説明

災害時地図更新方式

【課題】災害発生時に災害の状況を示す地図データを記憶し、現在の地図に重ねてわかり易く表示し、また災害が解消した後は新たな地図データを更新することなく、災害の種類に応じてもとの地図データに戻すことができる「災害時地図更新方式」とする。
【解決手段】情報センターに自車両の位置及び経路データを送信し、除法センターでは受信したデータにより経路上等の災害情報を地図データと関連させて送信する。受信した災害情報を通常の地図データ記録部とは別のメモリ部分に記録する。地図表示に際しては通常の地図画面に記録した災害情報を組み合わせて表示する。災害が解消したときには、記録していた災害情報を消去し、通常の地図画面に戻す。その際、災害の種類が火災のように直ちに道路が回復するときには直ちに記録を削除し、水害のようにしばらくは道路を走行できない災害のときには、一時的に記録を残しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション装置等で用いる地図表示方式に関し、特に災害時に一時的に災害状況を地図上に表示して地図を更新することができるようにした災害時地図更新方式に関する。
【背景技術】
【0002】
現在はナビゲーション装置が広く普及し、車両に搭載する形式のほか、携帯型のナビゲーション装置も普及し、歩行時、自転車やバイクで移動時、更には電車での移動時でも常にナビゲーション装置を用いることができるようになっている。このようなナビゲーション装置においては、DVD、HDD或いはメモリチップ等に地図データを記録し、GPS受信機により、また、車両においては必要に応じて車速センサや蛇角センサを用いて現在位置を検出して、モニタ画面に現在地周辺の地図を表示すると共に、現在位置及び進行方向を重ねて表示している。更に、目的地を指定することによって誘導経路を演算し、確定した誘導経路に沿って案内を行うようにしている。
【0003】
特に、近年のメモリチップの大容量化により、16Gバイト程度のメモリが安価となり、このようなナビゲーション装置においては、メモリチップに大容量の地図データや施設情報を記録して、従来の車両用ナビゲーション装置と同程度の機能を備えるようになっており、このようなPND(Personal Navigation Device)システムが広く普及するようになっている。また、大容量のメモリを内蔵しないPNDにおいては、携帯電話を接続して情報センターから必要最小限の地図データを取り込んで利用することもできる。
【0004】
上記のような各種のナビゲーション装置において表示する地図画面は、多くの場合内蔵しているデータ記録媒体に記録している地図データを用いることとなるが、道路データは年々変化するためできる限り正確な地図データによって地図を表示しようとするときには、例えば1年毎等にデータ全体を更新し、或いは変更した分だけを書き換えて更新する必要がある。
【0005】
一方、近年は例えば東海沖地震等、近い将来大地震が発生することが予測されており、また世界各地での地震によって津波が発生し、いつどのような津波がどこに来るのかは全く予測が付かないのが実情である。更に近年は地球温暖化の影響とされる気象異変が多く、大型台風や長期間の大雨等もあり洪水が発生し、土地が比較的低い地域では本来決壊するはずのない堤防が決壊する恐れも指摘されている。
【0006】
そのような津波や洪水のときには、地域全体が水没するため、その地域の道路は走行不可能となる。また、大地震の時には火災が発生することが多く、その火災は地域全体の各所で発生し、その後それらの個々の火災が一体となって大火災になることもある。その際にはその地域周辺の道路は封鎖され、通行が不能となる。そのため時々刻々変化する災害状況及びそれによる通行不能地域情報の表示が求められるが、それらの災害情報は音声は文字情報であって、その災害による通行止めの状況はVICS情報によって主要な道路について表示されるのみであり、例えば水害がどのように進んでおり、それによってどの地域を走行できなくなっているのかを明瞭に把握することができない。
【0007】
なお、情報センター等において、災害発生時に災害情報を収集するに際して、各端末では所定の調査シートを用い。、被害状況に応じたキャラクタデータを選択し記録して送信し、情報センターでこれを整理すると共に、地図上のデータ位置及びキャラクタデータに対応するシンボルデータを地図上に表示できるようにした技術は特開2003−271785号公報(特許文献1)に開示されている。
【特許文献1】特開2003−271785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えばナビゲーション装置により誘導経路に沿って走行しているときに、大地震が発生して広範囲な火災が発生し、また津波によって広範な水没地域が発生するとき、ナビゲーション装置の利用者は周囲の状況を詳しく知りたいと思い、ラジオを聴いても自分がこれから進もうとしている方向との関係は、特に慣れない地域であるときには把握することはできない。
【0009】
また、そのナビゲーション装置が携帯電話を接続して情報センターから情報を取り込むことができるとき、前記特許文献1に開示されているような災害状況を示すシンボルデータを付しただけでは、例えば水没地域がどのように広がっているのかを容易に把握することができない。特に自車両の誘導経路がその地図上でどのよになっているかがわからず、単にVICS情報によって誘導経路に通行止め部分が存在することがわかったときに、他の通行止め情報を含めてリルートの演算を行うこととなる。しかしながら利用者にとってその誘導経路は現在の水没地域とどのような位置関係で設定されているかがわからず、演算された経路が本当に正しいのかが不安となる。
【0010】
その対策として、情報センターからナビゲーション装置の地図データに関連して、例えば火災地域や水没地域の情報をデータ化して作成し、各車両の位置やナビゲーション装置の誘導経路を加味して送信し、これを受信したナビゲーション装置においてはこれをメモリに記録し、地図データの差分更新機能を利用してこれを通常の更新地図データとして用いることが一応考えられる。
【0011】
しかしながら、その時の災害情報付地図データは本来災害が解消した後は不要となり、元の地図に戻す必要がある。それに対して従来のナビゲーション装置の地図データ差分更新機能では、災害が解消した後も消えることはなく、新たに災害前の地図データを情報センター等から取り込み、再度更新して元の地図データに戻す必要があり、無用な手数とデータ更新料及び通信料で多くの費用がかかることとなる。また、例えば火災の時には火災が鎮火して周囲が整理された後は直ちに通行可能になるのに対して、津波や堤防の決壊等で水没した地域は、水が引いた後でも土砂、大木、大型ゴミ等が散乱し、暫くの間は通行できない状況が続くため、単に災害が解消しただけでは地図データを直ちに元に戻すことは適切ではない。
【0012】
したがって本発明は、災害発生時に災害の状況を示す地図データを記憶し、現在の地図に重ねてわかり易く表示し、また災害が解消した後は新たな地図データを更新することなくもとの地図データに戻すことができるようにし、更に災害の種類によって地図データの更新方式を変え、適切な更新を行うことができるようにした災害時地図更新方式を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る災害時地図更新方式は、前記課題を解決するため、情報センターに送信した自車両の走行関連データによって情報センターが作成した災害情報を受信して地図画面に表示する災害時地図更新方式において、前記情報センターから受信した災害情報に含まれる、災害発生地域を示す災害情報について地図データと関連づけたデータを、通常の地図データとは別個に記憶する災害情報記録部と、通常の地図データの表示に、前記受信した地図データと関連づけた災害情報を組み合わせて地図表示する災害地図入り表示地図作製部と、災害が解消したことを検出したとき、前記災害情報記録部に記録したデータを消去することにより、通常の地図データのみを使用可能としたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の災害時地図更新方式は、前記災害時地図更新方式において、前記災害が解消したことを検出したとき、災害の種類により前記受信した地図データと関連づけた災害情報を一時的に残すか否かを管理する記録データ管理部を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の災害時地図更新方式は、前記災害時地図更新方式において、前記情報センターが作成した災害情報には、災害と関連したマークを含み、前記表示地図作製部は該マークを地図上に表示することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他の災害時地図更新方式は、前記災害時地図更新方式において、前記災害と関連したマークは緊急避難所のマークであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他の災害時地図更新方式は、前記災害時地図更新方式において、前記表示地図作製部は、災害により使用不能となっている施設について、施設のマーク表示を行わないようにすることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る他の災害時地図更新方式は、前記災害時地図更新方式において、前記情報センタに送信した自車両の走行関連データには、自車両の位置と誘導経路を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他の災害時地図更新方式は、前記災害時地図更新方式において、前記災害情報記録部には、異なった情報取込時の災害情報を複数記録し、該複数の災害情報によって災害の進行を表示可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記のように構成したので、災害発生時に災害の状況を示す地図データを記憶し、現在の地図に重ねてわかり易く表示することができる。また災害が解消した後は新たな地図データを更新することなく、もとの地図データに容易に戻すことができるようになる。更に災害の種類によって地図データの更新を変え、適切な更新を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る災害時地図更新方式は、災害発生時に災害の状況を示す地図データを記憶し、現在の地図に重ねてわかり易く表示するとともに、災害が解消した後は新たな地図データを更新することなく、もとの地図データに容易に戻すことができるようにするという目的を、情報センターに送信した自車両の走行関連データによって情報センターが作成した災害情報を受信して地図画面に表示する災害時地図更新方式において、前記情報センターから受信した災害情報に含まれる、災害発生地域を示す災害情報について地図データと関連づけたデータを、通常の地図データとは別個に記憶する災害情報記録部と、通常の地図データの表示に、前記受信した地図データと関連づけた災害情報を組み合わせて地図表示する災害地図入り表示地図作製部と、災害が解消したことを検出したとき、前記災害情報記録部に記録したデータを消去することにより、通常の地図データのみを使用可能とすることによって実現した。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明による災害時地図更新方式を備えた車両用ナビゲーション装置を示し、従来から備えるナビゲーション機能のほか、特に時々刻々変化する災害情報を含む地図データを情報センターから取り込んで記憶し、従来の地図に重ねて表示するとともに適切な災害情報を提供し、災害解消時に適切な地図データの消去管理を行うことができるようにした、災害情報処理部を中心に各機能を行う機能ブロック図を示している。
【0023】
図1に示す車両用のナビゲーション装置31においては、従来のものと同様に、システム制御部10に各種の所定の機能を総合的に行うためのソフトウェアを記録したROM、そのソフトウェアを処理するためのCPU及びRAM等を備え、これと接続した各機能部の制御を行っている。このナビゲーション装置においては、通信機接続部12に携帯電話11を接続し、インターネット網等を介して外部の情報センター61とデータ送受信可能に通信を行い、情報センター61から交通情報を含む各種の情報を受信可能とし、特に後述するように情報センター61で収集した災害情報に基づいて災害情報付の地図を受信することができるようにしている。この通信機接続部12にはそのほかビーコン受信機等を接続し、或いはFM多重放送受信機を接続してVICS情報を取り込むことができるようにしても良い。
【0024】
図示のナビゲーション装置31においては、このシステム制御部10に車両位置検出部15が接続し、GPS受信器13の位置データを入力し、更に必要に応じて車速センサや角度センサによる走行距離・方位検出部14からの車両の移動データを入力することによって、車両の現在位置を正確に検出している。
【0025】
指示信号入力部18においては、このナビゲーション装置での利用者による入力手段としてリモコン16を備え、図示の例では利用者の音声を認識してナビゲーション装置に対して各種指示を行う音声認識部17を備えている。そのほか、モニタ画面に接触センサを設け、タッチパネルとして各種の指示信号を入力することもできる。
【0026】
データ取込部20においては、DVD、或いはハードディスク等の地図・情報データ記録媒体19から必要な地図データ、施設情報等を取り込み、更にそのデータ記録媒体がハードディスクのように容易にデータの書き込みができるような場合には、外部から取り込んだデータや、他の機能部で処理したデータを後に読み取って利用することができるように、そのデータ記録媒体にデータ入力もできるようにしている。特に後述するように携帯電話11等によって情報センター61から災害情報付の地図データを初めとする各種災害情報を受信したときには、これを一時的に記録することができるようにしても良い。その際には後述する災害情報処理部32における情報記録部(メモリ)53をこの地図・情報データ記録媒体19に備えることとなる。
【0027】
誘導経路演算部21では、従来と同様に、車両位置検出部15で検出した車両の現在地を取り込み、また、画面に表示されるカーソルの操作による地図のスクロールにより、或いは住所を入力することにより、更には電話番号を入力する等の種々の手法により設定された経由地及び最終目的地を取り込み、最短所要時間、最短距離、一般道路優先、高速道路優先等の種々の条件において最適の誘導経路を演算して提示している。また、誘導経路上に渋滞が発生したことを検出したときには、その渋滞を迂回する経路を演算して提示することも行い、特に本発明では情報センター61から災害情報を受信したとき、その災害地域を通らない迂回路を演算する。
【0028】
誘導経路案内部22では誘導経路演算部21で演算した、一般道路優先や高速道路優先等により得られた誘導経路について、また前記のような迂回路について、利用者が最終的に選択した誘導経路を記憶し、現在位置から経由地を経て最終目的地まで、安全に且つ間違いなく走行できるようにする。そのため、画像出力部24ではモニタ23にナビゲーション用の地図画面及び各種案内のための画像を表示し、また音声出力部26ではナビゲーション案内等の音声をスピーカ25から出力している。
【0029】
災害情報処理部32は前記のように本発明の災害地図更新処理及び各種の災害情報表示を行うための処理部であり、災害が発生したときの詳細な情報を情報センター61に要求する災害情報要求部33を備えている。災害情報要求部33には、情報センター61に要求するデータを作成する災害情報要求データ作成部34を備え、災害情報要求データ出力部35では作成した前記災害情報要求データを携帯電話11を介して送信している。
【0030】
災害情報要求データ作成部34で作成する送信データとしては種々のものを設定することができるが、例えば送信データ種類選択部36で選択した、現在地37、目的地38、誘導経路38、自宅位置40、ナビゲーション装置に予め登録している地点であるナビ登録地点41等の中から、必要に応じて適宜選択することができる。ここで選択する送信データの種類は、最初に1度に全て送信する以外に、例えば自宅位置40或いはナビ登録地点41は必要と思われたときに利用者が選択し、その時に災害情報要求データ作成部24が選択したデータを収集して作成するようにしても良い。
【0031】
このような災害情報要求データを携帯電話11を介して情報センター61に送信すると、後述するように情報センター61ではその要求に対応した情報を情報要求対応送信用データ作成部66で作成して送信されることとなる。ナビゲーション装置31では携帯電話11でこの送信データを受信し、災害情報取込部42から取り込む。取り込んだ災害情報は記録データ管理部43のデータ記録・変更・削除部44によって、各種メモリからなる災害情報記録部53に記録する。
【0032】
災害情報記録部53は前記のように、ハードディスク等からなる地図・情報データ記録媒体19を用いることができるが、そのほか別途備えたメモリを利用することもでき、その中には災害を地図データ化した災害地図データ記録部54、災害の詳細な各種情報を記録する災害情報記録部55、避難場所の情報を記録する避難場所情報記録部56、例えば避難場所を示すマーク等の災害関連POI(Point of Interest)情報記録部57等を備える。なお、これらは記録する情報の代表例を示すものであり、その外必要に応じて各種の情報を記録することができる。これらの各種データや情報は、別途利用者により、或いはナビゲーション装置の機能として、災害情報検索部52によって検索可能としている。
【0033】
これらの災害情報は、災害地図入り表示地図作製部46で総合的な災害地図表示がなされ、災害地図データ54のデータは地図・情報データ記録媒体19の通常のデータによる地図に重ねて表示可能とする。また、災害情報55の内必要な情報を地図画面上に表示し、避難場所情報56も画面にわかり易く表示し、更に災害関連POI情報57は、前記のような各種の情報を地図上に表示するとき、これらのPOIデータをナビゲーション装置が記録していないときでもこれを用いて、災害関連POI表示部48によって地図上にわかり易く表示することができるようにしている。
【0034】
また、災害地図入り表示地図作成部46では誘導経路表示部47を備え、災害の発生により誘導経路が変更するときを含め、災害地図上に誘導経路を重ねてわかり易く表示する。なお、災害地図入り表示地図作製部46では、火災により各種施設が焼失したとき、或いは水没等により使用不能となっているときには、その施設の地図上のPOIを削除し、また使用できない道路については表示しないようにマスクをかける、等の処理を行うことができる。
【0035】
災害解除検出部45では、災害情報取込部42で取り込んだ情報センターからの災害情報中に、緊急の災害の状態が解除されたことを示す情報が取り込まれたときこれを検出し、記録データ管理部43によってデータの削除を可能とし、したがって災害が解除されたときには特に新たな地図データを要求することなく元の地図データとすることができるようにしている。但し、災害種別検出部49で災害情報記録部53のデータにより今回の災害の種別を検出し、その検出データにより特に災害地図データについて、例えば水害のときには水が引いて災害が解除されたのみでは走行できない道路が多いため、直ちに消去することなく例えば3ヶ月間は一時的に残しておく等の記録データ管理を可能としている。
【0036】
災害情報加味誘導経路演算指示部50では、情報センター61から取り込んだ災害情報により、現在の誘導経路を変更する必要があるときには、誘導経路演算部21においてその災害情報を加味した誘導経路を演算するように指示を行う。また、図1に示す例においては災害情報受信用ラジオ起動部51を備え、携帯電話11により情報センターから渋滞情報等の定常的な交通情報を取り込んでいるとき、前記のように災害情報が取り込まれたときには、オーディオ装置に信号を送ってラジオを起動し、災害情報を伝える放送局からの放送を受信できるようにしている。
【0037】
情報センター61は、近年車両の製造メーカーやナビゲーション装置メーカー等で、ユーザー向けに各種情報を提供するセンターを設けており、それらの情報センターにおける機能として示している。即ち図1に示す情報センター61では、そこで行われる各種の機能のうち本発明に関連する特定の機能を示しており、通信部62は情報要求受信部63において、ナビゲーション装置31の通信機接続部12に接続した携帯電話11から送信される情報要求を受信する。また、その情報要求に対応した送信用データを作成する情報要求対応送信用データ作成部66で作成したデータを、前記要求出力した携帯電話11に対して送信する要求情報送信部64を備えている。
【0038】
情報収集部69では情報センター61で提供する各種の情報を収集しており、全国のVICS情報を収集し、必要に応じてプローブカーの利用によるオンデマンドの交通情報も収集する。災害情報収集部71では、防災情報提供センター、地震防災センター、災害情報センター等から各種の災害情報を収集する。情報センター61には最新の地図データを記録している地図データベース67を備え、災害用地図データ作成部68ではその地図データベースと災害情報収集部71で収集した災害情報とを組み合わせ、災害用地図データを作成する。
【0039】
POI情報作成部65では、例えば緊急避難場所等の通常のナビゲーション装置が持っていないPOIを適宜作成し、災害関連地図・情報データ作成部68ではこのPOIを用いて地図中の必要箇所にこれを付す。なお、これらの災害情報及びPOI等は、位置データを付して災害用地図データと共に送信し、ナビゲーション装置31の災害地図入り表示地図作製部46でこれを重ねて表示するようにしても良い。
【0040】
前記のような機能ブロックからなる災害時地図更新方式は、例えば図2及び図3のナビゲーション装置での災害発生対応処理と、図4に示す情報センターでの災害発生対応処理の作動フローにしたがって実施することができる。以降これらの作動フローを図1及び図5の表示例等を参照して説明する。
【0041】
図2のナビゲーション装置での災害発生用対応処理(1)においては、その処理の前半部分を示し、図3のナビゲーション装置での災害発生用対応処理(2)は図2の作動フローの続きの作動として示している。図2のナビゲーション装置での災害発生用対応処理の例においては、このナビゲーション装置ではナビゲーション装置に携帯電話を接続して情報センターから誘導経路全体にわたる渋滞情報を取り込むことができるようにしており、そのための情報取込処理として、最初に情報センターに対して定常的な交通情報の要求を行う(ステップS1)例を示している。
【0042】
その際には従来と同様に自車位置と誘導経路のデータを送信し、情報センターでは特に誘導経路上、或いはその近傍に交通渋滞等はないかをチェックし、そのチェックの結果、特にその誘導経路に関連する渋滞情報等が存在するときには、その情報を送信するようなシステムとなっているため、その処理のために必要なデータをここで送信している。
【0043】
その後情報センターから交通情報を受信し(ステップS2)、図2の例ではその交通情報に災害情報が含まれているか否かを判別している(ステップS3)。即ち、前記のような定常的な交通情報の提供を行っているときでも、利用者の車両の走行に影響しそうな災害情報も常時チェックしており、特に誘導経路上に災害によって通行できない地域があるとき、これを迂回する必要があるため、そのような災害情報を抽出して送信しており、ステップS3ではそのような災害情報が含まれているか否かを判別している。
【0044】
ステップS3で災害情報が含まれていないと判別したときには、定常の交通情報利用処理がなされる(ステップS11)。また災害情報が含まれていると判別したときには、災害情報をメモリに記録する(ステップS4)。これらの作動は災害情報取込部42で交通情報の中に災害情報が含まれていたときにはこれを取り込み、記録データ管理部43によって災害情報記録部53に記録することによって行う。なお、災害情報取込のトリガとして前記のように交通情報の定期的な取り込み以外に、周囲の異変等に気が付く等による利用者の手動操作によって、適宜のときに取り込むこともできる。
【0045】
その後受信した災害情報中の災害地図データを含む地図を表示する(ステップS5)。その表示に際しては例えば図4のようにして行う。即ち、災害発生前の現在の地図画面が図5(a)のようなものであるとき、誘導経路は太線で示すように地図上に表示されている。その後火災や水害の災害が発生したとき、情報センターから災害地図データとして図5(b)中の「火災地域」及び「水没地域」のデータが位置データ或いは面の領域を示すポリゴンデータとして送信され、これを重ね合わせて表示する。
【0046】
その際の重ね合わせに際しては、例えば水没地域について、全く走行不能であることを示すために特定の色で塗りつぶすこともでき、また図示するように本来存在するはずの道路を薄く表示しても良い。更に火災或いは水没等により使用できない施設はPOI表示を行わないようにすることもできる。図5(b)に示す例においては、大地震発生直後のため火災発生地域が存在し、その地域への道路は通行止めとなり、またその近くに津波による水没地域が広がっていることを示している。
【0047】
その後図2の例では災害情報の中に緊急避難所のデータはあるか否かを判別している(ステップS6)。ここで緊急避難所のデータがあると判別したときには、受信した緊急避難所POIと緊急避難所の情報を地図画面上に表示する(ステップS7)。その際には例えば図5(b)に示すようになマークと共に、緊急避難所であることを並記し、利用者が容易に理解し対応できるようにする。この緊急避難所のようなPOIはあまりにも特殊であるため、通常のナビゲーション装置ではPOIデータの中に持っておらず、従って本来はこれを表示することができないが、図1における情報センター61のPOI情報作成部65でこれを作成して送信しているので、これを用いて容易に緊急避難場所のマーク表示を行うことができる。この作動は図1の災害地図入り表示地図作製部46において、災害関連POI表示部48により行うことができる。
【0048】
次いで誘導経路を変更する必要があるか否かを判別する(ステップS8)。ここで、例えば図5(a)のような誘導経路を走行するとき、同図(b)のような災害の発生によりその道路が通行止めとなり、且つ水没地域となっているのでこの誘導経路は全く走行することができないため、直ちに災害地域を迂回する誘導経路を演算することとなる(ステップS9)。図5(b)においてはその演算結果として図示するような迂回路が演算され、これを表示している。前記のように更新した誘導経路を表示し、その誘導経路に沿って案内を開始する(ステップS10)。その後前記ステップS8において誘導経路を変更する必要はないと判別したときと共に、図3のステップS12に進む。
【0049】
図3に示すその後のナビゲーション装置での災害発生対応処理(2)の例においては、情報取得時間間隔が経過したか否かを判別している(ステップS12)。即ち、このナビゲーション装置では携帯電話により情報センターから交通情報等を取り込むようにしており、一般に情報センターでは5分或いは10分間隔で情報を更新するため、その時間間隔より短い時間に情報を取り込んでも新しい情報が入ることはなく、したがって予め設定したそれ以上の任意の時間間隔で情報を取り込むようにしており、そのためステップS12では情報取得間隔は経過したか否かを判別している。この時間間隔は、通常は例えば20分程度としておき、前記のように災害が発生していることを検出したときには、5分或いは10分等の最短時間間隔に調整することができる。
【0050】
ステップS12で未だ情報取得時間間隔になっていないと判別したときにはこの作動を繰り返して待機する。ここで所定の情報取得時間間隔が経過したと判別したときには、情報センターへ適宜要求情報を追加して災害情報を含む情報を要求する(ステップS13)。即ち、先の図1ステップS1における情報センターへの要求は、定常的な交通情報の要求であるため、自車位置や誘導経路データを送信する程度であり、情報センターではそれらのデータに基づいて必要と思われる災害情報を送信したものであって、このステップS13においては、近くに災害が発生していることを知った利用者が、更に詳しい情報を知りたいと思うことにより、例えば図1の送信データ種類選択部36における自宅位置40或いはナビゲーション装置に登録している利用者の友人宅等の地点の位置データを更に選択し、これを送信可能とし、それにより利用者が気にしている地点の災害情報も知ることができるようになる。
【0051】
その情報要求により情報センターは所望のデータを作成して、更新した災害情報を送信してくるので、これを受信する(ステップS14)。次いで災害は解消したか否かを判別する(ステップS15)。即ち、ステップS14で受信した災害情報に、災害は解消した旨の情報があるとき災害が解消したものと判別し、ステップS20に進む。未だ災害は解消していないと判別したときには、災害情報を追加して記憶する(ステップS16)。即ちこの例においては、図1の災害情報記録部53の情報について、更新情報を受信したときに先に記録しているデータを削除して新たな情報に書き換えるのではなく、先の情報をそのまま残し、新たに更新した情報を記録するようにしている。それにより、その後必要に応じて災害情報の検索を行い、災害の状況を時系列的に見ることができるようにし、災害の状況を容易に把握できるようにしている。
【0052】
特にこのような災害情報をメモリに記録しておくことにより、その後車両が停止した状態でも、エンジンをかけると直ちに周辺の災害情報を見ることができ、車両周囲の人に対してその後最新の災害の状況を知らせることができ、しかも避難場所が地図上に明瞭に表示されるので、これを教えることも容易にできるようになるため、この面からもこの装置の有用性がある。
【0053】
その後地図法事等を更新し(ステップS17)、誘導経路を変更する必要はあるか否かを図2ステップS8と同様に判別している(ステップS18)。ここで変更する必要があると判別したときには図2のステップS9に進み、前記作動を繰り返す。それにより図5(c)に示すように、同図(b)で更新した誘導経路が水没地域の拡大により通行不能となったことにより、更なる迂回路を演算して提示することとなる。ステップS18で誘導経路を変更する必要がないと判別したときには、目的地に到着したか否かを判別し(ステップS19)、未だ到着していないときにはステップS12に戻って次の情報取得時間間隔が経過したか否かの判別を行い、前記作動を繰り返す。また、目的地に到着したと判別したときには、これらの処理を終了する(ステップS25)。
【0054】
一方、前記ステップS15において災害は解消したと判別したときには、長期間災害の影響が残る災害だったか否かを判別する。ここでは例えば火災についてはその災害が解消すると周辺の片づけを行うことにより直ちに通行可能となるのに対して、水害については水が引いた後も土砂や材木、更には大型ごみ等が散乱し、道路を正常に通過できるようになるには多くの日数がかかるため、今回の災害は長期間災害の影響が残る災害であるか否かを判別している。
【0055】
ここで長期間災害の影響画の残る災害であったと判別したときには、最新の災害地図を保存して他の災害情報をメモリから削除する。それに対して長期間災害の影響が残る災害ではないと判別したときには、災害情報をメモリから全て削除する(ステップS22)。即ち、前記のように水害等の長期間災害の影響が残る災害であるときには、最低限最新の災害地図を保存しておき、以降例えば3ヶ月等の所定の期間このデータを用いて地図を表示できるようにする。その後図2のステップS1に戻り、前記と同様の作動を繰り返し、更なる災害の発生等に対処できる作動を目的地に到着するまで行う(ステップS23)。
【0056】
前記のようなメモリの管理処理は、図1の記録データ管理部43が、災害解除検出部45で災害の解除を検出したとき、災害種別検出部がこのたびの災害はどのような災害であったかを災害情報記録部53のデータによって検出し、その災害種別が水害のような場合には、災害情報記録部53の災害地図データ53における最新のデータを残すように管理し、火災の場合は全ての情報を削除することによって行うことができる。なお、図5に示すような、火災と水害が発生しているときには、データを残しておかなければならない水害の方を優先する、等の必要に応じた各種の処理を行うことは当然である。
【0057】
前記のような作動はナビゲーション装置での処理であるが、本発明では前記のような災害情報を地図データと共に送信する情報センターが必須となる。そのような情報センターでの作動を図4に示している。図4に示す情報センターでの災害発生対応処理においては、この情報センターの定常処理として、交通情報の定常収集処理を行い(ステップS31)、更に災害情報の定常収集処理も行っている(ステップS32)。その後収集したこれらの情報をデータベースに更新して記録する処理を行う(ステップS33)。
【0058】
情報センターでは他の処理として、前記のような利用者のナビゲーション装置からの交通情報の要求を受信し(ステップS34)、その後要求した車両周辺及び誘導経路上に災害関連の情報はあるか否かを判別し(ステップS35)、現在のデータベース中にその車両周囲或いは誘導経路上に災害関連情報がないと判別したときには、ステップS31に進んで定常の交通情報送信処理を行う。
【0059】
それに対してステップS35において、要求した車両周辺及び誘導経路上に災害関連情報があると判別したときには、利用者の車両走行に関連する地域の災害用地図データを作成する(ステップS36)。更に、必要なPOIとその関連情報を作成する(ステップS37)。その後災害情報及びPOI情報を情報要求ナビゲーション装置に送信し(ステップS38)、以降は前記ステップS31の定常の交通情報の送信処理を行った後と共にステップS34に戻り、前記作動を繰り返す。本発明はこのような処理を行う情報センターからの災害関連情報を受信することによって、前記のような作動を行うことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
前記実施例では本発明による災害時地図更新方式を車両用ナビゲーション装置に適用した例を示したが、それ以外に携帯型ナビゲーション装置を含め種々のナビゲーション装置に用いることができ、更に携帯型情報端末装置やパソコンで地図を表示するときにも同様に用いることができる。特に携帯ナビゲーション装置では、災害時に所持することにより、例えば会社から自宅への移動時や緊急避難時等に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施例におけるナビゲーション装置での災害発生対応処理を示す作動フロー図である。
【図3】同、ナビゲーション装置での災害発生用対応処理の続きの作動フロー図である。
【図4】本発明で用いられる情報センターでの災害発生対応処理の作動フロー図である。
【図5】本発明の作動による地図表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
11 携帯電話 12 通信機接続部
31 ナビゲーション装置 32 災害情報処理部
33 災害情報要求部 34 災害情報要求データ作成部
35 災害情報要求データ出力部 36 送信データ種類選択部
37 現在地 38 目的地
39 誘導経路 40 自宅位置
41 ナビ登録地点 42 災害情報取込部
43 記録データ管理部 44 データ記録・変更・削除部
45 災害解除検出部 46 災害地図入り表示地図作製部
47 誘導経路表示部 48 災害関連POI表示部
49 災害種類別検出部 50 災害情報加味誘導経路演算指示部
51 災害情報受信用ラジオ起動部 52 災害情報検索部
53 災害情報記録部 54 災害地図データ
55 災害情報 56 避難場所情報
57 災害関連POI情報 61 情報センター
62 通信部 63 情報要求受信部
64 要求情報送信部 65 POI情報作成部
66 情報要求対応送信用データ作成部 67 地図データベース
68 災害用地図データ作成部 69 情報収集部
70 交通情報収集部 71 災害情報収集部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報センターに送信した自車両の走行関連データによって情報センターが作成した災害情報を受信して地図画面に表示する災害時地図更新方式において、
前記情報センターから受信した災害情報に含まれる、災害発生地域を示す災害情報について地図データと関連づけたデータを、通常の地図データとは別個に記憶する災害情報記録部と、
通常の地図データの表示に、前記受信した地図データと関連づけた災害情報を組み合わせて地図表示する災害地図入り表示地図作製部と、
災害が解消したことを検出したとき、前記災害情報記録部に記録したデータを消去することにより、通常の地図データのみを使用可能としたことを特徴とする災害時地図更新方式。
【請求項2】
前記災害が解消したことを検出したとき、災害の種類により前記受信した地図データと関連づけた災害情報を一時的に残すか否かを管理する記録データ管理部を備えたことを特徴とする請求項1記載の災害時地図更新方式。
【請求項3】
前記情報センターが作成した災害情報には、災害と関連したマークを含み、前記表示地図作製部は該マークを地図上に表示することを特徴とする請求項1記載の災害時地図更新方式。
【請求項4】
前記災害と関連したマークは緊急避難所のマークであることを特徴とする請求項3記載の災害時地図更新方式。
【請求項5】
前記表示地図作製部は、災害により使用不能となっている施設について、施設のマーク表示を行わないようにすることを特徴とする請求項1記載の災害時地図更新方式。
【請求項6】
前記情報センタに送信した自車両の走行関連データには、自車両の位置と誘導経路を含むことを特徴とする請求項1記載の災害時地図更新方式。
【請求項7】
前記災害情報記録部には、異なった情報取込時の災害情報を複数記録し、該複数の災害情報によって災害の進行を表示可能としたことを特徴とする請求項1記載の災害時地図更新方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−276255(P2009−276255A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128955(P2008−128955)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】