説明

火力発電プラント,蒸気タービン設備、およびその制御方法

【課題】蒸気タービンの部分負荷時においても二酸化炭素分離回収装置の要求圧力を満足し、運転を維持する。
【解決手段】化石燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ1と、ボイラ1で発生した蒸気によって駆動する高圧タービン3,中圧タービン7、および低圧タービン10を有する蒸気タービンと、ボイラ1から排出されたボイラ排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させて回収する吸収塔24と、吸収塔24との間で吸収液を循環させて二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化酸素を分離する再生塔21と、高圧タービン3と中圧タービン7から取り出した蒸気を再生塔21の吸収液加熱器18に供給する蒸気系統と、該蒸気系統に設けられ、蒸気タービンの部分負荷運転時に、吸収液加熱器が要求する蒸気圧を満たすように、吸収液加熱器に蒸気を供給する蒸気供給源を高圧タービンと中圧タービンとの間で切替える蒸気供給源切替手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラント、特に二酸化炭素分離回収装置を備えた化石燃料焚き火力発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素分離回収装置を備えた化石燃料焚き火力発電システムとしては、例えば石炭焚ボイラの燃焼排ガスから二酸化炭素吸収液を用いて二酸化炭素を分離し回収する装置(PCC:Post Combustion CO2 Capture)を備えたシステムがある。このシステムの従来例としては、高圧タービン,中圧タービン、及び低圧タービンを有する蒸気タービンと、これらを駆動する蒸気を生成するためのボイラと、二酸化炭素吸収液を用いてボイラの燃焼排ガスから二酸化炭素を吸収除去する二酸化炭素吸収塔と、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液を再生するための再生塔と、再生塔に二酸化炭素を吸収液から分離するための加熱源を供給する吸収液加熱器(リボイラ)とを有するものがある。
【0003】
一般的に従来のボイラの排ガス中から二酸化炭素を回収する二酸化炭素分離回収装置では、吸収液循環ポンプを駆動して二酸化炭素吸収液を吸収塔と再生塔との間で循環させ、吸収塔にてボイラ排ガスに含まれた二酸化炭素を吸収液に吸収させ、再生塔でこの吸収液に吸収した二酸化炭素を分離して回収している。再生塔で吸収液から二酸化炭素を分離する熱源には、吸収液加熱器から送られた蒸気が用いられており、吸収液加熱器の加熱源には、高圧,中圧タービンから取り出した蒸気の一部が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4274846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来技術のように、蒸気タービンから再生塔の吸収液加熱器へ加熱源である蒸気を供給するシステム提案はされている。しかしながら従来の技術では以下のような課題がある。
【0006】
火力発電プラントは、電力需要の変動に対応できるという特徴がある。電力需要の減少等により火力発電プラントが部分負荷になると、ボイラから供給される蒸気圧力が低くなるため、プラント各部の圧力が設計点に対して低くなる。そのため、蒸気タービンから再生塔の吸収液加熱器へ供給する蒸気についても、必要となる圧力(約0.4MPa)を確保できなくなる場合がある。
【0007】
そこで、本発明では、蒸気タービンの部分負荷運転時においても、蒸気タービンから再生塔の吸収液加熱器へ供給する蒸気圧が二酸化炭素分離回収装置の要求圧力を満足でき、二酸化炭素分離回収装置の運転を維持できる火力発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の火力発電プラントは、化石燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、該ボイラで生成した蒸気によって駆動する高圧タービン,中圧タービン、および低圧タービンを有する蒸気タービンと、ボイラから排出されたボイラ排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させて回収する吸収塔と、該吸収塔との間で吸収液を循環させて二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化酸素を分離する再生塔と、該再生塔に二酸化炭素を吸収液から分離するための加熱源を供給する吸収液加熱器と、高圧タービンおよび中圧タービンから取り出した蒸気を吸収液加熱器に供給する蒸気系統と、該蒸気系統に設けられ、蒸気タービンの部分負荷運転時に、吸収液加熱器が要求する蒸気圧を満たすように、吸収液加熱器に蒸気を供給する蒸気供給源を高圧タービンと中圧タービンとの間で切替える蒸気供給源切替手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蒸気タービンの部分負荷運転時においても、蒸気タービンから再生塔の吸収液加熱器へ供給する蒸気圧が二酸化炭素分離回収装置の要求圧力を満足でき、二酸化炭素分離回収装置の運転を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る二酸化炭素分離回収装置を備えた火力発電プラントの概略システム構成図である。
【図2】二酸化炭素分離回収装置の必要圧力と蒸気タービンからの送気圧力の関係を説明した説明図である。
【図3】クロスオーバ管に圧力調節弁非設置の場合の二酸化炭素分離回収装置を備えた火力発電プラントの概略システム構成図である。
【図4】図3に示した火力発電プラントのプラント出力,効率の偏差特性を説明した説明図である。
【図5】クロスオーバ管に圧力調節弁を設置した場合のプラント出力,効率の偏差特性を説明した説明図である。
【図6】クロスオーバ管に圧力調節弁を設置した場合の二酸化炭素分離回収装置を備えた火力発電プラントの概略システム構成図である。
【図7】図1に示した本発明の実施例に係る火力発電プラントのプラント出力,効率の偏差特性を説明した説明図である。
【図8】クロスオーバ管に設置した圧力調節弁及び抽気蒸気管に設置した圧力調節弁の開度制御の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、以下図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に本実施例の二酸化炭素分離回収装置を備えた火力発電プラントの概略システム構成図を示す。
【0013】
蒸気タービン設備100について説明する。図1に示したように、蒸気タービン設備100は、化石燃料を焚いて蒸気を生成するボイラ1と、ボイラ1で生成した蒸気で回転駆動する高圧タービン3,中圧タービン7、および低圧タービン10とを有する蒸気タービンと、蒸気タービンの回転力を電力に変換する発電機12と、蒸気タービンを回転駆動した蒸気を凝縮して復水化させる復水器11と、復水器11で復水化した給水をボイラ1に送る給水系統13とを備える。
【0014】
ボイラ1は、化石燃料を燃焼させて得た熱で復水器11から供給された給水を加熱し、高温高圧の蒸気を生成する。ボイラ1で生成された蒸気は、主蒸気管2を流下して高圧タービン3に送られ、高圧タービン3で動力を発生して減圧される。高圧タービン3を駆動した蒸気は、高圧タービン排気管4,低温再熱蒸気管5を流下してボイラ1に再度戻され、ボイラ1で再度加熱されて高温再熱蒸気となる。ボイラ1で再度加熱された再熱蒸気はボイラ1から高温再熱蒸気管6を流下して中圧タービン7に送られ、中圧タービン7で動力を発生して減圧される。中圧タービン7を駆動した蒸気は、中圧タービン7と低圧タービン10とを結ぶ連絡管であるクロスオーバ管9を流下して低圧タービン10に送られ、低圧タービン10で動力を発生し、さらに減圧される。低圧タービン10を駆動した蒸気は、復水器11に送られ、復水器11で冷却されて凝縮し、復水される。復水器11で復水化された復水は、給水として給水系統13を流下し、再びボイラ1に供給される。
【0015】
高圧タービン3,中圧タービン7,低圧タービン10、および発電機12はタービンロータ41を介して接続されており、高,中,低圧タービンの各動力が、タービンロータ41を介して発電機12に伝えられ電力として取り出される。
【0016】
次に、二酸化炭素分離回収装置200について説明する。図1に示したように、二酸化炭素分離回収装置200は、蒸気タービン設備100のボイラ1から排出されたボイラ排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液で吸収する吸収塔24と、吸収塔24で二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を分離する再生塔21と、蒸気を生成して吸収液から二酸化炭素を分離するための熱源として再生塔21に供給する吸収液加熱器18とを備える。
【0017】
ボイラ1は、石炭等の化石燃料を燃焼させた際に、二酸化炭素を含んだボイラ排ガスを発生させる。ボイラ1で発生したボイラ排ガスは、ボイラ1からボイラ排ガス管34を流下してボイラ排ガス昇圧ファン35に送られ、昇圧される。ボイラ排ガス昇圧ファン35で昇圧したボイラ排ガスは、ボイラ排ガス冷却器36に送られて冷却された後、吸収塔24に送られる。
【0018】
吸収塔24に送られたボイラ排ガスは、吸収塔24内で二酸化炭素を吸収液に吸収され、二酸化炭素を含まない処理ガスとなる。処理ガスは、吸収塔24から吸収塔出口ボイラ排ガス管39を流下して煙突40に送られ、煙突40から大気に排出される。
【0019】
一方、ボイラ1から送られたボイラ排ガスのうち、二酸化炭素分離回収過程を経ないボイラ排ガスは、ボイラ排ガス昇圧ファン35の上流でボイラ排ガス管34から分岐したバイパスガス管38を流下し、吸収塔出口ボイラ排ガス管39に合流し、煙突40に導かれる。バイパスガス管38には、バイパスガス管38の流量を制御するバイパスバタフライ弁37が設けられている。バイパスバタフライ弁37の開度を制御することにより、二酸化炭素分離回収装置200をバイパスするボイラ排ガスの流量を制御する。
【0020】
吸収塔24内でボイラ排ガスに含まれた二酸化炭素を吸収して、二酸化炭素を多く含んだリッチ吸収液は、リッチ吸収液移送ポンプ25に送られ昇圧された後、吸収液熱交換器26に送られ、約100℃程度まで加熱される。吸収液熱交換器26で加熱されたリッチ吸収液は、再生塔21に送られ、再生塔21内でさらに約120℃〜130℃程度まで加熱され、ボイラ排ガスから吸収した二酸化炭素を分離する。
【0021】
リッチ吸収液から分離された二酸化炭素は、再生塔21から出口ガス冷却器29に送られ、冷却される。再生搭出口ガス冷却器29で冷却された二酸化炭素は、リフラックスドラム30に送られ、ガス中に含まれる水分が分離される。リフラックスドラム30内で水分が分離された二酸化炭素は、二酸化炭素排気管を流下して二酸化炭素の液化貯留設備(図示せず)に供給される。
【0022】
リフラックスドラム30内で二酸化炭素分離回収装置200から分離された水分は、リフラックスドラム30からリフラックスドラム水回収ポンプ31に送られて昇圧され、再生塔21に戻される。
【0023】
再生塔21内の吸収液の一部は、再生塔内吸収液抜き出し管22を通じて抜き出され、二酸化炭素分離回収装置の吸収液加熱器18に送られる。再生塔21の吸収液加熱器18に送られた吸収液は、吸収液加熱器18内で加熱されて蒸気となる。二酸化炭素分離回収装置の吸収液加熱器18内で蒸気となった吸収液は、二酸化炭素分離回収装置200の吸収液加熱器出口蒸気配管23を流下して再生塔21に戻され、リッチ吸収液の加熱源として用いられる。
【0024】
吸収液加熱器18には、高圧タービン3から排出された蒸気、および中圧タービン7から抽気された抽気蒸気が加熱源として供給されており、吸収液加熱器18内において、供給された抽気蒸気で吸収液を加熱し、蒸気を発生させる。
【0025】
再生塔21内で二酸化炭素を分離した吸収液は、再生塔21から吸収液熱交換器26に送られ、吸収液熱交換器26内でリッチ吸収液と熱交換して冷却される。吸収液熱交換器26内で冷却された吸収液は、リーン吸収液移送ポンプ27に送られて昇圧され、リーン吸収液冷却器28に送られる。リーン吸収液冷却器28に送られた吸収液は、冷却された後、吸収塔24に戻される。このように二酸化炭素分離回収装置200は、吸収液が吸収塔24と再生塔21との間を循環するように構成されている。
【0026】
高圧タービン3および中圧タービン7から取り出した蒸気を吸収液加熱器18に供給する蒸気系統について説明する。この蒸気系統は、高圧タービン排気管4と吸収液加熱器18とを接続する抽気蒸気管14と、抽気蒸気管14と中圧タービン7とに接続する中圧タービン排気管8とを有する。
【0027】
高圧タービン3から排出された蒸気をボイラ1に供給する高圧タービン排気管4は低温再熱蒸気管5に接続するとともに、抽気蒸気管14に分岐している。抽気蒸気管14は、さらに途中で分岐し、分岐した一方が吸収液加熱器18に、他方はリクレーマ19に接続している。抽気蒸気管14の吸収液加熱器18側へ分岐した蒸気管には蒸気圧力制御弁32が、抽気蒸気管14のリクレーマ19側へ分岐した蒸気管には蒸気圧力制御弁33がそれぞれ設けられている。
【0028】
また、中圧タービン7から抽気された蒸気の一部は、中圧タービン排気管8を流下して抽気蒸気管14に合流し、吸収液加熱器18およびリクレーマ19に送られる。
【0029】
次に、蒸気タービンの部分負荷運転時に、吸収液加熱器18が要求する蒸気圧を満たすように、吸収液加熱器18に蒸気を供給する蒸気供給源を高圧タービン3と中圧タービン7との間で切替える蒸気供給源切替手段について説明する。この蒸気供給源切替手段は、抽気蒸気管14に設けられた第1抽気蒸気切替弁17と、中圧タービン排気管8に設けられた第2抽気蒸気切替弁45とを有する。
【0030】
抽気蒸気管14には、中圧タービン排気管8との合流点の蒸気流れ方向上流側に吸収液加熱器18へ送気する抽気蒸気の圧力を調整する圧力調節弁16と、吸収液加熱器18へ抽気蒸気を送る加熱源を切替えるための第1抽気蒸気切替弁17とが設けられている。蒸気タービンの部分負荷運転時に、吸収液加熱器18が要求する蒸気圧を満たすように、第1抽気蒸気切替弁17と中圧タービン排気管8に設けられた第2抽気蒸気切替弁45の開度制御により、吸収液加熱器18へ抽気蒸気を送る加熱源を高圧タービン3の排気と中圧タービン7の排気との間で切替える。例えば、中圧タービン7から供給する場合は、第1抽気蒸気切替弁17を閉じ、第2抽気蒸気切替弁45を開く。また、高圧タービン3から供給する場合は、第1抽気蒸気切替弁17を開き、第2抽気蒸気切替弁45を閉じる。
【0031】
次に、中圧タービン7から吸収液加熱器18へ向かって蒸気系統を流下する蒸気の圧力を調節する圧力調節手段について説明する。この圧力調節手段として、クロスオーバー管9に圧力調整弁15が設けられている。この圧力調整弁15の開度を絞ることで、上流側の中圧タービン7の抽気蒸気の圧力を高めることができる。そこで、圧力調整弁15は、蒸気タービンの部分負荷運転時に、中圧タービン7から吸収液加熱器18へ向かって蒸気系統を流下する蒸気の圧力が吸収液加熱器18が要求する蒸気圧を満たすように開度を制御される。
【0032】
図2に二酸化炭素分離回収装置200の吸収液加熱器18が二酸化炭素を分解するための必要圧力と蒸気タービン設備100側から二酸化炭素分離回収装置200へ送気する蒸気圧力との関係を示す。
【0033】
二酸化炭素分離回収装置200の要求圧力はプラント負荷に依らずほぼ一定である。しかし、蒸気タービン設備100側からの送気蒸気の圧力はプラント負荷に追従し変化する。そのため、蒸気タービンが部分負荷になると送気圧力が二酸化炭素分離回収装置200の必要圧力を下回る場合がある。このときのプラント負荷を切替負荷と呼ぶことにする。
この切替負荷では、蒸気タービン設備100側から二酸化炭素分離回収装置200への送気圧力が不足する。一方、再生塔21内で吸収液から二酸化炭素を分離するため、吸収液加熱器18が要求する蒸気圧力は一定に定まっている。従って、そのままでは二酸化炭素分離回収装置200の運転を維持できなくなる。
【0034】
より具体的には、切替負荷よりも高負荷帯では、中圧タービン7から抽気した蒸気を二酸化炭素分離回収装置200へ供給する。しかしながらプラント負荷が低下していくと中圧タービン7の抽気蒸気圧が二酸化炭素分離回収装置200の要求値を満たさなくなる。そこで、二酸化炭素分離回収装置200への蒸気供給源を中圧タービン7の抽気蒸気から、より高圧側の高圧タービン3から取り出した蒸気に切替える。この切替制御により、蒸気タービンの部分負荷運転時においても、二酸化炭素分離回収装置の要求圧力を満足し、二酸化炭素分離回収装置の運転を維持することができる。
【0035】
図3に、クロスオーバ管9に圧力調節弁15を設置しない場合の二酸化炭素分離回収装置を備えた火力発電プラントの概略システム構成図を示す。図4に、図3に示したクロスオーバ管9に圧力調節弁15を設置しない場合の二酸化炭素分離回収装置を備えた火力発電プラントのプラント出力,効率の偏差特性を示す。図4において、横軸はプラント負荷を表し、縦軸は、定格負荷時の出力,効率をプラスマイナス0%とした時の各負荷における出力,効率の偏差の割合を表したものであり、縦軸下方ほど、定格負荷時から出力,効率が落ちている、即ち偏差が大きいことを表す。以下、図5,図7も同様である。
【0036】
図4に示すように、切替負荷より大きい高負荷帯においては、中圧タービン7から取り出した蒸気を中圧タービン排気管8から抽気蒸気管14を介して二酸化炭素分離回収装置200へ送気する。切替負荷より小さい負荷帯においては、高圧タービン3の排気を低温再熱蒸気管5から抽気蒸気管14を介して二酸化炭素分離回収装置200へ送気する。切替負荷の前後で出力・効率の偏差が大きく変動しているのは、二酸化炭素分離回収装置200への送気蒸気供給源を中圧タービン排気管8から低温再熱蒸気管5へと切替えたため、下流側の中圧タービンの仕事量が減り、中圧タービン7での発電量が減少するためである。
【0037】
図5にクロスオーバ管9に圧力調節弁15を設置した場合の二酸化炭素分離回収装置を備えた火力発電プラントのプラント出力,効率の偏差特性を示す。
【0038】
図5からわかるように、図3,図4に示したクロスオーバ管9に圧力調節弁15を設置しない場合と比較すると中間負荷帯での出力,効率の偏差が小さくなる。送気蒸気の供給源が中圧タービン排気管8の場合は、中圧タービン7で発電後の蒸気を二酸化炭素分離回収装置200へ送気する。そのため、低温再熱蒸気管5から蒸気を二酸化炭素分離回収装置200へ送気する場合に比べ、中圧タービン7での仕事が多いため出力,効率の偏差が小さくなる。しかし、低負荷帯においては、低温再熱蒸気管5から送気する場合の方が出力,効率の偏差が小さくなる。
【0039】
そこで低負荷帯では、図4に示す特性を採用するとプラント出力及び効率の偏差が小さくなる。つまり、図4及び図5を組み合わせた図7を採用することにより切替負荷を下げることが可能となり、プラント出力及び効率の低下を防止することができる。なお図7において、本実施例の出力・効率の偏差特性を実線にて示す。元々の切替負荷より大きい高負荷帯では、クロスオーバ管9に設置した圧力調節弁15の開度を全開とし中圧タービン排気管8から送気する。次に、クロスオーバ管9に設置した圧力調節弁15を絞り操作することで、上流側の中圧タービン排気管8を流下する抽気蒸気の圧力低下を小さくできることを利用し、中間負荷帯では、クロスオーバ管9に設置した圧力調節弁15の開度を制御しながら(絞り有)、二酸化炭素分離回収装置200が要求する送気圧力を維持し、中圧タービン排気管8から二酸化炭素分離回収装置200へ送気する。さらに低負荷帯では、クロスオーバ管9に設置した圧力調節弁15を全開とし、蒸気供給源切替手段である第1抽気蒸気切替弁17と、第2抽気蒸気切替弁45とを用いて送気蒸気供給源を高圧タービン3側の低温再熱蒸気管5へ切替える。
【0040】
クロスオーバ管9に中圧タービン7から吸収液加熱器18へ向かって蒸気系統を流下する蒸気の圧力を調節する圧力調節手段として圧力調節弁15を設けたことにより、切換負荷を下げることができる。切換負荷が下がるので、中間負荷帯での中圧タービンでの発電量が増大するため、従来よりも出力・効率の偏差を小さくできる。
【0041】
尚、低温再熱蒸気管5と二酸化炭素分離回収装置200との連絡管である抽気蒸気管14に設置した圧力調節弁16の開度は、二酸化炭素分離回収装置200側の必要圧力を満たすように圧力調節弁16の開度の制御をする(絞り有)。
【0042】
図8にクロスオーバ管9に設置した圧力調節弁15、低温再熱蒸気管5に設置した圧力調節弁16及び第1抽気蒸気切替弁17の開度特性を示す。表1に図8の弁の開度特性をまとめた表を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
定格負荷運転時等の高負荷帯においては、圧力調節弁15を全開とし、圧力調節弁16及び第1抽気蒸気切替弁17を全閉とする。中間負荷帯においては、圧力調節弁15の開度を絞る開度制御を行い、圧力調節弁16及び第1抽気蒸気切替弁17を全閉とする。尚、圧力調節弁15の上流側のクロスオーバ管9には圧力計42が設けられており、圧力調節弁15の開度の制御は、二酸化炭素分離回収装置200の必要圧力を検知しつつ、圧力計42で検知した圧力値を用いて前圧制御する。低負荷帯においては、圧力調節弁15及び第1抽気蒸気切替弁17を全開とし、圧力調節弁16の開度制御を行う。抽気蒸気管14の圧力調節弁16の下流側には圧力計43が設けられており、低温再熱蒸気管5の圧力調節弁16は、圧力計43で検知した圧力値を用いて後圧制御する。尚、二酸化炭素分離回収装置200への送気蒸気供給源の切替及び低温再熱蒸気管5の第1抽気蒸気切替弁17の開条件は、クロスオーバ管9に設置している圧力調節弁15の圧力設定値が二酸化炭素分離回収装置200への送気蒸気圧力設定値を下回った時とする。
【0045】
本実施例によれば、二酸化炭素分離回収装置200の吸収液加熱器18へ供給する蒸気の供給源を、中圧タービンと高圧タービンとの間で切替える切替負荷を従来より低負荷帯に移動させることができるため、中圧タービンの発電量を増やすことができる。そのため、プラントが部分負荷時において二酸化炭素分離回収装置200への必要圧力を確保しつつプラント出力及び効率の低下防止を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ボイラ
2 主蒸気管
3 高圧タービン
4 高圧タービン排気管
5 低温再熱蒸気管
6 高温再熱蒸気管
7 中圧タービン
8 中圧タービン排気管
9 クロスオーバ管
10 低圧タービン
11 復水器
12 発電機
13 給水系統
14 抽気蒸気管
15,16 圧力調節弁
17 第1抽気蒸気切替弁
18 吸収液加熱器
19 リクレーマ
20 加熱蒸気ドレン管
21 再生塔
22 再生塔内吸収液抜き出し管
23 二酸化炭素分離回収装置の吸収液加熱器出口蒸気配管
24 吸収塔
25 リッチ吸収液移送ポンプ
26 吸収液熱交換器
27 リーン吸収液移送ポンプ
28 リーン吸収液冷却器
29 再生塔出口ガス冷却器
30 リフラックスドラム
31 リフラックスドラム水回収ポンプ
32,33 蒸気圧力制御弁
34 ボイラ排ガス管
35 ボイラ排ガス昇圧ファン
36 ボイラ排ガス冷却器
37 バイパスバタフライ弁
38 バイパスガス管
39 吸収塔出口ボイラ排ガス管
40 煙突
41 タービンロータ
42,43 圧力計
45 第2抽気蒸気切替弁
100 蒸気タービン設備
200 二酸化炭素分離回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、該ボイラで生成した蒸気によって駆動する高圧タービン,中圧タービン、および低圧タービンを有する蒸気タービンと、前記ボイラから排出されたボイラ排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させて回収する吸収塔と、該吸収塔との間で吸収液を循環させて二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化酸素を分離する再生塔と、該再生塔に二酸化炭素を吸収液から分離するための加熱源を供給する吸収液加熱器と、前記高圧タービンおよび前記中圧タービンから取り出した蒸気を前記吸収液加熱器に供給する蒸気系統と、該蒸気系統に設けられ、前記蒸気タービンの部分負荷運転時に、前記吸収液加熱器が要求する蒸気圧を満たすように、前記吸収液加熱器に蒸気を供給する蒸気供給源を前記高圧タービンと前記中圧タービンとの間で切替える蒸気供給源切替手段とを備えることを特徴とする火力発電プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の火力発電プラントにおいて、
前記中圧タービンから排出された蒸気を前記低圧タービンへ供給する配管に設けられ、前記中圧タービンから前記吸収液加熱器へ向かって前記蒸気系統を流下する蒸気の圧力を調節する圧力調節手段とを備えることを特徴とする火力発電プラント。
【請求項3】
請求項2に記載の火力発電プラントにおいて、
前記圧力調節手段は、前記蒸気タービンの部分負荷運転時に、前記中圧タービンから前記吸収液加熱器へ向かって前記蒸気系統を流下する蒸気の圧力が前記吸収液加熱器が要求する蒸気圧を満たすように開度を制御される圧力調節弁であることを特徴とする火力発電プラント。
【請求項4】
請求項1または3に記載の火力発電プラントにおいて、
前記蒸気供給源切替手段は、前記中圧タービンから前記吸収液加熱器へ供給する蒸気の圧力が前記吸収液加熱器が要求する蒸気圧以下である場合に、前記吸収液加熱器へ蒸気を供給する蒸気供給源を前記中圧タービンから前記高圧タービンへ切替える切替弁であり、
前記蒸気系統に、前記高圧タービンから前記吸収液加熱器へ供給する蒸気の圧力が前記吸収液加熱器が要求する蒸気圧を満たすように開度を制御される圧力調節弁を設けたことを特徴とする火力発電プラント。
【請求項5】
化石燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、
前記ボイラで生成した蒸気によって駆動する高圧タービン,中圧タービン、および低圧タービンを有する蒸気タービンと、
前記ボイラから排出されたボイラ排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させて回収する吸収塔と、該吸収塔との間で吸収液を循環させて二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化酸素を分離する再生塔と、該再生塔に吸収液から二酸化炭素を分離させるための加熱源を供給する吸収液加熱器とを有する二酸化炭素分離回収装置と、
前記高圧タービン、および前記中圧タービンから取り出した蒸気を前記吸収液加熱器に供給する蒸気系統と、
を備えた火力発電プラントの制御方法であって、
前記中圧タービンから前記吸収液加熱器へ供給する蒸気の圧力が前記吸収液加熱器が要求する蒸気圧以下の場合に、前記吸収液加熱器へ蒸気を供給する蒸気供給源を前記中圧タービンから前記高圧タービンへ切替えることを特徴とする火力発電プラントの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の火力発電プラントの制御方法において、
前記蒸気タービンは、前記中圧タービンから排出された蒸気を前記低圧タービンへ供給する配管に設けられた圧力調節弁を有し、
前記蒸気タービンの部分負荷運転時に、前記中圧タービンから前記蒸気系統を流下して前記吸収液加熱器へ供給される蒸気の圧力が前記吸収液加熱器が要求する蒸気圧を満たすように前記圧力調節弁の開度を制御することを特徴とする火力発電プラントの制御方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の火力発電プラントの制御方法において、
前記高圧タービンから前記吸収液加熱器へ供給する蒸気の圧力が前記吸収液加熱器が要求する蒸気圧を満たすように前記蒸気系統に設けられた圧力調節弁の開度を制御することを特徴とする火力発電プラントの制御方法。
【請求項8】
化石燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、該ボイラで生成した蒸気によって駆動する高圧タービン,中圧タービン、および低圧タービンを有し、前記ボイラから排出された排ガスから二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離回収装置に前記高圧タービンおよび前記中圧タービンから蒸気を供給する蒸気タービンと、該蒸気タービンの部分負荷運転時に、前記二酸化炭素分離回収装置が要求する蒸気圧を満たすように、前記二酸化炭素分離回収装置に蒸気を供給する蒸気供給源を前記高圧タービンと前記中圧タービンとの間で切替える蒸気供給源切替手段とを備えたことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項9】
請求項8に記載の蒸気タービン設備において、
前記中圧タービンから排出された蒸気を前記低圧タービンへ供給する配管に設けられ、前記中圧タービンから前記二酸化炭素分離回収装置に供給する蒸気の圧力を調節する圧力調節手段とを備えたことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項10】
請求項9に記載の蒸気タービン設備において、
前記圧力調節手段は、前記蒸気タービンの定格負荷運転時に全開制御され、前記蒸気タービンの部分負荷運転時に前記中圧タービンから前記二酸化炭素分離回収装置へ供給される蒸気の圧力が前記二酸化炭素分離回収装置が要求する蒸気圧を満たすように開度を制御される圧力調節弁であることを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項11】
請求項9または10に記載の蒸気タービン設備であって、
前記蒸気タービン設備は、前記高圧タービン、および前記中圧タービンから取り出した蒸気を前記二酸化炭素分離回収装置に供給する蒸気系統を備え、
前記蒸気供給源切替手段は、前記蒸気系統に設けられ、前記中圧タービンから前記二酸化炭素分離回収装置へ供給する蒸気の圧力が、前記二酸化炭素分離回収装置が要求する蒸気圧以下になった場合に、前記二酸化炭素分離回収装置へ蒸気を供給する蒸気供給源を前記中圧タービンから前記高圧タービンへ切替える切替弁であり、
前記蒸気系統に、前記高圧タービンから前記二酸化炭素分離回収装置へ供給する蒸気の圧力が前記二酸化炭素分離回収装置が要求する蒸気圧を満たすように開度を制御される圧力調節弁を設けたことを特徴とする蒸気タービン設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184712(P2012−184712A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48484(P2011−48484)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】