説明

火花点火式直噴エンジン

【課題】火花点火式直噴エンジンにおいて、より高い熱効率を得ることを目的とする。
【解決手段】燃料供給部54内とインジェクタ18内の一方の燃料の温度を検出可能な燃料温度検出手段38と、燃料供給部54内とインジェクタ18内の一方の燃料の温度を低減可能な燃料温度低減手段56とを設け、エンジン本体1の暖機完了後の運転中であって、燃料温度検出手段38で検出された燃料温度Tfが予め設定された基準燃料温度Tf0よりも高いという特定条件の成立時に、燃料温度低減手段56により燃料供給部54またはインジェクタ18内の燃料の温度を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体に形成された気筒内に燃料を直接噴射可能なインジェクタと、当該気筒内の混合気に点火可能な点火プラグとを備えた火花点火式直噴エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、エンジン本体に形成された気筒内に燃料を直接噴射するとともに噴射された燃料と空気との混合気に点火プラグにより点火を行うことで混合気を燃焼させる火花点火式直噴エンジンの開発が行われている。このような火花点火式直噴エンジンでは、気筒内に直接噴射された燃料の気化に伴って気筒内の温度が低下するため、吸気ポート内に燃料を噴射するいわゆるポート噴射式のエンジンよりも、充填効率ひいてはエンジントルクを高めることができる。
【0003】
また、熱効率を高めるべくエンジン本体の幾何学的圧縮比が高く設定された高圧縮比のエンジンでは、高圧縮比化に伴ってノッキングが生じやすくなるが、このような高圧縮比のエンジンに直噴技術を採用した場合には、前記気筒内の温度の低減によりノッキングの発生を抑制することができ、より一層高い熱効率を得ることができる。具体的には、ノッキングが生じた場合、あるいは、ノッキングが生じやすい運転領域では、ノッキングの発生を回避するために点火時期が、最大トルクが得られるMBT(Minimum Spark Advance for Best Torque)よりも遅角されるが、火花点火式直噴エンジンでは、前記気筒内の温度の低下によりこの遅角量を少なくすることができるため、熱効率すなわち燃費を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−193539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃費性能の向上要求は依然として高く、火花点火式直噴エンジンにおいて、より熱効率を高めることが求められている。しかしながら、従来の火花点火式直噴エンジンでは、所定の運転条件において気筒内の温度の低下が十分になされず、ノッキングを回避するための点火時期の遅角量を十分に少なくすることができない結果、十分な熱効率向上効果が得られない場合があることが判明した。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、火花点火式直噴エンジンにおいて、より広い運転領域、運転条件下で、高い熱効率を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題に対して、本発明の発明者等は、鋭意研究の結果、直噴技術による高い熱効率が得られない運転条件では、気筒内に噴射される燃料の温度が比較的高く、燃料の気化に伴う気筒内の温度低減効果が十分に発揮されていないことを突き止めた。本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、本発明の火花点火式直噴エンジンは、エンジン本体に形成された気筒内に燃料を直接噴射可能なインジェクタと、当該気筒内に噴射された燃料を含む混合気に点火可能な点火プラグとを備えた火花点火式直噴エンジンであって、前記インジェクタから気筒内に所定の噴射圧力で噴射される燃料を当該噴射圧力以上の圧力で貯留し、この貯留している燃料を前記インジェクタに供給する燃料供給部と、前記燃料供給部内およびインジェクタ内の少なくとも一方の燃料温度を検出可能な燃料温度検出手段と、前記燃料供給部内およびインジェクタ内の少なくとも一方の燃料温度を低減可能な燃料温度低減手段と、前記燃料温度低減手段を制御可能な制御手段とを備え、前記制御手段は、エンジン本体の暖機完了後の運転中で、かつ、前記燃料温度検出手段で検出された燃料温度が予め設定された基準燃料温度よりも高いという特定条件の成立時に、前記燃料温度低減手段により前記燃料供給部内およびインジェクタ内の少なくとも一方の燃料温度を低減させる燃温低減制御を実施することを特徴とする。(請求項1)。
【0008】
この発明によれば、エンジン本体の暖機完了後の運転中において、前記燃料温度低減手段により、燃料供給部またはインジェクタ内の燃料の温度ひいては気筒内に噴射される燃料の温度が高温となるのが抑制されるため、前記エンジン本体の暖機完了後等の各運転条件下において気筒内の温度を低減することができ、より広い運転条件下で高い充填効率ひいては高い熱効率を得ることができる。すなわち、気筒内の温度の低減に伴ってノッキングの発生が抑制されるため、ノッキング回避のための点火時期の遅角量を低減することができ、これにより、高い熱効率を得ることができる。また、気筒内の温度の低減に伴って充填効率を高めることができ、最大エンジントルクを高めることができる。
【0009】
吸気温度が高い条件下、あるいは、エンジンの冷却水温度が高い条件下では、ノッキングが生じやすく、ノッキング回避のための遅角量が大きくなる。そのため、これらの条件下において、本発明を用いれば、特に有効である。
【0010】
また、本発明者等は、燃料温度が高い場合であっても低速低負荷領域では基準点火時期で運転されることで十分に高い熱効率が得られる一方、その他の運転領域で、特に、直噴技術による熱効率の向上効果が得られないことを突き止めた。
【0011】
そこで、本発明において、前記制御手段は、エンジンの回転速度が低くエンジンの負荷が低い低速低負荷領域よりも、回転速度と負荷の少なくとも一方が高い特定領域の運転中に前記特定条件が成立すると、前記燃温低減制御を実施するのが好ましい(請求項2)。
【0012】
また、本発明において、前記制御手段は、前記点火プラグの点火時期を制御可能であり、エンジンの回転速度および負荷毎にエンジントルクが最大となる基準点火時期を記憶しており、ノッキングが生じない点火時期のうち最も進角側の時期であるノック限界点火時期を運転条件に応じて算出するとともに、前記ノック限界点火時期が前記基準点火時期よりも遅角側の場合には、前記点火プラグに前記ノック限界点火時期で点火させるとともに、この場合において前記特定条件が成立すると、前記燃温低減制御を実施するのが好ましい(請求項3)。
【0013】
この構成では、ノッキングを回避するために点火時期を基準点火時期よりも遅角側にせねばならない運転条件において、燃料温度ひいては気筒内の温度が低減され、これによりノッキングの発生が抑制されるため、ノッキング回避のための点火時期の遅角化を抑制して熱効率を高めることができる。
【0014】
また、本発明において、前記制御手段は、前記点火プラグの点火時期を制御可能であって、前記燃温低減制御の実施時に、前記点火時期を、前記燃料温度検出手段で検出された燃料温度の低減度合に応じて進角させるのが好ましい(請求項4)。
【0015】
このようにすれば、燃料温度の低下により、ノッキングを抑制しつつ、点火時期の進角によってエンジンの熱効率改善が行える。
【0016】
前記燃料温度低減手段としては、例えば、前記燃料供給部またはインジェクタに取り付けられて、電流が付与されることで、当該燃料供給部またはインジェクタの熱を吸熱するペルチェ素子を用いればよく、この場合には、前記制御手段は、前記ペルチェ素子に付与する電流を制御すればよい(請求項5)。
【0017】
この構成によれば、ぺルチェ素子を燃料供給部またはインジェクタに取り付けるだけでよく、簡単な構成で燃料温度を低減することができる。また、ペルチェ素子は応答性すなわち対象物の熱を吸熱する速度が高いため、燃料温度をより早期に低減させることができる。
【0018】
また、前記燃料供給部に燃料を圧送する燃料ポンプと、前記燃料供給部内の燃料を前記燃料ポンプよりも上流側の部分に戻すリターン通路とを備える場合では、前記燃料温度低減手段として、前記燃料供給部と前記リターン通路との接続部分に設けられて、前記燃料供給部から前記リターン通路に排出される燃料流路の流路面積を変更可能なリリーフ弁を用いればよく、この場合には、リリーフ弁により前記流路面積を拡大して前記燃料供給部を通過する燃料流量を増大することで、前記燃料の温度を低減するようにし、前記制御手段は、前記リリーフ弁の開度を制御すればよい(請求項6)。
【0019】
この構成では、リリーフ弁により燃料供給部から排出される燃料ひいては燃料供給部を通過する燃料の流量が増加される。そして、この燃料流量の増加に伴って燃料供給部内の燃料が燃料供給部から受ける熱量が小さく抑えられるため、燃料供給部内の燃料すなわち気筒内に噴射される燃料の温度を低減することができる。特に、この構成では、燃料供給部から排出された燃料は燃料ポンプよりも上流側に排出されており、その移動途中で冷却されるため、前記燃料供給部内の燃料温度をより確実に低減することができる。
【0020】
また、前記燃料温度低減手段としては、前記燃料供給部の周囲に配置されて内側を冷却水または冷却エアーが流通可能であって、当該冷却水または冷却エアーにより前記燃料供給部の温度を低減する燃料供給部冷却装置を用いてもよい。この場合には、前記制御手段は、前記燃料供給部冷却装置を流通する冷却水または冷却エアーの流量を制御すればよい(請求項7)。
【0021】
この構成では、燃料供給部が冷却水または冷却エアーにより冷却されて、燃料供給部内ひいては気筒内に噴射される燃料の温度が低減される。
【0022】
また、本発明において、エンジンは自然吸気エンジンであって、前記エンジン本体の幾何学的圧縮比は、10以上に設定されているのが好ましい(請求項8)。
【0023】
また、本発明において、前記エンジン本体の幾何学的圧縮比は、過給機付エンジンで9以上に設定されているのが好ましい(請求項9)。
【0024】
このように、エンジン本体の幾何学的圧縮比が高い値に設定されている場合には、圧縮比が高いことに伴うノッキングの発生、ひいては、ノッキング回避のための点火時期の遅角、を燃料温度の低下により抑制することができ、熱効率の向上効果を効果的に得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の火花点火式直噴エンジンによれば、気筒内に噴射される燃料温度の低下により熱効率をより確実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態にかかる火花点火式直噴エンジンの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すエンジンに設けられる燃料温度低減手段の一実施形態を示す模式図である。
【図3】図1に示すエンジンの制御系を示すブロック図である。
【図4】図1に示すエンジンで実行される制御動作を示すフローチャートである。
【図5】図1に示すエンジンで実行される最終点火時期制御の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1に示すエンジンで実行される燃温低減制御の動作を示すフローチャートである。
【図7】異なる圧縮比での点火時期とエンジントルクとの関係を示す図である。
【図8】図1に示すエンジンに設けられる燃料温度低減手段の他の実施形態(第2実施形態)を示す模式図である。
【図9】図1に示すエンジンに設けられる燃料温度低減手段の他の実施形態(第3実施形態および第4実施形態)を示す模式図である。
【図10】図9に示す燃料温度低減手段を用いた場合の第3の実施形態に係る燃温低減制御の動作を示すフローチャートである。
【図11】図9に示す燃料温度低減手段を用いた場合の第4の実施形態に係る燃温低減制御の動作を示すフローチャートである。
【図12】図11に示す第4の実施形態で用いられる運転領域マップを示す図である。
【図13】図11に示す第4の実施形態の変形例で用いられる運転領域マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)エンジンの全体構成
図1および図2は、それぞれ、本発明の実施形態にかかる火花点火式直噴エンジンの一部を示す図である。この火花点火式直噴エンジン(以下、単にエンジンという場合がある)は、ガソリンを燃料とするエンジンである。本実施形態では、このエンジンは、過給機が装備されていない自然吸気の多気筒エンジンであって、シリンダブロック3と、シリンダブロック3上に設けられたシリンダヘッド4とを含むエンジン本体1に、図2に示すように所定の方向に並ぶ複数の気筒2(例えば4つの気筒2)が形成されている。このエンジンは、車載用エンジンであり、車両を駆動するための動力源として図略のエンジンルーム内に配設されている。
【0028】
前記エンジン本体1は、高い熱効率を得るため、また、最大エンジントルクがより高くなるように、その幾何学的圧縮比が10以上(例えば11)に設定されている。
【0029】
前記エンジン本体1の各気筒2には、ピストン5が往復摺動可能に挿入されている。前記ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。ピストン5は、コネクティングロッド8を介してクランク軸7と連結されている。クランク軸7は、前記ピストン5の往復運動に応じてその中心軸回りに回転する。前記シリンダブロック3には、前記クランク軸7の回転速度をエンジンの回転速度として検出するエンジン回転速度センサ30が設けられている。
【0030】
前記エンジン本体1のシリンダブロック3やシリンダヘッド4の内部には、冷却水が流通するウォータジャケット(図示省略)が設けられている。前記シリンダヘッド4からの冷却水出口通路(図示省略)には、このウォータジャケット内の冷却水の温度を検出するためのエンジン水温センサ31(図3参照)が設けられている。
【0031】
前記エンジン本体1のシリンダヘッド4には、点火プラグ15およびインジェクタ18が、各気筒2につき1組ずつ設けられている。
【0032】
前記点火プラグ15は、燃焼室6を上方から臨むように設けられており、図外の点火回路からの給電に応じて先端部から火花を放電する。所定のタイミングで前記点火プラグ15から火花が放電されると、これをきっかけに混合気の燃焼が開始される。
【0033】
前記インジェクタ18は、燃焼室6を吸気側の側方から臨むように設けられており、その先端部から、燃焼室6すなわち気筒2内に燃料を直接噴射する。インジェクタ18から燃焼室6に対して燃料が噴射されると、噴射された燃料は空気と混合し、燃焼室6には所望の空燃比の混合気が生成される。
【0034】
図2に示すように、エンジンには、燃料系機器として、インジェクタ18に加えて、燃料タンク50と、高圧ポンプ(燃料ポンプ)52と、フューエルレール(燃料供給部)54とが設けられている。燃料タンク50には、燃料が貯蔵されており、低圧の燃料ポンプ(図示省略)が内蔵されている。高圧ポンプ52は、低圧の燃料ポンプによって送り出された燃料タンク50内の燃料をフューエルレール54に圧送するためのものであり、エンジンの稼動に伴って駆動される。
【0035】
フューエルレール54は、高圧の燃料を貯留するためのものであり、所定の方向に延びるパイプ状に形成されている。フューエルレール54は、気筒2の配列方向に延びる姿勢で各インジェクタ18に接続されている。前記燃料タンク50と高圧ポンプ52とは、燃料配管51により接続されている。高圧ポンプ52とフューエルレール54とは、高圧配管53により接続されている。燃料タンク50内に貯留されている燃料は、低圧の燃料ポンプと高圧ポンプ52の駆動に伴って、燃料タンク50から燃料配管51および高圧配管53を介してフューエルレール54内に圧送され、高圧の状態でフューエルレール54内に貯留される。各インジェクタ18には、このフューエルレール54から高圧の燃料(例えば11Mpa程度)がそれぞれ分配され、各インジェクタ18は、この分配された高圧の燃料を燃焼室6内に噴射する。
【0036】
ここで、前記のようにフューエルレール54から各インジェクタ18には高圧の燃料が供給される。そのため、構造を簡素化するため(高圧の燃料配管を省略するため)に、フューエルレール54はインジェクタ18と近接した位置に配置されるのが好ましい。これに対して、本実施形態では、フューエルレール54は、各インジェクタ18の端部に直接接続されており、各インジェクタ18とシリンダヘッド4により支持されている。
【0037】
前記フューエルレール54には、その内側の高圧燃料を外部に排出するための排出口54aが設けられている。この排出口54aは、リターン配管55に接続されている。リターン配管55は、前記燃料配管51に接続されており、フューエルレール54内の高圧燃料は、排出口54aおよびリターン配管55を介して、燃料配管51すなわち高圧ポンプ52と燃料タンク50との間(高圧ポンプ52の上流側部分)に排出可能となっている。前記排出口54aには、この排出口54aを開閉可能なリリーフバルブ(リリーフ弁)56が設けられている。このリリーフバルブ56は、後述するECU40の指令を受けて駆動するリリーフバルブアクチュエータ57により開閉される。
【0038】
前記リリーフバルブ56は、通常閉弁されているが、フューエルレール54内の圧力が過剰に高くなった場合、および、後述する燃温低減制御の実施時に開弁される。リリーフバルブ56が開弁すると、フューエルレール54内の高圧燃料は、高圧ポンプ52と燃料タンク50との間に排出される。
【0039】
前記フューエルレール54には、フューエルレール54内の燃料の温度、ひいては、各インジェクタ18から燃焼室6内に噴射される燃料の温度(以下、燃温という場合がある)を測定するための燃温センサ(燃料温度検出手段)38が設けられている。なお、図示は省略したが、フューエルレール54には、フューエルレール54内の燃料の圧力を測定するための燃圧センサも設けられている。
【0040】
再び図1に戻って、前記燃焼室6には、吸気ポート9および排気ポート10が開口している。シリンダヘッド4には、各ポート9,10を開閉する吸気弁11および排気弁12がそれぞれ設けられている。吸気弁11および排気弁12は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された一対のカムシャフト(図示省略)等を含む動弁機構13,14により、クランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
【0041】
前記エンジン本体1の吸気ポート9および排気ポート10には、吸気通路20および排気通路22がそれぞれ接続されている。燃焼用の空気(新気)は、この吸気通路20を通じて燃焼室6に供給され、燃焼室6で生成された既燃ガス(排気ガス)は、前記排気通路22を通じて外部に排出される。
【0042】
前記吸気通路20は、その上流端においてサージタンク21に共通して接続されており、このサージタンク21から各吸気通路20ひいては吸気ポート9にそれぞれ吸気が分配される。図1に示すように、エンジンルーム内のレイアウト上、前記吸気通路20は、シリンダヘッド4から上方に向かった後下方に湾曲しており、サージタンク21は、シリンダブロック3の側方に位置している。これに伴い、前記フューエルレール54は、シリンダヘッド4とサージタンク21とで囲まれた領域に配置されている。
【0043】
前記サージタンク21よりも上流側の部分には、エンジン本体1に流入する吸入空気の流量を調節するスロットル弁(不図示)と吸入空気の流量を検出するエアフローセンサ32(図3参照)と吸入空気の温度を検出する吸気温センサ36(図3参照)とが設けられている。
【0044】
前記スロットル弁は、電子制御式のスロットル弁からなり、運転者により踏み込み操作される図外のアクセルペダルの開度に応じて電気的に開閉駆動される。すなわち、前記アクセルペダルにはアクセル開度センサが設けられており、このアクセル開度センサにより検出されたアクセルペダルの開度に応じて、図外の電気式のアクチュエータがスロットル弁を開閉駆動する。
【0045】
前記排気通路22には、排気ガス浄化用の触媒コンバータ23が設けられている。触媒コンバータ23には例えば三元触媒が内蔵されており、排気通路22を通過する排気ガス中の有害成分は前記三元触媒の作用により浄化される。
【0046】
(2)制御系
図3は、エンジンの制御系の一部を示すブロック図である。本図に示されるECU40は、エンジンの各部を統括的に制御するための制御手段であり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
【0047】
前記ECU40には、各種センサ類からの検出信号が入力される。ECU40は、前記エンジン回転速度センサ30、エンジン水温センサ31、エアフローセンサ32、吸気温センサ36、燃温センサ38と電気的に接続されており、これら各センサによる検出値として、エンジン回転速度Ne、エンジン冷却水温Tw、吸入空気量Qa、吸気温Ti、燃温Tfといった情報が、前記ECU40に逐次入力される。
【0048】
前記ECU40は、点火プラグ15、リリーフバルブアクチュエータ57とも電気的に接続されており、これらの装置にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。
【0049】
前記ECU40が有するより具体的な機能について説明すると、前記ECU40は、その主な機能的要素として、記憶手段41、点火制御手段42、燃温制御手段44、とを有している。
【0050】
前記記憶手段41は、エンジンを制御する際に必要な各種データやプログラムを記憶している。
【0051】
前記記憶手段41は、MBT(基準点火時期)のマップであるMBTマップ、基本ノック限界IG_knock_baseのマップである基本ノック限界マップ、ノック限界補正量、冷間点火時期のマップである冷間点火時期マップ等を記憶している。
【0052】
前記MBT(Minimum Spark Advance for Best Torque)は、エンジントルクが最大となる点火時期である。記憶手段41は、エンジン回転速度Neと負荷Ce毎に予め設定されたこのMBTの値をマップとして記憶している。
【0053】
前記基本ノック限界IG_knock_baseは、基準運転条件においてノッキングが生じない点火時期のうち最も進角側の点火時期である。前記基準運転条件とは、エンジンの暖機完了後であって、吸気温Ti、エンジン冷却水温Tw、および燃温Tfが、それぞれ所定の基準温度である条件である。この基準運転条件では、基本ノック限界IG_knock_baseよりも進角側の時期で点火がなされるとノッキングが発生し、この基本ノック限界IG_knock_baseよりも遅角側の時期で点火がなされた場合にはノッキングは発生しない。記憶手段41は、この基本ノック限界IG_knock_baseのエンジン回転速度Neと負荷Ce毎の値をマップとして記憶している。
【0054】
前記ノック限界補正量は、前記基本ノック限界IG_knock_baseの補正量であり、最終ノック限界(ノック限界点火時期)IG_knock、すなわち、各運転条件においてノッキングが生じない点火時期のうち最も進角側の点火時期は、前記基本ノック限界IG_knock_baseが、このノック限界補正量で補正されることで算出される。
【0055】
具体的には、吸気温Ti、あるいは、エンジン冷却水温Twが、基準温度よりも高い場合には、燃焼室6内の混合気の温度が上昇する結果ノッキングは生じやすくなる。そのため、この場合には、最終ノック限界IG_knockは、基本ノック限界IG_knock_baseよりも遅角側に移行する。前記ノック限界補正量は、この吸気温Ti、および、エンジン冷却水温Twと各基準温度との差に対応する、最終ノック限界IG_knockに対する基本ノック限界IG_knock_baseの補正量である。本実施形態では、記憶手段41は、吸気温Ti、および、エンジン冷却水温Twにそれぞれ応じて、個別に、ノック限界補正量を記憶している。
【0056】
さらに、本発明者等は、吸気温Tiおよびエンジン冷却水温Twに加えて、燃温Tfが上昇した場合にもノッキングが生じやすくなり、燃温Tfに対しても基本ノック限界IG_knock_baseを補正する必要があることをつきとめた。これは、燃焼室6内に噴射される燃料温度が高いと、この燃料が気化する際に燃焼室6内の新気(吸入空気)から吸熱する熱量が低減するため、混合気の温度が十分に低下せず、ノッキングが生じやすくなるためと考えられる。
【0057】
そこで、本エンジンでは、前記記憶手段41は、吸気温Tiおよびエンジン冷却水温Twに加えて、燃温Tfに応じたノック限界補正量も記憶している。そして、前記最終ノック限界IG_knockは、基本ノック限界IG_knock_baseが、吸気温Ti、エンジン冷却水温Tw、燃温Tfに応じて補正されることで、算出される。
【0058】
前記冷間点火時期は、冷間時すなわちエンジンが暖機していない状態における最適な点火時期であり、記憶手段41は、この冷間時の最適な点火時期をエンジン回転速度Neとエンジン負荷Ce毎に記憶している。
【0059】
なお、前記各マップ等は、予め実験等により求められている。
【0060】
前記点火制御手段42は、前記記憶手段41に記憶されているマップ等を用いて運転条件に応じて最終点火時期IGを決定する最終点火時期決定制御を実施する。そして、この点火制御手段42は、点火プラグ15の点火回路に給電信号を出力することにより、前記点火プラグ15を、決定した最終点火時期IGで燃焼室6内の混合気に点火させる。
【0061】
前記点火制御手段42により実施される最終点火時期決定制御について、図4および図5のフローチャートを用いて説明する。
【0062】
図4に示すように、まず、ECU40は、各種センサ値を読み込む(ステップS1)。具体的には、前記エンジン回転速度センサ30、エンジン水温センサ31、エアフローセンサ32、燃温センサ38から、それぞれ、エンジン回転速度Ne、エンジン冷却水温Tw、吸入空気量Qa、吸気温Ti、燃温Tfが読み出され、各読み値がECU40に入力される。その後、ECU40は、前記最終点火時期決定制御を実施する(ステップS10)。図5のフローチャートは、最終点火時期決定制御の詳細を示している。
【0063】
ECU40は、ステップS1で読み込まれたエンジン冷却水温Twが所定の閾値(例えば80℃)以上か否かに基づいて、エンジンの暖機が完了しているか否かを判定する(ステップS11)。この判定がNOであって、エンジンが暖機していない冷間状態の場合は、ステップS12に進む。ステップS12において、ECU40は、前記記憶手段41に記憶されている冷間点火時期マップから、エンジン回転速度Neと負荷Ceとに応じた冷間点火時期を抽出する。そして、ECU40は、この抽出した冷間点火時期を最終点火時期として設定する(ステップS13)。
【0064】
一方、ステップS11の判定がYESであって、エンジンの暖機が完了している場合は、ステップS14に進む。
【0065】
ステップS14において、ECU40は、エンジン回転速度Neと負荷Ceとに応じて、MBTを決定する。具体的には、ECU40は、記憶手段41に記憶されているMBTマップから、エンジン回転速度Neと負荷Ceとに応じた値を抽出する。
【0066】
また、ECU40は、前記記憶手段41から、エンジン回転速度Neと負荷Ceとに応じた基本ノック限界IG_knock_baseを抽出するとともに、吸気温Ti,エンジン冷却水温Twおよび燃温Tfに応じたノック限界補正量を抽出する(ステップS15)。そして、ECU40は、これら各ノック限界補正量に基づいて基本ノック限界IG_knock_baseを補正して、エンジン回転速度Ne、負荷Ce、吸気温Ti,エンジン冷却水温Tw、燃温Tfに応じた最終ノック限界IG_knockを算出する(ステップS16)。このとき、吸気温Ti,エンジン冷却水温Twおよび燃温Tfが各基準温度よりも高い場合には、最終ノック限界IG_knockは、基本ノック限界IG_knock_baseよりも遅角側に補正される。
【0067】
次に、ECU40は、前記最終ノック限界IG_knockが、ステップS11で求めたMBTよりも進角側であるかどうかを判断する(ステップS17)。
【0068】
ステップS17の判定がNOであって最終ノック限界IG_knockの方がMBTよりも遅角側にある場合は、MBTで点火を行った場合にノッキングが生じるおそれがある。そこで、この場合には、ECU40は、最終ノック限界IG_knockを最終点火時期IGとする(ステップS18)。
【0069】
一方、ステップS17の判定がYESであって最終ノック限界IG_knockがMBTよりも進角側にある場合は、MBTで点火を行ってもノッキングは生じない。そこで、この場合には、ECU40は、MBTを最終点火時期IGとする(ステップS19)。
【0070】
以上のようにして、ECU40は、運転条件に応じて最終点火時期IGを決定する。そして、ECU40は、この最終点火時期IGで前記点火プラグ15により点火を行わせる。
【0071】
前記燃温制御手段44は、前記リリーフバルブアクチュエータ57を制御して、燃焼室6内に噴射される燃料の温度を低減させる燃温低減制御を行う。本実施形態では、この燃温制御手段44は、前記燃温センサ38で検出された燃温Tfが予め設定された基準燃料温度Tf0(例えば50℃)以上になると、前記リリーフバルブアクチュエータ57を駆動して、前記リリーフバルブ56を開弁させる。そして、燃温Tfが基準燃料温度Tf0以下に低下するとリリーフバルブアクチュエータ57によりリリーフバルブ56を閉弁させる。
【0072】
前述のように、フューエルレール54は、シリンダブロック3とサージタンク21とで囲まれた領域に配置されている。そのため、フューエルレール54は、エンジンの稼動に伴い高温となったシリンダブロック3からの熱を受けるとともに放熱が十分になされないことにより高温に維持されており、フューエルレール54内において、燃料はこのフューエルレール54からの熱を受けて高温となる。そこで、本エンジンでは、燃温制御手段44によりリリーフバルブ56を開弁させて、フューエルレール54内に貯留されている燃料を外部に排出することで、フューエルレール54に流入する比較的低温の燃料の流量を増加させ、これにより、フューエルレール54の温度およびフューエルレール54内の燃料の温度を低減させる。フューエルレール54から排出された燃料は、前記高圧ポンプ52と燃料タンク50との間に排出され、この排出途中で冷却された後、再び高圧ポンプ52によってフューエルレール54に圧送される。
【0073】
ここで、燃料をより低温とするために、リターン配管55の途中に、燃料温度を低下させるための冷却装置を設けてもよい。この冷却装置としては、例えば、リターン配管55の周囲に冷却水を通過させる冷却水パイプを配索する構成が挙げられる。
【0074】
また、フューエルレール54から排出された燃料を、前記燃料タンク50に戻してもよい。このようにすれば、燃料の移動距離が長くなるため燃料温度をより低減することができる。ただし、この場合には、燃料タンク50に流入することで燃料の圧力が低減するため、この燃料を再び高圧化させる必要がある。具体的には、燃料タンク50から燃料配管51に向けて燃料を再度圧送する必要がある。そのため、エネルギ効率が悪化する。また、燃料タンク50に燃料を戻した場合、発生する蒸発燃料が増加するという問題も生じる。そこで、本実施形態では、前記のように、フューエルレール54から排出された燃料を、燃料タンク50と高圧ポンプ52との間に流入させる。
【0075】
前記燃温低減制御の詳細について、図4および図6のフローチャートを用いて説明する。
【0076】
図4に示すように、本実施形態では、ECU40は、ステップS1で、各種センサ値を読み込み、その後、ステップS10で前記最終点火時期決定制御を実施した後、ステップS20で燃温低減制御を実施する。なお、最終点火時期決定制御と燃温低減制御の実施順序は、これに限らず、これら制御を同時にあるいは燃温低減制御を先に行ってもよい。
【0077】
図6に示すように、ECU40は、前記ステップS1で読み込まれたエンジン冷却水温Twが所定の閾値(例えば80℃)以上か否かに基づいて、エンジンの暖機が完了しているか否かを判定する(ステップS21)。
【0078】
ステップS21での判定がNOの場合、すなわち、エンジンの暖機が完了していない場合は、ステップS22に進む。そして、この場合には、燃料温度低減制御が実施されることなく処理が終了される。具体的には、ステップS22において、前記燃温低減制御が実施されている場合にはこの燃温度低減制御が停止され、燃料温度低減制御が実施されていない場合は、そのまま処理が終了される。すなわち、ステップS22では、前記リリーフバルブアクチュエータ57により前記リリーフバルブ56は閉弁される。エンジンの暖機完了前は、燃料温度が十分に低いことがわかっている。そして、エンジンの暖機完了前は、燃料温度が低いことによる燃料の気化霧化の悪化に伴って排気エミッション性能が悪化するおそれがあるため、この場合は前記燃料の温度を低減する燃温低減制御は行わない。
【0079】
一方、ステップS21での判定がYESであって、エンジンの暖機が完了している場合は、ステップS23に進む。このステップS23では、燃温Tfが前記基準燃料温度Tf0以上かどうかが判定される。この判定がNOであって燃温Tfが基準燃料温度Tf0未満の場合は、前記ステップS22に進み、燃温低減制御は実施されず、または、燃温低減制御が実施されている場合には燃温低減制御が停止されて、処理が終了する。
【0080】
一方、ステップS23の判定がYESであって燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上の場合は、燃温低減制御が実施される(ステップS24)。具体的には、前記リリーフバルブアクチュエータ57が駆動されて、前記リリーフバルブ56が開弁される。前述のように、リリーフバルブ56が開弁されると、フューエルレール54内に貯留されている高温の燃料は外部に排出され、フューエルレール54を通過する燃料流量が増大して、フューエルレール54内の燃料温度ひいては燃焼室6内に噴射される燃料温度が低減される。
【0081】
以上のステップS1、ステップS10の最終点火時期決定制御すなわちステップS11〜S19、およびステップS20の燃温低減制御すなわちステップS21〜S24までの処理は、エンジンの稼動中連続して行われる。従って、前記燃料低減制御は、燃温Tfが基準燃料温度Tf0未満となるまで実施される。また、前記最終点火時期制御は、燃料低減制御により燃温Tfが低減されている最中も実施される。そのため、ステップS15において、最終ノック限界IG_knockは、燃料低減制御により低減途中にある燃温Tfに応じて補正される。具体的には、最終ノック限界IG_knockは、燃温Tfの低減に伴い進角補正される。そのため、ステップS18において、最終点火時期IGが最終ノック限界IG_knockに設定される場合において、最終点火時期IGは、燃温Tfの低減に伴って進角される。
【0082】
なお、ECU40は、前記以外にも、インジェクタ18、動弁機構13,14、スロットル弁等の制御も行うが、これらの制御については説明を省略する。
【0083】
(3)作用効果等
以上説明したように、当実施形態の火花点火式エンジンでは、エンジン本体の暖機完了後のエンジン本体の運転中において、リリーフバルブ56の開閉動作によって燃料供給部54内の燃料の温度ひいては燃焼室6内に噴射される燃料の温度が基準燃料温度Tf0未満になるように制御される。そのため、燃焼室6内に噴射される燃料が基準燃料温度Tf0以上の高温となり、これにより混合気の温度が過度に高くなってノッキングが生じるのを回避することができるとともに、ノッキング回避のための点火時期の遅角量を小さく抑えることができ、エンジンの熱効率を高めることができる。また、燃焼室6内の温度が低く抑えられることで充填効率を高めて高いエンジントルクを得ることが可能となる。
【0084】
特に、本実施形態のように圧縮比が11という比較的高い値に設定された高圧縮比エンジンでは、点火時期を遅角させることに伴うエンジントルクの低下量が大きい。そのため、前記のように点火時期の遅角量が小さく抑えられることにより、エンジントルクの低減を効果的に抑えることができる。そして、高圧縮比によるエンジントルク向上効果を効果的に得ることができる。
【0085】
具体的には、横軸を点火時期、縦軸をエンジントルクとした図7に示すように、実線で示した高圧縮比エンジンでは、ノッキングを回避するために点火時期が変化すること(図7におけるMBTからIG_knockへの変化)によるエンジントルクの低下量が、破線で示した低圧縮比エンジンにおける点火時期の変化(図7におけるMBTからIG_knockへの変化)に伴うエンジントルクの低下量よりも大きい。そのため、高圧縮比エンジン程、ノッキングを回避するために必要な点火時期の遅角量が大きくなった場合において、高圧縮比によるエンジンの熱効率改善効果を十分に得ることができないおそれがある。これに対して、本火花点火式直噴エンジンでは、点火時期の遅角量を小さく抑えることができ、高圧縮比によるエンジンの熱効率改善効果を確実に得ることができる。ここで、高圧縮比エンジンの方が、低圧縮比エンジンよりも、点火時期の遅角量に対するエンジントルクの低下量が大きいのは、点火時期の遅角に伴い、高圧縮比により得られる熱効率向上効果が小さくなり、高圧縮比により生じるポンピングロスの増大の影響が大きくなるためと考えられる。
【0086】
ここで、吸気温度が高い条件下、あるいは、エンジンの冷却水温度が高い条件下では、ノッキングが生じやすく、ノッキング回避のための遅角量が大きくなる。そのため、本火花点火式直噴エンジンでは、これらの条件下において特に高いエンジントルク向上効果および高い熱効率改善効果を得ることができる。
【0087】
また、本実施形態では、リリーフバルブ56の開閉動作によって燃料の温度が制御されており、比較的簡単な構成で燃料温度制御を実現することができる。特に、このリリーフバルブ56は、前述のようにフューエルレール54内の圧力が過剰に高くなった場合にも開弁されてフューエルレール54内圧力の制御手段としても機能するものであり、本実施形態では、このフューエルレール54内圧力の制御手段として機能するリリーフバルブ56を利用して燃料温度を制御している。そのため、圧力制御手段としてのリリーフバルブ56とは別に燃料温度を制御するための手段を設ける場合に比べて、構造を簡素化することができる。
【0088】
(4)他の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態に係る火花点火式直噴エンジンについて説明する。前記第1の実施形態では、燃焼室6に噴射される燃料の温度を低減する燃料温度低減手段として、前記リリーフバルブ56およびリリーフバルブアクチュエータ57が用いられたが、この第2の実施形態では、燃料温度低減手段として、図8に示すような冷却装置(燃料供給部冷却装置)201が用いられる。この冷却装置201以外の構成、および、燃料温度低減手段により燃温を低減させる制御手順以外の手順は、前記第1の実施形態と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0089】
前記冷却装置201は、冷却水流通パイプ202と、冷却水供給ポンプ203とを有すし、燃料温度よりも低い冷却水を冷却水流通パイプ202へ流すべく、エンジン冷却系とは別途の冷却系となっている。冷却水流通パイプ202は、その内側を冷却水が流通可能なパイプであり、前記フューエルレール54に巻きつけられている。(なお、螺旋状の冷却水流通路を一体形成したフューエルレール54であっても良い。)前記冷却水供給ポンプ203は、冷却水流通パイプ202に冷却水を供給するためのポンプである。この冷却水供給ポンプ203は、エンジン冷却系とは別に設けられた熱交換器(図示省略)から排出される比較的温度の低い水を冷却水流通パイプ202に供給する。
【0090】
ECU40(燃温制御手段44)は、前記冷却水供給ポンプ203を駆動・停止可能である。ECU40により冷却水供給ポンプ203が駆動されて、前記低温の冷却水が前記冷却水流通パイプ202に供給されると、この冷却水流通パイプ202を通過する低温の冷却水によりフューエルレール54は冷却される。
【0091】
このように、この第2の実施形態では、ECU40により前記冷却水供給ポンプ203が駆動されることで、フューエルレール54の温度ひいては燃焼室6内に噴射される燃料の温度が低減される。すなわち、図6のフローチャートにおいて、ステップS23で燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上であると判定された後に進むステップS24において、リリーフバルブ56の開弁に代えて冷却水供給ポンプ203が駆動される。そして、ステップS22において、リリーフバルブ56の閉弁に代えて、冷却水供給ポンプ203が停止される。
【0092】
この第2の実施形態に係る火花点火式直噴エンジンにおいても、冷却装置201によりフューエルレール54の温度ひいては燃焼室6内に噴射される燃料の温度が低く維持される。そのため、高い熱効率および高い出力性能を得ることができる。
【0093】
なお、この第2の実施形態では、燃料温度低減手段として、冷却水を流通させる冷却装置(燃料供給部冷却装置)201を用いた場合について説明したが、冷却水に代えて、冷却エアー(冷たい走行風等)を流通させる冷却装置(燃料供給部冷却装置)を用いても良い。
【0094】
次に、第3の実施形態に係る火花点火式直噴エンジンについて、図9および図10のフローチャートを用いて説明する。
【0095】
前記第1の実施形態および第2の実施形態では、燃焼室6内に噴射される燃料の温度を検出するための燃温センサ38がフューエルレール54に設けられていたが、この第3の実施形態では、図9に示すように、前記燃温センサ38はインジェクタ18に設けられている。本実施形態では、複数のインジェクタ18のうち、高圧ポンプ52に最も遠い側のインジェクタ18にのみ燃温センサ38が取り付けられている。勿論、各インジェクタ18に燃温センサ38をそれぞれ取り付けても良いが、少ない燃温センサ38で対応する場合は、フューエルレール54が熱せられることを考慮して、最も燃温が高くなる、高圧ポンプ52に最も遠い側のインジェクタ18にのみ燃温センサ38を取り付けることが好ましい。また、この第3の実施形態では、燃料温度低減手段として、ペルチェ素子302が用いられている。
【0096】
前記ペルチェ素子302は、外部から所定の電流が供給されることで、一方側から他方側へ熱エネルギが移動し、一方側において吸熱反応を起こするものである。本実施形態では、シート状に成形されたペルチェ素子302が、吸熱反応を起こす側がインジェクタ18側となるように各インジェクタ18の周囲に貼り付けられている。
【0097】
そして、この第3の実施形態では、ECU40(燃温制御手段44)が、前記ペルチェ素子302への電流の供給・停止が可能なように構成されており、ECU40は、ペルチェ素子302に電流を供給してペルチェ素子302に吸熱反応を起こさせることにより各インジェクタ18を冷却する。ここで、ペルチェ素子302のインジェクタ18と反対側の部分は、発熱反応を起こすが、ペルチェ素子302は、この発熱反応を起こす側がシリンダヘッド4に形成されたウォータジャケットと接する位置に配置されており、ペルチェ素子302は、このウォータジャケットを流れるエンジン冷却水により冷却される。
【0098】
また、前記第1の実施形態および第2の実施形態では、エンジンの暖機完了後においてエンジンが稼動中で燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上の場合は即座に燃温低減制御が実施されたが、この第3の実施形態では、図10のフローチャートに示すように、エンジンの暖機完了後(ステップS21でYES)、前記最終点火時期制御において算出された最終ノック限界IG_knockとMBTとの比較が行われる。具体的には、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側かどうかの判定が実施される(ステップS31)。そして、この判定がYESであれば、前記燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上かどうかを判定するステップS23に進む。一方、ステップS31の判定がNOであって最終ノック限界IG_knockがMBTよりも進角側の場合には、ステップS32に進み、燃温低減制御が実施されることなく、あるいは、燃温低減制御が停止されて処理が終了される。すなわち、ステップS32では、ペルチェ素子への通電がなされずに処理が終了される、あるいは、この通電が停止される。
【0099】
ステップS23に進んだ後は、前記第1の実施形態と同様に、ステップS23の判定がYESであって燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上の場合に燃温低減制御が実施され(ステップS34)、ステップS23の判定がNOであって燃温Tfが基準燃料温度Tf0未満の場合には、燃温低減制御が停止される、あるいは、燃温低減制御が実施されないまま処理が終了する(ステップS32)。ただし、この第3の実施形態では、ステップS34において、ECU40により前記ペルチェ素子302に電流が供給され、ステップS32においてECU40によりペルチェ素子302への電流供給が停止される。
【0100】
このように、この第3の実施形態では、エンジンの暖機完了後、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側、かつ、燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上の場合にのみ、燃温低減制御が実施される。
【0101】
燃温低減制御の実施条件に前記ステップS31の判定を加えて、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側の場合のみに燃温低減制御の実施を可能としたのは、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側の場合には燃温を低減させることによるエンジントルク向上効果が得られるが、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも進角側の場合は、燃温を低減させてもエンジントルク向上効果が得られないためである。具体的には、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側の場合には、最終点火時期IGが最終ノック限界IG_knockとされて、MBTで点火した場合よりもエンジントルクが低下する。そのため、この場合には、燃温を低減させて、最終点火時期IGをよりMBTでに近い値とすることでエンジントルクを高める効果が得られる。しかしながら、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも進角側の場合は、最終点火時期IGがMBTに維持されて、エンジントルクが最大トルクとされるため、燃温を低減させてもエンジントルク向上効果は得られない。そこで、本実施形態では、燃温低減制御の実施条件に、前記ステップS31の条件を加えて、ペルチェ素子302への不要な電流供給を停止するようにした。
【0102】
このようにして、第3の実施形態では、エンジンの暖機完了後の運転中に、最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側の場合にのみ燃温低減制御が実施されており、燃温低減制御の実施に要するエネルギを小さく抑えつつ、エンジンの熱効率および出力性能を高めることができる。また、この第3の実施形態では、ペルチェ素子302によりインジェクタ18が直接冷却されており、より確実に燃焼室6内に噴射される燃料を冷却することができる。特に、このペルチェ素子302は、応答性がよく、電流が供給されてから冷却機能を発揮するまでの時間が非常に短い。そのため、この第3の実施形態では、前記燃温低減手段の実施条件の成立時、特に、点火時期の変化に伴って燃料を適正に冷却することができる。
【0103】
次に、第4の実施形態に係る火花点火式直噴エンジンについて、図11および図12を用いて説明する。
【0104】
第4の実施形態では、前記第3の実施形態と同様に燃温センサ38がインジェクタ18に設けられるとともに、燃料温度低減手段として、ペルチェ素子302が用いられている。一方、この第4の実施形態では、前記第3の実施形態におけるステップS31の判定、すなわち最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側かどうかの判定に代えて、図11のステップS41に示す、運転領域が特定の運転領域X2かどうかの判定が行われる。この判定基準以外の構成は、第4の実施形態と第3の実施形態とで同一であり、その詳細な説明は省略する。
【0105】
前記運転領域X2は、図12に示すように、予め設定された低速低負荷領域X1よりもエンジン回転速度Neとエンジン負荷Ceの少なくとも一方が高い領域である。この図12に示す運転領域マップは、前記記憶手段41に記憶されており、ECU40は、エンジン回転速度Neとエンジン負荷Ceとに応じて現在の運転領域が運転領域X2であるかどうかを判定する。
【0106】
このようにして、第4の実施形態では、エンジンの暖機完了後(ステップS21でYES)、現在の運転領域がX2かどうかが判定される(ステップS41)。そして、この判定がYESであって現在の運転領域がX2の場合にのみ、前記燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上かどうかのステップS23に進む。一方、このステップS41の判定がNOであって現在の運転領域がX1の場合には、ステップS32に進み、燃温低減制御が実施されることなく、あるいは、燃温低減制御が停止されて処理が終了される。すなわち、ステップS32では、ペルチェ素子への通電がなされずに処理が終了される、あるいは、この通電が停止される。
【0107】
ステップS23に進んだ後は、前記第3の実施形態と同様の処理が行われる。すなわち、ステップS34において燃温低減制御が実施されるか、ステップS32において燃温低減制御が停止される(燃温低減制御が行われずに処理が終了する)。
【0108】
このように、この第4の実施形態では、エンジンの暖機完了後、運転領域がX2の場合、かつ、燃温Tfが基準燃料温度Tf0以上の場合にのみ、燃温低減制御が実施される。
【0109】
燃温低減制御の実施条件を、前記ステップS31の最終ノック限界IG_knockがMBTよりも遅角側であるという条件に代えて、前記ステップS41の運転領域がX2であるという条件を用いたのは、本発明者等による以下の研究結果に基づく。
【0110】
すなわち、本発明者等は、低速低負荷領域X1では、燃温等の運転条件によらずMBTは最終ノック限界IG_knockよりも遅角側に維持され、高速高負荷領域X2でのみ、MBTが最終ノック限界IG_knockよりも進角側となる場合があることを突き止めた。
【0111】
そこで、本第4の実施形態では、前記ステップS31に代えて前記ステップS41の判定を行うことで、第3の実施形態と同様に、燃温の低減によりエンジントルク向上効果が得られる領域でのみペルチェ素子302への通電を行い、その他の領域ではペルチェ素子302への不要な電流供給を停止する。
【0112】
このようにして、第4の実施形態においても、燃温低減制御の実施に要するエネルギが小さく抑えられつつ、エンジンの熱効率および出力性能が高められる。
【0113】
ここで、本発明者らは、さらに、運転領域X2のうちエンジン回転速度Neが高い側およびエンジン負荷Ceが高い運転領域X2b(図13参照)では、燃温が高くなりにくく、燃温低減制御を実施する必要性が低いことを突き止めた。これは、この運転領域X2bでは、フューエルレール54を通過する単位時間当たりの燃料流量が増大するため、燃料がフューエルレール54から受ける受熱量が小さくなるためと考えられる。そこで、前記第4の実施形態において、ステップS41の運転領域がX2かどうかの判定に代えて、運転領域がX2のうちX2b以外のX2aかどうかの判定を行い、この判定がYESすなわち運転領域がX2aの場合にのみ、ステップS5に進むようにしてもよい。
【0114】
また、各実施形態において、燃料温度低減手段として、他の実施形態で用いた手段を用いてもよい。また、複数の手段を合わせて用いてもよい。
【0115】
例えば、前記第3の実施形態および第4の実施形態において、燃料温度低減手段として、ペルチェ素子に代えて、第1の実施形態で用いたリリーフバルブ56およびリリーフバルブアクチュエータ57、あるいは、第2の実施形態で用いた冷却装置201を用いてもよい。ただし、第3の実施形態および第4の実施形態では、燃温低減制御の実施条件に、時々刻々と変化する運転領域および最終ノック限界が含まれている。そのため、この運転領域等の変化に合わせて燃料温度を低減するためには、燃料温度低減手段として応答性が高いことが望ましい。従って、前記運転領域等を実施条件に含む第3の実施形態および第4の実施形態では、応答性の高いペルチェ素子を用いるのが好ましい。
【0116】
また、各実施形態において、エンジンの幾何学的圧縮比の具体的な値は前記に限らない。ただし、前述のように、圧縮比が高い場合には、特に、ノッキング回避のために点火時期を遅角する必要が生じる場合が多く、また、この遅角に伴う熱効率の悪化が大きい。そのため、エンジンの幾何学的圧縮比が、自然吸気エンジンで10以上に設定されている、あるいは、過給機付エンジンで9以上に設定されているエンジンに本発明が適用されれば、熱効率の向上効果を効果的に得ることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 エンジン本体
15 点火プラグ
18 インジェクタ
38 燃温センサ(燃料温度検出手段)
40 ECU(制御手段)
52 高圧ポンプ(燃料ポンプ)
54 フューエルレール(燃料供給部)
56 リリーフバルブ(燃料温度低減手段)
57 リリーフバルブアクチュエータ(燃料温度低減手段)
201 冷却装置(燃料供給部冷却装置)
302 ペルチェ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体に形成された気筒内に燃料を直接噴射可能なインジェクタと、当該気筒内に噴射された燃料を含む混合気に点火可能な点火プラグとを備えた火花点火式直噴エンジンであって、
前記インジェクタから気筒内に所定の噴射圧力で噴射される燃料を当該噴射圧力以上の圧力で貯留し、この貯留している燃料を前記インジェクタに供給する燃料供給部と、
前記燃料供給部内およびインジェクタ内の少なくとも一方の燃料温度を検出可能な燃料温度検出手段と、
前記燃料供給部内およびインジェクタ内の少なくとも一方の燃料温度を低減可能な燃料温度低減手段と、
前記燃料温度低減手段を制御可能な制御手段とを備え、
前記制御手段は、エンジン本体の暖機完了後の運転中で、かつ、前記燃料温度検出手段で検出された燃料温度が予め設定された基準燃料温度よりも高いという特定条件の成立時に、前記燃料温度低減手段により前記燃料供給部内およびインジェクタ内の少なくとも一方の燃料温度を低減させる燃温低減制御を実施することを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンにおいて、
前記制御手段は、エンジンの回転速度が低くエンジンの負荷が低い低速低負荷領域よりも、回転速度と負荷の少なくとも一方が高い特定領域の運転中に前記特定条件が成立すると、前記燃温低減制御を実施することを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の火花点火式直噴エンジンにおいて、
前記制御手段は、
前記点火プラグの点火時期を制御可能であり、エンジンの回転速度およびエンジンの負荷毎にエンジントルクが最大となる基準点火時期を記憶しており、ノッキングが生じない点火時期のうち最も進角側の時期であるノック限界点火時期を運転条件に応じて算出するとともに、前記ノック限界点火時期が前記基準点火時期よりも遅角側の場合には、前記点火プラグに前記ノック限界点火時期で点火させるとともに、この場合において前記特定条件が成立すると、前記燃温低減制御を実施することを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項4】
請求項3に記載の火花点火式直噴エンジンにおいて、
前記制御手段は、前記燃温低減制御の実施中、前記点火時期を、前記燃料温度検出手段で検出された燃料温度の低減度合に応じて進角させることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の火花点火式直噴エンジンにおいて、
前記燃料供給部またはインジェクタに取り付けられて、電流が付与されることで当該燃料供給部またはインジェクタの熱を吸熱して、前記燃料温度低減手段として機能するペルチェ素子を備え、
前記制御手段は、前記ペルチェ素子に付与する電流を制御することを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の火花点火式直噴エンジンにおいて、
前記燃料供給部に燃料を圧送する燃料ポンプと、
前記燃料供給部に接続されて、前記燃料供給部内の燃料を前記燃料ポンプよりも上流側の部分に戻すリターン通路と、
前記燃料供給部と前記リターン通路との接続部分に設けられて、前記燃料供給部から前記リターン通路に排出される燃料流路の流路面積を変更可能なリリーフ弁とを備え、
前記リリーフ弁は、前記流路面積を拡大して前記燃料供給部を通過する燃料流量を増大することで、前記燃料の温度を低減する前記燃料温度低減手段として機能し、
前記制御手段は、前記リリーフ弁の開度を制御することを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の火花点火式直噴エンジにおいて、
前記燃料供給部の周囲に配置されて内側を冷却水または冷却エアーが流通可能な燃料供給部冷却装置を備え、
前記燃料供給部冷却装置は、前記冷却水または冷却エアーにより前記燃料供給部の温度を低減することで、前記燃料温度低減手段として機能し、
前記制御手段は、前記燃料供給部冷却装置を流通する冷却水または冷却エアーの流量を制御することを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の火花点火式直噴エンジにおいて、
前記エンジンは自然吸気エンジンであって、エンジン本体の幾何学的圧縮比は、10以上に設定されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の火花点火式直噴エンジにおいて、
前記エンジンは過給機付エンジンであって、エンジン本体の幾何学的圧縮比は、9以上に設定されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−57254(P2013−57254A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194709(P2011−194709)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】