説明

火力発電プラントの運転制御システム及びその方法

【課題】 ボイラー内の燃料が無くなることがないように且つ燃料製造段階の残留燃料が最小になるように燃料供給を制御しつつ、火力発電プラントの運転を停止する運転制御システム及びその方法を提供すること。
【解決手段】火力発電プラントの運転を停止する運転制御システムであって、運転停止の際に燃料が停留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器と、前記燃料保有器に対して設けられた燃料供給停止装置、燃料量センサ及び流量センサと、前記燃料量センサ及び流量センサから残留燃料データ及び流量データを夫々受け取り、前記燃料供給停止装置に対して前記燃料保有器への燃料供給停止を指令する運転制御装置とを備え、前記運転制御装置は、前記残留燃料データと前記流量データに基づいて前記燃料保有器の各々の燃料消費時間を決定し、該燃料消費時間に基づいて、運転停止スケジュールを策定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラントの運転制御システムに関し、更に具体的には、火力発電プラントの運転停止のための運転制御システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラントでは、設備の保守・点検、修理、更新等のため、プラントの運転を一時的に停止する必要が生じる。石炭を使用する火力発電プラントの場合、プラント稼働中に石炭の供給が途絶えないように細心の注意をしながら、プラント停止時刻に合わせて燃料の石炭の供給を徐々に減少している。
【特許文献1】特開2001-250572(平成13年9月14日公開)発明の名称「燃料電池発電システム」
【特許文献2】特開2001-346333(平成13年12月14日公開)発明の名称「発電プラント運転制御方法及び運転制御装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現時点で国内に2台しか稼働していないような最新鋭の火力発電プラントの場合、後で詳しく説明するように、燃料として、石炭、水、石灰石から成るCWP(Coal Water Paste)を使用しているため、従来の石炭のみを使用する一般的な火力発電プラントと同じように運転を停止すると種々の問題が発生することが判明した。なお、これら問題点は、対象となる火力発電プラントが最新鋭のため、未だ公知のものとはなっていないと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は、ボイラー内の燃料が無くなることがないように燃料供給を制御しつつ、火力発電プラントの運転を停止する運転制御システム及びその方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、ボイラー内の燃料が無くなることがないように且つ燃料製造段階の残留燃料が最小になるように燃料供給を制御しつつ、火力発電プラントの運転を停止する運転制御システム及びその方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明に係る運転制御システムは、火力発電プラントの運転を停止する運転制御システムであって、運転停止の際に燃料が残留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器に関して、該保有器内の燃料が実質的に無くなるまでの燃料消費時間を夫々算出し、該燃料製造工程の上流側の燃料保有器から順に、燃料の供給を停止した後当該燃料保有器の燃料消費時間の経過後に次段階の燃料保有器の燃料の供給を停止する。
【0006】
更に、本発明に係る運転制御システムでは、運転停止の際に燃料が残留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器に関して、該保有器内の燃料が実質的に無くなるまでの燃料消費時間を計算する燃料消費計算手段と、前記燃料保有器の各々に関する前記燃料消費時間に基づいて、前記火力発電プラントの運転を停止する運転停止スケジュールを策定する運転停止スケジュール策定手段と、前記運転停止スケジュールに沿って、前記火力発電プラントの運転を停止する運転停止手段とを備える。
【0007】
更に、上述の運転制御システムは、前記燃料消費計算手段では、燃料消費時間=(残留燃料)/(燃料流量)から、前記燃料保有器の各々の燃料消費時間が決定される。
【0008】
更に、上述の運転制御システムでは、前記残留燃料は、前記燃料保有器の各々の燃料の最低保持量に基づいて補正されている。
【0009】
更に、上述の運転制御システムでは、前記燃料流量は、前記火力発電プラントの停止時の負荷低減特性に基づいて補正されている。
【0010】
更に、上述の運転制御システムでは、前記運転停止スケジュール策定手段は、前記燃料保有器の各々に関して、製造工程の最初の方から順に、当該燃料保有器の燃料消費時間経過時に残留燃料は消費されたものとしてとして該燃料保有器からの燃料の流出を停止する。
【0011】
更に、本発明に係る運転制御システムは、運転停止の際に燃料が停留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器と、前記燃料保有器の各々に対して設けられた燃料供給停止装置、燃料量センサ及び流量センサと、前記燃料量センサ及び流量センサから残留燃料データ及び流量データを夫々受け取り、前記燃料供給停止装置に対して前記燃料保有器への燃料供給停止を指令する運転制御装置とを備え、前記運転制御装置は、前記残留燃料データと前記流量データに基づいて前記燃料保有器の各々の燃料消費時間を決定し、該燃料消費時間に基づいて、運転停止スケジュールを策定する。
【0012】
更に、上述の運転制御システムでは、前記運転制御装置は、記燃料保有器の各々の燃料消費時間を、燃料消費時間=(残留燃料)/(燃料流量)に基づき決定する。
【0013】
更に、上述の運転制御システムでは、前記残留燃料は、前記燃料保有器の各々の燃料の最低保持量に基づいて補正されている。
【0014】
更に、上述の運転制御システムでは、前記燃料流量は、前記火力発電プラントの停止時の負荷低減特性に基づいて補正されている。
【0015】
更に、上述の運転制御システムでは、前記運転制御装置は、燃料製造工程の後段から前段に向かって各変量保有器の前記燃料消費時間を当てはめて、運転停止スケジュールを策定する。
【0016】
更に、上述の運転制御システムでは、前記火力発電プラントは、燃料として、石炭、水、石灰石から成るCWPを使用している。
【0017】
更に、本発明に係る火力発電プラントは、上述の運転制御システムを備えた火力発電プラントである。
【0018】
更に、本発明に係る火力発電プラントの運転を停止する運転制御方法は、運転停止の際に燃料が残留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器に関して、該保有器内の燃料が実質的に無くなるまでの燃料消費時間を計算し、前記燃料保有器の各々に関する前記燃料消費時間に基づいて、前記火力発電プラントの運転を停止する運転停止スケジュールを策定し、前記運転停止スケジュールに沿って、前記火力発電プラントの運転を停止する。
【0019】
更に、本発明に係る、運転制御装置によって実行される火力発電プラントの運転を停止する運転制御方法は、運転停止の際に燃料が停留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器の各々に対して、燃料供給停止装置、燃料量センサ及び流量センサが設けられ、前記運転制御装置は、前記燃料量センサ及び流量センサから残留燃料データ及び流量データを夫々受けとり、前記残留燃料データと前記流量データに基づいて前記燃料保有器の各々の燃料消費時間を決定し、前記燃料消費時間に基づいて、運転停止スケジュールを策定し、前記燃料供給停止装置に対して、前記燃料保有器への燃料供給停止を指令する。
【0020】
更に、本発明に係るプログラムは、上述の火力発電プラントの運転を停止する運転制御方法を規定した、コンピュータにより読取り且つ実行可能なプログラムである。
【0021】
更に、本発明に係るプ記録媒体は、上述のプログラムを記録した記録媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボイラー内の燃料が無くなることがないように燃料供給を制御しつつ、火力発電プラントの運転を停止する運転制御システム及びその方法を提供することが出来る。
【0023】
更に、本発明によれば、ボイラー内の燃料が無くなることがないように且つ燃料製造段階の残留燃料が最小になるように燃料供給を制御しつつ、火力発電プラントの運転を停止する運転制御システム及びその方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[火力発電プラント]
(PFBC複合発電設備)
図1は、本出願人の運用している発電所の概要を示す図であり、ここでは、PFBC(Pressurized Fluidized Bed Combustion加圧流動床)複合発電方式を採用している。簡単に説明すると、このPFBC複合発電プラントは、加圧流動床ボイラー4と、発電機12に連結された蒸気タービン11と、発電機7に連結されたガスタービン5とを備えている。
【0025】
このような複合発電方式(combined cycle)では、加圧流動床ボイラー4で発生した蒸気で蒸気タービン11を駆動し、更に加圧流動床ボイラー4で発生した排ガス(高温・高圧ガス)でガスタービン5を駆動し、各タービン11,5は発電機12,7に夫々連結されて、電気を作っている。加圧流動床ボイラー4は、流動床燃焼を加圧下で行い、蒸気を発生させている。流動床燃焼とは、適当な大きさ(例えば、6mm以下)の石炭に下方から空気を吹き付け或る高さにふわふわと浮いた状態(流動状態)にして燃焼させる事をいい、流動床燃料を加圧下で行う場合は加圧流動床燃焼(13)と呼んでいる。大気状態で燃焼させる常圧流動床ボイラーに比較して、加圧流動床燃焼は燃焼効率が高く、設備をコンパクトにすることが出来る。
【0026】
石炭を使用する一般的な火力発電設備と異なり、このような加圧流動床燃焼(13)を行うため、燃料1としては、石炭、水、石灰石から成るCWP(Coal Water Paste)2を使用している。石灰石は硫黄酸化物SOx除去対策のために使用され、石炭と共に火炉内に投入されて、石炭の燃焼によって発生する硫黄酸化物SOxと反応してこれを除去する炉内脱硫作用を行っている。
【0027】
なお、脱硝装置8は窒素酸化物NOxを除去するために設けられ、遠心式2段サイクロン6及びバグフィルタ(濾過式集塵機)9は、煙突10に突入前の煤塵除去のために設けられている。
【0028】
(燃料製造設備)
図2は、図1のPFBC複合発電設備の一部である燃料製造設備の詳細を示す図である。先ず、原料となる石炭が、原炭バンカ20−1,20−2に投入され、原炭供給機22から粗粉砕機23に送られて粉砕され6mm以下の粗粉炭となり、粗粉砕炭コンベア24により分級機25でふるい(篩い)にかけられ10mm以下の粗粉炭のみが選別される。この粗粉炭は、粗粉砕炭コンベア27、28により、一旦、2台の中継ホッパ29へ送られる。1台は、混練機用給炭機31からCWPを製造する混練機38に送られる粗粉炭を貯え、他の1台は、微粉砕機用給炭機30から微粉砕機32に送られる粗粉炭を貯える。
【0029】
微粉砕機32に送られた粗粉炭は、更にすり潰されて微粉炭となり、原水タンク34からの水と混ぜ合わせられることにより、スラリという燃料になる。スラリは、中継タンク33からスラリ移送ポンプ35によりスラリサービスタンク36に送られ、スラリ供給ポンプ37により混練機38に送られる。
【0030】
他の原料である石灰石が、石灰石バンカ44に投入され、石灰石供給機45、石灰石コンベヤ46を経て混練機用給炭機31から粗粉炭と共に混練機38に送られる。また、原水タンク34から水も混練機38に送られる。
【0031】
混練機38によって、スラリと、粗粉炭及び石灰石と、水とが混ぜ合わせられることで、CWPとなる。製造されたCWPは、CWP分配コンベヤ39によってCWPタンク40に運ばれ一時保管され、CWPポンプ41によりCWPノズル42を介してボイラー4(図1参照)へと送られる。
【0032】
一般の石炭のみを使用する火力発電プラントでは、制御用コンピュータによるプラント自動停止(APS)を行っても、燃料供給関係に後述するような問題は生じなかった。しかし、図2のような燃料製造設備の場合、従来のプラント自動停止(APS)では、プラント停止後に燃料製造設備の各燃料保有器(図中、ハッチングを付して表す。)の内部に多量の燃料が残ってしまう。具体的には、燃料保有器として、原炭バンカ20、中継ホッパ29、中継タンク33、スラリサービスタンク36及びCWPタンク40が対象となる。
【0033】
このような残留燃料は、プラント停止期間が長期に亘ると、原炭バンカ20,中継ホッパ29内では石炭の発熱の恐れがある。また、スラリサービスタンク36,CWPタンク40内では、残留スラリ,CWPの性状が変化し、燃料として再度使用することができなくなる。
【0034】
このような各保有器内の残留燃料の対策として、プラント停止時に、燃料製造工程の保有器の部分のみ還流パスを設けて循環運転することで、停止期間が比較的短ければ或る程度の性状変化を回避することは出来る。しかし、循環運転を行うには、追加的な動力費を必要とし、また循環系統内のポンプに使用される容積式ホースポンプは使用寿命が比較的短いことから、プラント停止期間中に連続して循環運転を行うのは望ましくない。従って、プラント停止期間が長期に渡り、循環運転によってもスラリ、CWPの性状を維持できない場合には、各燃料保有器に対して仮設配管を設置し、内部の残留燃料を系統外に抜き取らなければならなかった。
【0035】
一方、プラントの運転停止に際して、燃料製造設備工程の燃料が全くなくなり、結果的にプラントの予定停止時刻前にボイラーに供給される燃料が無くなるような状態は回避しなければならない。
【0036】
本発明者等は、このような条件下で、プラント停止に際して、各燃料保有器の残留燃料を最小にする研究に着手した。各燃料保有器の残留燃料を最小に出来れば、石炭に関しては、特に原炭バンカ21、中継ホッパ29等に残留する石炭の発熱の軽減、残留石炭の抜き取り作業量の軽減が期待出来る。また、スラリ,CWPに関しても、性状変化量の低減、抜き取り作業量の軽減,および系統内移送作業量の軽減が期待出来る。
【0037】
[火力発電プラントの運転制御システム]
そこで、本発明者等は、プラント停止を行う際に、燃料消費計算と、これに基づきプラント停止スケジュールの策定を行い、これに従ってプラントを停止することにより、ボイラー内の燃料が無くなることがないように燃料供給を制御しつつ、各燃料保有器内の残留燃料を可能な限り低減させる火力発電プラントの運転制御システムを完成したのである。
【0038】
(運転制御システム)
図3は、火力発電プラントの運転制御システムの内、特に運転停止に関連する部分を簡単に説明する図である。図中左側には、各燃料保有器(図2でハッチングを付した要素。)を燃料製造工程の順に上から表示する。具体的には、燃料保有器として、原炭バンカ20、中継ホッパ29、中継タンク33、スラリサービスタンク36及びCWPタンク40を図示する。各燃料保有器には、その左側に図示するように、燃料供給停止装置と、燃料量センサと、流量センサとが夫々備えられている。
【0039】
具体的には、原炭バンカ20に対しては燃料供給停止装置51,燃料量センサ52及び流量センサ53が、中継ホッパ29に対しては、燃料供給停止装置54,燃料量センサ55及び流量センサ56が、中継タンク33に対しては、燃料供給停止装置57,燃料量センサ58及び流量センサ59が、スラリサービスタンク36に対しては、燃料供給停止装置57,燃料量センサ61及び流量センサ62が、及びCWPタンク40に対しては、燃料供給停止装置63,燃料量センサ64及び流量センサ65が、夫々備えられている。
【0040】
各燃料量センサで検出された各燃料保有器内の消費すべき燃料(残留燃料)の量を表示するデータは、運転制御装置66に夫々送られる。同様に、各流量センサで検出された各燃料保有器に流入又は各燃料保有器から流出する燃料の流量を表示するデータは、運転制御装置66に夫々送られる。
【0041】
運転制御装置66からの燃料供給停止信号が、燃料供給停止装置51,54,57,63に夫々送られて、各燃料保有器20,29,33,36,40に対する燃料供給を夫々停止する。
【0042】
この運転制御システムは、図4に示すように運転制御される。
(運転制御方法)
図4は、火力発電プラントの運転制御方法の内、特に運転停止に関連する部分を示すフローチャートである。
ステップS10で、各燃料保有器に関して、燃料消費を計算する。
ステップS20で、上記燃料消費の計算結果に基づいて、運転停止スケジュールを策定する。
ステップS30で、上記策定された運転停止スケジュールに基づいて、プラント停止を実行する。
【0043】
これらステップの内容について説明する。
ステップS10の各燃料保有器の燃料消費計算は、基本的には、各燃料保有器に関して、燃料供給停止装置により当該燃料保有器への燃料供給が停止してから、当該燃料保有器から燃料が消費されるのみの状態で、消費すべき燃料(残留燃料)が実質的に無くなるまでの時間を算出することをいう。
【0044】
従って、基本的には、各燃料保有器に関して、図3で説明した燃料量センサからの残留燃料量データと、流量センサからの燃料流量データに基づいて、運転制御装置66で、燃料消費時間=(残留燃料)/(燃料流量)から計算することが出来る。具体的には、原炭バンカ20の燃料消費計算は、供給停止装置51により原炭バンカへの燃料供給が停止した時点において、燃料量センサ52により検出された原炭バンカ内の残留燃料量データと、流量センサ53により検出された燃料流量データとにより、運転制御装置66にて、(残留燃料量)/(燃料流量)により燃料消費時間が算出される。他の燃料保有器29,33,36,40も同様に計算される。
【0045】
しかし、実際問題として、この燃料消費計算には、以下のような2つの補正が必要になる。
第1の補正に関して説明すると、プラント停止時に予定のプラント停止時刻より先にボイラーへの燃料供給が無くなることを回避するために(即ち、安全にプラントを停止するために)、各燃料保有器に対して燃料の最低保持量(低減目標値)が規定されている。従って、上述の「残留燃料が実質的に無くなるまでの時間」の意味は、実際のプラントの停止では、保有器の残留燃料の量がこの最低保持量に達するまでの時間を意味している。従って、燃料消費計算式の分母の(残留燃料)は、この低減目標値に沿って補正する必要がある。
【0046】
更に、第2の補正に関して説明すると、実際の火力発電プラントの停止は、一度にその負荷を低減して停止するのではなく、多段階の負荷低減操作に従って実行されている。図5は、火力発電プラントの停止時の負荷状態を示す図である。プラント停止時には、第1段階として、通常運転負荷状態(125〜250MW)からの停止操作開始時刻(時刻t1)から所定の減負荷特性Iに従って50%負荷まで負荷を減少し、更に第2段階として時刻t3から所定の減負荷特性IIに従って22%負荷まで負荷を減少し、更に第3段階として時刻t5で運転を停止(即ち、発電機を解列)している。従って、燃料消費計算式の分母の(燃料流量)は、この多段階の負荷低減特性に沿って時間の推移と共に補正する必要がある。
【0047】
図6は、各燃料保有器に関して、必要な補正を含めて計算された燃料消費計算の計算結果を模式的に示した図である。左端のCWPタンク40の燃料消費時間TCWPを、燃料消費時間TCWP=(補正済み残留燃料)/(補正済み燃料流量)から算出し、この燃料消費時間TCWPを表示する長さを持つ両端矢印の線分TCWPで表示している。同様に、スラリサービスタンク36の燃料消費時間を線分Tで表示し、中継タンク33の燃料消費時間を線分Tタンクで表示し、中継ホッパ29の燃料消費時間を線分Tホッパで表示し、原炭バンカ20の燃料消費時間を線分Tバンカで表示している。
【0048】
(運転停止スケジュールの策定)
図7は、図4のフローチャートのステップS20の運転停止スケジュールの策定、即ち、図6の燃料消費計算結果に基づいて火力発電プラントの運転停止スケジュールを策定する方法を説明する図である。
運転停止スケジュールは、最下流の燃料保有器であるCWPタンク40から上流の保有器に向かって、算出された燃料消費時間を積み上げる(累積する)ことにより行われる。
【0049】
先ず、発電プラントの停止時刻T6を決定する。
次に、時刻T6を基準として、CWPタンク40の燃料消費時間TCWP(図6参照)をとり、CWPタンクへの張り込み停止(燃料供給停止)時刻T5を決定する。
同様に、時刻T5を基準として、スラリサービスタンク36の燃料消費時間Tスラリをとり、スラリサービスタンクへの張り込み停止時刻T4を決定する。
同様に、時刻T4を基準として、中継タンク33の燃料消費時間Tタンクをとり、中継タンクへの張り込み停止時刻T3を決定する。
同様に、時刻T3を基準として、中継ホッパ29の燃料消費時間Tホッパをとり、中継ホッパへの張り込み停止時刻T2を決定する。
同様に、時刻T2を基準として、原炭バンカ20の燃料消費時間Tバンカをとり、原炭バンカへの張り込み停止時刻T1を決定する。
【0050】
こうして、時刻T1で原炭バンカ20への燃料供給を停止し、時刻T2で中継ホッパ29への燃料供給を停止し、時刻T3で中継タンク33への燃料供給を停止し、時刻T4でスラリサービスタンク36への燃料供給を停止し、時刻T5でCWPタンク40への燃料供給を停止する内容の運転停止スケジュールが策定される。
【0051】
図4のステップS30のプラントの停止は、図7のように策定された運転停止スケジュールに沿って実行される。
【0052】
[代替手段、実施形態の効果等]
(実施例の効果)
(1)PFBC複合発電プラントの運転停止に関して、本実施形態による方法の効果を確認した。従来のAPSに従って運転停止を行ったところ、燃料保有器全体(原炭バンカ、中継ホッパ、中継タンク、スラリサービスタンク及びCWPタンク)で1713.4トンの残留燃料が発生した。これに対して、本実施形態に従って運転停止を行ったところ、燃料保有器全体で312.6トンの残留燃料にすぎなかった。残留燃料の、実に81.8%減少することが出来た。
【0053】
この場合のコスト比較は、種々の要因があり一概には決められないが、粗粉砕炭抜き取り移送費用、スラリ,CWP抜き取り移送費用、スラリ,CWP脱水処理費用を現時点で計算すると、本実施形態に従う運転停止方法によると、一回の運転停止で2〜3千万円のコスト削減が達成できる。
【0054】
(その他)
本発明は、複数工程を経て製造される燃料を使用する火力発電プラントの運転制御に於いて、火力発電プラントの停止の際に、停止時前にはボイラーへの燃料の供給を絶やすことなく、中間工程の残量燃料を最小限にする装置及び方法を提供するものである。
従って、上記実施形態は、本出願人の運用している発電所のPFBC複合発電方式を採用する発電プラントに沿って説明したが、これに限定されるものでない。全ての火力発電プラントに適用される。
【0055】
また、燃料保有器の名称,個数等は、上記実施例の限定されるものでない。ボイラーへの燃料が複数工程を経て製造される火力発電プラントに適用される。
燃料消費時間の計算式、燃料消費時間=(残留燃料)/(燃料流量)に関して、2つの補正事項を挙げたが、これに限定されない。本質的に、この計算式の思想を採用する限り、現実の火力発電プラントに起因する種々の補正がなされても、これらは全て本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載に基づいて決定される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本実施形態の対象となるPFBC複合発電設備を示す図である。
【図2】図2は、図1のPFBC複合発電設備の一部である燃料製造設備を示す図である。
【図3】図3は、火力発電プラントの運転制御システムの内、特に運転停止に関連する部分を簡単に説明する図である。
【図4】図4は、火力発電プラントの運転制御方法の内、特に運転停止に関連する部分を示すフローチャートである。
【図5】図5は、火力発電プラントの停止時の負荷状態を示す図である。
【図6】図6は、各燃料保有器に関して必要な補正を含めて計算された燃料消費計算の計算結果を模式的に示した図である。
【図7】図7は、図6の燃料消費計算結果に基づいて火力発電プラントの運転停止スケジュールを策定する方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
4:加圧流動床ボイラー、5:ガスタービン、6:サイクロン、7:発電機、8:廃熱回収熱交換器、9:バグフィルタ、10:煙突、11:蒸気タービン、12:発電機、20−1,20−2:原炭バンカ、22:原炭供給器、23:粗粉砕機、24:粗粉砕炭コンベア、25:分級機、27:粗粉砕炭コンベア、28:粗粉砕炭コンベア、29:中継ホッパ、31:混練機用給炭機、32:微粉砕機、33:中継タンク、35:スラリ移送ポンプ、36:スラリサービスタンク、37:スラリ供給ポンプ、38:混練機、39:CWP分配コンベヤ、44:石灰石バンカ、40:CWPタンク、41:CWPポンプ、42:CWPノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電プラントの運転を停止する運転制御システムにおいて、
運転停止の際に燃料が残留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器に関して、該保有器内の燃料が実質的に無くなるまでの燃料消費時間を夫々算出し、当該燃料製造工程の上流側の燃料保有器から順に、燃料の供給を停止した後当該燃料保有器の燃料消費時間の経過後に次段階の燃料保有器の燃料の供給を停止する、運転制御システム。
【請求項2】
火力発電プラントの運転を停止する運転制御システムにおいて、
運転停止の際に燃料が残留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器に関して、該保有器内の燃料が実質的に無くなるまでの燃料消費時間を計算する燃料消費計算手段と、
前記燃料保有器の各々に関する前記燃料消費時間に基づいて、前記火力発電プラントの運転を停止する運転停止スケジュールを策定する運転停止スケジュール策定手段と、
前記運転停止スケジュールに沿って、前記火力発電プラントの運転を停止する運転停止手段とを備える、運転制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の運転制御システムにおいて、
前記燃料消費計算手段では、燃料消費時間=(残留燃料)/(燃料流量)から、前記燃料保有器の各々の燃料消費時間が決定される、運転制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の運転制御システムにおいて、
前記残留燃料は、前記燃料保有器の各々の燃料の最低保持量に基づいて補正されている、運転制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載の運転制御システムにおいて、
前記燃料流量は、前記火力発電プラントの停止時の負荷低減特性に基づいて補正されている、運転制御システム。
【請求項6】
請求項2に記載の運転制御システムにおいて、
前記運転停止スケジュール策定手段は、前記燃料保有器の各々に関して、製造工程の最初の方から順に、当該燃料保有器の燃料消費時間経過時に残留燃料は消費されたものとしてとして該燃料保有器からの燃料の流出を停止する、運転制御システム。
【請求項7】
火力発電プラントの運転を停止する運転制御システムにおいて、
運転停止の際に燃料が停留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器と、
前記燃料保有器の各々に対して設けられた燃料供給停止装置、燃料量センサ及び流量センサと、
前記燃料量センサ及び流量センサから残留燃料データ及び流量データを夫々受け取り、前記燃料供給停止装置に対して前記燃料保有器への燃料供給停止を指令する運転制御装置とを備え、
前記運転制御装置は、前記残留燃料データと前記流量データに基づいて前記燃料保有器の各々の燃料消費時間を決定し、該燃料消費時間に基づいて、運転停止スケジュールを策定する、運転制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載の運転制御システムにおいて、
前記運転制御装置は、前記燃料保有器の各々の燃料消費時間を、燃料消費時間=(残留燃料)/(燃料流量)に基づき決定する、運転制御システム。
【請求項9】
請求項7に記載の運転制御システムにおいて、
前記残留燃料は、前記燃料保有器の各々の燃料の最低保持量に基づいて補正されている、運転制御システム。
【請求項10】
請求項7に記載の運転制御システムにおいて、
前記燃料流量は、前記火力発電プラントの停止時の負荷低減特性に基づいて補正されている、運転制御システム。
【請求項11】
請求項7に記載の運転制御システムにおいて、
前記運転制御装置は、燃料製造工程の後段から前段に向かって各変量保有器の前記燃料消費時間を当てはめて、運転停止スケジュールを策定する、運転制御システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の運転制御システムにおいて、
前記火力発電プラントは、燃料として、石炭、水、石灰石から成るCWPを使用している、運転制御システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の運転制御システムを備えた、火力発電プラント。
【請求項14】
火力発電プラントの運転を停止する運転制御方法において、
運転停止の際に燃料が残留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器に関して、該保有器内の燃料が実質的に無くなるまでの燃料消費時間を計算し、
前記燃料保有器の各々に関する前記燃料消費時間に基づいて、前記火力発電プラントの運転を停止する運転停止スケジュールを策定し、
前記運転停止スケジュールに沿って、前記火力発電プラントの運転を停止する、運転制御方法。
【請求項15】
運転制御装置によって火力発電プラントの運転を停止する運転制御方法において、
運転停止の際に燃料が停留するおそれのある、燃料製造工程の複数個の燃料保有器の各々に対して、燃料供給停止装置、燃料量センサ及び流量センサが設けられ、
前記運転制御装置は、
前記燃料量センサ及び流量センサから残留燃料データ及び流量データを夫々受け取り、
前記残留燃料データと前記流量データに基づいて前記燃料保有器の各々の燃料消費時間を決定し、
前記燃料消費時間に基づいて、運転停止スケジュールを策定し、
前記燃料供給停止装置に対して、前記燃料保有器への燃料供給停止を指令する、
運転制御方法。
【請求項16】
請求項15に記載の火力発電プラントの運転を停止する運転制御方法を規定した、コンピュータにより読取り且つ実行可能なプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載したプログラムを記録した記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−70872(P2006−70872A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258357(P2004−258357)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】