態は単なる例であって、本開示の残りの部分をいかようにも制限するものではないものとして解釈されるものとする。
【0100】
上記のおよび下記の例では、別段の定めがない限り、すべての温度は摂氏で修正せずに記載され、すべての部分およびパーセンテージは体積で記載される。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2〜12個の間の遺伝子の発現産物のレベルを検出することであって、合計で16個以下の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法。
【請求項2】
前記化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学療法薬の組み合わせはさらにモノクローナル抗体治療薬を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
モノクローナル抗体治療薬はリツキシマブ抗CD20モノクローナル抗体治療薬を含む請求項1−3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対照は、対照患者集団の遺伝子の平均発現産物レベルを含む請求項1−4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出することが、前記グループから選択された2〜4個の遺伝子の発現産物を検出することを含む請求項1−5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出することが、前記グループから選択された2〜8個の遺伝子の発現産物を検出することを含む請求項1−5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
治療結果を予測する際に患者の国際予後指標(IPI)を評価することをさらに含む請求項1−7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
MYC、HLA−DRBおよびPDCD4のうちの1つまたは複数の発現産物レベルが検出される請求項1−8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1およびPLAUのうちの1つまたは複数の発現産物レベルが検出される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発現産物がmRNAである請求項1−10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記検出することはヌクレアーゼ保護アッセイを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記発現産物がタンパク質である請求項1−10のうちのいずれか1つの方法
【請求項14】
患者試料はパラフィン包埋した組織試料を含む請求項1−13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
合計で12個以下の遺伝子の発現産物のレベルが検出される請求項1−14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された1つまたは複数の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、および
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせと共にモノクローナル抗体治療薬を受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法。
【請求項17】
前記化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モノクローナル抗体治療薬は抗CD20モノクローナル抗体治療薬を含む請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記対照は、対照患者集団の遺伝子の平均発現産物レベルを含む請求項16−18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
治療結果を予測する際に患者の国際予後指標(IPI)を評価することをさらに含む請求項16−19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
MYC、HLA−DRBおよびPDCD4のうちの1つまたは複数の発現産物レベルが検出される請求項16−20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1およびPLAUのうちの1つまたは複数の発現産物レベルが検出される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記発現産物がmRNAである請求項16−22のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記検出することはヌクレアーゼ保護アッセイを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記発現産物がタンパク質である請求項16−22のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
患者試料はパラフィン包埋した組織試料を含む請求項16−25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記検出することが、前記グループから選択された少なくとも2個の遺伝子の発現産物のレベルを検出することを含む請求項16−27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
合計で12個以下の遺伝子の発現産物のレベルが検出される請求項16−28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
患者における瀰漫性B大細胞型リンパ腫(DLBCL)の治療結果を予測する方法であって、
DLBCL患者から試験試料を得ること、
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4およびSOD2から成るグループから選択された1〜12個の間の遺伝子の発現産物のレベルを検出すること、
患者の国際予後指標(IPI)スコアを決定すること、
試験試料中の遺伝子の発現産物レベルを、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較すること、からなり、
患者のIPIスコアと組み合わせた、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、方法。
【請求項30】
前記化学療法薬の組み合わせは、シクロホスファミド、オンコボリン、プレドニゾン、ならびにヒドロキシダウノルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロンから成るグループから選択された1つまたは複数の化学療法薬の組み合わせを含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
化学療法薬の組み合わせはさらにモノクローナル抗体治療薬を含む請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
モノクローナル抗体治療薬はリツキシマブ抗CD20モノクローナル抗体治療薬を含む請求項29−31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対照は、対照患者集団の遺伝子の平均発現産物レベルを含む請求項29−32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
MYC、HLA−DRBおよびPDCD4のうちの1つまたは複数の発現産物レベルが検出される請求項29−33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
HLA−DRB、HLA−DRA、HLA−DQA1およびPLAUのうちの1つまたは複数の発現産物レベルが検出される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記発現産物がmRNAである請求項29−35のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記検出することはヌクレアーゼ保護アッセイを含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記発現産物がタンパク質である請求項29−35のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
患者試料はパラフィン包埋した組織試料を含む請求項29−38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記検出することは前記グループから選択された少なくとも2個の遺伝子の発現産物のレベルを検出することを含む請求項29−39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
合計で12個以下の遺伝子の発現産物のレベルが検出される請求項29−40のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項42】
患者の4から5までのIPIスコアと組み合わせた、対照における遺伝子の発現産物レベルと比較した試験試料中の遺伝子の発現産物レベルは、化学療法薬の組み合わせを受けた場合のDLBCL患者の治療結果の予測に使用できる、請求項29−41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
MYCおよびHLA−DRBの一方または両方の発現産物レベルが検出される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
GCET1、HLA−DQA1、HLA−DRB、HLA−DRA、ACTN1、COL3A1、PLAU、MYC、BCL6、LMO2、PDCD4、およびSOD2から成るグループから選択された2〜12個の間の遺伝子の発現産物に対するプローブを含有する組成物であって、プローブは、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体プローブ、オリゴヌクレオチドプライマー対およびアプタマーから成るグループから選択され、プローブは検出可能となるよう任意選択で標識される、組成物。
【請求項45】
前記組成物は、16個以下の異なる遺伝子発現産物に対するプローブから成る請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記組成物は、12個以下の異なる遺伝子発現産物に対するプローブから成る請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
前記プローブは、遺伝子のmRNA発現産物に相補的なオリゴヌクレオチドプローブである請求項44−46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記プローブは、遺伝子のmRNA発現産物に相補的なオリゴヌクレオチドプライマー対である請求項44−46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記プローブは、遺伝子のタンパク質発現産物が理解される抗体である請求項44−46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記プローブは、遺伝子のタンパク質発現産物に結合するアプタマーである請求項44−46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記組成物は固体支持体に結び付けられる請求項44−50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
請求項44−50のいずれか一項に記載の組成物と、該組成物をDLBCL患者の治療結果の予測に使用するための取扱説明書とを備えたキット。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図1】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2011−525106(P2011−525106A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512668(P2011−512668)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/046314
【国際公開番号】WO2009/149297
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508131152)ジ・アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アリゾナ (5)
【氏名又は名称原語表記】THE ARIZONA BOARD OF REGENTS ON BEHALF OF THE UNIVERSITY OF ARIZONA
【出願人】(506139369)フレッド ハッチンソン キャンサー リサーチ センター (11)
【Fターム(参考)】