説明

灌流三次元細胞/組織疾患モデル

【課題】組織および/または器官における疾患を効率的にモデル化するが、組織または器官を必要としないインビトロ分析のための装置を提供すること。
【解決手段】通常のヒト組織を通るキャピラリーベッドの特徴を再現するシステムが構築されている。このシステムは、キャピラリーベッドの長さスケールで三次元(3D)の細胞モノカルチャーおよびヘテロタイプ細胞同時培養の灌流を容易にする。主要な特徴は、このシステムが、薬剤開発で一般に用いられるタイプのロボット工学に匹敵する高スループットアッセイに受け入れられる「マルチウェルプレート」フォーマット内で利用され得ることである。このシステムは、毒物学および代謝のためのアッセイを実施するための手段、そして肝炎、照射関連病理学、および癌を含む、肝疾患のようなヒト疾患のためのモデルとして提供される。癌適用は、原発性肝臓癌および転移を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年5月19日に米国特許商標庁に出願された米国仮出願番号第60/572,583号に対する優先権を主張している。
【0002】
(連邦政府によって後援された研究または開発に関する陳述)
合衆国政府は、国立科学基金ERC−8803014、およびMITのDouglas A.Lauffenburger(P.I.)への国立衛生研究所助成金(3R01 CA088865−02S1)に対する補助に基き、本発明に特定の権利を有している。この後者の助成金補助に基き、Alan Wellsは、この研究のPittsburg大学の部分のためのサイトPIとして行動し、そしてLinda Griffithは、審査官であった。
【0003】
(発明の背景)
本発明は、「マルチウェルプレート」フォーマットにある灌流バイオリアクターのアレイであって、ここで、このアレイの各バイオリアクターが、微小組織、複数組織、および/または細胞凝集物を形成する細胞が接種された微小スケールマトリックスからなるアレイ、およびこのアレイを、例えば、微小スケール組織アレイ上で生物学的薬剤および/または化学的薬剤の効果を決定するため、組織−組織相互作用を研究するため、または生物学的薬剤および/または化学的薬剤の存在を検出するための高スループットアッセイで用いるための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
組織エンジニアリングは、再構築手術および移植の目的のために解剖学的組織および器官を生成することによりヒト治療において支援するための可能性を有する科学分野として出現した。それは、材料科学、細胞および分子生物学、医薬の科学的分野を組み合わせ、身体内の組織および構造物の補充、修復、および再構築のための新たなデバイスを生じる。多くのアプローチが、過去10年間に亘り提唱されている。1つのアプローチは、組織特異的細胞を、次いで移植され得る開いた多孔性ポリマー足場と組合せることである。多数の細胞が、細胞培養中でこのポリマーデバイスに添加され得、そして拡散によって維持される。移植後、血管内成長が起こり、上記の細胞は、再構築され、そして上記ポリマーが加水分解により分解されるとき、新たな安定組織が形成される。
【0005】
細胞のインビトロまたはインビボ成長のための組織再生デバイスを製作するための多くのアプローチが記載されている。ポリマーデバイスが、器官機能を補充するため、または構造的支持を提供するために記載されている。このような方法は、Vacantiらによる非特許文献1;Yannasらによる特許文献1;Bellらによる特許文献2;およびSchmidtらによる特許文献3によって報告されている。一般に、Vacantiら、およびSchmidtらによる方法は、移植および細胞を接種するために現存するポリマーファイバー組成物を選択および適合することによって実施され得、その一方、YannasおよびBellの方法は、非常に特異的に改変されたコラーゲンのスポンジ様構造を生成する。
【0006】
組織再生デバイスは、このデバイスが任意の有意な厚みがある場合、細胞および組織浸透を可能にするために相互連結されるポアを備えた多孔性でなければならない。ポアサイズ、形状、および曲がりくねり度のような因子は、すべて組織内成長に影響し得るが、標準的な加工技法を用いて制御することは困難である。CimaおよびCimaによる特許文献4は、中実でない形態の製作技法、特に、ポリマー粉末の三次元プリンティングの使用を記載し、解離細胞が接種され得、そして新たな構造物を形成するために移植されるマトリックスを形成する。この中実でない形態の方法の利点は、生体適合性の合成もしくは天然ポリマー、無機材料、または無機材料のポリマーとのコンポジットから特有の構造を構築することであり、ここで、得られる構造が、規定されたポアサイズ、形状および配向、特に、同一デバイス内で異なるポアサイズおよび配向を、このデバイス内の異なる特定の部位で1より多い表面化学またはテクスチャーとともに有しており利点は容易に明らかである。しかし、このデバイスはなお、主要な制限を有している:移植された細胞を持続する血管を形成するための新たな組織の内成長は、移植された細胞を持続するためにマトリックス内で細胞密度を増加することに対して正にそのときに生じなければならず、そしてその他の組織は、この移植された細胞を絞殺またはそうでなければ破壊するようにこのマトリックスをカプセル化または浸潤してはならない。
【0007】
Massachusetts Institute of TechnologyおよびChildren’s Medical Center CorporationによるPCT/US96/09344は、器官および構造構成要素を形成するために組織再生を可能にするため、かつ細胞を接種および移植するためのデバイスを製造する、中実のない形態の製作(SFF)方法の使用を記載し、これは、生体活性薬剤の制御放出をさらに提供し得、ここで、マトリックスは、移植された細胞によって形成された、天然に存在する組織の血管系に機能的に相当する管腔のネットワークによって特徴付けられ、そしてこれは、内皮細胞で裏打ちされ、そして移植のときに血管またはその他の導管に連結され得、マトリックス全体に脈管または延性のネットワークを形成する。
【0008】
しかし、この技法のいずれもが、組織をインビトロで維持する手段も、組織を診断またはスクリーニングツールとして用いる手段も提供しない。代表的なインビトロ培養に置かれた細胞は、一般に、それらが身体中で器官となった組織の一部として通常示す、少なくともいくつかの鍵となる分化した生理学的機能を失う。従って、培養された細胞は、特定の適用、例えば、トキシンおよび病原体の検出において適切であり得るが、それらは、その他の適用、例えば、組織によって代謝される薬物、または正に単一の単離された細胞タイプではない複雑な器官との相互作用を通じてクリアーされる薬物のスクリーニングにおいては確実に失敗する。例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)に対して感染のインビトロモデルは存在せず、多分、代表的な培養状況では、原発性肝細胞が、これらウイルスが細胞に侵入するために用いる細胞表面レセプターの発現を迅速に停止するからである。培養された細胞を用いて現在スクニーニングされることができない既知の病原体のこの例から、しばしば、レセプター仲介取り込みを利用する未知病原体(またはトキシン)が、同様に、培養された細胞における検出を排除し得ると推論し得る。同様に、活性である細胞よって取り込まれるべく細胞特異的レセプターによって結合されなければならない薬物もまた、このような系では試験されることはできない。肝臓中の酵素のセットによって主に実施される異物代謝は、培養された肝細胞によって迅速に失われる別の機能である。肝臓酵素は、大部分の外来化合物の毒性をより少なくするけれども、その他の分子(一般的な例として、痛み軽減薬物アセタミノフェン)は、肝臓によって代謝されるとき、実際、より毒性になり得る。従って、インビボ状態を模倣し得る薬物のスクリーニングのためのシステムを有することは重要である。
【0009】
現在、薬物および環境作用因子に対するヒト組織の複雑な応答を適切に捕捉するインビトロモデルまたは動物モデルはない。さらに、隣接する正常組織との腫瘍細胞の相互作用の複雑な生物学を捕捉するインビトロモデルはない。年を追って、多くの新規薬物が、予期せぬ毒性、特に肝臓毒性に起因して、または抗腫瘍薬剤の肝臓代謝の説明の失敗に起因して、初期臨床試験で失敗している。肝臓細胞は、培養中に置かれたとき、肝臓特異的機能を迅速に失う。従って、インビトロでヒト肝臓組織に対する薬物の長期間毒性を評価することは可能ではない。さらに、ヒト肝臓細胞の供給源は稀であり、そして製薬産業における細胞および組織を基礎にするアッセイのための需要を満たすことはできない。さらに、ヒト組織を培養する能力は、単一細胞転移および腫瘍増殖の極初期ステージのモデルを生成する機会を提供し、培養することが困難な癌を培養する手段を提供し、所定の腫瘍が転移および増殖する傾向を予見し、腫瘍生物学を研究し、そして抗癌化合物の効目を試験するための手段を提供する。
現在の技術の状態である2Dおよび3D培養方法は、生理学的流れを複製する様式で組織塊を通る灌流を可能にしない。
Griffithらによる特許文献5は、複雑な階層的組織または器官構造の接種、付着、および培養に適切な微小マトリックスおよび灌流アセンブリを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,060,081号明細書
【特許文献2】米国特許第4,485,097号明細書
【特許文献3】米国特許第4,520,821号明細書
【特許文献4】米国特許第5,518,680号明細書
【特許文献5】米国特許第6,197,575号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Vacantiら、Arch.Surg.(1988)123:545〜49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、組織および/または器官における疾患を効率的にモデル化するが、組織または器官を必要としないインビトロ分析のための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
通常ヒト組織を通るキャピラリーベッドの特徴を再現するシステムが構築された。このシステムは、キャピラリーベッドの長さスケールで三次元(3D)の細胞モノカルチャーおよびヘテロタイプ細胞同時培養の灌流を容易にする。このシステムはまた、組織が形成された後、腫瘍細胞のような第2の細胞タイプの付加を可能にする。主要な特徴は、このシステムが、薬剤開発で一般に用いられるタイプのロボット工学に匹敵する高スループットアッセイに受け入れられる「マルチウェルプレート」フォーマット内で利用され得ることである。このシステムは、毒物学および代謝のためのアッセイを実施するための手段、そして肝炎、照射関連病理学、および癌を含む、肝疾患のようなヒト疾患のためのモデルとして提供される。癌適用は、原発性肝臓癌およびその他の癌からの転移、ならびに薬物代謝を抗腫瘍活性とリンクするためを含む。このシステムは、癌、ウイルス感染、および慢性肝臓線維症のような複雑かつ慢性の疾患のために特に有用である。このシステムはまた、疾患および先天的遺伝子欠陥を処置するための遺伝子治療アプローチを試験する手段として用いられ得る。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
細胞または組織培養のための灌流バイオリアクターおよびリザーバーペアの密なアレイ、および
共通制御チャネルを経由して平行に作動され、そして該バイオリアクターおよびリザーバーペアのアレイを通じて培地を再循環するバルブおよびポンプ、を備える、装置。
(項目2)
各バイオリアクターが、三次元の細胞/組織支持構造を備えるウェルを備える、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記細胞の足場またはキャリヤが、多孔性材料から作製される、項目1に記載の装置。
(項目4)
前記細胞の足場が、微多孔性フィルターまたはメンブレンによって支持される中実フィルムまたはシート中の微小チャネルのアレイによって形成される、項目2に記載の装置。
(項目5)
前記足場が、前記バイオリアクターウェルから射出され得る、項目2に記載の装置。
(項目6)
前記アレイの各バイオリアクターが、バイオリアクターウェルおよびそれ自身のリザーバーウェルを備える、項目1に記載の装置。
(項目7)
前記バイオリアクターウェルおよびリザーバーウェルが、細胞培養培地の再循環を可能にする流体チャネルによって連結される、項目6に記載の装置。
(項目8)
前記アレイ中のすべてのバイオリアクター/リザーバーペアが、共通の取り外し可能なリッドによって覆われる、項目1に記載の装置。
(項目9)
細胞/組織接種、薬剤添加、またはサンプル収集の手動またはロボット工学ピペット操作のためのデバイスを備える、項目1に記載の装置。
(項目10)
各バイオリアクター/リザーバーペアが、前記アレイ中のすべての他のバイオリアクター/リザーバーペアから流体的に隔離されている、項目1に記載の装置。
(項目11)
前記アレイ中のすべてのバイオリアクターのバルブおよびポンプが、共通の水力または空気力制御チャネルを経由して平行に作動される、項目1に記載の装置。
(項目12)
前記バイオリアクター/リザーバーペアが、流体多岐管に製作または微細製作される、項目1に記載の装置。
(項目13)
前記制御チャネルが、制御多岐管に製作または微細製作される、項目1に記載の装置。
(項目14)
ダイヤフラムバルブが、流体多岐管と制御多岐管との間にモノリシックエラストマーメンブレンを挟持することによって生成される、項目1に記載の装置。
(項目15)
前記制御チャネルと流体チャネルとの間のメンブレンが、前記制御チャネルを通じて付与される水力または空気力作用によって偏向され得る、項目14に記載の装置。
(項目16)
複数のバイオリアクター中の細胞培養の培地が、連続して連結されたバルブの逐次的作動によってポンプ輸送される、項目1に記載の装置。
(項目17)
第1のセットの細胞をさらに備える、項目1に記載の装置。
(項目18)
初期のバイオリアクター組織が確立された後に導入される、第2のセットの細胞をさらに備える、項目17に記載の装置。
(項目19)
前記第2のセットの細胞が、腫瘍細胞である、項目18に記載の装置。
(項目20)
前記第2のセットの細胞が、幹細胞である、項目18に記載の装置。
(項目21)
肝臓組織の環境中で増殖する腫瘍細胞を含む、項目17に記載の装置。
(項目22)
腫瘍細胞挙動について研究され得る腫瘍細胞を含む、項目17に記載の装置。
(項目23)
分子事象が、腫瘍細胞増殖の間に可視化され得る、項目18に記載の装置。
(項目24)
前記第1のセットの細胞が、前記装置中への導入の前後に改変され得る、項目1に記載の装置。
(項目25)
診断および予後試験のための患者からの原発性腫瘍細胞を含む、項目1に記載の装置。
(項目26)
前記腫瘍細胞が、薬剤または遺伝子治療に対する感受性について評価され得る、項目25に記載の装置。
(項目27)
前記薬剤または遺伝子治療に対する腫瘍細胞の感受性が、設定薬剤または遺伝子治療の肝臓代謝にリンクされる、項目21に記載の装置。
(項目28)
前記導入される第2のセットの細胞が幹細胞または前駆体細胞であって、そして該幹細胞または前駆体細胞が成熟組織によって分化するように誘導される、項目20に記載の装置。
(項目29)
システム中の流速または培地成分の操作によって複製するよう誘導可能な成熟細胞を含む、項目17に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの等角図(上部)である。
【図2】図2は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの等角図(底部)である。
【図3】図3は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの分解図(上部)である。簡潔さのために、5ユニットのバイオリアクターアレイのみが示される。
【図4】図4は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの分解図(底部)である。
【図5】図5は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの足場の等角詳細図である。
【図6】図6は、リッドが取り外されたマルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの等角図である。
【図7】図7は、リッドが取り外されたマルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの平面図である。
【図8】図8は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの断面A−Aである。
【図9】図9は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの断面B−Bである。
【図10】図10は、マルチウェルプレートフォーマットの灌流バイオリアクターのアレイの断面A−Aの詳細図Cである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
I.システム
システム、および製造の方法およびその使用が、組織または器官構造の微小マトリックスを通る細胞培養培地を循環するための高度に平行な手段を利用するように改変された灌流微小マトリックスアプローチを基に開発され、この技法を極めて高スループットアッセイのために適切にする。このシステムは、薬物毒性を試験すること、癌転移のモデル、幹細胞培養、およびその他のヒト疾患モデルにおける適用を有する。このシステムは、その基礎的構成要素として、細胞または組織培養のための灌流バイオリアクターおよびリザーバーペアの密なアレイ、および共通制御チャネルを経由して平行に作動されるバルブおよびポンプを有し、これら灌流バイオリアクターおよびリザーバーペアのアレイを通じて培地を再循環する。このアレイの各バイオリアクターは、バイオリアクターウェルおよびそれ自身のリザーバーウェルを含む。これらバイオリアクターウェルおよびリザーバーウェルは、細胞培養培地の再循環を可能にする流体チャネルによって連結される。各灌流バイオリアクター/リザーバーペアは、アレイ中の灌流バイオリアクター/リザーバーペアから流体的に隔離されている。アレイ中のすべてのバイオリアクターのバルブおよびポンプは、共通の水力または空気力制御チャネルを経由して平行に作動される。
灌流バイオリアクター/リザーバーペアは、流体多岐管中に製作または微小製作される。制御チャネルは、制御多岐管中に製作または微小製作される。ダイヤフラムバルブは、流体多岐管と制御多岐管との間にモノリシックエラストマーメンブレンを挟持することによって生成される。この制御チャネルと流体チャネルとの間のメンブレンは、上記制御チャネルを通じて付与される水力または空気力作用によって偏向され得る。複数のバイオリアクター中の細胞培養の培地は、連続して連結されたバルブの逐次的作動によってポンプ輸送される。
【0016】
各バイオリアクターは、三次元の細胞/組織支持構造を含むウェルを含む。好ましい実施形態では、上記細胞の足場またはキャリヤは、合成または天然の多孔性材料から作製される。最も好ましい実施形態では、上記細胞の足場は、微多孔性フィルターまたはメンブレンによって支持される中実フィルムまたはシート中の微小チャネルのアレイによって形成される。特に好ましい実施形態では、上記足場は、上記バイオリアクターウェルから手動またはロボット工学的に射出され得る。好ましい実施形態では、アレイ中のすべてのバイオリアクター/リザーバーペアは、共通の取り外し可能なリッドによって覆われ、そして細胞/組織接種、試薬添加、またはサンプル収集が、ピペット操作またはロボット工学によって付加され得る。
【0017】
1つの実施形態では、本明細書における使用のためのシステムの代表例では、単純さのために上記アレイは、図1〜10に示されるように、マルチウェルプレートフォーマットで5つのみのバイオリアクター/リザーバーペアを含む。しかし、これら構成要素のサイズは、容易にスケールダウンし得、そしてかなりより多くの数のバイオリアクター/リザーバーペアが単一のプレート上に配置され得る。現在の実施形態では、マルチウェルプレートフォーマット中の灌流バイオリアクターアレイの設計は、当初の5つのリアクタープロトタイプから12のリアクタープロトタイプまでプレートあたりのリアクターの数を増加すること、および各リアクターのセル容量を増加することによって改良されている。足場は、ここで、上部から接近可能であり、そしてベントポートは、プレートから無くされている。各バイオリアクターの主要な機能的構成要素は、3D細胞/組織保持足場またはキャリヤ8を備えたウェル4である。この設計はまた、流体表面のメニスカスを低減し、そしてそれによって、顕微鏡下の細胞/組織観察の間の光学的歪みを最小にし;そして隣接するリアクター間の交差汚染を最小にするためのチムニー配列にあるリアクター/リザーバーペアを作製するため上記ウェル中にリムを含めることによって改良されている。これらのチムニーは、リッド中の対応する形状のリングと合致され得、リアクターウェル、リザーバーウェル、および連結表面チャネルからの流体の蒸発を最小にする。上記バルブをハマグリの貝殻形状(通常開放)にすることは、伸張または皺のよったメンブレンを補償し、そしてバルブ性能を改善する。円形の代わりに長楕円形状のバルブおよびポンプを作製することは、気泡が捕捉され得る領域を減少する。
【0018】
上記足場またはキャリヤは、写真石版術、湿潤エッチング、または深反応性イオンエッチング;マイクロマシン加工;電気放電機械加工;反応注入成形;熱可塑性注入成形;微細成形;穴抜き;三次元プリンティングのような任意の中実のない形態(solid free)の技法;または、材料のシートに微小貫通穴を生成し得るその他のタイプの製造、特に、微細成形、エンボス加工、レーザー穿孔、または電子ビーム機械加工のようなプラスチックのための製造技法のような、従来のシリコン加工技法を用いて作製され得る。これらプロセスのいくつかの鋳型は、写真石版術、マイクロマシン加工、電気放電機械加工、および電気メッキのような方法を用いて作製され得る。
【0019】
一般に、多くの材料が、マトリックスを形成するために用いられる。その他であることが特に特定されなければ、用語「ポリマー」は、このマトリックスを形成するために用いられる任意の材料を含むために用いられ、以下に論議されるように、重合または接着され得、一体ユニットを形成するポリマーおよびモノマー、ならびに無機および有機材料を含む。1つの実施形態では、粒子が、有機溶媒中に溶解され、そしてこの溶媒の除去により固化され得るポリマーから形成され、例えば、生分解性または非生分解性いずれかの合成の熱可塑性ポリマーがあり、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレンビニルアセテート、ポリ(無水物)、ポリオルトエステル、乳酸およびグリコール酸およびその他のαヒドロキシ酸のポリマー、およびポリホスファゼン、タンパク質ポリマー、例えば、アルブミンまたはコラーゲン、または多糖類がある。上記マトリックスを形成するために用いられ得る非ポリマー性材料の例は、有機材料および無機材料があり、例えば、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、緩衝化材、およびラクトース、ならびに、溶媒よりむしろ接着剤またはバインダーの付与によって固化される、薬物で用いられるその他の一般の賦形剤がある。細胞接着および成長のためのデバイスを作製することにおける使用のためのポリマーの場合には、ポリマーは、細胞からの適切な生物学的応答、例えば、付着、移動、増殖および遺伝子発現を惹起するポリマーの能力に基づいて選択される。
【0020】
その他の適切なポリマーは、The Polymer Handbook、第3版(Wiley、N.Y.、1989)を参照して得られ得る。
【0021】
骨に仕立てられる微小構造のためには、最終デバイス中の無機粉末がデバイスの強度を増加し、そして組織を再生するためのミネラルの供給源を提供する。肝臓のような軟組織の強度要求は、骨に対するより実質的により少なく、そこで、最終デバイス中のより大きな空隙画分が許容され得る。
【0022】
図1〜10を参照して、細胞/組織支持構造8は、多孔性メンブレンにより、または微多孔性フィルター9によって支持される中実フィルムまたはシート中の微小チャネルのアレイによって形成され得る。この多孔性足場は、例えば、繊維結合(Vacantiら、MRS Proceedings、252巻(1992);Mikosら、J.Biomed.Mater.Res.27:183−189(1993))、溶媒キャスティング/粒子リーチング(Mikosら、Biomaterials 14:323〜330(1993))、ガス発泡(Mooneyら、Biomaterials 17:1417〜1422(1996))、およびガス分離(Loら、Tissue Engineering 1:15〜28(1995))により製作され得る。微小チャネルのアレイを備えるシリコンの足場は、深反応性イオンエッチング技法(Powersら、Biotechnology and Bioengineering、78:257(2002))によるような適切な技法を用いて微小製作され得る。微小チャネルを備えたポリマーチャネルは、レーザーマイクロマシン加工(Brenanら、Proc.SPIE、3912、76〜87、Prog.Biomed.Optics、Micro−and Nanotechnology for Biomedical and Environmental Applications、San Jose、2000年1月26〜27日)、注入成形(Weibezahnら、Micro System Technologies’94、H.ReichlおよびA.Heuberger、編、vde−verlag gmbh、Berlin、873〜878頁)または光重合によって生成され得る。
【0023】
微小チャネルを備えた中実の足場8は、細胞を保持する微小チャネルのアレイを含む上部層を有し得る。このアレイ中の各微小チャネルは、バイオリアクターの機能的ユニットである。この層の下には、微多孔性メンブレンまたはフィルター9がある。このメンブレンは、細胞保持足場のモノリシックなパーツであり得るか、またはそれは、それに熱により、または超音波より結合され得る。この細胞および/または組織保持足場には、シールガスケット7、11、支持足場10、および挿入物12が提供され得る。微小チャネル34は、矩形またはスリット断面を有し得る。矩形チャネルの代表的なサイズは、数百ミクロンである。スリットは、数百ミクロンから数ミリメートル長であり得る。この足場の厚みは、代表的には数百ミクロンである。
【0024】
流体多岐管24および制御多岐管22の両方は、例えば、ポリカーボネートのようなポリマーから、微細機械フライス削りによって製作され得る。これは、小バッチ製作ではコスト的に有効であり得る。大容量製作では、注入成形のような大量複製技法、および材料、例えば、ポリスチレンまたはポリカーボネートが用いられ得る。上記メンブレンの材料は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)であり得る。メンブレン23は、例えば、嵌合面をプラズマ酸化すること、そして直ちにこれらパーツを一緒に圧縮すること(Duffyら、Anal.Chem.、70、4973〜4984(1998))により多岐管流体および制御多岐管に結合され得る。あるいは、図3および4に示されるように、メンブレン23は、例えば、このメンブレンに対し一定の力を提供し、そして上記多岐管を一緒に保持する固定機構21またはラッチ機構によって流体多岐管24と制御多岐管22との間に挟持され得る。
【0025】
足場8は、流体多岐管24中のバイオリアクターウェル4の下部テーパー状セクションに、例えば、プレスばめされ得る。このバイオリアクターウェル4は、2つの流体チャネルによってリザーバーウェル6と連結される。上部、例えばU形状チャネル5が、バイオリアクターウェル4からリザーバーウェル6中に細胞培養培地を戻すために用いられる。リザーバーの底パーツは、プレスばめ挿入物27によってリザーバーウェル中に固定されるフィルター支持体25とともに微多孔性フィルター26を挿入するためにフェースオフを含み得る(注意:図面の明瞭さのために、構成要素25、26、および27は、バイオリアクター/リザーバーペアaではなくd上に標識されている。プレート上のアレイ中のバイオリアクター/リザーバーペアa、b、c、d、およびeは、同一である。バイオリアクター/リザーバーペアおよび水力または空気力ラインの標識については図6を参照のこと)。フィルター26は、細胞培養培地からの細胞残渣を除去するために用いられ得る。リザーバーウェル中にフィルターを用いることは、バルブおよびポンプの信頼性を改善し得る。さらに、それは、上記細胞/組織保持足場8の裏面上のメンブレンまたは微多孔性フィルター9の閉塞をなくし得る。フィルター処理された培養培地は、ポート29を通じて、リザーバー6とバイオリアクターウェル4とを連結する底部流体チャネル30、31、および32中に吸引される。チャネルには、ポンプを形成する3つのダイヤフラムバルブが提供される。これらのバルブは、流体多岐管24と制御多岐管22との間のモノリシックエラストマーメンブレン23を挟持することにより生成される。バルブは、制御チャネルが流体チャネルを横切る場所に生成される。これらバルブは、例えば、通常は閉鎖され得る。その場合、Oリング17でシールされた継手16、15、および14を通じて、制御多岐管中のチャネル20、35、および36(図9を参照のこと)に減圧を付与することにより、上記エラストマーメンブレン23は下方に曲がり、これらバルブは開放され、そして細胞培養培地が、バルブ置換チャンバー19、18、13、およびメンブレン23上のすべてのその他の連結された置換チャンバーを満たす。陽圧力を付与することは、このメンブレンをバルブシートに対して押し、そして細胞培養培地はバルブの置換チャンバーから出る。各ポンプのバルブは、6つのステップのサイクルで操作される。最初に、すべてのバルブは閉鎖されている。第1のステップでは、入口バルブ19、および制御チャネル20によって連続して連結されるバイオリアクター/リザーバーペアb、c、d、およびe中のすべてのその他のバルブは開放される。第2のステップでは、主要ダイヤフラムバルブ18および制御チャネル35によって連続して連結されるバイオリアクター/リザーバーペアb、c、d、およびe中のすべてのその他のバルブは開放される。第3のステップでは、入口バルブ19、および制御チャネル20によって連続して連結されるバイオリアクター/リザーバーペアb、c、d、およびe中のすべてのその他のバルブは閉鎖される。第4のステップでは、出口バルブ13および制御チャネル36によって連続して連結されるバイオリアクター/リザーバーペアb、c、d、およびe中のすべてのその他のバルブは開放される。第5のステップでは、主要ダイヤフラムバルブ18および制御チャネル35によって連続して連結されるバイオリアクター/リザーバーペアb、c、d、およびe中のすべてのその他のバルブは閉鎖される。第6のステップでは、出口バルブ13および制御チャネル36によって連続して連結されるバイオリアクター/リザーバーペアb、c、d、およびe中のすべてのその他のバルブは閉鎖される。細胞培養培地をポンプ輸送するバルブは、例えば、減圧および加圧空気の供給源に連結されたソレノイドバルブによって制御され得る。
【0026】
上記通常は閉鎖されたモノリシックメンブレンバルブは自己プライミングし、そして細胞培養培地を、作動サイクルを単に逆転することにより前方または後方にポンプ輸送する。ダイヤフラムバルブ置換チャンバーの容量を調節することにより、作動あたりでポンプ輸送する容量は、設計ステージで決定され得る。従って、ダイヤフラムポンプは、細胞培養培地の容量を正確に計測するために用いられ得る。これらポンプの置換チャンバーが同一である場合、すべてのバイオリアクター中の細胞/組織は、同じ流速で灌流される。対照的に、これらポンプが異なる容量の置換チャンバーを有する場合、各バイオリアクター中の細胞/組織は、異なる流速で灌流される。
【0027】
バイオリアクターおよびリザーバーペアは、例えば、細胞培養培地のバイオリアクターまたはリザーバーウェル中への手動またはロボットによるピペット操作、および前方または逆方向のポンプ輸送サイクルを能動化することによりプライムされる。流体チャネルから気泡を除去することが必要である場合、ねじ1およびシールするOリング2を備えた空気放出ポート3が用いられ得る。これらの空気放出ポートは、チャネル33を経由してバイオリアクターウェル5と連結される。
【0028】
図1〜10を参照して、細胞は、細胞懸濁液をバイオリアクターウェル4中に分与(例えば、手動またはロボットのピペット操作による)することにより足場8中に接種される。細胞培養培地は、リザーバーウェル6からバイオリアクターウェル4中に循環される。バイオリアクターウェル4中の足場8中の3D細胞培養を灌流した後、細胞培養培地は、リザーバーウェル6に戻される。アレイ中の各バイオリアクターa、b、c、dおよびe(図6を参照のこと)は、それ自身のリザーバー6を有し、そしてその微小流体チャネル5、30、31、および32は、アレイ中のすべてのその他のバイオリアクターから完全に隔離されている。細胞培養培地は、ダイヤフラムポンプを用いて再循環される。連続して連結される3つのダイヤフラムバルブは、ダイヤフラムポンプを形成する。これらのバルブ19、18、および13、そしてそれ故、ポンプは、モノリシックエラストマーメンブレン23を流体多岐管24と制御多岐管22との間に挟持することにより生成される。バルブは、制御チャネルが流体チャネルを横切る場所に生成される。制御チャネルと流体チャネルとの間の薄いメンブレン23は、制御チャネルを通じて付与される水力または空気力作用によって曲げられ得る。細胞培養培地は、連続して連結されるこれらバルブの逐次的作動によってポンプ輸送される。図6を参照して、アレイ中のすべてのバイオリアクター/リザーバーペアa、b、c、d、eのバルブは、共通の水力または空気力制御ラインx、y、zを経由して平行して作動される。結果として、この場合、5つの完全に隔離された灌流バイオリアクターがこれら3つの共通の空気力または水力ラインによって取り扱われ得る。しかし、空気力または水力ラインによって作動されるアレイ中のバイオリアクター/リザーバーペアの数は、かなりスケールアップされ得る。
【0029】
上記のバルブおよびポンプは拡張性があり、そして密なアレイに微小製作され得る。Ungerら、Science 286、113(2000)、T.Thorsenら、Science 298、580(2002)、およびW.H.Groverら、Sensors and Actuator B 89、314(2003)は、モノリシックバルブおよびポンプを生産するプロセスを記載している。
【0030】
バイオリアクター/リザーバーペアのアレイが開放設計を有し、そして共通の取り外し可能なリッド(28)によって覆われるという事実に起因して、細胞接種ならびに薬剤添加およびサンプル収集は、自動化ロボット工学ワークステーションを用いて実施され得る。
【0031】
上記システムを通る流速は、細胞の代謝必要性により、および機械的ストレス問題によって決定される。1000細胞あたり0.1〜1マイクロリットル/分の範囲の培地の流速がほぼ連続的な基準で要求される(15分までの流れのない短期間は実行可能)。各バイオリアクターは、実施されているアッセイのタイプに依存して、500〜50,000細胞を含む。足場の設計は、上記システムが約500細胞の単位(すなわち、1チャネル)で非常に容易にスケールされ得ることを可能にする。このシステムを通る流速は、アッセイを実施するために、培養またはアッセイの時間の間で変動され得る(例えば、流速は、化合物の完全な変換を可能にするために遅延され得るか、または化合物の一定濃度を維持するために増加され得る)。
【0032】
(センサー)
センサーは、pH、酸素レベル、グルコースのような特定の代謝産物、ウイルスタンパク質のような指標分子の存在もしくは不在、または組織に対する影響の任意のその他の指標もしくはバイオリアクター内の組織に曝される物質における変化を検出するために用いられる。
【0033】
1つの実施形態では、損傷または感染の読み出しは、単一または複数多光子手段のいずれかを経由して蛍光を励起するミニチュア光ファイバーアレイによって検出されるとき、組織の蛍光における変化を基づく。励起の性質は、技術開発で取り扱われる重要なパラメーターである。多光子励起は、解像度および組織損傷の予防に関して単一光子に勝るいくつかの利点を提供する。
【0034】
多くのタイプの蛍光読み出しが可能である。組織の基礎的代謝パラメーターにおける変化は、NAD(P)Hレベルにおける変化を、これら分子に固有の蛍光を経由して測定することにより評価され得る。細胞はまた、メンブレン損傷の場合に漏れ、蛍光強度の減少を生じる色素を予備装填され得る。あるいは、またはさらに、細胞損傷の間に活性化され、蛍光産物を生成するレポーター遺伝子が、ストレス関連プロモーターの制御下で細胞中にトランスフェクトされ得る。この後者のアプローチは、迅速時間スケールでウイルス感染を検出するために特に重要である。
【0035】
検出スキームにおける目的は、組織損傷の、迅速で、高感度の場に適合し、そして最小侵襲的蛍光分光学的読み出しを提供することである。蛍光強度および/またはスペクトルにいずれかが変動する可能な指標のパネルが識別されている。応答は、正常組織構造内の細胞の生化学的状態をモニターすることを要求し得るので、組織中の細胞の表面層のみを分析することは十分でないかも知れないが、チャネル内部中に深く細胞の層のいくつかの細胞を選択的にモニターする。これらの要求は、光学的検出システムのための4つの設計規準に要約され得る:(1)厚い(300μm)組織中の深さ選択検出、(2)種々の指標を造影するための柔軟な励起および検出スキーム、(3)デバイス中の生存組織培養に対する最小の侵襲、(4)高感度で迅速な信号検出、(5)厳格かつ場適合可能性。
【0036】
単一光子励起を用い、共焦点検出は、その表面からチャネルの内部から起こる蛍光を分離することが必要である。共焦点顕微鏡は、光学的に厚いセクション標本に対して設計され、良好に開発された器具である。2つのアパーチャまたはピンホールが接合平面中に配列され;1つは光源の前にあり、そして1つは検出器の前にある。この設計は、単純化され得、そして単一モードの光ファイバーの使用によるオンライン検出のためにより頑健にされる。2色性のビームスプリッターを通じ、励起光は、単一モードファイバー中に導入される(図1;ビームスプリッターは描写されていない)。このファイバーから発せられた光は、レンズによって平行にされ得る。第2のレンズは、この平行にされた光を組織チップのチャネル中に集め得る。高解像度はこの適用では重要ではなく−−造影は要求されず−−そしてそれ故、低光学およびチップが流れチャンバー中の水力設計のためのスペースを提供する。サンプルからの蛍光は、2つのリレーレンズによって収集され、そして単一モードファイバー中に反射して戻される。小直径ファイバーは、このシステムでは、励起および放射ピンホールアパーチャとして同時に機能する。焦点領域の外側から生じる蛍光は、リレーレンズによって再び集められることはできず、そして拒絶される。このプロセスは、本発明者らに深さ識別を提供する。スペクトルの近UV〜青緑領域までまたがる励起波長をもつ多くの発色団がこのプロジェクトの間で考慮され得る。特定の目的の蛍光指標は、内因性発色団、ピリジンヌクレオチドである。ピリジンヌクレオチド、NAD(P)Hは、領域365nmで励起され、そして領域400〜500nmで蛍光を発する。別の目的の指標はグリーン蛍光タンパク質(GFP)であり、これは、スペクトルの近UVまたは青領域のいずれかで励起され得、そして代表的には、約510nmを発する。この広範な範囲の発色団を励起するために、調整可能なUVアルゴン−イオンレーザーが、この研究のために獲得され得る。このレーザーは、場適用には十分頑健ではないが、それは、大きなセットの蛍光発色団を試験する柔軟性を提供する。適正なセットの発色団が識別された後、柔軟性はより少ないが、より頑健でかつコンパクトなレーザーシステムが容易に組み込まれ得る。この光ファイバー共焦点設計は、成熟した技法であり、そして組織センサー中に容易に取り込まれ得、組織チップ内側のトキシンストレス下、細胞生化学における変化を評価する。
【0037】
トキシン感受性組織チップは、1光子共焦点アプローチを基に構築され得るけれども、2光子アプローチの使用は、ノイズに対する蛍光信号の比を増加することによりシステムを改善し得、そして組織損傷を低減する。この研究のための新たなアプローチは、Denkら(Denkら、Science 248:73〜77(1990))によって開発された2光子顕微鏡法に基づく。発色団は、各々が、励起遷移のために必要なエネルギーの半分を有する2つの光子の同時吸収によって励起され得る。なぜなら、2光子励起は、光子の高い一時的および空間的濃度の領域である、高開口数の対物レンズの焦点でのみ生じるからである。2光子励起を用い、総蛍光強度の80%以上が、1.25の開口数の対物レンズについて焦点の周りの1μm厚みの領域から来る。2光子励起のこの深さ識別効果は、焦点面から離れて迅速に減少する励起光子フラックスに対する2光子蛍光強度の二次依存性から生じる。この深さ識別は、励起方法の物理学の結果であり、そして共焦点検出ピンホールアパーチャは必要ではない。2光子励起の局在化は、単純な脱色実験で最良に可視化され得る。
【0038】
2光子励起の効果を示すために、2光子励起容量は15μm蛍光ラテックススフェアの中心に集められた。この励起容量は、光脱色が生じるまでx軸に沿って繰り返し走査された。このラテックススフェアの3−Dイメージスタックが獲得され、そこでは、一連のイメージが、中心から増加する距離でスフェアのx−y平面に存在する。光脱色は、1μmを超えて観察された。
【0039】
2光子励起は、組織チップチャネルの内側の任意の点で、組織生理学的状態の選択的評価を可能にする。組織中のようなサンプルの吸収および散乱係数が高い共焦点アプローチと比較したとき、複数光子アプローチには多くの利点があり:(1)赤外スペクトル範囲における代表的な散乱および吸収は、近UVまたは青−緑領域より1桁以上小さい。2光子顕微鏡中の赤外励起を用いることは、励起信号の減衰を最小にする。(2)共焦点顕微鏡は、焦点光以外を拒絶するために放射ピンホールアパーチャを用いる。深い組織の内側では、信号光子の散乱は、回避不能である。結果としての経路偏差は、共焦点ピンホールにおけるこれら光子の有意な損失を生じる。蛍光光子の収集幾何学的形状は、大面積検出器がピンホールアパーチャなくして用いられ得る2光子事例ではより重要ではない。大部分の前方に散乱した光子は保持され得る。(3)2光子励起は、組織光損傷を最小にする。従来の共焦点技法は、観察容量を制限することにより3−D解像を得るが、蛍光励起は、アワーグラス形状の光経路全体で生じる。対照的に、2光子励起は、焦点で、光相互作用の領域をフェトリットル以下の容量に制限する。(4)2光子励起波長は、代表的には、赤に、1光子励起波長の約2倍にシフトする。励起スペクトルと放出スペクトルとの間の広い分離は、励起光およびRaman散乱が、最小の蛍光光子濾過しながら拒否され得ることを確実にする。(5)多くの蛍光発色団は、非常に広い2光子吸収スペクトルを有することが見出されている。単一の適正に選択された励起波長は、近UV〜近赤外の範囲の放出バンドをもつ広範な範囲の蛍光発色団を励起し得る。
【0040】
2光子アプローチのこれらの利点は、それを、単一光子アプローチの魅力的な代替にする。しかし、2光子システムのミニチュア化は、なお広範な研究を必要とする。ファイバーシステムにおけるパルス分散のような問題がなお解決されなければならない。従って、組織チップのための光学的システムを開発する第2の焦点は、2光子励起分光光度法のためのミニチュア化技法の開発である。2光子顕微鏡は、チップチャネル中の組織深さの関数としてトキシン応答を評価するため、および組織チップの特有の幾何学的形状における検出効率を最大にする光学的形態を最適にするために構築され得る。この2光子アプローチが上記1光子共焦点法のそれと比較したとき有利であることが示され得る場合、2光子励起に基づく最終のミニチュア化蛍光検出システムが構築され得る。
【0041】
ミニチュア化光ファイバー蛍光分光光度計は入手可能であり、これは用いられ得る。1つのシステムは、1光子励起および共焦点検出スキームに基づく。第2のシステムは、2光子励起の使用を含む。このシステムの利点は、より低い組織損傷、より高いスループツトおよび複数指標の同時モニタリングに関するより高い多能を含む。
【0042】
蛍光センサー以外のセンサーもまた用いられ得る。例えば、サンプルは、赤外分光光度計、紫外分光光度計、ガスクロマトグラム、高速液体クロマトグラム、質量分析法、および当業者に公知のその他の検出手段を用いることによって分析され得る。これらは、栄養分、ガス、代謝産物、pH、ならびに細胞活性、感染、および代謝のその他の指標を測定するために用いられ得る。測定は、細胞それら自身もしくは培養培地に関して、または両方に対してなされ得る。測定は、培養の間および培養の終わりに、経時的アッセイまたは終点アッセイとしてまたはその両方がなされ得る。
II.適用
上記技術は、大スケール組込みを受ける。これは、大量の平行アッセイを実施することを可能にする。例えば、異なる細胞または細胞混合物が、各バイオリアクターウェル中に接種され得る。あるいは、異なる細胞培養培地が、すべてのバイオリアクター/リザーバーペアを通って循環され得るか、または各バイオリアクターウェル中の細胞/組織が異なる薬剤に曝され得る。初期の細胞タイプが添加され得(例えば、ヒト肝臓細胞単離物)、組織に安定化され、そして次に第2の細胞タイプ(例えば、癌細胞)が添加されて応答を調べる。
【0043】
細胞のタイプ(単数または複数)は、組織の機能を決定する。本明細書で用いられるとき、組織は、形態的および機能的に多少類似の細胞の凝集物をいう。1つの実施形態では、マトリックスには、内皮細胞と、肝細胞、膵臓細胞、またはその他の器官の細胞のような少なくとも1つのタイプの実質細胞との混合物が接種されるか、もしくはこのマトリックスには、細胞を形成するために内皮細胞を含む細胞に分化し得る、分化全能性/多能性幹細胞が接種される。多種多様な機能の細胞の混合物は、セルス(cellss)と称される。内皮細胞(そしていくつかの事例では、周皮細胞または星状細胞)は、組織全体に「血管」を形成し得る。器官は、種々の細胞または組織から構成され、そして特定機能のために適合された器官の分化構造をいう(McGraw−Hill Dictionary of Bioscience)。
【0044】
好ましい実施形態では、ドナー組織は、個々の細胞に解離され、細胞タイプが分離かつ精製され、そして組織の組織特異的なアーキテクチャーを再編成することを可能にする様式で、上記チャネル内で再び組み合わされる。標準的な手順が、細胞を得、かつ解離するために用いられ得る。例えば、一次ラット肝細胞および非実質細胞は、標準的なコラゲナーゼ灌流(Griffithら、Ann.N.Y.Acad.Sci.831(1997);Cimaら、Biotech.Bioeng.38:145〜58(1991))を用いて単離され得る。ヒト肝細胞は、肝臓摘除から、またはNew England Organ Bankによる肝臓生検(Fontaineら、J.Ped.Surg.30:56〜60(1995))から得た組織のコラゲナーゼ灌流から得られ得る。ラット微小血管内皮細胞は、脂肪のコラゲナーゼ灌流から得られ得る。ヒト微小血管内皮細胞は、Cloneticsから得られ得る。微小血管内皮の組織型の一致は要求されないようである。なぜなら、内皮は、新たな環境に適合する大きな柔軟性を示すからである。胚幹細胞(ES細胞)は、例えば、種々のサイトカインでLIFを置換することにより、分化誘導をともなう標準的な技法を用いて全能性状態で培養され得る。
【0045】
種々の異なる細胞が、支持マトリックスに付与され得る。好ましい実施形態では、これらは、正常ヒト細胞またはヒト腫瘍細胞である。これら細胞は、均一な懸濁液または細胞タイプの混合物であり得る。異なる細胞タイプは、マトリックスに逐次的に、一緒に、または初期懸濁液が付着および増殖させた後に(例えば、内皮細胞、次いで肝臓細胞)、マトリックス上および/またはその中に接種され得る。細胞は、細胞懸濁物をバイオリアクターウェル中に分与することにより(例えば、手動またはロボットによるピペット操作)上記足場中に接種される。細胞を足場に付着させるために、灌流流れは、接種直後、所定の時間、減少されるか、または止められ得る。
【0046】
培養培地組成は、2つの観点から考慮されなければならない:基礎的栄養分(糖、アミノ酸)および成長因子/サイトカインである。細胞の同時培養は、しばしば、細胞それら自身による調節性高分子の産生に起因して培地から血清の減少またはなくすることを可能にする。このような高分子調節因子を生理学的方法で供給する能力は、3D灌流同時培養が用いられる主要な理由である。原発性で分化した肝細胞の長期間培養に適切ないくつかの成長因子で補填された無血清培地(Blockら、J.Cell Biol.132:1133〜49(1966))が試験され、そして肝細胞の内皮細胞との同時培養を支持することが見出された。ES細胞は、gp130シグナル伝達経路(Saitoら、J.Immunol.148:4066〜71(1992))を活性化する、白血病阻害因子(LIF)の存在下、全能性状態で慣用的に維持される(Wiliamsら、Nature 336:684〜87(1988))。いくつかの培地処方物が、分化の別個のパターンを生成する異なるサイトカイン混合物とともに、ES細胞の分化を支持し得る(Millauerら、Cell 72:835〜46(1993);Gendronら、Dev.Biol.177:332〜46(1996);Bainら、Dev.Biol.168:342〜57(1995))。中程度の置換速度は、鍵となる糖およびアミノ酸ならびに鍵となる成長因子/サイトカインの枯渇の速度を測定することによって決定される。成長因子枯渇は、培地置換速度を決定するごく稀に認められる制限因子である(Reddyら、Biotechnol.Prog.10:377〜84(1994))。重炭酸ナトリウムとともに細胞培養培地が用いられるとき、環境制御は、バイオリアクター/リザーバーペアを備えたモジュールを、例えば、COインキュベーター中に配置することにより提供され得る。試薬添加またはサンプル抽出は、その場合、滅菌環境で実施されるべきである。有機緩衝液をともなう細胞培養培地が用いられるとき、バイオリアクター/リザーバーペアを備えたモジュールは、滅菌環境中に配置され得、そこで、手動またはロボットによる試薬添加またはサンプル抽出が実施され得る。
【0047】
細胞は、細胞培養または生検から得られ得る。細胞は、1つ以上のタイプであり得、神経細胞を含む内皮細胞または実質細胞のような分化細胞、または幹細胞または胎児細胞のような未分化細胞いずれかである。1つの実施形態では、上記マトリックスには、内皮細胞を含む細胞の混合物、または内皮細胞を含む細胞に分化し得、「血管」を形成し得る全能性/多能性幹細胞、および、肝細胞、膵臓細胞、またはその他の器官細胞のような、少なくとも1つのタイプの実質細胞が接種される。
【0048】
細胞は、初期には培養され得、そして次に、毒性について化合物のスクリーニングのために用いられ得、ここでは、異なるリアクターは、異なる細胞型を含む(例えば、リアクター1〜10に肝臓、リアクター11〜20に膵臓細胞、リアクター21〜30に皮膚細胞など)。細胞はまた、所望の効果を有する化合物のスクリーニングのために用いられ得る。例えば、内皮細胞は、血管形成を阻害する化合物をスクリーニングするために用いられ得る。腫瘍細胞は、抗腫瘍活性について化合物をスクリーニングするために用いられ得る。特定のリガンドまたはレセプターを発現する細胞は、このリガンドに結合するか、またはこのレセプターを活性化する化合物をスクリーニングするために用いられ得る。幹細胞は、単独またはその他のタイプの細胞とともに接種され得る。細胞は、初期には接種され得、次いで、初期バイオリアクター組織が確立された後に第2のセットの細胞、例えば、肝臓組織の環境中で増殖した腫瘍細胞が導入される。これらの腫瘍細胞は、腫瘍細胞挙動について研究され得るか、または分子事象が腫瘍細胞成長の間に可視化され得る。細胞は、装置中への導入の前または後に改変され得る。細胞は、診断および予後試験のために患者由来の原発性腫瘍細胞であり得る。これら腫瘍細胞は、薬剤または遺伝子療法に対する感受性について評価され得る。薬剤または遺伝子療法に対する腫瘍細胞の感受性は、設定薬剤または遺伝子療法の肝臓代謝にリンクされ得る。細胞は、幹細胞または前駆体細胞であり得、そしてこの幹細胞または前駆体細胞は誘導されて成熟組織に分化する。成熟細胞は、システム中の流速または培地成分の操作によって複製するよう誘導され得る。
【0049】
上記システムは、多くの異なる適用を有する:疾患のマーカーの同定;抗癌治療の効目を評価すること;遺伝子治療ベクターを試験すること;薬物開発;スクリーニング;細胞、特に幹細胞の研究;生体形質転換、クリアランス、代謝、および生体異物の活性化に関する研究;上皮層を横切る化学薬剤の生体利用度および輸送に関する研究;上皮層を横切る生物学的薬剤の生体利用度および輸送に関する研究;血液脳関門を横切る生物学的または化学薬剤の輸送に関する研究;化学薬剤の急性基礎的毒性に関する研究;化学薬剤の急性局所的、または急性器官特異的毒性に関する研究;化学薬剤の慢性基礎的毒性に関する研究;化学薬剤の慢性局所的、または慢性器官特異的毒性に関する研究;化学薬剤の奇形誘発性に関する研究;化学薬剤の遺伝毒性、癌誘発性、および変異誘発性に関する研究;感染性生物学的病原体および生物学的兵器の検出;有害化学物質および化学兵器の検出;感染性疾患の研究;疾患を処置する化学薬剤の効目に関する研究;疾患を処置する生物学的薬剤の効目に関する研究;疾患を処置する薬剤の最適用量範囲に関する研究;生物学的病原体に対するインビボの器官の応答の予測;化学薬剤または生物学的薬剤の薬物動態学の予測;化学薬剤または生物学的薬剤の薬力学の予測;薬剤に対する応答に関する遺伝的内容物の衝撃に関する研究;微小スケール組織未満のフィルターまたは多孔性材料が、変性された一本鎖DNAを結合するように、選択されるか、または構築される;化学薬剤または生物学的薬剤に応答性する遺伝子転写の研究;化学薬剤または生物学的薬剤に応答するタンパク質発現の研究;化学薬剤または生物学的薬剤に応答する代謝における変化に関する研究;データベースシステムおよび関連するモデルによる薬剤衝撃の予測;専門システムによる薬剤衝撃の予測;および構造を基礎にしたモデルによる薬剤衝撃の予測である。
【0050】
上記バイオリアクターは、細胞の付着または挙動を改変するためにリガンドまたは特異的レセプター結合性分子の付着によって改変され得る。
【0051】
薬物は、添加され、そして各個々のバイオリアクター中の組織塊を通じて循環され得、サンプルは、代謝クリアランスプロフィールを決定するためにいくつかの時点で採取され;用量応答は、単一プレート上のいくつかの個々のリアクター中で薬物希釈物を用いることにより決定され得る。薬物の異なる用量が、同じプレート内の異なるバイオリアクターに添加され得、そして数日、または数週間でさえインキュベートされ、慢性および亜慢性応答を決定する。最終的な読み出しは、光学的プレートアッセイに適合している。上記システムはまた、材料に対する細胞の影響について、細胞についてスクリーニングするために用いられ得る(例えば、薬物の組織代謝に相当する様式で)。
【0052】
バイオリアクターアレイの外側の生物学的サンプルを調査することが所望される場合(例えば、アッセイを実施した後)、細胞/組織を備えた足場は、バイオリアクターウェルから、移入ウェルを備えたプレート中に取り出される。これは、すべて、または選択されたバイオリアクターウェルに対してのみ手動またはロボットにより実施され得る。
【0053】
これらの研究からの結果は、インビボの器官の応答を予測するために数学的モデルに入力され得る。これらの結果はまた、化学薬剤および生物学的薬剤の薬物動態学および/または薬力学を予測するために数学的モデルに入力され得る。上記システムは、ゲノム、遺伝子転写、タンパク質発現、および目的のその他の生物学的現象に関するシステムのような、その他の試験システムと一体化され得る。
【0054】
微小スケール組織アレイを用いる試験システムは、インビトロアッセイのために広範な範囲の使用を有している。これらアレイを用い、生体内変化、クリアランス、代謝、および生体異物の活性化を研究し得る。上皮層を横切る、および血液脳関門を横切る化学薬剤および生物学的薬剤の生体利用度および輸送が研究され得る。化学薬剤の急性基礎的毒性、急性局所的毒性または急性器官特異的毒性、奇形誘発性、遺伝毒性、癌誘発性、および変異誘発性もまた研究され得る。感染性生物学的病原体、生物学的兵器、有害化学薬剤および化学兵器が検出され得る。感染性疾患、および化学薬剤および生物学的薬剤のこれら疾患を処置する効目、ならびにこれら薬剤についての最適用量範囲が研究され得る。化学薬剤および生物学的薬剤に対するインビボの器官の応答、およびこれら薬剤の薬物動態学および薬力学が予測され得る。これら薬剤に応答する遺伝内容物の衝撃が研究され得る。
【0055】
化学薬剤または生物学的薬剤に応答するタンパク質発現の量が決定され得る。化学薬剤および生物学的薬剤に応答する代謝における変化が研究され得る。薬剤の衝撃は、データベースシステムおよび関連するモデル、専門システムまた構造を基礎とするモデルにより予測され得る。
【0056】
すべての細胞に元来毒性である化合物(例えば、シアン化合物)、および実質細胞によって毒性代謝物に代謝によって変換される化合物を含む毒性物質はまた、細胞死に至る事象を検出するための包括的なアプローチを用いて検出され得る。これは一般的であり得、そして特異的でなく;すなわち、個々の毒素に特異的でなく、全体のクラスに一般的である。例は、ミトコンドリア毒、DNA損傷薬剤、およびメンブレン損傷薬剤を含む。
【0057】
代謝産物検出は、UV、可視、または蛍光検出器および/または質量分光光度法のような、インライン検出方法を用いて、細胞からの溶出流体をモニターすることにより達成され得る。さらに、細胞からの溶出液は周期的にサンプリングされ得、そして標準的な分析技法を用いてオフライン様式で代謝産物の存在について分析される。
【0058】
細胞より小さいフィルターまたは多孔性材料が、代謝産物を検出するための方法として、捕捉物質および/または基質を取り込むように設計され得る。これらの捕捉物質(すなわち、ペプチドまたは求核有機種)は、細胞から発出する流体に曝され得、そして細胞によって生成される反応性代謝産物に共有結合し得、そして灌流液中に放出される。この捕捉物質と反応性代謝産物との共有結合によって形成された複合体は、次いで、インサイチュで検出され得るか、またはこの捕捉物質をフィルターまたは多孔性材料に連結する不安定結合の切断によってこのフィルターまたは多孔性材料から放出され得る。この不安定結合は、化学的手段、活性もしくは酵素により、または特定波長の光の照射によって切断され得る。
【0059】
各々が経時的な関数である、感染の3つの可能な蛍光読み出しは、細胞質酵素漏失、細胞質NAD(P)H還元、および内皮細胞または肝細胞のいずれか中のストレス誘導性プロモーターに連結されたGFPの発現である。
【0060】
生物学的毒素は、異なる機構によって作用し、そして化学的毒素と比較して異なる感受性および作用の時間経過を示し得る。生物学的毒素は、肝臓およびES細胞の両方に対するそれらの影響について評価され得る。代表的な例は、Enterohemorrhagic Escherichia coli(EHEC)によって産生される志賀様トキシン(SLTまたはベロ毒素)、およびHelicobacter pyloriによって産生されるVac(空胞形成トキシン)を含む。SLTは、宿主細胞リボソームの60Sサブユニットを不活性化することにより宿主細胞のタンパク質合成を停止する(Teshら、Mol.Micorbiol.5:1817〜22(1991))。Vacトキシンは、未知レセプターを通じて細胞に結合し、そして恐らくは、ナトリウム−カリウムATPase活性を阻害することにより空胞形成を誘導する。
【0061】
この動的組織センサーの文脈内でリアルタイムに細胞毒性をモニターすることにともなう技術的挑戦は、種々のレーザー誘導蛍光(LIF)技法を用いて満たされ得る。LIFは、低いフェムトモル(10−15モル)の検出限界を提供し、そして理想的な分析物については、アトモル(10−18モル)検出限界が可能である。組織センサーに対する、毒性侵襲の影響をモニターするために2つの主要な終点が識別されている:細胞内のNAD(P)Hレベルの減少および細胞膜一体性の損失である。
【0062】
毒素曝露に応答する細胞内NAD(P)Hレベルの減少は、呼吸鎖の破壊に起因して、ミトコンドリア毒(例えば、メナジオンまたはシアン化合物)の場合に観察される。細胞内NADHおよびNAD(P)Hレベルはまた、DNAと会合するタンパク質のポリADP−リボシル化のプロセスを経由して、核毒素(例えば、ナイトロジェンマスタード)に応答して枯渇される。NAD(P)Hの細胞内プールは、毒素またはプロ毒素曝露に応答する変動について上記に記載されたようなインサイチュ蛍光分光光度法によってモニターされ得る。
【0063】
膜一体性の損失は、すべての細胞毒性経路共通の終点であり(すなわち、壊死またはアポトーシス)、そして組織を基礎にしたセンサーへのすべての細胞致死曝露後に観察され得る。膜一体性の損失は、灌流液中への細胞内成分の漏出をともなう。この膜一体性の損失を利用する1つのアプローチは、バイオセンサーの細胞に、フルオレセインのポリエステル化誘導体(例えば、Calcein AM、Abs:494 Em:517)を負荷することであり得る。これらの非蛍光性誘導体は、無抵抗に細胞に侵入し、その後、エステラーゼが、それらを、細胞内に保持されるポリアニオン性蛍光色素に加水分解する。毒素侵襲に起因する細胞膜透過性における増加は、灌流液への色素の損失に至り得る。従って、細胞により保持される色素の蛍光における減少をモニターすることは、細胞毒性の読み出しを提供し得る。
【0064】
膜一体性の損失による細胞毒性を定量する別のアプローチは、灌流液中に放出される酵素活性(例えば、アルカリホスファターゼおよびγ−グルタミルトランスペプチダーゼ)における増加を観察することであり得る。これは、固定化されたプロ蛍光発色団またプロ発色団酵素基質からなるインライン酵素検出器のLIF分光光度法により達成され得る。
【0065】
例えば、このアプローチは、毒性侵襲の後、細胞アレイによる灌流液中に放出されるγ−グルタミルトランスペプチダーゼ活性をモニターするために用いられ得る。γ−グルタミルトランスペプチダーゼの作用が遊離アミンを遊離するまで非蛍光性であるローダミン誘導体が設計された。得られる産物は高度に蛍光(Abs:492 Em:529)であり、そして固体支持体に結合されて残る。インライン固定化基質の使用は、蓄積信号をモニターすることを可能にし、そして灌流液中を循環する可溶性蛍光発色団からの信号を検出することと比較したとき、感度を劇的に改良する。類似の戦略が、固定化されたフルオレセインジホスフェート誘導体を用いてアルカリホスファターゼ活性をモニターするために採用され得る。
【0066】
インライン検出器の1つの形態は、各細胞の下に位置するフィルターまたは多孔性材料上にプロ蛍光発色団および/またはプロ発色団酵素基質(単数または複数)を固定化することを含み、各細胞から発する特定の細胞応答に反応させる。このようなフィルターアレイは、同じ細胞応答に対し異なる感度で応答する基質、および異なる細胞応答に応答する基質を含むように設計され得る。さらに、重複性(すなわち、アレイ内に1つより多くの細胞下で同じプロ蛍光発色団/発色団が存在する)が細胞アレイ全体に分布され得る。このプロ蛍光発色団/発色団は、細胞からの酵素漏失、溶出液pHにおける変動、および反応性酸素種の放出を含むがこれらに制限されない多くの細胞応答に応答するように設計される。
【0067】
各フィルターまたは多孔性材料によって生成される蛍光信号は、細胞応答の程度に比例する。フィルターまたは多孔性材料のアレイは、細胞アレイの状態の指標であり得る特徴的な蛍光強度パターンを示し得る。このアレイからの蛍光信号は、センサーを記載するセクションで上記で概説された器具を用い、必要に応じて周期的であることを基礎に収集され得る。蛍光発色団のアレイから得られたデータは、パターン認識ソフトウェアによって解釈され得、この蛍光信号パターンを、細胞アレイの状態に相関付ける。各々が経時的な関数である、感染の3つの可能な蛍光読み出しは、細胞質酵素漏失、細胞質NAD(P)H還元、および内皮細胞または肝細胞のいずれか中のストレス誘導性プロモーターに連結されたGFPの発現である。その他の蛍光読み取りは、ローダミン123のようなマーカーによって報告されるようなカスパーゼおよびミトコンドリア活性の活性化を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−72322(P2011−72322A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7381(P2011−7381)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2007−527446(P2007−527446)の分割
【原出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【出願人】(506383755)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (2)
【Fターム(参考)】