説明

火花点火式気体燃料エンジンの制御装置

【課題】例えば水素のような気体燃料が供給される火花着火式エンジンにおいて、エンジンの自動停止時に、燃焼ガス中の水蒸気が筒内で液化することによる点火プラグの被水を防止あるいは抑制する。
【解決手段】エンジン冷機時におけるエンジン6の自動停止時には、燃焼可能範囲で空燃比を徐々にリーン化していく空燃比リーン化制御を行った後に、燃料カットする。具体的には、エンジン運転中は、例えば空気過剰率λ=2.2とされ、冷機時におけるエンジン自動停止時には、λを2.2から徐々にリーン化して、例えばλ=2.6になった時点で燃料カットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火式気体燃料エンジンの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンとして、水素やLPG等の気体燃料が供給されて、点火プラグによって着火される火花点火式気体燃料エンジンが実用化されている。また、エンジンと走行用モータとを備えたハイブリッド車が増加する傾向にある。特許文献1には、ハイブリッド車用のエンジンとして。火花点火式気体燃料エンジンを用いるものが開示されている。特許文献2には、ハイブリッド車において、エンジン回転を高効率の範囲内でもって稼働させることが開示されている。
【0003】
一方、最近のエンジンでは、エンジンの停止と起動とが自動的に行われるものが増加している。例えば、エンジンがアイドリングストップを行う車両やハイブリッド車に搭載されたときに、エンジンの停止と起動とが自動的に行われることになる。このような自動的なエンジン停止と起動とを行うものにあっては、自動起動がかなり頻繁に行われることになるので、エンジンのクランキングのために必要なバッテリの消費電力が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−250024号公報
【特許文献2】特開2007−195334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、気体燃料が供給されて燃焼が行われる火花点火式気体燃料エンジンにおいて、エンジンの自動的な停止と起動とを行うことが考えられる。この場合、エンジンが十分に暖機されていない冷機状態では、エンジンの自動停止のために燃料カットした直後に、燃焼ガス中の水蒸気が筒内で液化して、この液化した水分によって点火プラグが少なからず被水してしまう、という事態が発生し易いということが判明した。点火プラグが被水すると、着火性の悪化となって、エンジンの自動起動のために長時間要したり(クランキング時間が長くなる)、極端な場合には始動が困難になる場合すら生じる。そして、エンジン自動起動のためにクランキング時間が長くなると、バッテリの消費電力が多大となり、バッテリの蓄電電力を利用して走行用モータを駆動する場合は、バッテリ電力を利用した走行可能時間が短くなってしまうことになる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、燃焼ガス中の水分によって点火プラグが被水してしまう事態を防止あるいは抑制できるようにした火花点火式気体燃料エンジンの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
気体燃料が供給されると共に自動的にエンジン停止とエンジン起動とが行われる火花点火式気体燃料エンジンの制御装置であって、
エンジン温度があらかじめ設定された所定温度以下の冷機時には、エンジンの自動停止時における気体燃料供給停止までの空燃比を気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化していく空燃比リーン化制御が実行される、
ようにしてある。上記解決手法によれば、筒内で発生した水蒸気が液化しやすい状況となるエンジン冷機時には、エンジンの自動停止のために燃料カットされる前に、燃焼熱を確保しつつ水蒸気の発生量が低減される空燃比のリーン化制御が行われるので、点火プラグの被水を防止あるいは抑制することができる。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2および請求項3に記載のとおりである。すなわち、
エンジン温度が前記所定温度を超える暖機時には、前記空燃比リーン化制御を中止するか、または気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化しつつ冷機時に比して空燃比リーン化を行う移行時間を短くする制御が実行される、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、暖機時においては、空燃比のリーン化制御を中止するか、あるいは空燃比のリーン化を実行するにしてもその移行時間を冷機時に比して短くすることにより、極力すみやかにエンジンを自動停止させる上で好ましいものとなる。
【0009】
エンジン温度が前記所定温度を超える暖機時には、前記空燃比リーン化制御が中止され、
前記冷機時のうち相対的にエンジン温度が高いときはエンジン温度が低いときに比して、前記空燃比リーン化制御を行う移行時間が短くされる、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、エンジン温度に応じて空燃比のリーン化制御を実行する移行時間を変更して、点火プラグの被水防止とエンジンのすみやかな自動停止とを共に高い次元で満足させる上で好ましいものとなる。
【0010】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項4に記載のように、
気体燃料が供給されると共に自動的にエンジン停止とエンジン起動とが行われる火花点火式気体燃料エンジンの制御装置であって、
エンジンの自動停止時における気体燃料供給停止までの空燃比を、エンジン起動からエンジン停止までのエンジン稼働時間があらかじめ設定された所定時間以下の短いときには、気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化していく空燃比リーン化制御が実行され、前記稼働時間が前記所定時間を超える長いときには、上記空燃比リーン化制御を中止するか、または気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化しつつエンジン稼働時間が前記所定時間以下の場合に比して空燃比リーン化を行う移行時間を短くする制御が実行される、
ようにしてある。上記解決手法によれば、筒内で発生した水蒸気が液化しやすい状況となるエンジン稼働時間が短いときには、エンジンの自動停止のために燃料カットされる前に、燃焼熱を確保しつつ水蒸気の発生量が低減される空燃比リーン化制御が行われるので、点火プラグの被水を防止あるいは抑制することができる。
【0011】
前記第1の解決手法および第2の解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項5以下に記載のとおりである。すなわち、
エンジンの自動停止前の通常運転時の空燃比が、空気過剰率λで示したときに2.0〜2.5の範囲となるように設定され、
エンジンの自動停止時における前記空燃比リーン化制御の際には、空燃比が前記通常運転時の空燃比から徐々にリーン化される、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、通常運転時の空気過剰率λが2.0〜2.5の範囲となるように設定することにより、通常運転時でのRaw・NOxを低減する上で好ましいものとなる。また、空燃比のリーン化制御は、通常運転時の空燃比から徐々にリーン化を行うので、空燃比の急激な変化に起因するトルクショック防止等の上でも好ましいものとなる。
【0012】
火花点火式気体燃料エンジンが車両に搭載され、
前記車両は、前記火花点火式気体燃料エンジンによって駆動されて発電を行うジェネレータと、該ジェネレータでの発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリと該ジェネレータとの少なくとも一方から電力を受けて駆動される走行用モータと、を備えたハイブリッド車とされている、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、頻繁にエンジンの自動停止と自動起動とが行われるハイブリッド車用の火花点火式気体燃料エンジンの制御装置として好ましいものとなる。特に、点火プラグの被水を防止あるいは抑制することにより、エンジンの自動起動を確実かつすみやかに行えるようになって、バッテリの負担を低減する上でも好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、点火プラグの被水を防止あるいは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明をハイブリッド車に適用した場合の一例を示す簡略平面図。
【図2】火花点火式気体燃料エンジンの一例を示す系統図。
【図3】バッテリ電力のみを利用した走行とエンジンにより発電を行いつつ走行するときの一例を示す図。
【図4】本発明の制御系統例をブロック図的に示す図。
【図5】エンジンの自動停止時の制御例を示すタイムチャート。
【図6】本発明の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、車両としての自動車Vは、そのボディ(車体)が符合1で示され、左右前輪が符合2で示され、左右後輪が符合3で示される。4は、走行用モータで、この走行用モータ4が、デファレンシャルギア5A、ドライブシャフト5Bを介して左右の前輪2に連結されている。すなわち、実施形態では、左右前輪2のみが駆動される前輪駆動車とされている。
【0016】
ボディ1の前部には、走行用モータ4の他に、エンジン6,ジェネレータ7、インバータ8が配設されている。また、ボディ1の前後方向中間部から後部に渡っての床面下には、バッテリ9,燃料タンク10が配設されている。エンジン6は、火花点火式気体燃料エンジンとされて、燃料タンク10内に貯溜された気体燃料としての水素が供給されるようになっている。
【0017】
ジェネレータ7は、エンジン6によって駆動されて発電を行うと共に、バッテリ9からの電力を受けてエンジン6を始動するための始動用モータとしても機能される。バッテリ9は、例えばリチウムイオン電池によって構成されて、高電圧(例えば300〜500V)かつ大容量となっている。バッテリ9の蓄電電力が走行用モータ4に供給されて走行され、最大蓄電量状態にあるバッテリ9のみの蓄電電力によって数十km(例えば30〜60km)走行可能とされている。さらに、ボディ1の後端部には、低電圧(例えば12V)のバッテリ11が搭載され、このバッテリ11によって、点火プラグ、燃料噴射弁、ヘッドライト、ワイパ、オーディオ等の各種車載電気機器類に給電されるようになっている。
【0018】
図2は、エンジン6とその吸・排気系の一例を示す。実施形態では、エンジン6は、バンケル式のロータリピストンエンジンとされて、直列に第1気筒RAと第2気筒RBとの2つの気筒を有する。各気筒RA、RBの吸気ポートに個々独立して連なる分岐吸気通路21A、21Bが1本の共通吸気通路22に連なっている。この共通吸気通路22には、スロットル弁23が配設されている。また、各分岐吸気通路21A、21Bには、ポート噴射用の第1燃料噴射弁24A、24Bが配設されている。燃料噴射弁としては、さらに、気筒(作動室)内に直接燃料噴射を行う第2燃料噴射弁25A、25Bが設けられている。
【0019】
各気筒RA、RBの排気ポートに個々独立して連なる分岐排気通路26A、26Bが、1本の共通排気通路27に連なっている。この共通排気通路27には、空燃比センサ28が配設されると共に、空燃比センサ28の下流側において、排気ガス浄化触媒(実施形態ではNOx触媒)29が配設されている。
【0020】
共通吸気通路22と共通排気通路27とが、EGR通路30によって接続され、このEGR通路30には、EGR弁31が接続されている。なお、EGR通路30は、スロットル弁23の下流側において共通吸気通路22に開口され、空燃比センサ28の上流側において共通排気通路27に開口されている。
【0021】
各気筒RA、RBは、2つの点火プラグ33A、33Bを有している。第1燃料噴射弁24A、24Bからの燃料噴射は、相対的に低回転・低負荷時に実行される。第2燃料噴射弁25A、25Bからの燃料噴射は、相対的に高回転または高負荷時において行われる。空気と燃料噴射弁から噴射される燃料としての水素との混合気が、点火プラグ33A、33Bによって着火される。混合気への着火によって燃焼が行われる。エンジン6を停止させる際、エンジン6が十分に暖機されていないと、燃焼ガス中の水蒸気が筒内で液化されて、この液化した水分によって点火プラグ33A、33Bが被水されて、次の始動時での着火性が悪化されることになる。本発明にあっては、このような点火プラグ33A、33Bの被水を防止あるいは抑制するために、後述のような制御を実行するようになっている。
【0022】
図3は、バッテリ9の蓄電量に応じて車両Vの走行状況が変化される様子を示す。すなわち、バッテリ9の蓄電量が大きいとき(例えば蓄電量が40%に低下するまで)は、エンジン6は停止(自動停止)されていて、バッテリ9からの電力供給のみによって走行用モータ4が駆動される(いわゆるプラグイン走行)。一方、バッテリ9の蓄電量が小さくなると(例えば蓄電量が40%未満となったとき)は、エンジン6が起動されて(自動起動)、ジェネレータ7での発電が行われ、このジェネレータ7の発電電力が走行用モータ4に供給されると共に、余剰電力がバッテリ9へ供給される。ジェネレータ7の発電電力によってバッテリ9の蓄電量が増大されたとき(例えば蓄電量が70%となったとき)は、エンジン4が自動停止される(プラグイン走行の再開)。このように、バッテリ9の蓄電量に応じて、エンジン6が自動的に停止と起動とを繰り返して、エンジン6が起動されているときには、ジェネレータ7によって発電しつつ、走行とバッテリ9への蓄電が行われる。なお、車両Vの減速時には、走行用モータ4による回生が行われて、回生による電力がバッテリ9に蓄電される。
【0023】
図4は、本発明の制御系統例をブロック図的に示すものである。図中Uは、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)である。このコントローラUは、走行用モータ4,エンジン6(特に燃料噴射弁)、ジェネレータ7、インバータ8を制御する。インバータ8を介して、バッテリ9と走行用モータ4との間での電力授受、ジェネレータ7とバッテリ9との間での電力授受、ジェネレータ7から走行用モータ4への電力供給、バッテリ9からバッテリ11への電力供給等が行われる。
【0024】
コントローラUは、燃料噴射量制御や点火時期制御等の通常のエンジン制御を行う他、エンジン6の自動的な停止と起動の制御と、点火プラグ33A、33Bの被水防止あるいは抑制のための制御をも行う。このコントローラUには、空燃比センサ28からの信号が入力されるが、空燃比センサ28はリニアセンサとされて、空燃比としての空気過剰率λを検出するためのものとなる。コントローラUには、この他、各種センサあるいはスイッチS1〜S5からの信号が入力される。センサS1は、車速を検出するものである。センサS2は、アクセル開度を検出するものである。センサS3は、エンジン冷却水温度を検出するものである。センサS4は、エンジン回転数を検出するものである。スイッチS5は、ブレーキペダルが踏み込み操作されたことを検出するものである。
【0025】
コントローラUによるエンジン6の自動停止と自動起動は、例えば次のような条件にしたがって行われる。まず、前述したように、バッテリ9の蓄電量に応じた自動停止と自動起動とが行われる。また、バッテリ9の蓄電量に応じてエンジンが自動起動されている条件下でも、アイドルストップによる自動停止と自動起動が行われる。すなわち、例えばアクセル開度が0、車速が0でしかもブレーキスイッチS5がONのとき(ブレーキペダルが踏み込み操作されているとき)に、エンジン6が自動停止される。そして、自動停止状態からブレーキスイッチS5がOFFになると、エンジン6が自動起動される。
【0026】
次に、図5を参照しつつ、点火プラグ33A、33Bの被水防止あるいは抑制の制御例について説明する。まず、t1時点になるまでは、エンジン6が運転されている状態であり、このときの空燃比は、空気過剰率λでもって例えば2.2とされる(スロットル開度は、ポンピングロス低減のために例えば80%というように大きな開度とされる)。なお、エンジン運転時の空気過剰率λは、Raw・NOx低減のために、2.2〜2.5の範囲に設定するのが好ましいものであり、実施形態では、出力確保をも加味して、空気過剰率λを2.2に設定してある。なお、エンジン回転数は、低速時には例えば200rpmの定回転、中速時には例えば3000rpmの定回転、高速時には例えば4000rpmの定回転となるように、エンジン6は定回転でもって運転するようにしてある。
【0027】
図5中、t1時点は、エンジン6の自動停止条件が満足されたときである。このt1時点において、エンジン6が十分に暖機されている暖機時であるとき(例えば冷却水温度が70度Cを超えていとき)は、ただちに燃料カットされて、エンジン6がすみやかに停止される。暖機時には、燃焼ガス中の水蒸気が筒内で液化する心配がないため、点火プラグ33A、33Bの被水の問題は生じないものである。このため、エンジン6をすみやかに停止させるようにしてある。
【0028】
t1時点で、エンジン6が冷機時であるとき(例えば冷却水温度が50度C以下のとき)は、t1時点から、燃焼可能範囲でもって空燃比を徐々にリーン化しつつ、空燃比が所定値(例えばλ=2.6)までリーンとなった時点で燃料カットされて、エンジン6が停止される。この冷機時におけるエンジン停止時点がt3時点であり、t1時点よりも大分遅れた時期となる。燃焼可能範囲で空燃比を徐々にリーン化することにより、燃焼熱を確保しつつ水蒸気の発生量そのものを抑制して、筒内で水蒸気が液化するのが防止あるいは抑制されて、点火プラグ33A、33Bが被水される事態が防止あるいは抑制される。
【0029】
冷機時のうち、相対的に温度が高い半暖機時(例えば冷却水温度が50度C〜70度Cのとき)は、エンジン停止までに燃焼可能範囲で空燃比を徐々にリーン化しつつ、リーン化の度合を冷機時よりも早めるようにしてある。すなわち、燃料カットとなる空気過剰率λ=2.6となる時点がt2時点となるが、このt2時点は、相対的に温度が低いときの燃料カット時期となるt3時点よりも早い時期となる。半暖機時は、点火プラグ33A、33Bの被水を防止あるいは抑制と、エンジン6のすみやかな停止とが共に高い次元で満足されることになる。なお、図5では、半暖機時としての徐々なるリーン化の度合を1種類の設定のみとしたが、冷却水温度に応じて、リーン化の度合を複数段階(あるいは連続可変式)に変化させるようにすることもできる(冷却水温度が高いほど、燃料カットとなる所定空燃比に達するまでのリーン化移行時間が短くされる)。
【0030】
図6は、図5に示すような制御状態を行うためのフローチャートを示してあるが、図6では、エンジン6の自動停止の際に、冷却水温度に加えてエンジン6の稼働時間に応じても、燃焼可能範囲での空燃比の徐々なるリーン化の制御を行うか否かを区別するようにしてある。また、図6中、Qはステップを示す。
【0031】
まず、Q1において、各種センサやスイッチ28,S1〜S5の信号が読み込まれる。この後、Q2において、エンジン6の自動停止条件が成立したか否かが判別される。このQ2の判別でNOのときは、Q1に戻る。
【0032】
Q2の判別でYESのときは、Q3において、エンジン6の稼働時間が、あらかじめ設定された所定時間(例えば5分)よりも小さいか否かが判別される。このQ3の判別でNOのとき、つまりエンジン6の稼働時間が長くてエンジン6が十分に暖機されていると判断されたときは、Q4に移行して、通常のエンジン停止が行われる(直ちに燃料カット)。
【0033】
前記Q3の判別でYESのときは、Q5において、冷却水温度Twが、第1所定温度Tw1(例えば70度C)未満であるか否かが判別される。このQ5の判別でNOのときは、エンジン6が暖機されているときであり、Q4に移行されて、直ちに燃料カットされる。
【0034】
前記Q5の判別でYESのときは、Q6において、冷却水温度Twが、第2所定温度Tw2(例えば50度C)以下であるか否かが判別される。このQ6の判別でYESのときは、Q7において、冷機時のうち相対的に温度の低いときの空燃比リーン化制御が行われる(図5の一点鎖線で示すt3時点での燃料カット)。前記Q6の判別でNOのときは、Q8において、冷機時のうち相対的に温度の高い(半暖機時の)空燃比リーン化制御が行われる(図5の破線で示すt2時点での燃料カット)。
【0035】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。走行用モータ4を有しない通常の車両であってもよい。走行用モータ4を有するハイブリッド車の場合に、エンジン6によって車輪駆動を行うものであってもよく、この場合、エンジン6のみによる車輪駆動と、走行用モータ4のみによる車輪駆動と、エンジン6と走行用モータ4の両方による車輪駆動との態様を適宜切換えるものであってもよい。エンジン6は、往復動型エンジンであってもよい。自動停止の際には、暖機時を含めて全て、燃焼可能範囲での空燃比の徐々なるリーン化を行った後に燃料カットを行うようにしてもよい(この場合は、燃焼可能範囲での空燃比のリーン化の制御を全て同じように行ってもよいが、例えば冷却水温度やエンジン稼働時間に応じて、空燃比のリーン化の移行時間を段階的あるいは連続可変式に変化させるのが好ましい)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば水素を燃料とするエンジンに適用して好適である。
【符号の説明】
【0037】
V:車両
4:走行用モータ
6:エンジン
7:ジェネレータ
9:バッテリ
10:燃料タンク
24A、24B:燃料噴射弁(ポイント噴射用)
25A、25B:燃料噴射弁(直噴用)
28:空燃比センサ
33A、33B:点火プラグ
U:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料が供給されると共に自動的にエンジン停止とエンジン起動とが行われる火花点火式気体燃料エンジンの制御装置であって、
エンジン温度があらかじめ設定された所定温度以下の冷機時には、エンジンの自動停止時における気体燃料供給停止までの空燃比を気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化していく空燃比リーン化制御が実行される、
ことを特徴とする火花点火式気体燃料エンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
エンジン温度が前記所定温度を超える暖機時には、前記空燃比リーン化制御を中止するか、または気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化しつつ冷機時に比して空燃比リーン化を行う移行時間を短くする制御が実行される、
ことを特徴とする火花点火式気体燃料エンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
エンジン温度が前記所定温度を超える暖機時には、前記空燃比リーン化制御が中止され、
前記冷機時のうち相対的にエンジン温度が高いときはエンジン温度が低いときに比して、前記空燃比リーン化制御を行う移行時間が短くされる、
ことを特徴とする火花点火式気体燃料エンジンの制御装置。
【請求項4】
気体燃料が供給されると共に自動的にエンジン停止とエンジン起動とが行われる火花点火式気体燃料エンジンの制御装置であって、
エンジンの自動停止時における気体燃料供給停止までの空燃比を、エンジン起動からエンジン停止までのエンジン稼働時間があらかじめ設定された所定時間以下の短いときには、気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化していく空燃比リーン化制御が実行され、前記稼働時間が前記所定時間を超える長いときには、上記空燃比リーン化制御を中止するか、または気体燃料の可燃範囲で徐々にリーン化しつつエンジン稼働時間が前記所定時間以下の場合に比して空燃比リーン化を行う移行時間を短くする制御が実行される、
ことを特徴とする火花点火式気体燃料エンジンの制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
エンジンの自動停止前の通常運転時の空燃比が、空気過剰率λで示したときに2.0〜2.5の範囲となるように設定され、
エンジンの自動停止時における前記空燃比リーン化制御の際には、空燃比が前記通常運転時の空燃比から徐々にリーン化される、
ことを特徴とする火花点火式気体燃料エンジンの制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
火花点火式気体燃料エンジンが車両に搭載され、
前記車両は、前記火花点火式気体燃料エンジンによって駆動されて発電を行うジェネレータと、該ジェネレータでの発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリと該ジェネレータとの少なくとも一方から電力を受けて駆動される走行用モータと、を備えたハイブリッド車とされている、
ことを特徴とする火花点火式気体燃料エンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197775(P2012−197775A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63913(P2011−63913)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】