説明

火災報知設備

【課題】間欠受信処理を行う感知器を備えた火災報知設備において、感知器が中継器からの無線信号をより確実に受信できる火災報知設備を得る。
【解決手段】通信階層における上位機器から送信された状態要求信号に基づいて、通信階層における下位機器が、自身の機器状態情報を含む状態情報信号を送信する状態収集処理において、無線式中継器Bとリピータ中継器Cは、送信スロットと連続受信スロットとが交互に所定回数繰り返されてなるブロック通信120により感知器Dに対して状態要求信号を送信するとともに、連続受信スロットにおいては受信機能を起動し、感知器Dは、連続受信スロットの自身に割り当てられたタイムスロットにおいて状態情報信号を送信するものであり、無線式中継器Bとリピータ中継器Cは、すべての感知器Dからの状態情報信号を受信すると、ブロック通信120における送信処理を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知器、及び火災受信機等を備えた火災報知設備に関し、特に、各種信号の一部を無線信号化した火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の火災感知器とこの火災感知器との間で無線信号を送受信する中継器とを備えた火災報知システムとして、「1個の下り方向(中継器2→火災感知器1)のタイムスロットBと、複数個(図では32個)の上り方向(火災感知器1→中継器2)のタイムスロットD1〜D32とからなる。すなわち、互いに共通の周波数チャネルを用いる各火災感知器1に個別にタイムスロットD1〜D32を割り振ることで、信号の衝突や誤動作を回避している。」というものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−9566号公報(第7頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火災感知器における受信処理に関し、無線信号の受信に要する消費電流を抑制することを目的として、所定周期で受信機能を起動して無線信号を受信する間欠受信を行うことが知られている。上記特許文献1に記載の技術では、「タイムスロットB」において中継器が火災感知器に対して無線信号を送信するが、この「タイムスロットB」が火災感知器の間欠受信タイミングと重ならない場合、火災感知器は中継器からの無線信号を受信できないという課題がある。
一方で、我が国で使用する無線機については、使用電波の特性が電波法の規定を満たす必要があり、また、使用目的毎に所定の規格が定められている(例えば、小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備 標準規格(社団法人電波産業会 標準規格RCR STD−30))。このような規格では、無線信号を連続して送信してもよい期間である送信期間の時間、及び、無線信号を送信してはいけない期間である送信休止期間の時間が規定されており、送信処理を行う際にはこれらの規格に準拠する必要がある。したがって、上記のような火災感知器の間欠受信タイミングを考慮して送信側(中継器)の送信期間の時間を長くする、といった対応にも限界がある。また、単純に送信側(中継器)の送信期間の時間を長くする、という対応は、火災感知器からの火災信号の受信の遅れにも繋がる可能性があり、好ましくない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、間欠受信処理を行う感知器を備えた火災報知設備において、感知器が中継器からの無線信号をより確実に受信することのできる火災報知設備を提供するものである。また、中継器から感知器への無線信号の送信時間をより短くすることのできる火災報知設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る火災報知設備は、火災現象に基づく環境変化を検出するとともに、間欠受信周期で無線信号を受信する感知器と、前記感知器を監視制御する火災受信機と、前記感知器と前記火災受信機との間に介在し、複数の通信階層を構成して無線信号を中継する1又は複数の中継器と、を備え、通信階層における上位機器から送信された状態要求信号に基づいて、通信階層における下位機器が、自身の機器状態情報を含む状態情報信号を送信する状態収集処理を行う火災報知設備であって、前記状態収集処理において、前記1又は複数の中継器は、送信期間と送信休止期間とが交互に所定回数繰り返されてなる送信パターンにより前記感知器に対して前記状態要求信号を送信するとともに、前記送信休止期間においては受信機能を起動し、前記感知器は、前記送信休止期間における自身に割り当てられたタイムスロットにおいて前記機器状態情報を送信するものであり、前記1又は複数の中継器は、すべての前記感知器からの前記機器状態情報を受信すると、前記送信パターンの前記送信期間における送信処理を中止するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る火災報知設備によれば、1又は複数の中継器は、送信期間と送信休止期間とが交互に所定回数繰り返されてなる送信パターンにより状態要求信号を送信するので、間欠受信処理を行う感知器が状態要求信号を受信する確率を高めることができる。また、1又は複数の中継器は、すべての感知器からの機器状態情報を受信すると、送信パターンの送信期間における送信処理を中止するので、無駄な送信処理を行うことがなく、状態要求信号の送信処理の時間を短縮することができる。また、状態要求信号の送信処理の時間を短縮できるので、消費電流を低減できるとともに、情報伝達の遅れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る火災報知設備のシステム構成図である。
【図2】実施の形態に係る感知器の主要構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係るリピータ中継器の主要構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る無線式中継器の主要構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態の状態収集処理及び火災通知処理において、無線式中継器あるいはリピータ中継器に対して送信される通信電文を説明する図である。
【図6】実施の形態の状態収集処理において、感知器に対して送信される通信電文及び感知器が送信する通信電文を説明する図である。
【図7】実施の形態の状態収集処理において、リピータ中継器が送信する通信電文を説明する図である。
【図8】実施の形態に係る状態収集処理を説明する図である。
【図9】図8の状態収集処理で送信される連送フレームの例を説明する図である。
【図10】実施の形態に係る状態収集処理の他の動作を説明する図である。
【図11】実施の形態に係る状態収集処理の他の動作を説明する図である。
【図12】図11の状態収集処理で送信される連送フレームの例を説明する図である。
【図13】実施の形態に係る火災通知処理を説明する図である。
【図14】実施の形態に係る状態収集処理中に感知器が火災を検知した場合の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(火災報知設備の構成)
まず、本実施の形態に係る火災報知設備について説明する。
図1は、実施の形態に係る火災報知設備のシステム構成図である。図1に示す火災報知設備は、監視対象となる建物に設置され、火災の発生を検知したときにこれを報知するシステムである。
【0010】
図1に示すように、実施の形態に係る火災報知設備100は、火災受信機Aと、火災受信機Aに伝送線CL1により接続された無線式中継器B1と、火災受信機Aに伝送線CL2により接続された無線式中継器B2とを備える。以下、無線式中継器B1、B2を無線式中継器Bと総称する場合がある。無線式中継器Bは、火災受信機Aに配線接続されて電源供給を受けて動作する。
監視対象となる建物の部屋等には、感知器D11、D12、D21、D22、D31、D32、D41、D42、D43(以下、感知器Dと総称する場合がある)が設置されている。
また、無線式中継器B1と感知器D21、D22との間に介在して無線信号を中継するリピータ中継器C1と、無線式中継器B1と感知器D31、D32との間に介在して無線信号を中継するリピータ中継器C2、C3とを備える。以下、リピータ中継器C1、C2、C3をリピータ中継器Cと総称する場合がある。
無線式中継器B1とリピータ中継器C(単数又は複数)は、通信の階層構造をなし、上位の階層から下位の階層へ、あるいは下位の階層から上位の階層へと無線信号を送受信する。なお、本実施の形態における無線式中継器Bとリピータ中継器Cは、本発明における中継器に相当する。
【0011】
ここで、各無線式中継器B及び当該無線式中継器Bとの間で無線送受信を行う機器の集合を、グループと称する。すなわち、無線式中継器B毎に、一つのグループを構成する。図1の例では、無線式中継器B1及びこの無線式中継器B1との間で無線送受信を行うリピータ中継器Cと感知器Dを、グループG1と称する。また、無線式中継器B2及びこの無線式中継器B2との間で無線送受信を行う感知器Dを、グループG2と称する。
また、各グループにおいては、無線式中継器Bを基点とする複数の通信経路を設けることができる。図1のグループG1の例では、無線式中継器Bと直接送受信を行う感知器D11及びD12が通信経路F1、リピータ中継器C1及びこれを介して送受信を行う感知器D21、D22が通信経路F2、リピータ中継器C2、C3及びこれを介して送受信を行う感知器D31、D32が通信経路F3である。また、図1のグループG2の例では、無線式中継器B2と直接送受信を行う感知器D41、D42、D43からなる一つの通信経路F4が設けられている。例えば、各機器間の通信周波数は、グループ毎に同じ設定とすることができるが、これに限定するものではない。
【0012】
(感知器D)
感知器Dは、火災現象に基づく検知対象物の物理量又は物理的変化を検出して、検出内容に応じた状態信号を無線信号として送信する。感知器Dは、例えば、検出した煙濃度に基づくアナログ値又は火災信号を無線信号として出力するいわゆる煙感知器、あるいは、検出した周囲温度に基づくアナログ値又は火災信号を無線信号として出力するいわゆる熱感知器等の、火災を検出するための感知器である。感知器Dは、無線式中継器Bあるいはリピータ中継器Cとの間で無線信号の送受信が可能である。
【0013】
図2は、実施の形態に係る無線式の感知器Dの主要構成を示すブロック図である。感知器Dは、制御回路1、電池2、定電圧回路3、電圧検出回路4、送受信回路5、アンテナ6、火災検出回路7、表示灯回路8、登録スイッチ9を備える。
【0014】
電池2は、定電圧回路3に直流電源を供給する。定電圧回路3は、電池2の電圧を所定電圧に制御し、制御回路1、送受信回路5、火災検出回路7、表示灯回路8に供給する。
【0015】
電圧検出回路4は、定電圧回路3に印加される電池2の電圧を検出し、検出した電圧に応じた電池電圧検出信号を制御回路1に出力する。電圧検出回路4は、電池残量が低下したこと、又は、電池切れの閾値を超えたこと、を検出すると、制御回路1に出力し、これにより制御回路1は表示灯回路8を駆動させるとともに、電池切れの状態情報を含む状態信号を送受信回路5より出力させる。
【0016】
火災検出回路7は、火災現象に基づく煙又は熱等の検知対象物の物理量又は物理的変化を検出して、検出内容に応じた状態信号を制御回路1に出力する。表示灯回路8は、発光ダイオード等の表示灯の点灯動作を制御する回路である。
【0017】
送受信回路5は、無線信号を送受信するためのアンテナ6に接続されており、送信回路5aと受信回路5bとを備える。受信回路5bは、所定周期で受信サンプリング動作を行ってアンテナ6から入力された無線信号を検出し、無線信号が自己宛であればその内容に応じて受信処理を行う。そして、受信回路5bは、受信処理した信号を、制御回路1へ出力する。また、送信回路5aは、制御回路1に制御されて、状態信号などの信号の送信処理を行う。
登録スイッチ9は、グループ内において無線信号を送受信するのに必要な通信経路等の情報を登録するときに使用されるスイッチである。
【0018】
制御回路1は、火災検出回路7によって出力された信号に基づいて火災状態等を判別する状態判別部としての機能を有する。また、火災状態であると判別した場合には、表示灯回路8を制御して表示灯によって警報を行う。また、送受信回路5が受信した信号に基づいて必要な処理を行うとともに、必要に応じて送受信回路5を制御して他の機器に状態信号や火災通知信号などの信号を送信する。
【0019】
記憶素子1aは、EEPROMなどの不揮発性メモリであり、制御回路1が実行するプログラムや各種データを格納している。
【0020】
(リピータ中継器C)
リピータ中継器Cは、無線式中継器Bと感知器Dとの間に介在し、無線信号の中継を行う。すなわち、リピータ中継器Cは、無線式中継器Bと感知器Dとの間で互いに電波が届かない場合に、この電波の届く範囲を拡大する。図1のグループG1に示すリピータ中継器C2、C3のように、無線式中継器Bと感知器Dとの間に2台以上のリピータ中継器Cを設けて中継させることも可能である。
【0021】
図3は、実施の形態に係るリピータ中継器Cの主要構成を示すブロック図である。リピータ中継器Cは、制御回路11、電池2、定電圧回路3、電圧検出回路4、送受信回路5、アンテナ6、表示灯回路8、登録スイッチ9を備える。リピータ中継器Cは、前述の感知器Dと異なり火災検出回路7を備えておらず、また、制御回路11の動作内容及び記憶素子11aに記憶される情報が一部異なるが、その他の構成については感知器Dと基本的に同様である。
なお、リピータ中継器Cに例えば図2の火災感知器Dに示すような火災検出回路7や煙や熱等を感知するセンサを設け、リピータ中継器Cが火災検出機能を有する構成としてもよい。
【0022】
(無線式中継器B)
無線式中継器Bは、感知器D及びリピータ中継器Cとの間で無線信号を送受信し、感知器Dあるいはリピータ中継器Cからの無線信号を火災受信機Aに伝送する機能を有する。
【0023】
図4は、実施の形態に係る無線式中継器Bの主要構成を示すブロック図である。
無線式中継器Bは、制御回路21、定電圧回路3、電圧検出回路4、送受信回路5、アンテナ6、表示灯回路8、登録スイッチ9、受信機I/F回路22、電源線用端子20a、信号線用端子20bを備える。無線式中継器Bは、前述の感知器Dやリピータ中継器Cのように電池駆動ではなく、火災受信機Aと電源線用端子20aとを接続する電源線を介して火災受信機AからDC電源を供給される。また、火災受信機Aと信号線用端子20bとが信号線(伝送線CL)で接続されており、無線式中継器Bは受信機I/F回路22を介して火災受信機Aと信号を送受信する。また、制御回路21の動作内容及び記憶素子21aに記憶される情報が一部異なるが、その他の構成については感知器Dやリピータ中継器Cと基本的に同様である。
【0024】
(火災報知設備の動作概要)
火災報知設備100の主要な動作の一つ目は、火災監視である。具体的には、各感知器Dは、自身の監視領域において火災発生の有無を監視する。そして、感知器Dが火災による煙や熱などの環境の変化を検知すると、この検知情報が、リピータ中継器Cを介してあるいは直接、無線式中継器Bに無線信号により伝えられる。さらに無線式中継器Bから火災受信機Aに対し、検知情報が伝えられる。火災受信機Aは、火災の検知情報を受信すると、図示しない音響警報装置を制御して火災報知を行わせるとともに、図示しない防火戸や排煙機、シャッター等を作動させて延焼を防ぐ。
また、火災報知設備100の主要な動作の二つ目は、状態収集処理である。火災報知設備100においては、これを構成する各機器に電池切れや無線通信不良が生じると、火災通知が行えなくなってしまう。このような不具合が生じないようにするため、各機器の状態(電池状態や無線通信機能の状態など)を所定周期で収集する状態収集処理を行う。
【0025】
上記のような火災監視や状態収集の送受信処理においては無線信号により通信を行う。
無線式中継器B及びリピータ中継器Cは、火災受信機Aと感知器Dとの間に介在し、これらの間で行われるべき無線通信を中継する中継器として機能する。
【0026】
また、火災報知設備100を構成する各機器には、信号の送受信を行うために必要な情報が各機器の記憶素子に記憶されている。記憶素子に記憶される情報としては、少なくとも、グループID、自己アドレス、上位機器アドレス、下位機器アドレス、機器番号を含んでいる。
グループIDは、図1に示すグループ毎に固有に割り当てられるIDである。このグループIDは、無線式中継器B、リピータ中継器C、及び感知器Dのすべての機器に対して設定されている。
自己アドレスは、各機器に固有に割り当てられた通信アドレスであり、無線式中継器B、リピータ中継器C、及び感知器Dのすべての機器に対して設定されている。
【0027】
上位機器アドレスは、通信階層において自身の直近上位に位置する機器のアドレスである。ここで、上位とは、各機器に対して火災受信機Aにより近い側をいう。例えば、図1のグループG1において、リピータ中継器C1の上位機器は無線式中継器B1であり、感知器D21、D22の上位機器はリピータ中継器C1である。この上位機器アドレスは、リピータ中継器C、及び感知器Dに対して設定されている。
下位機器アドレスは、通信階層において自身の直近下位に位置する機器のアドレスである。ここで、下位とは、各機器に対して火災受信機Aから遠い側をいう。例えば、図1のグループG1において、リピータ中継器C2の下位機器はリピータ中継器C3であり、リピータ中継器C3の下位機器は感知器D31、D32である。この下位機器アドレスは、無線式中継器B及びリピータ中継器Cに対して設定されている。
【0028】
機器番号は、一つのグループに属する同種の機器内において、各端末に固有に割り当てられた番号である。例えば、本実施の形態では1グループに接続可能なリピータ中継器Cの最大数は6台であり、各リピータ中継器Cには01〜06のいずれかの機器番号が割り当てられる。また、本実施の形態では1グループに接続可能な感知器Dの最大数は30台であり、各感知器Dには01〜30のいずれかの機器番号が割り当てられる。なお、本実施の形態では自己アドレスと機器番号とを別に設ける例を示すが、各機器に固有の情報である自己アドレスを機器番号として使用することもできる。
【0029】
ここで、グループ内において無線信号を送受信するのに必要な通信経路等の情報を各機器に登録する登録処理の概要を説明する。
まず、上位機器となる無線式中継器Bとリピータ中継器Cは、通信経路を登録するための動作モードとして登録モードというモードを有している。また、下位機器となるリピータ中継器Cと感知器Dは、通信経路の登録を要求する登録要求信号の送信が可能である。
このような構成において、登録モード状態の上位機器(無線式中継器B又はリピータ中継器C)に対し、下位機器(リピータ中継器C又は感知器D)から自身のアドレスを含む登録要求信号が送信されると、上位機器は、登録要求信号に含まれるアドレスを自身の下位機器アドレスとして設定するとともに、その下位機器に対して自己アドレスを含む登録信号を送信する。この登録信号を受信した下位機器(リピータ中継器C又は感知器D)は、登録信号に含まれるアドレスを自身の上位機器アドレスとして設定する。このような処理を通信経路を構成する各機器について行うことにより、その通信経路が確立される。なお、登録モードへの移行や登録要求信号の送信は、登録スイッチ9を使用者に操作されることによって実行される。また、この登録処理は、火災報知設備100を新たに設置する際に行う他、火災報知設備100を設置した後に機器を増設する場合にも行うことができる。
【0030】
(送受信処理の概要)
次に、火災報知設備100における送受信処理の概要について説明する。
火災報知設備100における無線信号の主要な送受信処理は、(1)状態収集処理、(2)火災通知処理、である。
【0031】
(1)状態収集処理
状態収集処理は、無線式中継器Bが、自身と無線信号の送受信を行う機器(リピータ中継器C、感知器D)の状態情報(例えば、電池状態等)を収集する処理である。無線式中継器Bは、自身の下位機器に対してその機器自身の状態情報を送信するよう要求する状態要求信号を送信し、この状態要求信号を受信した機器は、さらに自身の下位機器に対して状態要求信号を送信する。この状態要求信号は、その通信経路の末端に至るまで中継され、末端の機器である感知器Dは、自身の状態情報を含む信号を状態情報信号として上位機器に対して送信する。この状態情報信号を受信した上位機器は、受信した信号に対して自身の状態情報を含む信号を付加し、その信号を状態情報信号として上位機器へと送信する。この状態情報信号は、通信経路の最上位機器である無線式中継器Bに至るまで順に送信される。そして、無線式中継器Bは、下位機器から収集した状態情報信号を自ら状態判定して、必要があれば、その状態情報信号に含まれる情報を火災受信機Aに送信する。
【0032】
状態収集処理は、無線通信の経路毎に行う。すなわち、図1の例では、まず、無線式中継器B1が感知器D11及びD12との間(通信経路F1)で状態収集処理を行い、これが終了すると、無線式中継器B1がリピータ中継器C1及びこれと送受信を行う感知器D21、D22との間(通信経路F2)で状態収集処理を行い、これが終了すると、無線式中継器B1がリピータ中継器C2、C3及びこれと送受信を行う感知器D31、D32との間(通信経路F3)で状態収集処理を行う。状態収集処理は、所定周期(例えば24時間周期)で行ってもよいし、火災報知設備100の設置年数等の状況に応じて状態収集処理を行う周期を変化させてもよい。
【0033】
(2)火災通知処理
これは、感知器Dが検知した火災情報に基づく無線信号を、無線式中継器Bを介して火災受信機Aに対して送信する処理である。信号の流れは、感知器D、リピータ中継器C(介在する場合のみ)、無線式中継器B、火災受信機A、という通信経路の下位機器から上位機器までの順となる。なお、本実施の形態では説明のため、感知器Dが上位機器に対して送信する火災情報に基づく無線信号を「火災通知信号」とし、リピータ中継器Cが上位機器に対して転送する火災情報に基づく無線信号を「火災転送信号」として使い分ける場合があるが、両者を総称する場合には「火災信号」という。
【0034】
なお、無線信号を送信する際には、規格等で設定されている送信時間の範囲内で送信する必要がある。本実施の形態では、標準規格RCR STD−30に準拠し、送信期間が3秒以下、送信休止時間が2秒以上である場合を例に説明する。
また、無線式中継器B、リピータ中継器C、及び感知器Dは、基本的には所定時間おきに他の機器からの無線信号の受信を行う間欠受信を行っている。本実施の形態では、無線式中継器Bの間欠受信間隔をTB、リピータ中継器Cの間欠受信間隔をTC、感知器Dの間欠受信間隔をTDとする。
【0035】
(通信電文)
次に、本実施の形態に係る火災報知設備100で用いられる通信電文について説明する。ここで説明する通信電文は、上述の(1)状態収集処理、(2)火災通知処理において用いられる通信電文である。
実施の形態の火災報知設備100では、送受信処理の種類((1)状態収集処理又は(2)火災通知処理)と、送信元機器の種別、及び受信元機器の種別によって、使用する通信電文が定められている。まずは、各通信電文を具体的に説明する。
【0036】
図5は、実施の形態の状態収集処理及び火災通知処理において、無線式中継器あるいはリピータ中継器に対して送信される通信電文を説明する図である。
図5に示す通信スロット110は、送信元(無線式中継器B又はリピータ中継器C)からリピータ中継器C、あるいは、送信元(リピータ中継器C又は感知器D)から無線式中継器B又はリピータ中継器Cに信号を伝送する送信スロット111と、他の機器からの信号を受信する連続受信スロット112から構成される。
【0037】
送信スロット111は、連続する複数(本実施の形態では60)の基本フレーム101で構成される。すなわち、送信スロット111では、基本フレーム101を連続して複数回送信する。基本フレーム101は、例えば、同期信号、送信元を識別するためのグループIDや送信元アドレス、フレーム番号、データ等を含んでいる。
送信スロット111の長さは、無線式中継器Bの間欠受信間隔TB及びリピータ中継器Cの間欠受信間隔TCの長さよりも長くなるよう設定されており、無線式中継器Bとリピータ中継器Cが送信スロット111のうちのいずれかの基本フレーム101を受信できるようになっている。
なお、送信スロット111による送信を開始する前には、送信前CS(送信前キャリアセンス)を行い、他の機器が無線信号を送信中でないことを確認した後に送信を開始する。
【0038】
連続受信スロット112は、無線信号の送信を行わない送信休止期間であり、受信回路を起動して無線信号の受信処理を行う時間帯である。連続受信スロット112は、火災転送信号用エリア113と、火災通知信号用エリア114と、その他信号用エリア115とを備える。火災転送信号用エリア113は他の機器から転送される火災転送信号を受信するためのエリア、火災通知信号用エリア114は感知器Dから送信される火災通知信号を受信するためのエリア、その他信号用エリア115は、火災転送信号と火災通知信号以外の制御要求信号又は状態要求信号を受信するためのエリアである。詳細は図14で後述するが、他の機器は、この火災転送信号用エリア113、火災通知信号用エリア114、その他信号用エリア115に対して、対応する信号を送信することができるようになっている。本実施の形態では、無線信号の重要性が高い順に、火災転送信号用エリア113、火災通知信号用エリア114、その他信号用エリア115の順番でエリアが設けられている。
【0039】
図6は、実施の形態の状態収集処理において、感知器に対して送信される通信電文及び感知器が送信する通信電文を説明する図である。図6(A)は、感知器Dに対して無線式中継器B又はリピータ中継器Cが送信する通信電文を示し、図6(B)は、感知器Dが送信する通信電文を示している。なお、図6(B)では、間欠受信タイミングの異なる複数の感知器Dの送受信動作例を示している。
【0040】
図6(A)に示すブロック通信120は、送信スロット121と、連続受信スロット122と、送信スロット123と、連続受信スロット124と、送信スロット125と、連続受信スロット126とで構成される。送信スロット121、123、125は、連続する複数の基本フレーム101で構成される。すなわち、送信スロット121、123、125では、基本フレーム101を連続して複数回送信する。なお、送信スロット121による送信を開始する前には、送信前CS(送信前キャリアセンス)を行い、他の機器が無線信号を送信中でないことを確認した後に送信を開始する。
【0041】
連続受信スロット122、124、126は、無線信号の送信を行わない送信休止期間であり、受信回路を起動して無線信号の受信処理を行う。
ブロック通信120では、無線信号を送信する送信期間(送信スロット121、123、125)と、無線信号を送信しない送信休止期間(連続受信スロット122、124、126)とを交互に繰り返す。
【0042】
ここで、ブロック通信120を構成する各スロットの時間について説明する。まず、無線信号の送信処理は、前述のように規格に従い、送信期間が3秒以下、送信休止時間が2秒以上となるように設定される必要がある。一方で、受信側である感知器Dは、間欠受信間隔TD(本実施の形態では7秒)毎に間欠受信を行っているとともに、各感知器Dの間欠受信のタイミングは異なりうる。したがって、各感知器Dが間欠受信において無線信号を受信するためには、各感知器Dの間欠受信のタイミングが、信号送信元の送信スロット121、123、125のいずれかに含まれている必要がある。
そこで、本実施のブロック通信120では、送信スロット121、連続受信スロット122、送信スロット123の合計時間が、感知器Dの間欠受信間隔TD(7秒)以下であり、かつ、連続受信スロット122(図6における区間T1)の7秒後が送信スロット125に含まれるようにしている。このようにすることで、すべての感知器Dが、送信スロット121、123、125のいずれかで送信された無線信号を受信できるようにしている。すなわち、例えば、ある感知器Dの間欠受信タイミングが、連続受信スロット122に含まれていた場合でも、その感知器Dは、次の間欠受信タイミングにおいて送信スロット125で送信された無線信号を受信することができる。
【0043】
図6(B)に示すように、感知器Dは、無線式中継器B又はリピータ中継器Cからの無線信号を受信すると、短縮フレーム102を送信する。この短縮フレーム102は、例えば、同期信号、送信元を識別するためのグループIDや送信元アドレス、データ等を含んでいる。
【0044】
ここで、感知器Dが応答の信号として短縮フレーム102を送信するタイミングについて説明する。まず、連続受信スロット122についてさらに説明する。図6(A)に示すように、連続受信スロット122は、各感知器Dそれぞれからの無線信号を受信するためのエリアに分かれた感知器返送スロット129を含んでいる。感知器返送スロット129は、グループに接続可能な感知器Dの台数分のエリア(本実施の形態では30エリア)に分かれている。
各感知器Dは、送信スロット121、123、125で送信されたいずれかの基本フレーム101を受信すると、受信した基本フレーム101に含まれるフレーム番号に基づいて、その送信スロット(送信スロット121、123、125のいずれか)が終了するまで待機する。そして、予め各感知器Dの記憶素子1aに記憶された感知器返送スロット129の各エリアのタイミングに関する情報に基づいて、感知器Dは、感知器返送スロット129のエリアのうち、自身に割り当てられた機器番号に対応したエリア(時間帯)に対して、無線信号を送信する。例えば、機器番号5番の感知器Dは、感知器返送スロット129の5番目のエリアに対して無線信号を送信する。このように、感知器Dによって受信の時間帯(感知器Dの送信時間帯)を定めておくことで、複数の感知器Dによって信号が同時に送信されることにより電文が破壊されることを抑制することができる。また、1回のブロック通信120で複数の感知器Dからの無線信号を受信できるので、受信に要する時間を短縮することができる。
【0045】
次に、間欠受信タイミングの異なる感知器Dの動作例を、図6(B)を参照して説明する。まず、機器番号01の感知器Dは、間欠受信により送信スロット123の45フレーム目の基本フレーム101を受信し、これに対する応答としての短縮フレーム102を、連続受信スロット124の感知器返送スロット129の1番目のエリアに対して送信する。また、機器番号02の感知器Dは、間欠受信により送信スロット121の48フレーム目の基本フレーム101を受信し、これに対する応答としての短縮フレーム102を、連続受信スロット122の感知器返送スロット129の2番目のエリアに対して送信する。また、番号03の感知器Dは、間欠受信により送信スロット125の55フレーム目の基本フレーム101を受信し、これに対する応答としての短縮フレーム102を、連続受信スロット126の感知器返送スロット129の3番目のエリアに対して送信する。
このように、各感知器Dは、信号を受信した送信スロット(送信スロット121、123、125のいずれか)に続く連続受信スロット(連続受信スロット122、124、126のいずれか)において、短縮フレーム102を送信する。
【0046】
図7は、実施の形態の状態収集処理において、リピータ中継器が送信する通信電文を説明する図である。より具体的には、図7に示す通信電文は、状態収集処理においてリピータ中継器Cが、無線式中継器B又はリピータ中継器Cに対して送信するものある。
図7に示す通信スロット130は、リピータ中継器Cから他のリピータ中継器C又は無線式中継器Bに対して信号を伝送する送信スロット131と、他の機器からの信号を受信する連続受信スロット132から構成される。
【0047】
送信スロット131は、連続する複数(本実施の形態では10)の連送フレーム103で構成される。すなわち、送信スロット131では、連送フレーム103を連続して複数回送信する。
この送信スロット131は、無線式中継器Bあるいはリピータ中継器Cに対して無線信号を送るものである。したがって、送信スロット131の長さは、無線式中継器Bの間欠受信間隔TB及びリピータ中継器Cの間欠受信間隔TCの長さよりも長くなるよう設定されており、無線式中継器Bとリピータ中継器Cが送信スロット131のうちのいずれかのフレームを受信できるようになっている。
なお、送信スロット131による送信を開始する前には、送信前CS(送信前キャリアセンス)を行い、他の機器が無線信号を送信中でないことを確認した後に送信を開始する。
【0048】
連送フレーム103は、感知器情報201と、リピータ中継器情報202とを含んでいる。感知器情報201は、1台の無線式中継器Bと通信可能な感知器Dの台数分(本実施の形態では30)のデータエリアで構成されている。リピータ中継器情報202は、1台の無線式中継器Bと通信可能なリピータ中継器Cの台数分(本実施の形態では6)のデータエリアで構成されている。
【0049】
連続受信スロット132は、無線信号の送信を行わず他の機器からの信号を受信待機する時間帯であり、火災転送信号用エリア133と、火災通知信号用エリア134と、その他信号用エリア135とを備える。連続受信スロット132、火災転送信号用エリア133、火災通知信号用エリア134、及びその他信号用エリア135は、それぞれ、図5で示した連続受信スロット112、火災転送信号用エリア113、火災通知信号用エリア114、及びその他信号用エリア115と同様の構成である。
【0050】
(送受信処理の詳細)
次に、(1)状態収集処理、及び(2)火災通知処理について、これらの処理で使用される通信電文を含めてさらに説明する。
【0051】
(1)状態収集処理
図8は、実施の形態に係る状態収集処理を説明する図である。なお、図8では、図1に示す無線式中継器B1と無線通信を行う通信経路のうち、通信経路F1(感知器D11、D12の通信経路)と、通信経路F3(リピータ中継器C2、C3、感知器D31、32の通信経路)を例に説明する。
【0052】
まず、グループG1における状態収集処理のタイミングが到来したものとする。
(S301)無線式中継器B1は、通信経路F1に属する機器のうち、記憶素子に記憶されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を送信する。この例では、無線式中継器B1の通信経路F1における下位機器は感知器D11、D12であるので、無線式中継器B1は、状態要求信号を、ブロック通信120(図6(A))にて送信する。
一方、感知器D11、D12は、間欠受信間隔TDで間欠受信を行っており、無線式中継器B1がブロック通信120の送信スロット121、123、125のいずれかで送信した状態要求信号を受信する。この例では、感知器D12は送信スロット123で送信された状態要求信号を受信し、感知器D11は送信スロット125で送信された状態要求信号を受信したものとする。
【0053】
(S302)感知器D12は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、連続受信スロット124の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリアにおいて(図6)、状態情報信号を送信する。感知器D12が送信した状態情報信号は、無線式中継器B1により受信される(ステップS301)。
(S303)感知器D11は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、連続受信スロット126の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリアにおいて(図6)、状態情報信号を送信する。感知器D12が送信した状態情報信号は、無線式中継器B1により受信される(ステップS301)。
【0054】
このステップS301〜S303により通信経路F1の状態収集処理は終了し、無線式中継器B1は、感知器D11及び感知器D12の状態情報を収集したこととなる。
なお、図1の例では、通信経路F1の状態収集処理が終了した後には通信経路F2の状態収集処理を行うが、通信経路F2における処理内容は通信経路F3の処理内容に含まれているため、ここでは説明を省略し、以下、通信経路F3の状態収集処理を説明する。
【0055】
(S304)無線式中継器B1は、通信経路F3に属する機器のうち、記憶素子に記憶されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を送信する。この例では、無線式中継器B1の通信経路F3における下位機器はリピータ中継器C2であるので、無線式中継器B1は、状態要求信号を、通信スロット110の送信スロット111(図5)にて送信する。無線式中継器B1は、送信スロット111により状態要求信号を送信した後は、受信機能を起動して連続受信スロット112の受信待機状態に移行する。
一方、リピータ中継器C2は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、無線式中継器B1が送信スロット111で送信した状態要求信号を受信する。
【0056】
(S305)リピータ中継器C2は、無線式中継器B1が送信した状態要求信号を受信すると、自身の記憶素子に記憶されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を中継送信する。この例では、リピータ中継器C2の下位機器はリピータ中継器C3であるので、リピータ中継器C2は、状態要求信号を、通信スロット110の送信スロット111(図5)にて送信する。
【0057】
ここで、リピータ中継器C2が状態要求信号を送信するタイミングにおいて、無線式中継器B1は、連続受信スロット112の受信待機状態である(S304)。無線式中継器B1は、リピータ中継器C2がリピータ中継器C3宛に送信した状態要求信号を連続受信スロット112にて受信し(S304の破線参照)、これにより、状態要求信号が相手に正常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS304の連続受信スロット112にて、リピータ中継器C2により送信された状態要求信号を受信できない場合には、無線式中継器B1は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状態要求信号を再送する。
一方、リピータ中継器C3は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、リピータ中継器C2がステップS305で送信した状態要求信号を受信する。
【0058】
(S306)リピータ中継器C3は、リピータ中継器C2が送信した状態要求信号を受信すると、自身の記憶素子に記憶されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を送信する。この例では、リピータ中継器C3の下位機器は感知器D31、D32であるので、リピータ中継器C3は、状態要求信号を、ブロック通信120の送信スロット121、123、125(図6(A))にて送信する。
【0059】
ここで、リピータ中継器C3が状態要求信号を送信するタイミングは、リピータ中継器C2が連続受信スロット112にて受信待機している状態である(S305)。リピータ中継器C3は、ステップS305にてリピータ中継器C2により送信された通信スロット110の基本フレーム101を受信すると、受信した基本フレーム101に含まれるフレーム番号に基づいて、リピータ中継器C2の連続受信スロット112におけるその他信号用エリア115のタイミングを把握する。そして、リピータ中継器C3は、リピータ中継器C2におけるその他信号用エリア115を含む時間帯に、感知器Dに対して状態要求信号の送信を開始するのである(ステップS306)。
リピータ中継器C2は、リピータ中継器C3が送信した状態要求信号を連続受信スロット112にて受信し(S305の破線矢印参照)、これにより、状態要求信号が相手に正常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS305の連続受信スロット112にて、リピータ中継器C3により送信された状態要求信号を受信できない場合には、リピータ中継器C2は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状態要求信号を再送する。
一方、感知器D31、D32は、間欠受信間隔TDで間欠受信を行っており、リピータ中継器C3が送信スロット121、123、125のいずれかで送信した状態要求信号を受信する。この例では、感知器D32は送信スロット123で送信された状態要求信号を受信し、感知器D31は送信スロット125で送信された状態要求信号を受信したものとする。
【0060】
(S307)感知器D32は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、連続受信スロット124の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリアにおいて(図6)、状態情報信号を送信する。感知器D32が送信した状態情報信号は、リピータ中継器C3により受信される(ステップS306)。
(S308)感知器D31は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、連続受信スロット126の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリアにおいて(図6)、状態情報信号を送信する。感知器D31が送信した状態情報信号は、リピータ中継器C3により受信される(ステップS306)。
【0061】
このステップS306、307、308により、リピータ中継器C3は、自身の下位機器(感知器D31、D32)の状態情報を収集したこととなる。
【0062】
(S309)リピータ中継器C3は、自身の記憶素子に記憶されている上位機器アドレスに対し、状態情報信号を送信する。この例では、リピータ中継器C3の上位機器はリピータ中継器C2であるので、リピータ中継器C3は、通信スロット130の送信スロット131(図7)により状態情報信号を送信する。
ここで、ステップS309にて送信される送信スロット131を構成する連送フレーム103の例を図9(A)に示す。図9(A)に示すように、ステップS309で送信される連送フレーム103は、ステップS306で受信した感知器D31、D32からの状態情報信号に含まれる状態情報を感知器情報201に含むとともに、リピータ中継器C3自身の状態情報をリピータ中継器情報202に含んでいる(図9(A)の網掛け部分)。すなわち、リピータ中継器C3から送信される状態情報信号には、リピータ中継器C3の下位機器である感知器D31、D32及びリピータ中継器C3の状態情報が含まれている。
一方、リピータ中継器C2は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、リピータ中継器C3がステップS309で送信した状態情報信号を受信する。
【0063】
(S310)リピータ中継器C2は、リピータ中継器C3が送信した状態情報信号を受信すると、自身の記憶素子に記憶されている上位機器アドレスに対し、状態情報信号を送信する。この例では、リピータ中継器C2の上位機器は無線式中継器B1であるので、リピータ中継器C2は、通信スロット130の送信スロット131(図7)によりリピータ中継器C3が送信した通信スロット130のその他信号用エリア135のタイミングで、状態情報信号を送信する。
ここで、ステップS310にて送信される送信スロット131を構成する連送フレーム103の例を図9(B)に示す。図9(B)に示すように、ステップS310で送信される連送フレーム103の感知器情報201には感知器D31、D32の状態情報を含み、リピータ中継器情報202にはリピータ中継器C3、C2の状態情報を含んでいる(図9(B)の網掛け部分)。すなわち、リピータ中継器C2は、下位機器から受信した状態情報信号に対して自身の状態情報を付加した信号を、状態情報信号として送信する。
【0064】
ここで、リピータ中継器C2が状態情報信号を送信するタイミングにおいて、リピータ中継器C3は、連続受信スロット132の受信待機状態である(S309)。リピータ中継器C3は、リピータ中継器C2が無線式中継器B1宛に送信した状態情報信号を連続受信スロット132にて受信し(S309の破線参照)、これにより、状態情報信号が相手に正常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS309の連続受信スロット132にて、リピータ中継器C2により送信された状態情報信号を受信できない場合には、リピータ中継器C3は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状態情報信号を再送する。
一方、無線式中継器B1は、間欠受信間隔TBで間欠受信を行っており、リピータ中継器C2がステップS310で送信した状態要求信号を受信する。
【0065】
(S311)無線式中継器B1は、リピータ中継器C2が送信した状態情報信号を受信すると、送信元の機器に対して、リピータ中継器C2が送信した通信スロット130のその他信号用エリア135のタイミングで、信号を受信したことを表す信号である受信応答信号を送信する。
リピータ中継器C2は、無線式中継器B1により送信された受信応答信号をステップS310の連続受信スロット132において受信し、これにより、状態情報信号が相手に正常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS310の連続受信スロット132にて、無線式中継器B1により送信された受信応答信号を受信できない場合には、リピータ中継器C2は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状態情報信号を再送する。
【0066】
また、図示しないが、無線式中継器B1は、自身のグループの全通信経路の状態収集処理が終了すると、収集した状態情報を含む信号を自ら状態判定するとともに、必要であれば、その状態情報信号に含まれる情報を火災受信機Aに送信する。また、ステップS311では、無線式中継器B1がリピータ中継器C2に対して受信応答信号を送信する例を示しているが、無線式中継器B1と火災受信機Aとの間で無線通信を行う構成であれば、無線式中継器B1から火災受信機Aに対して送信される状態情報を含む信号を、リピータ中継器C2に対する受信応答信号に代えてもよい。
【0067】
このように、本実施の形態の火災報知設備100においては、図8のステップS305、S306、S310に示すように、リピータ中継器Cが中継先の機器に対して送信する状態情報信号が、中継元の機器に対して受信したことを示す応答信号を兼ねている。このため、信号を正常に受信したことを示す応答信号を中継元機器に対して別途送信する場合と比較して、信号送信回数を低減でき、消費電流を低減できるとともに通信トラフィックを抑制できる。
【0068】
次に、状態収集処理の、前述の図8とは異なる他の動作例を説明する。図10は、実施の形態に係る状態収集処理の他の動作を説明する図である。図10では、通信経路F1(無線式中継器B1、感知器D11、感知器D12)における状態収集処理を例に説明しており、図10におけるステップS301A、S302A、S303Aは、それぞれ、図8におけるステップS301、S302、S303に対応する。ここでは、図8との相違点を中心に説明する。
【0069】
(S301A)無線式中継器B1は、通信経路F1に属する機器のうち、自身の下位機器である感知器D11、D12に対し、ブロック通信120(図6(A))にて状態要求信号を送信する。
図8の例とは異なり、ここでは、感知器D11、D12は、ともに送信スロット121で送信された状態要求信号を受信したものとする。
【0070】
(S302A)感知器D12は、状態要求信号を受信すると、無線式中継器B1の、連続受信スロット122の感知器返送スロット129の自身の番号に対応するエリアにおいて(図6)、状態情報信号を送信する。感知器D12が送信した状態情報信号は、無線式中継器B1により連続受信スロット122にて受信される(ステップS301A)。
(S303A)感知器D11は、状態要求信号を受信すると、無線式中継器B1の、連続受信スロット122の感知器返送スロット129の自身の番号に対応するエリアにおいて(図6)、状態情報信号を送信する。感知器D11が送信した状態情報信号は、無線式中継器B1により連続受信スロット122にて受信される(ステップS301A)。
【0071】
すなわち、無線式中継器B1は、ステップS301Aの連続受信スロット122において、すべての下位機器である感知器D11及び感知器D12からの状態情報信号を収集したこととなる。そうすると、無線式中継器B1は、予定されていた送信スロット123、連続受信スロット124、送信スロット125、及び連続受信スロット126における処理を行わない。
【0072】
図示しないが、同様にして、例えば無線式中継器B1が連続受信スロット122、124においてすべての下位機器である感知器D11及び感知器D12からの状態情報信号を受信した場合には、送信スロット125及び連続受信スロット126における処理を行わない。このことは、図8に示したリピータ中継器C3による状態要求信号送信処理(ステップS306)についても同様である。
【0073】
このように、ブロック通信120では、必ずしもすべてのスロット(送信スロット121、連続受信スロット122、送信スロット123、連続受信スロット124、送信スロット125、及び連続受信スロット126)を実行するものではなく、その通信経路に属するすべての感知器Dからの状態情報信号を受信した時点で、信号の送信を中止する。このようにすることで、無駄な通信処理を行う必要がなく、状態要求信号の送信処理の時間を短縮することができる。状態要求信号の送信処理の時間を短縮できるので、消費電流を低減できるとともに、情報伝達の遅れを防ぐことができる。
【0074】
次に、状態収集処理の、前述の図8、図10とは異なる他の動作例を説明する。図11は、実施の形態に係る状態収集処理の他の動作を説明する図である。図11では、通信経路F2(無線式中継器B1、リピータ中継器C2、リピータ中継器C3、感知器D31、感知器D32)における状態収集処理を説明しており、図11におけるステップS306、S308は、図8におけるステップS306、308と同一の処理であり、図11におけるステップS309Bは、図8におけるステップS309に対応する。ここでは、図8との相違点を中心に説明する。
【0075】
ステップS306に示すように、リピータ中継器C3は、自身の下位機器である感知器D31、D32に対し、ブロック通信120(図6(A))にて状態要求信号を送信したものとする。これに対し、感知器D31は、ステップS308に示すように状態情報信号を送信している。
しかし、感知器D32は、受信機能の異常や送信機能の異常など何らかの異常により、状態情報信号を送信できないものとする。すなわち、リピータ中継器C3は、ステップS306の連続受信スロット122、124、126のいずれにおいても、感知器D32からの状態情報信号を受信することができない。
【0076】
この場合、ステップS309Bにおいてリピータ中継器C3により送信される送信スロット131を構成する連送フレームは、図12に示す通りである。すなわち、図12に示すようにステップS309Bで送信される連送フレーム103は、図9(A)と同様に、ステップS306で受信した感知器D31からの状態情報信号に含まれる状態情報を感知器情報201に含むとともに、リピータ中継器C3自身の状態情報をリピータ中継器情報202に含んでいる。さらに、感知器D32に割り当てられた感知器情報201には、「無応答」を示す信号を含んでいる。このように、リピータ中継器C3は、自己の通信経路に属する下位機器である感知器D32からの状態情報信号を受信できない場合には、感知器D32に何らかの異常が発生したものと判断し、感知器D32に割り当てられた感知器情報201のエリアを「無応答」と判断し、これを含めた状態情報信号として上位機器であるリピータ中継器C2に送信するのである。
【0077】
このように、リピータ中継器Cは、連続受信スロット122、124、126のいずれにおいても、自己の通信経路に属する感知器Dから状態情報信号を受信できない場合には、当該感知器Dに割り当てられ感知器情報201のエリアを「無応答」と判断し、これを含めた状態情報信号として上位の機器に送信する。このように、ある感知器Dからの状態情報信号を受信できない場合でも、リピータ中継器Cはそれ以後の状態収集処理を継続するので、その通信経路における状態収集処理は図8に示すような通常の状態収集処理と同様の処理時間で終了できる。感知器Dに異常が生じた場合でも状態収集処理は滞りなく行われるので、無線式中継器Bは遅滞なく下位機器の状態収集が行える。
なお、リピータ中継器Cが自らの「無応答」を含めた状態情報信号を送信せずに、無線式中継器Bが記憶素子21aに保存された下位機器アドレス(機器番号)に基づいて下位機器の状態を判断してもよい。
【0078】
(2)火災通知処理
図13は、火災通知処理を説明する図である。なお、図13(A)は、図1に示す無線式中継器B1と無線通信を行う通信経路のうち、通信経路F1(感知器D11、D12の通信経路)を示し、図13(B)は、通信経路F3(リピータ中継器C2、C3、感知器D31、32の通信経路)を示している。以下、火災通知処理について、図13と、前述の図5〜図7を参照して説明する。なお、図1の通信経路F2の処理内容については、これと同様の処理が通信経路F3と処理内容に含まれているため、ここでは説明を省略する。
【0079】
図13(A)では、感知器D12の監視領域にて火災が発生した場合を例に示している。
(S401)感知器D12は、火災発生を検知すると、通信スロット110の送信スロット111(図5)により、火災検知情報を含む火災通知信号を、記憶素子1aに記憶された上位機器アドレス宛に送信する。この例では、感知器D12の上位機器は無線式中継器B1であるので、感知器D12は、無線式中継器B1に対して火災通知信号を送信する。感知器D12は、送信スロット111により火災通知信号を送信した後は、受信機能を起動して連続受信スロット112の受信待機状態に移行する。
一方、無線式中継器B1は、間欠受信間隔TBで間欠受信を行っており、感知器D12がステップS401で送信した火災通知信号を受信する。
【0080】
(S402)無線式中継器B1は、感知器D12からの火災通知信号を受信すると、送信元の機器である感知器D12に対して、感知器D12が送信した通信スロット110のその他信号用エリア115のタイミングで、信号を受信したことを表す信号である受信応答信号を送信する。
感知器D12は、無線式中継器B1により送信された受信応答信号をステップS401の連続受信スロット112において受信し、これにより、火災通知信号が相手に正常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS401の連続受信スロット112にて、無線式中継器B1により送信された受信応答信号を受信できない場合には、感知器D12は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、火災通知信号を再送する。
【0081】
図13(B)では、感知器D31の監視領域にて火災が発生した場合を例に示している。
(S501)感知器D31は、火災発生を検知すると、通信スロット110の送信スロット111(図5)により、火災通知信号を、記憶素子1aに記憶された上位機器アドレス宛に送信する。この例では、感知器D31の上位機器はリピータ中継器C3であるので、感知器D31は、リピータ中継器C3に対して火災通知信号を送信する。感知器D31は、送信スロット111により火災通知信号を送信した後は、受信機能を起動して連続受信スロット112の受信待機状態に移行する。
一方、リピータ中継器C3は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、感知器D31がステップS501で送信した火災通知信号を受信する。
【0082】
(S502)リピータ中継器C3は、感知器D31からの火災通知信号を受信すると、記憶素子11aに記憶された上位機器アドレス(ここではリピータ中継器C2のアドレス)に対し、感知器D31が送信した通信スロット110の火災転送信号用エリア113のタイミングで、火災転送信号を送信する。リピータ中継器C3は、火災転送信号を送信した後は、受信機能を起動して連続受信スロット112の受信待機状態に移行する。
このリピータ中継器C3が送信した火災転送信号は、感知器D31が、連続受信スロット112において受信し(S501の破線参照)、感知器D31はこの火災転送信号の受信により、自身が送信した火災通知信号が正常にリピータ中継器C3に受信されたことを認識する。
一方、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っているリピータ中継器C2も、リピータ中継器C3により送信された火災転送信号を受信する。
【0083】
(S503)リピータ中継器C2は、リピータ中継器C3からの火災転送信号を受信すると、送信スロット111(図5)により、火災転送信号を、リピータ中継器C3が送信した通信スロット110の火災転送信号用エリア113のタイミングで、記憶素子11aに記憶された上位機器アドレス(ここでは無線式中継器B1のアドレス)に対して送信する。リピータ中継器C2は、火災転送信号を送信した後は、受信機能を起動して連続受信スロット112の受信待機状態に移行する。
このリピータ中継器C2が送信した火災転送信号は、リピータ中継器C3が、連続受信スロット112において受信し(S502の破線参照)、リピータ中継器C3はこの火災転送信号の受信により、自身が送信した火災転送信号が正常にリピータ中継器C2に受信されたことを認識する。
一方、間欠受信間隔TBで間欠受信を行っている無線式中継器B1も、リピータ中継器C2により送信された火災転送信号を受信する。
【0084】
(S504)無線式中継器B1は、リピータ中継器C2からの火災転送信号を受信すると、この火災転送信号の送信元であるリピータ中継器C2に対し、リピータ中継器C2が送信した通信スロット110のその他信号用エリア115のタイミングで、受信の応答信号を送信する。
リピータ中継器C2は、連続受信スロット112において無線式中継器B1からの受信応答信号を受信し、これにより、自身が送信した火災転送信号が正常に無線式中継器B1に受信されたことを認識することができる。
【0085】
なお、図13(B)の例のように、無線式中継器Bと感知器Dとの間にリピータ中継器Cを介在させる構成であっても、各機器の配置や電波状況によっては、感知器Dから送信された火災通知信号を無線式中継器Bが直接受信することができる場合もある。このような場合、無線式中継器Bは、リピータ中継器Cからの火災転送信号が届いていなくとも、感知器Dから送信された火災通知信号により火災が発生したことを認識し、火災信号を火災受信機Aに送信する。このため、感知器Dから火災受信機Aへ火災信号を早期に伝達できる。
【0086】
また、図8、図13では、状態収集処理と火災通知処理のそれぞれを説明したが、例えば、状態収集処理を行っている最中に、感知器Dが火災を検知する場合がある。このように、両方の通信処理が同時に発生した場合には、火災報知設備100では、火災通知処理を優先させる。より具体的には、リピータ中継器Cは、状態要求信号を受信あるいは送信している最中において、感知器Dからの火災通知信号を受信した場合には、状態要求信号の送受信処理を中止し、火災転送信号の送信処理を開始する。このように火災転送信号の送信を優先させることで、火災信号の転送の遅れを抑制できる。
【0087】
ここで、状態収集処理を行っている最中に、感知器Dが火災を検知した場合の動作例をさらに説明する。図14は、実施の形態に係る状態収集処理中に感知器が火災を検知した場合の動作例を説明する図である。
図14では、図8に示したステップS309においてリピータ中継器Cが状態情報信号を送信している最中に、感知器D32が火災を検知した状況を示している。
ステップS510に示すように、火災を検知した感知器D32は、火災通知信号を送信する前に送信前キャリアセンスを行う。この送信前キャリアセンスにおいて、感知器D32は、ステップS309でリピータ中継器C3が送信している無線信号を受信したものとする。ここで、ステップS309で送信されているのは連送フレーム103であるので、感知器D32は、送信前キャリアセンスで連送フレーム103を受信するために火災通知信号を送信できない。そして、感知器D32は、送信前キャリアセンスで受信した連送フレーム103のフレーム番号に基づいて、送信スロット131が終了するまで待機する。そして、連続受信スロット132の火災通知信号用エリア134のタイミングになると、感知器D32は、連続受信スロット132の火災通知信号用エリア134に対し、火災通知信号を送信する。このように、感知器Dは、送信する信号の種別によって、受信側機器の対応するエリアに対して信号を送信する。このように、信号の種別によって受信の時間帯(送信側機器における送信時間帯)を定めておくことで、複数の種類の信号が同時に送信されることにより電文が破壊されることを抑制することができる。また、送信する信号の種別によって受信側機器における受信のエリア(時間帯)を分けたので、重要性の高い火災信号の送信を優先することができ、火災信号を早期伝達することができる。
【0088】
以上のように、本実施の形態の状態収集処理において、無線式中継器Bとリピータ中継器Cは、感知器Dに対し、送信期間と送信休止期間の繰り返しからなるブロック通信120により状態要求信号を送信する。このため、間欠受信処理を行う感知器Dが状態要求信号を受信する確率を高めることができる。また、無線式中継器Bとリピータ中継器Cは、すべての感知器Dからの機器状態情報を受信すると、次の送信スロットの送信処理を中止するので、無駄な送信処理を行うことがなく、状態要求信号の送信処理の時間を短縮することができる。状態要求信号の送信処理の時間を短縮できるので、消費電流を低減できるとともに、情報伝達の遅れを防ぐことができる。
【0089】
また、ブロック通信120において、1回目の送信休止期間である連続受信スロット122に間欠受信周期の時間(7秒)を足した期間は、3回目の送信期間である送信スロット125と重なっている。このため、感知器Dは、無線式中継器B又はリピータ中継器Cの連続受信スロット122(送信休止期間)と間欠受信タイミングとが重なったために無線信号を受信できなかった場合でも、送信スロット125において無線信号を受信できる。このように、間欠受信を行う感知器Dによる無線信号の受信確率を高めることができる。
【0090】
上記実施の形態においては、無線式中継器Bが火災受信機Aから状態要求信号を受信すると各経路の感知器D等の状態情報信号を火災受信機Aに送信している。これに限定されずに、無線式中継器Bが自らのタイミングで各経路の感知器D等の状態収集と状態判定を行ってもよい。この場合、火災や異常(電池切れや無応答)が発生などの必要時に、火災受信機Aに対して状態情報信号を送信すればよい。
【符号の説明】
【0091】
1 制御回路、1a 記憶素子、2 電池、3 定電圧回路、4 電圧検出回路、5 送受信回路、5a 送信回路、5b 受信回路、6 アンテナ、7 火災検出回路、8 表示灯回路、9 登録スイッチ、11 制御回路、11a 記憶素子、20a 電源線用端子、20b 信号線用端子、21 制御回路、21a 記憶素子、22 受信機I/F回路、100 火災報知設備、101 基本フレーム、102 短縮フレーム、103 連送フレーム、110 通信スロット、111 送信スロット、112 連続受信スロット、113 火災転送信号用エリア、114 火災通知信号用エリア、115 その他信号用エリア、120 ブロック通信、121 送信スロット、122 連続受信スロット、123 送信スロット、124 連続受信スロット、125 送信スロット、126 連続受信スロット、129 感知器返送スロット、130 通信スロット、131 送信スロット、132 連続受信スロット、133 火災転送信号用エリア、134 火災通知信号用エリア、135 その他信号用エリア、201 感知器情報、202 リピータ中継器情報、A 火災受信機、B 無線式中継器、C リピータ中継器、D 感知器、F1 通信経路、F2 通信経路、F3 通信経路、F4 通信経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災現象に基づく環境変化を検出するとともに、間欠受信周期で無線信号を受信する感知器と、
前記感知器を監視制御する火災受信機と、
前記感知器と前記火災受信機との間に介在し、複数の通信階層を構成して無線信号を中継する1又は複数の中継器と、を備え、
通信階層における上位機器から送信された状態要求信号に基づいて、通信階層における下位機器が、自身の機器状態情報を含む状態情報信号を送信する状態収集処理を行う火災報知設備であって、
前記状態収集処理において、
前記1又は複数の中継器は、
送信期間と送信休止期間とが交互に所定回数繰り返されてなる送信パターンにより前記状態要求信号を送信するとともに、前記送信休止期間においては受信機能を起動し、
前記感知器は、
前記送信休止期間における自身に割り当てられたタイムスロットにおいて前記機器状態情報を送信するものであり、
前記1又は複数の中継器は、すべての前記感知器からの前記機器状態情報を受信すると、前記送信パターンの前記送信期間における送信処理を中止する
ことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
前記火災報知設備において前記中継器は複数設けられ、
前記送信パターンは、前記送信期間と前記送信休止期間の予め定められた回数の繰り返しにより構成されており、
前記中継器は、自身の上位機器が他の前記中継器である場合には、前記状態収集処理において、
前記送信パターンにおける前記予め定められた回数の前記送信休止期間において前記感知器からの前記機器状態情報を受信できない場合には、当該感知器に異常が発生したことを示す信号を前記上位機器に対して送信する
ことを特徴とする請求項1記載の火災報知設備。
【請求項3】
前記間欠受信周期をn秒とすると、
前記送信パターンにおいて、1回目の前記送信休止期間のn秒後の期間は、3回目の前記送信期間と重なっており、かつ、1回目の前記送信期間、1回目の送信休止期間、及び2回目の送信期間の時間を足した時間は、n秒以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の火災報知設備。
【請求項4】
前記送信パターンは、前記送信期間と前記送信休止期間の3回の繰り返しにより構成されている
ことを特徴とする請求項3記載の火災報知設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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