説明

災害対応型液化ガス供給システム

【課題】 災害発生時に、避難場所の避難者に、速やかに、電力、温水、煮炊き用の燃料ガス等の供給を可能とする。
【解決手段】 均圧弁102が付設された、液化ガスを貯蔵するバルク貯槽ユニット100と、複数のヒューズガス栓203を備えたヘッダ管202を搭載し、このヘッダ管202と前記バルク貯槽ユニット100の大口ガス取出し口109を接続するヘッダガスホース204を備えた移動式の分岐ユニット200と、浄水器408および液化ガスを燃料とする発電機401が搭載された移動式の発電・浄水ユニット400と、液化ガスを燃料とする給湯器302を備えた移動式の給湯ユニット300と、液化ガスを燃料とするガスストーブ501を備えた移動式の暖房ユニット500と、を含んで構成される災害対応型液化ガス供給システムを、予定される避難場所に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給システムに係り、特に、災害発生時の避難所等における需要に緊急に対応するのに好適な災害対応型液化ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害時に、緊急に水、エネルギーを需要者に供給するシステムがいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、燃料電池等を用いたコージェネレーションシステムにおいて、災害時に、備蓄しておいたLPガス等の液化ガスを自動切換えにより供給して燃料電池等を継続して運転させ、その電力を、安全な水を供給できる災害用設備及び造水装置に提供する方法が示されている。また、特許文献2には、需要者それぞれに燃料用ガスを供給する導管の個別需要家用逆止弁と個別需要家用計量緊急遮断器の間に分岐配管を設け、この分岐配管に、燃料用ガスを吸蔵・離脱できるガス吸蔵容器を、圧力制御弁を介して接続する例が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−259613号公報(第3,4頁、図1)
【特許文献2】特開平10−299995号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】特開2000−291890号公報(第2,3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震等の災害時など、既設のガス導管網による燃料用ガスの供給が停止した場合や、ガス導管が設置されていない場所に緊急に燃料用ガスの供給が要請される場合は、ガス事業者等により、LPG(液化石油ガス、以下適宜液化ガスと称する。)の50kg容器を運び、仮設することで、煮炊きを行なうことは可能であった。しかし、給湯器を設置して給湯できるようになるまでにはしばらく時間がかかるため、緊急対策としても十分ではなかった。また、小規模な対応しかできず、一時凌ぎの対応に終わっていた。
【0005】
災害時対応としては、緊急時避難場所等に、被災者のための煮炊きを可能とするだけでは不十分で、温水、電力も併せて供給可能とするのが望ましいが、それらを供給するための緊急対応可能な設備は常備されていないのが実状である。
【0006】
特許文献1の技術は、既設のコージェネレーションシステムを使用して電力、水を供給するものであり、そのようなコージェネレーションシステムが設置されている地域に限定されるという限界があった。また、特許文献2の技術は、個別の需要家への燃料用ガスの供給を考慮したものであり、災害時に避難場所等、特定の箇所に集合した人々へ緊急に燃料ガスを供給するには、適していなかった。さらに、災害時には、燃料用ガスの供給だけでなく、温水の供給も要請されるが、温水の供給設備については考慮されていなかった。
【0007】
本発明の課題は、地震、台風などの災害発生時に、避難場所等に集合した被災者、避難者に、速やかに、電力、熱などのエネルギーや温水を供給できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の災害対応型液化ガス供給システムは、液化ガスを貯蔵した液化ガス容器と、該液化ガス容器の気相部に連通されたガス管路と、該ガス管路に接続された調整器と、該調整器の下流側に通常使用されるガス消費機器へのガス供給を行う配管が接続され、該配管に、災害時にガスを取り出すことのできる分岐配管が接続され、該分岐配管に遮断弁を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成の災害対応型液化ガス供給システムを設けておくことにより、災害で電力や都市ガス、水道などのいわゆるライフラインが遮断された場合でも、液化ガス容器に貯蔵・収容されている液化ガスを直ちに利用できるので、被災者、避難者への電力、熱の速やかな供給が可能となる。
【0010】
前記液化ガス容器には、その気相部に連通する均圧弁を備えることが望ましい。液化ガス容器の気相部に連通する均圧弁を備えることにより、通常の燃焼用に減圧する前の液化ガスを取り出すころが可能になり、液化ガスを用いるエンジンに適した圧力に減圧して発電機を駆動することができる。
【0011】
さらに、災害対応型液化ガス供給システムを、前記分岐配管の遮断弁出側にホースを介して接続可能に構成された移動式の分岐ユニットと、前記浄水器および液化ガスを燃料とする発電機が搭載された移動式の発電・浄水ユニットと、液化ガスを燃料とする給湯器を備えた移動式の給湯ユニットと、液化ガスを燃料とする暖房機具を備えた移動式の暖房ユニットの何れかの構成を備えたものとしてもよい。
【0012】
前記分岐ユニットは、前記複数の小口ガス取出し口を備えたヘッダと、このヘッダと前記液化ガス容器の分岐配管の遮断弁出側を接続するヘッダガスホースと、前記ヘッダガスホースを巻き取る固定式ヘッダガスホース巻き取り器と、ガスコンロおよびガスコンロと前記小口ガス取出し口を接続するガスホースと、前記ガスホースを巻き取る固定式ガスホース巻き取り器と、暖房器具と前記小口ガス取出し口を接続する暖房器用ガスホースおよび暖房器用ガスホースを巻き取るガスホース巻き取り器を含んで構成され、これらが搭載される架台には移動用の車輪が設けられるのが望ましい。また、全体を覆うカバーを設け、カバー上面に取手を設けておく。
【0013】
前記発電・浄水ユニットは、前記発電機と、液化ガス容器の気相部に連通する均圧弁と発電機を圧力調整手段を介して接続する発電機用ガス燃料ホースと、この発電機用ガス燃料ホースを巻き取る固定式ガスホース巻き取り器と、末端にコネクタを備えた電線と、この電線を巻き取るコードリールと、発電機の出力側に接続されたコンセントと、前記浄水器と、水源と浄水器を接続する原水用ホースと、この原水用ホースを巻き取る固定式ホースリールと、前記浄水器に供給される原水を加圧する原水加圧手段と、それらが搭載される移動式の架台と、投光器とを含んで構成される。架台には移動用の車輪が設けられるのが望ましい。投光器は、固定式で本ユニットの照明用のものと、単体で格納され、必要な場所に設置して使用されるものの双方がある。前記コードリールは、単体で用意されている投光器や、給湯ユニット、ガス燃焼式トイレ、雨水貯溜タンクへ給電するのに用いる。
【0014】
前記給湯ユニットは、前記給湯器と、給湯器と液化ガス容器のガス取出し口を接続する給湯器用ガスホースと、給湯器用ガスホースを巻き取る固定式ガスホース巻き取り器と、水源と給湯器を給水加圧手段を介して接続する水ホースと、この水ホースを巻き取る固定式ホースリールと、前記給湯器に接続された給湯蛇口およびシャワーヘッドと、外部電源が接続されるコネクタと、ユニット全体を覆うカバーと、を含んで構成される。これら構成部品が搭載される架台には、移動用の車輪を設けることが望ましい。
【0015】
前記暖房ユニットは、前記移動式暖房器具を備え、前記分岐ユニットに備えられたガスホース巻き取り器の暖房器用ガスホースで分岐ユニットに接続される。
【0016】
本発明の災害対応型液化ガス供給システムの液化ガス容器は、通常のガス消費機器にガスを供給するものとして、災害時に被災者の避難所となるような施設固定設置されている。そして、液化ガス容器の気相部に連通されたガス管路に、災害時に被災者の避難所となるような施設の熱源、動力源として用いるための、予備の緊急時用の大口ガス取出し口を設けることを特徴とする。また、前記分岐ユニット、発電・浄水ユニット、給湯ユニット、暖房ユニットを当該避難所等の施設に非常用として保管しておけばよい。
【0017】
このようにすれば、災害時に被災者が避難所に集合、避難した際、当該避難所となっている施設に保管されている分岐ユニットを取り出して設置し、当該避難所となっている施設に常設された液化ガス容器の大口ガス取出し口に、分岐ユニットに格納されているヘッダガスホースで分岐ユニットを接続すれば、直ちに、燃料用の液化ガスを供給することができる。
【0018】
また、液化ガスを熱源とする給湯器を移動式の架台に搭載し、給水加圧手段と、水ホースと、給湯器用ガスホースを備えてなる給湯ユニットを、前記液化ガス容器が設置された施設に非常用として保管しておくことにより、避難者が集まった時点で速やかに、給湯を開始できる。給水加圧手段が給湯ユニットに組み込まれているから、給水源として給水の水圧がない仮設の水タンクを用いる場合にも対応できる。
【0019】
さらに、液化ガスを燃料とするエンジンで駆動される発電機と、発電機と前記液化ガス容器の均圧弁を発電機用圧力調整器を介して接続する発電機ガス燃料ホース、給湯器や照明器具に給電する電線を巻き込んだコードリールをまとめて移動式のユニットを構成しておけば、避難所への送電が停止していても、少なくとも照明や給湯のための電力が確保される。このユニットに浄水器や、水源と浄水器を接続する原水用ホースを併せて搭載しておいてもよい。
【0020】
なお、前記液化ガス容器は、液化ガスをバルクで貯蔵するものであれば、充填可能量が300kg未満で移動可能に構成したものでもよい。この場合、調整器、ガスメータ等の付属機器はプロテクタに内蔵して、機器へのいたずら防止と落下物による機器への直接的影響を回避するようにしておくのが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、地震、台風などの災害発生時に、避難場所等に集合した被災者、避難者に、速やかに、電力、飲用水、温水、暖房用熱を供給できるとともに、煮炊きを可能にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る災害対応型液化ガス供給システムの実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る災害対応型液化ガス供給システムが、使用状態に配置され、ガスホースや水ホース、電線が接続される状態を示している。図示の災害対応型液化ガス供給システムは、液化ガスを貯蔵する液化ガス容器を含むバルク貯槽ユニット100と、ヘッダガスホース204でバルク貯槽ユニット100に接続される分岐ユニット200と、給湯器用ガスホース303でバルク貯槽ユニット100に接続される給湯ユニット300と、発電機ガス燃料ホース402で発電機用圧力調整器403を介してバルク貯槽ユニット100の均圧弁102に接続される発電・浄水ユニット400と、暖房機用ガスホース206で分岐ユニット200に接続される暖房ユニット500と、雨水貯留タンク600と、ガス燃焼式トイレ700と、発電・浄水ユニット400、暖房ユニット500、給湯ユニット300を収容する仮設テント800と、を含んで構成されている。
【0023】
バルク貯槽ユニット100は、300kg型液化ガス容器(以下、バルク貯槽という)101、調整器及び配管110、分岐配管103を含んで構成され、緊急避難場所に指定された公共の施設(以下、設置施設という)に液化ガスを供給するために設置されているもので、コンクリート基礎上に配置固定されている。公共の施設でなくても、通常時、液化ガスを使用している施設であれば、民間の施設であってもよく、そこに液化ガスを供給するために設置されているものを利用すればよい。いずれにしても、バルク貯槽ユニット100はコンクリート基礎上に配置固定されている。
【0024】
バルク貯槽101の上面を貫通してガス管路(以下、液化ガス取出し管路という)104が接続され、この液化ガス取出し管路104の一端はバルク貯槽101の気相部に連通し、他端は調整器105に接続されている。調整器105の出側には配管110が接続されており、遮断弁106、配管接続口107を経て、設置施設で平常時に使用される冷暖房設備や炊事設備等のガス消費機器に液化ガスを供給するようになっている。調整器105下流側、かつ遮断弁106上流側の配管110に分岐して分岐配管103が設けられ、遮断弁108を経て大口ガス取出し口109に接続されている。大口ガス取出し口109には、災害時に、ヘッダガスホース204を介して分岐ユニット200が、給湯器用ガスホース303を介して給湯器が、それぞれ接続される。
【0025】
従来、ガスメータは、公民館、集会所等の軒下に設置されて、公民館、集会所等で通常時に使用されるガス量のみを計測するようになっており、災害時に使用したガス量を計測することは考慮されていなかった。災害時にのみ使用されるガスメータをバルク貯槽101のプロテクタ内に設置することも考えられるが、まれにしか使用しないガスメータを常時設置するのは経済的ではない。本実施の形態では、調整器105の下流側、かつ分岐配管103の分岐位置の上流側になる位置で配管110に、ガスメータ111が介装され、通常時は配管110に供給される液化ガス量が計測され、災害時に遮断弁108が開かれた場合は、分岐配管を経て供給される液化ガス量と配管110に供給される液化ガス量の合計量を計測するようになっている。
【0026】
バルク貯槽101の上面にはまた、バルク貯槽101に液化ガスを取り込む液取入れ弁が設けられ、この液取入れ弁には、バルク貯槽101の気相部に連通する均圧弁102が付設されている。均圧弁については、特許文献3に記載されているので説明を省略する。前記均圧弁102にはホース接手が結合されており、前記発電機用ガス燃料ホース402が結合可能になっている。液化ガスを燃料とするエンジンで駆動される液化ガス燃焼式発電機に中圧の液化ガスを供給するために、通常は、液化ガスを搬送するタンクローリーからの液化ガスの充填時に、バルク貯槽101とタンクローリーの槽内圧力の圧力を均衡させるために用いられる均圧弁102を、液化ガス燃焼式発電機に中圧の液化ガスを供給するために利用するので、中圧のガスに減圧した液化ガス供給配管を新たに設ける必要がない。
【0027】
以下、各ユニットの内容について説明するが、図2〜図7は、配置構成の例を示すもので、図1に示す配置とは一部異なっている。
【0028】
分岐ユニット200は、図2、図3に示すように、架台201と、架台201に、架台201が平らな面におかれたときに水平になる姿勢で取り付けられ、一方の端部が閉止されたヘッダ管202と、ヘッダ管202に上方に互いに平行に分岐し、それぞれ止め弁が介装された複数(本実施の形態では4本)の取出し分岐管と、取出し分岐管それぞれの末端に装着された小口ガス取出し口であるヒューズガス栓203と、ヘッダ管202の他方の端部に装着されたボールバルブ(図示せず)と、このボールバルブに結合されたガス取入れ用接続口(図示せず)と、前記ヘッダガスホース204とこのヘッダガスホース204を巻き取る固定式ヘッダガスホース巻き取り器205と、2基のガスコンロ208およびガスコンロ208と前記ヒューズガス栓203を接続するガスホース209と、前記ガスホース209を巻き取る固定式ガスホース巻き取り器210と、暖房器具と前記ヒューズガス栓203を接続する暖房器用ガスホース206および暖房器用ガスホース206を巻き取るガスホース巻き取り器207と、を含んで構成されている。これらはすべて移動式の架台201に搭載されており、この架台201に設けられた移動用の車輪(キャスター)211は固定装置付きとしてある。また、全体を覆う樹脂製カバー212が設けられ、カバー上面に取手213を設けてある。なお、このカバーは、用心のため、取り外し防止の施錠装置がつけられている。前記ガス取入れ用接続口は、前記固定式ヘッダガスホース巻き取り器205を介してヘッダガスホース204に接続されており、ヘッダガスホース204の他端には、バルク貯槽ユニット100の分岐配管103の大口ガス取出し口109と迅速に結合できるカプラなどの接続具が取り付けられている。
【0029】
分岐ユニット200は、バルク貯槽ユニット100の調整器105で煮炊き用のコンロ208、暖房ユニット500、給湯ユニット300などに使用される圧力に減圧された液化ガスを、バルク貯槽ユニット100から離れた位置まで取り出し、それらの機器に供給する。
【0030】
本実施の形態では、1基の分岐ユニット200が設けられ、設置施設に保管されていて、必要なときに保管場所から取り出されて煮炊きが行なわれる場所に配置される。設置施設の規模、言い換えると災害時に避難してくると想定される人数に応じて、前記メインヘッダ103の大口ガス取出し口109の数、分岐ユニット200の数を設定すればよい。これは、後述する給湯ユニット300、暖房ユニット500についても同様である。
【0031】
発電・浄水ユニット400は、図4、図5に示すように、発電機401と、バルク貯槽ユニット100の液取入れ弁に付設された均圧弁102と発電機401を圧力調整手段である発電機用圧力調整器403を介して接続する発電機用ガス燃料ホース402と、この発電機用ガス燃料ホース402を巻き取る固定式ガスホース巻き取り器404と、発電機401の出力側に接続されたコンセント407と、浄水器408と、水源と浄水器408を接続する原水用ホース409と、この原水用ホース409を巻き取る固定式ホースリール410と、前記浄水器408に供給される原水を加圧する原水加圧手段である手動ポンプ411と、それらが搭載される移動式の架台413と、投光器414と、末端にコネクタを備え、投光器414その他に電力を供給する電線405、415を巻き込んだ移動式のコードリール406、416を含んで構成されている。架台には移動用の固定装置付き車輪(キャスター)417が設けられている。また、ユニット全体を樹脂製カバー418で覆うようにしてある。コードリール406、416は、前記コンセント407に電線405、415のコネクタを差し込んで受電し、コードリール本体に設けた差込口に各機器付属の電線のコネクタを差し込むことで、各機器に給電する。
【0032】
発電機401は液化ガスを燃料とするエンジンで駆動され、100Vの電力を発生する。このエンジンに液化ガスを供給する発電機用ガス燃料ホース402は、ガス放出防止型高圧ホースである。その一方の端部は前記固定式ガスホース巻き取り器404を介して発電機401に接続され、他方の端部は、発電機用圧力調整器403を介して均圧弁102に接続されるように構成されている。移動式のコードリール416には、前記コンセント407に差し込んで受電する電線415が巻き込まれており、発電機401で発電された電力を、投光器414、給湯ユニット300に供給する。コードリール406に巻き込まれた電線405は、例えば後述するガス燃焼式トイレ700、雨水貯溜タンク600に電力を供給する。
【0033】
浄水器408に原水を供給する原水用ホース409は、一方の端部が固定式ホースリール410を介して前記手動ポンプ411の吸入側に接続され、他方の端部は、後述する雨水貯留タンク600の取出し口601に接続できるようになっている。前記手動ポンプ411の吐出側は、浄水器408の原水入り側に接続されている。
【0034】
発電・浄水ユニット400は、バルク貯槽101の気相部から均圧弁102を経て液化ガスを取り出し、発電機用圧力調整器403で発電機用に減圧し、この減圧された液化ガスを燃料としてエンジンを駆動し発電する。発生した電力は、コードリールに巻き込まれている電線を介して、投光器414、給湯ユニット300、ガス燃焼式トイレ700などに供給される。また、発電・浄水ユニット400に搭載された、手動ポンプ411で駆動される浄水器408により、例えば雨水貯留タンク600の雨水が浄化され、飲用水、あるいは煮炊き用に利用される。
【0035】
給湯ユニット300は、図5、図6に示すように、移動式の給湯器用架台301と、給湯器用架台301に取り付けられ液化ガスを熱源とする給湯器302と、一方の端部を、給湯器302のガスホース接続口に固定式ガスホース巻き取り器304を介して接続された給湯器用ガスホース303と、給湯器302の給水入り側に吐出側を接続して配置された給水加圧手段である電動の給湯加圧ポンプ305と、一方の端部を固定式ホースリール307を介して前記給湯加圧ポンプの吸入側に接続させ、前記固定式ホースリール307に巻き取られるようになっている水ホース306と、前記給湯器302の温水出側に接続された給湯蛇口309およびシャワーヘッド308と、外部電源が接続されるコネクタ310と、ユニット全体を覆うカバー311と、を含んで構成される。これら構成部品が搭載される給湯器用架台301には、移動用の車輪(キャスター)312が設けられている。
【0036】
前記給湯器用ガスホース303の他方の端部には、バルク貯槽ユニット100の分岐配管103の大口ガス取出し口109に接続されるカプラなどの接続具が装着され、迅速・確実に結合できるようになっている。また、前記水ホース306の他方の端部には、水道断水時に利用可能な水源、例えば後述する雨水貯留タンク600の取出し口601に接続可能な接続具が設けられている。なお、水ホース306は、給湯加圧ポンプの吸入側に接続されるので、内部がポンプ吸込み圧で負圧になってもつぶれない強度のもの、例えば針金入りのものとしてある。前記カバー311は、給湯ユニット300を囲ってシャワールームを形成する構成としてある。
【0037】
この給湯ユニット300によれば、設置施設に被災者や避難者が集まった場合、バルク貯槽101の液化ガスと利用可能な水源を利用して、速やかに温水を利用したシャワーや洗濯等が可能になる。
【0038】
給湯加圧ポンプ305を可搬式にして、ポンプ吐出側と給湯器302の給水接続口を長尺のホースで接続するようにすれば、負圧に耐えるホースを短くすることができる。
【0039】
暖房ユニット500は、液化ガスを燃料とする可搬式、全周放射タイプの暖房器具であるガスストーブ501と、ガスストーブ501が載置された移動架台(図示せず)で構成されている。ガスホース巻き取り器207に巻き込まれている暖房機用ガスホース206の先端がガスストーブ501に接続され、分岐ユニット200のヒューズガス栓203上流側の弁が開かれると、分岐ユニット200の液化ガスをガスストーブ501に送ることができ、ガスストーブ501が使用可能になる。前記暖房機用ガスホース206の先端には、接続相手側に迅速に接続できるカプラなどの接続具が装着されている。
【0040】
本実施の形態では、非常用の水源として、雨水貯留タンク600が設置されている。この雨水貯留タンク600は、設置施設の屋根の雨樋に流入した雨水を導いて貯蔵するもので、前記水ホース306、原水用ホース409を接続できる取出し口601が設けられている。また、後述するガス燃焼式トイレ700に雨水を供給する配管602が設けられている。この配管には止め弁603が介装されており、災害時にはこの止め弁603を開くことで、ガス燃焼式トイレ700に雨水を供給する。なお、この雨水貯留タンク600から雨水を取り出す取出し口601あるいは配管602に送出す管路に加圧用のポンプ及び加圧タンクを設け、加圧した水を送出するようにしてもよい。この場合、加圧用のポンプの電源は、発電・浄水ユニット400のコンセント407に接続される電線405を巻き込んだコードリール406から受電する。なお、コードリール406、416は防雨型コードリールとしてある。
【0041】
また、設置施設のトイレが水道断水のために使用できなくなることを考慮して、前記ガス燃焼式トイレ700が設置されている。ガス燃焼式トイレ700に必要な照明、換気その他の電力は、前記発電・浄水ユニット400のコンセント407に接続される電線405を巻き込んだコードリール406から受電する。ガス燃焼式トイレ700の受電盤に付属する電線のコネクタをコードリール406の差込口(コンセント)に接続して受電する。ガス燃焼式トイレ700には、バルク貯槽ユニット100の配管接続口に接続された配管110に分岐して、弁を介装した配管(図示せず)が接続されており、排泄物焼却用の燃料として液化ガスが焼却用バーナに供給される。ガス燃焼式トイレ700は、排泄物だけでなく、放置すると悪臭を発する生ごみ等の焼却にも利用でき、排泄物、生ごみ等の減容、悪臭の発生防止が可能になる。
【0042】
上記各ユニットに設けられた固定式ヘッダガスホース巻き取り器、固定式ガスホース巻き取り器、固定式ホースリールに巻き込まれたホース類の根元側は、固定式ヘッダガスホース巻き取り器、固定式ガスホース巻き取り器、固定式ホースリールを介して、それらが装着されたユニットの機器に常時接続されており、先端側には、それぞれ定められた機器あるいは配管の接続部に迅速に接続できる接続具が装着されている。
【0043】
公会堂又は集会所等の公共設備或いは民間企業の営業拠点、工場などは、災害時の避難場所として利用される可能性が高い。したがって、そのような場所に、液化ガスを動力源あるいは熱源として用いる冷暖房設備や炊事設備を設置し、それら設備に液化ガスを供給する液化ガスバルク貯槽を、本実施の形態に示すような災害対応型液化ガス供給システムの一部としておけば、緊急時に限って、緊急対応用の煮炊き用燃料、仮設用の風呂への給湯用燃料、照明用の発電機燃料、さらには焼却式トイレの燃料等として活用でき、少ないコストで、災害時の効率的な対応が可能になる。
【0044】
分岐ユニット200、給湯ユニット300、および発電浄水ユニット400は屋外に配置されることを考慮し、雨天時でも作業が容易なように、これらを収容する仮設テント800が設けられている。仮設テント800は、分岐ユニット200、給湯ユニット300、および発電・浄水ユニット400等とともに、バルク貯槽101が設置される公民館、集会所等の、災害時に避難場所になる施設(設置施設)に保管しておけばよい。
【0045】
本実施の形態によれば、災害時の避難場所に設置された液化ガスバルク貯槽に貯蔵された液化ガスを、緊急対応用の煮炊き用燃料、仮設用の風呂への給湯用燃料、照明用の発電機燃料、さらには焼却式トイレの燃料等として活用でき、少ないコストで、災害時の効率的な対応が可能になり、災害時に交通の渋滞による資材、設備の搬送の遅延の惧れもなく、避難者への燃料用ガス、給湯、電力供給等を速やかに行なうことが可能になる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、分岐ユニット200、発電・浄水ユニット400、給湯ユニット300には、液化ガスや水を取入れるためのホースがそれぞれ付属する専用の固定式ホース巻き取り器あるいは固定式ホースリールに巻き込まれて常備され、付属する機器に液化ガスや電力を供給するホースあるいは電線も、それぞれ付属する専用の固定式ホース巻き取り器あるいは固定式ホースリールもしくはコードリールに巻き込まれて常備されている。そしてそれらホース類の一方の端部は常時、それらが配置されたユニット内の機器に接続されている。したがって、各ユニットや付属機器を使用する場合の、各ユニットや付属機器へ接続されるホースやコードの引き出し、接続、使用が終わったときのホース類の収納を、迅速に、混乱や誤りなく行うことができる。
【0047】
また、分岐ユニット、発電・浄水ユニット、給湯ユニットには移動用の車輪(固定装置つきキャスター)が装着されているので、必要な場所への移動、設置が容易であり、全体を覆うカバーを設けてあるので、保管中の損傷、汚損の惧れが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る災害対応型液化ガス供給システムの実施の形態の全体構成を示す配置図である。
【図2】図1に示す分岐ユニットの平面図である。
【図3】図2に示す分岐ユニットの正面図である。
【図4】図1に示す発電・浄水ユニットの平面図である。
【図5】図4に示す発電・浄水ユニットの正面図である。
【図6】図1に示す給湯ユニットの平面図である。
【図7】図6に示す給湯ユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0049】
100 バルク貯槽ユニット
101 バルク貯槽
102 均圧弁
104 液化ガス取り出し管路
109 大口ガス取出し口
200 分岐ユニット
204 ヘッダガスホース
205 固定式ヘッダガスホース巻き取り器
206 暖房器用ガスホース
207 ガスホース巻き取り器
210 固定式ガスホース巻き取り器
300 給湯ユニット
301 給湯器用架台
302 給湯器
303 給湯器用ガスホース
304 固定式ガスホース巻き取り器
305 給湯加圧ポンプ
306 水ホース
307 固定式ホースリール
400 発電・浄水ユニット
401 発電機
402 発電機用ガス燃料ホース
403 発電機用圧力調整器
404 固定式ガスホース巻き取り器
405 電線
406 コードリール
407 コンセント
408 浄水器
409 原水用ホース
410 固定式ホースリール
411 手動ポンプ
500 暖房ユニット
501 ガスストーブ
600 雨水貯留タンク
700 ガス燃焼式トイレ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵した液化ガス容器と、該液化ガス容器の気相部に連通されたガス管路と、該ガス管路に接続された調整器と、該調整器の下流側に通常使用されるガス消費機器へのガス供給を行う配管が接続され、該配管に、災害時にガスを取り出すことのできる分岐配管が接続され、該分岐配管に遮断弁を備えたことを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、前記液化ガス容器の気相部に連通する均圧弁を更に備えたことを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、前記分岐配管の遮断弁出側にホースを介して接続可能に構成された移動式の分岐ユニットと、浄水器および液化ガスを燃料とする発電機が搭載された移動式の発電・浄水ユニットと、液化ガスを燃料とする給湯器を備えた移動式の給湯ユニットと、液化ガスを燃料とする暖房機具を備えた移動式の暖房ユニットの何れかの構成を備えたことを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、前記分岐ユニットは、複数の小口ガス取出し口を備えたヘッダを搭載し、このヘッダと前記液化ガス容器の遮断弁出側を接続するヘッダガスホースと、ガスコンロと、ガスコンロと小口ガス取出し口を接続するガスホースおよびそれを巻き込む固定式ガスホース巻き取り器と、前記暖房機具と小口ガス取出し口を接続する暖房機用ガスホースおよびそれを巻き込むガスホース巻き取り器と、ヘッダガスホースを巻き込む固定式ヘッダガスホース巻き取り器を含んで構成され、前記発電・浄水ユニットは、前記均圧弁と発電機を発電機用圧力調整器を介して接続する発電機用ガス燃料ホースおよびそれを巻き込む固定式ガスホース巻き取り器と、前記浄水器と災害時の水源を接続する原水用ホースおよびそれを巻き込む固定式ホースリールと、発生した電力を供給する電線およびそれを巻き込むコードリールとを含んで構成され、前記給湯ユニットは、給湯器と前記分岐ユニットの小口ガス取出し口を接続する給湯器用ガスホースおよびそれを巻き込む固定式ガスホース巻き取り器と、給湯器と災害時の水源を接続する水ホースおよびそれを巻き込む固定式ホースリールと、固定式ホースリールと給湯器の間に配置されて水ホースで供給される水を加圧して給湯器に送り込む給湯加圧ポンプを含んで構成されていることを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、災害時の水源として、雨水を貯溜する雨水貯溜タンクが含まれていることを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、ガス燃焼式トイレを含んで構成され、前記発電・浄水ユニットは、ガス燃焼式トイレに電力を供給する電線およびそれを巻き込むコードリールを備え、前記配管と前記ガス燃焼式トイレを、止め弁を介して接続する配管が設けられていることを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、前記巻き取り器もしくはホースリールに巻き込まれるガスホースおよび水ホースの、少なくとも、引き出し側の端部には、接続相手側の接続口に迅速に結合できる接続具が取り付けられていることを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれかに記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、前記分岐ユニットと、給湯ユニットと、発電・浄水ユニットは、それぞれ、全体を覆うカバーを備えていることを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の災害対応型液化ガス供給システムにおいて、前記調整器の下流側でかつ分岐配管が分岐している位置よりも上流側の配管に、ガス流量を計測するガスメータが設けられていることを特徴とする災害対応型液化ガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−78121(P2007−78121A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268854(P2005−268854)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】