説明

灰汁取りシート

【課題】 灰汁と油脂のいずれの吸着性能も高く、さらに調理時の操作性も高い灰汁取りシート等を提供する。
【解決手段】 短繊維が互いに接着して三次元構造をなした灰汁取りシートであって、互いに積層された少なくとも二層からなり、前記二層のうちの一層(A)は、前記短繊維が細くて密な層であり、他の一層(B)は、前記短繊維が太くて疎な層であることを特徴とする灰汁取りシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に煮物の調理に落とし蓋として用いることができる灰汁取りシートに関する。特に、灰汁と油脂の両方の吸着性能に優れ、調理の際の操作性にも優れた灰汁取りシート等に関する。
【背景技術】
【0002】
主に煮物の調理の際に落とし蓋代わりに用い、煮物から発生する灰汁と油脂とを効果的に除去するための灰汁取りシートが用いられている。灰汁取りシートは、煮物鍋の上部開口面積よりも小さい面積で、調理時に発生する灰汁や油脂を十分吸着除去できる吸着性能を有することが求められる。
【0003】
また、灰汁取りシートには、煮物の表面の凹凸に従って変形し、煮物と灰汁取りシートの間にすきまが生じないようにするための柔軟性が必要とされる。一方で、灰汁取りシートが柔らかすぎると、料理表面に灰汁取りシートを敷く際や、調味料の添加や煮物の様子見のためにシート端部をめくる際に、灰汁取りシートの端部どうしがくっついて折り重なりが生じたり、皺が生じたり、あげくは全体に丸まってしまったりする操作性の問題点も指摘されている。そのため、一定範囲の柔軟性と剛性とを有して、調理時の操作性が良いことも求められている。
【0004】
灰汁取りシートとしては、調理の安全衛生上の観点からも、一般に繊維を不織布に加工したものが用いられているが、上記の吸着性能の改善と、操作性の問題点とを解決するために、各種の工夫がなされた灰汁取りシートが開示されている。例えば、繊度が2〜30デニールと比較的太く、かつ繊維長が2〜10mmと比較的短いポリオレフィン系合成繊維を用いて、エアレイド法により製造された不織布であって、目付が25〜100g/cm2、厚さが0.5〜2mmで、灰汁補足量が50g/m2以上である調理用シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、灰汁の吸着性能は良いものの逆に油脂の吸着性能は不十分であり、調理時の操作性も必ずしも満足のいくものではなかった。
【0005】
また、合成樹脂繊維からなるスパンボンド層と、同じく合成樹脂の短繊維からなるカーディングウェブ層とを積層し、両層を構成する繊維どうしをウォータージェット処理により交絡させて貼り合わせた調理用灰汁取りシートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、操作性は改善されてはいるものの未だ不十分である上、灰汁と油脂の吸着性能も不十分であった。
【0006】
また、親水性繊維からなる層と、親油性繊維からなる層とが積層された2層以上からなる積層シートの調理用灰汁取りシートも開示されている。しかし、灰汁は、必ずしも親水性には限らないため灰汁の吸着性能が不十分であった。また、操作性は改善されてはいるものの未だ不十分であった。
【特許文献1】特開2004−89611号公報
【特許文献2】特開平11−276361号公報
【特許文献3】特開平10−286186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、灰汁と油脂のいずれの吸着性能も高く、さらに調理時の操作性も高い灰汁取りシート等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の第1は、短繊維が互いに接着して三次元構造をなした灰汁取りシートであって、互いに積層された少なくとも二層からなり、前記二層のうちの一層(A)は、前記短繊維が細くて密な層であり、他の一層(B)は、前記短繊維が太くて疎な層であることを特徴とする灰汁取りシートである。
【0009】
発明の第2は、短繊維が互いに接着して三次元構造をなした灰汁取りシートであって、互いに積層された少なくとも二層からなり、前記一層(A)における前記短繊維の繊度と前記他の一層(B)における前記短繊維の繊度との比が1:2〜1:15であり、かつ前記一層(A)の目付と前記他の一層(B)の目付との比が3:1〜4:6であることを特徴とする灰汁取りシートである。
【0010】
ここで、前記一層(A)における前記短繊維の繊度が1dt〜10dtで、前記他の一層(B)における前記短繊維の繊度が4dt〜30dtであることは好ましい。また、前記一層(A)の目付が12〜53g/m2であり、前記他の一層(B)の目付が12〜35g/m2であることは好ましい。
【0011】
発明の第3は、前記一層(A)を上にして料理上に被せることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の灰汁取りシートの使用方法である。
【発明の効果】
【0012】
引張り強度の割には曲げ剛性が高いという特性を有し、調理時の操作性が高い。また、煮汁の吸収量が少なく、一方で灰汁と油脂のいずれの吸着性能も高いという優れた特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例について具体的に説明する。本発明の灰汁取りシートは、短繊維どうしの接触点が、互いに接着されて構成された三次元の構造体をなしている。ここに言う三次元の構造体とは、短繊維どうしが立体的にランダムに積み重なって、短繊維どうしの接触点が接着されることで互いに固定された構造を言う。短繊維どうしの接着は、短繊維の表面に存在する熱接着性樹脂部分どうしの熱接着、または接着剤により行われる。これにより、空隙が多いにも係わらず、しっかりとした三次元の構造体を形作ることができる。この空隙が、調理の際に発生する灰汁や油脂を絡み取る機能を果たす。
【0014】
熱接着性樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられ、特に限定されるものではない。取り扱いの容易さの点からポリエチレンを用いるのが好ましい。また、接着剤としては酢酸ビニル系、アクリル樹脂系接着剤を用いるのが好ましい。
【0015】
短繊維は、三次元の構造体を構成する基本単位であり、繊維長は2〜10mm程度とするのが好ましい。この範囲で、灰汁取りシートの製造が比較的容易であると共に、灰汁取りシートとした場合に、灰汁や油脂を的確に絡み取れる好ましい密度と形態とを有する三次元構造体を構成することが可能になる。繊維長は、より好ましくは3〜7mmである。
【0016】
熱接着性樹脂表面を有する短繊維を使用する場合は、全体が一種類の熱接着性樹脂から成っていても良いが、灰汁取りシートに必要な三次元構造をしっかりと構成するため、及び灰汁取りシートの製造を容易にするためには、熱接着性樹脂と、その熱接着性樹脂よりも融点が高い樹脂とを組み合わせた構造とするのが好ましい。熱接着性樹脂と組み合わせる樹脂としては、熱接着性樹脂としてポリエチレンを用いた場合には、ポリプロピレンやポリエステル等が挙げられ、熱接着性樹脂としてポリプロピレンを用いた場合には、ポリエステル等が挙げられる。
【0017】
樹脂を組み合わせる構造としては、熱接着性樹脂が短繊維の表面に来るものであれば良く特に制限されないが、例えば、熱接着性樹脂が鞘となり、高融点樹脂が芯となる芯鞘構造、熱接着性樹脂と高融点樹脂とが短繊維の長さ方向に沿って張り合わされたサイドバイサイド構造、熱接着性樹脂の単糸と高融点樹脂の単糸とが撚り合わされた撚糸構造等のいずれでも良い。好ましくは、短繊維の表面のいずれの点でも熱接着が可能となる芯鞘構造とするのがよい。
【0018】
灰汁取りシートは、このような短繊維から構成される三次元構造体の少なくとも二層が互いに積層されて構成されている。二層のうちの一層(A)は、短繊維として比較的に細いものが用いられ、しかも短繊維が比較的に緻密になるようにして構成されている。このように構成することで、この一層(A)は、調理の際に発生する油脂を吸着除去する機能が高くなる。また、他の一層(B)は、短繊維として比較的に太いものが用いられ、しかも短繊維が比較的に疎になるようにして構成されている。このように構成することで、他の一層(B)は、調理の際に発生する灰汁を吸着除去する機能が高くなる。このように、二層がそれぞれ異なる吸着特性を有することで、灰汁と油脂の両方を好適に吸着除去できるようになる。なお、疎密は単位体積あたりに含まれる短繊維本数で判断すればよい。
【0019】
なお、一層(A)に用いられる短繊維としては、比較的細い繊維に対し、より剛性を付与する観点から、芯にポリエステルを用い、鞘にポリエチレンを用いた芯鞘構造の短繊維とするのが好ましい。また、他の一層(B)に用いられる短繊維としては、比較的太い繊維に対し、より柔軟性を持たせる観点から、芯にポリプロピレンを用い、鞘にポリエチレンを用いた芯鞘構造の短繊維とするのが好ましい。
【0020】
一層(A)を構成する短繊維の繊度と他の一層(B)を構成する短繊維の繊度との比は、1:2〜1:15の範囲とするのが好ましい。このように一層(A)を比較的に細い短繊維で構成し、他の一層(B)を比較的に太い短繊維で構成することで、油脂及び灰汁の吸着特性により優れる灰汁取りシートを得ることが可能になる。繊度の比は、より好ましくは1:3〜1:12であり、さらに好ましくは1:4〜1:10である。
【0021】
具体的には、一層(A)を構成する短繊維の繊度は、1dt〜10dtとするのが好ましい。この範囲で油脂の吸着性能に優れる灰汁取りシートが得られる。より好ましくは、2dt〜8dtである。また、他の一層(B)を構成する短繊維の繊度は、4dt〜30dtとするのが好ましい。この範囲で灰汁の吸着性能に優れる灰汁取りシートが得られる。より好ましくは9dt〜25dtであり、さらに好ましくは10dt〜20dtである。
【0022】
また、一層(A)の目付と前記他の一層(B)の目付との比が3:1〜4:6とするのが好ましい。この範囲で、細い短繊維を用いた一層(A)が比較的により緻密な層となり、太い短繊維を用いた他の一層(B)が比較的により疎な層となり、一層(A)と他の一層(B)との、油脂と灰汁の吸着性能及びそれらのバランスが優れる結果となる。目付の比は、より好ましくは5:2〜5:5であり、さらに好ましくは5:3〜5:5である。
【0023】
具体的には、一層(A)の目付は、12g/m2〜53g/m2とするのが好ましい。この範囲で油脂の吸着性能が優れた灰汁取りシートが得られる。より好ましくは14g/m2〜40g/m2であり、さらに好ましくは15g/m2〜30g/m2である。また、他の一層(B)の目付は、12g/m2〜35g/m2とするのが好ましい。この範囲で灰汁の吸着性能が優れた灰汁取りシートが得られる。より好ましくは15g/m2〜32g/m2であり、さらに好ましくは18g/m2〜28g/m2である。
【0024】
一層(A)と他の一層(B)のそれぞれの厚みは、目付けと製造条件から決まる自然な厚みであれば良く、特に限定されない。一層(A)と他の一層(B)とを合わせた灰汁取りシート全体の厚みは、0.5mm〜2mm程度であるのが好ましい。この範囲で灰汁取りシートの柔軟性と剛度のバランスが優れ、さらに灰汁と脂の吸収量も十分となる。より好ましくは0.7mm〜1.7mmである。
【0025】
ところで、上記の灰汁取りシートは、その引張り強度の割りには、曲げ剛性が高い。通常、シート状物の引張り強度と曲げ剛性とは互いに相関するはずであるが、上記の灰汁取りシートは、従来の灰汁取りシートと比較した場合に、引張り強度の割りには曲げ剛性が高いという予想外の特性を有し、煮物調理の際に灰汁,油の浮遊する液面へのフィット性がよいが、折れ曲がりにくく、撚れにくいので操作性が良いという意外な特性を有する。このような特性を有する理由は不明であるが、一層(A)と他の層(B)との境界部分において、一層(A)を構成する細めの短繊維と他の層(B)を構成する太めの短繊維とが混じり合い、相互に接着されることで、細めの短繊維が太めの短繊維に対してあたかも筋交いのような機能を果たし、このために曲げ剛度が高くなるのではないかと推測している。但しここで言う曲げ剛度は、比較的小さい力によるわずかな変形に対する抵抗力と考えることができる。一方で、引張り強度は短繊維の引張り強度や接合強さに直接関わる比較的大きい力によるシートの大変形に関する特性である。
【0026】
次に、このような灰汁取りシートの好ましい製造方法について説明する。製造方法としては、いわゆるエアレイド法を用いるのがよい。まず、他の一層(B)の原料となる短繊維を空気流で均一に分散しながら搬送して、これをフォーミングヘッドから金属製またはプラスチックス製のネット上に吐出する。ネットには、空気は通るが短繊維は通りにくい孔が多数空いている。ネットの下から空気を引きながら、ネット上に目的とする目付けの短繊維を堆積する。空気流の風量と速度を調整することで、堆積層の厚みを適宜調整することができる。目的の目付けがネット上に堆積したら短繊維の吐出を停止する。
【0027】
続いて、他のフォーミングヘッドから一層(A)の原料となる短繊維を、同様に空気流で均一に分散しながら搬送して吐出し、ネットの下から空気を引きながら、他の一層(B)となる堆積層の上に一層(A)となる層を堆積していく。目的とする目付けの短繊維が堆積したら吐出を停止し、続いてそのままの形態で加熱処理を行って、短繊維の熱接着性樹脂を融解せしめて短繊維どうしを熱接着する。あるいは接着剤のスプレー噴霧処理と加熱乾燥で短繊維間を固着する。これで、三次元の構造体である灰汁取りシートが得られる。他の層を挟む場合も同様にすればよい。なお、灰汁取りシートの製造方法は、同様な構造のものができる限り、エアレイド法に限定されるものではない。また、灰汁取りシートをあらかじめ定めた形状に加工する場合は、いわゆるトムソン刃等を用いて、長尺物から一定形状の灰汁取りシートを打ち抜くようにすればよい。
【0028】
灰汁取りシートの形状は、使用時に任意形状に切断して使用できるように長尺のシート状としても良いし、あらかじめ用いる鍋の形状やサイズに合わせた形状としても良い。例えば、調理鍋の開口形状に合わせて円形とするのが好ましい。また、調理中の蒸気抜きのための孔や切り込みを設けるのも好ましい。例えば、円形の灰汁取りシートの中央部分に十文字の切り込みを入れたり、互いに平行な複数の切り込みを設けたり、中央や周辺部に小さな孔を1または2以上も受けるようにしても良い。好ましいのは、中央部分に十文字の切り込みを入れることである。
【0029】
このような灰汁取りシートには表裏が存在するが、調理への使用にあたっては、いずれの面を上にしてもよく、いずれでもそれなりの吸着除去性能を発揮できる。好ましくは、短繊維が細くて密な一層(A)を上に、短繊維が太くて疎な他の一層(B)が下になって料理に直接触れるようにして、料理上に灰汁取りシートを直接敷いて使用するのがよい。このようにすることで、煮汁の吸収がより少なくなり、一方で灰汁と脂の吸着除去性能には優れるようになる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例の具体的態様に限定されるものではない。まず、各種物性の評価方法について説明する。
(1)シート厚み
【0031】
JIS L1913 6.1 A法に示される通り、2枚の円形水平板に資料を挟み
0.5kPaの圧力を10秒間かけてダイヤルゲージで厚みを測定した。
(2)シートの引張り強度:S
【0032】
JIS P8113に示される通り、幅w=15mm、長さ180mmの短冊状試験片を作成し、引張り速度20mm/分で引張り試験を行い破断までの最大荷重F(kN)を測定し、下記式(a)から単位長さ幅あたりの強度として計算した。
S=(F/w)×1000 ・・・・(a)
(3)シートの曲げ剛度
【0033】
「JIS L1906 E法(ハンドルオメーター法)に従って測定した。試験片サイズを60mm角とし、試料台上で試験片を二線支持する支持線間隔(クリアランス幅)が20mmとなるように設定して、試験片の中央部がブレードで押圧されるようにに試験片を置き、ハンドルオメーターのブレードが8mm押下した時の荷重を測定して曲げ剛度を評価した。
(4)脂取り模擬試験
【0034】
ラード10gを計量し、直径20cmで深さ8.5cmの鍋に投入する。これに室温の水500mlを加え、中火で6分間加熱する。加熱途中で泡立て器を用いてよくかき混ぜる。次に、あらかじめ重量(W0)を測定しておいた直径20cmの灰汁取りシートを被せ、さらに1分間加熱する。1分間経過後、火を消してシートを四つ折りにして取り出す。さらに105℃に設定した熱風乾燥機に、取り出したシートを入れて12時間乾燥し、その後再び秤量してシート重量(W1)を求める。これらと下記式(b)から、脂吸着除去率(%)を計算して脂取り性能を評価した。
脂吸着除去率=100×(W1−W0)/10 ・・・・(b)
(5)灰汁取り模擬試験
【0035】
卵白をよく解きほぐした物と穀物酢とを等量用意し、これらを混合してよくかき混ぜる。これを模擬灰汁として20gづつ2つ計り取り、一方は直径20cmの鍋に投入する。次いで室温の水500mlを加え、泡立て器でよく混合する。次いで、あらかじめ重量(W2)を測定しておいた直径20cmの灰汁取りシートを被せ、中火で8分間加熱して弱火に切り替え、さらに10分間加熱して加熱を停止する。直後に灰汁取りシートを四つ折りに畳んで取り出し、さらに105℃に設定した熱風乾燥機に、取り出したシートを入れて12時間乾燥し、その後再び秤量してシート重量(W3)を求める。一方、20g計り取った残りの一方も105℃に設定した熱風乾燥機に、入れて12時間乾燥し、その後再び秤量して模擬灰汁の乾燥重量(W4)を求める。これらと下記式(c)から、灰汁吸着除去率(%)を計算して灰汁取り性能を評価した。
灰汁吸着除去率=100×(W3−W2)/W4 ・・・・(c)
(6)実調理試験
【0036】
下記の材料を用い、料理として肉じゃがを下記のレシピに基づいて作成し、その際に発生する灰汁と脂の吸着除去性能、煮汁吸着量、操作性のそれぞれについて評価した。
<材料>
牛肉(一口大に切った物)・・・・・・・・・・150g
ジャガイモ(大きめの乱切りに切った物)・・・260g
人参(乱切りに切った物)・・・・・・・・・・110g
玉ねぎ(くし形切りに切った物)・・・・・・・140g
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3カップ
サラダ油・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ2/3
酒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ2
みりん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ1
砂糖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ2
醤油・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ3
<レシピ>
【0037】
直径20cmで深さが8.5cmの雪平鍋にサラダ油を熱し、牛肉を炒める。次いで、人参、玉ねぎを加えて炒め、全体に油が回ったら水を加え、あらかじめ秤量(重量W5)しておいた直径20cmの灰汁取りシートを料理の上に直接被せる。この状態で20分間煮る。野菜類が柔らかくなったところで、灰汁取りシートの一部を箸で摘んでめくり、砂糖、みりん、酒を加えて、再び灰汁取りシートを被せる。続いて8分間加熱したら、再び、灰汁取りシートの一部を箸で摘んでめくり、醤油を加えて鍋を揺らして混ぜてから灰汁取りシートを被せる。続いて8分間加熱したら加熱を止めて終了。
<評価>
(i)灰汁と脂の吸着除去量
【0038】
調理終了後の灰汁取りシートを四つ折りにして重量既知の容器に取り出す。これを計量して灰汁取りシートの重量(W6)を求める。さらに105℃に設定した熱風乾燥機に、取り出したシートを入れて12時間乾燥し、その後再び秤量してシート重量(W7)を求める。これらと下記式(d)から、脂と灰汁のシート1枚あたりの吸着除去量(g/枚)を計算して灰汁と脂の除去性能を評価した。
灰汁と脂の吸着除去量=W7−W5 ・・・・・・(d)
(ii)煮汁吸着量
【0039】
上記で得た測定値と下記式(e)とから、煮汁吸着量(g/枚)を求めた。
煮汁吸着量=W6−W7 ・・・・・・(e)
(iii)操作性
【0040】
煮込みに調味料を加える際の、灰汁取りシートの使い勝手、強度、よじれ難さ、箸での摘みやすさ、廃棄時の汁垂れ難さを、それぞれ以下の基準で評価した。
何ら問題なく良好に使用できた。・・・・・・・・・◎
やや問題があったが、使用に支障はなかった。・・・○
問題が発生し、使用にやや支障があった。・・・・・△
重大な問題が発生し、使用継続が困難であった。・・×
[実施例1]
【0041】
ポリプロピレン芯材の表面に熱接着性樹脂としてポリエチレンが被覆された芯鞘構造で太い径の短繊維B(繊維長5mm、繊度11dt、チッソ(株)製)を用い、これを空気流で均一に分散しながら搬送して、フォーミングヘッドから金属製で多孔性のネット上に吐出した。ネットの下から空気を引きながら、ネット上に目付けが18g/cm2となるまで短繊維Bを均一に堆積して他の一層(B)を形成した。続いて、ポリエチレンテレフタレート芯材に熱接着性樹脂としてポリエチレンが被覆された芯鞘構造で細い径の短繊維A(繊維長5mm、繊度2.2dt、帝人ファイバー(株)製)を用い、これを空気流で均一に分散しながら搬送して、他のフォーミングヘッドから先に堆積した短繊維B上に吐出した。やはりネットの下から空気を引きながら、目付けが20g/cm2となるまで短繊維Aを均一に堆積して一層(A)を形成した。
【0042】
続いて、堆積した状態のまま加熱炉に搬送し、135℃で2分間加熱して、短繊維の表面のポリエチレンを熱接着した。これで、細くて密な層と太くて疎な層とを有する灰汁取りシートが得られた。なお、灰汁取りシート全体の目付けは38g/m2、厚みは1.8mmであった。さらに、直径が20cmの円形刃と、その円形刃の中央に長さ4cmの直線状で十字形状の刃とからなるトムソン刃を用いて、先に得られた灰汁取りシートを切り抜き、円形の灰汁取りシートを得た。
【0043】
この灰汁取りシートを用いて、引張り強度と曲げ剛度を測定した。結果を表1に示す。引張り強度が小さい割には、曲げ剛度が大きい結果となった。また、脂取り模擬試験と灰汁取り模擬試験と実調理試験とを行って評価した。その際、灰汁取りシートの短繊維が細くて密な面が上で、短繊維が太くて疎な面を下にして料理に直接触れるようにした。評価結果を表1に示した。脂取り模擬試験、灰汁取り模擬試験、実調理試験における吸着性能及び、調理時の操作性のいずれも良好であった。
[実施例2]
【0044】
実施例1と同じ方法で得た灰汁取りシートを用いたが、脂取り模擬試験、灰汁取り模擬試験、実調理試験において灰汁取りシートを裏返しにして、つまり短繊維が太くて疎な面が上で、短繊維が細くて密な面を下にして料理に直接触れるようにして使用した以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
【0045】
短繊維Bを繊度8dtのものに、短繊維Aを繊度2dtのものに、他の一層(B)の目付けを12g/m2に、一層(A)の目付けを36g/m2に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして灰汁取りシートを得た。灰汁取りシート全体の目付は48g/m2で、厚みは1.9mmであった。これを用いて実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
【0046】
一層(A)の目付けを12g/m2に変更した以外は実施例3と同様にして灰汁取りシートを得た。灰汁取りシート全体の目付は24g/m2で、厚みは1.5mmであった。これを用いて実施例3と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
【0047】
短繊維Bを繊度30dtのものに、短繊維Aを繊度10dtのものに、他の一層(B)の目付けを12g/m2に、一層(A)の目付けを36g/m2に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして灰汁取りシートを得た。灰汁取りシート全体の目付は48g/m2で、厚みは1.9mmであった。これを用いて実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
【0048】
短繊維Bを繊度20dtのものに、短繊維Aを繊度5dtのものに、他の一層(B)の目付けを24g/m2に、一層(A)の目付けを24g/m2に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして灰汁取りシートを得た。灰汁取りシート全体の目付は48g/m2で、厚みは1.9mmであった。これを用いて実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
【0049】
ポリプロピレン短繊維(繊度2.2dt、繊維長51mm、チッソ(株)製)を用い、水流交絡による1層スパンレース不織布製造法を用いて、目付50g/m2で厚みが1.8mmのシートを得た。このシートを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。引張り強度が大きい割には、曲げ剛度が小さくて柔らかいシートであり、箸でシートを持ち上げにくく、持ち上げた状態ではシートが折れて重なってしまい、くっつきやすいなど、実調理時の操作性に劣っていた。また、脂や灰汁の吸着除去性能も不十分であった。
[比較例2]
【0050】
使用する短繊維を繊度2dtの1種類だけとし、形成する層を目付が41g/m2の一層だけとした以外は、実施例1と同様にして厚み1.6mmのシートを得た。このシートを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。脂取りと灰汁取りの模擬試験、及び実調理試験における灰汁と脂の吸着除去率が低く、また、煮汁の吸着量が比較的多い結果となった。また、引張り強度が大きいにもかかわらず曲げ剛度は低く、操作性はやや不足であった。
[比較例3]
【0051】
短繊維の繊度を10dtに、目付を50g/m2にした以外は、比較例2と同様にして厚み1.9mmのシートを得た。このシートを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。脂と灰汁の吸着除去性能が低い上、固すぎて取り扱いにくく、低い操作性を示す結果となった。
[比較例4]
【0052】
短繊維の繊度を30dtに変更した以外は比較例3と同様にして、厚み2.0mmのシートを得た。このシートを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。比較例3よりさらに低い結果となった。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維が互いに接着して三次元構造をなした灰汁取りシートであって、互いに積層された少なくとも二層からなり、前記二層のうちの一層(A)は、前記短繊維が細くて密な層であり、他の一層(B)は、前記短繊維が太くて疎な層であることを特徴とする灰汁取りシート。
【請求項2】
短繊維が互いに接着して三次元構造をなした灰汁取りシートであって、互いに積層された少なくとも二層からなり、前記一層(A)における前記短繊維の繊度と前記他の一層(B)における前記短繊維の繊度との比が1:2〜1:15であり、かつ前記一層(A)の目付と前記他の一層(B)の目付との比が3:1〜4:6であることを特徴とする灰汁取りシート。
【請求項3】
前記一層(A)における前記短繊維の繊度が1dt〜10dtで、前記他の一層(B)における前記短繊維の繊度が4dt〜30dtであることを特徴とする請求項1または2に記載の灰汁取りシート。
【請求項4】
前記一層(A)の目付が12〜53g/m2であり、前記他の一層(B)の目付が12〜35g/m2であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の灰汁取りシート。
【請求項5】
前記一層(A)を上にして料理上に被せることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の灰汁取りシートの使用方法。