説明

灰出装置

【課題】大きさの限られた導入口から焼却炉内に導入されて、炉底に残留した焼却灰を効率的かつ確実に排出することができる灰出装置を提供する。
【解決手段】灰出装置1は、焼却炉の灰出口と対向する位置に設けられた導入口から焼却炉内に導入される柱状の装置本体2と、装置本体2の側面に沿うように収納されて装置本体2と共に導入口から焼却炉内に導入され、装置本体2の後方から前方に向かって回動可能に装置本体2に軸支された一対のスクレーパ3と、一対のスクレーパ3を炉底で回動させることにより、焼却灰を灰出口に対面する灰出位置に掻き集めるスクレーパ部4と、装置本体2の前方に設けられて装置本体2と共に導入口から前記焼却炉内に導入され、装置本体2の軸方向に進退する平板状のプレート5とを備え、灰出位置で一対のスクレーパ3の間に掻き集められた焼却灰を、プレート5を前進させることにより灰出口へと押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉の炉底に残留した焼却灰を炉外に排出する灰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の灰出装置としては、乾留缶の下部に開閉自在に設けられた灰出口と、該灰出口に対向して乾留缶下部に開口して設けられた着火口とを備えた焼却炉において、着火口から炉内に進退自在に挿入される灰掻出プレートを設けてなるものが知られている(特許文献1参照)。かかる灰出装置によれば、炉内に対向して設けられた着火口及び灰出口を開放させた上で、シリンダ伸縮機構により灰掻出プレートを伸長させ、灰掻出プレートを着火口から炉内に挿入して乾留缶底部に堆積した燃焼灰を灰出口から排出する。
【0003】
しかしながら、従来の灰出装置では、着火口から導入可能な灰掻出プレートの大きさには限界があるため、灰掻出プレートの伸長動作を1回行っただけでは、焼却灰の排出が不十分である。そのため、(i)灰掻出プレートの伸長動作を繰り返し行い、なおかつ、(ii)灰掻出プレートが乾留缶内に位置した状態でシリンダ伸縮機構が搭載された台車を左右に移動させ、着火口と灰出口とを結ぶ直線以外の部分へ灰掻出プレートを到達させる必要が生じる。
【0004】
また、上記(i),(ii)により、灰掻出プレートの伸長動作を繰り返し行っても、着火口側には灰掻出プレートが届かない部分が存在する。このため、灰掻出プレートを後退させた際に焼却灰が着火口側に引き戻されてしまう。このように、従来の灰出装置では、焼却灰の確実な排出は期待できず、焼却灰の排出作業効率が悪く、作業負担も大きい。
【0005】
一方で、着火口や灰出口の開口を大きくして、大型の灰掻出プレートを炉内に導入することも考えられる。しかし、焼却炉の構成を大幅に変更する必要が生ずると共に、炉壁の強度を低下させることから着火口や灰出口を大きくすることは困難である。
【特許文献1】特開2005−24211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みて、大きさの限られた導入口から焼却炉内に導入されて、炉底に残留した焼却灰を効率的かつ確実に排出することができる灰出装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、焼却炉の炉底に残留した焼却灰を炉壁に開けられた灰出口から炉外に排出する灰出装置であって、前記灰出口と対向する位置に設けられた導入口から前記焼却炉内に導入される柱状の装置本体と、前記装置本体の側面に沿うように収納され該収納位置で該装置本体と共に前記導入口から前記焼却炉内に導入され、該装置本体の後方から前方に向かって回動可能に該装置本体に軸支された一対のスクレーパを有して、該一対のスクレーパを前記炉底で回動させることにより、前記焼却灰を前記灰出口に対面する灰出位置に掻き集めるスクレーパ部と、前記装置本体の前方に設けられて該装置本体と共に前記導入口から前記焼却炉内に導入され、該装置本体の軸方向に進退する平板状のプレートを有して、該プレートを前進させることにより、前記灰出位置で前記一対のスクレーパの間に掻き集められた前記焼却灰を前記灰出口へと押し出す押出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の灰出装置では、まず、一対のスクレーパが装置本体の側面に沿うように収納され、プレートが装置本体の前方に設けられた状態で、装置本体が導入口から焼却炉内に導入される。装置本体が焼却炉内に導入されると、各スクレーパが装置本体の後方から前方に向かって回動して、炉底に残留した焼却灰を灰出口に対面する灰出位置に掻き集める。そして、このようにして灰出位置に掻き集められた焼却灰を一対のスクレーパの間に存置させた状態で、プレートを前進させて焼却灰を灰出口へ押し出して排出する。
【0009】
かかる本発明の灰出装置によれば、一対のスクレーパが装置本体の側面に沿うように収納され、プレートが装置本体の前方に設けられている。そのため、一対のスクレーパ及びプレートが装置本体と共に炉壁に開けられた導入口から炉内に導入することができ、導入口を大きくするなど焼却炉の構成を大幅に変更することなく、焼却灰の排出に必要な構成部材を焼却炉内に導入することができる。
【0010】
また、かかる本発明の灰出装置によれば、装置本体と共に炉内に導入されたスクレーパが装置本体の後方から前方に向かって回動するため、スクレーパが回動する範囲に残留する炉底の焼却灰を一度に灰出位置に掻き集めることができる。特に、炉底が円形の場合には、スクレーパの回転半径を炉底の半径と同等にすることで、炉底全体に残留する焼却灰を一度に漏れなく掻き集めることができる。
【0011】
さらに、灰出位置に掻き集められた焼却灰は、一対のスクレーパの間に存置されて、プレートにより灰出口に押し出されて炉外に排出される。このとき、灰出位置に掻き集められた焼却灰は、スクレーパを両側のガイド壁として灰出口側へと押し出されるため、離散することがなく順次灰出口から排出することができる。
【0012】
このように、本発明の灰出装置によれば、大きさの限られた導入口から焼却炉内に導入されて、焼却炉内に残留した焼却灰を効率的かつ確実に掻き集めて炉外に排出することができる。
【0013】
また、本発明の灰出装置において、前記装置本体は、固定フレームと、該固定フレームに入れ子式に配置されて該固定フレームに対して進退自在に設けられ、前記焼却炉内に導入可能な可動フレームと、該固定フレームと該可動フレームとを連結する第1油圧シリンダとを備え、前記スクレーパ部及び押出部が前記可動フレームに設けられていることを特徴とする。
【0014】
かかる本発明の灰出装置によれば、可動フレームが第1油圧シリンダにより固定フレームに対して進退する。そのため、焼却炉の導入口から装置本体をすべて炉内に導入することなく、スクレーパ部及び押出部が設けられた可動フレームを前進させて炉内へと導入すればよい。これにより、装置本体を全体として移動させる必要がなくなり、灰出装置の構成を簡素化することができる。
【0015】
さらに、本発明の灰出装置において、前記スクレーパ部は、第2油圧シリンダと、前記装置本体と共に前記導入口から前記焼却炉内に導入され、該第2油圧シリンダに連結されて該第2油圧シリンダの伸縮運動を回転動作に変換するリンク機構とを備えて、前記リンク機構によって変換された回転動作によって、前記一対のスクレーパを前記収納位置と前記灰出位置との間で回動させることを特徴とする。
【0016】
かかる本発明の灰出装置によれば、スクレーパを駆動させるためのリンク機構が装置本体と共に焼却炉内に導入可能となっており、第2油圧シリンダの伸縮運動をリンク機構を介して回転運動に変換することにより、一対のスクレーパが焼却炉内で回動自在に構成される。スクレーパの駆動力として油圧シリンダを用い、その駆動力を回転動作に変えて伝達する手段としてリンク機構を用いることで、スクレーパを回動する構成を簡易に実現することができる。特に、焼却炉内は絶えず焼却灰が飛散する環境下であり、時には、炉底に大型の残留物が存在してスクレーパ部に大きな負荷が掛かるが、スクレーパ部を油圧シリンダとリンク機構とで構成することにより、炉内の過酷な環境でもスクレーパを確実かつ堅固に動作させることができる。
【0017】
また、本発明の灰出装置において、前記リンク機構は、前記第2油圧シリンダに連結されて前記装置本体の軸方向に進退自在に設けられ、該軸方向と垂直方向に延びる可動部材と、該装置本体の前方側の位置に該可動部材と平行に固定された固定部材と、一端側で前記可動部材の端部に回転自在に連結されると共に、前記スクレーパが連結されて該スクレーパと一体を成す一対の第1リンクアームと、一端側で該第1リンクアームの他端側に回転自在に連結されると共に、他端側で前記固定部材の端部に回転自在に連結される一対の第2リンクアームとを備え、前記一対の第1リンクアームは、前記第2リンクアームに対して短尺であって、前記可動部材が前進して固定部材に接近するに従って、該第2リンクアームとの連結部が前記装置本体側に折り曲げられることにより、回動することを特徴とする。
【0018】
かかる本発明の灰出装置によれば、可動部材と固定部材とが第1及び第2リンクアームによって回転自在に連結される。そして、第1及び第2リンクアームが互いに回転自在に連結される。そのため、固定部材に対して可動部材を接近させると第1及び第2リンクアームは連結部で折れ曲がり、その挟角が小さくなるように変位する。このとき、第2アームリンクに対して短尺の第1リンクアームは前記挟角が約0°となるまで回動する。このようにして、約180°に亘って回動する第1リンクアームとスクレーパを一体化することで、スクレーパを約180°に亘って回動させることができる。また、第1及び第2リンクアームが装置本体側に折れ曲がるようにすることで、第1リンクアームの回転方向を、これに一体化されたスクレーパが装置本体の後方から前方まで回動するようにさせることができる。
【0019】
さらに、本発明の灰出装置において、前記押出部は、前記プレートに連結される第3油圧シリンダを備えることを特徴とする。第3油圧シリンダによりプレートを進退させる構成とすることで、灰出位置で一対のスクレーパの間に掻き集められた焼却灰を灰出口へ押し出して排出する構成を簡易に実現することができるとともに、炉内の過酷な環境でも確実に動作させることができる堅固な押出部を構成することができる。
【0020】
また、本発明の灰出装置において、前記装置本体は、該装置本体の高さ位置を可変とする昇降手段を備えることを特徴とする。これにより、導入口及び灰出口の高さ位置が異なる種々の焼却炉に灰出装置を用いることができる。また、装置本体を導入口から炉内に導入した際に装置本体と導入口の上面との間に間隙を有するようにすることで、灰出位置まで回動したスクレーパを装置本体の後方に後退させる際に、装置本体の高さ位置を上昇させてスクレーパを炉底から浮き上がらせることができる。これにより、スクレーパを装置本体の後方に後退させた際に、焼却灰が導入口側に引き戻されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の灰出装置の全体的構成を示す斜視図であり、図2は図1の平面図である。本実施形態の灰出装置1は、焼却炉の炉底に残留した焼却灰を炉壁に開けられた灰出口から炉外に排出する装置であって、図1及び図2に示すように、灰出口と対向する位置に設けられた導入口から炉内に導入される柱状の装置本体2と、装置本体2の側面に沿うように収納されて炉内に導入され、炉内で回動する一対のスクレーパ3を駆動するスクレーパ部4と、装置本体2の前方に設けられて炉内に導入され、装置本体2の軸方向に進退する平板状のプレート5を駆動する押出部6とを備える。
【0022】
装置本体2は、移動自在の台車7上にテーブルリフト8を介して固定されており、台車7を移動させることにより装置全体が移動可能となっている。また、テーブルリフト8は、図示しない油圧シリンダにより装置本体2を上下方向に昇降自在に支持する。台車7には、当該油圧シリンダや、後述の第1〜第3油圧シリンダ21,41,61に付加される作動油圧を制御ためにバルブや加圧減圧用のポンプ等を備える油圧ユニット9と、油圧ユニット9を介して各油圧シリンダを駆動する操作ユニット10とが設けられている。
【0023】
図3に図2のIII−III線断面図で示すように、装置本体2は、一対の第1油圧シリンダ21と、樋状の固定フレーム22と、固定フレーム22に挿通可能な可動フレーム23とを備える。鋼鉄製の固定フレーム22と可動フレーム23とは、可動フレーム23が固定フレームに入れ子式に配置されて固定フレーム22に対して進退自在に設けられている。また、第1油圧シリンダ21は、固定フレーム22の上部にこれに平行に配置されて、その一端24が固定フレーム22に連結されると共に、他端25が可動フレーム23に連結されている。これにより、一対の第1油圧シリンダ21を同期させて伸縮させることにより、可動フレーム23が固定フレーム22に対して進退する。
【0024】
尚、固定フレーム22と可動フレーム23とは、図4に図1の右側面図で示すように、可動フレーム23の両側面に設けられた一対の車輪26が固定フレーム22の底面を転動する。また、固定フレーム22の内側面に設けられた一対の車輪27が可動フレーム23を窪ませて形成された側部に位置して転動自在になっている。これらの車輪26,27により、鋼鉄製の可動フレーム23が固定フレーム22に対して、摩擦抵抗を少なくしてスムーズに進退できるようになっている。
【0025】
図5に図2のV−V線断面図で示すように、一対のスクレーパ3を駆動するスクレーパ部4は、可動フレーム23の上部に固定された第2油圧シリンダ41と、第2油圧シリンダ41に連結されて、この伸縮運動を回転動作に変換するリンク機構42とを備える。また、押出部6は、プレート5に連結される第3油圧シリンダ61を備える。第3油圧シリンダ61は、可動フレーム23の内部に設けられおり、第3油圧シリンダ61を駆動させることによりプレート5を進退させることができる。
【0026】
リンク機構42は、第2油圧シリンダ41に連結されて可動フレーム23に対してその軸方向に進退自在に設けられ、該軸方向と垂直方向に延びる可動部材43(図2参照)と、可動フレーム23の先端位置に可動部材43と平行に固定された固定部材44と、一端側で可動部材43の端部に回転自在に連結される一対の第1リンクアーム45と、一端側で第1リンクアーム45の他端側に回転自在に連結されると共に、他端側で固定部材44の端部に回転自在に連結される一対の第2リンクアーム46とを備える。第1リンクアーム45は、第2リンクアーム46に対して短尺であって、スクレーパ3が溶接により連結されており、スクレーパ3と一体を成すように構成される。
【0027】
可動部材43は、可動フレーム23の上面及び両側部に当接して摺動する門型の部材であって、内側面に設けられた一対の車輪47が、可動フレーム23を窪ませて形成された側部に位置して転動自在になっている。これにより、可動部材43が可動フレーム23に対して、摩擦抵抗を少なくしてスムーズに進退できるようになっている。
【0028】
また、固定部材44の端部幅に対して、可動部材43の端部幅が大きくなっており、第1及び第2リンクアーム45,46が内側(可動フレーム23側)に折れ曲がった状態となっている。さらに、可動部材43は、第1及び第2リンクアーム45,46が内側に折れ曲がった状態が維持される範囲で進退するように構成され、第1及び第2リンクアーム45,46が伸び切って直線状となることや、第1及び第2リンクアーム45,46が外側に折れ曲がった状態となることはない。
【0029】
さらに、第1及び第2リンクアーム45,46は、可動部材43及び固定部材44の上部位置でそれぞれ回転自在に連結されており、可動部材43が可動フレーム23に対して進退した際に、連結部分以外で第1及び第2リンクアーム45,46と接触することもない。
【0030】
かかる構成により、図6に示すように、第2油圧シリンダ41を駆動させて可動部材43を固定部材44に対して接近させると、第1及び第2リンクアーム45,46は連結部で内側に折れ曲がり、その挟角が小さくなるように変位する。
【0031】
具体的には、図6(a)に示すように、固定部材44に対して可動部材43が最も離反した初期状態において、第2リンクアーム46が可動部材43の進退方向と平行になり、第1及び第2リンクアーム45,46の連結部が内側(可動フレーム23側)に若干折れ曲がっている。
【0032】
この状態から、第2油圧シリンダ41を介して可動部材43を固定部材44側に前進させると、図6(b)に示すように、第1及び第2リンクアーム45,46は、連結部でさらに内側に折れ曲がり、その間の挟角αが小さくなるように変位する。このとき、第2リンクアーム46に対して短尺の第1リンクアーム45は、第2リンクアームとの連結部を中心に回転し、第1リンクアーム45に連結されたスクレーパ3が可動フレーム23の後方側から炉内を扇状に回動する。
【0033】
さらに、可動部材43を固定部材44側に接近させると、挟角αはさらに小さくなり、図6(c)に示すように、可動部材43が第1リンクアーム45を追い越す。この状態で、回転する第1リンクアーム45に連結された一対のスクレーパ3が炉内をほぼ反転する。
【0034】
この状態からさらに、可動部材43を固定部材44側に接近させることで、挟角αはさらに小さくなり、図6(d)に示すように、平面視で可動部材43が第2リンクアーム46の位置まで達し、回転する第1リンクアーム45に連結されたスクレーパ3は可動フレーム23の前方側まで回動する。
【0035】
そして、図6(e)に示すように、固定部材44に対して可動部材43が最も接近した状態において、第1及び第2リンクアーム45,46との間の挟角αは、ほぼ0°となる。このとき、一対のスクレーパ3は、可動フレーム23の前方で互いに平行となり、前記初期状態から約180°に亘って回動した位置に達する。
【0036】
このように、第2油圧シリンダにより可動部材43を固定部材44に対して離接自在に構成し、これらの部材の間を長さのことなる第1及び第2リンクアーム45,46により回転自在に連結することで、短尺の第1リンクアーム45を回転させることができ、第1リンクアーム45の回転によりスクレーパ3を炉内で回動させることができる。かかる第2油圧シリンダ41とリンク機構42とを用いた単純な構成とすることで、焼却灰が飛散し、時には大型の残留物が存在する炉内の環境下においても、スクレーパ3を確実かつ堅固に炉内で繰り返し動作させることができる。
【0037】
次に、本実施形態の灰出装置1の使用方法について、焼却炉を上方から見た図7に示す平面図を参照して説明する。本実施形態の灰出装置1は、焼却炉Xの炉底に隣接する炉壁に開けられた導入口Yから炉内に導入されて、炉底に残留した焼却灰Zを導入口Yと対向する位置に設けれられた灰出口Wから炉外に排出する装置である。
【0038】
図7(a)に示すように、灰出装置1では、焼却炉Xにおける焼却物の燃焼又は乾溜が終了すると、まず、防塵服および防塵マスク等を着用した作業者が、装置本体2の中心軸と、導入口Yと灰出口Wを結ぶ直線とが一致するように台車7を移動する。さらに、テーブルリフトを介して装置本体2の高さ位置を調整して、導入口Yに対面する位置に装置本体2の先端を配置する。
【0039】
この状態で、図7(b)に示すように、作業者は、導入口Yを開放し、装置本体2の可動フレーム23を炉内に導入する。可動フレーム23の炉内への導入は、作業者が操作ユニット10の操作レバー11を操作することで、油圧ユニット9を介して所定の作動油圧が一対の第1油圧シリンダ21に付加され、固定フレーム22に対して可動フレーム23が前進する。可動フレームは一対の油圧シリンダ21により炉底に残留した焼却灰Zを押し退けて、先端が炉内の中心となる位置まで導入される。このとき、可動フレーム23に連結されたスクレーパ3は、装置本体2の側面に沿うように収容されており、スクレーパ3を駆動するリンク機構42やプレート5もそれぞれ可動フレーム23と共に炉内に導入可能に構成されているため、これらの部材が可動フレーム23と共に大きさの限られた導入口Yから炉内に導入される。
【0040】
可動フレーム23が炉内に導入されると、図7(c)に示すように、作業者は、操作ユニット10の操作レバー11を操作することで第2油圧シリンダ41を駆動させ、一対のスクレーパ3を可動フレーム23の後方から前方に向かって回動させて、炉底に残留した焼却灰Zを掻き集める。掻き集められた焼却灰Zは、灰出口Wに対面する灰出位置に集められる。特に、図7に示すように炉底が円形の場合には、スクレーパ3の回転半径を炉底の半径と同等にすることで、炉底全体に残留する焼却灰Zを一度に漏れなく掻き集めることができる。
【0041】
また、可動フレーム23を導入口Yから炉内に導入した際に可動フレーム23と導入口Yの上面との間に間隙を有するようにすることで、灰出位置まで回動したスクレーパ3を後方に後退させる際に、装置本体2の高さ位置をテーブルリフト8により上昇させ、スクレーパ3を炉底から浮き上がらせることができる。これにより、一度に焼却灰Zを掻き切れない場合に、スクレーパ3を後退させても、焼却灰Zが導入口Y側に引き戻されることもない。
【0042】
灰出位置に焼却灰Zが掻き集められると、作業者は、灰出口Wを開放する。そして、図7(d)に示すように、操作ユニット10の操作レバー11を操作することで第3油圧シリンダ61を駆動させ、プレート5を可動フレーム23の前方に向かって押し出して、掻き集められた焼却灰Zを灰出口Wから炉外に排出する。このとき、一対のスクレーパ3の間に焼却灰Zを存置させることで、スクレーパ3を両側のガイド壁として、焼却灰Zは離散することがなく順次灰出口から排出される。
【0043】
このように、本実施形態の灰出装置1によれば、大きさの限られた導入口Yから焼却炉X内に導入されて、焼却炉X内に残留した焼却灰Zを効率的かつ確実に掻き集めて炉外に排出することができる。
【0044】
尚、本実施形態では、テーブルリフト8により装置本体2を昇降する昇降手段を構成したが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、固定フレーム22の一端側が台車7に設けられた台座81に揺動自在に軸支させると共に、他端側に油圧シリンダ82を設けるようにしてもよい。この場合、油圧シリンダ82を伸縮させることにより、装置本体2は一端側を支点と他端側が昇降自在に構成され、灰出位置まで回動したスクレーパ3を後方に後退させる際に、スクレーパ3を炉底から浮き上がらせる構成を簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態の灰出装置の全体的構成を示す斜視図。
【図2】図1の灰出装置の平面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】図1の灰出装置の右側面図。
【図5】図2のV−V線断面図。
【図6】リンク機構の作動を示す図。
【図7】本実施形態の灰出装置の使用方法を示す説明図。
【図8】昇降手段の他の形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0046】
1…灰出装置、2…装置本体、3…スクレーパ、4…スクレーパ部、5…プレート、6…押出部、7…台車、8…テーブルリフト、9…油圧ユニット、10…操作ユニット、11…操作レバー、21…第1油圧シリンダ、22…固定フレーム、23…可動フレーム、26,27…車輪、41…第2油圧シリンダ、42…リンク機構、43…可動部材、44…固定部材、45…第1リンクアーム、46…第2リンクアーム、47…車輪、61…第3油圧シリンダ、81…台座、82…油圧シリンダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉の炉底に残留した焼却灰を炉壁に開けられた灰出口から炉外に排出する灰出装置であって、
前記灰出口と対向する位置に設けられた導入口から前記焼却炉内に導入される柱状の装置本体と、
前記装置本体の側面に沿うように収納され該収納位置で該装置本体と共に前記導入口から前記焼却炉内に導入され、該装置本体の後方から前方に向かって回動可能に該装置本体に軸支された一対のスクレーパを有して、該一対のスクレーパを前記炉底で回動させることにより、前記焼却灰を前記灰出口に対面する灰出位置に掻き集めるスクレーパ部と、
前記装置本体の前方に設けられて該装置本体と共に前記導入口から前記焼却炉内に導入され、該装置本体の軸方向に進退する平板状のプレートを有して、該プレートを前進させることにより、前記灰出位置で前記一対のスクレーパの間に掻き集められた前記焼却灰を前記灰出口へと押し出す押出部と
を備えることを特徴とする灰出装置。
【請求項2】
請求項1記載の灰出装置において、
前記装置本体は、固定フレームと、該固定フレームに入れ子式に配置されて該固定フレームに対して進退自在に設けられ、前記焼却炉内に導入可能な可動フレームと、該固定フレームと該可動フレームとを連結する第1油圧シリンダとを備え、
前記スクレーパ部及び押出部が前記可動フレームに設けられていることを特徴とする灰出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の灰出装置において、
前記スクレーパ部は、第2油圧シリンダと、前記装置本体と共に前記導入口から前記焼却炉内に導入され、該第2油圧シリンダに連結されて該第2油圧シリンダの伸縮運動を回転動作に変換するリンク機構とを備えて、
前記リンク機構によって変換された回転動作によって、前記一対のスクレーパを前記収納位置と前記灰出位置との間で回動させることを特徴とする灰出装置。
【請求項4】
請求項3記載の灰出装置において、
前記リンク機構は、前記第2油圧シリンダに連結されて前記装置本体の軸方向に進退自在に設けられ、該軸方向と垂直方向に延びる可動部材と、該装置本体の前方側の位置に該可動部材と平行に固定された固定部材と、一端側で前記可動部材の端部に回転自在に連結されると共に、前記スクレーパが連結されて該スクレーパと一体を成す一対の第1リンクアームと、一端側で該第1リンクアームの他端側に回転自在に連結されると共に、他端側で前記固定部材の端部に回転自在に連結される一対の第2リンクアームとを備え、
前記一対の第1リンクアームは、前記第2リンクアームに対して短尺であって、前記可動部材が前進して固定部材に接近するに従って、該第2リンクアームとの連結部が前記装置本体側に折り曲げられることにより、回動することを特徴とする灰出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の灰出装置において、
前記押出部は、前記プレートに連結される第3油圧シリンダを備えることを特徴とする灰出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の灰出装置において、
前記装置本体は、該装置本体の高さ位置を可変とする昇降手段を備えることを特徴とする灰出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate