火花点火式内燃機関の制御装置
【課題】4ストロークサイクルが採用された火花点火式の内燃機関10の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有するものにあって、再始動処理が長期化しやすいこと。
【解決手段】MREセンサであるクランク角センサ36の出力に基づき、内燃機関10の自動停止処理時であっても、4ストロークを1周期とする位相情報であるクランクカウンタが更新される。再始動条件が成立すると、燃料噴射制御については直ちに許可される一方、点火制御については、カム角センサ42a,42bの出力との比較によってクランクカウンタの信頼性が高いと評価されるまで禁止される。
【解決手段】MREセンサであるクランク角センサ36の出力に基づき、内燃機関10の自動停止処理時であっても、4ストロークを1周期とする位相情報であるクランクカウンタが更新される。再始動条件が成立すると、燃料噴射制御については直ちに許可される一方、点火制御については、カム角センサ42a,42bの出力との比較によってクランクカウンタの信頼性が高いと評価されるまで禁止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する火花点火式内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
4ストロークサイクルが採用された内燃機関は、内燃機関のクランク軸が2回転する期間において、吸気、圧縮、燃焼、および排気の4つの行程(ストローク)が行われるものである。このため、燃料噴射制御や点火制御を行なううえでは、クランク軸の2回転(4ストローク)を1周期とする位相情報が要求される。このため、内燃機関の始動時においては、クランク軸の回転角度を検出するクランク角センサの出力に加えて、カム軸の回転角度を検出するカム角センサの出力を用いることで、位相情報を特定する処理であるいわゆる気筒判別処理がなされるのが一般的である。
【0003】
一方、交差点における信号待ち時等において車載内燃機関の自動停止処理であるいわゆるアイドルストップ制御を行うものにあっては、内燃機関の再始動処理時においても気筒判別処理が必要となることがある。これは、クランク角センサとして普及している電磁ピックアップ方式のセンサが低回転速度領域において回転角度を検出することができないことを一因としている。
【0004】
ところで、クランク角センサの中には、例えば強磁性磁気抵抗素子(MRE)を用いたセンサ(以下、MREセンサ)もある。そして、MREセンサは、回転速度がゼロであっても回転角度を検出できるメリットがある。このため、上記アイドルストップ制御を行なうものにあっては、MREセンサを利用することで、自動停止処理後であっても内燃機関の回転角度を監視することができる。このため、再始動処理時には、気筒判別処理を行うことなく位相情報を利用することができるとも考えられる。
【0005】
なお、内燃機関のクランク軸の回転角度を算出する従来技術としては、例えば下記特許文献1,2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−025410号公報
【特許文献2】特許第3870401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、上記のように自動停止処理中においてクランク軸の回転角度を検出可能な構成であっても、内燃機関が停止している際にクランク角センサの出力にノイズが重畳した場合等にあっては、制御装置の認識する位相情報が正しい情報からずれてしまうおそれがある。そしてこうした状況下、内燃機関を再始動する場合には、適切なタイミングで燃料噴射制御や点火制御を行なうことができなくなる。これに対し、再始動処理時に気筒判別処理の完了を待って点火制御等を実行する場合には、再始動処理に要する時間が長期化し、ドライバビリティの低下につながるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有するものにあって、再始動処理を極力迅速に行うことのできる火花点火式内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0010】
請求項1記載の発明は、4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する火花点火式内燃機関の制御装置において、前記内燃機関のクランク角度を検出するクランク角検出手段の検出結果を入力とし、前記内燃機関の4ストロークを1周期として且つ燃料噴射制御および点火制御の双方において参照されるデータである位相データを、前記自動停止処理によって前記内燃機関の燃焼制御が停止されている期間を含めて継続的に算出する算出手段と、前記内燃機関のカム軸の回転角度を検出するカム角検出手段の検出結果と前記位相データとの比較に基づき、前記位相データの信頼性を評価する評価手段と、前記評価手段の出力にかかわらず、前記再始動処理のための第1回目の燃料噴射を実行する噴射制御手段と、前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記内燃機関の点火制御を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、位相データの信頼性が低いと判断される場合、点火制御を禁止することによって、不適切な位相において点火がなされることで内燃機関に負担をかける事態を好適に回避することができる。しかも、位相データの信頼性の低下の有無にかかわらず、再始動処理のための第1回目の燃料噴射がなされるために、点火制御の直前に信頼性が回復した場合等にあっても、燃料噴射が間にあわない事態を回避することができる。このため、再始動処理を極力迅速に行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記再始動処理のための燃料噴射回数を制限する制限手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、点火制御が禁止されている状況下、燃料噴射が多数回行われることを回避することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記カム角検出手段の検出結果に基づき前記位相データを補正する補正手段を更に備え、前記評価手段は、前記補正手段による前記位相データの補正がなされることで、前記位相データの信頼性の評価を前記位相データの信頼性が高いとの評価に変更することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記カム角検出手段は、前記カム軸の回転角度を、前記クランク角度の1回転よりも短い間隔で検出可能なものであり、前記補正手段は、前記カム角検出手段の出力信号に含まれる位相情報によって前記位相データを補正するものであることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、クランク角検出手段が基準位置を検出可能なものであったとしても、一般に、基準位置の検出を利用する場合よりも早期に位相データを補正することが可能となる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記クランク角検出手段は、基準となるクランク角を検出する機能を有し、前記クランク角検出手段による前記基準となるクランク角の検出と、前記カム角検出手段の検出結果とに基づき、気筒判別を行う気筒判別手段を更に備え、前記補正手段は、前記気筒判別手段による気筒判別に基づき前記位相データを補正することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記クランク角検出手段は、MREセンサを備えて構成されることを特徴とする。
【0019】
MREセンサは、検出対象との配置によっては、たとえ検出対象が停止していようと、検出対象が回転している場合の信号を出力してしまうことがあることが発明者らによって見出されている。このため、MREセンサを備える本発明は、上記評価手段等の利用価値が特に大きい。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記カム角検出手段は、MREセンサを備えて構成され、前記クランク角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置する場合に、前記カム角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置することがないように設定されていることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、クランク角検出手段が備えるMREセンサの検出対象と、カム角検出手段が備える検出対象のMREセンサの検出対象とがともに静止している場合に、双方のMREセンサが共に検出対象の回転を誤検出することを好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるクランクカウンタのカウントアップ処理の手順を示す流れ図。
【図3】同実施形態にかかる再始動処理の手順を示す流れ図。
【図4】MREセンサの問題点を説明するためのタイムチャート。
【図5】上記実施形態にかかる再始動処理時における点火制御の制限処理の手順を示す流れ図。
【図6】同実施形態にかかるクランク角度照合データの算出処理の手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態にかかるクランクカウンタの信頼性評価の処理手順を示す流れ図。
【図8】同実施形態にかかる気筒判別処理の手順を示す流れ図。
【図9】同実施形態にかかるクランクカウンタの補正態様を示すタイムチャート。
【図10】第2の実施形態にかかるクランクカウンタの信頼性評価の処理手順を示す流れ図。
【図11】同実施形態にかかるクランクカウンタの補正処理の手順を示す流れ図。
【図12】同実施形態にかかるクランクカウンタの補正態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる火花点火式内燃機関の制御装置の第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0025】
図示される内燃機関10は、火花点火式内燃機関であり、特に吸気ポート噴射式のものを想定している。また、内燃機関10は、吸気、圧縮、燃焼、および排気の4つの行程(ストローク)を1サイクルとし、この1サイクルが2回転に対応するいわゆる4ストロークサイクルエンジンである。
【0026】
内燃機関10の吸気通路12には、燃料噴射弁14が設けられており、燃料噴射弁14からの燃料の噴射によって、吸気通路12の上流から吸入された空気に燃料が混合されることで混合気が生成される。また、吸気通路12は、吸気バルブ18の開弁によって燃焼室16と連通される。燃焼室16には点火プラグ20が突出形成されており、点火プラグ20は、その火花放電によって吸気通路12から燃焼室16に吸入された上記混合気を着火する機能を有する。火花放電によって混合気が着火されることで生じる燃焼エネルギは、ピストン22を介して運動エネルギに変換される。一方、燃焼に供された混合気は、排気バルブ24の開弁に伴って排気通路26から排出される。
【0027】
上記ピストン22を介して取り出される運動エネルギは、クランク軸30の回転エネルギとして、変速装置32を介して図示しない駆動輪へと出力される。なお、クランク軸30には、上記運動エネルギを利用して回転エネルギが付与されるのに加えて、スタータ31によって初期回転が付与される構成となっている。また、変速装置32は、ユーザからの変速比の指令手段としてのシフトレバー34を介して操作される。
【0028】
上記吸気バルブ18および排気バルブ24は、クランク軸30と機械的に連結されクランク軸30の回転力が付与されるカム軸38,40の回転によって開閉される。
【0029】
上記クランク軸30付近には、その回転角度を検出するためのクランク角センサ36が設けられており、また、カム軸38,40付近には、その回転角度を検出するためのカム角センサ42a,42bが設けられている。ここで、クランク角センサ36や、カム角センサ42a,42bは、いずれもMREセンサである。そして、クランク角センサ36は、クランク軸30と一体的に回転するロータに等間隔に形成された突起部の有無に応じた信号を出力する。一方、カム角センサ42a,42bはそれぞれ、カム軸38,40と一体的に回転するロータに等間隔に形成された突起部の有無に応じた信号を出力する。なお、クランク角センサ36は、正回転および逆回転の識別機能を有しており、正回転と逆回転とで互いに出力電圧幅が相違するものである。
【0030】
ここで、クランク軸30と一体的に回転するロータに形成される上記突起部は、「6°CA」間隔で設けられており、且つ、一箇所突起の間隔が拡大された欠歯部を有している。これは、クランク軸30の回転角度の基準位置(基準となるクランク角度)を定めるものであり、この欠歯部においてクランク角センサ36の出力信号が基準信号を出力することとなる。
【0031】
一方、カム軸38と一体的に回転するロータに形成される上記突起部と、カム軸40と一体的に回転するロータに形成される上記突起部とは、互いに相違するクランク角度に対応するものである。そして、これにより一対のカム角センサ42a,42bの出力によって、クランク角度の1回転よりも短い間隔の位相情報を有したカム角度を検出可能となっている。これは、詳しくは、図の右側部分に示されている。ここで、クランク角センサ36の欄は、基準位置からのロータ突起部の単位数(1単位=5個)を示している。また、カム角センサ42a,42bの欄は、これらの出力を示している。すなわち例えば、カム角センサ42aの出力が論理「H」であって且つカム角センサ42bの出力が立ち上がりエッジとなる際のクランク角度が基準位置から「1単位=5個目」の突起部に対応する。また例えば、カム角センサ42aの出力が立ち上がりエッジとなって且つカム角センサ42bの出力が論理「L」となる際のクランク角度が基準位置から「21単位=105個目」の突起部に対応する。このように、カム角センサ42a,42bの出力は、いずれか一方のエッジが検出されるタイミングで、4ストローク(720°CA)を1周期とする正確な位相情報(720°CA内の回転角度情報)を与えるものである。
【0032】
電子制御装置(ECU50)は、内燃機関10を制御対象とし、その制御量(トルク、回転速度、排気特性等)を制御する制御装置である。この制御は、クランク角センサ36、カム角センサ42a,42bに加えて、ユーザによるブレーキ操作を検出するブレーキセンサ52やアクセル操作を検出するアクセルセンサ54等の出力信号を取り込むことで行なわれる。上記制御量を制御すべく、ECU50では、クランク角センサ36の出力信号に基づき、上記位相情報を有するデータ(位相データ)としてのクランクカウンタCNを算出する処理を行う。
【0033】
図2に、クランクカウンタCNのカウントアップ処理の手順を示す。この処理は、ECU50によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0034】
この一連の処理では、まずステップS10において、クランク角センサ36の出力を取得する。詳しくは、ECU50内には、クランク角センサ36の出力の高周波成分を除去するためのローパスフィルタ回路が設けられており、クランク角センサ36の出力がローパスフィルタ回路によって処理されたものを取得する。ここで、ローパスフィルタ回路は、高周波ノイズを除去するためのものである。ここでは、内燃機関10の回転速度として想定外の高回転速度に対応した高周波ノイズを除去する処理を行う。続くステップS12では、ローパスフィルタ処理後のクランク角センサ36の出力のエッジが検出されたか否かを判断する。そして、エッジが検出される場合、ステップS14において、その出力電圧から正回転であるか否かを判断する。そして正回転である場合、クランクカウンタCNを加算し(ステップS16)、逆回転である場合、クランクカウンタCNを減算する(ステップS18)。
【0035】
上記ステップS16、S18の処理が完了する場合、ステップS20において、クランクカウンタCNを「720°CA」を一周期とする周期信号とすべく、「720°CA」が最大となるように規格化する処理を行う。これは、「720°CA」単位でクランクカウンタCNを初期化することで行なうことができる。これにより、クランクカウンタCNが「720°CA」を1周期とするものとなり、上記位相情報を適切に表現するものとなる。このため、クランクカウンタCNを利用することで、燃料噴射制御や点火制御を行なうことが可能となる。なお、クランクカウンタCNは、内燃機関10の始動に際して1度、カム角センサ42a,42bの出力との協働で、基準信号が今回出力されたタイミングが4ストローク中において基準信号が出力される2つのタイミングのうちのいずれであるかを特定する処理(気筒判別処理)がなされる際に、リセットされる。これにより、クランクカウンタCNは、位相情報を表現する位相データとなる。なお、気筒判別処理の後にも、クランク角センサ36によって上記基準信号が検出される場合、クランクカウンタCNの値をこれに基づき適宜補正する処理がなされるが、この際には、カム角センサ42a,42bの出力は利用されない。
【0036】
上記ECU50は、更に、所定の停止条件が成立することで内燃機関10を自動停止させ、所定の再始動条件が成立することで内燃機関10を再始動させるいわゆるアイドルストップ制御を行なう機能を有する。ここで、所定の停止条件や所定の再始動条件の成立の有無は、シフトレバー34の操作状態や、ブレーキセンサ52、アクセルセンサ54等に基づき判断されるものである。図3に、自動停止からの再始動に関する処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0037】
この一連の処理では、まずステップS30において、内燃機関10が自動停止しているか否かを判断する。そして自動停止していると判断される場合、ステップS32において、再始動条件が成立したか否かを判断する。ここで、再始動条件としては、例えばユーザによるブレーキの解放側への操作等が考えられる。そして、再始動要求があると判断される場合、ステップS34において、機関回転速度NEが所定速度α以下であるか否かを判断する。この処理は、スタータ31によってクランク軸30に初期回転を付与するか否かを判断するためのものである。そして、ステップS34において肯定判断される場合、ステップS36においてスタータ31によってクランク軸30に初期回転を付与する。そして、ステップS36の処理が完了する場合や、ステップS34において否定判断される場合、ステップS38において、クランクカウンタCNに基づく燃料噴射制御を開始する。
【0038】
ここで、クランクカウンタCNは、内燃機関10の自動停止処理がなされても更新可能なものとなっている。これは、クランク角センサ36がMREセンサであり、クランク軸30が停止していてもその回転角度を検出可能であることによる。このため、内燃機関10の再始動処理時であっても、気筒判別処理の完了を待つことなくクランクカウンタCNから位相情報を抽出することで燃料噴射制御や点火制御を行なうことができるとも考えられる。しかし、クランクカウンタCNの有する位相情報は、クランク軸30が停止する等、極低速回転となることで信頼性が低下するおそれがある。その要因は、クランク軸30が停止していても、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する場合、クランク角センサ36がMREセンサの性質によって、回転時と同様の信号を出力するおそれがあることである。
【0039】
図4に、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する場合におけるクランク角センサ36の出力の計測データを示す。図示されるように、クランク角センサ36は、回転時と同様の信号を出力するために、クランクカウンタCNが更新され続ける。
【0040】
こうした現象による弊害を極力回避すべく、本実施形態では、先の図1に示すように、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する事態と、カム角センサ42a,42bのうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する事態とが同時に生じることが無いように、これら3つのロータの突起部の配置を設定している。しかしこの場合であっても、図4に示す現象自体を回避することはできない。そして、クランクカウンタCNから抽出される位相情報が誤った情報である場合、これに基づき燃料噴射制御や点火制御を行なうことで内燃機関10を劣化させる懸念がある。
【0041】
こうした事態を回避すべく、再始動に伴って気筒判別処理が完了するのを待って燃料噴射制御や点火制御を許可することも考えられる。しかしこの場合には、再始動に要する時間が再始動直前の停止クランク角度に依存して大きくばらつき、結果としてドライバによるブレーキ解放等の操作から車両が実際に動き出すまでの応答時間に大きなばらつきが生じる。
【0042】
そこで本実施形態では、再始動処理に際し、図5に示す態様にて燃料噴射制御や点火制御を行なうようにする。この処理は、ECU50によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0043】
この一連の処理では、まずステップS100においてスタータ31を用いた再始動要求があるか否かを判断する。この処理は、先の図3のステップS36の処理時であるか否かを判断するものである。そして、ステップS100において肯定判断される場合、ステップS200において、カム角センサ42a,42bの出力信号によって位相情報を有するデータ(クランク角度照合データCD)を算出する。この処理は、図6に示す処理となる。
【0044】
すなわち、先の図1の右上に示した表の関係に基づき、カム角センサ42bの出力が立ち上がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS202:Yes)、カム角センサ42aの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「1」に設定し(ステップS206)、カム角センサ42aの出力が論理「L」である場合にはクランク角度照合データCDを「9」に設定する(ステップS208)。また、カム角センサ42bの出力が立ち下がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS210:Yes)、カム角センサ42aの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「17」に設定する(ステップS214)。また、カム角センサ42aの出力が立ち上がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS216:Yes)、カム角センサ42bの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「13」に設定し(ステップS220)、カム角センサ42bの出力が論理「L」である場合にはクランク角度照合データCDを「21」に設定する(ステップS222)。さらに、カム角センサ42aの出力が立ち下がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS224:Yes)、カム角センサ42bの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「5」に設定する(ステップS228)。
【0045】
この図6の処理が終了すると、先の図5のステップS300に移行する。ステップS300においては、クランクカウンタCNの信頼性を評価する。この処理は、図7に示す処理となる。
【0046】
この一連の処理では、まずステップS300において、カム角センサ42a,42bのエッジが生じるタイミングであるか否かを判断する。この処理は、上記クランク角度照合データCDの示す位相情報がカム軸38,40と一体的に回転するロータの突起間隔の精度とは関係なく正確なクランク角度を示すタイミングを特定するためのものである。そしてステップS300において肯定判断される場合、ステップS302において、クランクカウンタCNとクランク角度照合データCDとの乖離度合いが所定以下(両者の差の絶対値が所定値β以下)であるかを判断する。この処理は、クランクカウンタCNの信頼性を評価するためのものである。ここで、信頼性を評価するための所定値βは、ゼロでなくてもよい。ただし、クランクカウンタCNの最小単位以下とすることが望ましい。
【0047】
そしてステップS302において肯定判断される場合、ステップS304においてクランクカウンタCNの信頼性が高いと判断する。一方、ステップS302において否定判断される場合、ステップS306においてクランクカウンタCNの信頼性が低いと判断する。
【0048】
この図7に示す処理が終了すると、先の図5のステップS400に移行する。ステップS400においては、クランクカウンタCNの信頼性が高いと判断されたか否かを判断する。そして、信頼性が高いと判断されている場合、ステップS500において、燃料噴射制御と点火制御とをともに許可する。これに対し、ステップS400において否定判断される場合、ステップS600において、点火制御を禁止する。この処理は、不適切な点火時期に点火がなされることで内燃機関10が逆回転する等、内燃機関10の劣化の要因となる事態が生じることを回避するための措置である。続くステップS700においてはこの再始動要求に伴う噴射回数が所定回数Nth以下であるか否かを判断する。ここで、所定回数Nthは、「1」以上に設定されている。そして、ステップS700において肯定判断される場合、ステップS800において噴射制御を許可する。これに対し、ステップS900においては、噴射制御を禁止する。
【0049】
このように、点火制御が禁止される場合には、クランクカウンタCNの信頼性が高まるのを待って点火制御が開始されることとなる。すなわち、上記気筒判別処理によってクランクカウンタCNがリセットされるのを待って点火制御が開始されることとなる。図8に、気筒判別処理の処理手順を示す。この処理は、ECU50によって、内燃機関10の始動に際して実行される。
【0050】
この一連の処理では、ステップS40において、今回の機関始動に際し、未だ気筒判別処理が完了していないか否かを判断する。そして、未だ気筒判別処理が完了していないと判断される場合、ステップS42において、クランク角センサ36の出力を取得する。そして、クランク角センサ36から基準信号が出力される場合(ステップS44)、カム角センサ42a,42bの出力を加味して気筒判別処理を行う。これにより、クランクカウンタCNは、カム角センサ42a,42bの出力と基準信号とに基づき特定される位相情報を表現するように更新される。ステップS46の処理が完了する場合、ステップS48において、クランクカウンタCNの信頼性について、信頼性が高い旨の評価に更新する。
【0051】
図9に、本実施形態にかかる再始動処理のうち、特に再始動条件成立時にクランクカウンタCNが正しい位相情報を有しない場合を示す。詳しくは、図9(a)に、クランク角センサ36の出力の推移を示し、図9(b)に、クランクカウンタCNの推移を示し、図9(c)に、クランクカウンタCNの信頼性の評価結果を示し、図9(d)に点火制御の可否を示す。
【0052】
図示されるように、自動停止処理によって内燃機関10が停止した後、クランク角センサ36の出力にノイズが混入すると、クランクカウンタCNの値が変化し、正しい位相情報を表現する値からずれる。その後再始動条件が成立すると、クランクカウンタCNの値とクランク角度照合データCDの値とが相違することで、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断され、点火制御が禁止される。その後、気筒判別処理がなされることによりクランクカウンタCNがリセットされることで、クランクカウンタCNの信頼性が高まり、点火制御が許可される。なお、再始動条件成立時からクランクカウンタCNとクランク角度照合データCDとの比較処理時までの期間については、クランクカウンタCNの信頼性が低いものとして扱うことが望ましい。
【0053】
こうした一連の処理によれば、再始動処理を極力迅速に完了することができる。すなわち、クランクカウンタCNの信頼性が高ければ、燃料噴射制御および点火制御がいずれも許可されるため、再始動が最も迅速に行なわれる。これに対し、クランクカウンタCNの信頼性が低い場合であっても、噴射制御については所定回数まで許可することで、再始動を極力迅速に行なうことが可能となる。すなわち、燃料噴射制御をも禁止した場合には、先の図8に示した処理によってクランクカウンタCNの信頼性が高くなった時点において、その時点以降の最も早期に点火時期を迎える気筒における吸入行程を過ぎていると、その気筒における点火制御を行なうことができても、燃焼室16への混合気の供給が間に合わないおそれがある。これに対し、本実施形態では、燃料噴射制御を所定回数許可することで、クランクカウンタCNの信頼性が高まるタイミングに対して極力早期のタイミングで燃焼制御を開始することができる。
【0054】
なお、上記所定回数Nthは、再始動条件の成立時におけるクランクカウンタCNの値が正確でない場合に、その信頼性の回復に要する期間として許容される期間内において生じる噴射時期の回数に基づき設定される。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0056】
(1)内燃機関10の再始動処理の開始に際し、クランクカウンタCNとクランク角度照合データCDとの比較に基づき、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断される場合に点火制御を禁止し、燃料噴射制御については、信頼性の評価にかかわらず所定回数Nthの燃料噴射を許可した。これにより、不適切な位相において点火がなされることで内燃機関10に負担をかける事態を好適に回避することができる。しかも、再始動処理のための燃料噴射を所定回数Nth許可することで、点火制御の直前に信頼性が回復した場合等にあっても、燃料噴射が間にあわない事態を回避することができる。このため、再始動処理を極力迅速に行うことができる。
【0057】
(2)クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断される場合、気筒判別処理を利用してクランクカウンタCNを更新するとともに、信頼性の評価を高い旨の評価に更新した。これにより、これ以降、点火制御を行なうことができる。
【0058】
(3)クランク角センサ36として、MREセンサを用いた。これにより、検出対象であるロータの突起部との配置によっては、たとえロータが停止していようと、回転している場合の信号を出力してしまうことがあるため、クランクカウンタCNの信頼性の評価を行う処理の利用価値が特に大きい。
【0059】
(4)クランク角センサ36の中央部にその検出対象であるロータの突起部のエッジが位置する場合に、カム角センサ42a,42bの中央部にその検出対象であるロータの突起部のエッジが位置することがないように設定した。これにより、クランク角センサ36とカム角センサ42a,42bとの双方が静止している場合に、双方のセンサがともに検出対象の回転を誤検出することを好適に回避することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0061】
本実施形態では、クランクカウンタCNの信頼性が低いと評価された場合、クランク角度照合データCDの値にクランクカウンタCNを補正する。
【0062】
図10に、本実施形態にかかるクランクカウンタCNの信頼性を評価する処理の手順を示す。なお、図10において、先の図7に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0063】
図示されるように、この一連の処理では、ステップS306においてクランクカウンタCNの信頼性が低いと判断される場合、ステップS308において、クランクカウンタCNを補正する要求が生じた旨のフラグ(補正要求フラグFc)をオンする。
【0064】
図11に、本実施形態にかかるクランクカウンタCNの補正処理の手順を示す。この処理は、ECU50によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0065】
この一連の処理では、まずステップS50において、補正要求フラグFcがオンであるか否かを判断する。そして、オンであると判断される場合、ステップS52において、カム角センサ42a,42bのいずれかのエッジが生じるタイミングであるか否かを判断する。この処理は、クランク角度照合データCDの更新タイミング(そのクランク角が正確な値となるタイミング)であるか否か判断するものである。そしてステップ52において肯定判断される場合、ステップS54においてクランクカウンタCNをクランク角度照合データに一致させるように補正し、クランクカウンタCNの信頼性が高い旨に評価を更新するとともに補正要求フラグFcをオフとする。
【0066】
図12に、本実施形態にかかる再始動処理のうち、特に再始動条件成立時にクランクカウンタCNが正しい位相情報を有しない場合を示す。なお、図12(a)〜図12(d)は、先の図9(a)〜図9(d)に対応している。
【0067】
図示されるように、自動停止処理によって内燃機関10が停止した後、クランク角センサ36の出力にノイズが混入すると、クランクカウンタCNの値が変化し、正しい位相情報を表現する値からずれる。その後再始動条件が成立すると、クランクカウンタCNの値とクランク角度照合データCDの値とが相違することで、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断され、点火制御が禁止される。そして、その直後におけるクランク角度照合データCDの変化タイミングにおいて、クランクカウンタCNが補正されその信頼性が高まることで、点火制御が許可される。
【0068】
なお、本実施形態においても気筒判別処理はなされるため、ステップS52、S54の処理に先立ち、気筒判別処理によってクランクカウンタCNが更新されることもありうる。このように、本実施形態では、クランクカウンタCNが、カム角センサ42a,42bの出力を加味して更新(補正)されるケースが2通りある。ただし、クランクカウンタCNの更新に際しカム角センサ42a,42bの出力が加味されるのは、始動時に限られ、1の始動に際して1度または2度に限られる。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)、(3)、(4)の各効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0070】
(5)クランクカウンタCNの信頼性が低い場合、クランク角度の1回転よりも短い間隔で位相情報を更新するクランク角度照合データCDによってクランクカウンタCNを補正した。これにより、一般に、基準位置の検出を利用する場合よりも早期に位相データを補正することが可能となる。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0072】
<カム角検出手段について>
カム角検出手段としては、カム軸の回転角度に対する出力信号が相違する一対のセンサを備えるものに限らない。例えば3つ以上のセンサを備えるものであってもよい。また例えば、単一のカム軸に設けられた単一のロータと、このロータ付近に設けられた単一のセンサとを備えるものであってもよい。こうした場合であっても、例えば突起部の高さを2段階とするなどすることで、カム軸の回転角度を、クランク軸の1回転よりも短い間隔で検出可能な手段を構成することができる。
【0073】
もっとも、カム角検出手段としては、カム軸の回転角度を、クランク軸の1回転よりも短い間隔で検出可能な手段に限らない。例えば、カム軸の回転角度を、クランク軸の1回転の間隔で検出可能なものであっても、クランクカウンタ(位相データ)の信頼性を評価するうえでカム角検出手段の出力を用いることは有効である。
【0074】
なお、カム角検出手段としては、MREセンサを備えるものに限らない。
【0075】
<クランク角検出手段について>
クランク角検出手段としては、「6°CA」毎に回転角度を検出可能とするものに限らない。また、正転および逆転を、センサの出力電圧の絶対値に基づき検出する手段に限らず、例えばセンサの出力周波数によって検出する手段であってもよい。
【0076】
また、MREセンサを備えるものにも限らず、要は、検出対象の回転速度がゼロであってもその回転角度を検出可能なセンサであればよい。
【0077】
さらに、基準位置を検出可能なものにも限らない。
【0078】
<位相データ(クランクカウンタ)について>
位相データとしては、クランク角検出手段によって検出可能な最小回転角度間隔よりも大きい角度間隔を1単位とするものに限らない。例えば、検出可能な最小回転角度間隔を1単位とするカウンタ値であってもよい。さらに例えば、検出可能な最小回転角度間隔よりも小さい角度間隔を1単位とするものであってもよい。この位相データは、クランク角センサの出力から検出されるクランク角度と、クランク軸の回転速度とに基づく補間処理によって算出することができる。
【0079】
<位相データの補正手段について>
位相データの補正手段としては、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断されたタイミング直後におけるカム角センサの出力のエッジタイミングや、気筒判別処理時において補正するものに限らない。例えばクランクカウンタCNの信頼性が低いと判断されたタイミングからカム角センサの出力が2度目にエッジとなるタイミングであってもよい。
【0080】
<位相データの信頼性の評価手段>
上記各実施形態では、位相データを補正するタイミングで位相データの信頼性が高いとの評価に改めたがこれに限らない。例えば上記第2の実施形態において、位相データの補正処理の後、カム角センサの出力のエッジが検出される最初のタイミングにおいて信頼性が高いとの評価に更新してもよい。
【0081】
また、上記第2の実施形態において、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断されたタイミング直後におけるカム角センサの出力のエッジタイミングにおいて、クランクカウンタCNの値とクランク角度照合データCDとが一致する場合には、クランクカウンタCNの信頼性が高い旨評価を改めるようにしてもよい。
【0082】
さらに、位相データの信頼性の評価をスタータ31を使った再始動要求時に限って行なうものに限らない。ただし、内燃機関が一旦停止したと判断される場合に限って行なう等、内燃機関が一旦停止したと判断される場合に評価を行なうことが望ましい。ここで、内燃機関が停止したにもかかわらずスタータ31を用いない再始動処理としては、例えば下り坂において車両のブレーキを解放することで内燃機関に初期回転を付与する場合等が考えられる。特にこうした場合においては、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置して且つカム角センサ42a,42bのうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する場合、クランク軸30が実際には停止しているにもかかわらず回転しているものとして始動処理がなされることが懸念される。そして、この場合には、クランクカウンタCNの信頼性の評価を適切に行なうことができなくなるおそれがあるため、上記各実施形態において例示した態様にて3つのロータを配置することが特に有効である。
【0083】
<その他>
・クランク角センサ36の検出対象とカム角センサ42a,42bの検出対象との幾何学的な配置設定としては、上記第1の実施形態で例示したものに限らない。こうした設定としなくても、上記第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果を得ることはできる。
【0084】
・内燃機関としては、吸気ポート式のものに限らず、例えば筒内噴射式のものであってもよい。ただし、この場合、先の図5におけるステップS700の処理で用いる所定回数Nthを、上記実施形態よりも小さい値に設定することが望ましい。
【0085】
・自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する制御装置としては、車載主機として内燃機関のみを備えるものに限らない。例えば車載主機として電動機を併用するいわゆるハイブリッド車であっても、内燃機関の再始動処理に先立ちその回転角度がゼロとなりうるものにあっては、本発明の適用が有効である。
【符号の説明】
【0086】
10…内燃機関、36…クランク角センサ、42a,42b…カム角センサ、50…ECU。
【技術分野】
【0001】
本発明は、4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する火花点火式内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
4ストロークサイクルが採用された内燃機関は、内燃機関のクランク軸が2回転する期間において、吸気、圧縮、燃焼、および排気の4つの行程(ストローク)が行われるものである。このため、燃料噴射制御や点火制御を行なううえでは、クランク軸の2回転(4ストローク)を1周期とする位相情報が要求される。このため、内燃機関の始動時においては、クランク軸の回転角度を検出するクランク角センサの出力に加えて、カム軸の回転角度を検出するカム角センサの出力を用いることで、位相情報を特定する処理であるいわゆる気筒判別処理がなされるのが一般的である。
【0003】
一方、交差点における信号待ち時等において車載内燃機関の自動停止処理であるいわゆるアイドルストップ制御を行うものにあっては、内燃機関の再始動処理時においても気筒判別処理が必要となることがある。これは、クランク角センサとして普及している電磁ピックアップ方式のセンサが低回転速度領域において回転角度を検出することができないことを一因としている。
【0004】
ところで、クランク角センサの中には、例えば強磁性磁気抵抗素子(MRE)を用いたセンサ(以下、MREセンサ)もある。そして、MREセンサは、回転速度がゼロであっても回転角度を検出できるメリットがある。このため、上記アイドルストップ制御を行なうものにあっては、MREセンサを利用することで、自動停止処理後であっても内燃機関の回転角度を監視することができる。このため、再始動処理時には、気筒判別処理を行うことなく位相情報を利用することができるとも考えられる。
【0005】
なお、内燃機関のクランク軸の回転角度を算出する従来技術としては、例えば下記特許文献1,2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−025410号公報
【特許文献2】特許第3870401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、上記のように自動停止処理中においてクランク軸の回転角度を検出可能な構成であっても、内燃機関が停止している際にクランク角センサの出力にノイズが重畳した場合等にあっては、制御装置の認識する位相情報が正しい情報からずれてしまうおそれがある。そしてこうした状況下、内燃機関を再始動する場合には、適切なタイミングで燃料噴射制御や点火制御を行なうことができなくなる。これに対し、再始動処理時に気筒判別処理の完了を待って点火制御等を実行する場合には、再始動処理に要する時間が長期化し、ドライバビリティの低下につながるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有するものにあって、再始動処理を極力迅速に行うことのできる火花点火式内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0010】
請求項1記載の発明は、4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する火花点火式内燃機関の制御装置において、前記内燃機関のクランク角度を検出するクランク角検出手段の検出結果を入力とし、前記内燃機関の4ストロークを1周期として且つ燃料噴射制御および点火制御の双方において参照されるデータである位相データを、前記自動停止処理によって前記内燃機関の燃焼制御が停止されている期間を含めて継続的に算出する算出手段と、前記内燃機関のカム軸の回転角度を検出するカム角検出手段の検出結果と前記位相データとの比較に基づき、前記位相データの信頼性を評価する評価手段と、前記評価手段の出力にかかわらず、前記再始動処理のための第1回目の燃料噴射を実行する噴射制御手段と、前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記内燃機関の点火制御を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、位相データの信頼性が低いと判断される場合、点火制御を禁止することによって、不適切な位相において点火がなされることで内燃機関に負担をかける事態を好適に回避することができる。しかも、位相データの信頼性の低下の有無にかかわらず、再始動処理のための第1回目の燃料噴射がなされるために、点火制御の直前に信頼性が回復した場合等にあっても、燃料噴射が間にあわない事態を回避することができる。このため、再始動処理を極力迅速に行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記再始動処理のための燃料噴射回数を制限する制限手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、点火制御が禁止されている状況下、燃料噴射が多数回行われることを回避することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記カム角検出手段の検出結果に基づき前記位相データを補正する補正手段を更に備え、前記評価手段は、前記補正手段による前記位相データの補正がなされることで、前記位相データの信頼性の評価を前記位相データの信頼性が高いとの評価に変更することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記カム角検出手段は、前記カム軸の回転角度を、前記クランク角度の1回転よりも短い間隔で検出可能なものであり、前記補正手段は、前記カム角検出手段の出力信号に含まれる位相情報によって前記位相データを補正するものであることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、クランク角検出手段が基準位置を検出可能なものであったとしても、一般に、基準位置の検出を利用する場合よりも早期に位相データを補正することが可能となる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記クランク角検出手段は、基準となるクランク角を検出する機能を有し、前記クランク角検出手段による前記基準となるクランク角の検出と、前記カム角検出手段の検出結果とに基づき、気筒判別を行う気筒判別手段を更に備え、前記補正手段は、前記気筒判別手段による気筒判別に基づき前記位相データを補正することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記クランク角検出手段は、MREセンサを備えて構成されることを特徴とする。
【0019】
MREセンサは、検出対象との配置によっては、たとえ検出対象が停止していようと、検出対象が回転している場合の信号を出力してしまうことがあることが発明者らによって見出されている。このため、MREセンサを備える本発明は、上記評価手段等の利用価値が特に大きい。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記カム角検出手段は、MREセンサを備えて構成され、前記クランク角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置する場合に、前記カム角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置することがないように設定されていることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、クランク角検出手段が備えるMREセンサの検出対象と、カム角検出手段が備える検出対象のMREセンサの検出対象とがともに静止している場合に、双方のMREセンサが共に検出対象の回転を誤検出することを好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるクランクカウンタのカウントアップ処理の手順を示す流れ図。
【図3】同実施形態にかかる再始動処理の手順を示す流れ図。
【図4】MREセンサの問題点を説明するためのタイムチャート。
【図5】上記実施形態にかかる再始動処理時における点火制御の制限処理の手順を示す流れ図。
【図6】同実施形態にかかるクランク角度照合データの算出処理の手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態にかかるクランクカウンタの信頼性評価の処理手順を示す流れ図。
【図8】同実施形態にかかる気筒判別処理の手順を示す流れ図。
【図9】同実施形態にかかるクランクカウンタの補正態様を示すタイムチャート。
【図10】第2の実施形態にかかるクランクカウンタの信頼性評価の処理手順を示す流れ図。
【図11】同実施形態にかかるクランクカウンタの補正処理の手順を示す流れ図。
【図12】同実施形態にかかるクランクカウンタの補正態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる火花点火式内燃機関の制御装置の第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0025】
図示される内燃機関10は、火花点火式内燃機関であり、特に吸気ポート噴射式のものを想定している。また、内燃機関10は、吸気、圧縮、燃焼、および排気の4つの行程(ストローク)を1サイクルとし、この1サイクルが2回転に対応するいわゆる4ストロークサイクルエンジンである。
【0026】
内燃機関10の吸気通路12には、燃料噴射弁14が設けられており、燃料噴射弁14からの燃料の噴射によって、吸気通路12の上流から吸入された空気に燃料が混合されることで混合気が生成される。また、吸気通路12は、吸気バルブ18の開弁によって燃焼室16と連通される。燃焼室16には点火プラグ20が突出形成されており、点火プラグ20は、その火花放電によって吸気通路12から燃焼室16に吸入された上記混合気を着火する機能を有する。火花放電によって混合気が着火されることで生じる燃焼エネルギは、ピストン22を介して運動エネルギに変換される。一方、燃焼に供された混合気は、排気バルブ24の開弁に伴って排気通路26から排出される。
【0027】
上記ピストン22を介して取り出される運動エネルギは、クランク軸30の回転エネルギとして、変速装置32を介して図示しない駆動輪へと出力される。なお、クランク軸30には、上記運動エネルギを利用して回転エネルギが付与されるのに加えて、スタータ31によって初期回転が付与される構成となっている。また、変速装置32は、ユーザからの変速比の指令手段としてのシフトレバー34を介して操作される。
【0028】
上記吸気バルブ18および排気バルブ24は、クランク軸30と機械的に連結されクランク軸30の回転力が付与されるカム軸38,40の回転によって開閉される。
【0029】
上記クランク軸30付近には、その回転角度を検出するためのクランク角センサ36が設けられており、また、カム軸38,40付近には、その回転角度を検出するためのカム角センサ42a,42bが設けられている。ここで、クランク角センサ36や、カム角センサ42a,42bは、いずれもMREセンサである。そして、クランク角センサ36は、クランク軸30と一体的に回転するロータに等間隔に形成された突起部の有無に応じた信号を出力する。一方、カム角センサ42a,42bはそれぞれ、カム軸38,40と一体的に回転するロータに等間隔に形成された突起部の有無に応じた信号を出力する。なお、クランク角センサ36は、正回転および逆回転の識別機能を有しており、正回転と逆回転とで互いに出力電圧幅が相違するものである。
【0030】
ここで、クランク軸30と一体的に回転するロータに形成される上記突起部は、「6°CA」間隔で設けられており、且つ、一箇所突起の間隔が拡大された欠歯部を有している。これは、クランク軸30の回転角度の基準位置(基準となるクランク角度)を定めるものであり、この欠歯部においてクランク角センサ36の出力信号が基準信号を出力することとなる。
【0031】
一方、カム軸38と一体的に回転するロータに形成される上記突起部と、カム軸40と一体的に回転するロータに形成される上記突起部とは、互いに相違するクランク角度に対応するものである。そして、これにより一対のカム角センサ42a,42bの出力によって、クランク角度の1回転よりも短い間隔の位相情報を有したカム角度を検出可能となっている。これは、詳しくは、図の右側部分に示されている。ここで、クランク角センサ36の欄は、基準位置からのロータ突起部の単位数(1単位=5個)を示している。また、カム角センサ42a,42bの欄は、これらの出力を示している。すなわち例えば、カム角センサ42aの出力が論理「H」であって且つカム角センサ42bの出力が立ち上がりエッジとなる際のクランク角度が基準位置から「1単位=5個目」の突起部に対応する。また例えば、カム角センサ42aの出力が立ち上がりエッジとなって且つカム角センサ42bの出力が論理「L」となる際のクランク角度が基準位置から「21単位=105個目」の突起部に対応する。このように、カム角センサ42a,42bの出力は、いずれか一方のエッジが検出されるタイミングで、4ストローク(720°CA)を1周期とする正確な位相情報(720°CA内の回転角度情報)を与えるものである。
【0032】
電子制御装置(ECU50)は、内燃機関10を制御対象とし、その制御量(トルク、回転速度、排気特性等)を制御する制御装置である。この制御は、クランク角センサ36、カム角センサ42a,42bに加えて、ユーザによるブレーキ操作を検出するブレーキセンサ52やアクセル操作を検出するアクセルセンサ54等の出力信号を取り込むことで行なわれる。上記制御量を制御すべく、ECU50では、クランク角センサ36の出力信号に基づき、上記位相情報を有するデータ(位相データ)としてのクランクカウンタCNを算出する処理を行う。
【0033】
図2に、クランクカウンタCNのカウントアップ処理の手順を示す。この処理は、ECU50によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0034】
この一連の処理では、まずステップS10において、クランク角センサ36の出力を取得する。詳しくは、ECU50内には、クランク角センサ36の出力の高周波成分を除去するためのローパスフィルタ回路が設けられており、クランク角センサ36の出力がローパスフィルタ回路によって処理されたものを取得する。ここで、ローパスフィルタ回路は、高周波ノイズを除去するためのものである。ここでは、内燃機関10の回転速度として想定外の高回転速度に対応した高周波ノイズを除去する処理を行う。続くステップS12では、ローパスフィルタ処理後のクランク角センサ36の出力のエッジが検出されたか否かを判断する。そして、エッジが検出される場合、ステップS14において、その出力電圧から正回転であるか否かを判断する。そして正回転である場合、クランクカウンタCNを加算し(ステップS16)、逆回転である場合、クランクカウンタCNを減算する(ステップS18)。
【0035】
上記ステップS16、S18の処理が完了する場合、ステップS20において、クランクカウンタCNを「720°CA」を一周期とする周期信号とすべく、「720°CA」が最大となるように規格化する処理を行う。これは、「720°CA」単位でクランクカウンタCNを初期化することで行なうことができる。これにより、クランクカウンタCNが「720°CA」を1周期とするものとなり、上記位相情報を適切に表現するものとなる。このため、クランクカウンタCNを利用することで、燃料噴射制御や点火制御を行なうことが可能となる。なお、クランクカウンタCNは、内燃機関10の始動に際して1度、カム角センサ42a,42bの出力との協働で、基準信号が今回出力されたタイミングが4ストローク中において基準信号が出力される2つのタイミングのうちのいずれであるかを特定する処理(気筒判別処理)がなされる際に、リセットされる。これにより、クランクカウンタCNは、位相情報を表現する位相データとなる。なお、気筒判別処理の後にも、クランク角センサ36によって上記基準信号が検出される場合、クランクカウンタCNの値をこれに基づき適宜補正する処理がなされるが、この際には、カム角センサ42a,42bの出力は利用されない。
【0036】
上記ECU50は、更に、所定の停止条件が成立することで内燃機関10を自動停止させ、所定の再始動条件が成立することで内燃機関10を再始動させるいわゆるアイドルストップ制御を行なう機能を有する。ここで、所定の停止条件や所定の再始動条件の成立の有無は、シフトレバー34の操作状態や、ブレーキセンサ52、アクセルセンサ54等に基づき判断されるものである。図3に、自動停止からの再始動に関する処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0037】
この一連の処理では、まずステップS30において、内燃機関10が自動停止しているか否かを判断する。そして自動停止していると判断される場合、ステップS32において、再始動条件が成立したか否かを判断する。ここで、再始動条件としては、例えばユーザによるブレーキの解放側への操作等が考えられる。そして、再始動要求があると判断される場合、ステップS34において、機関回転速度NEが所定速度α以下であるか否かを判断する。この処理は、スタータ31によってクランク軸30に初期回転を付与するか否かを判断するためのものである。そして、ステップS34において肯定判断される場合、ステップS36においてスタータ31によってクランク軸30に初期回転を付与する。そして、ステップS36の処理が完了する場合や、ステップS34において否定判断される場合、ステップS38において、クランクカウンタCNに基づく燃料噴射制御を開始する。
【0038】
ここで、クランクカウンタCNは、内燃機関10の自動停止処理がなされても更新可能なものとなっている。これは、クランク角センサ36がMREセンサであり、クランク軸30が停止していてもその回転角度を検出可能であることによる。このため、内燃機関10の再始動処理時であっても、気筒判別処理の完了を待つことなくクランクカウンタCNから位相情報を抽出することで燃料噴射制御や点火制御を行なうことができるとも考えられる。しかし、クランクカウンタCNの有する位相情報は、クランク軸30が停止する等、極低速回転となることで信頼性が低下するおそれがある。その要因は、クランク軸30が停止していても、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する場合、クランク角センサ36がMREセンサの性質によって、回転時と同様の信号を出力するおそれがあることである。
【0039】
図4に、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する場合におけるクランク角センサ36の出力の計測データを示す。図示されるように、クランク角センサ36は、回転時と同様の信号を出力するために、クランクカウンタCNが更新され続ける。
【0040】
こうした現象による弊害を極力回避すべく、本実施形態では、先の図1に示すように、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する事態と、カム角センサ42a,42bのうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する事態とが同時に生じることが無いように、これら3つのロータの突起部の配置を設定している。しかしこの場合であっても、図4に示す現象自体を回避することはできない。そして、クランクカウンタCNから抽出される位相情報が誤った情報である場合、これに基づき燃料噴射制御や点火制御を行なうことで内燃機関10を劣化させる懸念がある。
【0041】
こうした事態を回避すべく、再始動に伴って気筒判別処理が完了するのを待って燃料噴射制御や点火制御を許可することも考えられる。しかしこの場合には、再始動に要する時間が再始動直前の停止クランク角度に依存して大きくばらつき、結果としてドライバによるブレーキ解放等の操作から車両が実際に動き出すまでの応答時間に大きなばらつきが生じる。
【0042】
そこで本実施形態では、再始動処理に際し、図5に示す態様にて燃料噴射制御や点火制御を行なうようにする。この処理は、ECU50によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0043】
この一連の処理では、まずステップS100においてスタータ31を用いた再始動要求があるか否かを判断する。この処理は、先の図3のステップS36の処理時であるか否かを判断するものである。そして、ステップS100において肯定判断される場合、ステップS200において、カム角センサ42a,42bの出力信号によって位相情報を有するデータ(クランク角度照合データCD)を算出する。この処理は、図6に示す処理となる。
【0044】
すなわち、先の図1の右上に示した表の関係に基づき、カム角センサ42bの出力が立ち上がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS202:Yes)、カム角センサ42aの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「1」に設定し(ステップS206)、カム角センサ42aの出力が論理「L」である場合にはクランク角度照合データCDを「9」に設定する(ステップS208)。また、カム角センサ42bの出力が立ち下がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS210:Yes)、カム角センサ42aの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「17」に設定する(ステップS214)。また、カム角センサ42aの出力が立ち上がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS216:Yes)、カム角センサ42bの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「13」に設定し(ステップS220)、カム角センサ42bの出力が論理「L」である場合にはクランク角度照合データCDを「21」に設定する(ステップS222)。さらに、カム角センサ42aの出力が立ち下がりエッジとなるタイミングにおいて(ステップS224:Yes)、カム角センサ42bの出力が論理「H」である場合にはクランク角度照合データCDを「5」に設定する(ステップS228)。
【0045】
この図6の処理が終了すると、先の図5のステップS300に移行する。ステップS300においては、クランクカウンタCNの信頼性を評価する。この処理は、図7に示す処理となる。
【0046】
この一連の処理では、まずステップS300において、カム角センサ42a,42bのエッジが生じるタイミングであるか否かを判断する。この処理は、上記クランク角度照合データCDの示す位相情報がカム軸38,40と一体的に回転するロータの突起間隔の精度とは関係なく正確なクランク角度を示すタイミングを特定するためのものである。そしてステップS300において肯定判断される場合、ステップS302において、クランクカウンタCNとクランク角度照合データCDとの乖離度合いが所定以下(両者の差の絶対値が所定値β以下)であるかを判断する。この処理は、クランクカウンタCNの信頼性を評価するためのものである。ここで、信頼性を評価するための所定値βは、ゼロでなくてもよい。ただし、クランクカウンタCNの最小単位以下とすることが望ましい。
【0047】
そしてステップS302において肯定判断される場合、ステップS304においてクランクカウンタCNの信頼性が高いと判断する。一方、ステップS302において否定判断される場合、ステップS306においてクランクカウンタCNの信頼性が低いと判断する。
【0048】
この図7に示す処理が終了すると、先の図5のステップS400に移行する。ステップS400においては、クランクカウンタCNの信頼性が高いと判断されたか否かを判断する。そして、信頼性が高いと判断されている場合、ステップS500において、燃料噴射制御と点火制御とをともに許可する。これに対し、ステップS400において否定判断される場合、ステップS600において、点火制御を禁止する。この処理は、不適切な点火時期に点火がなされることで内燃機関10が逆回転する等、内燃機関10の劣化の要因となる事態が生じることを回避するための措置である。続くステップS700においてはこの再始動要求に伴う噴射回数が所定回数Nth以下であるか否かを判断する。ここで、所定回数Nthは、「1」以上に設定されている。そして、ステップS700において肯定判断される場合、ステップS800において噴射制御を許可する。これに対し、ステップS900においては、噴射制御を禁止する。
【0049】
このように、点火制御が禁止される場合には、クランクカウンタCNの信頼性が高まるのを待って点火制御が開始されることとなる。すなわち、上記気筒判別処理によってクランクカウンタCNがリセットされるのを待って点火制御が開始されることとなる。図8に、気筒判別処理の処理手順を示す。この処理は、ECU50によって、内燃機関10の始動に際して実行される。
【0050】
この一連の処理では、ステップS40において、今回の機関始動に際し、未だ気筒判別処理が完了していないか否かを判断する。そして、未だ気筒判別処理が完了していないと判断される場合、ステップS42において、クランク角センサ36の出力を取得する。そして、クランク角センサ36から基準信号が出力される場合(ステップS44)、カム角センサ42a,42bの出力を加味して気筒判別処理を行う。これにより、クランクカウンタCNは、カム角センサ42a,42bの出力と基準信号とに基づき特定される位相情報を表現するように更新される。ステップS46の処理が完了する場合、ステップS48において、クランクカウンタCNの信頼性について、信頼性が高い旨の評価に更新する。
【0051】
図9に、本実施形態にかかる再始動処理のうち、特に再始動条件成立時にクランクカウンタCNが正しい位相情報を有しない場合を示す。詳しくは、図9(a)に、クランク角センサ36の出力の推移を示し、図9(b)に、クランクカウンタCNの推移を示し、図9(c)に、クランクカウンタCNの信頼性の評価結果を示し、図9(d)に点火制御の可否を示す。
【0052】
図示されるように、自動停止処理によって内燃機関10が停止した後、クランク角センサ36の出力にノイズが混入すると、クランクカウンタCNの値が変化し、正しい位相情報を表現する値からずれる。その後再始動条件が成立すると、クランクカウンタCNの値とクランク角度照合データCDの値とが相違することで、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断され、点火制御が禁止される。その後、気筒判別処理がなされることによりクランクカウンタCNがリセットされることで、クランクカウンタCNの信頼性が高まり、点火制御が許可される。なお、再始動条件成立時からクランクカウンタCNとクランク角度照合データCDとの比較処理時までの期間については、クランクカウンタCNの信頼性が低いものとして扱うことが望ましい。
【0053】
こうした一連の処理によれば、再始動処理を極力迅速に完了することができる。すなわち、クランクカウンタCNの信頼性が高ければ、燃料噴射制御および点火制御がいずれも許可されるため、再始動が最も迅速に行なわれる。これに対し、クランクカウンタCNの信頼性が低い場合であっても、噴射制御については所定回数まで許可することで、再始動を極力迅速に行なうことが可能となる。すなわち、燃料噴射制御をも禁止した場合には、先の図8に示した処理によってクランクカウンタCNの信頼性が高くなった時点において、その時点以降の最も早期に点火時期を迎える気筒における吸入行程を過ぎていると、その気筒における点火制御を行なうことができても、燃焼室16への混合気の供給が間に合わないおそれがある。これに対し、本実施形態では、燃料噴射制御を所定回数許可することで、クランクカウンタCNの信頼性が高まるタイミングに対して極力早期のタイミングで燃焼制御を開始することができる。
【0054】
なお、上記所定回数Nthは、再始動条件の成立時におけるクランクカウンタCNの値が正確でない場合に、その信頼性の回復に要する期間として許容される期間内において生じる噴射時期の回数に基づき設定される。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0056】
(1)内燃機関10の再始動処理の開始に際し、クランクカウンタCNとクランク角度照合データCDとの比較に基づき、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断される場合に点火制御を禁止し、燃料噴射制御については、信頼性の評価にかかわらず所定回数Nthの燃料噴射を許可した。これにより、不適切な位相において点火がなされることで内燃機関10に負担をかける事態を好適に回避することができる。しかも、再始動処理のための燃料噴射を所定回数Nth許可することで、点火制御の直前に信頼性が回復した場合等にあっても、燃料噴射が間にあわない事態を回避することができる。このため、再始動処理を極力迅速に行うことができる。
【0057】
(2)クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断される場合、気筒判別処理を利用してクランクカウンタCNを更新するとともに、信頼性の評価を高い旨の評価に更新した。これにより、これ以降、点火制御を行なうことができる。
【0058】
(3)クランク角センサ36として、MREセンサを用いた。これにより、検出対象であるロータの突起部との配置によっては、たとえロータが停止していようと、回転している場合の信号を出力してしまうことがあるため、クランクカウンタCNの信頼性の評価を行う処理の利用価値が特に大きい。
【0059】
(4)クランク角センサ36の中央部にその検出対象であるロータの突起部のエッジが位置する場合に、カム角センサ42a,42bの中央部にその検出対象であるロータの突起部のエッジが位置することがないように設定した。これにより、クランク角センサ36とカム角センサ42a,42bとの双方が静止している場合に、双方のセンサがともに検出対象の回転を誤検出することを好適に回避することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0061】
本実施形態では、クランクカウンタCNの信頼性が低いと評価された場合、クランク角度照合データCDの値にクランクカウンタCNを補正する。
【0062】
図10に、本実施形態にかかるクランクカウンタCNの信頼性を評価する処理の手順を示す。なお、図10において、先の図7に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0063】
図示されるように、この一連の処理では、ステップS306においてクランクカウンタCNの信頼性が低いと判断される場合、ステップS308において、クランクカウンタCNを補正する要求が生じた旨のフラグ(補正要求フラグFc)をオンする。
【0064】
図11に、本実施形態にかかるクランクカウンタCNの補正処理の手順を示す。この処理は、ECU50によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0065】
この一連の処理では、まずステップS50において、補正要求フラグFcがオンであるか否かを判断する。そして、オンであると判断される場合、ステップS52において、カム角センサ42a,42bのいずれかのエッジが生じるタイミングであるか否かを判断する。この処理は、クランク角度照合データCDの更新タイミング(そのクランク角が正確な値となるタイミング)であるか否か判断するものである。そしてステップ52において肯定判断される場合、ステップS54においてクランクカウンタCNをクランク角度照合データに一致させるように補正し、クランクカウンタCNの信頼性が高い旨に評価を更新するとともに補正要求フラグFcをオフとする。
【0066】
図12に、本実施形態にかかる再始動処理のうち、特に再始動条件成立時にクランクカウンタCNが正しい位相情報を有しない場合を示す。なお、図12(a)〜図12(d)は、先の図9(a)〜図9(d)に対応している。
【0067】
図示されるように、自動停止処理によって内燃機関10が停止した後、クランク角センサ36の出力にノイズが混入すると、クランクカウンタCNの値が変化し、正しい位相情報を表現する値からずれる。その後再始動条件が成立すると、クランクカウンタCNの値とクランク角度照合データCDの値とが相違することで、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断され、点火制御が禁止される。そして、その直後におけるクランク角度照合データCDの変化タイミングにおいて、クランクカウンタCNが補正されその信頼性が高まることで、点火制御が許可される。
【0068】
なお、本実施形態においても気筒判別処理はなされるため、ステップS52、S54の処理に先立ち、気筒判別処理によってクランクカウンタCNが更新されることもありうる。このように、本実施形態では、クランクカウンタCNが、カム角センサ42a,42bの出力を加味して更新(補正)されるケースが2通りある。ただし、クランクカウンタCNの更新に際しカム角センサ42a,42bの出力が加味されるのは、始動時に限られ、1の始動に際して1度または2度に限られる。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)、(3)、(4)の各効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0070】
(5)クランクカウンタCNの信頼性が低い場合、クランク角度の1回転よりも短い間隔で位相情報を更新するクランク角度照合データCDによってクランクカウンタCNを補正した。これにより、一般に、基準位置の検出を利用する場合よりも早期に位相データを補正することが可能となる。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0072】
<カム角検出手段について>
カム角検出手段としては、カム軸の回転角度に対する出力信号が相違する一対のセンサを備えるものに限らない。例えば3つ以上のセンサを備えるものであってもよい。また例えば、単一のカム軸に設けられた単一のロータと、このロータ付近に設けられた単一のセンサとを備えるものであってもよい。こうした場合であっても、例えば突起部の高さを2段階とするなどすることで、カム軸の回転角度を、クランク軸の1回転よりも短い間隔で検出可能な手段を構成することができる。
【0073】
もっとも、カム角検出手段としては、カム軸の回転角度を、クランク軸の1回転よりも短い間隔で検出可能な手段に限らない。例えば、カム軸の回転角度を、クランク軸の1回転の間隔で検出可能なものであっても、クランクカウンタ(位相データ)の信頼性を評価するうえでカム角検出手段の出力を用いることは有効である。
【0074】
なお、カム角検出手段としては、MREセンサを備えるものに限らない。
【0075】
<クランク角検出手段について>
クランク角検出手段としては、「6°CA」毎に回転角度を検出可能とするものに限らない。また、正転および逆転を、センサの出力電圧の絶対値に基づき検出する手段に限らず、例えばセンサの出力周波数によって検出する手段であってもよい。
【0076】
また、MREセンサを備えるものにも限らず、要は、検出対象の回転速度がゼロであってもその回転角度を検出可能なセンサであればよい。
【0077】
さらに、基準位置を検出可能なものにも限らない。
【0078】
<位相データ(クランクカウンタ)について>
位相データとしては、クランク角検出手段によって検出可能な最小回転角度間隔よりも大きい角度間隔を1単位とするものに限らない。例えば、検出可能な最小回転角度間隔を1単位とするカウンタ値であってもよい。さらに例えば、検出可能な最小回転角度間隔よりも小さい角度間隔を1単位とするものであってもよい。この位相データは、クランク角センサの出力から検出されるクランク角度と、クランク軸の回転速度とに基づく補間処理によって算出することができる。
【0079】
<位相データの補正手段について>
位相データの補正手段としては、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断されたタイミング直後におけるカム角センサの出力のエッジタイミングや、気筒判別処理時において補正するものに限らない。例えばクランクカウンタCNの信頼性が低いと判断されたタイミングからカム角センサの出力が2度目にエッジとなるタイミングであってもよい。
【0080】
<位相データの信頼性の評価手段>
上記各実施形態では、位相データを補正するタイミングで位相データの信頼性が高いとの評価に改めたがこれに限らない。例えば上記第2の実施形態において、位相データの補正処理の後、カム角センサの出力のエッジが検出される最初のタイミングにおいて信頼性が高いとの評価に更新してもよい。
【0081】
また、上記第2の実施形態において、クランクカウンタCNの信頼性が低いと判断されたタイミング直後におけるカム角センサの出力のエッジタイミングにおいて、クランクカウンタCNの値とクランク角度照合データCDとが一致する場合には、クランクカウンタCNの信頼性が高い旨評価を改めるようにしてもよい。
【0082】
さらに、位相データの信頼性の評価をスタータ31を使った再始動要求時に限って行なうものに限らない。ただし、内燃機関が一旦停止したと判断される場合に限って行なう等、内燃機関が一旦停止したと判断される場合に評価を行なうことが望ましい。ここで、内燃機関が停止したにもかかわらずスタータ31を用いない再始動処理としては、例えば下り坂において車両のブレーキを解放することで内燃機関に初期回転を付与する場合等が考えられる。特にこうした場合においては、クランク角センサ36のうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置して且つカム角センサ42a,42bのうちロータに対向する面の中央部にロータに形成された突起部のエッジが位置する場合、クランク軸30が実際には停止しているにもかかわらず回転しているものとして始動処理がなされることが懸念される。そして、この場合には、クランクカウンタCNの信頼性の評価を適切に行なうことができなくなるおそれがあるため、上記各実施形態において例示した態様にて3つのロータを配置することが特に有効である。
【0083】
<その他>
・クランク角センサ36の検出対象とカム角センサ42a,42bの検出対象との幾何学的な配置設定としては、上記第1の実施形態で例示したものに限らない。こうした設定としなくても、上記第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果を得ることはできる。
【0084】
・内燃機関としては、吸気ポート式のものに限らず、例えば筒内噴射式のものであってもよい。ただし、この場合、先の図5におけるステップS700の処理で用いる所定回数Nthを、上記実施形態よりも小さい値に設定することが望ましい。
【0085】
・自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する制御装置としては、車載主機として内燃機関のみを備えるものに限らない。例えば車載主機として電動機を併用するいわゆるハイブリッド車であっても、内燃機関の再始動処理に先立ちその回転角度がゼロとなりうるものにあっては、本発明の適用が有効である。
【符号の説明】
【0086】
10…内燃機関、36…クランク角センサ、42a,42b…カム角センサ、50…ECU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する火花点火式内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関のクランク角度を検出するクランク角検出手段の検出結果を入力とし、前記内燃機関の4ストロークを1周期として且つ燃料噴射制御および点火制御の双方において参照されるデータである位相データを、前記自動停止処理によって前記内燃機関の燃焼制御が停止されている期間を含めて継続的に算出する算出手段と、
前記内燃機関のカム軸の回転角度を検出するカム角検出手段の検出結果と前記位相データとの比較に基づき、前記位相データの信頼性を評価する評価手段と、
前記評価手段の出力にかかわらず、前記再始動処理のための第1回目の燃料噴射を実行する噴射制御手段と、
前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記内燃機関の点火制御を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記再始動処理のための燃料噴射回数を制限する制限手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記カム角検出手段の検出結果に基づき前記位相データを補正する補正手段を更に備え、
前記評価手段は、前記補正手段による前記位相データの補正がなされることで、前記位相データの信頼性の評価を前記位相データの信頼性が高いとの評価に変更することを特徴とする請求項1または2記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記カム角検出手段は、前記カム軸の回転角度を、前記クランク角度の1回転よりも短い間隔で検出可能なものであり、
前記補正手段は、前記カム角検出手段の出力信号に含まれる位相情報によって前記位相データを補正するものであることを特徴とする請求項3記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記クランク角検出手段は、基準となるクランク角を検出する機能を有し、
前記クランク角検出手段による前記基準となるクランク角の検出と、前記カム角検出手段の検出結果とに基づき、気筒判別を行う気筒判別手段を更に備え、
前記補正手段は、前記気筒判別手段による気筒判別に基づき前記位相データを補正することを特徴とする請求項3記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記クランク角検出手段は、MREセンサを備えて構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記カム角検出手段は、MREセンサを備えて構成され、
前記クランク角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置する場合に、前記カム角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置することがないように設定されていることを特徴とする請求項6記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項1】
4ストロークサイクルが採用された火花点火式内燃機関の自動停止処理および再始動処理を行う機能を有する火花点火式内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関のクランク角度を検出するクランク角検出手段の検出結果を入力とし、前記内燃機関の4ストロークを1周期として且つ燃料噴射制御および点火制御の双方において参照されるデータである位相データを、前記自動停止処理によって前記内燃機関の燃焼制御が停止されている期間を含めて継続的に算出する算出手段と、
前記内燃機関のカム軸の回転角度を検出するカム角検出手段の検出結果と前記位相データとの比較に基づき、前記位相データの信頼性を評価する評価手段と、
前記評価手段の出力にかかわらず、前記再始動処理のための第1回目の燃料噴射を実行する噴射制御手段と、
前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記内燃機関の点火制御を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記再始動処理のための燃料噴射回数を制限する制限手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記評価手段によって前記位相データの信頼性が低いと判断される場合、前記カム角検出手段の検出結果に基づき前記位相データを補正する補正手段を更に備え、
前記評価手段は、前記補正手段による前記位相データの補正がなされることで、前記位相データの信頼性の評価を前記位相データの信頼性が高いとの評価に変更することを特徴とする請求項1または2記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記カム角検出手段は、前記カム軸の回転角度を、前記クランク角度の1回転よりも短い間隔で検出可能なものであり、
前記補正手段は、前記カム角検出手段の出力信号に含まれる位相情報によって前記位相データを補正するものであることを特徴とする請求項3記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記クランク角検出手段は、基準となるクランク角を検出する機能を有し、
前記クランク角検出手段による前記基準となるクランク角の検出と、前記カム角検出手段の検出結果とに基づき、気筒判別を行う気筒判別手段を更に備え、
前記補正手段は、前記気筒判別手段による気筒判別に基づき前記位相データを補正することを特徴とする請求項3記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記クランク角検出手段は、MREセンサを備えて構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記カム角検出手段は、MREセンサを備えて構成され、
前記クランク角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置する場合に、前記カム角検出手段の備えるMREセンサの中央部にその検出対象のエッジが位置することがないように設定されていることを特徴とする請求項6記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−99357(P2011−99357A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253430(P2009−253430)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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