災害対策支援装置、方法及びプログラム
【課題】災害対策現場に対する資産の割当を、熟練を必要とせずに適切に行う。
【解決手段】地図データを反映した二次元座標上において、処理済現場を表すノードに滞在する各災害対策チームの単位時間当たりの作業量をバネ定数に、また当該各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間をバネの自然長にそれぞれ反映したバネを定義し、処理済現場を表すノードと未処理現場を表すノードの間をそれぞれ上記バネにより接続したバネモデルを生成する。そして、各処理済現場を表すノードの位置座標を固定とし、かつ未処理現場を表すノードの位置座標を可動として、上記各バネが平衡状態となるときの未処理現場を表すノードの位置座標を算出し、この未処理現場を表すノードの位置座標と各処理済現場を表すノードの位置座標とから、バネ長がもっとも短くなる処理済現場の災害対策チームを派遣チームとして選択する。
【解決手段】地図データを反映した二次元座標上において、処理済現場を表すノードに滞在する各災害対策チームの単位時間当たりの作業量をバネ定数に、また当該各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間をバネの自然長にそれぞれ反映したバネを定義し、処理済現場を表すノードと未処理現場を表すノードの間をそれぞれ上記バネにより接続したバネモデルを生成する。そして、各処理済現場を表すノードの位置座標を固定とし、かつ未処理現場を表すノードの位置座標を可動として、上記各バネが平衡状態となるときの未処理現場を表すノードの位置座標を算出し、この未処理現場を表すノードの位置座標と各処理済現場を表すノードの位置座標とから、バネ長がもっとも短くなる処理済現場の災害対策チームを派遣チームとして選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、災害対策処理現場に対する人員や機械等の資産の割当業務を支援する災害対策支援装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生後に実施される災害応急対策では、多種多様な災害対策業務が平行して進められ、状況は時間経過に伴って刻々と変化する。したがって、的確な災害対応業務の推進、業務間の調整の実施が重要な課題となっている。
このような課題を解決するためのアプローチとして、従来より災害対策業務の推進順序を順序グラフにより表現する試みがなされている。このように災害対策業務の推進順序を順序グラフにより表現することにより、全業務の時間系列の表現、並列業務を的確に把握することが可能となる(例えば、非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】石畑清、「岩波講座ソフトウェア科学3 アルゴリズムとデータ構造(第4刷) 4.グラフのアルゴリズム」p.224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、災害発生直後においては、新たに災害対策作業に割当可能な資産、つまり人員や道具、機械が不足することが容易に推測される。このため、別の現場において災害対策作業が終了した人員や機械等を未対策の現場の作業に割り当てる必要が生じる。その際、人員や機械等の割り当ては複数の条件、例えば作業員や機械の移動距離や、対策業務で用いる機械の種類を考慮しておこなわなければならない。
【0005】
そこで従来では、熟練した災害対策担当者が経験知に基づいて人手により人員や道具、機械等の割り当てを行っていた。このため、熟練した災害対策担当者が存在しない場合には、人員や機械等の割り当てが適切に行われない状況が想定される。また、熟練した災害対策担当者が存在する場合でも、過去に発生した災害による被害状況を参考にすることができない場合には、適切な人員や機械等の割り当てを行うことは困難である。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、災害対策現場に対する資産の割当処理を、熟練を要することなく適切に行えるようにする災害対策支援装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、災害対策処理がまだ行われていない未処理現場の位置を表す情報と、災害対策処理が終了した複数の処理済現場の位置情報と当該各処理済現場に滞在する災害対策チームが保有する災害対策のための資産を表す情報をそれぞれ取得し記憶する。この状態で、上記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報に基づいて当該各災害対策チームの単位時間当たりの作業量を求めると共に、上記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報と前記複数の処理済現場及び未処理現場の位置情報とに基づいて、前記各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を求める。そして、上記複数の処理済現場及び未処理現場をそれぞれその位置情報をもとに地図情報上に設定し、上記求められた作業量をバネ定数とすると共に上記求められた移動所要時間をバネの自然長とするバネを定義して、当該複数の処理済現場と未処理現場との間をそれぞれ上記バネにより接続したバネモデルを生成する。そして、この生成されたバネモデルにおいて、上記複数の処理済現場をそれぞれ固定端としかつ上記未処理現場を可動端としたときに上記各バネが平衡する状態を求め、この平衡した状態における各バネのバネ長を災害対策時間を表す情報として算出して、この算出された災害対策時間が最小となる処理済現場の災害対策チームを、上記未処理現場へ派遣すべきチームとして選択するようにしたものである。
【0008】
したがって、地図上において、未処理現場と災害対策処理が終了した複数の処理済現場との間を、当該処理済現場に滞在する各災害対策チームの単位時間当たりの作業量と、当該各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間をそれぞれバネ定数及びバネの自然長に反映したバネにより接続したバネモデルが生成される。そして、各処理済現場をそれぞれ固定端としかつ上記未処理現場を可動端として上記バネモデルが平衡状態となったときに、バネ長がもっとも短くなる処理済現場が特定され、この特定された処理済現場の災害対策チームが未処理現場に派遣すべきチームとして選択される。このため、複数の災害対策処理現場にそれぞれ対策処理が完了した災害対策チームが存在する場合に、これらの災害対策チームのうちどのチームを次の未対策の処理現場へ派遣すればよいかを、熟練を要することなく適切に決定することが可能となる。
【0009】
また、この発明は以下のような各種態様を備えることも特徴とする。
第1の態様は、作業量を求める際に、災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量を記憶手段から読み出し、この読み出された人員及び機種ごとの単位時間当たりの作業量を、前記資産を構成する人員の数及び機械の種類別台数に応じて加算することにより、災害対策チームごとの単位時間当たりの作業量の合計を求めるものである。
このようにすると、資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量をそれぞれ演算処理により計算する場合に比べ、簡単かつ短時間に求めることが可能となる。
【0010】
第2の態様は、移動所要時間を求める際に、災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の最低移動速度を表す情報を記憶手段から読み出し、処理済現場及び未処理現場の各位置情報と地図情報とに基づいて、前記処理済現場から未処理現場までの移動距離を算出する。そして、前記読み出された最低移動速度を表す情報と前記算出された移動距離とに基づいて、災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を算出するようにしたものである。
このようにすると、各災害対策チームの移動所要時間が、移動速度のもっとも遅い人員又は機械の移動速度を考慮して計算される。したがって、災害対策チームごとにチームが保有する資産の内容に応じて移動所要時間を求めることができ、これにより派遣すべきチームの選択をより適切に行うことが可能となる。
【0011】
第3の態様は、災害対策チームを選択する際に、各バネにバネ定数として与えた作業量が等しくなる状態を前記各バネが平衡する状態とし、この状態で地図情報を投影した二次元座標平面上における各バネの長さを災害対策時間を表す情報として算出するものである。
このようにすると、バネモデルが平衡した状態で各バネ長が二次元座標平面における座標計算により求めることができる。
【発明の効果】
【0012】
すなわちこの発明によれば、災害対策現場に対する資産の割当処理を、熟練を要することなく適切に行うことができる災害対策支援装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係わる災害対策支援装置の機能構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した災害対策支援装置による資産割当制御のメインルーチンを示すフローチャート。
【図3】図2に示したメインルーチンのうちバネモデルによる資産割当処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】図3に示したバネモデルによる資産割当処理ルーチンのうち方法1による処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】図3に示したバネモデルによる資産割当処理ルーチンのうち方法2による処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】図4に示した処理ルーチンのうちバネ定数決定処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【図7】災害対策処理業務を表すグラフを表す図。
【図8】エッジの重みのバネ定数による表現の一例を示す図。
【図9】災害対策時間、人員や機械の移動時間及び作業時間をバネにより表した図。
【図10】災害対策処理済の現場と未処理の現場との間に無向エッジを設定する処理を説明するための図。
【図11】図10により設定された無向エッジにバネを設定する処理を説明するための図。
【図12】図11により設定されたバネの平衡状態を見つける処理を説明するための図。
【図13】図12に示したバネの平衡状態をxy二次元座標平面上に表した図。
【図14】資産を移動させるチームの選択処理とその移動の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る災害対策支援装置の機能構成を示すブロック図である。この災害対策支援装置は例えばサーバコンピュータにより構成され、中央処理ユニット(Central Processing Unit;CPU)11に対しバス12を介してプログラムメモリ13、データメモリ14、通信インタフェース(通信I/F)15、入力インタフェース(入力I/F)16及び表示インタフェース(表示I/F)17を接続したものとなっている。
【0015】
通信I/F15は、CPU11の制御の下、災害対策現場に存在する災害対策チームの情報端末(図示せず)との間で、通信ネットワークを介して情報伝送を行う。入力I/F16には入力部2が接続される。入力部2は、キーボードやマウス等の入力デバイスと、外部記憶媒体を含む。入力I/F16は入力部2から入力データを受け取ってCPU11へ転送する。表示I/F17には、例えば液晶表示器(LCD:Liquid Crystal Display)を用いた表示部3が接続される。表示I/F17は、CPU11の制御の下で表示データを生成して表示部3に表示させる。
【0016】
データメモリ14には、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等で構成され、この発明を実施するために必要な記憶部として、災害現場地図情報記憶部141と、現場資産情報記憶部142と、資産属性情報記憶部143が設けられている。災害現場地図情報記憶部141には、少なくとも災害対策現場を含む地図データが格納されている。この地図データは住所や施設等が緯度経度に対応付けられている。
【0017】
現場資産情報記憶部142は、災害対策現場に存在する災害対策チームの情報端末から収集した現場資産情報を記憶するために用いられる。現場資産情報は、災害対策処理が終了した現場に滞在する災害対策チームが保有する資産、例えば人員、道具及び機械をリスト化したもので、現場又はチームの識別情報に対応付けて、上記人員の担当分野別の人数と、道具及び機械の種類別の台数を記憶したものからなる。なお、人員の担当分野としては、電気工事担当、通信工事担当、土木工事担当、建物工事担当等が挙げられ、また道具及び機械の具体例としては、バケット車、ブルドーザ、クレーン車、ダンプカー、土嚢、電気ケーブル、通信機器等が挙げられる。
【0018】
現場資産属性情報記憶部143には、災害対策現場で災害対策チームが使用する資産、例えば人員、道具及び機械の種類ごとに、その識別情報に対応付けて単位時間当たりの作業量を表す情報と移動速度を表す情報が記憶される。単位時間当たりの作業量は、例えば1時間当たりに排除可能な瓦礫等の重量で表される。移動速度は、道路を移動する際の平均時速で表される。
【0019】
プログラムメモリ15には、この発明を実施するために必要なアプリケーション・プログラムとして、現場資産情報取得制御プログラム131と、バネ定数決定プログラム132と、バネ平衡位置決定プログラム133と、割当決定プログラム134が格納されている。
【0020】
現場資産情報取得制御プログラム131は、以下の処理をCPU11に実行させる。
すなわち、次の未処理現場へ派遣する災害対策チームを決定する際に、先ず当該未処理現場から所定の距離の範囲内に位置する対策処理済現場を対策履歴情報から選択する。そして、この選択された各対策処理済現場に滞在する災害対策チームの情報端末に対し通信I/F15により順次アクセスし、当該情報端末から災害対策チームが保有する資産のリストを受信して、現場資産情報記憶部142に記憶させる。
【0021】
バネ定数決定プログラム132は、以下の処理をCPU11に実行させる。
(1) 現場資産情報記憶部142に記憶された各災害対策チームの資産リストをもとに、この資産を構成する人員、道具及び機械の単位時間当たりの作業量(作業能力量)を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、この読み出された人員、道具及び機械ごとの単位時間当たりの作業量を、上記資産を構成する人員の数、道具及び機械の種類別台数に応じて加算し、これにより災害対策チームごとの単位時間当たりの作業量の合計を求める処理。
【0022】
(2) 現場資産情報記憶部142に記憶された各災害対策チームの資産リストをもとに、この資産を構成する人員、道具及び機械の移動速度を表す情報を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、各処理済現場及び未処理現場の位置情報と、災害現場地図情報記憶部141に記憶された地図データに基づいて、上記各処理済現場から未処理現場までの移動距離をそれぞれ算出する。そして、上記読み出された移動速度を表す情報と上記算出された移動距離とに基づいて、各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動する際に必要な最低移動時間を算出する処理。
【0023】
(3) 上記(1) により計算された各災害対策チームの単位時間当たりの作業量の合計をバネ定数に、上記(2) により計算された各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な最低移動時間をバネの自然長にそれぞれ反映したバネを定義する。そして、上記地図データ上にプロットされた未処理現場と各処理済現場との間を、上記定義されたバネにより接続したバネモデルを生成する処理。
【0024】
バネ平衡位置決定プログラム133は、上記バネ定数決定プログラム132により生成された地図データ上のバネモデルにおいて、各処理済現場をそれぞれ固定端としかつ未処理現場を可動端としたときに各バネが平衡状態となるときの未処理現場の位置を計算する処理を、CPU11に実行させる。
【0025】
割当決定プログラム134は、以下の処理をCPU11に実行させる。
(1) 上記バネ平衡位置決定プログラム133により計算された、各バネが平衡状態となったときの未処理現場の位置と、各処理済現場の位置とに基づいて、各バネの長さを計算する処理。この平衡状態における各バネの長さは、該当する災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間と、当該災害対策チームが保有する資産により災害対策処理を完了するまでに要する作業時間とを加算した時間、つまり災害対策処理時間を表現している。
(2) 上記平衡状態における各バネの長さの計算結果をもとに、バネの長さが最も短くなるバネが接続された処理済現場を選択し、この選択された処理済現場の災害対策チームを上記未処理現場へ派遣すべきチームとして決定する処理。
【0026】
次に、以上のように構成された災害対策支援装置による動作を説明する。
(1)資産割当制御のメインルーチン
災害対策が必要な現場に対する対策処理資産の割当制御は、以下のように実行される。図2はそのメインルーチンを示すフローチャートである。
先ずステップS0において、実行手順決定プログラム(図示せず)に従い、災害対策処理対象の現場について災害対策処理業務の実行順序が決定される。例えば、第一段階として瓦礫の片付けをし、第二段階として建物を建設し、第三段階として通信工事を行うというように決定される。
【0027】
次にステップS1において、現場資産情報取得制御プログラム131に従い、現場資産情報の取得処理が実行される。この処理では、先ず次に災害対策処理を行う予定の未処理現場の位置から所定の距離の範囲内に位置する対策処理済現場が、データメモリ14に記憶されている対策履歴情報(図示せず)から選択される。そして、この選択された対策処理済現場に滞在する災害対策チームの情報端末に対し通信I/F15からアクセスされる。そして、このアクセスに対し情報端末から、災害対策チームが保有する資産のリストを表す情報が送信されると、この資産リストの情報は通信I/F15により受信され、現場資産情報記憶部142に記憶される。
この結果、例えば未処理現場の周辺に4つの対策済現場が存在したとすれば、これらの対策済現場にそれぞれ滞在する災害対策チームが保有する資産リストが通信ネットワークを介して収集され、データメモリ14内の現場資産情報記憶部142に記憶される。
【0028】
続いてステップS2において、バネ定数決定プログラム132、バネ平衡位置決定プログラム133及び割当決定プログラム134に従い、バネモデルを利用した災害対策処理資産の割当処理が実行される。この処理は後に詳しく述べる。
【0029】
最後にステップS3において、すべての未処理現場に対する災害対策のための資産割当処理が終了したか否かが判定される。そして、まだ資産割当処理が行われていない未処理現場が残っていれば、ステップS0に戻って次の未処理現場を選択し、この未処理現場に対しステップS0〜S2による処理を行う。一方、すべての未処理現場に対する災害対策のための資産割当処理が終了すると、災害対策支援装置1は災害対策支援処理を終了する。
【0030】
(2)バネモデルを利用した災害対策処理資産の割当処理
災害対策支援装置1は、バネモデルを利用した災害対策処理資産の割当処理を以下のように実行する。図3はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
資産の割当処理方法には、別の場所での業務が終了した資産を割り当てる第1の方法と、災害対策業務にまだ割り当てられていない資産を割り当てる第2の方法がある。これら第1及び第2の方法のうちのどちらを使用するかは、予め防災担当者が入力部2を操作することで指定入力する。
【0031】
災害対策支援装置1のCPU11は、上記防災担当者により指定された情報をもとに、先ずステップS21において第1の方法を採用するか否かを判定し、第1の方法が指定されていればステップS22に移行して上記第1の方法による処理を実行する。これに対し第1の方法が指定されていなければ、ステップS23により第2の方法を採用するか否かを判定し、第2の方法が指定されていればステップS24に移行して上記第2の方法による処理を実行する。
なお、上記第1の方法を採用するか第2の方法を採用するかについては、各災害対策チームの活動状況を監視し、出動中の災害対策チームの中に作業が終了したチームがある場合には方法1を採用し、作業が終了したチームがない場合に方法2を採用するようにしてもよい。
【0032】
(2−1)方法2による資産割当処理
方法2が選択された場合、災害対策支援装置1は、この方法2による資産割当処理を以下のように実行する。図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
災害対策支援装置1のCPU11は、先ずステップS241において、未処理現場の位置に対し最寄りの事務所等に災害対策チームが待機中であるか否かを判定し、待機中であればこの災害対策チームの端末に対し出動指示を送信する。これに対し、最寄りの事務所等に災害対策チームが待機していなければ、未処理現場に対し次に近い事務所等を選択して、この事務所等に災害対策チームが待機しているか否かを判定し、待機中であればこのチームの端末に出動指示を送信する。
【0033】
一方、未処理現場の周辺に派遣可能な災害対策チームが存在しない場合には、CPU11はステップS242において、未処理現場の周辺において予め登録された法人又は個人の端末に対し出動要請を送信する。出動要請を受けた法人又は個人は、予め準備してある道具や機械を携えて上記未処理現場へ出向く。
【0034】
(2−2)方法1による資産割当処理
災害対策支援装置1は、方法1による資産割当処理を以下のように実行する。図4はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
装置1のCPU11は、先ずステップS221において災害現場をグラフのノードとして表す。図7はその例を示すもので、ここでは災害対策処理利業務が終了した現場をノードp、次に災害対策処理業務を実施する現場をノードqと表している。Apqはノードpからノードqへ向かう無向エッジを示している。無向エッジの物理的な意味は、現場pから現場qへ災害対策チームを移動させる可能性があることを示す。
【0035】
装置1のCPU11は、次にステップS222においてバネ定数決定プログラム132を起動し、このプログラム132に従いバネ定数の決定処理を以下のように行う。図6はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、CPU11は先ずステップS2221において、災害現場地図情報記憶部141から災害対策エリアを含む地図データを選択的に読み出し、災害対策処理業務が終了した現場(処理済現場)のノードpをその位置情報をもとに上記地図データ上に配置する。また、それと共にステップS2222において、次に災害対策処理業務を実施する現場(未処理現場)のノードqをその位置情報をもとに上記地図データ上に配置する。なお、処理済現場及び未処理現場の位置情報は、データメモリ14に記憶されている災害対策履歴情報に記載された処理済現場に関する情報や、新たに防災担当者が入力部2から入力した未処理現場に関する情報を用いる。
【0036】
CPU11は、次にステップS2223において、未処理現場を原点(0,0)として経度方向(東を正)をx、緯度方向(北を正)をyとする二次元座標を定義し、この二次元座標平面上に処理済現場を表すノードpの座標(xp,yp)を設定する。続いてステップS2224において、処理済現場のノードpと未処理現場のノードqとの間に無向エッジ(p,q)を設定する。例えば、いま未処理現場へ災害対策チームを移動させることが可能な処理済現場として、4箇所の処理済現場が選択されていれば、これら4箇所の処理済現場のノードA,B,C,Dと未処理現場のノードqとの間に、それぞれ図10に示すように無向エッジAAq,ABq,ACq,ADqを設定する。
【0037】
CPU11は、次にステップS2225において、上記設定された各無向エッジAAq,ABq,ACq,ADqに、それぞれ図11に示すようにバネKAq,KBq,KCq,KDqを設定する。すなわち、4箇所の処理済現場のノードA,B,C,Dと未処理現場のノードqとの間をそれぞれバネKAq,KBq,KCq,KDqにより接続したバネモデルを生成する。
【0038】
ところで、上記バネKAq,KBq,KCq,KDqは次のように定義される。
すなわち、CPU11は、先ず現場資産情報記憶部142から上記4箇所の処理済現場の災害対策チームの資産リストを読み出し、この読み出した資産リストに記載された人員、道具及び機械のそれぞれについてその単位時間当たりの作業量を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、この読み出された人員、道具及び機械ごとの単位時間当たりの作業量を、上記資産を構成する人員の数、道具及び機械の種類別台数に応じて加算し、これにより各災害対策チームが保有する資産全体の単位時間当たりの作業量の合計値を算出する。
【0039】
図8は、1つの災害対策チームが保有する資産全体の作業量の合計値を算出する計算の概念を表したもので、個々の人員、道具及び機械の単位時間当たりの作業量がそれぞれバネとして表される。そして、これらのバネを並列接続したものが、災害対策チームが保有する資産全体の単位時間当たりの作業量の合計値として表される。
【0040】
CPU11は続いて、現場資産情報記憶部142に記憶された各災害対策チームの資産リストをもとに、この資産を構成する人員、道具及び機械それぞれの移動速度を表す情報を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、各処理済現場及び未処理現場の位置情報と、災害現場地図情報記憶部141に記憶された地図データに基づいて、上記各処理済現場から未処理現場までの移動距離をそれぞれ算出し、この算出された移動距離と上記読み出された移動速度を表す情報とに基づいて、各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動する際に必要な最低移動時間を算出する。この結果、災害対策チームが保有する資産の中で最も移動速度の遅い、例えば人員の歩行速度に対応する移動時間が、当該災害対策チームの最低移動時間として設定される。
【0041】
CPU11は続いて、上記計算された各災害対策チームの単位時間当たりの作業量の合計値をバネ定数Kp に、上記計算された各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な最低移動時間をバネの自然長x0 にそれぞれ反映する。図9はその様子を図示したものである。すなわち、災害対策チームが未処理現場の対策処理を完了するまでに要する災害対策時間は、バネの長さxとして表される。このバネの長さxのうち、x−x0 が災害対策チームが未処理現場で対策処理を実行するに必要な作業時間となる。
【0042】
次にCPU11は、ステップS223によりバネ平衡位置決定プログラム133を起動し、このバネ平衡位置決定プログラム133の制御の下で、以下のようにバネモデルのバネの平衡位置を決定する処理を実行する。
すなわち、CPU11は平衡位置を求めるための準備として、二次元座標上のバネモデルにおいて、先ずステップS2226により各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標をそれぞれ固定とする。また、ステップS2227において未処理現場を表すノードqの位置座標を可動とする。そして、この状態で各バネが例えば図12に示すように平衡状態となるときの未処理現場を表すノードqの二次元座標上の位置座標を計算する。
【0043】
いま、図13に示すように二次元座標平面上において、各バネのバネ定数をKAq、KBq、KCq、KDqとし、バネが平衡状態となったときの処理済現場のノードA,B,C,Dの位置座標を(xA,yA)、(xB,yB)、(xC,yC)、(xD,yD)、未処理現場qのノードの位置座標を(xq,yq)と表し、さらに各バネの自然長ベクトルに対応する位置座標を(xAq_0,yAq_0)、(xBq_0,yBq_0)、(xCq_0,yCq_0)、(xDq_0,yDq_0)と表すと、
−KAq(xA−xq−xAq_0)−KBq(xB−xq−xBq_0)
−KCq(xC−xq−xCq_0)−KDq(xD−xq−xDq_0)=0 …(1)
−KAq(yA−yq−yAq_0)−KBq(yB−yq−yBq_0)
−KCq(yC−yq−yCq_0)−KDq(yD−yq−yDq_0)=0 …(2)
であることから、未処理現場qのノードの位置座標(xq,yq)は
xq ={KAq(xA−xAq_0)+KBq(xB−xBq_0)+KCq(xC−xCq_0)
+KDq(xD−xDq_0)}/(KAq+KBq+KCq+KDq) …(3)
yq ={KAq(yA−yAq_0)+KBq(yB−yBq_0)+KCq(yC−yCq_0)
+KDq(yD−yDq_0)}/(KAq+KBq+KCq+KDq) …(4)
により算出することができる。
【0044】
なお、一般には
xq =ΣK(x−x0)/ΣK
yq =ΣK(y−y0)/ΣK
として算出される。
【0045】
次にCPU11は、割当決定プログラム134を起動し、この割当決定プログラム134の制御の下で以下のように割当決定処理を実行する。
すなわち、上記バネ平衡位置決定プログラム133により計算された、各バネが平衡状態となったときの未処理現場を表すノードqの位置座標(xq,yq)と、各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標(xA,yA)、(xB,yB)、(xC,yC)、(xD,yD)とに基づいて、各バネの長さを計算する。そして、この各バネの長さの計算結果をもとに、バネの長さが最も短くなるバネが接続された処理済現場を1つ選択し、この選択された処理済現場の災害対策チームを未処理現場へ派遣すべきチームとして決定する。
【0046】
例えば、いま処理済現場を表すノードAと未処理現場を表すノードqとを接続するバネの長さが最も短ければ、上記ノードAで表される処理済現場に滞在している災害対策チームを選択する。そして、この選択されたチームの情報端末に対し、未処理現場への移動を指示する情報を通信I/F15から送信する。ノードAで表される処理済現場に滞在している災害対策チームは、災害対策支援装置1から送信された移動指示を情報端末により受信すると、図14に示すように処理済現場(ノードA)から未処理現場(ノードq)に向け移動を開始し、到着後に自チームが保有する資産を用いて災害対策処理を開始する。なお、上記移動指示情報には、未処理現場の位置情報も付加される。またその際、災害による道路事情等を反映した移動経路情報を生成し、この移動経路情報を合わせて送信するようにしてもよい。
【0047】
以上述べたようにこの実施形態では、地図データを反映した二次元座標上において、処理済現場を表すノードA,B,C,Dに滞在する各災害対策チームの単位時間当たりの作業量をバネ定数に、また当該各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間をバネの自然長にそれぞれ反映したバネを定義し、処理済現場を表すノードA,B,C,Dと未処理現場を表すノードqとの間をそれぞれ上記バネにより接続したバネモデルを生成する。そして、各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標をそれぞれ固定としかつ未処理現場を表すノードqの位置座標を可動として、上記各バネが平衡状態となるときの未処理現場を表すノードqの位置座標を算出する。そして、この未処理現場を表すノードqの位置座標と各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標とから各バネのバネ長を算出して、このバネ長がもっとも短くなる処理済現場を特定する。そして、この特定された処理済現場の災害対策チームを未処理現場に派遣すべきチームとして選択し、移動指示を与えるようにしている。
【0048】
したがって、未処理現場の周辺エリアに、災害対策処理が完了した災害対策チームが複数存在する場合に、これらの災害対策チームのうちどのチームを上記未処理現場へ派遣すればよいかを、熟練を要することなくしかも適切に決定することが可能となる。
また、資産を構成する人員、道具及び機械の単位時間当たりの作業量と平均的な移動策度を表す情報が資産属性情報記憶部143に予め記憶され、この記憶された情報をもとにバネ定数及びバネの自然長を計算することができるので、計算処理を簡単かつ短時間に行うことができる。
【0049】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、未処理現場の周辺に処理済現場が見当らない場合には、上記未処理現場の周辺に存在する災害対策処理中の現場における処理終了時間を予測し、この予測された時間に基づいて派遣すべきチームを選択するようにしてもよい。
その他、災害対策支援装置の構成と資産割当制御の手順と処理内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0050】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…災害対策支援装置、2…入力部、3…表示部、11…CPU、12…バス、13…プログラムメモリ、14…データメモリ、15…通信インタフェース(通信I/F)、16…入力インタフェース(入力I/F)、17…表示インタフェース(表示I/F)、131…現場資産情報取得制御プログラム、132…バネ定数決定プログラム、133…バネ平衡位置決定プログラム、134…割当決定プログラム、141…災害現場地図情報記憶部、142…現場資産情報記憶部、143…資産属性情報記憶部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、災害対策処理現場に対する人員や機械等の資産の割当業務を支援する災害対策支援装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生後に実施される災害応急対策では、多種多様な災害対策業務が平行して進められ、状況は時間経過に伴って刻々と変化する。したがって、的確な災害対応業務の推進、業務間の調整の実施が重要な課題となっている。
このような課題を解決するためのアプローチとして、従来より災害対策業務の推進順序を順序グラフにより表現する試みがなされている。このように災害対策業務の推進順序を順序グラフにより表現することにより、全業務の時間系列の表現、並列業務を的確に把握することが可能となる(例えば、非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】石畑清、「岩波講座ソフトウェア科学3 アルゴリズムとデータ構造(第4刷) 4.グラフのアルゴリズム」p.224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、災害発生直後においては、新たに災害対策作業に割当可能な資産、つまり人員や道具、機械が不足することが容易に推測される。このため、別の現場において災害対策作業が終了した人員や機械等を未対策の現場の作業に割り当てる必要が生じる。その際、人員や機械等の割り当ては複数の条件、例えば作業員や機械の移動距離や、対策業務で用いる機械の種類を考慮しておこなわなければならない。
【0005】
そこで従来では、熟練した災害対策担当者が経験知に基づいて人手により人員や道具、機械等の割り当てを行っていた。このため、熟練した災害対策担当者が存在しない場合には、人員や機械等の割り当てが適切に行われない状況が想定される。また、熟練した災害対策担当者が存在する場合でも、過去に発生した災害による被害状況を参考にすることができない場合には、適切な人員や機械等の割り当てを行うことは困難である。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、災害対策現場に対する資産の割当処理を、熟練を要することなく適切に行えるようにする災害対策支援装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、災害対策処理がまだ行われていない未処理現場の位置を表す情報と、災害対策処理が終了した複数の処理済現場の位置情報と当該各処理済現場に滞在する災害対策チームが保有する災害対策のための資産を表す情報をそれぞれ取得し記憶する。この状態で、上記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報に基づいて当該各災害対策チームの単位時間当たりの作業量を求めると共に、上記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報と前記複数の処理済現場及び未処理現場の位置情報とに基づいて、前記各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を求める。そして、上記複数の処理済現場及び未処理現場をそれぞれその位置情報をもとに地図情報上に設定し、上記求められた作業量をバネ定数とすると共に上記求められた移動所要時間をバネの自然長とするバネを定義して、当該複数の処理済現場と未処理現場との間をそれぞれ上記バネにより接続したバネモデルを生成する。そして、この生成されたバネモデルにおいて、上記複数の処理済現場をそれぞれ固定端としかつ上記未処理現場を可動端としたときに上記各バネが平衡する状態を求め、この平衡した状態における各バネのバネ長を災害対策時間を表す情報として算出して、この算出された災害対策時間が最小となる処理済現場の災害対策チームを、上記未処理現場へ派遣すべきチームとして選択するようにしたものである。
【0008】
したがって、地図上において、未処理現場と災害対策処理が終了した複数の処理済現場との間を、当該処理済現場に滞在する各災害対策チームの単位時間当たりの作業量と、当該各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間をそれぞれバネ定数及びバネの自然長に反映したバネにより接続したバネモデルが生成される。そして、各処理済現場をそれぞれ固定端としかつ上記未処理現場を可動端として上記バネモデルが平衡状態となったときに、バネ長がもっとも短くなる処理済現場が特定され、この特定された処理済現場の災害対策チームが未処理現場に派遣すべきチームとして選択される。このため、複数の災害対策処理現場にそれぞれ対策処理が完了した災害対策チームが存在する場合に、これらの災害対策チームのうちどのチームを次の未対策の処理現場へ派遣すればよいかを、熟練を要することなく適切に決定することが可能となる。
【0009】
また、この発明は以下のような各種態様を備えることも特徴とする。
第1の態様は、作業量を求める際に、災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量を記憶手段から読み出し、この読み出された人員及び機種ごとの単位時間当たりの作業量を、前記資産を構成する人員の数及び機械の種類別台数に応じて加算することにより、災害対策チームごとの単位時間当たりの作業量の合計を求めるものである。
このようにすると、資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量をそれぞれ演算処理により計算する場合に比べ、簡単かつ短時間に求めることが可能となる。
【0010】
第2の態様は、移動所要時間を求める際に、災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の最低移動速度を表す情報を記憶手段から読み出し、処理済現場及び未処理現場の各位置情報と地図情報とに基づいて、前記処理済現場から未処理現場までの移動距離を算出する。そして、前記読み出された最低移動速度を表す情報と前記算出された移動距離とに基づいて、災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を算出するようにしたものである。
このようにすると、各災害対策チームの移動所要時間が、移動速度のもっとも遅い人員又は機械の移動速度を考慮して計算される。したがって、災害対策チームごとにチームが保有する資産の内容に応じて移動所要時間を求めることができ、これにより派遣すべきチームの選択をより適切に行うことが可能となる。
【0011】
第3の態様は、災害対策チームを選択する際に、各バネにバネ定数として与えた作業量が等しくなる状態を前記各バネが平衡する状態とし、この状態で地図情報を投影した二次元座標平面上における各バネの長さを災害対策時間を表す情報として算出するものである。
このようにすると、バネモデルが平衡した状態で各バネ長が二次元座標平面における座標計算により求めることができる。
【発明の効果】
【0012】
すなわちこの発明によれば、災害対策現場に対する資産の割当処理を、熟練を要することなく適切に行うことができる災害対策支援装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係わる災害対策支援装置の機能構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した災害対策支援装置による資産割当制御のメインルーチンを示すフローチャート。
【図3】図2に示したメインルーチンのうちバネモデルによる資産割当処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】図3に示したバネモデルによる資産割当処理ルーチンのうち方法1による処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】図3に示したバネモデルによる資産割当処理ルーチンのうち方法2による処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】図4に示した処理ルーチンのうちバネ定数決定処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【図7】災害対策処理業務を表すグラフを表す図。
【図8】エッジの重みのバネ定数による表現の一例を示す図。
【図9】災害対策時間、人員や機械の移動時間及び作業時間をバネにより表した図。
【図10】災害対策処理済の現場と未処理の現場との間に無向エッジを設定する処理を説明するための図。
【図11】図10により設定された無向エッジにバネを設定する処理を説明するための図。
【図12】図11により設定されたバネの平衡状態を見つける処理を説明するための図。
【図13】図12に示したバネの平衡状態をxy二次元座標平面上に表した図。
【図14】資産を移動させるチームの選択処理とその移動の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る災害対策支援装置の機能構成を示すブロック図である。この災害対策支援装置は例えばサーバコンピュータにより構成され、中央処理ユニット(Central Processing Unit;CPU)11に対しバス12を介してプログラムメモリ13、データメモリ14、通信インタフェース(通信I/F)15、入力インタフェース(入力I/F)16及び表示インタフェース(表示I/F)17を接続したものとなっている。
【0015】
通信I/F15は、CPU11の制御の下、災害対策現場に存在する災害対策チームの情報端末(図示せず)との間で、通信ネットワークを介して情報伝送を行う。入力I/F16には入力部2が接続される。入力部2は、キーボードやマウス等の入力デバイスと、外部記憶媒体を含む。入力I/F16は入力部2から入力データを受け取ってCPU11へ転送する。表示I/F17には、例えば液晶表示器(LCD:Liquid Crystal Display)を用いた表示部3が接続される。表示I/F17は、CPU11の制御の下で表示データを生成して表示部3に表示させる。
【0016】
データメモリ14には、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等で構成され、この発明を実施するために必要な記憶部として、災害現場地図情報記憶部141と、現場資産情報記憶部142と、資産属性情報記憶部143が設けられている。災害現場地図情報記憶部141には、少なくとも災害対策現場を含む地図データが格納されている。この地図データは住所や施設等が緯度経度に対応付けられている。
【0017】
現場資産情報記憶部142は、災害対策現場に存在する災害対策チームの情報端末から収集した現場資産情報を記憶するために用いられる。現場資産情報は、災害対策処理が終了した現場に滞在する災害対策チームが保有する資産、例えば人員、道具及び機械をリスト化したもので、現場又はチームの識別情報に対応付けて、上記人員の担当分野別の人数と、道具及び機械の種類別の台数を記憶したものからなる。なお、人員の担当分野としては、電気工事担当、通信工事担当、土木工事担当、建物工事担当等が挙げられ、また道具及び機械の具体例としては、バケット車、ブルドーザ、クレーン車、ダンプカー、土嚢、電気ケーブル、通信機器等が挙げられる。
【0018】
現場資産属性情報記憶部143には、災害対策現場で災害対策チームが使用する資産、例えば人員、道具及び機械の種類ごとに、その識別情報に対応付けて単位時間当たりの作業量を表す情報と移動速度を表す情報が記憶される。単位時間当たりの作業量は、例えば1時間当たりに排除可能な瓦礫等の重量で表される。移動速度は、道路を移動する際の平均時速で表される。
【0019】
プログラムメモリ15には、この発明を実施するために必要なアプリケーション・プログラムとして、現場資産情報取得制御プログラム131と、バネ定数決定プログラム132と、バネ平衡位置決定プログラム133と、割当決定プログラム134が格納されている。
【0020】
現場資産情報取得制御プログラム131は、以下の処理をCPU11に実行させる。
すなわち、次の未処理現場へ派遣する災害対策チームを決定する際に、先ず当該未処理現場から所定の距離の範囲内に位置する対策処理済現場を対策履歴情報から選択する。そして、この選択された各対策処理済現場に滞在する災害対策チームの情報端末に対し通信I/F15により順次アクセスし、当該情報端末から災害対策チームが保有する資産のリストを受信して、現場資産情報記憶部142に記憶させる。
【0021】
バネ定数決定プログラム132は、以下の処理をCPU11に実行させる。
(1) 現場資産情報記憶部142に記憶された各災害対策チームの資産リストをもとに、この資産を構成する人員、道具及び機械の単位時間当たりの作業量(作業能力量)を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、この読み出された人員、道具及び機械ごとの単位時間当たりの作業量を、上記資産を構成する人員の数、道具及び機械の種類別台数に応じて加算し、これにより災害対策チームごとの単位時間当たりの作業量の合計を求める処理。
【0022】
(2) 現場資産情報記憶部142に記憶された各災害対策チームの資産リストをもとに、この資産を構成する人員、道具及び機械の移動速度を表す情報を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、各処理済現場及び未処理現場の位置情報と、災害現場地図情報記憶部141に記憶された地図データに基づいて、上記各処理済現場から未処理現場までの移動距離をそれぞれ算出する。そして、上記読み出された移動速度を表す情報と上記算出された移動距離とに基づいて、各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動する際に必要な最低移動時間を算出する処理。
【0023】
(3) 上記(1) により計算された各災害対策チームの単位時間当たりの作業量の合計をバネ定数に、上記(2) により計算された各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な最低移動時間をバネの自然長にそれぞれ反映したバネを定義する。そして、上記地図データ上にプロットされた未処理現場と各処理済現場との間を、上記定義されたバネにより接続したバネモデルを生成する処理。
【0024】
バネ平衡位置決定プログラム133は、上記バネ定数決定プログラム132により生成された地図データ上のバネモデルにおいて、各処理済現場をそれぞれ固定端としかつ未処理現場を可動端としたときに各バネが平衡状態となるときの未処理現場の位置を計算する処理を、CPU11に実行させる。
【0025】
割当決定プログラム134は、以下の処理をCPU11に実行させる。
(1) 上記バネ平衡位置決定プログラム133により計算された、各バネが平衡状態となったときの未処理現場の位置と、各処理済現場の位置とに基づいて、各バネの長さを計算する処理。この平衡状態における各バネの長さは、該当する災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間と、当該災害対策チームが保有する資産により災害対策処理を完了するまでに要する作業時間とを加算した時間、つまり災害対策処理時間を表現している。
(2) 上記平衡状態における各バネの長さの計算結果をもとに、バネの長さが最も短くなるバネが接続された処理済現場を選択し、この選択された処理済現場の災害対策チームを上記未処理現場へ派遣すべきチームとして決定する処理。
【0026】
次に、以上のように構成された災害対策支援装置による動作を説明する。
(1)資産割当制御のメインルーチン
災害対策が必要な現場に対する対策処理資産の割当制御は、以下のように実行される。図2はそのメインルーチンを示すフローチャートである。
先ずステップS0において、実行手順決定プログラム(図示せず)に従い、災害対策処理対象の現場について災害対策処理業務の実行順序が決定される。例えば、第一段階として瓦礫の片付けをし、第二段階として建物を建設し、第三段階として通信工事を行うというように決定される。
【0027】
次にステップS1において、現場資産情報取得制御プログラム131に従い、現場資産情報の取得処理が実行される。この処理では、先ず次に災害対策処理を行う予定の未処理現場の位置から所定の距離の範囲内に位置する対策処理済現場が、データメモリ14に記憶されている対策履歴情報(図示せず)から選択される。そして、この選択された対策処理済現場に滞在する災害対策チームの情報端末に対し通信I/F15からアクセスされる。そして、このアクセスに対し情報端末から、災害対策チームが保有する資産のリストを表す情報が送信されると、この資産リストの情報は通信I/F15により受信され、現場資産情報記憶部142に記憶される。
この結果、例えば未処理現場の周辺に4つの対策済現場が存在したとすれば、これらの対策済現場にそれぞれ滞在する災害対策チームが保有する資産リストが通信ネットワークを介して収集され、データメモリ14内の現場資産情報記憶部142に記憶される。
【0028】
続いてステップS2において、バネ定数決定プログラム132、バネ平衡位置決定プログラム133及び割当決定プログラム134に従い、バネモデルを利用した災害対策処理資産の割当処理が実行される。この処理は後に詳しく述べる。
【0029】
最後にステップS3において、すべての未処理現場に対する災害対策のための資産割当処理が終了したか否かが判定される。そして、まだ資産割当処理が行われていない未処理現場が残っていれば、ステップS0に戻って次の未処理現場を選択し、この未処理現場に対しステップS0〜S2による処理を行う。一方、すべての未処理現場に対する災害対策のための資産割当処理が終了すると、災害対策支援装置1は災害対策支援処理を終了する。
【0030】
(2)バネモデルを利用した災害対策処理資産の割当処理
災害対策支援装置1は、バネモデルを利用した災害対策処理資産の割当処理を以下のように実行する。図3はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
資産の割当処理方法には、別の場所での業務が終了した資産を割り当てる第1の方法と、災害対策業務にまだ割り当てられていない資産を割り当てる第2の方法がある。これら第1及び第2の方法のうちのどちらを使用するかは、予め防災担当者が入力部2を操作することで指定入力する。
【0031】
災害対策支援装置1のCPU11は、上記防災担当者により指定された情報をもとに、先ずステップS21において第1の方法を採用するか否かを判定し、第1の方法が指定されていればステップS22に移行して上記第1の方法による処理を実行する。これに対し第1の方法が指定されていなければ、ステップS23により第2の方法を採用するか否かを判定し、第2の方法が指定されていればステップS24に移行して上記第2の方法による処理を実行する。
なお、上記第1の方法を採用するか第2の方法を採用するかについては、各災害対策チームの活動状況を監視し、出動中の災害対策チームの中に作業が終了したチームがある場合には方法1を採用し、作業が終了したチームがない場合に方法2を採用するようにしてもよい。
【0032】
(2−1)方法2による資産割当処理
方法2が選択された場合、災害対策支援装置1は、この方法2による資産割当処理を以下のように実行する。図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
災害対策支援装置1のCPU11は、先ずステップS241において、未処理現場の位置に対し最寄りの事務所等に災害対策チームが待機中であるか否かを判定し、待機中であればこの災害対策チームの端末に対し出動指示を送信する。これに対し、最寄りの事務所等に災害対策チームが待機していなければ、未処理現場に対し次に近い事務所等を選択して、この事務所等に災害対策チームが待機しているか否かを判定し、待機中であればこのチームの端末に出動指示を送信する。
【0033】
一方、未処理現場の周辺に派遣可能な災害対策チームが存在しない場合には、CPU11はステップS242において、未処理現場の周辺において予め登録された法人又は個人の端末に対し出動要請を送信する。出動要請を受けた法人又は個人は、予め準備してある道具や機械を携えて上記未処理現場へ出向く。
【0034】
(2−2)方法1による資産割当処理
災害対策支援装置1は、方法1による資産割当処理を以下のように実行する。図4はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
装置1のCPU11は、先ずステップS221において災害現場をグラフのノードとして表す。図7はその例を示すもので、ここでは災害対策処理利業務が終了した現場をノードp、次に災害対策処理業務を実施する現場をノードqと表している。Apqはノードpからノードqへ向かう無向エッジを示している。無向エッジの物理的な意味は、現場pから現場qへ災害対策チームを移動させる可能性があることを示す。
【0035】
装置1のCPU11は、次にステップS222においてバネ定数決定プログラム132を起動し、このプログラム132に従いバネ定数の決定処理を以下のように行う。図6はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、CPU11は先ずステップS2221において、災害現場地図情報記憶部141から災害対策エリアを含む地図データを選択的に読み出し、災害対策処理業務が終了した現場(処理済現場)のノードpをその位置情報をもとに上記地図データ上に配置する。また、それと共にステップS2222において、次に災害対策処理業務を実施する現場(未処理現場)のノードqをその位置情報をもとに上記地図データ上に配置する。なお、処理済現場及び未処理現場の位置情報は、データメモリ14に記憶されている災害対策履歴情報に記載された処理済現場に関する情報や、新たに防災担当者が入力部2から入力した未処理現場に関する情報を用いる。
【0036】
CPU11は、次にステップS2223において、未処理現場を原点(0,0)として経度方向(東を正)をx、緯度方向(北を正)をyとする二次元座標を定義し、この二次元座標平面上に処理済現場を表すノードpの座標(xp,yp)を設定する。続いてステップS2224において、処理済現場のノードpと未処理現場のノードqとの間に無向エッジ(p,q)を設定する。例えば、いま未処理現場へ災害対策チームを移動させることが可能な処理済現場として、4箇所の処理済現場が選択されていれば、これら4箇所の処理済現場のノードA,B,C,Dと未処理現場のノードqとの間に、それぞれ図10に示すように無向エッジAAq,ABq,ACq,ADqを設定する。
【0037】
CPU11は、次にステップS2225において、上記設定された各無向エッジAAq,ABq,ACq,ADqに、それぞれ図11に示すようにバネKAq,KBq,KCq,KDqを設定する。すなわち、4箇所の処理済現場のノードA,B,C,Dと未処理現場のノードqとの間をそれぞれバネKAq,KBq,KCq,KDqにより接続したバネモデルを生成する。
【0038】
ところで、上記バネKAq,KBq,KCq,KDqは次のように定義される。
すなわち、CPU11は、先ず現場資産情報記憶部142から上記4箇所の処理済現場の災害対策チームの資産リストを読み出し、この読み出した資産リストに記載された人員、道具及び機械のそれぞれについてその単位時間当たりの作業量を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、この読み出された人員、道具及び機械ごとの単位時間当たりの作業量を、上記資産を構成する人員の数、道具及び機械の種類別台数に応じて加算し、これにより各災害対策チームが保有する資産全体の単位時間当たりの作業量の合計値を算出する。
【0039】
図8は、1つの災害対策チームが保有する資産全体の作業量の合計値を算出する計算の概念を表したもので、個々の人員、道具及び機械の単位時間当たりの作業量がそれぞれバネとして表される。そして、これらのバネを並列接続したものが、災害対策チームが保有する資産全体の単位時間当たりの作業量の合計値として表される。
【0040】
CPU11は続いて、現場資産情報記憶部142に記憶された各災害対策チームの資産リストをもとに、この資産を構成する人員、道具及び機械それぞれの移動速度を表す情報を資産属性情報記憶部143から読み出す。そして、各処理済現場及び未処理現場の位置情報と、災害現場地図情報記憶部141に記憶された地図データに基づいて、上記各処理済現場から未処理現場までの移動距離をそれぞれ算出し、この算出された移動距離と上記読み出された移動速度を表す情報とに基づいて、各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動する際に必要な最低移動時間を算出する。この結果、災害対策チームが保有する資産の中で最も移動速度の遅い、例えば人員の歩行速度に対応する移動時間が、当該災害対策チームの最低移動時間として設定される。
【0041】
CPU11は続いて、上記計算された各災害対策チームの単位時間当たりの作業量の合計値をバネ定数Kp に、上記計算された各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な最低移動時間をバネの自然長x0 にそれぞれ反映する。図9はその様子を図示したものである。すなわち、災害対策チームが未処理現場の対策処理を完了するまでに要する災害対策時間は、バネの長さxとして表される。このバネの長さxのうち、x−x0 が災害対策チームが未処理現場で対策処理を実行するに必要な作業時間となる。
【0042】
次にCPU11は、ステップS223によりバネ平衡位置決定プログラム133を起動し、このバネ平衡位置決定プログラム133の制御の下で、以下のようにバネモデルのバネの平衡位置を決定する処理を実行する。
すなわち、CPU11は平衡位置を求めるための準備として、二次元座標上のバネモデルにおいて、先ずステップS2226により各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標をそれぞれ固定とする。また、ステップS2227において未処理現場を表すノードqの位置座標を可動とする。そして、この状態で各バネが例えば図12に示すように平衡状態となるときの未処理現場を表すノードqの二次元座標上の位置座標を計算する。
【0043】
いま、図13に示すように二次元座標平面上において、各バネのバネ定数をKAq、KBq、KCq、KDqとし、バネが平衡状態となったときの処理済現場のノードA,B,C,Dの位置座標を(xA,yA)、(xB,yB)、(xC,yC)、(xD,yD)、未処理現場qのノードの位置座標を(xq,yq)と表し、さらに各バネの自然長ベクトルに対応する位置座標を(xAq_0,yAq_0)、(xBq_0,yBq_0)、(xCq_0,yCq_0)、(xDq_0,yDq_0)と表すと、
−KAq(xA−xq−xAq_0)−KBq(xB−xq−xBq_0)
−KCq(xC−xq−xCq_0)−KDq(xD−xq−xDq_0)=0 …(1)
−KAq(yA−yq−yAq_0)−KBq(yB−yq−yBq_0)
−KCq(yC−yq−yCq_0)−KDq(yD−yq−yDq_0)=0 …(2)
であることから、未処理現場qのノードの位置座標(xq,yq)は
xq ={KAq(xA−xAq_0)+KBq(xB−xBq_0)+KCq(xC−xCq_0)
+KDq(xD−xDq_0)}/(KAq+KBq+KCq+KDq) …(3)
yq ={KAq(yA−yAq_0)+KBq(yB−yBq_0)+KCq(yC−yCq_0)
+KDq(yD−yDq_0)}/(KAq+KBq+KCq+KDq) …(4)
により算出することができる。
【0044】
なお、一般には
xq =ΣK(x−x0)/ΣK
yq =ΣK(y−y0)/ΣK
として算出される。
【0045】
次にCPU11は、割当決定プログラム134を起動し、この割当決定プログラム134の制御の下で以下のように割当決定処理を実行する。
すなわち、上記バネ平衡位置決定プログラム133により計算された、各バネが平衡状態となったときの未処理現場を表すノードqの位置座標(xq,yq)と、各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標(xA,yA)、(xB,yB)、(xC,yC)、(xD,yD)とに基づいて、各バネの長さを計算する。そして、この各バネの長さの計算結果をもとに、バネの長さが最も短くなるバネが接続された処理済現場を1つ選択し、この選択された処理済現場の災害対策チームを未処理現場へ派遣すべきチームとして決定する。
【0046】
例えば、いま処理済現場を表すノードAと未処理現場を表すノードqとを接続するバネの長さが最も短ければ、上記ノードAで表される処理済現場に滞在している災害対策チームを選択する。そして、この選択されたチームの情報端末に対し、未処理現場への移動を指示する情報を通信I/F15から送信する。ノードAで表される処理済現場に滞在している災害対策チームは、災害対策支援装置1から送信された移動指示を情報端末により受信すると、図14に示すように処理済現場(ノードA)から未処理現場(ノードq)に向け移動を開始し、到着後に自チームが保有する資産を用いて災害対策処理を開始する。なお、上記移動指示情報には、未処理現場の位置情報も付加される。またその際、災害による道路事情等を反映した移動経路情報を生成し、この移動経路情報を合わせて送信するようにしてもよい。
【0047】
以上述べたようにこの実施形態では、地図データを反映した二次元座標上において、処理済現場を表すノードA,B,C,Dに滞在する各災害対策チームの単位時間当たりの作業量をバネ定数に、また当該各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動するに必要な移動所要時間をバネの自然長にそれぞれ反映したバネを定義し、処理済現場を表すノードA,B,C,Dと未処理現場を表すノードqとの間をそれぞれ上記バネにより接続したバネモデルを生成する。そして、各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標をそれぞれ固定としかつ未処理現場を表すノードqの位置座標を可動として、上記各バネが平衡状態となるときの未処理現場を表すノードqの位置座標を算出する。そして、この未処理現場を表すノードqの位置座標と各処理済現場を表すノードA,B,C,Dの位置座標とから各バネのバネ長を算出して、このバネ長がもっとも短くなる処理済現場を特定する。そして、この特定された処理済現場の災害対策チームを未処理現場に派遣すべきチームとして選択し、移動指示を与えるようにしている。
【0048】
したがって、未処理現場の周辺エリアに、災害対策処理が完了した災害対策チームが複数存在する場合に、これらの災害対策チームのうちどのチームを上記未処理現場へ派遣すればよいかを、熟練を要することなくしかも適切に決定することが可能となる。
また、資産を構成する人員、道具及び機械の単位時間当たりの作業量と平均的な移動策度を表す情報が資産属性情報記憶部143に予め記憶され、この記憶された情報をもとにバネ定数及びバネの自然長を計算することができるので、計算処理を簡単かつ短時間に行うことができる。
【0049】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、未処理現場の周辺に処理済現場が見当らない場合には、上記未処理現場の周辺に存在する災害対策処理中の現場における処理終了時間を予測し、この予測された時間に基づいて派遣すべきチームを選択するようにしてもよい。
その他、災害対策支援装置の構成と資産割当制御の手順と処理内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0050】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…災害対策支援装置、2…入力部、3…表示部、11…CPU、12…バス、13…プログラムメモリ、14…データメモリ、15…通信インタフェース(通信I/F)、16…入力インタフェース(入力I/F)、17…表示インタフェース(表示I/F)、131…現場資産情報取得制御プログラム、132…バネ定数決定プログラム、133…バネ平衡位置決定プログラム、134…割当決定プログラム、141…災害現場地図情報記憶部、142…現場資産情報記憶部、143…資産属性情報記憶部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害対策エリアの地図情報を記憶した地図情報記憶部と、
災害対策処理がまだ行われていない未処理現場の位置を表す情報の入力を受付ける手段と、
災害対策処理が終了した複数の処理済現場の位置情報と、当該各処理済現場に滞在する災害対策チームが保有する災害対策のための資産を表す情報をそれぞれ取得し記憶する手段と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報に基づいて、当該各災害対策チームの単位時間当たりの作業量を求める手段と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報と、前記複数の処理済現場及び未処理現場の位置情報とに基づいて、前記各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を求める手段と、
前記複数の処理済現場及び未処理現場をそれぞれその位置情報をもとに前記地図情報上に設定し、前記求められた作業量をバネ定数とすると共に前記求められた移動所要時間をバネの自然長とするバネを定義して、当該複数の処理済現場と未処理現場との間をそれぞれ前記バネにより接続したバネモデルを生成する手段と、
前記生成されたバネモデルにおいて、前記複数の処理済現場をそれぞれ固定端としかつ前記未処理現場を可動端としたときに前記各バネが平衡する状態を求め、この平衡した状態における各バネのバネ長を災害対策時間を表す情報として算出して、この算出された災害対策時間が最小となる処理済現場の災害対策チームを、前記未処理現場へ派遣すべきチームとして選択する選択手段と
を具備することを特徴とする災害対策支援装置。
【請求項2】
前記作業量を求める手段は、
前記資産を構成する人員及び複数種類の機械のそれぞれについて単位時間当たりの作業量を表す情報を記憶した作業量記憶手段と、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量を前記作業量記憶手段から読み出し、この読み出された人員及び機種ごとの単位時間当たりの作業量を、前記資産を構成する人員の数及び機械の種類別台数に応じて加算する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の災害対策支援装置。
【請求項3】
前記移動所要時間を求める手段は、
前記資産を構成する人員及び複数種類の機械の最低移動速度を表す情報を記憶した移動速度記憶手段と、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の最低移動速度を表す情報を前記移動速度記憶手段から読み出す手段と、
前記処理済現場及び未処理現場の各位置情報と、前記記憶された地図情報とに基づいて、前記処理済現場から未処理現場までの移動距離を算出する手段と、
前記読み出された最低移動速度を表す情報と、前記算出された移動距離とに基づいて、災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を算出する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の災害対策支援装置。
【請求項4】
前記選択手段は、各バネにバネ定数として与えた作業量が等しくなる状態を前記各バネが平衡する状態とし、この状態で前記地図情報を投影した二次元座標平面上における各バネの長さを災害対策時間を表す情報として算出することを特徴とする請求項1記載の災害対策支援装置。
【請求項5】
災害対策処理がまだ行われていない未処理現場の位置を表す情報の入力を受付ける過程と、
災害対策処理が終了した複数の処理済現場の位置情報と、当該各処理済現場に滞在する災害対策チームが保有する災害対策のための資産を表す情報をそれぞれ取得し記憶する過程と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報に基づいて、当該各災害対策チームの単位時間当たりの作業量を求める過程と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報と、前記複数の処理済現場及び未処理現場の位置情報とに基づいて、前記各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を求める過程と、
前記複数の処理済現場及び未処理現場をそれぞれその位置情報をもとに地図情報上に設定し、前記求められた作業量をバネ定数とすると共に前記求められた移動所要時間をバネの自然長とするバネを定義して、当該複数の処理済現場と未処理現場との間をそれぞれ前記バネにより接続したバネモデルを生成する過程と、
前記生成されたバネモデルにおいて、前記複数の処理済現場をそれぞれ固定端としかつ前記未処理現場を可動端としたときに前記各バネが平衡する状態を求め、この平衡した状態における各バネのバネ長を災害対策時間を表す情報として算出して、この算出された災害対策時間が最小となる処理済現場の災害対策チームを、前記未処理現場へ派遣すべきチームとして選択する過程と
を具備することを特徴とする災害対策支援方法。
【請求項6】
前記作業量を求める過程は、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量を記憶手段から読み出す過程と、
前記読み出された人員及び機種ごとの単位時間当たりの作業量を、前記資産を構成する人員の数及び機械の種類別台数に応じて加算することにより、災害対策チームごとの単位時間当たりの作業量を求める過程と
を備えることを特徴とする請求項5記載の災害対策支援方法。
【請求項7】
前記移動所要時間を求める過程は、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の最低移動速度を表す情報を記憶手段から読み出す過程と、
前記処理済現場及び未処理現場の各位置情報と、前記記憶された地図情報とに基づいて、前記処理済現場から未処理現場までの移動距離を算出する過程と、
前記読み出された最低移動速度を表す情報と、前記算出された移動距離とに基づいて、災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を算出する過程と
を備えることを特徴とする請求項5記載の災害対策支援方法。
【請求項8】
前記選択する過程は、各バネにバネ定数として与えた作業量が等しくなる状態を前記各バネが平衡する状態とし、この状態で前記地図情報を投影した二次元座標平面上における各バネの長さを災害対策時間を表す情報として算出することを特徴とする請求項5記載の災害対策支援方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載の災害対策支援方法が備える各過程を、災害対策支援装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項1】
災害対策エリアの地図情報を記憶した地図情報記憶部と、
災害対策処理がまだ行われていない未処理現場の位置を表す情報の入力を受付ける手段と、
災害対策処理が終了した複数の処理済現場の位置情報と、当該各処理済現場に滞在する災害対策チームが保有する災害対策のための資産を表す情報をそれぞれ取得し記憶する手段と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報に基づいて、当該各災害対策チームの単位時間当たりの作業量を求める手段と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報と、前記複数の処理済現場及び未処理現場の位置情報とに基づいて、前記各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を求める手段と、
前記複数の処理済現場及び未処理現場をそれぞれその位置情報をもとに前記地図情報上に設定し、前記求められた作業量をバネ定数とすると共に前記求められた移動所要時間をバネの自然長とするバネを定義して、当該複数の処理済現場と未処理現場との間をそれぞれ前記バネにより接続したバネモデルを生成する手段と、
前記生成されたバネモデルにおいて、前記複数の処理済現場をそれぞれ固定端としかつ前記未処理現場を可動端としたときに前記各バネが平衡する状態を求め、この平衡した状態における各バネのバネ長を災害対策時間を表す情報として算出して、この算出された災害対策時間が最小となる処理済現場の災害対策チームを、前記未処理現場へ派遣すべきチームとして選択する選択手段と
を具備することを特徴とする災害対策支援装置。
【請求項2】
前記作業量を求める手段は、
前記資産を構成する人員及び複数種類の機械のそれぞれについて単位時間当たりの作業量を表す情報を記憶した作業量記憶手段と、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量を前記作業量記憶手段から読み出し、この読み出された人員及び機種ごとの単位時間当たりの作業量を、前記資産を構成する人員の数及び機械の種類別台数に応じて加算する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の災害対策支援装置。
【請求項3】
前記移動所要時間を求める手段は、
前記資産を構成する人員及び複数種類の機械の最低移動速度を表す情報を記憶した移動速度記憶手段と、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の最低移動速度を表す情報を前記移動速度記憶手段から読み出す手段と、
前記処理済現場及び未処理現場の各位置情報と、前記記憶された地図情報とに基づいて、前記処理済現場から未処理現場までの移動距離を算出する手段と、
前記読み出された最低移動速度を表す情報と、前記算出された移動距離とに基づいて、災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を算出する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の災害対策支援装置。
【請求項4】
前記選択手段は、各バネにバネ定数として与えた作業量が等しくなる状態を前記各バネが平衡する状態とし、この状態で前記地図情報を投影した二次元座標平面上における各バネの長さを災害対策時間を表す情報として算出することを特徴とする請求項1記載の災害対策支援装置。
【請求項5】
災害対策処理がまだ行われていない未処理現場の位置を表す情報の入力を受付ける過程と、
災害対策処理が終了した複数の処理済現場の位置情報と、当該各処理済現場に滞在する災害対策チームが保有する災害対策のための資産を表す情報をそれぞれ取得し記憶する過程と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報に基づいて、当該各災害対策チームの単位時間当たりの作業量を求める過程と、
前記記憶された各災害対策チームの資産を表す情報と、前記複数の処理済現場及び未処理現場の位置情報とに基づいて、前記各災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を求める過程と、
前記複数の処理済現場及び未処理現場をそれぞれその位置情報をもとに地図情報上に設定し、前記求められた作業量をバネ定数とすると共に前記求められた移動所要時間をバネの自然長とするバネを定義して、当該複数の処理済現場と未処理現場との間をそれぞれ前記バネにより接続したバネモデルを生成する過程と、
前記生成されたバネモデルにおいて、前記複数の処理済現場をそれぞれ固定端としかつ前記未処理現場を可動端としたときに前記各バネが平衡する状態を求め、この平衡した状態における各バネのバネ長を災害対策時間を表す情報として算出して、この算出された災害対策時間が最小となる処理済現場の災害対策チームを、前記未処理現場へ派遣すべきチームとして選択する過程と
を具備することを特徴とする災害対策支援方法。
【請求項6】
前記作業量を求める過程は、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の種類に対応する単位時間当たりの作業量を記憶手段から読み出す過程と、
前記読み出された人員及び機種ごとの単位時間当たりの作業量を、前記資産を構成する人員の数及び機械の種類別台数に応じて加算することにより、災害対策チームごとの単位時間当たりの作業量を求める過程と
を備えることを特徴とする請求項5記載の災害対策支援方法。
【請求項7】
前記移動所要時間を求める過程は、
前記災害対策チームごとに、その資産を構成する人員及び機械の最低移動速度を表す情報を記憶手段から読み出す過程と、
前記処理済現場及び未処理現場の各位置情報と、前記記憶された地図情報とに基づいて、前記処理済現場から未処理現場までの移動距離を算出する過程と、
前記読み出された最低移動速度を表す情報と、前記算出された移動距離とに基づいて、災害対策チームが処理済現場から未処理現場へ移動しようとするときの移動所要時間を算出する過程と
を備えることを特徴とする請求項5記載の災害対策支援方法。
【請求項8】
前記選択する過程は、各バネにバネ定数として与えた作業量が等しくなる状態を前記各バネが平衡する状態とし、この状態で前記地図情報を投影した二次元座標平面上における各バネの長さを災害対策時間を表す情報として算出することを特徴とする請求項5記載の災害対策支援方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載の災害対策支援方法が備える各過程を、災害対策支援装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−14577(P2012−14577A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152186(P2010−152186)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
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