説明

火力プラント制御装置および方法

【課題】タービン抽気流量を制御することで、電気出力を急速に変化させることができるようにする。
【解決手段】通常時の電気出力を制御する通常時電気出力制御手段16と、抽気調整時に電気出力を制御する抽気調整時電気出力制御手段18と、通常時のボイラ圧力を制御する通常時ボイラ圧力制御手段15と、抽気調整時にボイラ圧力を制御する抽気調整時ボイラ圧力制御手段17と、抽気調整指令信号の有無を判断する抽気調整判断手段20と、抽気調整指令信号を得て通常時電気出力制御手段16および通常時ボイラ圧力制御手段15を抽気調整時電気出力制御手段18および抽気調整時ボイラ圧力制御手段17に切り替える切替手段19a〜19dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の電力系統から与えられる電力デマンドに従った電気出力を発生するための火力プラント制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力プラント制御方法は、電力デマンド(指令値)に従った電気出力(MW出力)を発生するために、火力プラント内部の応答を考慮した構成となっている。具体的には、ドラム式ボイラとタービンから構成される通常の火力プラントでは、多くの場合、ボイラ圧力を設定する制御回路と、電気出力を設定する制御回路とが設置されており、これらの制御回路に従って各流量や各温度などが制御されている。
【0003】
近年の環境問題への関心の高まりから、電力系統には自然エネルギーをエネルギー源とする発電所が設置されるようになっているものの、風力や太陽光発電などでは、電気出力の調整が難しいことから、電力系統の安定性の向上が問題となっており、火力プラントの出力を急速に変化させる方法が検討されている。すなわち、風力や太陽光発電などの負荷変化を、火力プラントを用いて制御することによってバランスさせ、電力系統の安定化の向上を図ることが可能となる。
【0004】
従来から存在する技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この技術では、電力デマンドの変動に応答して抽気流量を増減する手段を設け、この抽気流量の増減により電力デマンドの変動を吸収するようにした抽気復水タービンの制御装置を提案している。
【0005】
ところで、特許文献1に記載された技術は、電力デマンドの数時間単位の変動(同文献の図3参照)を調整するように抽気流量を増減させているが、この抽気流量増減方法は、数分単位で変化する自然エネルギーにより電力系統の安定化を補償するように考慮されているものではない。
【0006】
一方、従来の電力系統でも、夜間などの低負荷の場合に急激な負荷変化に対応した安定化制御を行う必要があり、特許文献2に記載された技術では、蒸気を貯留することで解決しようと試みている。具体的に、特許文献2に記載された技術では、夜間などの低負荷時にタービン抽気を用いてアキュームレータ(蒸気だまり)に蒸気を貯留し、必要に応じて抽気を遮断することにより発電に用いられる蒸気流量を増加させて、負荷を急激に増やす方法を開示している。しかしながら、上記のようにそれほど巨大なアキュームレータを設置することは、現実的ではなく、また実用化されていない。
【0007】
そこで、従来では、給水加熱に用いられているタービン抽気を遮断または制御することで、火力プラントの電気出力を制御するための検討が行われている。特許文献3に記載された技術では、この抽気制御による電気出力の応答方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−54204号公報
【特許文献2】特開平8−260907号公報
【特許文献3】米国特許第6,134,891号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献3に記載された技術では、単に抽気の制御により出力が変化する方法を開示しているだけであり、複雑に入り組んだ火力プラントの影響を考慮して実現するための制御方法については開示されていない。
【0010】
本発明は、タービン抽気流量を制御することで、電気出力を急速に変化させることのできる火力プラント制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る火力プラント制御装置は、通常時の電気出力を制御する通常時電気出力制御手段と、抽気調整時に電気出力を制御する抽気調整時電気出力制御手段と、通常時のボイラ圧力を制御する通常時ボイラ圧力制御手段と、抽気調整時にボイラ圧力を制御する抽気調整時ボイラ圧力制御手段と、抽気調整指令信号の有無を判断する抽気調整判断手段と、前記抽気調整指令信号を得て前記通常時電気出力制御手段および前記通常時ボイラ圧力制御手段を前記抽気調整時電気出力制御手段および前記抽気調整時ボイラ圧力制御手段に切り替える切替手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る火力プラント制御装置は、電気出力を制御する電気出力制御手段と、ボイラ圧力を制御するボイラ圧力制御手段と、抽気調整の有無を判断する抽気調整判断手段と、前記抽気調整の有無の信号を得て前記電気出力および前記ボイラ圧力の制御パラメータを切り替える切替手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る火力プラント制御方法は、抽気調整指令信号の有無を判断する抽気調整判断ステップと、前記抽気調整判断ステップで前記抽気調整指令信号を得た場合に、通常時の電気出力を制御する通常時電気出力制御手段および通常時のボイラ圧力を制御する通常時ボイラ圧力制御手段を抽気調整時に用いる抽気調整時電気出力制御手段および抽気調整時に用いる抽気調整時ボイラ圧力制御手段に切り替える切替ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る火力プラント制御方法は、抽気調整指令信号の有無を判断する抽気調整判断ステップと、前記抽気調整判断ステップの後に、電気出力を制御する電気出力制御手段およびボイラ圧力を制御するボイラ圧力制御手段のそれぞれの制御パラメータを切り替える切替ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タービン抽気流量を制御することで、電気出力を急速に変化させ、電力系統の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用する火力プラントの基本的な構成を示す系統図である。
【図2】本発明に係る火力プラント制御装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の抽気調整判断回路を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る火力プラント制御装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る火力プラント制御装置の第3実施形態を示すブロック図である。
【図6】第3実施形態の抽気調整判断回路を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る火力プラント制御装置の第4実施形態を示すブロック図である。
【図8】第4実施形態の抽気調整判断回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、図1に従って本発明の各実施形態を適用する火力プラントの基本的な構成を説明する。
【0018】
図1に示すように、ボイラ1は、ドラム式ボイラであり、節炭器2、過熱器3、およびスプレー配管4などを有している。ボイラ1への給水は、節炭器2で飽和温度からわずかに低い温度まで加熱され、ボイラ1のドラム1a中でさらに過熱されて蒸発する。また、節炭器2への給水は、復水器5から供給されて低圧給水加熱器6、脱気器7および高圧給水加熱器8を経て、低圧タービン9および高圧タービン10からの抽気で加熱される。
【0019】
一方、ボイラ1から出力される主蒸気は、過熱器3で過熱される。上記ボイラ蒸気温度は、スプレー配管4から噴出される水により制御される。主蒸気流量は、主蒸気弁11で制御されており、電力デマンドに応じて高圧タービン10に送られる。この高圧タービン10では、仕事をした後に、一部は抽気に送られ、残りは再加熱器12で再加熱される。その後は、低圧タービン9でさらに仕事をして復水器5で凝縮される。この凝縮した復水は、低圧給水加熱器6および高圧給水加熱器8により加熱され、再びボイラ1に送られる。なお、高圧タービン10および低圧タービン9で仕事をさせた際に発生する動力で発電機13を駆動している。
【0020】
ここで、抽気流量は、火力プラント全体で最も効率が良くなるように設計されている。抽気は低圧タービン9および高圧タービン10の途中段から抽出されるため、抽気以降は低圧タービン9および高圧タービン10の仕事に寄与しない。このため、低圧タービン9および高圧タービン10の入口蒸気流量や圧力が一定の場合に、抽気流量を増加させると電気出力が低下する。
【0021】
逆に、タービン抽気を制御し、遮断または減少させると、低圧タービン9および高圧タービン10内で仕事をする蒸気量が増加するので、電気出力が増加する。このように、抽気流量を制御することで、電気出力を変化させることができる。
【0022】
以下、本発明に係る火力プラント制御装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図2は本発明に係る火力プラント制御装置の第1実施形態を示すブロック図である。図3は第1実施形態の抽気調整判断回路を示すブロック図である。なお、図2においては、切替信号を破線の矢印で示し、指令値などの制御信号を実線の矢印で示している。その他、図4、図5および図7についても同様とする。
【0024】
前述したように、火力プラント制御装置は、所定の電気出力を発生させるために、火力プラント内部の応答を考慮した構成となっている。ドラム式ボイラとタービンから構成される通常の火力プラントでは、多くの場合、ボイラ1の圧力を設定する通常時ボイラ圧力制御手段としてのボイラ圧力制御回路15と、通常時に電気出力を設定する通常時電気出力制御手段としての電気出力制御回路16とが設置されており、これらの制御回路15,16に従って各流量や各温度などが制御されている。
【0025】
このボイラ圧力を設定するボイラ圧力制御回路15と、電気出力を設定する電気出力制御回路16は、プラント動作を模擬するように調整されている。しかしながら、抽気流量が変化するとプラントの動作が異なってくるため、従来のボイラ圧力を設定する制御回路、電気出力を設定する制御回路では、プラント全体を安定に制御することができない場合がある。
【0026】
そこで、本実施形態では、抽気調整時ボイラ圧力制御回路17と、抽気調整時電気出力制御回路18を別に設置している。すなわち、抽気調整時ボイラ圧力制御回路17および抽気調整時電気出力制御回路18は、それぞれボイラ圧力制御回路15および電気出力を設定する電気出力制御回路16と並列に接続されている。これらボイラ圧力制御回路15および電気出力を設定する電気出力制御回路16と、抽気調整時ボイラ圧力制御回路17および抽気調整時電気出力制御回路18は、切替手段としての4つのスイッチ19a〜19dにより切り替えられる。
【0027】
4つのスイッチ19a〜19dは、後述する抽気調整判断回路20からの切替信号により切り替えられる。抽気調整時ボイラ圧力制御回路17またはボイラ圧力制御回路15には、スイッチ19aを介して外部の電力系統からの電気出力指令値のアナログ信号が入力される。同様に、電気出力制御回路16または抽気調整時電気出力制御回路18には、スイッチ19cを介して外部の電力系統からの電気出力指令値のアナログ信号が入力される。
【0028】
一方、ボイラ圧力制御回路15または抽気調整時ボイラ圧力制御回路17からのボイラ圧力設定値信号は、スイッチ19bを経てタービン制御回路30およびボイラ制御回路31に出力される。また、電気出力制御回路16または抽気調整時電気出力制御回路18からの電気出力設定値信号は、スイッチ19dを経てタービン制御回路30およびボイラ制御回路31に出力される。ここで、タービン制御回路30は、電気出力や圧力などを制御し、またボイラ制御回路31は、蒸気温度や蒸気流量などを制御する。
【0029】
本実施形態では、通常発電所などの外部の電力系統から与えられる電気出力指令値信号に基づき、抽気調整判断回路20で抽気制御による出力調整の必要か不必要かの判断を行う。
【0030】
図3は第1実施形態の抽気調整判断回路を示すブロック図である。
【0031】
抽気調整判断回路20により抽気が必要と判断された場合には、抽気調整回路21で抽気設定値を計算し、その抽気量設定値信号を抽気制御回路22に出力する。この抽気制御回路22では、抽気量設定値信号に基づいて抽気制御を行う。
【0032】
図3に示すように、抽気調整判断回路20は、電気出力指令値の変化率が一定以上(例えば、1分間に定格出力の10%など)の場合に抽気が必要と判断し、ディジタル信号「1」を出力する。電気出力指令値の変化率が一定未満で抽気が不要な場合は、ディジタル信号「0」を出力する。
【0033】
具体的には、抽気調整判断回路20は、変化率抽出回路23と、閾値処理回路24とを備える。変化率抽出回路23は、電気出力指令値信号の値から変化率を抽出する。閾値処理回路24は、変化率抽出回路23により抽出された変化率と電気出力変化率閾値とを閾値処理する。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0035】
図3に示すように、抽気調整判断回路20は、電気出力指令値信号を入力信号とする。変化率抽出回路23は、この電気出力指令値信号から変化率を抽出する。閾値処理回路24は、変化率抽出回路23により抽出した変化率と予め定めた電気出力変化率閾値とを閾値処理にて比較し、超えている場合はディジタル信号「1」を出力し、超えていない場合はディジタル信号「0」を出力する。
【0036】
抽気調整判断回路20にて抽気が必要と判断され、抽気指令信号「1」として切替信号がスイッチ19a,19bに出力されると、スイッチ19a,19bは、ボイラ圧力制御回路15から抽気調整時ボイラ圧力制御回路17に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されているボイラ圧力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0037】
同様に、電気出力制御回路16についても、抽気が必要と判断され、抽気指令信号「1」として切替信号がスイッチ19c,19dに出力されると、スイッチ19c,19dは、電気出力制御回路16から抽気調整時電気出力制御回路18に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されている電気出力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0038】
このとき、抽気が必要と判断され、抽気指令信号「1」が出力されていると、抽気調整回路21で抽気量を計算して抽気制御回路22で制御を行う。
【0039】
このようにして得られた抽気量設定値、ボイラ圧力設定値、電気出力設定値の全てまたは一部を入力信号として、抽気制御回路22、タービン制御回路30、およびボイラ制御回路31が動作し、それぞれ抽気量、タービン、およびボイラが制御される。
【0040】
以上説明した本実施形態によれば、タービン抽気流量を制御することにより、電気出力を急速に変化させ、電力系統の安定化を図ることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、ボイラ圧力制御回路15と電気出力制御回路16が完全に別個の回路である例として説明したが、ボイラ圧力制御回路15と電気出力制御回路16が互いの出力を参照するようにしてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図4は本発明に係る火力プラント制御装置の第2実施形態を示すブロック図である。なお、前記第1実施形態の構成と同一または対応する部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。その他の実施形態も同様とする。
【0043】
前記第1実施形態では、通常発電所などの外部の電力系統から与えられる電気出力指令値信号に基づき、抽気調整判断回路20で抽気制御による出力調整の必要か不必要かの判断を行っていたが、本実施形態では、図4に示すように、外部から直接抽気調整の有無の指定信号を得て、抽気調整を判断している。
【0044】
具体的には、抽気有無の抽気有無指定信号は、抽気調整の判断を火力プラントの外部で実施して本実施形態の火力プラント制御装置に送信し、その火力プラント制御装置は、この抽気有無指定信号「1」または「0」を受信する。ここで、抽気ありの場合は、ディジタル信号「1」を出力する一方、抽気なしの場合は、ディジタル信号「0」を出力する。
【0045】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0046】
上記抽気有無指定信号を受信したことで、スイッチ19a,19bは、ボイラ圧力制御回路15から抽気調整時ボイラ圧力制御回路17に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されているボイラ圧力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0047】
同様に、電気出力制御回路16についても、上記抽気有無指定信号を受信したことで、スイッチ19c,19dは、電気出力制御回路16から抽気調整時電気出力制御回路18に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されている電気出力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0048】
このようにして得られた抽気量設定値、ボイラ圧力設定値、電気出力設定値の全てまたは一部を入力信号として、抽気制御回路22、タービン制御回路30、およびボイラ制御回路31が動作し、それぞれ抽気量、タービン、およびボイラが制御される。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様にタービン抽気流量を制御することにより、電気出力を急速に変化させ、電力系統の安定化を図ることができる。その他の構成および作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
(第3実施形態)
図5は本発明に係る火力プラント制御装置の第3実施形態を示すブロック図である。図6は第3実施形態の抽気調整判断回路を示すブロック図である。
【0051】
本実施形態は、系統周波数を入力として抽気調整判断を行う実施形態である。図5および図6に示すように、抽気調整判断回路20は、系統周波数の変化率が一定以上(例えば5秒間に定格出力の1[Hz]以上など)の場合に抽気が必要と判断し、ディジタル信号「1」を出力する。系統周波数の変化率が一定未満で抽気が不要な場合は「0」を出力する。
【0052】
具体的には、抽気調整判断回路20は、変化率抽出回路23と、閾値処理回路24とを備える。変化率抽出回路23は、系統周波数の変化率を抽出する。閾値処理回路24は、変化率抽出回路23により抽出した系統周波数の変化率と系統周波数変化率閾値とを閾値処理する。
【0053】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0054】
図6に示すように、抽気調整判断回路20は、系統周波数を入力信号とし、この系統周波数の変化率を変化率抽出回路23により抽出する。閾値処理回路24は、変化率抽出回路23により抽出した系統周波数の変化率と系統周波数変化率閾値とを閾値処理にて比較し、系統周波数の変化率が一定以上の場合はディジタル信号「1」を出力し、系統周波数の変化率が一定未満の場合はディジタル信号「0」を出力する。
【0055】
抽気調整判断回路20にて抽気が必要と判断されると、ボイラ圧力制御回路15から抽気調整時ボイラ圧力制御回路17に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されているボイラ圧力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0056】
同様に、電気出力制御回路16についても、抽気が必要と判断されると、電気出力制御回路16から抽気調整時電気出力制御回路18に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されている電気出力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0057】
このとき、抽気が必要と判断され、抽気指令信号「1」が出力されていると、抽気調整回路21で抽気設定値を計算して抽気制御回路22で制御を行う。
【0058】
以上説明した本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様にタービン抽気流量を制御することにより、電気出力を急速に変化させ、電力系統の安定化を図ることができる。その他の構成および作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
(第4実施形態)
図7は本発明に係る火力プラント制御装置の第4実施形態を示すブロック図である。図8は第4実施形態の抽気調整判断回路を示すブロック図である。
【0060】
本実施形態は、実際の電気出力値と外部からの電気出力指令値を入力信号として抽気調整の判断を行う実施形態である。図7および図8に示すように、抽気調整判断回路20は、実際の電気出力値と外部からの電気出力指令値の誤差の変化率が一定以上(例えば、30秒間に定格出力の30[MW]以上など)の場合に抽気が必要と判断し、ディジタル信号「1」を出力する。上記誤差の変化率が一定未満で抽気が不要な場合は、ディジタル信号「0」を出力する。
【0061】
具体的には、抽気調整判断回路20は、減算回路25と、変化率抽出回路23と、閾値処理回路24とを備える。減算回路25は、実際の電気出力値から外部からの電気出力指令値を減算する。変化率抽出回路23は、出力誤差の変化率を抽出する。閾値処理回路24は、変化率抽出回路23により抽出した出力誤差の変化率と出力誤差変化率閾値とを閾値処理する。
【0062】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0063】
図8に示すように、抽気調整判断回路20にて実際の電気出力値と外部からの電気出力指令値の誤差の変化率が一定以上の場合で、抽気が必要と判断されると、ボイラ圧力制御回路15から抽気調整時ボイラ圧力制御回路17に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されているボイラ圧力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0064】
同様に、電気出力制御回路16についても、抽気が必要と判断されると、電気出力制御回路16から抽気調整時電気出力制御回路18に切り替り、抽気が行われているプラント用に調整されている電気出力設定値信号がタービン制御装置30およびボイラ制御回路31に出力される。
【0065】
このとき、抽気が必要と判断され、抽気指令信号「1」が出力されていると、抽気調整回路21で抽気設定値を計算して抽気制御回路22で制御を行う。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様にタービン抽気流量を制御することにより、電気出力を急速に変化させ、電力系統の安定化を図ることができる。その他の構成および作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
なお、第1から第4実施形態では、ボイラ圧力制御回路15および電気出力制御回路16がそれぞれ抽気調整時ボイラ圧力制御回路17および抽気調整時電気出力制御回路18に切り替わり、回路そのものが切り替る例について説明したが、電気出力指令値信号が入力されたらボイラ圧力制御回路15および電気出力制御回路16の中の制御調整パラメータが切り替るようにしてもかまわない。
【0068】
また、第1から第4実施形態では、スイッチ19a〜19dで回路を切り替えるようにしたが、全体または一部の回路をプログラムで組むことも可能であり、この場合には、スイッチ19a〜19dは、プログラム上の判断文(IF文などの切替手段)に置き換わることになる。
【符号の説明】
【0069】
1…ボイラ
9…低圧タービン
10…高圧タービン
15…ボイラ圧力制御回路(通常時ボイラ圧力制御手段、ボイラ圧力制御手段)
16…電気出力制御回路(通常時電気出力制御手段、電気出力制御手段)
17…抽気調整時ボイラ圧力制御回路(抽気調整時ボイラ圧力制御手段)
18…抽気調整時電気出力制御回路(抽気調整時電気出力制御手段)
19a〜19d…スイッチ(切替手段)
20…抽気調整判断回路(抽気調整判断手段)
21…抽気調整回路
22…抽気制御回路
23…変化率抽出回路
24…閾値処理回路
25…減算回路
30…タービン制御回路
31…ボイラ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時の電気出力を制御する通常時電気出力制御手段と、
抽気調整時に電気出力を制御する抽気調整時電気出力制御手段と、
通常時のボイラ圧力を制御する通常時ボイラ圧力制御手段と、
抽気調整時にボイラ圧力を制御する抽気調整時ボイラ圧力制御手段と、
抽気調整指令信号の有無を判断する抽気調整判断手段と、
前記抽気調整指令信号を得て前記通常時電気出力制御手段および前記通常時ボイラ圧力制御手段を前記抽気調整時電気出力制御手段および前記抽気調整時ボイラ圧力制御手段に切り替える切替手段と、
を有することを特徴とする火力プラント制御装置。
【請求項2】
電気出力を制御する電気出力制御手段と、
ボイラ圧力を制御するボイラ圧力制御手段と、
抽気調整の有無を判断する抽気調整判断手段と、
前記抽気調整の有無の信号を得て前記電気出力および前記ボイラ圧力の制御パラメータを切り替える切替手段と、
を有することを特徴とする火力プラント制御装置。
【請求項3】
前記抽気調整判断手段は、電気出力指令値の変化率に基づいて抽気制御による出力調整の判断を行うこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の火力プラント制御装置。
【請求項4】
前記抽気調整判断手段は、外部から抽気調整の有無の指定信号に基づいて抽気制御による出力調整の判断を行うこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の火力プラント制御装置。
【請求項5】
前記抽気調整判断手段は、系統周波数の変化率に基づいて抽気制御による出力調整の判断を行うこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の火力プラント制御装置。
【請求項6】
前記抽気調整判断手段は、実際の電気出力値と外部からの電気出力指令値の誤差の変化率に基づいて抽気制御による出力調整の判断を行うこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の火力プラント制御装置。
【請求項7】
抽気調整指令信号の有無を判断する抽気調整判断ステップと、
前記抽気調整判断ステップで前記抽気調整指令信号を得た場合に、通常時の電気出力を制御する通常時電気出力制御手段および通常時のボイラ圧力を制御する通常時ボイラ圧力制御手段を抽気調整時に用いる抽気調整時電気出力制御手段および抽気調整時に用いる抽気調整時ボイラ圧力制御手段に切り替える切替ステップと、
を有することを特徴とする火力プラント制御方法。
【請求項8】
抽気調整指令信号の有無を判断する抽気調整判断ステップと、
前記抽気調整判断ステップで前記抽気調整指令信号を得た場合に、電気出力を制御する電気出力制御手段およびボイラ圧力を制御するボイラ圧力制御手段のそれぞれの制御パラメータを切り替える切替ステップと、
を有することを特徴とする火力プラント制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−117358(P2011−117358A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275236(P2009−275236)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】