説明

火工術解錠装置

【課題】 安価に製造及び組立て可能で小さい構造空間及び高い機能性を持つ火工術始動装置を持つ高速解錠装置を提供する。
【解決手段】 火工術解錠装置が、空所(2)を持つハウジング(1)を有し、空所(2)内にピストン(3)が移動可能に保持され、空所に設けられる点火素子(10)の点火の際発生するガスにより、ピストン(3)が初期位置即ち不動作位置から終端位置へ運動可能であり、ピストン(3)のピストン棒(4)が、不動作位置で機能素子(6)を拘束しかつ終端位置で機能素子(6)を釈放する。本発明によりハウジング(1)が、一体な構成部分として、解錠装置を自動車に取付けるための部分(7)と、少なくとも1つの鎖錠手段(5)用の少なくとも1つの支持個所(21)を持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火工術解錠装置であって、空所を持つハウジングを有し、空所内にピストンが移動可能に保持され、空所に設けられる点火素子の点火の際発生するガスにより、ピストンが初期位置即ち不動作位置から終端位置へ運動可能であり、ピストンのピストン棒が、ピストンの終端位置への途中又は終端位置で、1つの過程を開始し、その際ピストン棒が、不動作位置で機能素子を拘束しかつ終端位置で機能素子を釈放する鎖錠手段に作用して、これを終端位置において解錠するものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような火工術操作器はドイツ連邦共和国特許第10203710号明細書に記載されている。この刊行物に記載されている特徴は、本発明の対象にも該当する限り、使用することができる。
【0003】
このような火工術操作器は、通常状態では鎖錠されており、緊急の場合例えば事故の場合強制的に解錠される機能部品、例えばエアバッグ、ベルト緊張装置、ロールオーバ、ボンネット又はその他の素子の急速解錠に用いられる。
【0004】
火工術釈放が行われる解錠装置では、予荷重をかけられる解錠装置が設けられて、自動車等の機能素子を拘束状態に保持する。鎖錠手段は火工術により動かされるので、機能素子は、ばねの作用を受ける不動作位置から、なるべくばねの作用で終端位置へ釈放される。このような解錠装置は、複数の部材から構成されている。例えば機能素子用の軸受台、例えば止め爪、軸受台を車体部分又は枠部分へ取付けるための軸受台取付け片、取付け素子及び止め素子、操作器を適当な構成部分に取付けるフランジ止め素子、ばね、操作器自体及び操作器取付け手段が必要である。例えば軸受台は操作器を受入れ、従ってその大きさを決定する。従って必要な構造空間は比較的大きい。個別部品の製造及びその組立ては費用がかかるので、このような装置は比較的高価である。このような公知の装置の別の局面は、火工術操作器では、発生されるエネルギを精確には計量できないことである。従って過剰なエネルギは、後に設けられる部材の変形のような望ましくない効果を生じることがある。別の局面は、自己点火を避けるため、操作器の点火に必要な部材を、多くの時間を安全技術を費やして組立てねばならないことである。これに関して、安全技術基準を保証するため、加工作業において特別な手段を使用せねばならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術から出発して、本発明の基礎になっている課題は、安価に製造かつ組立てることができ、僅かな構造空間しか持たず、高い機能性を持つ、火工術始動高速解錠装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、ハウジングが、一体な構成部分として、解錠装置を自動車の部分に取付けるための部分と、少なくとも1つの鎖錠手段用の少なくとも1つの支持個所を持っていることが、提案される。
【0007】
この構成によれば、すべての必要な構造素子をハウジングに統合することによって、コンパクトな構造が得られ、ハウジングは1つの部分又は複数部分から構成することができる。
【0008】
ハウジング内には、操作器、点火素子及び解錠装置の主要な構成部分が統合されるだけでなく、解錠装置を自動車の部分に取付けるための構成部分も、一体な構成部分としてハウジングに形成されている。ハウジングは、釈放のために用いられる構成部分即ち棒を持つピストンを、ハウジング少なくとも1つの支持個所に保持されかつ位置ぎめされている鎖錠手段と同様に含んでいる。
【0009】
高速解錠装置のすべての主要な構成部分はハウジングの構成部分なので、すべての構造部分はこの装置の製造者の所で完成され、従って使用者即ち自動車製造者は、この装置のみを、自動車の車体等の適当な構成部分に取付けることができる。最終取付けの際の作業費用は、誤取付けによる欠陥が大幅に防止されるのと同様に、軽減される。
【0010】
安全技術上の観点を考慮する限り、ハウジングは原則的に任意の材料から成っていてもよい。特にこのハウジングは火災に対する安全性を保証しかつ充分な安定性を持たねばならない。通常このようなハウジングは、金属から例えばダイカスト部品として製造可能である。しかしハウジングの製造のため別の適当な材料を使用することも可能である。
【0011】
好ましい展開では、鎖錠手段が止め爪であり、その支持個所がハウジングと一体なピン又はピンが貫通する類似な軸受部分により形成されている。
【0012】
鎖錠手段として止め爪を設けることは公知であるが、特徴は、鎖錠手段用の支持片例えばピン又は他の軸受部分がハウジング一体な構成部分であることである。これによりハウジングの製造の際既に、正しい寸法設定及び配置が保証されるので、最終組立ての結果生じる誤差は現われない。更にこれによっても組立て費用が減少され、製造費も同様に減少される。
【0013】
更に鎖錠手段特に止め爪が保持手段により不動作位置に保持されているのがよい。
【0014】
こうような構成自体は従来技術において公知である。
【0015】
更に鎖錠手段特に止め爪が、保持手段としてのばねにより不動作位置に保持され、ばねの力に抗してピストン棒により釈放位置へ運動可能である。
【0016】
このような構成もそれ自体従来技術において公知である。
【0017】
更に公知のように、保持手段が支持個所に取付けられ、かつ一方ではハウジングに支持され、他方では鎖錠手段に支持されている。
【0018】
保持手段はねじりばね又は圧縮ばね又はばねである。
【0019】
従来技術から、例えばOリングの形の減衰手段を設けて、火工術操作器の始動の際ピストンがピストン棒と共に動かされ、ピストンとピストン棒により貫通される壁との間でOリングが押しつぶされ、それにより密封を行い、更に運動を減衰し、それにより材料の保護及び騒音の低減に役立てること自体は、公知である。
【0020】
この従来技術から出発して本発明の基礎になっている特別な課題は、簡単な手段により火下術操作器により発生されるエネルギを部分的に無効にする簡単な手段を設けて、後に設けられる部材の望ましくない効果を回避することである。
【0021】
この目的のため本発明は、減衰手段が、穴を空けられたハウジング底又はその近くに設けられているハウジング部分により形成され、この底をピストン棒が貫通可能であり、減衰手段が
ハウジング底及びハウジング壁に一体に形成されるひれ及び/又は
ハウジング底に一体に形成されてピストンの方へ突出する突片又はスリーブ及び/又は
ハウジング底の近くでハウジングの空所の円錐状先細り
により形成されていることを提案する。
【0022】
このためハウジング底及びハウジング壁に一体に形成されるひれが設けられ、始動の場合ピストンがこれらのひれに当たり、その際これらのひれが塑性変形するので、これらのひれにより過剰なエネルギが変形仕事に変換される。
【0023】
その代わりに又はそれに加えて、ひれの代わりに又はひれに加えて、スリーブ状の突起又は突片を設けることができ、始動状態でピストンがこれらの突起又は突片に当たり、ピストンの力によりこれらの突片又は突起が変形特に塑性変形する。最後にその代わりに又はそれに加えて、ハウジング底の空所の円錐状先細りを設けることもできるので、始動状態においてピストンが円錐状先細りの範囲へ入り、ここで材料の塑性変形のために利用され、それによりエネルギが無効にされる。
【0024】
その代わりに又はそれに加えて、減衰手段が、穴を空けられたハウジング底とピストンとの間に設けられる金属及び/又はプラスチック製の挿入片特に環状挿入片により形成され、始動されるピストンによりこの挿入片が変形可能である。
【0025】
従来技術の別の問題は、操作器の点火に必要な部材が、多くの時間及び安全技術を費やして組立てられねばならないことであり、同様に改善された解決策を必要とする。
【0026】
このため本発明は、独立の発明要素として次の解決策を提案する。即ち点火素子が短絡片及び止め片と共に成形部材特に成形スリーブへ埋込まれて、この中に変形しないようにかつ動かないように位置ぎめされ、その特徴として、成形部材又は成形スリーブがハウジングの適合する凹所へ挿入され、ピストンに近い方にある成形部材又は成形スリーブの端面が、ピストン用の軸線方向ストッパとして役立つ。
【0027】
これにより短絡片及び止め片とに点火素子を製造する製造の際、適当な成形部材又は成形スリーブへ埋込むことができるので、すべての構成部分がこのスリーブ又はこの成形部材に変形なしに確実な位置に位置ぎめされる。高速解錠装置の製造者の所で、前もって製造されたこの素子を簡単なやり方でハウジングへ入れ、そこに固定することができる。
【0028】
その際特別な安全技術上の局面を考慮しなくてよいので、高速解錠装置の製造者の所で、適当な安全技術方策及び組立て技術方策は不必要である。
【0029】
この場合特に、ハウジングが片側で開く円筒状中空室を持ち、この中空室へ成形部材又は成形スリーブが適合して挿入され、この円筒状中空室に円筒状の空所が同軸的に続いて、ピストン棒を持つピストンを収容している。
【0030】
このような構成により、ハウジングを例えば1片から形成し、中空室及び空所を例えば鋳型内で鋳造過程により形成し、空所の底壁の穴あけのみを行えばよいので、ピストン棒はこの穴を貫通することができる。ハウジングが複数部分から製造されている時にも、この解決策は利点を与える。
【0031】
更に好ましくは、点火素子がピストンの方へ成形部材又は成形スリーブから突出し、中空室に対して先細りになる空所へ適合してはまっている。
【0032】
その際点火素子が、中空室から突出する端部に密封環等の密封素子を持ち、この密封素子が中空室又は空所の内周面に密に接している。
【0033】
ピストン棒を含めてピストンが不動作位置で動かず、それによりがたつき騒音を生じないようにするため、点火素子が、ピストンに近い方の端部に、1つ又は複数の間隔素子を持ち、この間隔素子が不動作位置にあるピストンに接している。
【0034】
最初にあげた刊行物から公知のように、ハウジングが縦に分割された複数なるべく2つの部分から成り、これらの部分が組立て目標状態で取付け手段によりまとめられている。
【0035】
ハウジング部分は、例えば継ぎ合わせ、ねじ止め、クリップ止め又はかしめにより、互いに結合することができる。
【0036】
好ましい展開では、取付け手段としてばねクランプが設けられて、ほぼ円筒状のハウジングの外周面を包囲している。
【0037】
特に好ましい展開では、取付け手段として、円錐状ばね弾性締付けスリーブが、予荷重を受けてハウジング上へはめられ、この締付けスリーブがほぼ円筒状のハウジングの外周面を包囲している。
【0038】
前述した両方の解決策は、ハウジングを最高の精度で製造しなくてよいという利点を持っている。なぜならば、弾性取付け手段例えばばねクランプ又は円錐状ばね弾性締付けスリーブにより、製造公差を補償できるので、製造公差が存在するにもかかわらず、部分相互の確実な固定が保証されるからである。円錐状締付けスリーブの場合、この締付けスリーブを適当なハウジング部分上へはめることができ、その際締付けスリーブのばね弾性拡張が行われ、最終状態でこの締付けスリーブが予荷重を受けてハウジング上へはめられている。
【0039】
更に好ましい展開では、鎖錠手段特に止め爪が、ハウジングの2つの軸受輪の間で、軸受輪を貫通するピンの周りに回転可能に支持され、鎖錠位置から解錠位置へ動く際鎖錠手段又は止め爪の部分が沿って動く面範囲に、軸受輪が、傾斜締付け区域を形成する隆起又は軸受輪の間の係合間隙を狭くする材料盛り上げ部を持ち、それにより鎖錠手段の運動が減速される。
【0040】
この場合好ましくは、隆起又は材料盛り上げ部が、鎖錠手段の作用により塑性変形可能である。
【0041】
この構成により、操作器の始動の際、止め爪等が解錠位置からはね戻って解錠過程を妨げることがなく、鎖錠手段特に止め爪が軸受輪の間に固定的に保持され、爪の運動により隆起又は材料盛り上げ部の塑性変形が行われるようにすることができる。
【0042】
本発明による構成は、従来技術に対して著しい利点を持っている。特に解錠装置は、全体として非常にコンパクトに構成されているので、取付け場所を小さく保つことができる。鎖錠手段特に止め爪は、ばね素子を含めて操作器のハウジングと固定的に結合されている。ピストン棒を保持するピストンの終端衝突が減衰される。それにより後に設けられる部材の変形が構造的に回避される。全体として解錠装置は安価に利用可能であり、安価でなるべく自動的な組立てを可能にする。1つの部材にすべての機能素子をまとめる点火装置は、組立てを容易にし、工程の安全性を高める。
【0043】
本発明の実施例が図面に示されており、以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1、図6及び図7には、火工術解錠装置が完全な部材として示されている。そのために、点火素子10、密封環9、間隔素子11、止め片8及び短絡片12を持つ火工術操作器が設けられている。これらの素子は、空所2を持つハウジング1内にあり、空所2内にピストン3が移動可能に保持されている。空所内に設けられる点火素子10の点火の際発生されるガスにより、ピストン3が、図面に示されている初期位置から終端位置へ動かされる。この場合ピストンは、図1に示す位置から右方へ移動される。ピストン3のピストン棒4は、終端位置で鎖錠手段5、実施例では止め爪へ作用して、これを図1において時計方向へ動かすので、鎖錠手段5より保持される機能素子6が解錠される。機能素子6は、通常例えば強いばねにより予荷重をかけて保持され、動かすべき素子例えばベルト緊張装置、ロールバー等に連結されている。
【0045】
本発明によれば、ハウジング1は、それが一体な構成部分として部分7を持ち、この部分7によりハウジングが自動車の部分に取付け可能であるように、構成されている。例えば部分7はフランジ等であってもよく、このフランジにより装置全体が、車体構造に例えばねじ又は鋲によって取付け可能である。
【0046】
更にハウジング1は、少なくとも1つの鎖錠手段5用の少なくとも1つの支持個所を持っている。もちろん複数の支持個所及び複数の鎖錠手段も一体に構成することができる。
【0047】
実施例では、鎖錠手段5は止め爪であり、その支持個所は、ハウジング1と一体な軸受により形成されている。鎖錠手段5特に止め爪は、例えば図1に示す保持手段により保持されている。実施例では、この保持手段は2つの脚辺を持つ機械的ねじりばね14であり、脚辺端部の一方はハウジング1に支持され、他方は鎖錠手段5の輪郭に支持されている。操作器によりピストン3従ってピストン棒4の移動が行われない限り、このばね14により、鎖錠手段5が図1に示す位置に予荷重をかけて保持される。鎖錠手段5特に止め爪は、図1において下部に操作突起15を持ち、この操作突起により、操作器の操作なしに試験釈放が可能である。
【0048】
2脚辺ねじりばねの代わりに、別のばね14例えば止め爪5の下の自由端とハウジングとの間に支持される圧縮ばね、ハウジングに支持されて止め爪に作用するばねも使用できることは当然である。
【0049】
点火素子10の始動の際ピストン3の運動により、ピストン3が当たる範囲でハウジング1の破壊が起こらないようにするため、ピストン3の運動を減衰する減衰手段が設けられている。減衰手段は、ピストン棒4が貫通可能な穴あきハウジング底又はその近くに設けられるハウジング部分により形成されている。図3によれば、このような減衰手段は、ハウジング底に一体に形成されてピストン3の方へ突出する突片16である。減衰手段は、ハウジング底及びハウジング壁に一体に形成されてなるべく傾斜位置をとるひれであってもよいので、ピストン3変位の増大と共にこのピストン3の運動に増大する抵抗を及ぼす。図4に示すように、ハウジングの底の近くでハウジング1の空所の円錐状先細り18により減衰が行われる時、この作用が同じように行われる。その代わりに又はそれに加えて、ハウジング1の穴あき底とピストン3との間に、減衰手段として、金属又はプラスチック又は金属とプラスチック又は他の適当な材料との組合わせから成る環状挿入片19を設けることもできる。この環状挿入片19は、当たるピストン3により塑性変形可能であるのがよい。いずれにせよ適当な構成により、ピストン3の運動エネルギが塑性変形に変換され、その際ハウジング1が破壊されることはない。
【0050】
図2に個別部分として示すように、短絡片12及び止め片8を含めて点火素子10は、成形部材20特に成形スリーブへ埋込まれて、この中に変形しないようにかつ動かないように位置ぎめされている。それにより点火素子10の製造者の所ですべての構成部分が完全に前もって組立てられているので、確実に取扱い可能な組立て単位が形成されて、それから全装置の製造者の所で組立てられて使用されることができる。成形部材20は、図1に示すように、ハウジング1の適合する凹所へ挿入されている。このためハウジング1は、例えば片側で開いた中空室を持ち、すべての構成部分を持つ成形部材20がこの中空室へ適合して挿入されている。この中空室に円筒状空所2が同軸に続いて、ピストン3及びピストン棒4を収容している。特に点火素子10は、成形部材20からピストン3の方へ突出し、中空室に対向して先細りになる空所2へ適合して挿入されている。点火素子10は、中空室から突出する端部に密封環9を持ち、この密封環が中空室又は実施例では空所2の内周面に密に接している。更に点火素子2は、ピストン3に近い方の端部に、例えば突片又は環状スリーブの形の間隔素子11を持ち、図1からわかるように、この間隔素子が不動作位置にあるピストン3に当たっている。これによりピストン3の可動性が阻止されるので、がたつき騒音等が生じることはない。
【0051】
特に図7から明らかなように、ハウジング1は縦に分割された2つの部分から成り、目標組立て状態で取付け手段によりまとめられている。図7による実施例では、取付け手段は、ほぼ円筒状のハウジング1の外周面を包囲するばねクランプ17により形成されている。この取付けの代わりに、別の取付け可能性も考えられる。ばね弾性取付けは、最終組立て後の確実なはまり合いを妨げることなく、ハウジング公差を補償できるという利点を持っている。
【0052】
特に図1及び6からわかるように、鎖錠手段5は、ハウジング1の一体な構成部分である2つの軸受輪21の間にはまっている。鎖錠手段5は、ピン13が貫通する適当な穴を持ち、このピン13は軸受輪21も貫通し、止めピン23により例えば止められている。軸受輪21は、鎖錠位置から解錠位置へ動く際鎖錠素子5の部分に沿う面範囲に、傾斜締付け区域を形成する隆起24をなるべく両側に持ち、それにより軸受輪21と鎖錠手段5との間の係合間隙が次第に狭くされるので、鎖錠手段5の運動が減速され、最終状態において鎖錠手段5が締付けられ、それにより保持される。こうしていかなる場合にも、操作器の始動の際、機能素子6の釈放を行うことなく、鎖錠手段5が再び初期位置へはね戻ることはない。むしろ運動が充分減速されるので、機能素子6の解錠が確実に保証され、更に鎖錠手段5が釈放状態で隆起24の間に締付けて保持されるように構成することができる。鎖錠手段5がこの状態へ入ると、これらの隆起24等がなるべく塑性変形される。
【0053】
本発明は実施例に限定されず、開示の範囲内で多様に可変である。明細書及び/又は図面に開示された個々の特徴及びその組合わせは、本発明にとって重要なものとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】 一部を縦断された側面図を示す。
【図2】 図1の細部を縦断面図で示す。
【図3】 図1の細部の変形例を縦断面図及び横断面図で示す。
【図4】 別の変形例を図3と同じように示す。
【図5】 別の変形例を縦断面図示す。
【図6】 図1の左から見た図1による装置を示す。
【図7】 図1による実施例の変形例を斜視図で示す。
【符号の説明】
【0055】
1 ハウジング
2 空所
3 ピストン
4 ピストン棒
5 鎖錠手段(止め爪)
6 機能素子
7 ハウジングの部分
10 点火素子
21 支持個所(軸受輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火工術解錠装置であって、空所(2)を持つハウジング(1)を有し、空所(2)内にピストン(3)が移動可能に保持され、空所に設けられる点火素子(10)の点火の際発生するガスにより、ピストン(3)が初期位置即ち不動作位置から終端位置へ運動可能であり、ピストン(3)のピストン棒(4)が、終端位置への途中又は終端位置で、1つの過程を開始し、その際ピストン棒(4)が、不動作位置で機能素子(6)を拘束しかつ終端位置で機能素子(6)を釈放する鎖錠手段(5)に作用して、これを終端位置において解錠するものにおいて、ハウジング(1)が、一体な構成部分として、解錠装置を自動車に取付けるための部分(7)と、少なくとも1つの鎖錠手段(5)用の少なくとも1つの支持個所(21)を持っていることを特徴とする、火工術解錠装置。
【請求項2】
鎖錠手段(5)が止め爪であり、その支持個所がハウジング(1)と一体な軸受(21)により形成され、この軸受を貫通するピン(13)の周りに、鎖錠手段(5)が回転可能であることを特徴とする、請求項1に記載の火工術解錠装置。
【請求項3】
鎖錠手段(5)が保持手段(14)により不動作位置に保持されていることを特徴とする、請求項1に記載の火工術解錠装置。
【請求項4】
鎖錠手段(5)が、保持手段(14)としてのばねにより不動作位置に保持され、ばねの力に抗してピストン棒(4)により釈放位置へ運動可能であることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項5】
保持手段(14)が支持個所(21)に取付けられ、かつ一方ではハウジング(1)に支持され、他方では鎖錠手段(5)に支持されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の火工術解錠装置。
【請求項6】
保持手段(14)がねじりばね又は圧縮ばね又はばねであることを特徴とする、請求項3〜5の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項7】
釈放位置へのピストン(3)の運動を減衰する減衰手段が設けられているものにおいて、減衰手段が、穴を空けられたハウジング底又はその近くに設けられているハウジング部分により形成され、この底をピストン棒(4)が貫通可能であり、減衰手段が
ハウジング底及びハウジング壁に一体に形成されるひれ及び/又は
ハウジング底に一体に形成されてピストン(3)の方へ突出する突片又はスリーブ及び/又は
ハウジング底の近くでハウジング(1)の空所(2)の円錐状先細り(18)
により形成されていることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項8】
減衰手段が、穴を空けられたハウジング底とピストン(3)との間に設けられる金属及び/又はプラスチック製の挿入片(19)により形成され、始動されるピストン(3)によりこの挿入片が変形可能であることを特徴とする、請求項7に記載の火工術解錠装置。
【請求項9】
点火素子(10)が止め片(8)及び短絡片(12)と組合わされ、点火素子(10)が短絡片(12)及び止め片(8)と共に成形部材(20)又は成形スリーブへ埋込まれて、この中に変形しないようにかつ動かないように位置ぎめされているものにおいて、成形部材(20)又は成形スリーブがハウジング(1)の適合する凹所へ挿入され、ピストン(3)に近い方にある成形部材(10)又は成形スリーブの端面が、ピストン(3)用の軸線方向ストッパとして役立つことを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項10】
ハウジング(1)が片側で開く円筒状中空室を持ち、この中空室へ成形部材(20)又は成形スリーブが適合して挿入され、この円筒状中空室に円筒状の空所(2)が同軸的に続いて、ピストン棒(4)を持つピストン(3)を収容していることを特徴とする、請求項9に記載の火工術解錠装置。
【請求項11】
点火素子(10)がピストン(3)の方へ成形部材(20)又は成形スリーブから突出し、中空室へ向かって先細りになる空所(2)へ適合してはまっていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の火工術解錠装置。
【請求項12】
点火素子(10)が、中空室から突出する端部に密封環(9)等の密封素子を持ち、この密封素子が中空室又は空所(2)の内周面に密に接していることを特徴とする、請求項9〜11の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項13】
点火素子(10)が、ピストン(3)に近い方の端部に、1つ又は複数の間隔素子(11)を持ち、この間隔素子(11)が不動作位置にあるピストン(3)に接していることを特徴とする、請求項9〜12の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項14】
ハウジング(1)が縦に分割された複数の部分から成り、これらの部分が組立て目標状態で取付け手段によりまとめられていることを特徴とする、請求項1〜13の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項15】
取付け手段としてばねクランプ(17)が設けられて、ほぼ円筒状のハウジング(1)の外周面を包囲していることを特徴とする、請求項14に記載の火工術解錠装置。
【請求項16】
取付け手段として、円錐状ばね弾性締付けスリーブが、予荷重を受けてハウジング(1)上へはめられ、この締付けスリーブがほぼ円筒状のハウジング(1)の外周面を包囲していることを特徴とする、請求項14に記載の火工術解錠装置。
【請求項17】
鎖錠手段(5)が、ハウジング(1)の2つの軸受輪(21)の間で、軸受輪(21)を貫通するピン(13)の周りに回転可能に支持され、鎖錠位置から解錠位置へ動く際鎖錠手段(5)の部分が沿って動く面範囲に、軸受輪(21)が、傾斜締付け区域(24)を形成する隆起又は軸受輪(21)の間の係合間隙を狭くする材料盛り上げ部を持ち、それにより鎖錠手段(5)の運動が減速されることを特徴とする、請求項1〜16の1つに記載の火工術解錠装置。
【請求項18】
隆起又は材料盛り上げ部が、鎖錠手段(5)の作用により塑性変形可能であることを特徴とする、請求項17に記載の火工術解錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−55592(P2007−55592A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217514(P2006−217514)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506132898)トーマス・マグネーテ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Thomas Magnete GmbH
【Fターム(参考)】