説明

火炎噴霧熱分解法により製造された抗菌性および抗真菌性粉末

抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有し、かつ粒子の形のドープシリカ(SiO2)を製造するための火炎噴霧熱分解法を開示する。前記の火炎法により製造されたドープシリカは、少なくとも1の機能性ドーパントを含有し、前記機能性ドーパントは、少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属および/または金属酸化物からなり、有機溶剤中の、少なくとも1の機能性ドーパント前駆体、特に銀および/または銅を含有する前駆体と、少なくとも1のシリカ前駆体とを含有する前駆体溶液から出発して製造される。このようなドープシリカは、たとえばポリマー材料中に配合するために、または含浸材料として使用するために適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア材料と、金属および/または金属酸化物である機能性ドーパントとを含有する抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性および場合により抗ウイルス性の粉末、特にシリカ(SiO2)キャリアを含有し、前記キャリアが前記機能性ドーパントを含有し、前記ドーパントが銀および/または酸化銀および/または銅および/または酸化銅である粉末の合成に関し、かつ前記粉末は、火炎噴霧熱分解(FSP)法を使用して製造される。
【0002】
従来技術
銀金属(および酸化銀)は、抗微生物活性および抗菌活性を有するが、しかしヒトにとって非毒性であることは知られている(1)。銀の抗菌活性は、Ag+カチオンの存在に基づき、該カチオンが硫黄、酸素または窒素を含有する成分である細菌分子の電子供与基に強力に結合するためであることが記載されている(2)。Ag+カチオンは、Ca2+およびZn+のような本質的な金属イオンと置換し、細菌の細胞膜を損傷することも仮定されている(3)。抗菌性のために要求される濃度は極めて低いことが判明しており、そのレベルは、水中で5〜10ppbで殺菌活性を有する(4)。銀イオンは真菌を破壊することもできるが、しかし銅金属(および酸化銅)もまた、抗真菌性を有している(5)
【0003】
銀または酸化銀でドープされた二酸化ケイ素粒子および抗菌性の適用のための該粒子の使用は、「銀によりドープされた殺菌性二酸化ケイ素」の表題を有するUS2003/0235624A1から公知である。前記の粒子は、二酸化ケイ素の気相合成(塩化物法)により、火炎ガス中にドーパント前駆体の水性エーロゾルを導入して製造される。
【0004】
火炎酸化または火炎加水分解により銀または酸化銀でドープされたシリカを熱分解法により得るためのUS2003/0235624A1に記載されている製造法は、3つの鍵となる工程を有している。これらの工程はつまり、1)ドーパントエーロゾルの形成、その際、火炎へ導入する前に、このエーロゾルを気体および塩結晶のエーロゾルへと変換する、2)該エーロゾルと、火炎供給ガスを含有する気体状のSi化合物との混合、および3)前記エーロゾル混合物と供給ガスとの火炎への供給、である。得られる粒子は、微分散した白色の粉末である。粒子に付着している塩酸は、その後の工程において高めた温度で除去しなくてはならない。
【0005】
シリカ粒子以外の、および湿式の沈殿法により製造された金属酸化物支持粒子に対するAg粒子の抗菌活性は、US5,714,430から公知であり、かつ抗微生物性ガラスがUS2004/0170700に記載されている。
【0006】
火炎噴霧熱分解法(FSP)は、多くの適用のための幅広い種類の材料を製造するために汎用されている方法技術であることが証明されている(6)。しかしこれまで、前記の方法は、銀および/または酸化銀および/または銅および/または酸化銅によりドープされたシリカの合成に関して提案されておらず、ましてや使用されてもいない。さらに、特に抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の適用のための粉末を製造するためにFSPを使用する例は存在しない。
【0007】
このため依然として、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の粉末およびこのような粉末を製造するための方法に対する要求が存在している。
【0008】
発明の開示
従って、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有する粒子の形のドープシリカ(SiO2)を製造するための方法を提供することが本発明の一般的な課題である。
【0009】
さらに、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有する粒子の形のドープシリカ(SiO2)を提供することが本発明のもう1つの課題である。
【0010】
さらに、このようなドープシリカを含有する製品を提供することが本発明のもう1つの課題である。
【0011】
ところでこれらの、および本発明のその他の課題を実現するために、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有する粒子の形の、火炎法により製造されるドープシリカ(SiO2)を製造するための方法は、火炎噴霧熱分解(FSP)法であり、特に火炎法により製造されたドープシリカは、少なくとも1の機能性ドーパントを含有し、前記機能性ドーパントは、少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の作用を有する金属および/または金属含有化合物、特に少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属および/または少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属酸化物からなり、前記方法は、
(i)有機溶剤中の、少なくとも1の機能性ドーパント前駆体と、少なくとも1のシリカ前駆体とを含有する前駆体溶液を準備する工程、
(ii)前記前駆体溶液自体の燃焼を燃料とする火炎に前記前駆体溶液を噴霧する工程
(iii)粒子状のドープシリカを回収する工程
を有することを特徴とする方法であり、この方法は説明が進むにつれてより容易に明らかになるであろう。
【0012】
本発明の範囲で使用されている機能性ドーパントという用語は、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有するドーパントを記載する。
【0013】
更なるドーパント、たとえばキャリアドーパントが存在していてもよく、その際、キャリアドーパントという用語は、シリカの形態に影響を与えるドーパントのために使用される。
【0014】
付加的なドーパントという用語は、その他の目的のため、たとえば抗ウイルス効果のような別の機能を提供するために存在するドーパントのために使用される。
【0015】
有利には前記機能性ドーパントは、銀、酸化銀、銅、酸化銅およびこれらの混合物からなる群から選択される金属および/または金属酸化物を含む。抗微生物性および抗菌性の効果のために、銀および酸化銀が有利である。抗真菌活性のためには銅および/または銀またはこれらの酸化物をそれぞれ使用することができ、その際、銅は、その抗真菌性能が証明されていることに基づいて、この点に関して有利である。
【0016】
有利な機能性ドーパント前駆体は、有機溶剤中での溶解度が高く、かつ有害な副生物を生成することなく燃焼される。適切な機能性ドーパント前駆体は、たとえばAgNO3(硝酸銀)、Cu(CH3COCHCOCH32(アセチルアセトナト銅)、ナフテン酸銅およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0017】
シリカ前駆体の溶解度はそれほど重要ではない。広い範囲のオルガノシラン(またはより一般的にはケイ素含有化合物)が適切であり、前記オルガノシラン(またはより一般的にはケイ素含有化合物)は、有機残留物が火炎中で燃焼されるという付加的な利点を有している。好適なオルガノシランは、たとえばテトラエトキシオルトシラン(TEOS、テトラエチルオルトシリケートともよばれる)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明のFSP法では、十分な溶解度を提供する任意の溶剤を使用することができるが、しかし高い燃焼エンタルピーを有する溶剤が有利である。たとえば硝酸銀に関して、適切な溶解度と認容可能なエンタルピーを有する燃焼との組み合わせは、アルコール、特にヒドロキシル基あたり1〜3個の炭素原子の平均炭素含有率を有するアルコールまたはアルコールの混合物、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、エタンジオール、プロパンジオールおよびこれらの混合物によってもたらされることが判明した。目下、2−プロパンジオールが有利である。これより高い炭素含有率を有するアルコールは、前駆体の十分な溶解度が維持される限りにおいて、より高い火炎温度を達成するために選択することができる。前駆体溶液は、火炎へ搬送される前に沈殿することを防止するために、亜飽和濃度に限定されるべきである。一般に、ケイ素および機能性ドーパント金属の合計濃度は、リットルあたり約0.3モルである。
【0019】
良好な抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果の観点で、機能性ドーパントは、ケイ素に対して少なくとも2.5原子%、有利には少なくとも3原子%、最も有利には4〜5原子%の量で存在していると有利である。5原子%より高い濃度は一般に不要であるが、しかし、必要があれば、より高い濃度により、保護の時間をさらに延長することができる。特殊な適用のためには、ドーパントが2.5原子%より少なくても十分でありうる。
【0020】
本発明の範囲で、シリカは本発明のFSP製造法における機能性ドーパントのためのキャリア材料として使用する場合に、予想していなかった利点を有することが判明した。これは微結晶質ではないので、機能性ドーパントのために特に良好なマトリックスを形成する。これは機能性ドーパントの粒径を決定する際の助けとなり、良好な多孔度を提供し、かつ最終的な粒径の良好な前決定を可能にする。
【0021】
従って、本発明の系は広い範囲で変化することができ、その際、生じる機能性ドーパントの特殊な形の比率が変化する。前駆体溶液中のケイ素に対する銀の比率を高め、その一方で金属+ケイ素の合計濃度および製造パラメータを一定に維持することにより、最終的な粒径をほぼ一定に保ったまま、銀粒子の平均直径ひいては長時間活性な機能性ドーパントの量を増大することができる。
【0022】
本発明の系の有利な性質は、火炎内での特定の系の性質に基づいていると仮定される。
【0023】
何らかの理論に拘束されることは望まないが、機能性ドーパント−シリカの凝集体と、シリカ被覆された機能性ドーパントの形態との組み合わせは、観察された材料に関する2つの形成経路を提案している。1つの経路は、機能性ドーパント−シリカの凝集体を生じるが、これは気相核形成、表面成長、およびシリカと機能性ドーパント粒子の両方の成長のための焼結と一貫しており、引き続き凝集して大きなマトリックス構造を形成する。第2の経路は、大きなシリカ被覆された機能性ドーパント粒子を形成するが、これは噴霧された液滴内で反応する前駆体による液滴の反応経路もまた存在することを示唆しており(11)、大きな機能性ドーパント粒子を生じ、引き続き気相シリカが凝縮して機能性ドーパント粒子上の表面被覆を生じる。あるいは、大きな機能性ドーパント粒子の存在は、表面の移動性およびシリカ凝集体の表面上の機能性ドーパント粒子の核形成の焼結に由来するものでもありうる。
【0024】
本発明により得られる粒子は全て褐色の色を有しているが、これは、本発明による方法で生じた特に小さいサイズの銀粒子同士の間での光学的な干渉効果(いわゆるプラズモン共鳴効果)に基づいている。US2003/0235624で得られている粒子は、特に白色の粒子であることが明記されており(段落[0023]を参照のこと)、US2003/0235624に記載されている方法で製造される銀粒子の大きさは、本発明による方法において製造される粒子の大きさよりもはるかに大きいことが明記されている。というのも、さもなければ、同じ光学的な干渉効果がこの従来技術においても生じるはずだからである。しかし、より小さい粒子を有することは、ドーパントの抗微生物性および抗真菌性効果における予期しない増大につながる。従って、本発明により製造される構造は、構造的に、US2003/0235624により開示されている構造とは異なっており、かつ本発明による特定の構造(ならびに方法)は、この従来技術によって示唆されていない。というのも、粒子の大きさを考慮することに基づいた改善は示唆されていないからである。
【0025】
シリカの形態が、最終生成物の特徴にとって極めて重要であることが判明したので、前記の特徴は、シリカの形態に影響を与える1もしくは複数のキャリアドーパントを添加することによって影響を受けうる。適切なキャリアドーパントはたとえば、チタン、亜鉛、アルミニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属の酸化物である。このようなドーパントは一般に、Siに対して最大で10原子%のドーパント金属の量で存在しており、有利には最大で5原子%の量で、最も有利には約2原子%の量で存在している。
【0026】
キャリアドーパント前駆体化合物は、使用される場合には、前駆体溶液にも添加される。適切なキャリアドーパント前駆体は、アセチルアセトナト亜鉛、チタンイソプロポキシド、およびアセチルアセトナトアルミニウムを含む有機金属化合物でもあるが、これらに限定されない。
【0027】
一般に、本発明の粒子の形の火炎法ドープシリカは、埋め込まれた粒子、表面が露出した粒子および大きなシリカ被覆された粒子の形で同時に存在する機能性ドーパントによって特徴付けられる。このようなドープシリカは、本発明による方法により得られる。
【0028】
本発明の粒子の形のドープシリカは、上記のとおりのドーパントを含む。
【0029】
埋め込まれている、表面が露出している、およびシリカ被覆された機能性ドーパント粒子の観察された組み合わせは、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の適用のために極めて望ましい。抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の活性は、機能性ドーパントイオンが、細菌へと輸送されることに由来し、従ってこれらの粉末中での表面が露出した機能性ドーパントの存在は、機能性ドーパントイオンの容易な入手性および従って高い初期抗微生物活性および/または抗菌活性および/または抗真菌性活性を可能にする。しかし、埋め込まれた機能性ドーパント粒子の存在は、機能性ドーパントイオンが凝集体の外側へ拡散し、延長された時間にわたって粉末の活性を維持するための機能性ドーパントのレザバーとして作用する。さらに、大きなシリカ被覆された機能性ドーパント粒子の存在は、このレザバー効果も増大する。大きな機能性ドーパント粒子の存在が、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の活性にとって有利である一方、機能性ドーパント−シリカ凝集体の高い比率は、透明性または最小の粉末の着色が要求される適用にとってより望ましい。
【0030】
目下、有利なドーパントは主として、またはもっぱら金属の形の銀である。しかし主として、またはもっぱら抗真菌活性が所望される場合には、銅および/または酸化銅が有利でありうる。
【0031】
特殊な適用のためには、ドープシリカ粒子の表面が、特定の表面への、またはポリマーマトリックス中での選択的な固定のための有機基により官能化されていてもよい。
【0032】
このような官能化は、一般に公知の方法/物質、たとえば入門技術から公知の方法/物質を使用して行うことができる。たとえば1つの官能基がシリカキャリアに対して高い親和性または反応性を有し、かつ1つの基が、材料に対して高い親和性または反応性を有する二官能化の分子が適切であり、その際、火炎法ドープシリカは配合されているべきであるか、またはこれはドープシリカにより処理されているか、もしくは含浸されていることが意図される。このような材料は、「ドープされる材料」ともよばれる。シリカを好む群のための例は、表面のヒドロキシル基とシリル化反応を開始することができるシラン化合物であり、かつドープされる材料に対する親和性を有する群は、疎水性もしくは親水性の官能性に向けて調節することができる。その他の、シリカ表面にグラフトすることができる反応は、エステル化およびアミド化を含む。
【0033】
FSPは本発明の火炎法ドープシリカ粉末を大量に、かつ低いコストで合成することができる方法である。これらの粉末は、多くの適用に配合することができ、清潔で、かつ殺菌性の機能を多数の物品に提供することができる。
【0034】
本発明のドープシリカはたとえばポリマーおよび/またはポリマー複合材料のための充填剤として使用することができる。均質に混合されると、該シリカはさらに、単なるシリカ充填剤の機能を発揮することができる。このような適用では大量に、一般にポリマー/ポリマー複合材料に対して50質量%まで添加することができる。次いでこのようなポリマー/ポリマー複合材料を使用して、それぞれのドープされた織布および/または不織布を製造することができる。
【0035】
本発明のドープシリカを、ポリマーおよび/またはポリマー複合材料および/または天然繊維および/または織布および/または不織布のような物品と組み合わせて、たとえば少なくとも部分的に、有利には完全に、このような物品を処理するか、または含浸することにより使用することも可能である。
【0036】
本発明のドープされた材料または処理/含浸された材料は、テキスタイルを製造するために使用することができるのみでなく、またたとえば食品および/または飲料の容器を製造するために、歯ブラシ、その他の日用品および医療用品のための使用することもできる。
【0037】
製造パラメータおよび/またはドーパント/キャリアの比率を変更することにより、機能性ドーパントの特定の形の比率を変えることができるので、異なった方法により製造されるドープ粉末の混合物を使用することもまた本発明の範囲内である。このことにより、必要とされる異なった製造方法の数は最小でも時間にわたって広い範囲の性質を生じることができる。
【0038】
図面の簡単な説明
本発明は、以下の詳細な説明を考慮することによって、より良く理解され、かつ上記の対象以外の対象が明らかとなるであろう。この説明は、添付の図面を参照しながら行うが、その際、
図1は、実施例の範囲で使用される適切な火炎噴霧熱分解法装置の略図である。
【0039】
図2は、Ag濃度が0〜5原子%の間の、銀でドープされたシリカに関するX線回折図(XRD)を示す。
【0040】
図3は、2つの異なった方法を使用した粒径の測定結果を示す。この場合、BETに相応する、比表面積のデータから評価された直径は、白抜きの丸印により示されており、製造されたままの粉末の一次粒子(SiO2およびAg)の推定される直径に相応し、かつその際、黒塗りの菱形は、基本パラメータアプローチを使用したXRDパターンから推定される直径に相応する。
【0041】
図4は、5原子%のAgによりドープされたSiO2に関する透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示しており、その際、左側の画像aは、非晶質シリカの凝集体マトリックス(明るい灰色の粒子)中の金属の銀粒子(暗灰色、矢印によっても示されている)を示しており、その際、右側の画像bは、銀粒子の大きさの範囲が若干の大きなシリカ被覆された粒子を含むサンプル中に存在しうることを示している。
【0042】
図5の左側には、銀によりドープされたシリカマトリックスの走査透過型電子顕微鏡(STEM)画像を示しており、その際、明るいスポットは、金属の銀粒子であり、かつ右側のグラフにはSTEM画像中に示されているポイントのEDXS元素分析を示している。
【0043】
図6は、種々の銀濃度の銀−シリカ粉末1mg/mlを含有する寒天プレート上での、24時間の成長時間後の大腸菌の成長の写真、およびAg−SiO2粉末中の銀ドープの関数としてのそれぞれの寒天プレート上での被覆された領域のパーセンテージを示すグラフを示している。
【0044】
図7は、A)セルプラ・ラクリマンス(Serpula lacrimans)(ナミダタケ)およびB)ウスツリナ・デウスタ(Ustulina deusta)(クロミコブタケ)に対する、シリカ、Ag−シリカおよびCu−シリカ粉末に関する真菌の成長防止効果を示している。
【0045】
発明の実施法
ところで本発明を、2成分の前駆体系から出発する方法およびそれぞれの製造された生成物に関して詳細に説明する。
【0046】
粒子の形で、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有し、その際、前記粒子は少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属および/または金属含有化合物からなる少なくとも1の機能性ドーパントを含有する火炎法ドープシリカ(SiO2)を製造するためのFSP法は、
(i)有機溶剤中の、1の機能性ドーパント前駆体と、1のシリカ前駆体とを含有する前駆体溶液を準備する工程、
(ii)前記前駆体溶液自体の燃焼を燃料とする火炎に前記前駆体溶液を噴霧する工程
(iii)粒子状のドープシリカを回収する工程
を有する。
【0047】
さらに有利な実施態様では、機能性ドーパントは、少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属および/または少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の金属酸化物からなる。
【0048】
意外にも本発明の方法を使用することにより、主に予測されたドーパント金属酸化物が形成されず、純粋な金属粒子が、特に機能性ドーパントとして銀の場合に形成されることが判明した。
【0049】
AgNO3、テトラエトキシオルトシランおよび溶剤としてのイソプロパノールを含有する前駆体溶液から出発して、純粋な金属の銀の粒子(検出限界内で)が得られた。
【0050】
それぞれの前駆体溶液に関する(Si+Ag)の合計濃度は、0.1〜0.5モル/Lの範囲であり、かつ有利には約0.3モル/Lである。液状の前駆体は、AgNO3の固体が溶解するために適切な時間にわたり、適切な出力で超音波処理することができる。全てのサンプルの製造およびFSP合成工程は、光に敏感な前駆体が変質することを回避するために低照明条件下に、適切な光遮断装置を一緒に用いて実施することができる。
【0051】
製造されたままの粉末は、以下の特性の少なくとも1つ、有利には少なくとも最初の3つ、さらに有利には全てを示した:
− 埋め込まれた機能性ドーパントと、表面が露出した機能性ドーパント、特に銀粒子が同時に存在する、
− 非晶質シリカのマトリックス、
− 埋め込まれた機能性ドーパント粒子と、表面が露出した機能性ドーパント粒子、とくに一般に20nm未満の直径を有する銀粒子、
− 一般に50nmより大きい直径を有する大きいシリカ−被覆された粒子、
− 大腸菌の液体カルチャー内にドープシリカ1mg/mlを分散させて測定した場合に、少なくとも3日まで、有利には少なくとも5日まで、さらに有利には少なくとも7日までの、抗菌効果および抗微生物効果、(抗微生物および/または抗菌効果は試験により測定することができ、かつ試験によって測定したが、その際、細菌の初期濃度は、培地5ml中に分散した約1000の細菌(大腸菌)の1コロニーであり、かつそれぞれの粉末1mgを、この細胞カルチャー1ml中に設置した。この試験で、有効な粉末は一般に、目視可能な混濁の、関連する低減を伴う細菌の死につながり、かつこの段階での上記の時間に関して培地が保存された)。
【0052】
その他の前駆体および/またはその他のドーパント、たとえば銅および/またはその他の溶剤および/またはその他の濃度および/またはその他の供給速度を使用することにより、粒径、および/または粒子の種類(埋め込まれているか、表面露出されているか、シリカ被覆されている)および/または機能性ドーパントの金属酸化物に対する金属の比は変化してよい。
【0053】
実施例
例1:銀ドープシリカ粒子の製造
銀ドープシリカ粒子は、液体供給ノズルの役割を果たす中心軸に、ステンレス鋼の毛管(内径0.41mm:外径0.71mm)を有する放射対称の配置を有する火炎噴霧熱分解(FSP)ノズル(7)を使用して火炎噴霧熱分解により製造した(図1を参照のこと)。毛管を直接包囲しているのは、調節可能な横断面領域の狭い環状ギャップであり、これは液体供給流を噴霧微粒化するための酸素5L/分を発生させる。FSP運転の間のノズル横断面の圧力低下は1.5バールに維持した。狭い同心のオリフィスリング(間隔0.15mm、ノズル軸からの半径6mm)に、点火のための前混合された口火および噴霧火炎の補助として役立つCH4(1.5L/分)およびO2(3.2L/分)の混合物を供給した。酸素5L/分のシースガス流を、環状の焼結される金属フリットを通して発生させて(幅8mm、ノズル軸からの内側半径9mm)、噴霧火炎を安定させ、かつ含有させた。前駆体液状供給流を、速度制御シリンジポンプ(Inotech R232)を使用して5ml/分で供給し、かつすべてのガス流(パン・ガス、>99.95%)を流量制御装置(Bronk−horst)を使用して測定した。水冷式のステンレス鋼フィルターハウジングは、火炎により製造された粉末を真空ポンプ(BUSCH)を用いて回収するためのガラスファイバーシート(Whatman GF/D、直径25.7cm)を支持していた。
【0054】
ベースの液状前駆体溶液は、2−プロパノール(Aldrich、99.9%)、テトラエトキシオルトシラン(TEOS、Aldrich、>98%)、および硝酸銀(AgNO3、Fluka、>99%)からなっていた。銀濃度は、ケイ素に対して、0〜5原子%の範囲であった。それぞれの前駆体溶液の(Si+Ag)の合計濃度は、0.3モル/Lであった。液状前駆体を、3分間、75%のプローブ出力で1.0秒/0.5秒のオン/オフ設定で超音波処理(Sonics Vibra−Cell)して、AgNO3の固体の溶解を補助した。溶液の交換または沈殿は超音波処理工程から観察されなかった。全てのサンプル調製およびFSP合成工程は、光に敏感な前駆体の変質を回避するために、低照明条件下に適切な光遮断装置を一緒に用いて実施した。
【0055】
製造されたままの粉末は、
(i)粉末X線回折(XRD)(例2、図2、推定される銀の直径例3、図3)、
(ii)BET吸着等温線および比表面積(SSA)分析(例3、図3)、
(iii)高分解能電子顕微鏡検査(HRTEM)(例4、図4)、
(iv)走査透過型電子顕微鏡検査(STEM)(例5、図5)および
(v)エネルギー分散型X線分光分析(EDXS)(例6、図5)
を使用して特徴付けを行った。
【0056】
例2:粉末X線回折
Bruker AXS D8 Advance spectrometerを用いて、2θ(Cu−Kα)10〜70゜、ステップサイズ0.03゜、および走査速度0.6゜/分(電源40kV、40mA)で、粉末X線回折(XRD)を実施した。それぞれのXRDパターン内で、個々のピークのプロファイルをマッチさせるために、基本パラメータ(Fundamental Parameter:FP)法を使用してXRDパターンを分析し、これにより結晶サイズの情報を抽出した(8)。銀濃度0〜5原子%のAgドープシリカのXRDパターンは、図2に示されている。サンプル中の非晶質シリカ(a−SiO2)の存在は、15〜35゜の間の基線値に現れている広いピークに明らかに反映されている。金属の銀に相応するピークは、38.1゜、44.3゜および64.5゜でアスタリスクにより示されている。これらのピークはそれぞれ、銀の結晶面の(111)、(200)および(220)に相応する。示されているピークは、参照パターンPDF 87−0717(9)と一致しており、かつ銀酸化物に関してはピークは観察されなかった。
【0057】
銀XRDピーク、および最も顕著には38.1゜でのピークは、Ag濃度が増大するにつれて大きさにおいて増大し、これは粒子の大きさの増大と一貫していた。銀ピークは3原子%より低いドーパント濃度に関して大きく区別することはできず、銀結晶は、低いドーパント濃度で小さい(または原子クラスター)の存在と共に高い濃度で存在しているにすぎないことを示している。
【0058】
例3:粒径の測定
BET吸着等温線および比表面積の分析は、窒素中150℃で1.5時間の脱ガス処理の後、MicroMeritics TriStar 3000システムを使用して実施した。比表面積(SSA)は、77Kで5ポイントの窒素吸着を使用して測定した。BETに相応する直径は、それぞれのサンプルに関して測定されたSSAから評価し、その際、球形の一次粒子の形状および組成補正された比重を推定した。このようにして得られたBETに相応する直径(dBET)を、基本パラメータ法を使用してXRDパターンから推定される直径と比較した。
【0059】
前記の2つの粒径分析法により得られた、銀濃度の関数としての結果は図3に示されている。白抜きの丸印は、製造されたままの粉末のBETに相応する直径(dBET)を示しており、その際、直径は、銀ドープシリカ粉末の測定された比表面積に基づいて評価された。BETに相応するこの直径は、銀ドーパントを含有していない場合の11nmからAg3原子%で8nmへと低減し、次いでAg5原子%までの濃度で8nmで維持されることが観察された。dBETの観察された低下は、Taniおよび共同研究者等(10)の観察と一貫しており、彼らは低いドーパント濃度の添加であっても、シリカの一次粒径の顕著な低下を誘発することができ、かつシリカ焼結特性に対するドーパントの影響を与えるためにこの影響に大きく貢献することを見いだした。
【0060】
図3の黒塗りの菱形は基本パラメータ法(8)を使用して、38.1℃の銀ピークでXRDパターンから評価した銀微結晶の直径(dXRD)を表している。銀微結晶の直径に関する推定値は2〜5原子%のドーパント濃度に関してのみ得られ、この範囲を超えるとAgサイズは22nmから34nmへと増大する。これらの微結晶のサイズは、シリカ一次粒径に関するBETの推定値よりも大きく、このことは、銀微結晶がより多数のシリカ粒子の凝集体マトリックスにより包囲されていることを示唆している。
【0061】
例4:透過型電子顕微鏡(TEM)画像
銀ドープシリカ粉末(Ag5原子%)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像は、図4に示されている。aと記されている左側の画像は、銀ドープシリカ粉末に関して観察される典型的な形態を示している。観察されたサイズの範囲を有する金属の銀粒子からなる材料は、非晶質シリカのマトリックス中に埋め込まれていた。銀粒子は、シリカマトリックス中にランダムに分散していることが判明し、最も大きい粒子はシリカにより包囲されているが、しかしいくつかの銀粒子はシリカ凝集体の端部に現れており、このことは、これらの粒子が表面に露出していることを示唆している。
【0062】
bと記されている右側の画像は、製造されたままの粉末の画像を示しており、その特徴は、大きな(>50nm)銀粒子は、厚さ約20nmを有するシリカのシェル中に被覆されていることである。この大きな特徴は、画像aにおいて観察された凝集体と同様に、銀−シリカ凝集体と緊密に関連して示されている。この銀−シリカ凝集体と、シリカ被覆された銀の形態との組み合わせ、つまり埋め込まれた、表面が露出した、および大きなシリカ被覆された銀粒子が同時に存在することは、望ましいことであり、かつ2つの形成経路を示唆している(上記を参照のこと)。
【0063】
例5:走査透過型電子顕微鏡(STEM)画像
図5は、銀ドープシリカ粉末(Ag5原子%)の走査透過型電子顕微鏡(STEM)の代表例を示している。STEM画像は再び非晶質シリカマトリックス中に埋め込まれた銀粒子の形態を示しており、図4に示されているTEM画像と一致している。STEM画像中の銀粒子は、TEMと比較してはるかに高い対照を有しているように見えるが、しかしその際、画像中の明るい特徴部は、金属の銀粒子である。画像の拡散している明るい灰色の領域は、銀粒子を取り巻いている非晶質シリカを示している。
【0064】
例6:エネルギー分散型X線分光分析(EDXS)
特定のスポットのエネルギー分散型X線分光分析(EDXS)を、Phillips CM30ST顕微鏡(LaB6 カソード、300kV)を用いて実施した。前記の特定のスポットは、ポイントa、bおよびcであり、STEM画像中に示されている。それぞれのポイントに関連するスペクトルは、図5に挿入されているグラフに示されている。ポイントaは、銀により支配されており(約3keVにおける信号)、表面が露出した粒子と一貫している。ポイントbおよびcは、銀をシリカ(約1.7keVにおける信号)および酸素(約0.5keVにおける信号)と共に示しており、これらの銀粒子は、シリカマトリックス中に埋め込まれていることを示唆している。銀に関する高い信号は、ポイントaに関してEDXS中に酸素が存在していないことと一緒に、酸化物ではなくむしろ金属の銀が形成されていることを示唆しており、このことはXRD分析とも一致している。
【0065】
例7:抗菌性能
A:液状カルチャー
最初の定性試験において、それぞれの粉末1mg/ml(Ag0〜5原子%)を、三重反復で天然培地TSB(Biolife、Milano、イタリア)に分散させた。それぞれの試験管を、大腸菌K12 MG1655の1000コロニー形成ユニットで接種し、混濁度を細菌成長の指標として目視により監視し、この場合、高い混濁度は細菌の存在を示す。液状媒体中での粉末の抗菌性能は、37℃で24時間後に、Ag0原子%、1原子%および2原子%のサンプルは細菌コロニーの成長を阻害するために十分な濃度ではないことが判明した。Ag3原子%のサンプルは、最初の24時間で成長を阻害し、引き続き混濁が徐々に増大し、このことは細菌集団が増大していることを示唆している。Ag4原子%および5原子%のサンプルは、細菌集団のその後の成長を完全に防止した。
B:寒天培地試験
追加の定性試験を、それぞれの粉末(Ag0〜5原子%)をTSA(Biolife、Milano、イタリア)試験プレートに均質に分散させて実施した(1mg/ml寒天)。それぞれの試験は三重反復で行った。それぞれのプレートを、約1000の細胞で画線塗沫し、37℃で24時間培養した。この培養時間の後で、プレート上で成長したコロニーを計数して、異なった銀負荷濃度での大腸菌の成長に対する影響力を試験した。図6は、分散させた粉末に24時間曝露した後の寒天培地試験プレートを示している。寒天に粉末を添加しなかったコントロールプレートは、大腸菌のコロニーにより支配されていた。純粋なSiO2粉末(Ag0%)を含有するプレートもまた、コントロールと同程度に大腸菌のコロニーによって覆われており、このことは、銀が存在しないと細菌の成長に対する顕著な効果は生じないことを示唆している。銀濃度1%を有するプレートは、純粋なSiO2とほとんど異なることはなく、他方、2%のプレートは、細菌の被覆における低下を示した。銀3%のプレートは、小数の大腸菌コロニーを示し、他方、銀粉末4%および5%のプレートは、細菌コロニーが存在しないことを示している。
【0066】
本来定性的であるが、上記の液状カルチャーおよび寒天試験の両方ともにおいて、銀濃度の増大と共に、抗菌効果が増大することが確認され、3原子%より多くの銀を含有する粉末により大腸菌に対する最も良好な抗菌性能が生じたことが示された。
【0067】
従って、埋め込まれた、表面が露出した、および大きなシリカ被覆された銀粒子の観察された組み合わせは、抗微生物性の適用のために極めて望ましい。抗微生物活性は、銀イオンが細菌へと輸送されることに由来することが想定され、従ってこれらの粉末において表面が露出した銀の存在は、銀イオンが容易に利用されることを可能にし、かつ従って高い初期抗微生物活性を可能にする。しかし埋め込まれた銀粒子の存在は、銀イオンが凝集体の外側へと拡散して粉末の活性を長時間にわたって維持する、長時間性能のための銀のレザバーとして作用する。さらに、大きなシリカ被覆された銀粒子の存在は、このレザバー効果も増大する。大きな銀粒子の存在が抗微生物活性にとって有利である一方、その他の適用のためには、銀−シリカ凝集体構造のより高い割合を有する粉末が、より望ましい場合があり、たとえばこれは透明性または最小限の粉末着色が要求される適用である。
【0068】
例8:抗真菌性能
純粋なSiO2、5原子%のAg SiO2および5原子%のCu SiO2の粉末の抗真菌効果を、サンプル寒天プレート試験を使用して評価した。真菌種のセルプラ・ラクリマンス(ナミダタケ)およびウスツリナ・デウスタ(クロミコブタケ)を別々に麦芽エキス寒天(MEA)プレート上で培養した。MEA4%および問題の粉末サンプルを寒天中に均質に混合して含有する成長培地試験プレートを準備した。MEA1cm3中、粉末10mgの粉末濃度を使用した。純粋なMEA試験プレートをコントロールとして使用した。それぞれの直径8cmの寒天試験プレートは、成長培地6cm3を含有していた。それぞれの試験プレートに関して、試験真菌コロニーの小さい(直径約4cm)サンプルを、準備した成長培地の表面上に載せた。接種後に、寒天プレートを20℃で気候曝露試験キャビネット中に貯蔵した。成長培地上での菌糸体成長は、2方向で測定し、かつ集団領域を計算した。測定は菌糸体がプレートの境界に達するまで周期的に実施した。それぞれの真菌培地に関して2回の反復を実施した。異なった粉末の成長抑制効果は、図7に示されている。
【0069】
銀−シリカおよび銅−シリカ粉末は、ナミダタケおよびクロミコブタケの両方の成長を阻害することが判明した。シリカはわずかに阻害効果を有していたが、しかし真菌の成長は、MEAコントロールと比較して顕著に低減されなかった。銀−シリカ粉末は、銅−シリカよりもナミダタケに対して有効であった。銀−シリカおよび銅−シリカの粉末の両方が、クロミコブタケに対して効果的であり、その際、銅−シリカは、銀−シリカよりもわずかに強力な効果を示した。
【0070】
従って、抗菌活性に関しても、本発明により得られる粉末は、存在するドープ金属の特殊な形に基づいて、望ましい抗真菌活性を示す。抗微生物活性として、抗真菌活性もまた、ドーパントイオンが真菌へ輸送されることに基づいており、従って微細に分散したドーパント粉末の存在は、ドーパントイオンが容易に利用されることを可能にし、従って高い初期抗微生物活性が可能になると推定される。しかし、それほど容易に利用され得ないドーパント粒子は、長時間の性能に関してドーパントのレザバーとして作用することができ、その際、ドーパントイオンは、凝集体の外側に拡散して、延長された時間にわたって粉末の活性を維持する。
【0071】
本発明の有利な実施態様を示し、かつ記載したが、本発明は、これらの有利な態様に限定されるものではなく、その他の種々の態様も可能であり、特許請求の範囲の範囲内で実施することができることを明確に理解すべきである。
【0072】
引用した非特許文献
(1)S. Y. Yeo、H. J. Lee、S. H. Jeong、Journal of Materials Science 2003、38, 2143.
(2)D. P. Dowling, K. Donnelly、M. L. McConnell、R. Eloy、M. N. Arnaud、Thin Solid Films 2001、398399, 602.
(3)I. Sondi、B. Salopek-Sondi、Journal of Colloid and Interface Science 2004 、275、111.
(4)T. Gilchrist、D.M. Healy、C. Drake、Biomaterials 1991、12、76.
(5)V. I. Ivanov-Omskii、L. K. Panina、S. G. Yastrebov、Carbon 2000、38、495.
(6)L. Madler、H. K. Kaitimler、R. Mueller、S. E. Pratsinis、Journal of Aerosol Science 2002、33、369.
(7)L. Madler、W. J. Stark、S. E. Pratsinis、Journal of Materials Research 2003、18、115.
(8)R. W. Cheary、A. Coelho、Journal of Applied Crystallography 1992、25、109.
(9)E. A. Owen、G. I. Williams、Journal of Scientific Instruments 1954、31、49.
(10)T. Tani、L. Madler、S. E. Pratsinis、Journal of Materials Science 2002、37、4627.
(11)L. Madler、W. J. Stark、S. E. Pratsinis、Journal of Materials Research 2002、17、1356.
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】火炎噴霧熱分解法装置の略図を示す図
【図2】粉末X線回折図を示す図
【図3】BET吸着等温線および比表面積を示す図
【図4】高分解能電子顕微鏡画像を示す図
【図5】走査透過型電子顕微鏡画像を示す図
【図6】エネルギー分散型X線分光分析を示す図
【図7】シリカ、Ag−シリカおよびCu−シリカ粉末の抗真菌効果のグラフを示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有する粒子の形の火炎法ドープシリカ(SiO2)を製造する火炎噴霧熱分解法であって、前記火炎法ドープシリカは、少なくとも1の機能性ドーパントを含有し、前記機能性ドーパントは、少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属および/または金属含有化合物からなり、前記方法は、
(i)有機溶剤中の、少なくとも1の機能性ドーパント前駆体と、少なくとも1のシリカ前駆体とを含有する前駆体溶液を準備する工程、
(ii)前記前駆体溶液自体の燃焼を燃料とする火炎に前記前駆体溶液を噴霧する工程
(iii)粒子状のドープシリカを回収する工程
を有する、抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性の効果を有する粒子の形の熱分解法ドープシリカ(SiO2)を製造する火炎噴霧熱分解法。
【請求項2】
前記機能性ドーパントが、少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属および/または少なくとも1の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属酸化物、特に銀、酸化銀、銅、酸化銅およびこれらの混合物、とりわけ銀および/または酸化銀、さらに有利には銀からなる群から選択される機能性ドーパントからなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1の、有利には全ての機能性ドーパント前駆体が、AgNO3(硝酸銀)、Cu(CH3COCHCOCH32(アセチルアセトナト銅)、ナフテン酸銅およびこれらの混合物から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
シリカ前駆体が、ケイ素含有化合物、有利にはオルガノシラン、さらに有利にはテトラエトキシオルトシラン(TEOS)である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
有機溶剤が、アルコールまたはアルコールの混合物、特にヒドロキシル基あたり1〜3個の炭素原子の平均炭素含有率を有するアルコールまたはアルコールの混合物、特にメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、エタンジオール、プロパンジオール、およびこれらの混合物からなる群から選択されるアルコール、とりわけ2−プロパノールである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
機能性ドーパントが、ケイ素に対して少なくとも2.5原子%、有利には少なくとも3原子%、最も有利には4〜5原子%の量で存在している、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ドーパントが、シリカの形態に影響を与えるキャリアドーパント、特にチタン、亜鉛、アルミニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属の酸化物を、Siに対して特に最大で10原子%、有利には最大で5原子%、最も有利には約2原子%のドーパント金属の量で含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により得られる粒子の形のドープシリカ。
【請求項9】
粒子の形のドープシリカ、特に請求項8に記載のドープシリカであって、前記シリカは、1もしくは複数の抗微生物性および/または抗菌性および/または抗真菌性に作用する金属および/または金属酸化物から選択される少なくとも1の機能性ドーパントによりドープされており、前記機能性ドーパントは埋め込まれた粒子および表面が露出した粒子および大きなシリカ被覆された粒子の形で同時に存在している、粒子の形のドープシリカ。
【請求項10】
機能性ドーパントが、銀、酸化銀、銅、酸化銅およびこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項9記載のドープシリカ。
【請求項11】
前記機能性ドーパントが、銀および/または酸化銀を含有し、かつ有利には銀および/または酸化銀からなり、かつさらに有利には銀からなる、請求項10記載のドープシリカ。
【請求項12】
前記ドーパントが、銅および/または酸化銅を含有し、かつ有利には銅および/または酸化銅からなる、請求項10記載のドープシリカ。
【請求項13】
機能性ドーパントが、ケイ素に対して少なくとも2.5原子%、有利には少なくとも3原子%、最も有利には4〜5原子%の量で存在している、請求項8から12までのいずれか1項記載のドープシリカ。
【請求項14】
ドーパントが、シリカの形態に影響を与えるキャリアドーパント、特にチタン、亜鉛、アルミニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属の酸化物を含有する、請求項8から13までのいずれか1項記載のドープシリカ。
【請求項15】
キャリアドーパントが、Siに対して最大で10原子%、有利には最大で5原子%、最も有利には約2原子%のドーパント金属の量で存在している、請求項8から14までのいずれか1項記載のドープシリカ。
【請求項16】
粒子の表面が、ポリマーマトリックスの表面またはポリマーマトリックス中に選択的に固定するための有機基により官能化されている、請求項8から15までのいずれか1項記載のドープシリカ。
【請求項17】
請求項8から16までのいずれか1項記載の少なくとも1のドープシリカを含有するポリマーおよび/またはポリマー複合材料。
【請求項18】
請求項8から16までのいずれか1項記載の少なくとも1のドープシリカにより少なくとも部分的に処理されているか、または含浸されているポリマーおよび/またはポリマー複合材料および/または天然繊維。
【請求項19】
請求項17または18記載のポリマーおよび/またはポリマー複合材料および/または天然繊維を含有する織布および/または不織布。
【請求項20】
請求項8から16までのいずれか1項記載の少なくとも1のドープシリカにより少なくとも部分的に処理されているか、または含浸されている織布および/または不織布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−532895(P2008−532895A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554412(P2007−554412)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000084
【国際公開番号】WO2006/084411
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500466913)
【氏名又は名称原語表記】Eidgenoessische Technische Hochschule Zuerich
【住所又は居所原語表記】Raemistrasse 101, CH−8092 Zuerich, Switzerland
【Fターム(参考)】