説明

火災報知設備及びそれに利用する中継器

【課題】既設の火災受信機で不具合を報知することを可能とする火災報知設備を提供することを目的としている。
【解決手段】感知器回線5に接続された火災受信機1と火災感知器2との間に中継器6が介在する火災報知設備100において、火災感知器は自己点検により自己の不具合を検出する点検手段と、点検手段の結果に基づき、異常信号を感知器回線5に出力する出力手段とを備え、中継器6は、火災感知器2が出力する異常信号を受信する受信手段と、中継器6内のコモン線3及びライン線4に介在する接点からなり、接点を切り替えて中継器6と火災受信機2の間の感知器回線5を断線させる断線発生手段と、断線すると共に、中継器6と火災感知器2の間の感知器回線5に電源を供給する電源供給手段とを備え、火災受信機1は、感知器回線5が断線したときに断線警報を発する断線警報発報手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継器、及び火災報知設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の火災報知設備には、火災受信機が中央監視室内に配設されて、火災受信機からライン線とコモン線が配設され、ライン線とコモン線とが終端抵抗を介して接続されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−176289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、火災感知器に不具合が発生した場合に、火災受信機、例えばP型受信機はその旨を受信して、警報や表示等の制御をすることができない。
また、火災感知器に不具合が発生したことを火災受信機に出力する自己点検機能を備えることで、火災感知器に不具合が発生したかを表示させる場合には、火災受信機を専用の火災受信機(例えば、R型)に取り替えなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、既設の火災受信機を取り替えることなく、火災感知器で発生した不具合を専用の火災受信機でない火災受信機でも報知することを可能とする火災報知設備及びそれに利用する中継器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る火災報知設備は、火災受信機に接続されコモン線とライン線とからなる感知器回線と、該感知器回線に接続されスイッチング動作によって火災信号を感知器回線に出力する1個又は複数の火災感知器と、感知器回線に接続され火災受信機と火災感知器との間に介在する中継器と、を備えた火災報知設備において、火災感知器は、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段と、該点検手段の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を感知器回線に出力する出力手段と、を備え、中継器は、火災感知器が出力する異常信号を受信する受信手段と、中継器内のコモン線及びライン線に介在する接点からなり、該接点を切り替えて中継器と火災受信機の間の感知器回線を断線させる断線発生手段と、断線すると共に、中継器と火災感知器の間の感知器回線に電源を供給する電源供給手段と、を備え、火災受信機は、感知器回線が断線したときに断線警報を発する断線警報発報手段を備えたものである。
【0007】
また、本発明に係る中継器は、感知器回線に接続される火災受信機と、スイッチング動作によって火災信号を感知器回線に出力する火災感知器との間に介在し、感知器回線に接続される中継器において、火災感知器の自己点検の結果に基づき、不具合の場合に出力される異常信号を受信する受信手段と、受信手段で受信した火災感知器の異常信号の結果に基づき、火災感知器が不具合の場合に接点切替信号を出力する判定手段と、感知器回線のコモン線及びライン線に介在する接点を有する2つの接点切替手段からなり、接点切替信号を受信すると、接点切替手段の接点を切り替えて中継器と火災受信機の間の感知器回線を断線させる断線発生手段と、断線すると共に、中継器と火災感知器の間の感知器回線に電源を供給する電源供給手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る火災報知設備によれば、中継器に設けられる断線発生手段が、火災感知器から感知器回線に出力された火災感知器の異常信号を受信したときに感知器回線を断線させ、そして、断線警報発報手段が感知器回線が断線したときに断線警報を発する。これにより、本発明に係る火災報知設備は、専用の火災受信機でない場合でも、火災受信機をリニューアルすることなく、既設の火災受信機で火災感知器の不具合を報知することができる。
【0009】
本発明に係る中継器によれば、火災感知器から不具合の旨の異常信号を受信したときに、コモン線及びライン線に介在する接点を切り替えて、中継器と火災受信機の間の感知器回線を断線させるので、専用の火災受信機でない場合でも、火災受信機をリニューアルすることなく、既設の火災受信機で火災感知器の不具合を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る火災報知設備の概要構成図である。
【図2】図1に示す火災感知器の制御回路の構成である。
【図3】図1に示す中継器の制御回路の構成である。
【図4】(a)が通常時と火災時における感知器回線の電圧を示し、(b)が通常時と不具合発生時の感知器回線の電圧を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る火災報知設備100の概要構成例図である。図1においては、3つの火災感知器2が設けられ、終端素子としての終端抵抗Rが設けられた場合を一例として図示している。ここで、火災感知器2の数はそれに限定されるものではない。
【0012】
火災報知設備100は、ビル等の建物の各部屋等に設置される火災感知器2と、火災感知器2の検出結果に基づいた警報をする火災受信機1と、火災感知器2と火災受信機1との間に介在する中継器6が、コモン線3とライン線4とからなる感知器回線5で接続されて構成されている。以下、感知器回線5と称したものは、コモン線3及びライン線4を合わせたものである。
【0013】
[火災報知設備100の構成]
図1を用いて、火災報知設備100を説明する。
【0014】
火災受信機1は、P型受信機であり、コモン線3及びライン線4を介して1個又は複数の火災感知器2が接続されている。P型火災受信機とは、コモン線3、ライン線4からなる感知器回線5に接続されている火災感知器2の電気的な接点が閉じることにより起こる感知器回線5の電圧等の電気的な変化に基づいて火災を判断するものである。火災受信機1は、火災を音声で報知するためのスピーカや、表示で報知するためのランプ等が設けられている。さらに、火災受信機1は感知器回線5の断線時にも音声やランプによる断線警報により断線したことを報知する断線警報発生手段が設けられている。なお、この火災受信機1は、例えば、建物の防災センタなどといった中央管理室に設置されている。そして、火災受信機1が検出した火災や断線は、防災センタで報知される。
【0015】
火災感知器2は、火炎によって生じる熱、煙、炎などを検出すると、感知器回線5を介して火災受信機1に火災を検知した旨の信号である火災信号を出力する。なお、火災感知器2の火災信号とは、例えば、火災感知器2のスイッチング動作によって感知器回線5のインピーダンスを小さくするものである。
【0016】
また、火災感知器2は、出力値監視方式によって、出力値異常等の自身の不具合を検出している。なお、出力値監視方式とは、火災感知器2が火災を検出していないときの出力値が、火災感知器2が初期設置された状態における出力値に対して、どれだけ変化しているかを検出し、火災感知器2の不具合を検出する方式である。この火災感知器2は、いわゆる送り配線の方式で、それぞれが並列の接続関係となるように感知器回線5を介して火災受信機1に接続されている。
【0017】
中継器6は、火災受信機1と複数の火災感知器2の間に介在し、感知器回線5に設けられている。また、中継器6は電源供給手段である電源装置8に接続されている。火災監視時(通常時)には、中継器6は火災受信機1から電源供給を受けており、電源装置8からは電源供給を受けていない。電源供給手段は電源装置8だけに限らず、例えば商用電源のように、電源を供給できるものであれば良い。
【0018】
終端抵抗Rはいわゆる送り配線の方式で接続されている感知器回線5の末端に位置し、コモン線3とライン線4とを接続する抵抗である。終端抵抗Rにより、感知器回線5に流れる微弱な電流によって、火災受信機1は感知器回線5の断線を監視している。
感知器回線5は、コモン線3及びライン線4より構成され、火災受信機1と火災感知器2と中継器6とを接続するものである。コモン線3及びライン線4には、いわゆる送り配線の方式で、それぞれの火災感知器2が並列の接続関係となるように接続されている。なお、このコモン線3及びライン線4は、これらが1組で1回線を構成する。すなわち、例えば火災受信機1からコモン線3を共通として、ライン線4を複数本引き出して複数回線とすると、回線ごとに火災信号を受信することができる。
【0019】
[火災感知器2の構成]
図2は火災感知器2の制御回路50の構成の一例である。図2を用いて、火災感知器2の制御回路50の構成について説明する。
【0020】
火災感知器2の制御回路50は、検出回路14と判別回路13とを有し、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段を備えている。また、必要な回路に定電圧を供給する定電圧回路11と、コモン線3とライン線4とを接続して感知器回線5を低インピーダンス状態にするスイッチング回路12と、不具合があることを外部に表示して識別させる表示手段である動作表示灯17とをさらに有している。
【0021】
定電圧回路11は、感知器回線5を介して供給される電源電圧を、所定の電圧値、例えば5(V)などに変換し、必要な回路に供給するものである。図2に示すように、定電圧回路11は、判別回路13及び検出回路14に接続されており、これらに動作電圧を供給している。なお、定電圧回路11は、例えば定電圧ICなどから構成される。
【0022】
検出回路14は、火災によって生じる熱、煙、炎などを検出し、検出結果を出力するものである。検出に必要な素子及び増幅回路等から構成される。この検出回路14は、判別回路13に接続されている。
【0023】
判別回路13は、検出回路14の出力のレベル判定などを実施して、火災であるか否かを判別し、その判別結果に基づいて、感知器回線5を介して火災受信機1に火災信号を出力するようにスイッチング回路12を制御するものである。なお、判別回路13は、火災であると判別した場合に、動作表示灯17を点灯するように制御する。
【0024】
また、判別回路13は、火災感知器2の不具合を出力値監視方式によって検出し、検出回路14による検出の結果、出力値異常と判別した場合に、異常信号を感知器回線5に出力するようにスイッチング回路12を制御するものである。なお、検出回路14が火災感知器2の不具合を検出する方式は、擬似出力方式として、自ら熱や光の擬似入力を行う方式でも良い。つまり、判別回路13は、検出回路14からの検出出力が入力され、レベル判定等により火災及び火災感知器2自身の不具合を判別する。なお、判別回路13は、例えばマイクロプロセッサ等で構成される。
【0025】
スイッチング回路12は、判別回路13が火災であると判別すると閉じた状態となって、感知器回線5に火災信号を出力するものである。すなわち、判別回路13は火災であると判別するとスイッチング回路12を閉じる旨の信号の出力をし、その出力を受信したスイッチング回路12は感知器回線5を低インピーダンス状態に維持する。スイッチング回路12が感知器回線5を低インピーダンス状態に維持することを、火災感知器2から火災受信機1への火災信号としている。また、低インピーダンスとは、火災が発生していない状態における感知器回線5のインピーダンスに対してインピーダンスが低いということである。このスイッチング回路12は、判別回路13、及び感知器回線5に接続されている。なお、スイッチング回路12は、例えばトランジスタ等により構成される。
【0026】
また、スイッチング回路12は、判別回路13が火災感知器2自身に不具合があると判別すると、後述するように、パルス的な電圧の変化を感知器回線5に出力するものである。つまり、スイッチング回路12は、火災感知器2が不具合であった場合に、感知器回線5をパルス的に低インピーダンス状態にする。
【0027】
動作表示灯17は、判別回路13の出力に基づいて、火災時、火災感知器2自身の不具合時において点灯又は点滅制御されるものである。この動作表示灯17は、判別回路13、及びライン線4に接続されている。なお、動作表示灯17は、例えばLEDなどの発光素子を採用するとよい。
【0028】
コモン線接続部3Aはコモン線3が接続され、ライン線接続部4Aはライン線4が接続される接続部である。コモン線3とライン線4の間に火災感知器2が設けられ、電気的な接続としては、コモン線接続部3Aとライン線接続部4Aの間に火災感知器2の制御回路50が設けられることになる。
【0029】
[中継器6の構成]
図3は中継器6の制御回路40の構成の一例である。図3を用いて、中継器6の制御回路40の構成について説明する。
【0030】
中継器6の制御回路40は、受信回路22と、接点切替回路25及び26と、電源回路21と、定電圧回路24とを有している。
【0031】
定電圧回路24は、中継器6の制御回路40に供給される電源電圧を所定の電圧、例えば5Vにして、必要な回路に供給するものである。定電圧回路24は、例えば低電圧ICによって構成される。
【0032】
接点切替回路25はコモン線3に介在する接点を有し、接点切替回路26はライン線4に介在する接点を有する。接点切替回路25及び26は火災監視位置の接点25a及び26aと断線位置の接点25b及び26bの2つの位置の接点を有するものである。火災監視位置の接点25aはコモン線3と接続しており、火災監視位置の接点26aはライン線4と接続している。断線位置の接点25b及び26bは電源装置8と接続している。そして、接点切替回路25及び26が火災監視位置の接点25a及び26aを閉じているときには、火災受信機1と火災感知器2は中継器6を介して接続される。一方、接点切替回路25及び26が断線位置の接点25b及び26bを閉じているときには、火災受信機1と火災感知器2は接続されず、電源装置8と火災感知器2が中継器6を介して接続される。つまり、接点切替回路25及び26は、中継器6と火災受信機1の間の感知器回線5を断線させる断線発生手段を構成する。接点切替回路25及び26は、判別回路23の出力により制御される。
【0033】
受信回路22は、火災感知器2から感知器回線5に出力される火災信号及び異常信号を受信する受信手段からなる。受信回路22は火災信号又は異常信号を受信すると、判別回路23に信号を出力する。
【0034】
判別回路23は、中継器6全体の制御を行うものであり、例えばマイクロプロセッサによって構成される。判別回路23は、火災感知器2の異常信号を受信した受信回路22からその旨の信号を受信すると、断線発生手段である接点切替回路25及び26の接点を火災監視位置の接点25a及び26aから断線位置の接点25b及び26bに切り替えるように制御し、感知器回線5を断線させる。
【0035】
判別回路23は、接点切替回路25及び26の接点を切り替えて感知器回線5を断線させている場合に、受信回路22から火災信号の旨の信号を受信すると、接点切替回路25及び26の接点を断線位置の接点25b及び26bから火災監視位置の接点25a及び26aに戻すように制御する。
【0036】
電源回路21は電源装置8に接続されているものである。火災監視位置の接点25a及び26aが閉じている場合、電源回路21は感知器回線5とは接続されない状態となっている。接点切替回路25及び26が断線位置の接点25b及び26bに切り替えたときに、中継器6より末端の感知器回線5に電源を供給し、火災感知器2を正常に動作させる。
【0037】
コモン線接続部3Bはコモン線3が引き込まれて、コモン線接続部3Cはコモン線3が引き出されるように接続される接続部である。また、ライン線接続部4Bはライン線4が引き込まれて、ライン線接続部4Cはライン線4が引き出されるように接続される接続部である。電気的な接続としては、コモン線接続部3B及び3Cとライン線接続部4B及び4Cの間に中継器6の制御回路40が設けられることになる。
【0038】
[動作説明]
図1乃至図3を参照して、火災感知器2に不具合があった場合における火災報知設備100の動作例を説明する。
【0039】
各火災感知器2は、火災監視時において、所定間隔で火災判別を行う。この火災監視時に、各火災感知器2は、出力値監視方式により、自身に不具合があるか否かも判別している。また、中継器6の接点切替回路25及び26は火災監視位置の接点25a及び26aが閉じており、中継器6は火災受信機1から電源を供給されている。
【0040】
先ず、各火災感知器2は、出力値異常の不具合があった場合には、火災感知器2の制御回路50の判別回路13が動作表示灯17を点灯又は点滅させる。この動作表示灯17の点灯又は点滅により、ユーザーに対して外観的にどの火災感知器2に不具合があるかを報知している。さらに、判別回路13は、動作表示灯17の点灯又は点滅の制御と同時に、スイッチング回路12を一定の周期でON/OFF動作するように制御し、感知器回線5の電圧をパルス的に変化させることで感知器回線5に異常信号を出力する。
【0041】
次に、感知器回線5を常時監視している中継器6の受信回路22は、火災感知器2から出力された異常信号を受信すると、判別回路23から接点切替回路25及び26に接点切替信号を出力する。すると、火災監視位置の接点25a及び26aが閉じている接点切替回路25及び26は、接点を断線位置の接点25b及び26bに同時に切り替えて閉じる。接点を断線位置の接点25b及び26bに切り替えると、中継器6と火災受信機1の接続は切り離されて断線が生じる。そして、電源装置8と接続された中継器6の電源回路21と中継器6の後段側の感知器回線5とが接続されるので、電源装置8から感知器回線5を介して火災感知器2に電源が供給される。つまり、各火災感知器2は火災受信機1との接続は切れるが、電源装置8から電源供給されているため、通常通り動作する。なお、電源回路21への接続は電源装置8ではなく、火災受信機1から感知器回線5とは別の電源供給用の電源線を引いてきて接続しても良い。ここで、感知器回線5の後段側とは、中継器6と終端抵抗Rまでの火災感知器2が接続される回線のことである。
【0042】
次に、接点切替回路25及び26の接点の切替により感知器回線5の断線を火災受信機1が検出すると、火災受信機1の断線警報発報手段である盤面による断線表示及び音声による断線警報で断線警報を行う。このとき、ユーザーは火災受信機1の断線警報発報手段により、感知器回線5が本当に断線しているか、若しくはその感知器回線5に接続されている火災感知器2のいずれかに不具合があることを知ることができる。なお、火災感知器2に不具合があった場合に接点切替回路25及び26の火災監視位置の接点25a及び断線位置の接点25b並びに火災監視位置の接点26a及び断線位置の接点26bを断続的に同じタイミングで切り替えることで、断線警報発報手段を確認したユーザーに対して、感知器回線5の断線ではなく、感知器回線5に接続されている火災感知器2の不具合であることを知らせることができる。
【0043】
最後に、火災受信機1とは接続が切れ、中継器6から電源供給を受けている状態の火災感知器2が火災を検出すると、判別回路13に制御されたスイッチング回路12によって感知器回線5を低インピーダンス状態にする火災信号が出力される。その火災信号を中継器6の受信回路22が受信すると、判別回路23は接点切替信号を接点切替回路25及び26に出力する。そして接点切替回路25及び26の接点を断線位置の接点25b及び26bから火災監視位置の接点25a及び26aに切り替え、火災受信機1の断線状態を復旧させる。断線状態から復旧した火災受信機1は、火災感知器2が感知器回線5に出力する火災信号に基づいて、スピーカからの音声やランプの点滅により火災を報知することができる。
【0044】
[火災信号及び異常信号について]
図4は、(a)が通常時と火災時における感知器回線5の電圧を示し、(b)が通常時と不具合発生時の感知器回線5の電圧を示すものである。図4に基づいて、火災信号及び異常信号の一例について説明する。
【0045】
火災感知器2が出力する火災信号は、火災がない通常時の感知器回線5の電圧値を例えば約24(V)と設定しているとき、この電圧値を例えば約8(V)に変化させて構成する。
【0046】
火災感知器2が出力する異常信号としては、火災がないときの(通常時)感知器回線5の約24(V)から、短い間隔で、所定回数だけパルス的に電圧を変化させて構成される信号を採用するとよい。パルス的な電圧の変化は火災信号と同様、約8(V)に変化させればよいが、この数値に限らず、受信回路22が異常信号だと判別できる電圧であればよい。なお、図4では、所定回数を2回としたものを一例として図示している。これにより、1回目の電圧変化を中継器6の判別回路23が捕らえきれなくても、2回目の電圧変化で判別回路23が確実にこの電圧変化が異常信号であるかを確認することができる。したがって、所定回数は、2回以上に設定するとよい。
【0047】
[火災報知設備100の有する効果]
本実施の形態1に係る火災報知設備100は、中継器6が火災感知器2の異常信号を受信したときに、中継器6に設けられ、コモン線3及びライン線4に介在する接点切替回路25及び26の接点を切り替えて、感知器回線5を断線させ、そして、火災受信機1の断線警報発報手段が感知器回線5の断線を断線警報で報知する。これにより、P型の火災受信機1であっても、感知器回線5の断線を火災感知器2の異常信号として検出することができ、火災感知器2の不具合を知ることができる。すなわち、本実施の形態1に係る火災報知設備100は、火災感知器2の自己点検による結果を受信して制御できる専用の火災受信機ではない火災受信機1でも火災感知器2の不具合を報知することができる。
【0048】
また、本実施の形態1に係る火災報知設備100は、例えば、既に建物に設けられたP型の火災報知設備をリニューアルする場合において有効である。すなわち、既に建物に設けられたP型の火災報知設備の火災受信機1と火災感知器2の間に中継器6を介在させることで、火災報知設備100を得ることができる。既に建物に設けられたP型の火災報知設備の火災受信機1を、専用の火災受信機(例えばR型)とするよりも、既設の火災感知器を本発明の火災感知器2とし、中継器6を設ける方が低コストで実施することができる。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態2では、上述の実施の形態1と構成は同じで、動作が異なる場合について説明する。実施の形態2では、上述の実施の形態1との相違点について詳細に説明するものとし、実施の形態1に対応している部材については同じ符号をつけて説明を省略する。さらに、火災報知設備100の構成、火災感知器2の構成、中継器6の構成は上述の実施の形態1と同様なので省略する。
【0050】
[動作説明]
図1乃至図3を参照して、火災感知器2に不具合があった場合における火災報知設備100の動作例を説明する。
【0051】
各火災感知器2は、火災監視時において、所定間隔で火災判別を行う。この火災監視時に、各火災感知器2は、出力値監視方式により、自身に不具合があるか否かも判別している。また、中継器6の接点切替回路25及び26は火災監視位置の接点25a及び26aが閉じており、中継器6は火災受信機1から電源を供給されている。
【0052】
先ず、各火災感知器2は、出力値異常の不具合があった場合には、火災感知器2の制御回路50の判別回路13が動作表示灯17を点灯又は点滅させる。さらに、判別回路13は、動作表示灯17の点灯又は点滅の制御と同時に、スイッチング回路12を一定の周期でON/OFF動作するように制御し、感知器回線5の電圧をパルス的に変化させることで感知器回線5に異常信号を出力する。
【0053】
次に、感知器回線5を常時監視している中継器6の受信回路22は、火災感知器2から出力された異常信号を受信すると、判別回路23から接点切替回路25及び26に接点切替信号を出力する。そして、火災監視位置の接点25a及び26aを閉じている接点切替回路25及び26は、接点を断線位置の接点25b及び26bに同時に切り替えて閉じる。断線位置の接点25b及び26bに切り替えると、中継器6と火災受信機1の接続は切り離されて断線が生じる。
【0054】
次に、接点切替回路25及び26の接点の切替により感知器回線5の断線を火災受信機1が検出すると、火災受信機1の断線警報発報手段である盤面による断線表示及び音声による断線警報で断線警報を行う。このとき、ユーザーは火災受信機1の断線警報発報手段により、感知器回線5が本当に断線しているか、若しくはその感知器回線5に接続されている火災感知器2のいずれかに不具合があることを知ることができる。なお、火災感知器2に不具合があった場合に接点切替回路25及び26の火災監視位置の接点25a及び断線位置の接点25b並びに火災監視位置の接点26a及び断線位置の接点26bを断続的に同じタイミングで切り替えることで、断線警報発報手段を確認したユーザーに対して、感知器回線5の断線ではなく、感知器回線5に接続されている火災感知器2の不具合であることを知らせることができる。
【0055】
最後に、接点切替回路25及び26の接点を断線位置の接点25b及び26bに切り替えた中継器6の判別回路23は、接点切替信号の出力の時間が、火災受信機1が断線を検出できる時間を超えた後、接点切替信号の出力を停止し、接点切替回路25及び26の接点を火災監視位置の接点25a及び26aに復旧させて、感知器回線5を通常通りに復帰させる。このとき、火災受信機1は断線表示を保持する。例えば、火災受信機1が、感知器回線5が断線してから5秒以内に断線を検出できるとしたら、中継器6の判別回路23は接点切替回路25及び26の接点を断線位置の接点25b及び26bに切り替えてから10秒後に、火災監視位置の接点25a及び26aに切り替えて、感知器回線5を復旧させると良い。この動作により、火災感知器2の不具合を検出した動作後においても、火災報知設備100は、火災を検出可能である。すなわち、火災感知器2の不具合により感知器回線5が断線したとしても、火災受信機1が断線を検出した後に接点切替回路25及び26の接点を火災監視位置の接点25a及び26aに復旧させるので、感知器回線5は通常通りに復帰する。そのため、火災を検出した場合には、火災感知器2は感知器回線5を介して火災受信機1に火災信号を出力できる。そして、火災受信機1は、出力された火災信号に基づいて、スピーカからの音声やランプの点滅により火災を報知することができる。
【0056】
また、感知器回線5の復帰後、火災感知器2の動作表示灯17は、不具合があった場合の点灯又は点滅を保持し続けると良い。この保持はユーザーからの操作があるまで続けることが好ましい。
【0057】
上記の動作説明では、感知器回線5が復帰しても断線表示を保持できる火災受信機1の場合で説明したが、感知器回線5が復帰すると復旧する火災受信機1もある。この火災受信機1は、上記のように接点切替信号の出力の時間が、火災受信機1が断線を検出できる時間を超えた後、接点切替回路25及び26の接点を火災監視位置の接点25a及び26aに復旧させると、火災受信機1は断線を報知できなくなる。このような火災受信機1の場合は、接点切替回路25及び26の接点を断続的に切り替える。つまり、接点切替回路25及び26の接点が火災監視位置の接点25a及び26aの場合は火災受信機1から電源の供給を受けて火災監視し、接点が断線位置の接点25b及び26bの場合は、火災受信機1は断線警報を鳴動させると共に、電源装置8から接点切替回路25及び26の接点を断線位置の接点25b及び26bから火災監視位置の接点25a及び26aに切り替えるための電源の供給を受ける。
【0058】
接点切替回路25及び26が通常の接続状態になっている間は火災受信機1から断線警報は出ず、火災監視を行う。接点切替回路25及び26の接点が切り離されている間は火災受信機1から断線警報が鳴動する。断続的に断線警報を鳴動させることで、ユーザーは火災感知器2の不具合であることを知ることができる。接点切替回路25及び26の接点の断続的な切り替えは、ユーザーが火災受信機1の鳴動に気づき、音響停止スイッチ等の操作があるまで続けると良い。
【0059】
[火災報知設備100の有する効果]
本実施の形態1に係る火災報知設備100は、中継器6が火災感知器2の異常信号を受信したときに、中継器6に設けられ、コモン線3及びライン線4に介在する接点切替回路25及び26の接点を切り替えて、感知器回線5を断線させ、そして、火災受信機1の断線警報発報手段が感知器回線5の断線を断線警報で報知する。これにより、P型の火災受信機1であっても、感知器回線5の断線を火災感知器2の異常信号として検出することができ、火災感知器2の不具合を知ることができる。すなわち、本実施の形態1に係る火災報知設備100は、火災感知器2の自己点検による結果を受信して制御できる専用の火災受信機ではない火災受信機1でも火災感知器2の不具合を報知することができる。
【0060】
また、本実施の形態1に係る火災報知設備100は、例えば、既に建物に設けられたP型の火災報知設備をリニューアルする場合において有効である。すなわち、既に建物に設けられたP型の火災報知設備の火災受信機1と火災感知器2の間に中継器6を介在させることで、火災報知設備100を得ることができる。既に建物に設けられたP型の火災報知設備の火災受信機1を、専用の火災受信機(例えばR型)とするよりも、既設の火災感知器を火災感知器2とし、中継器6を設ける方が低コストで実施することができる。
【0061】
また、電源装置8は切替回路25及び26の接点を切り替えるためだけの電源供給手段であるため、実施の形態1に比べて電源装置8を小さくできる。
【符号の説明】
【0062】
1 火災受信機、2 火災感知器、3 コモン線、3A、3B、3C コモン線接続部、4 ライン線、4A、4B、4C ライン線接続部、5 感知器回線、6 中継器、8 電源装置、11 定電圧回路、12 スイッチング回路、13 判別回路、14 検出回路、17 動作表示灯、21 電源回路、22 受信回路、23 判別回路、24 定電圧回路、25 接点切替回路、25a 火災監視位置の接点、25b 断線位置の接点、26 接点切替回路、26a 火災監視位置の接点、26b 断線位置の接点、40 制御回路、50 制御回路、100 火災報知設備、R 終端抵抗。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災受信機に接続されコモン線とライン線とからなる感知器回線と、該感知器回線に接続されスイッチング動作によって火災信号を前記感知器回線に出力する1個又は複数の火災感知器と、前記感知器回線に接続され前記火災受信機と前記火災感知器との間に介在する中継器と、を備えた火災報知設備において、
前記火災感知器は、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段と、
該点検手段の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を前記感知器回線に出力する出力手段と、を備え、
前記中継器は、前記火災感知器が出力する前記異常信号を受信する受信手段と、
前記中継器内の前記コモン線及びライン線に介在する接点からなり、該接点を切り替えて前記中継器と前記火災受信機の間の前記感知器回線を断線させる断線発生手段と、
断線すると共に、前記中継器と前記火災感知器の間の前記感知器回線に電源を供給する電源供給手段と、を備え、
前記火災受信機は、前記感知器回線が断線したときに断線警報を発する断線警報発報手段を備えたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
前記電源供給手段は電源装置又は前記火災受信機からの前記感知器回線とは別の電源線を介して電源を得ることを特徴とする請求項1記載の火災報知設備。
【請求項3】
前記火災感知器は、前記点検手段の結果に基づき、不具合があることを外部に表示して識別させる表示手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の火災報知設備。
【請求項4】
前記断線発生手段は、前記コモン線及びライン線に介在する接点を断続的に切り離すことを特徴とする請求項1乃至3記載いずれか記載の火災報知設備。
【請求項5】
前記受信手段は、前記断線発生手段により前記感知器回線が断線している場合であっても、前記火災感知器からの火災信号を受信すると、前記断線発生手段による断線を復旧させることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の火災報知設備。
【請求項6】
感知器回線に接続される火災受信機と、スイッチング動作によって火災信号を前記感知器回線に出力する火災感知器との間に介在し、前記感知器回線に接続される中継器において、
前記火災感知器の自己点検の結果に基づき、不具合の場合に出力される異常信号を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記火災感知器の異常信号の結果に基づき、前記火災感知器が不具合の場合に接点切替信号を出力する判定手段と、
前記感知器回線のコモン線及びライン線に介在する接点を有する2つの接点切替回路からなり、前記接点切替信号を受信すると、前記接点切替手段の接点を切り替えて前記中継器と前記火災受信機の間の前記感知器回線を断線させる断線発生手段と、
断線すると共に、前記中継器と前記火災感知器の間の前記感知器回線に電源を供給する電源供給手段と、を備えたことを特徴とする中継器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−109627(P2013−109627A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254993(P2011−254993)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】