説明

火力発電プラント

【課題】火力発電プラントの蒸気系統の機器に要求される蒸気の最低流量を確保するとともに、外部に供給する蒸気量の変動に速やかに対応する。
【解決手段】給水ポンプ16と、該給水ポンプから供給される給水を加熱して蒸気を発生するボイラ1と、該ボイラが発生した蒸気により駆動されるタービン(6,7,9)と、前記タービンの抽気蒸気を用いて前記ボイラへの給水を加熱する給水加熱器(17,20)とを有する火力発電プラントにおいて、前記ボイラが発生した蒸気の一部を外部に供給する蒸気供給系統(21,22)と、前記給水加熱器に供給する抽気量を制御する抽気量制御手段(23,24)とを有し、該抽気量制御手段は、前記ボイラから前記タービンに至る蒸気系統を構成する機器の少なくとも一の対象機器の蒸気流量を設定流量以上に保持するように前記抽気量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラントに係り、具体的には発電プラントの外部に一部の蒸気を供給する場合に好適な火力発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火力発電所は、発電を主目的とする場合、熱効率向上のため、再生再熱式のプラント構成が採用されている。すなわち、高圧タービンの排気をボイラに設けた再熱器によって再加熱して中低圧タービンを駆動するようにしている。また、高圧タービンの中段の抽気蒸気または最終段の抽気蒸気を用いてボイラ給水を加熱するようにしている。
【0003】
給水加熱の抽気蒸気量は、高圧タービンの抽気部の圧力、給水量および給水加熱器の出入口温度差により決定される。たとえば、プラントの高負荷帯では、ボイラにおける蒸発量が多く、高圧タービンへの流入蒸気量も多いため、タービン抽気部の圧力も高くなり、タービン抽気量も多くなる。すなわち、給水加熱器への抽気量は、概略プラントの負荷に比例する特性をもっており、その抽気量の制御は、通常行なわれていない。
【0004】
一方、特許文献1には、プラント効率を改善するために、給水ヒータの出口温度と、総燃料量と、発電機の実負荷とにより、給水加熱器への抽気量を調節する技術が開示されている。また、特許文献2には、高速な負荷変化に対応するため、発電指令に基づいて給水加熱器への抽気量を徐々に増減する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2587445号公報
【特許文献2】特開2000−240404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2は、火力発電プラントの蒸気の一部を系外へ供給する場合については配慮されていない。すなわち、系外へ蒸気を供給する場合、その供給量が大きくなると、火力発電プラントを構成する蒸気系統の機器に通流する蒸気量が低減することになる。たとえば、再熱器やタービンなどの蒸気系統の機器は、一般に、それら機器の保護の点から、通流蒸気量の最低値が定められている。したがって、外部へ供給する蒸気量の増大に速やかに対応させるとともに、蒸気系統の機器を保護したいという要請がある。
【0007】
本発明は、火力発電プラントの蒸気系統の機器に要求される蒸気の最低流量を確保するとともに、外部に供給する蒸気量の変動に速やかに対応することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の手段により課題を解決することを特徴とする。
【0009】
本発明の火力発電プラントは、給水ポンプと、該給水ポンプから供給される給水を加熱して蒸気を発生するボイラと、該ボイラが発生した蒸気により駆動されるタービンと、前記タービンの抽気蒸気を用いて前記ボイラへの給水を加熱する給水加熱器とを有する火力発電プラントにおいて、前記ボイラが発生した蒸気の一部を外部に供給する蒸気供給系統と、前記給水加熱器に供給する抽気量を制御する抽気量制御手段とを有し、該抽気量制御手段は、前記ボイラから前記タービンに至る蒸気系統を構成する機器の少なくとも一の対象機器の蒸気流量を設定流量以上に保持するように前記抽気量を制御することを特徴とする。
【0010】
これにより、外部へ供給する蒸気量を増大させても、ボイラからタービンに至る蒸気系統を構成する機器に流れる蒸気流量を設定流量(たとえば、最低流量)以上に保持できるから、それらの機器を保護することができる。
【0011】
本発明は、タービンが高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンを含んで構成される火力発電プラントにも適用できる。この場合、蒸気量の保護対象の機器を中低圧タービンとすると、中圧タービンボール部の蒸気圧を検出する圧力センサの検出圧力が設定値になるように、抽気量を制御する。すなわち、中圧タービンボール部の蒸気圧は通流する蒸気量に相関するから、ボール部蒸気圧の設定値を中圧タービンに要求される最低流量に基づいて設定することにより、中低圧タービンの湿り度を低下させて、中低圧タービンを保護することができる。
【0012】
ここで、給水加熱に用いるタービンの抽気蒸気は、高圧タービンの中段および高圧タービン最終段(排気)のいずれか一方又は双方を用いることができる。
【0013】
また、高圧タービンの排気をボイラの内部に設けられた再熱器を介して中圧タービンに供給する再熱系を設け、再熱器の上流側から給水加熱用の蒸気を抽気することができる。
【0014】
また、外部へ蒸気を供給する系統は、再熱器の上流側と下流側との何れか一方から蒸気を抜き出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、火力発電プラントの蒸気系統を構成する機器に要求される蒸気の最低流量を確保し、外部に供給する蒸気量の変動に速やかに対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1に本発明の一実施形態である火力発電プラントの系統構成図を示す。図示のように、火力発電プラントは、給水ポンプ16から高圧給水加熱器17,20を介して供給される給水を加熱して蒸気を発生するボイラ1と、ボイラ1が発生した蒸気により駆動される高圧タービン3、中圧タービン7および低圧タービン9と、これらのタービンに連結された発電機34とを有している。
【0017】
ボイラ1は、供給された給水を加熱して主蒸気2を発生する。主蒸気2は、主蒸気流量計31を介して、高圧タービン3に供給される。高圧タービン3を駆動して排気される最終段の排気蒸気は、低温再熱蒸気4としてボイラ1の内部に設けられた再熱器5に供給される。再熱器5によって再加熱された高温再熱蒸気6は、中圧タービン7に供給される。中圧タービン7を駆動して排出される排気蒸気は、低圧タービン9に供給される。低圧タービン9を駆動した排気蒸気は復水器8に導かれる。
【0018】
復水器8は、低圧タービン9から排出される排気蒸気を冷却水10により冷却して復水11を生成する。復水11は、復水ポンプ12により低圧給水加熱器14を介して脱気器15に供給される。脱気器15には、中圧タービン7の排気蒸気が供給されており、この熱により復水に含まれる酸素を取り除くようになっている。脱気器15から排出される給水は、給水ポンプ16により高圧給水加熱器17,20を介してボイラ1に供給されるようになっている。
【0019】
高圧給水加熱器17,20および低圧給水加熱器14は、内部に通流される給水を抽気蒸気を用いて加熱するものである。熱交換により凝縮した抽気蒸気の凝縮水は給水加熱器下部からドレイン水として排出されるように構成されている。そのドレイン水は脱気器15に供給されて、給水に戻されるようになっている。
【0020】
高圧給水加熱器17に供給される蒸気は、高圧タービン3の排気の一部が抽気制御弁24を介して抽気されている。高圧給水加熱器20に供給される蒸気は、高圧タービン3の中段から抽気制御弁23を介して抽気されている。
【0021】
本実施形態の特徴構成である外部への蒸気供給系統は、高温再熱蒸気6から分岐して外部へ供給するように構成されている。すなわち、蒸気供給系統は、再熱器5の下流側から分岐して減圧弁21および減温器22を介して外部に所望の圧力および温度の蒸気を供給するようになっている。一方、本実施形態の他の特徴構成である抽気蒸気制御手段は、中圧タービン7に供給される蒸気の流量が設定流量以上になるように抽気制御弁23,24を制御するものであり、中圧タービンボール部に設けられた圧力発信器30、高圧給水加熱器17,20に設けられた圧力コントローラ28,29、高圧給水加熱器17,20に設けられた胴体圧力発信器26,27等から構成されている。
【0022】
このように構成される火力発電プラントの動作について、発電単独運転時と、系外への蒸気供給運転時とに分けて説明する。まず、発電単独運転時は、従来と同様、熱効率向上のために、抽気制御弁23,24を全開運用とする。一方、系外への蒸気供給運転時には、蒸気の流量と蒸気の圧力とは相関関係があるので、圧力センサである圧力発信器30が中圧タービン7のボール部蒸気圧を検出して、そのボール部蒸気圧が設定値以上になるように抽気制御弁23,24を制御する。
【0023】
次に、図2のロジック図を参照して抽気制御弁23,24の制御を詳細に説明する。まず、中圧タービンボール部に設けられた圧力発信器30の検出圧力は、関数発生器FG1,FG2を介して、高圧給水加熱器17,20内部の抽気蒸気圧力である器内圧力の設定値P1,P2に換算される。たとえば、外部への蒸気供給増加により中圧タービン7のボール部蒸気圧力が低下した場合には、高圧給水加熱器17,20の器内圧力を低くする設定値に換算される。
【0024】
胴体圧力発信器26,27が検出した高圧給水加熱器17,20の器内圧力は、圧力コントローラ28,29において、関数発生器FG1,FG2によって換算された設定値P1,P2と比較され、圧力コントローラ28,29はその差を低減するように抽気制御弁23,24を制御する。
【0025】
これにより、外部への蒸気供給が増加した場合、抽気制御弁23,24が絞り方向に制御され、速やかに外部蒸気供給量の増加に対応できる。また、本実施の形態によれば、外部へ供給する蒸気量が増大しても、中圧タービン7の蒸気の最低流量が確保されるから、少なくても中圧タービン7を保護できる。
【0026】
また、蒸気供給安定運転中に発電出力または系外への蒸気供給量を増やしたい場合には、圧力発信器30の出力値を手動で下げることができる。これにより抽気制御弁23,24が絞り方向に制御されるから、抽気量が減って、発電出力または、外部への蒸気供給量を増加させることができる。
【0027】
このように、本実施の形態によれば、従来の火力発電設備から外部への蒸気供給を行う場合、給水加熱器への抽気量を制御することにより、蒸気供給量の変動に速やかに対応させることができる。
【0028】
また、図2の波線で示すように、関数発生器FG1,FG2により換算される設定値P1,P2は、中圧タービンボール部の圧力発信器30が検出したボール部蒸気圧力と主蒸気流量計31が検出した主蒸気流量とに基づいて定めることもできる。すなわち、抽気制御弁23,24は、高圧給水加熱器17,20内に抽気される蒸気の圧力が中圧タービンボール部に設けられた圧力発信器30の検出圧力とボイラ1が発生する蒸気の流量とに基づいて制御される。
【0029】
(実施の形態2)
図1に示した実施形態は、外部への蒸気供給を高温再熱蒸気6が通流する高温再熱蒸気系統から取り出したが、低温再熱蒸気4が通流する低温再熱蒸気系統から取り出すことができる。本実施形態の火力発電プラントは、図3の系統構成図に示すように、減圧弁32および減温器33からなる蒸気供給系統が、再熱器5の上流側に設けられ、低温再熱蒸気4を分岐して外部へ供給する構成を有している。なお、図3において、図1の各部に対応する部分には同一の符号を付している。
【0030】
ここで、ボイラ蒸発量一定で運転中、外部への蒸気供給量が増加した場合には、再熱器5および中圧タービン7への流入量が減少し、各機器の最低流量以下となることがある。
【0031】
この場合も、中圧タービンボール部に設けられた圧力発信器30の出力値を用いて抽気制御弁23,24を絞り、再熱器5に流れる再熱蒸気量を増加することにより、外部へ供給する蒸気量が増大しても、再熱器5および中圧タービン7に流れる蒸気の最低流量が確保されるから、各機器を保護できる。
【0032】
また、図1と図3の実施形態を組み合わせても良く、また、低温再熱蒸気4に代えて、高圧タービン3の抽気蒸気19の一部を取り出すようにすることもできる。後者の場合には、抽気制御弁23を制御して低温再熱蒸気4の蒸気量を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態である火力発電プラントの系統構成図である。
【図2】抽気制御弁を制御するロジック図である。
【図3】本発明の他の実施形態である火力発電プラントの系統構成図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ボイラ
2 主蒸気
3 高圧タービン
4 低温再熱蒸気
5 再熱器
6 高温再熱蒸気
7 中圧タービン
8 復水器
9 低圧タービン
14 低圧給水加熱器
17 高圧給水加熱器
18,19 抽気蒸気
20 高圧給水加熱器
21,32 減圧弁
22,33 減温器
23,24 抽気制御弁
26,27 胴体圧力発信器
28,29 圧力コントローラ
30 圧力発信器
31 主蒸気流量計
34 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ポンプと、該給水ポンプから供給される給水を加熱して蒸気を発生するボイラと、該ボイラが発生した蒸気により駆動されるタービンと、前記タービンの抽気蒸気を用いて前記ボイラへの給水を加熱する給水加熱器とを有する火力発電プラントにおいて、
前記ボイラが発生した蒸気の一部を外部に供給する蒸気供給系統と、前記給水加熱器に供給する抽気量を制御する抽気量制御手段とを有し、該抽気量制御手段は、前記ボイラから前記タービンに至る蒸気系統を構成する機器の少なくとも一の対象機器の蒸気流量を設定流量以上に保持するように前記抽気量を制御することを特徴とする火力発電プラント。
【請求項2】
前記タービンは、高圧タービンと中圧タービンとを有し、
前記対象機器は、前記中圧タービンであり、
前記抽気量制御手段は、前記中圧タービンのボール部の蒸気圧を検出する圧力センサの検出圧力が設定値になるように、前記抽気量の流量制御弁を制御することを特徴とする請求項1に記載の火力発電プラント。
【請求項3】
前記高圧タービンの排気を前記ボイラの内部に設けられた再熱器を介して前記中圧タービンに供給する再熱系を備え、
前記抽気蒸気は、前記再熱器の上流側から抽気されることを特徴とする請求項2に記載の火力発電プラント。
【請求項4】
前記蒸気供給系統は、前記再熱器の上流側と下流側との何れか一方から蒸気を抜き出して外部に供給することを特徴とする請求項3に記載の火力発電プラント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−63886(P2006−63886A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247169(P2004−247169)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)