説明

火災検知用光ファイバケーブル

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光ファイバーケーブル、特に光ファイバをセンサとした火災検知用光ファイバケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、FTRを用いた火災検知システムにおいては、初期火災の温度上昇を早期に発見するという2つの要求を満たすため、図2に示した構造をとっていた。
【0003】図2において、光ファイバ1を金属パイプ2に通し、その周りにプラスチックシース3を被せて単心の光ファイバーケーブルとしている。この光ファイバーケーブルによる火災検出は、光ファイバ1に入射した光の後方散乱光をFTRで検知して、光ファイバ1の長手方向の異常温度を測定して火災の発生及びその出火場所などを検知するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の火災検知用光ファイバは、火災発生後、出火点が500℃を越えたり、火勢による熱風を直接受けると容易に断線してしまうため、火災発生後の避難誘導の情報をFTRから得ることはできない。
【0005】そこで初期火災検出と火災発生後の非難誘導のための温度分布情報を共に得らるような火災検出用光ファイバケーブルが求められている。
【0006】そこで、本発明の目的は、初期火災検出と火災発生後の温度分布測定を両立できる火災検知用光ファイバケーブルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、温度分布測定用光ファイバを耐熱層で覆って設けると共にその耐熱層の外周に初期火災検知用光ファイバを外気に対してむき出しにして設けたものであり、さらにこのケーブルにプラスチックテープを巻き付けものである。耐熱層としては、温度分布測定用光ファイバを収容する金属パイプと、その金属パイプの外周に設けられ、初期火災検知用光ファイバを収容する凹部を有するスペーサとで構成する。
【0008】
【作用】上記構成によれば、先ず常時は初期火災検知用光ファイバに光を入射してその温度を検出し、異常温度を検出した時、火災発生と判断すると共に光の入射を温度分布測定用光ファイバに切替えてその温度分布を検出して発生場所を判定することで安全な避難誘導が行える。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
【0010】図1において、10は耐熱層11内に収容される避難誘導時の温度分布測定用光ファイバである。耐熱層11は、金属パイプやシース12とプラスチック材料からなるスペーサ13からなり、金属パイプ12内に温度分布測定用光ファイバ10が収容され、その金属パイプ12の外周にスペーサ13が被せられる。このスペーサ13の外周には複数の凹部14がその長手方向に沿って直線状或いは螺旋状に設けられる。この各凹部14には、それぞれ初期火災検知用光ファイバ15が収容され、さらにスペーサ13の外周にプラスチックテープ16が巻き付けられてケーブルが仕上げられる。
【0011】次に実施例の作用を述べる。
【0012】先ずこのケーブルを火災を検知すべき箇所に敷設し、そのケーブルの一端にFTR装置を接続する。この際、プラスチックテープ16は初期火災検知用光ファイバ15の保護を目的としたものであり、敷設後は取り去ってもよい。
【0013】先ず火災検知において、4本ある初期火災検知用光ファイバ15の内の任意の一本に光を入射するようになし、その後方散乱光をFTR装置で検出してその温度を検出し、異常温度な温度上昇を検出した時、火災と判定すると共に、火災発生後は、温度分布測定用光ファイバ10に光を入射してその後方散乱をFTR装置で検出してケーブルの長手方向の温度分布を測定して火災発生箇所を求めると共に温度の低い箇所を求め、これに基づいて避難誘導を行う。なお、初期火災検知用光ファイバ15の残りは予備として用いる。
【0014】このケーブルにおいては、初期火災は、初期火災検知用光ファイバ15が外気に対して略むき出しで設けられているため、従来の金属シースに収容しているものより検出感度が良好であり、また温度分布測定用光ファイバ10は耐熱層11で保護されているため火災から保護できる。またこの温度分布測定用光ファイバ10で検出する温度は感度が比較的低く、初期火災検知用光ファイバ15の測定温度より10℃程度、或いはそれ以上低くなるが相対的温度分布が判るだけで良いため支障がない。またスペーサ13は難燃性で熱抵抗の高い材料を用いることができ、単に金属シースを用いる従来例より火災発生後、長時間避難誘導のための温度分布測定が継続できる。
【0015】またスペーサ13の凹部14には、燃焼時に発泡する材料、例えば三酸化アンチモンや水酸化アルミニュウム、ほう酸亜鉛などを含んだポリマーなどを充填しておくことで、凹部14から金属パイプ12への熱の侵入を防止でき、温度分布測定用光ファイバ10の火災からの保護をより強化することができる。さらにこの発泡材を充填した場合、急激な火炎が生じた場合、急激に発泡材が発泡すると共に膨張するので初期火災検知用光ファイバ15に機械的ストレスが発生するため、このストレスに基づく異常発生を検知するようにすれば、さらに適確に火災の発生と場所を把握できる。
【0016】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、初期火災検知用光ファイバで火災を検知すると共に火災発生後は温度分布測定用光ファイバで温度分布を検出することで、初期火災検知用光ファイバは外気に直接触れさせて設けることができ高感度で火災の検出ができ、また温度分布測定用光ファイバは温度分布のみ測定すれば良いので、より耐熱性のある材料で保護できるため、火災発生後、避難誘導のため長時間温度分布を測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。。
【図2】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 温度分布測定用光ファイバ
11 耐熱層
12 金属パイプ
13 スペーサ
14 凹部
15 初期火災検知用光ファイバ
16 プラスチックテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 温度分布測定用光ファイバを耐熱層で覆って設けると共にその耐熱層の外周に初期火災検知用光ファイバを外気に対してむき出しにして設けたことを特徴とする火災検知用光ファイバケーブル。
【請求項2】 温度分布測定用光ファイバを耐熱層で覆って設けると共にその耐熱層の外周に、初期火災検知用光ファイバを外気に対してむき出しにして設け、さらにその外周にプラスチックテープを巻き付けたことを特徴とする火災検知用光ファイバケーブル。
【請求項3】 耐熱層が、温度分布測定用光ファイバを収容する金属パイプと、その金属パイプの外周に設けられ、初期火災検知用光ファイバを収容する凹部を有するスペーサとからなることを特徴とする請求項1及び請求項2の火災検知用光ファイバケーブル。
【請求項4】 上記凹部に火災時に発泡する発泡材を充填したことを特徴とする請求項3の火災検知用光ファイバケーブル。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【特許番号】第2734803号
【登録日】平成10年(1998)1月9日
【発行日】平成10年(1998)4月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−121326
【出願日】平成3年(1991)5月27日
【公開番号】特開平4−349595
【公開日】平成4年(1992)12月4日
【審査請求日】平成8年(1996)4月16日
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【参考文献】
【文献】特開 平2−123304(JP,A)
【文献】実開 昭62−84890(JP,U)