説明

災害情報配信システムとその管理装置

【課題】車両の通行に支障を及ぼすと予測される災害情報を、VICSを利用しかつ現行のVICSを変更することなく配信できるようにする。
【解決手段】災害情報管理装置40にVICS対応メディア変換装置402を設ける。そして、災害情報管理サーバ401により災害の発生を報知又は予測する災害情報が生成されると、この災害情報の形式を上記VICS対応メディア変換装置402によりVICSで取り扱い可能な表現形式に変換し、この表現形式が変換されたVICS対応の災害情報をVICS情報編集/配信サーバ201へ伝送する。VICS情報編集/配信サーバ201は、上記災害情報を該当する配信対象地域別にその道路交通情報に重畳して配信情報を作成し、この配信情報を電波ビーコンなどを使用して車両に向け配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System; VICS)を利用して、交通に支障を及ぼす災害情報を配信する災害情報配信システムと、このシステムで使用される管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現行のVICSは、道路管理機関や各都道府県警察が管理するサーバから車両検知器及び遠隔操作カメラにより収集された車両通行情報をVICS配信センタに送信すると共に、駐車場管理機関が管理するサーバから駐車場の満空車情報をVICSセンタに送信する。VICSセンタは、上記各管理サーバから情報を収集して編集し、これにより渋滞区間及びその程度等を表す渋滞情報や、速度規制や車線規制等を表す交通規制情報、事故発生情報、現在地からの所要時間や主要都市間の旅行時間等を表す通行時間情報を作成する。そして、これらの配信情報を電波ビーコン、光ビーコン及びFM多重放送の3種類の放送手段を用いて通行車両に向け送信する。通行車両は通信機能を備えた車載装置を備え、この車載装置において上記放送手段から送信された配信情報を受信して音声表示又は画像表示するように構成される(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0003】
【非特許文献1】(財)道路交通情報通信システムセンタ ホームページhttp://www.vics.or.jp
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、現行のVICSには以下のような解決すべき課題がある。すなわち、交通渋滞や交通障害の原因は交通事故や工事、通行量に限らず、地震や津波、台風、集中豪雨等の自然災害を含めると多岐にわたる。例えば、集中豪雨のときには、山間部における土砂崩れや道路の陥没及び水没、橋梁の破損等、通行の妨げとなる直接的及び局所的な原因事象は勿論のこと、河川の堤防決壊による広範囲の浸水や漂流物により多地点で道路封鎖が発生する。また、このような自然災害による交通障害は、自然災害の発生と同時に起こるとは限らず、多くの場合時間遅れを伴う。このため、災害の状況を早期に把握して交通障害の規模を予測することが重要である。さらに、災害発生時に道路自体は支障なく通行できても、目的地が被災していれば通行の目的を喪失する場合もある。
【0005】
一方、国や地方自治体では、河川管理データベースや雨量予測データベース、各市町村が所有するハザードマップを保存したデータベース等、自然災害に備えた各種災害情報データベース及び災害モニタリングシステムが構築されている。しかし、これらの自然災害情報データベースとVICSとは接続されていない。このため、自然災害が発生し、この自然災害により交通に支障が発生すると予測される場合でも、適切な交通情報をVICSから通行車両に配信することができない。また、仮に上記各自然災害情報のデータベースとVICSとをネットワークを介して接続したとしても、自然災害情報データベースが提供する災害情報の表現形式とVICSが取り扱う情報の表現形式とは対応しないため、自然災害情報のデータベースが提供する情報をそのままVICSから配信することができない。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、車両の通行に支障を及ぼすと予測される災害情報を、VICSを利用しかつ現行のVICSを変更することなく配信することが可能な災害情報配信システムとその管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明は、特定の表現形式を有する交通情報を収集又は作成して配信対象地域を走行する車両に向け配信する道路交通情報通信装置に対し、通信ネットワークを介して接続可能な災害情報管理装置を設ける。そして、この災害情報管理装置に、災害情報を収集又は作成する手段と、この収集又は作成された災害情報の中から車両の通行に支障を及ぼす情報を選択する手段と、この選択された災害情報を上記特定の表現形式に対応する情報に変換する変換手段と、上記表現形式が変換された災害情報を上記通信ネットワークを介して上記道路交通情報通信装置へ送信する手段とを備える。一方、上記道路交通情報通信装置には、上記災害情報管理装置から送信された災害情報を上記通信ネットワークを介して受信する手段と、この受信された災害情報と上記収集又は作成された交通情報とをもとに配信情報を編集し、当該編集された配信情報を配信対象地域を走行する車両に向け配信する配信手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
したがってこの発明によれば、現行の道路交通情報通信装置(VICS)を利用し、このVICSにより提供される交通規制や渋滞情報等の交通情報に加えて、例えば豪雨による河川の氾濫や堤防決壊、土砂崩れ等の車両の通行に支障を及ぼす災害情報(予測情報も含む)を通行車両に配信することができる。しかも、災害情報はVICSで取り扱い可能な表現形式に変換されたのちVICSに伝送される。このため、VICSは新たな機能を追加することなく、交通情報と災害情報とをもとに編集された配信情報を配信することができる。すなわち、現行のVICSを何ら変更することなく、災害情報を含む交通情報を通行車両に配信することが可能となる。
【0009】
上記変換手段には、次の2通りの構成が考えられる。
第1の構成は、車両の通行に支障を及ぼす災害情報を、上記特定の表現形式により文字数が定義された文字列に変換するものである。この構成によれば、VICSで取り扱うことが可能な文字数により表される簡潔な文字情報により災害情報を表すことができる。
【0010】
第2の構成は、車両の通行に支障を及ぼす災害情報を、上記特定の表現形式により定義された絵記号(マーク)に変換するものである。この構成によれば、災害情報がVICSで取り扱うことが可能な絵記号により表されるので、例えば交通情報に重畳させた状態で表示したとしても、災害情報を認識しやすい形態で表示することができる。
【0011】
さらにこの発明は、災害情報管理装置に、表現形式が変換された災害情報の中から優先通行車両向けの災害情報を選択する手段と、この選択された優先通行車両向けの災害情報を符号化する手段と、この符号化された優先通行車両向けの災害情報を通信ネットワークを介して上記道路交通情報通信装置へ送信する手段とをさらに備える。一方、優先通行車両には、道路交通情報通信装置から配信された配信情報を受信する手段と、この受信された配信情報に符号化された災害情報が含まれている場合に当該符号化された災害情報を復号する手段と、この復号された災害情報を搭乗者に報知する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成すると、例えば救援物資の輸送に必要な迂回路の情報を優先通行車両にのみ報知することができる。この結果、緊急物資の輸送車両や、救急車両、避難誘導関係車両等の優先通行車両を円滑に通行させることが可能となる。また、災害情報の符号化処理は災害情報管理装置において行われるので、VICSに新たな機能を追加することなく実現できる利点がある。
【0013】
さらにこの発明は、道路交通情報通信装置の配信手段に、災害情報と交通情報とをもとに一般車両向けの配信情報を編集する手段と、災害情報の中から優先通行車両向けの災害情報を選択してこの選択された優先通行車両向けの災害情報と交通情報とをもとに優先通行車両向けの配信情報を編集する手段と、上記一般車両向けの配信情報を第1の伝送チャネルを介して一般車両に向け送信する手段と、上記優先通行車両向けの配信情報を上記第1の伝送チャネルとは異なる第2の伝送チャネルを介して優先通行車両に向け送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
このように構成することによっても、例えば救援物資の輸送に必要な迂回路の情報を優先通行車両にのみ報知することができ、これにより緊急物資の輸送車両や救急車両、避難誘導関係車両等の優先通行車両を円滑に通行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
要するにこの発明によれば、車両の通行に支障を及ぼすと予測される災害情報を、VICSを利用しかつ現行のVICSを変更することなく配信することが可能な災害情報配信システムとその管理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明に係わる災害情報配信システムの第1の実施形態を示すブロック図である。このシステムは、既存の道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System; VICS)に通信ネットワーク30を介して災害情報管理装置40を接続したものである。
【0017】
VICSは、都道府県警察の交通管制センタ11、道路管理機関の交通管制センタ12及び駐車場管理機関の管理装置13にそれぞれ設けられた管理サーバ111,121,131と、VICSセンタ20と、このVICSセンタ20により生成された配信情報を車両に向け送信するための電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52及びFM放送局53と、車両に搭載されたVICS対応カーナビゲーション装置60とを備えている。
【0018】
各管理サーバ111,121,131はそれぞれ、監視対象場所に設置された複数台の車載検知器及びカメラから定期的又はリアルタイムに車両通行データを収集し、VICSセンタ20からの送信要求に応じて、上記収集された車両通行データを例えば専用線網を介してVICSセンタ20に送信する。
【0019】
VICSセンタ20は、VICS情報編集/配信サーバ201を備える。このVICS情報編集/配信サーバ201は、上記各管理サーバ111,121,131から送信された車両通行データを受信してメモリに蓄積する。そして、配信タイミングになると上記メモリに蓄積された車両通行データを編集することにより配信対象地域別にVICS配信情報を作成し、この作成されたVICS配信情報をその配信対象地域に設置された電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52又はFM放送局53に配信する。
【0020】
例えば、高速道路に対しては、電波ビーコン送信装置51が設置された地点から約200km先までの範囲、並びにインタチェンジ付近の近接道路や高速道路と並行する一般道路に関する約8,000文字相当の交通情報を作成し、作成された交通情報をその配信対象地域に対応する電波ビーコン送信装置51に配信する。電波ビーコン送信装置51は、主として高速道路に設置され、上記VICS情報編集/配信サーバ201から送られた交通情報を2.4997GHz帯の準マイクロ波を使用して通行車両に向け送信する。送信対象エリアは電波ビーコンを中心に約70mの範囲に設定され、この範囲を通行中の同一車両に対し2〜3回繰り返し送信される。
【0021】
また一般道路に対しては、光ビーコン送信装置52が設置された地点から前方30km、後方1kmの範囲に関する約10,000文字相当の交通情報を作成し、作成された交通情報をその配信対象地域に対応する光ビーコン送信装置52に配信する。光ビーコン送信装置52は主として一般道路に設置され、上記VICS情報編集/配信サーバ201から送られた交通情報を波長約850nmの近赤外光により通行車両に向け送信する。送信対象エリアは光ビーコン直下の約5.5m手前から約2m後方の範囲に設定され、この範囲を通行中の同一車両に対し2〜3回繰り返し送信される。
【0022】
さらに、都道府県内及びこれに隣接する他の都府県の境界から約100km先までの高速道路に関する2分半当たり50,000文字相当の交通情報を作成し、作成された交通情報をFM放送局53へ送信する。FM放送局53は、上記転送された交通情報を、FM放送電波と同一帯域でかつ音声伝送周波数の隙間周波数を使用して、FM波送信装置531から上記都道府県内に向け送信する。
【0023】
VICS対応カーナビゲーション装置60は、ビーコン受信機601と、FM多重受信機602と、制御装置603と、表示装置604とを備える。ビーコン受信機601は、上記電波ビーコン送信装置51及び光ビーコン送信装置52から送信された電波及び近赤外光をそれぞれ受信し復調する。FM多重受信機602は、上記FM波送信装置531から送信されたFM信号を受信し復調する。制御装置603は、上記ビーコン受信機601及びFM多重受信機602により復調された信号から交通情報を再生し、この交通情報を表示装置604に供給する。表示装置604は例えば液晶ディスプレイを備え、上記制御装置603から供給された交通情報を表示する。なお、交通情報が音声信号を含む場合には、この音声信号をスピーカから拡声出力する。
【0024】
ところで、災害情報管理装置40は、例えば国や自治体等の災害情報管理機関により運用管理されるもので、災害情報管理サーバ401と、VICS対応メディア変換装置402とを備える。
災害情報管理サーバ401は、予め定めた監視ポイントにおいて降水量、河川の状況及び海の潮位等を監視し、その監視データをもとに災害の状況を把握又は予測してリアルタイム災害モニタリングデータやハザードマップ等の災害情報を作成する。そして、この作成された災害情報の中から車両の通行に支障を及ぼす可能性がある災害情報を選択し、この選択された災害情報をVICS対応メディア変換装置402に供給する。
【0025】
VICS対応メディア変換装置402は、上記供給された災害情報をVICSで取り扱い可能な表現形式の情報に変換する。例えば、30字以内の簡潔な文字列、及び/又は災害の種類を表す絵記号(マーク)に変換する。そして、この表現形式が変換された災害情報を、通信ネットワーク30を介してVICSセンタ20のVICS情報編集/配信サーバ201へ送信する。
【0026】
VICS情報編集/配信サーバ201は、上記VICS対応メディア変換装置402から通信ネットワーク30を介して伝送された、表現形式が変換された災害情報を該当する配信対象地域別にその道路交通情報に重畳する。なお、通信ネットワーク30としては、例えば有線又は無線加入者網、さらにはインターネットに代表されるIP(Internet Protocol)網が使用される。
【0027】
次に、以上のように構成されたシステムによる災害情報配信動作を説明する。図2は、同システムの災害情報管理装置40及びVICSセンタ20の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
災害情報管理サーバ401は、先に述べたように複数の監視ポイントに設置された検出器及び監視カメラから検出データを定期的又はリアルタイムに収集し、この収集した検出データをもとに降水量や河川の状況、海の潮位等を監視する。そして、その監視結果をもとに災害の状況を把握又は予測して災害情報を作成する。
【0028】
また災害情報管理サーバ401は、上記作成された災害情報の中から自動車の通行に支障を及ぼす交通向けの災害情報を選択し、この選択された交通向けの災害情報をVICS対応メディア変換装置402に渡す。上記交通向けの災害情報は、自動車の通行に影響を及ぼす気象・災害の種別、気象・災害の規模、当該災害が影響を及ぼすエリアを表す情報からなる。
【0029】
VICS対応メディア変換装置402は、ステップ2aにおいて災害情報管理サーバ401からの災害情報の到来を監視している。この状態で、交通向けの災害情報が渡されると、ステップ2bにより当該災害情報をVICS対応の表現形式に変換する。例えば、災害情報の内容を30字以内の簡潔な文字列、或いは気象・災害の種類を表す事象規制マーク(絵記号)に変換する。そして、この表現形式が変換された交通向けの災害情報を、ステップ2cにより通信ネットワーク30を介してVICS情報編集/配信サーバ201へ送信する。
【0030】
なお、事象規制マークには、交通規制及び交通障害を表現する既存のマークがある。このうち、交通規制を表すものには「事故」、「故障車」、「路上障害物」、「工事」、「作業中」及び「道路凍結」の6種類の交通規制マークがあり、また交通障害を表すものには「通行止め」、「速度規制」、「車線規制」、「徐行」及び「進入禁止」等の11種類の交通障害マークがある。VICS対応メディア変換装置402は、これらの既存のマークとは別に、上記気象・災害の種類、例えば「道路の水没」、「堤防決壊」、「橋梁の破損」、「土砂崩れ」、「高波」等を表す事象規制マークを新たに作成する。
【0031】
VICS情報編集/配信サーバ201は、ステップ2dにより交通管制センタ11,12及び駐車場管理装置13の管理サーバ111,121,131からの交通情報の到来を監視すると共に、ステップ2eにより上記VICS対応メディア変換装置402からの災害情報の到来を監視する。そして、上記交通情報及び災害情報が到来すると、これらの情報をステップ2fで受信したのちメモリに蓄積する。
【0032】
そして、配信情報の更新タイミングになると、VICS情報編集/配信サーバ201はステップ2gからステップ2hに移行して配信すべき交通情報を更新する。また、災害情報が受信された場合には、その時点で当該災害情報を交通情報に重畳した配信情報を作成する。
【0033】
例えば、「土砂崩れ」の発生を報知又は予測する災害情報が受信された場合には、その時点で即時当該災害情報を該当する配信対象地域向けの道路交通情報に重畳し、これにより災害の発生を報知又は予測する災害情報を含む配信情報を作成する。このとき、災害情報はVICS対応メディア変換装置402において既にVICS対応の表現形式に変換済みである。このため、上記災害の発生を報知又は予測する災害情報を含む配信情報の編集作成処理は、既存の機能を特に変更することなく容易に行うことができる。また、上記災害情報の種類をもとに緊急度を判定し、この緊急度を表す情報を配信情報に付加するようにしてもよい。
【0034】
そうして、配信情報が更新又は新たに作成されると、VICS情報編集/配信サーバ201はステップ2iに移行し、上記更新又は作成された配信情報を対応する地域に設置された電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52又はFM波送信装置53へ転送する。
【0035】
なお、「土砂崩れ」等の緊急度の高い災害情報を含む配信情報を配信する場合には、電波ビーコン用、光ビーコン用及びFM波用の配信情報をそれぞれ作成し、これらの配信情報を上記電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52及びFM波送信装置53の少なくとも2つに転送するようにしてもよい。
【0036】
配信情報が送られると上記電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52及びFM波送信装置53は、当該配信情報を配信対象地域に向け放送する。これに対し上記配信対象地域を走行中の車両は、VICS対応カーナビゲーション装置60により上記配信情報を受信し、この配信情報を表示装置604に表示する。このとき、VICS対応カーナビゲーション装置60の制御装置603は、配信情報中に含まれる緊急度を表す情報から災害情報の緊急度を判定する。そして、緊急度が高いと判定された場合には、災害の種類を表すマークを点滅表示させたり、スピーカから鳴音を発生させる。
【0037】
以上述べたように第1の実施形態では、災害情報管理装置40にVICS対応メディア変換装置402を設け、災害情報管理サーバ401により災害の発生を報知又は予測する災害情報が生成されると、この災害情報の形式を上記VICS対応メディア変換装置402によりVICSで取り扱い可能な表現形式に変換し、この表現形式が変換されたVICS対応の災害情報をVICS情報編集/配信サーバ201へ伝送する。そして、VICS情報編集/配信サーバ201において、上記災害情報を該当する配信対象地域別にその道路交通情報に重畳して配信するようにしている。
【0038】
したがって、現行のVICSにより提供される交通規制や渋滞情報等の交通情報に、豪雨による河川の氾濫や堤防決壊、土砂崩れ等の車両の通行に支障を及ぼす災害情報、又はその予測情報を重畳して通行車両に配信することができる。しかも、災害情報はVICS対応メディア変換装置402によりVICSで取り扱い可能な表現形式に変換されたのちVICS情報編集/配信サーバ201に伝送される。このため、VICS情報編集/配信サーバ201は、新たな機能を追加することなく、災害情報を重畳した配信情報を編集し配信することができる。すなわち、現行のVICSを何ら変更することなく、災害情報を含む交通情報を通行車両に配信することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、災害情報管理装置において災害情報の中から優先通行車両向けの災害情報を選択して、選択された優先通行車両向けの災害情報を符号化したのちVICSセンタに転送し、このVICSセンタから各ビーコン送信機等を介して優先通行車両に向け配信する。優先通行車両のVICS対応カーナビゲーション装置には復号器が設けてあり、符号化された災害情報が受信されるとこの災害情報を復号器で復号したのち、表示装置に表示するようにしたものである。
【0040】
図3は、この発明に係わる災害情報配信システムの第2の実施形態を示すブロック図である。なお、同図において前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0041】
災害情報管理装置41は、災害情報管理サーバ401及びVICS対応メディア変換装置402に加え、優先車両用情報符号化装置403を新たに備えている。優先車両用情報符号化装置403は、VICS対応メディア変換装置402から渡された災害情報の中から優先通行車両向けの災害情報を選択し、選択された災害情報を符号化する。優先通行車両としては、例えば緊急物資の輸送車両、救急車両、避難誘導の関係車両が該当する。
【0042】
一方、優先通行車両用のVICS対応カーナビゲーション装置70は、ビーコン受信機701と、FM多重受信機702と、制御装置703と、表示装置704とに加え、優先車両用情報復号器705を備える。ビーコン受信機701は、電波ビーコン送信装置51及び光ビーコン送信装置52から送信された電波及び近赤外光をそれぞれ受信し復調する。FM多重受信機702は、FM波送信装置531から送信されたFM信号を受信し復調する。
【0043】
制御装置703は、上記ビーコン受信機701及びFM多重受信機702により復調された信号から配信情報を再生し、この配信情報を表示装置704に供給する。また配信情報に優先車両向けの符号化災害情報が含まれている場合には、当該符号化災害情報を優先車両用情報復号器705に入力する。優先車両用情報復号器705は、上記入力された符号化災害情報を復号する。表示装置704は例えば液晶ディスプレイを備え、上記制御装置703から供給された配信情報、及び上記優先車両用情報復号器705から供給された災害情報を表示する。
【0044】
次に、以上のように構成されたシステムによる災害情報配信動作を説明する。図4は、同システムの災害情報管理装置41及びVICSセンタ20の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。なお、同図において前記図2と同一部分には同一符号を付して詳して説明を行う。
【0045】
災害情報管理サーバ401は、複数の監視ポイントに設置された検出器及び監視カメラから検出データを定期的又はリアルタイムに収集し、収集した検出データをもとに降水量や河川の状況、海の潮位等を監視する。そして、その監視結果をもとに災害の状況を把握又は予測して、交通向けの災害情報を作成する。この交通向けの災害情報は、自動車の通行に支障を及ぼす気象・災害の種別、気象・災害の規模、当該災害が影響を及ぼすエリアを表す情報からなり、この作成された交通向けの災害情報をVICS対応メディア変換装置402に渡す。
【0046】
VICS対応メディア変換装置402は、ステップ4aにおいて災害情報管理サーバ401からの交通向けの災害情報の到来を監視している。この状態で、災害情報管理サーバ401から交通向けの災害情報が渡されると、ステップ4bにより当該災害情報をVICS対応の表現形式に変換する。例えば、災害情報の内容を30字以内の簡潔な文字列と、気象・災害の種類を表す事象規制マーク(絵記号)に変換する。そして、この表現形式が変換された交通向けの災害情報を優先車両用情報符号化器403に渡す。
【0047】
優先車両用情報符号化器403はステップ4cにおいて、VICS対応メディア変換装置402から渡された災害情報の中から、緊急物資の輸送車両、救急車両、避難誘導関係車両等の優先通行車両向けの災害情報を選択する。例えば、「土砂崩れ」の発生等に伴い通行可能な道路が限定される場合には、当該道路を優先車両のみに使わせるべく、「土砂崩れ」の発生と通行可能な道路の案内情報を含む災害情報を優先通行車両向けの災害情報として選択する。
【0048】
上記選択処理により該当する災害情報が見つかると、優先車両用情報符号化器403はステップ4dからステップ4eに移行し、ここで上記選択された優先通行車両向けの災害情報を符号化する。そして、この符号化された優先通行車両向けの災害情報を、ステップ4fにより通信ネットワーク30を介してVICS情報編集/配信サーバ201へ送信する。
【0049】
VICS情報編集/配信サーバ201は、ステップ4gにより交通管制センタ11,12及び駐車場管理装置13の管理サーバ111,121,131からの交通情報の到来を監視すると共に、ステップ4hにより上記災害情報管理装置41の優先車両用情報符号化器403からの災害情報の到来を監視する。そして、上記交通情報及び災害情報が到来すると、これらの情報をステップ4iで受信したのちメモリに蓄積する。
【0050】
そして、配信情報の更新タイミングになると、VICS情報編集/配信サーバ201はステップ4jからステップ4kに移行して配信すべき交通情報を更新する。また、災害情報が受信された場合には、その時点で当該災害情報を交通情報に重畳した配信情報を作成する。さらに、符号化災害情報が受信された場合には、ステップ4mにより当該符号化災害情報を交通情報に重畳した優先通行車両向けの配信情報を作成する。
【0051】
そうして、配信情報が更新されるか又は新たに作成されると、VICS情報編集/配信サーバ201はステップ4nに移行し、上記更新又は作成された配信情報を対応する地域に設置された電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52又はFM波送信装置53へ転送する。なお、「土砂崩れ」等の緊急度の高い災害情報を含む配信情報を配信する場合には、電波ビーコン用、光ビーコン用及びFM波用の配信情報をそれぞれ作成し、これらの配信情報を上記電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52及びFM波送信装置53の少なくとも2つに転送するようにしてもよい。
【0052】
配信情報が転送されると上記電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52及びFM波送信装置53は、当該配信情報を配信対象地域に向け放送する。これに対し上記配信対象地域を走行中の優先通行車両は、受信機701,702で上記配信情報を受信すると、この受信された配信情報が符号化災害情報を含むか否かを制御装置703で判定する。そして、符号化災害情報を含む場合には、当該情報を優先車両用情報復号器705で復号したのち表示装置604に供給し表示させる。なお、このとき優先通行車両向けの配信情報であることを示すマークを付して表示するようにしてもよい。
【0053】
以上述べたように第2の実施形態では、災害情報管理装置41において、災害情報の中から優先通行車両向けの情報を選択し、この選択された情報を符号化してVICSセンタ20に転送するようにしている。また、優先通行車両のVICS対応カーナビゲーション装置70には優先車両用情報復号器705を設け、受信された配信情報に符号化災害情報が含まれている場合にはこの符号化災害情報を上記優先車両用情報復号器705により復号したのち表示装置704に表示するようにしている。
【0054】
したがって、例えば「土砂崩れ」の発生等に伴い通行可能な道路が限定される場合には、当該通行可能な道路に関する情報を優先通行車両のみに報知することができる。この結果、緊急物資の輸送車両や、救急車両、避難誘導関係車両等の優先通行車両を円滑に通行させることが可能となる。
【0055】
(第3の実施形態)
この発明の第3の実施形態は、電波ビーコン送信装置、光ビーコン送信装置又はFM放送局に、通常車両向けの配信情報を送信する通常周波数帯域又は波長の他に、優先通行車両向けの配信情報を送信する優先周波数帯域又は波長を設定する。そして、VICSセンタから優先通行車両向けの配信情報が転送された場合に、当該配信情報を上記優先周波数帯域又は波長を使用して送信するようにしたものである。
【0056】
具体的には、VICS情報編集/配信サーバは、符号化災害情報を交通情報に重畳した優先通行車両向けの配信情報を作成すると、この優先通行車両向けの配信情報を優先情報である旨の通知情報と共に電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52又はFM波送信装置53へ送信する。上記通知情報を受けると電波ビーコン送信装置51、光ビーコン送信装置52又はFM波送信装置53は、優先通行車両用として予め用意してある優先周波数帯域又は波長を選択し、上記配信情報を当該優先周波数帯域又は波長を使用して送信する。
【0057】
一方、優先通行車両のVICS対応カーナビゲーション装置70には、通常周波数帯域又は波長を受信する第1の受信機群の他に、上記優先周波数帯域又は波長を受信するための第2の受信機群が設けられている。そして、この第2の受信機群により優先通行車両向けの配信情報を受信し、表示装置に表示する。
【0058】
したがってこの実施形態によれば、前記第2の実施形態と同様に、配信情報に優先通行車両向けの災害情報が含まれる場合、この配信情報を優先通行車両にのみ報知することができる。この結果、緊急物資の輸送車両や、救急車両、避難誘導関係車両等の優先通行車両を円滑に通行させることが可能となる。
【0059】
(その他の実施形態)
前記第1の実施形態では、災害情報を交通情報に重畳することにより配信情報を作成したが、災害情報を交通情報に挿入してもよく、また添付して配信するようにしてもよい。さらに、災害情報が発生した場合には交通情報を送らずにこの災害情報のみを配信するようにしてもよく、また交通情報と災害情報とを合成して配信するか、災害情報のみを配信するかについては、災害情報の情報量に応じて選択するようにしてもよい。
【0060】
その他、災害情報の表現形式をVICS対応の表現形式に変換するための具体的な変換形態や、災害情報の種類や内容、災害情報と交通情報との編集形態、災害情報管理装置及びVICS情報編集/配信サーバの構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0061】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わる災害情報配信システムの構成を示すブロック図。
【図2】図1に示したシステムの災害情報管理装置及びVICSセンタによる配信制御手順とその制御内容を示すフローチャート。
【図3】この発明の第2の実施形態に係わる災害情報配信システムの構成を示すブロック図。
【図4】図3に示したシステムの災害情報管理装置及びVICSセンタによる配信制御手順とその制御内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0063】
11…都道府県警察交通管制センタの管理サーバ、12…道路管理機関交通管制センタの管理サーバ、13…駐車場管理装置のサーバ、20…VICSセンタ、201…VICS情報編集/配信サーバ、30…通信ネットワーク、40…災害情報管理装置、401…災害情報管理サーバ、402…VICS対応メディア変換装置、403…優先車両用情報符号化器、51…電波ビーコン送信装置、52…光ビーコン送信装置、53…FM放送局、531…FM波送信装置、60,70…VICS対応カーナビゲーション装置、601,701…ビーコン受信機、602,702…FM多重受信機、603,703…制御装置、604,704…表示装置、705…優先車両用情報復号器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の表現形式を有する交通情報を収集又は作成して配信対象地域を走行する車両に向け配信する道路交通情報通信装置と、
前記道路交通情報通信装置に対し通信ネットワークを介して接続可能な災害情報管理装置とを具備し、
前記災害情報管理装置は、
災害情報を収集又は作成する手段と、
前記収集又は作成された災害情報の中から、前記車両の通行に支障を及ぼす情報を選択する手段と、
前記選択された車両の通行に支障を及ぼす災害情報を、前記特定の表現形式に対応する情報に変換する変換手段と、
前記表現形式が変換された災害情報を、前記通信ネットワークを介して前記道路交通情報通信装置へ送信する手段と
を備え、
前記道路交通情報通信装置は、
前記災害情報管理装置から送信された災害情報を、前記通信ネットワークを介して受信する手段と、
前記受信された災害情報と前記収集又は作成された交通情報とをもとに配信情報を編集し、当該編集された配信情報を配信対象地域を走行する車両に向け配信する配信手段と
を備えることを特徴とする災害情報配信システム。
【請求項2】
前記変換手段は、前記選択された災害情報を、前記特定の表現形式により文字数が定義された文字列に変換することを特徴とする請求項1記載の災害情報配信システム。
【請求項3】
前記変換手段は、前記選択された災害情報を、前記特定の表現形式により定義された絵記号に変換することを特徴とする請求項1記載の災害情報配信システム。
【請求項4】
前記災害情報管理装置は、
前記表現形式が変換された災害情報の中から、優先通行車両向けの災害情報を選択する手段と、
前記選択された優先通行車両向けの災害情報を符号化する手段と、
前記符号化された優先通行車両向けの災害情報を、前記通信ネットワークを介して前記道路交通情報通信装置へ送信する手段と
を、さらに備え、
前記車両のうち優先通行車両は、
前記道路交通情報通信装置から配信された配信情報を受信する手段と、
前記受信された配信情報に符号化された災害情報が含まれている場合に、当該符号化された災害情報を復号する手段と、
前記復号された災害情報を搭乗者に報知する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の災害情報配信システム。
【請求項5】
前記道路交通情報通信装置の配信手段は、
前記受信された災害情報と前記収集又は作成された交通情報とをもとに、一般車両向けの配信情報を編集する手段と、
前記受信された災害情報の中から優先通行車両向けの災害情報を選択する手段と、
前記選択された優先通行車両向けの災害情報と前記収集又は作成された交通情報とをもとに、優先通行車両向けの配信情報を編集する手段と、
前記一般車両向けの配信情報を、第1の伝送チャネルを介して一般車両に向け送信する手段と、
前記優先通行車両向けの配信情報を、前記第1の伝送チャネルとは異なる第2の伝送チャネルを介して優先通行車両に向け送信する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の災害情報配信システム。
【請求項6】
特定の表現形式を有する交通情報を収集又は作成して配信対象地域を走行する車両に向け配信する道路交通情報通信装置に対し、通信ネットワークを介して接続可能な災害情報管理装置であって、
災害情報を収集又は作成する手段と、
前記収集又は作成された災害情報の中から、前記車両の通行に支障を及ぼす情報を選択する手段と、
前記選択された災害情報を、前記特定の表現形式に対応する情報に変換する変換手段と、
前記表現形式が変換された災害情報を、前記通信ネットワークを介して前記道路交通情報通信装置へ送信する手段と
を具備することを特徴とする災害情報管理装置。
【請求項7】
前記変換手段は、前記選択された災害情報を、前記特定の表現形式により文字数が定義された文字列に変換することを特徴とする請求項6記載の災害情報管理装置。
【請求項8】
前記変換手段は、前記選択された災害情報を、前記特定の表現形式により定義された絵記号に変換することを特徴とする請求項6記載の災害情報管理装置。
【請求項9】
前記表現形式が変換された災害情報の中から、優先通行車両向けの災害情報を選択する手段と、
前記選択された優先通行車両向けの災害情報を符号化する手段と、
前記符号化された優先通行車両向けの災害情報を、前記通信ネットワークを介して前記道路交通情報通信装置へ送信する手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項6記載の災害情報管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−87287(P2007−87287A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277964(P2005−277964)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】