説明

災害情報収集管理システム及び災害情報収集管理方法

【課題】 ファクシミリによるイメージ情報からなる災害情報を収集して分類、管理、整理を効率よく行えるようにする。
【解決手段】 複数の拠点からのファクシミリによるイメージ情報を受信する受信手段1と、受信手段により受信したイメージ情報に場所・時間情報及び災害事象に係る分析・判断情報を付与して災害情報データ4を生成する災害情報データ生成手段2、3と、災害情報データ及び地図データを格納するデータ記憶手段11、12と、場所・時間情報及び災害事象に係る分析・判断情報を検索キーとしてデータ記憶手段から災害情報データ及び地図データを検索して読み出し、場所に対応する地図上に災害情報を出力し管理する災害情報管理手段13〜16とを備え、災害情報収集管理システムとして、複数の拠点からファクシミリによるイメージ情報を収集して管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の拠点からファクシミリによるイメージ情報を収集して管理する災害情報収集管理システム及び災害情報収集管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広域に災害情報を監視するものとして、災害規模が多国間に及ぶような災害情報を相互に提供できるようにした国間の災害情報提供システム(例えば、特許文献1参照)、防犯防災センサの異常情報を中央のサーバを介して建物の近隣の契約者にメッセージとして送信する地域相互防犯防災システム(例えば、特許文献2参照)などの提案がある。
【0003】
各自治体等から被災地の災害情報を中央官庁や県本部が広域的に収集し監視するシステムを想定した場合、ファクシミリは、迅速な災害情報の伝達手段として便利である。例えばメールのような場合には、キー入力により災害情報を文章にして送信することが必要であるため、簡便かつ迅速に災害情報を編集して送信する手段としてはある面でファクシミリより劣っている。ファクシミリは、例えば地図を含む所定の送信用シートを何種類か用意しておくと、そこにマーク等を付け、手書き情報を少し加えるだけでも的確な災害情報を送信でき、より簡便かつ迅速な災害情報の編集、送信が可能になる。
【特許文献1】特開2003−36333号公報
【特許文献2】特開2004−272763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ファクシミリによる災害情報は、紙を媒体としてイメージ情報で管理され、情報量が多くなると受信した紙の山になってしまう。地域ごとに、災害の事象やレベル毎に整理(スタック)して管理しないと、的確に災害情報を把握することが難しくなる。例えば各地から多数の災害情報がファクシミリにより送信されてきて、紙の山ができてしまうと、そこから緊急性の高いもの、相互に近いもの、関連が深いもの等を逐一判別して整理し抽出するには、多くの時間や労力が必要になり迅速な対応ができない。したがって、地震による災害、台風による水害や地盤崩落などのように災害が広域に及ぶ場合、それらのファクシミリ受信したイメージ情報による災害情報を関連付けて整理し、さらに緊急度に応じて管理を行うことは難しいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、ファクシミリによるイメージ情報からなる災害情報を収集して分類、管理、整理を効率よく行えるようにするものである。
【0006】
そのために本発明は、複数の拠点からファクシミリによるイメージ情報を収集して管理する災害情報収集管理システムとして、複数の拠点からのファクシミリによるイメージ情報を受信する受信手段と、前記受信手段により受信したイメージ情報に場所・時間情報及び災害事象に係る分析・判断情報を付与して災害情報データを生成する災害情報データ生成手段と、前記災害情報データ及び地図データを格納するデータ記憶手段と、前記場所・時間情報及び災害事象に係る分析・判断情報を検索キーとして前記データ記憶手段から前記災害情報データ及び地図データを検索して読み出し、前記場所に対応する地図上に災害情報を出力し管理する災害情報管理手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
前記災害情報管理手段は、同一場所の複数の災害情報を地図上にスタック形状のアイコンにより出力し、前記災害情報管理手段は、前記アイコンの選択により選択された場所の複数の災害情報をページメクリの操作モードにより出力し、災害情報の選択にしたがいイメージ情報を出力することを特徴とする。
【0008】
また、複数の拠点からファクシミリによるイメージ情報を収集して管理する災害情報収集管理方法として、複数の拠点からのファクシミリによるイメージ情報を受信し、前記受信したイメージ情報に場所・時間情報を付与し、前記受信したイメージ情報から災害事象に係る分析、判断の結果として得られる分析・判断情報を付与し、前記場所・時間情報と分析・判断情報をイメージ情報に付与した災害情報データを単位としてデータを蓄積し、地図データと災害情報データに基づき地図上に前記場所・時間情報に基づき災害情報を貼り付けて管理することを特徴とし、前記災害情報は、前記場所・時間情報と分析・判断情報を検索キーとして検索することにより、検索された災害情報を前記地図上に貼り付けて出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファクシミリにより受信したイメージ情報に機械的に付与することができる場所・時間情報と専門的な知識と経験に基づき付与しなければないない分析・判断情報を分けることにより、場所・時間情報と分析・判断情報をイメージ情報に付与した災害情報データを無駄なく効率よく生成し蓄積することができる。したがって、その蓄積した災害情報データの場所・時間情報と分析・判断情報から災害情報の検索、整理、関係付け、分類を行い、災害情報をテキスト情報により効率よく監視することができる。しかも、必要に応じて原始のイメージ情報を確認することもできるので、情報も正確に伝達することができる。したがって、広域でも迅速かつ効率よく多くの災害情報を管理し、緊急性に応じた防災対策を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る災害情報収集管理システムの実施の形態を説明する図、図2は災害情報データファイルの構成例を示す図である。図中、1はファックス受信部、2はテキスト情報付与部、3は災害分析情報付与部、4は災害情報データ、11は災害情報データファイル、12は地図データファイル、13はデータ検索処理部、14は検索指定部、15は表示編集処理部、16は表示部を示す。
【0011】
図1において、ファックス受信部1は、各地区、地域のファックスから災害情報としてイメージ情報を受信するものであり、テキスト情報付与部2は、ファックス受信部1で受信したイメージ情報からその場所(発信場所、災害発生場所)の情報、及び時間(日時)をテキスト情報として付与するものである。このテキスト情報は、発信元の電話番号を認識することにより場所(位置)の情報(例えば電話番号や住所、X,Y座標等)を、また、カレンダー、時計による受信日時の認識により時間をそれぞれ付与し、また、専任のオペレータがファックス受信時にそのイメージ情報から電話番号や発信者名を機械的に読み取ってキー入力することによりテキスト情報として付与してもよい。このテキスト情報の付与は、特に専門性を有しない単純作業により行うことができる。
【0012】
災害分析情報付与部3は、災害情報を分析する専門的な知識、経験を有する者によりファックス受信したイメージ情報から災害情報を分析し、その正確な発生場所や災害の事象などを災害分析情報として付与するものである。災害の事象には、例えば種類、レベル、関連、付加の各情報があり、種類情報は、例えば災害が火災、家屋倒壊、地盤崩落、水害などの情報であり、レベル情報は、重要度、緊急度などのランク、それぞれの災害の規模、人命に関わるか、救援体制が必要かなどの情報であり、関連情報は、例えば火災であれば火元、延焼などの情報であり、付加情報は、判断情報、詳細情報、参考情報、認証情報の有無など、例えば地震、河川の増水、台風などの情報である。災害情報データ4は、ファックス受信したイメージ情報にテキスト情報付与部2でテキスト情報を付与し、さらに災害分析情報付与部3で災害分析情報を付与して1単位とするデータである。
【0013】
災害情報データファイル11は、各地区、地域からファックス受信したイメージ情報にテキスト情報及び災害分析情報を付与した災害情報データ、例えば図2に示すようなID、場所、時間、事象、イメージ情報からなる災害情報データを格納したファイルであり、地図データファイル12は、各災害情報データを具体的に災害発生場所に対応付けるための地図データを格納したファイルである。
【0014】
データ検索処理部13は、災害情報データファイル11及び地図データファイル12から、地域や時間帯、事象の特定や範囲などを検索キーとして、指定された検索キーに基づいて災害情報データ及び地図データを検索して取得するものであり、その検索キーを指定するのが検索指定部14である。したがって、例えば東海地方、房総半島、神奈川県、中央区、横浜市などの地域が指定されると、その地域の地図データ、災害情報データが検索される。そして、その中から日時が指定されると時間情報からその日時の災害情報データが検索され、時間帯や期間が指定されると、その間の災害情報データが検索され、また、事象の種類として火災が指定されると、災害情報データのうち火災のものが検索され、関連情報として地震が指定されると、地震に伴って発生した火災や家屋倒壊、地盤崩落などの災害情報データが検索される。時間が指定されず、場所が指定されると、その場所における過去の全ての災害情報データが検索され、災害の履歴を取得することができる。
【0015】
表示編集処理部15は、データ検索処理部13で検索された地図データ及び災害情報データに基づき地図上の各場所に対応して災害情報を編集し表示部16の画面にマークやアイコン等を使って表示する。このとき、各位置において複数の災害情報が存在する場合には、災害情報の数量に応じた高さのファイルやスタックのイメージを使って表示し、その位置を表示画面上でクリックすることにより、検索指定部14よりその位置の災害情報を抽出し、ページメクリの操作モードで各災害情報を表示する。各災害情報は、テキスト情報及び災害分析情報により内容を把握し整理することができ、さらに選択によりファックス受信した原始のイメージ情報による確認を行うこともできる。
【0016】
図3はネットワークで接続した本発明に係る災害情報収集管理システムの構成概要の1例を示す図、図4は地図上に災害情報を貼り付けた例を示す図、図5は災害情報の検索処理の実施の形態を説明する図である。図中、21−1〜21−Nは拠点端末、22は通信回線網、23は情報処理センタ、24は防災センタ、25はデータファイル、31は地図、32〜36は災害情報群を示す。
【0017】
図3において、拠点端末21−1〜21−Nは、自治体などの各地区、地域の災害情報を発信するためのファクシミリを有する端末であり、これらと通信回線網22で接続される情報処理センタ23は、各拠点端末21−1〜21−Nからファクシミリにより災害情報としてイメージ情報を受信し、そのイメージ情報にテキスト情報及び災害分析情報を付与して災害情報データとして防災センタ24に転送するものである。防災センタ24は、中央官庁や県本部に設置され、各自治体等から被災地の災害情報を広域的に収集し監視するものである。防災センタ24は、各拠点端末21−1〜21−Nからファクシミリにより災害情報としてイメージ情報を直接受信するのではなく、情報処理センタ23でテキスト情報、災害分析情報、イメージ情報を単位として転送されてきた災害情報データを地図データとともにデータファイル25に格納し管理している。つまり、情報処理センタ23は、図1(A)に示す構成に基づく処理を行い、防災センタ24は、図1(B)に示す構成に基づく処理を行っている。
【0018】
先に説明したようにデータファイル25に格納し管理している災害情報データは、その災害の発生位置、あるいは少なくともその災害の発生を通報する拠点端末21−1〜21−Nの位置、災害の発生時間(日時)、災害の内容に関する事象の情報をイメージ情報とは別にテキストで持っている。したがって、これらテキストによる情報を処理することにより、各災害情報データは、地図データにより描画される地図上に貼り付けることができる。例えば位置に着目すると、同位置には時間軸で複数の災害情報データを持ち、防災センタ24では、図4に示すように地図31のそれぞれの位置に時間軸で蓄積された災害情報群32〜36をその情報量に応じた高さで貼り付けて表示することにより、地図上から災害情報の量、他との関係で遠いか近いかなどの関連を評価し、また、時間軸での履歴による防災対策のための災害情報を提供することができる。
【0019】
次に、防災センタ25によりデータファイル25に格納された地図データ及び災害情報データからの災害情報の検索処理の例について図5を参照しつつ説明する。災害情報の検索処理では、例えば図5に示すようにまず、1乃至複数の地域の指定、検索した時間帯、事象範囲の指定を行うことにより(ステップS11〜S13)、指定地域の地図データをデータファイル25から検索して取得し(ステップS14)、さらに地域、時間帯、事象範囲で指定対象の災害情報データをデータファイル25から検索して取得する(ステップS15)。しかる後、これら取得した地図データ及び災害情報データに基づき地図上に災害情報ファイルのアイコンを、例えば図4に示すように表示する(ステップS16)。
【0020】
そして、地図上の各位置に貼り付け表示した災害情報群のアイコンがクリックされるか否かを検出し(ステップS17)、アイコンがクリックされるとそのアイコンの災害情報をページ形式で表示する(ステップS18)。さらにメクリ指示の検出を行い(ステップS19)、メクリ指示があると、災害情報の各ページをメクリ操作モードで表示する(ステップS20)。災害情報のページメクリ操作においてはイメージ選択の有無の検出を行い(ステップS21)、イメージ選択があるとその災害情報のイメージ情報を表示する(ステップS22)。メクリ指示、イメージ選択がない場合、また、イメージ表示した後は、ステップS17の処理に戻って同じ処理を繰り返し実行し、アイコンのクリックがない場合には、検索終了か否かを判断する(ステップS23)。ここで検索終了でない場合には、さらにステップS11の処理に戻って検索キーの再指定を行い、同様の処理を繰り返し実行する。
【0021】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、ファクシミリによる災害情報の収集管理として説明したが、メールによる災害情報の収集管理と併用してもよい。メールの場合には、メールアドレスとその受信時間で場所・時間情報は直接抽出できるので、専門的な知識、経験に基づく分析、判断を行う部署を特に設ければよい。また、場所・時間情報と分析・判断情報をイメージ情報に付与した災害情報データを生成する部署は、複数配置され、情報量に応じて分散させるようにしてもよいし、図3で説明した情報処理センタ、防災センタは同一の場所にあってもよいことはいうまでもない。さらに、場所・時間情報を付与する部署と分析・判断情報を付与する部署とを別々に配設してもよいし、1部署にまとめて配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る災害情報収集管理システムの実施の形態を説明する図である。
【図2】災害情報データファイルの構成例を示す図である。
【図3】ネットワークで接続した本発明に係る災害情報収集管理システムの構成概要の1例を示す図である。
【図4】地図上に災害情報を貼り付けた例を示す図である。
【図5】災害情報の検索処理の実施の形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0023】
1…ファックス受信部、2…テキスト情報付与部、3…災害分析情報付与部、4…災害情報データ、11…災害情報データファイル、12…地図データファイル、13…データ検索処理部、14…検索指定部、15…表示編集処理部、16…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の拠点からファクシミリによるイメージ情報を収集して管理する災害情報収集管理システムであって、
複数の拠点からのファクシミリによるイメージ情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信したイメージ情報に場所・時間情報及び災害事象に係る分析・判断情報を付与して災害情報データを生成する災害情報データ生成手段と、
前記災害情報データ及び地図データを格納するデータ記憶手段と、
前記場所・時間情報及び災害事象に係る分析・判断情報を検索キーとして前記データ記憶手段から前記災害情報データ及び地図データを検索して読み出し、前記場所に対応する地図上に災害情報を出力し管理する災害情報管理手段と
を備えたことを特徴とする災害情報収集管理システム。
【請求項2】
前記災害情報管理手段は、同一場所の複数の災害情報を地図上にスタック形状のアイコンにより出力することを特徴とする請求項1記載の災害情報収集管理システム。
【請求項3】
前記災害情報管理手段は、前記アイコンの選択により選択された場所の複数の災害情報をページメクリの操作モードにより出力し、災害情報の選択にしたがいイメージ情報を出力することを特徴とする請求項1記載の災害情報収集管理システム。
【請求項4】
複数の拠点からファクシミリによるイメージ情報を収集して管理する災害情報収集管理方法であって、
複数の拠点からのファクシミリによるイメージ情報を受信し、
前記受信したイメージ情報に場所・時間情報を付与し、
前記受信したイメージ情報から災害事象に係る分析、判断の結果として得られる分析・判断情報を付与し、
前記場所・時間情報と分析・判断情報をイメージ情報に付与した災害情報データを単位としてデータを蓄積し、
地図データと災害情報データに基づき地図上に前記場所・時間情報に基づき災害情報を貼り付けて管理することを特徴とする災害情報収集管理方法。
【請求項5】
前記災害情報は、前記場所・時間情報と分析・判断情報を検索キーとして検索することにより、検索された災害情報を前記地図上に貼り付けて出力することを特徴とする請求項4記載の災害情報収集管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−133831(P2006−133831A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318764(P2004−318764)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(501138231)独立行政法人防災科学技術研究所 (29)
【Fターム(参考)】