説明

火災報知設備

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空き回線を自動処理する火災報知設備に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の火災報知設備においては、設置時等に空き回線が発生すると、断線警告が発生しないようにするために、その空き回線に終端抵抗を接続している。
【0003】すなわち、空き回線が発生すると、その空き回線には火災感知器等が接続されていないので、受信機からその空き回線を見た場合のインピーダンスが非常に高くなり、このために、断線検出回路が断線であると判断し、断線警告を行う。このように空き回線について不必要な断線警告の発生を阻止するために、受信機の空き回線側端子に終端抵抗を接続するようにしている。この終端抵抗のインピーダンスは、火災感知器が火災検出したときのインピーダンス程には低くなく、また断線警告が発生する程には高くない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のように空き回線に必ず終端抵抗を接続するようにすると、その終端抵抗の接続作業が煩雑であるという問題がある。また、コンデンサ等、終端抵抗以外の終端器を使用した場合も、上記と同様の問題が発生する。
【0005】本発明は、火災報知設備の設置時等における空き回線の処理が容易である火災報知設備を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、所定回線から火災信号を受けたことを検出する火災信号検出手段と、所定回線が使用されていることを示す使用情報を登録する使用登録手段と、上記所定回線から火災信号を受けたときに、上記火災信号を受けた回線について、上記使用登録手段に上記使用情報が登録されているか否かを判別する判別手段と、所定回線から火災信号を受けたときに、上記火災信号を受けた回線について、上記使用登録手段に上記使用情報が登録されていなければ、上記火災信号を受けた回線について、上記使用登録手段に上記使用情報を自動的に登録させる使用登録制御手段とを有する火災報知設備である。
【0007】
【実施例】図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。
【0008】この実施例において、火災受信機REには、回線L1を介して、複数の感知器SEと終端抵抗Tとが接続され、回線L3、…にも、回線L1と同様に、複数の感知器SEと終端抵抗Tとが接続されている。ただし、回線L2は空き回線であり、その空き回線L2には何も接続されていない。
【0009】上記実施例においては、火災感知器を使用している使用回線L1、L3から火災信号を受けたときに、その火災信号を受けた回線について使用している旨の登録を行い、この使用登録されている回線については、断線検出手段が断線を検出したときに断線表示を行わせ、上記使用登録が行われていない回線(空き回線)L2については、断線表示を行わないように制御している。
【0010】火災受信機REは、MPU(マイクロプロセッサ)1とROM2、3、4とRAM5と表示部DPと操作部OPとインタフェース6、7とを有する。
【0011】ROM2は、図2、図3、図4にフローチャートで示すプログラムを記憶する領域であり、ROM3は、各種定数を記憶する記憶領域であり、ROM4は、回線L1、L2、L3、…の使用状態を記憶する(使用中の回線であるか空き回線であるかを記憶する)EEPーROMである。
【0012】すなわち、ROM4は、所定回線から火災信号を受けたときに、その所定回線が使用されているものとして使用登録する使用登録手段の一例である。また、MPU1とROM2とは、回線が断線しているか否かを検出する断線検出手段の例であるとともに、使用登録されている回線については、断線検出手段が断線を検出したときに断線表示を行わせ、使用登録が行われていない回線については、断線表示を行わないように制御する制御手段の例である。
【0013】また、RAM5は、作業領域であり、表示部DPは、CRT、表示灯等を有するものである。
【0014】回線L1に関連して、受信回路R1と、このインタフェース11と、回線L1に火災信号を発生する火災試験回路FT1と、このインタフェース11aとが設けられている。回線L2についても、受信回路R2と、このインタフェース12と、回線L2に火災信号を発生する火災試験回路FT2と、このインタフェース12aとが設けられ、回線L3についても、受信回路R3と、このインタフェース13と、回線L3に火災信号を発生する火災試験回路FT3と、このインタフェース13aとが設けられている。他の回線についても、上記と同様のものが設けられている。
【0015】防排煙機器制御回路21は、防排煙ダンパ等の防排煙機器MDを制御するものであり、そのインタフェース21aに接続されている。防排煙機器制御回路22は、防排煙ダンパ等の防排煙機器MDを制御するものであり、そのインタフェース22aに接続され、防排煙機器制御回路23は、防排煙ダンパ等の防排煙機器MDを制御するものであり、そのインタフェース23aに接続されている。
【0016】次に、上記実施例の動作について説明する。
【0017】図2は、上記実施例における全体的な動作を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、初期設定が行われると(S10)、火災監視プログラムが実行され(S20)、断線監視プログラムが実行され(S30)、復旧スイッチがオンならば(S40)、復旧動作を行い(S41)。S20〜S41の動作を繰り返す。
【0018】図3は、上記実施例における火災監視プログラム(S20)の具体例を示すフローチャートである。
【0019】まず、上記実施例の火災報知設備がビル等の建築物に設置され、回線L1、…のうちで、回線L2のみが空き回線であり、他の回線が使用されている回線(火災感知器が接続されている回線)であるとし、上記火災監視プログラムが走っている間に、回線L1、…に接続された火災感知器SE、…に順次、煙を加えたり、ヒータで加熱したりして感知器SE、…の動作試験が行われる。
【0020】ここで、回線数を示す関数nとして「1」をセットし(S21)、最初の回線L1の状態を読み込む(S22)。このときに、回線L1に接続されている火災感知器SEが、加煙または加熱試験によって動作して火災信号を出力するので、回線L1から火災信号を受け、この火災信号が受信回路R1、インタフェース11を介してMPU1に送られ、このMPU1が、回線L1に関して火災信号を受けた旨をRAM5に記憶する。したがって、回線L1に関して火災信号が「有」と判断され(S23)、主音響、地区音響の鳴動、火災警戒地区の火災表示等の火災報知処理が行われる(S24)。
【0021】そして、回線L1が使用されているか否かをROM4から読み込む(S25)。火災報知設備が設置されたばかりの状態では、ROM4にはどの回線も使用登録がされていないので、回線L1は「空き」であると判断され(S26)、回線L1についての使用登録がROM4に行われる(S27)。なお、回線L1について使用登録が行われた後に、S26の判断を再び行う場合、使用登録を再度行うこと無しに、次の回線についての処理を行う。
【0022】つまり、ある回線から火災信号を検出した場合であって、しかもその回線について使用登録がされていない場合にのみ、回線の使用登録をROM4に行う。また、ある回線が空き回線であれば、火災感知器SEが接続されていないので、その空き回線から火災信号を受けることがなく、したがって、その空き回線については使用登録を行わない。
【0023】そして、上記処理(S22〜S27)を、最終の回線(N番目の回線)まで繰り返して(S28、S29)、次の断線監視プログラム(S30)を開始する。なお、上記実施例においては、回線L2のみが空き回線であるので、回線L2以外の回線について全て使用登録がされる。
【0024】また、未使用回線L2に火災感知器SEを接続すると、その火災感知器SEは火災試験時または火災時に動作して火災信号を出力する(S23)ので、この未使用回線L2はその火災信号によって自動的に使用登録される(S27)。
【0025】上記実施例によれば、空き回線に終端器を接続しなくても、使用回線であることを受信機REが確実に認識でき、したがって、火災報知設備の設置時等における空き回線の処理が容易である。
【0026】図4は、上記実施例における断線監視プログラム(S30)の具体例を示すフローチャートである。
【0027】ここで、回線数を示す関数nとして「1」をセットし(S31)、最初の回線L1が使用されているか否かを、ROM4から読み込む(S32)。そして、回線L1が使用中であるので(S33)、回線L1の状態を読み込み(S34)、もし断線していれば(S35)、表示部DP内の断線表示灯を点灯し、断線地区を表示する(S36)。そして、次の回線L2について上記処理(S32〜S36)を行う(S37、S38)。
【0028】2番目の回線L2は空き回線であるので(S32、S33)、断線か否かの判断を行わず、次の回線についての上記処理(S32〜S36)を行う。
【0029】すなわち、上記実施例においては、空き回線について、火災報知設備の設置時等において終端抵抗等を接続しなくても、その後、その空き回線が断線であるとの警告、表示等がされることがなく、空き回線について終端抵抗等を接続する必要がない。
【0030】ところで、上記実施例では、火災信号を起こさせるに際して、火災感知器SEに煙、熱を与える場合を例にとって説明したが、MPU1が火災試験回路FT1、FT2、FT3に指令を与え、受信回路R1、R2、R3を火災状態と同じ状態にするようにして、火災試験を行うことができる。このように、MPU1が火災試験回路FT1、FT2、FT3に指令を与えることによって火災信号を発生した場合にも、空き回線について使用登録することになるとも考えられ、この場合には、その後、その空き回線について断線表示が行われてしまうことになる。しかし、MPU1が火災試験回路FT1、FT2、FT3に指令を与えることによって火災信号を発生させた場合には、MPU1自身がその回線について火災信号が発生することを予測できるので、その場合には、使用登録しないように処理する。
【0031】なお、上記実施例では、書き換え可能なROM4としてEEP−ROMを用いた場合について説明したが、EEP−ROMの代りにEP−ROMを使用してもよい。この場合には、EP−ROMの記憶内容を消去するための紫外線照射装置を設け、記憶内容を変更する前にその内容を消去するようにすればよい。また、ROM4の代わりに、RAMを使用していもよい。
【0032】さらに、上記実施例においては、終端抵抗を終端器として使用する場合について説明したが、コンデンサ等、終端抵抗以外の終端器を使用した場合も、上記と同様である。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、空き回線に終端器を続しなくても、断線検出時に、上記空き回線について断線表示が行われないようにすることができ、また、このように準備する作業を、作業者が全く行う必要がないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】上記実施例における全体的な動作を示すフローチャートである。
【図3】上記実施例における火災監視プログラム(S20)の具体例を示すフローチャートである。
【図4】上記実施例における断線監視プログラム(S30)の具体例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
RE…火災受信機、SE…火災感知器、MD…排煙ダンパ、1…MPU、2、3、4…ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定回線から火災信号を受けたことを検出する火災信号検出手段と;所定回線が使用されていることを示す使用情報を登録する使用登録手段と;上記所定回線から火災信号を受けたときに、上記火災信号を受けた回線について、上記使用登録手段に上記使用情報が登録されているか否かを判別する判別手段と;所定回線から火災信号を受けたときに、上記火災信号を受けた回線について、上記使用登録手段に上記使用情報が登録されていなければ、上記火災信号を受けた回線について、上記使用登録手段に上記使用情報を自動的に登録させる使用登録制御手段と;を有することを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】 請求項1において、所定回線が断線していることを検出する断線検出手段と;所定回線が断線していることを表示する断線表示手段と;上記使用登録手段に上記使用情報が登録されている回線について、上記断線検出手段が断線を検出すると、上記断線表示手段に断線表示させ、一方、上記使用登録手段に上記使用情報が登録されていない回線について、上記断線検出手段が断線を検出しても、上記断線表示手段に断線表示を行わせない表示制御手段と;を有することを特徴とする火災報知設備。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【特許番号】特許第3062292号(P3062292)
【登録日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【発行日】平成12年7月10日(2000.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−132023
【出願日】平成3年5月8日(1991.5.8)
【公開番号】特開平4−333198
【公開日】平成4年11月20日(1992.11.20)
【審査請求日】平成9年12月26日(1997.12.26)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【参考文献】
【文献】特開 平3−139789(JP,A)
【文献】特開 昭54−142098(JP,A)
【文献】実開 昭60−109195(JP,U)