説明

災害時対応分散電源システム、及びパワーコンディショナの運転方法

【課題】通常時には分散電源を系統電源に連系させることできるとともに、系統電源の停電時には非常用電源として適切な電力を供給することができる災害時対応分散電源システムを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る災害時対応分散電源システムは、分散電源11〜13と、分散電源11〜13を系統電源に連系させるパワーコンディショナ21〜23とを備え、分散電源11〜13と系統電源との連系時には単相交流電力を出力し、系統電源の停電時には系統電源からパワーコンディショナ21〜23を切り離して三相交流電力を出力することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池や燃料電池などの分散電源を系統電源に連系させるとともに、系統電源の停電時には分散電源を自立運転させて電力を供給できる災害時対応分散電源システムと、そのような災害時対応分散電源システムにおけるパワーコンディショナの運転方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力消費家(需要家)の場所において、分散電源装置として太陽電池、燃料電池、風力発電装置などを配備し、これらの分散電源からの電力と電気事業者の系統電源(商用電源)からの電力とを組み合わせてその電力消費家における電力消費を賄うようにした分散型の電源システムが注目を集めている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
電力消費家の宅内において、分散電源からの電力を系統電源からの交流電力に重畳して負荷に配電するためには、分散電源を系統電源に連系させる必要ある。分散電源からの電力は、多くの場合、直流電力であり、また、交流電力であるとしても周波数や電圧が系統電源とは適合していないから、分散電源からの所定の交流電力に変換し、その周波数や電圧を系統電源からの電力に適合させるパワーコンディショナ(PCS)が用いられる。パワーコンディショナからの交流電力の出力線は、一般に、電力消費家の宅内に設けられる分電盤において、系統電源側からの配電線に接続され、これによって、電力消費家の宅内にある負荷に対して、分散電源からの交流電力と系統電源からの交流電力とが一緒に供給されるようになる。パワーコンディショナは、系統電源に連系した交流電力を出力するものであるから、その出力部分には、インバータが設けられている。この場合、負荷に供給される交流電力の周波数、位相および電圧は系統電源側から与えられるとともに、分散電源からの電力を最大限に負荷に供給できるようにするため、インバータとしては、電流制御方式のものが使用される。
【0004】
太陽電池や燃料電池などの分散電源は、独立して電力を供給できるものであるから、地震等の災害が発生して系統電源における停電が持続することが想定される場合における非常用電源として有望なものである。
【特許文献1】特許第3289418号明細書
【特許文献2】特許第3553180号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地震等の災害時にあっても非常用電源を供給することができる電源システムは、例えば、各種の緊急車両や各種の道路運送車両に対してガソリンや軽油などの燃料を供給する燃料供給ステーション(ガソリンスタンド)において切望されている。しかしながら、上述したような太陽電池や燃料電池などの分散電源を系統電源に連系させてその電力需要家の宅内の負荷に対して交流電力を供給する電源システムを、燃料供給ステーションなど非常用電源として適用することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、通常時には分散電源を系統電源に連系させることできるとともに、系統電源の停電時には非常用電源として適切な電力を供給することができる災害時対応分散電源システムと、そのような災害時対応分散電源システムにおけるパワーコンディショナの運転方法とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電力事業者の電力系統は、送電効率などの観点から、一般に、三相発電機からの三相交流電力を送電線や変電所を介して消費地まで送電し、単相交流電力が必要な場合には、その単相交流電力の消費場所の直前の位置で三相電力を単相電力に変換するように構成されている。そのため、電力単価は単相電力の方が三相電力よりも高く、分散電源を系統電源に連系させて使用する場合には、三相電力側で使用するよりも単相電力側で使用するほうが、コストメリットが大きくなる。したがって、現在、分散電源を系統電源に連系させるパワーコンディショナとしては、単相交流電力を出力するものが多い。
【0008】
一方、例えば、燃料供給ステーション(ガソリンスタンド)では、燃料タンクから車両に燃料を移送するために、三相モータで駆動されるポンプを用いている。したがって、燃料供給ステーションにおいては、通常時には分散電源からの電力を単相交流電力で駆動される負荷すなわち単相負荷に供給しているとしても、系統電源の停電時には、分散電源からの電力で三相交流電力を発生させて三相負荷に供給できることが望まれる。
【0009】
そこで、本発明の災害時対応分散電源システムは、系統電源に連系する災害時対応分散電源システムにおいて、分散電源と、分散電源を系統電源に連系させるパワーコンディショナとを備え、分散電源と系統電源との連系時には単相交流電力を出力し、系統電源の停電時には系統電源からパワーコンディショナを切り離して三相交流電力を出力することを特徴とする。
【0010】
本発明の災害時対応分散電源システムは、系統電源の停電を検出する停電検出手段と、停電検出手段によって系統電源の停電が検出された場合に、系統電源からパワーコンディショナを切り離させると共に、単相交流電力出力から三相交流電力出力へ切り換えさせる制御を行う制御手段とを更に備える。
【0011】
本発明の災害時対応分散電源システムは、複数台の上記パワーコンディショナを備え、系統電源に連系させるときは複数台のパワーコンディショナを相互に並列接続して系統電源に接続し、系統電源の停電時には、系統電源から複数台のパワーコンディショナを切り離し、複数台のパワーコンディショナの交流出力間に所定の位相差(具体的には120°)が生ずるようにして複数台のパワーコンディショナを運転させ、三相交流電力が得られるようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の災害時対応分散電源システムは、典型的には、3台のパワーコンディショナを有し、三相交流電力を得るときには3台のパワーコンディショナの出力をY結線またはΔ結線で接続するものである。あるいは、2台のパワーコンディショナを有し、三相交流電力を得るときには2台のパワーコンディショナの出力をV結線で接続するものである。
【0013】
本発明の災害時対応分散電源システムにおいて、各パワーコンディショナの定格出力は、0.1kW以上100kW以下であり、好ましくは0.3kW以上50kW以下であり、さらに好ましくは、1kW以上10kW以下である。パワーコンディショナの出力が小さすぎる場合には、パワーコンディショナの出力電圧を十分に高くすることが難しくなり、系統電源への連系に支障をきたすおそれがある。一方、パワーコンディショナの定格出力が大きすぎる場合には、パワーコンディショナの特にインバータ回路を構成するパワー半導体素子として特別の素子が必要となり、汎用性が損なわれる。
【0014】
本発明の災害時対応分散電源システムでは、三相交流電力を出力するために、前記複数台のパワーコンディショナのうちの1台がマスタとなって、三相交流電力の各相の基準となる信号を生成し他のパワーコンディショナに送信するようにすることが好ましい。
【0015】
本発明の災害時対応分散電源システムは、例えば、燃料を供給する燃料供給ステーション(ガソリンスタンドなど)に設けられる。その場合、三相交流電力は、燃料を移送する燃料ポンプを駆動する三相モータに供給される。
【0016】
本発明のパワーコンディショナの運転方法は、分散電源を系統電源に連系させる複数台のパワーコンディショナの運転方法において、系統電源に連系させるときには複数台のパワーコンディショナの出力を並列に接続して系統電源に接続し、複数台のパワーコンディショナを電流制御モードで動作させ、系統電源に連系させない場合には、複数台のパワーコンディショナの出力を系統電源から切り離し、複数台のパワーコンディショナの交流出力間に所定の位相差(具体的には120°)が生じて交流出力が三相交流の各相に対応するように、複数台のパワーコンディショナを電圧制御モードで動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、単一の装置で、通常時には分散電源を系統電源に連系させて単相交流電力を出力することできるとともに、停電時などの非常時には非常用電源として三相交流電力を出力することができる、という格別の効果を有する。
【0018】
特に、ガソリンスタンドは、災害時などの停電時にも給油機能に支障がないことが求められるが、給油用ポンプは三相交流電力で動作しているため、本発明にかかる災害時対応分散電源システムの設置が有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の災害時対応分散電源システムは、それぞれ単相交流電力を出力する2台以上のパワーコンディショナを使用し(以下で説明する実施形態では3台のパワーコンディショナを使用)、系統電源が正常に機能しているときは、これら2台以上のパワーコンディショナの出力を並列にして系統電源に接続し、系統電源に連系させて負荷に単相交流電力を供給し、系統電源が停電した場合には、これらのパワーコンディショナを系統電源から切り離すとともに、パワーコンディショナの出力間の結線を付け替え、さらに、これらの各パワーコンディショナが出力する単相交流電力の位相間に所定の位相差(具体的には120°)が生ずるようにして、モータなどの三相負荷に対して三相交流電力を供給できるようにしたものである。
【0021】
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態の災害時対応分散電源システムの構成を示している。図1は系統電源が正常に稼動している場合の結線を示し、図2は系統電源が停電している際の結線を示している。実際には、通常時には図1の結線とし、系統電源が停電となった場合には、後述するように、手動で図2の結線に切り替えることになる。
【0022】
分散電源として太陽電池などの直流電源11〜13と、直流電源11〜13からそれぞれ直流電力が供給されて単相交流電力を出力するパワーコンディショナ(PCS)21〜23が設けられている。また、系統電源からは、単相交流電力と三相交流電力とが供給されている。三相交流電力は、三相分電盤41を介して、モータなどの三相負荷51に供給されるようになっている。通常時には、図1に示すように、三相分電盤41と三相負荷51とが直結されている。単相交流電力は、単相分電盤42を介して照明などの単相負荷52に供給されるようになっている。単相分電盤42と単相負荷52との接続は、この例では、固定されている。また、これらの分電盤41,42とは別に、系統電源の停電時に用いられる停電時専用三相分電盤44が設けられている。系統電源が通常に動作しているときには、停電時専用三相分電盤44には、電源も負荷も接続されない。
【0023】
通常時には、図1に示すように、パワーコンディショナ21〜23の出力は相互に並列に接続され、遮断器43を介して単相分電盤42に供給されるようになっている。遮断器43は、系統電源が停電したときなどに、パワーコンディショナ21〜23を系統電源から解列するために設けられている。したがって、このときは、直流電源11〜13からの直流電力がパワーコンディショナ21〜23によって単相交流電力に変換され、負荷52に対して、分電盤42を介して、系統電源からの単相交流電力とパワーコンディショナ21〜23からの単相交流電力が供給されることになる。上述したように、パワーコンディショナ21〜23内のインバータ回路は、出力電流値が目標値となるように制御される電流制御モードで駆動される。
【0024】
なお、パワーコンディショナ21〜23が系統電源に接続しかつ運転している状態で系統電源が停電すると、パワーコンディショナ21〜23から出力される交流電力が系統電源側の配電網に流れ出し、停電中であるので本来は充電されていないはずの系統電源側の配電線や配電網が分散電源によって充電されることとなり、停電復旧等の作業における感電事故や、系統復帰時に系統電源側での位相と配電線側での位相が一致しないことによる故障の発生のおそれが生じ、また、故障発生位置の探索を難しくする。そこでパワーコンディショナは、系統電源側からの電力供給が途絶えたことを検出した場合に、速やかにパワーコンディショナの動作を停止させ、さらに必要に応じてパワーコンディショナ自体を配電線から機械的なスイッチあるいは遮断器によって切り離せるように構成されている。ここでは、並列接続されたパワーコンディショナ21〜23のうち、パワーコンディショナ21をマスタのパワーコンディショナとして、このパワーコンディショナ21において系統電源の停電を検出するとともに、系統電源の停電時には、残りのパワーコンディショナ22,23に対して停電検出を通知し、各パワーコンディショナ21〜23の動作を停止させるとともに、遮断器43を遮断状態とするようにしている。あるいは、各パワーコンディショナ21〜23が相互に通信しあって、系統電源の停電を検出するようにしてもよい。
【0025】
次に、系統電源が停電しているときに、三相負荷51に対して三相交流電力を供給するための構成について、図2を用いて説明する。
【0026】
系統電源が停電のときは、手動で、各パワーコンディショナ21〜23を遮断器43から切り離し、また、三相負荷51を三相分電盤41から取り外す。そして、三相負荷51への3本の配電線と、3台のパワーコンディショナ21〜23の単相交流出力とを、停電時専用三相分電盤44を介して相互に接続する。そして、交流出力における位相が相互に120°ずつずれるように3台のパワーコンディショナ21〜23を運転させる。その結果、三相負荷51に三相交流電力が供給されるようになり、三相負荷51を使用することができるようになる。三相負荷51が燃料供給ステーションにおける燃料ポンプを駆動する三相モータである場合には、系統電源の停電時であっても、緊急車両等に給油を行えることになる。
【0027】
次に、このように3台のパワーコンディショナ21〜23を結線して三相交流電力を生成できるようにするための、パワーコンディショナの構成について説明する。パワーコンディショナは、単体としては単相交流電力を出力するものであるから、これらの3台を組み合わせて三相交流電力を得るためには、パワーコンディショナが出力する交流電力における位相を相互に120°ずつずらす必要がある。そこで本実施形態では、マスタのパワーコンディショナ21において、基準となる周波数と位相差とを示す同期信号(周期トリガ)を生成し、これらの同期信号をスレーブのパワーコンディショナ22,23に伝送し、スレーブのパワーコンディショナ22.23では同期信号に同期して交流電力を発生させて出力することにより、三相交流電力が正常に生成されるようにしている。さらにマスタとスレーブのパワーコンディショナの間では、後述するように、待機信号や運転停止信号がやり取りされるようになっている。
【0028】
図3は、このようなパワーコンディショナの構成を示すブロック図である。マスタとスレーブの違いはあるものの、パワーコンディショナ21〜23の構成は同様のものである。すなわちパワーコンディショナ21〜23は、直流電源11〜13からの直流電力を受けてこれを適当な電圧まで昇圧するDC昇圧部31と、昇圧された直流電力を単相交流電力に変換するインバータ回路32と、インバータ回路32内のパワー半導体素子のゲートを駆動するためのゲートドライブ信号を発生するゲートドライブ信号発生部33と、インバータ回路32の出力電流/出力電圧を計測するセンサ34と、センサ34での波形観測値に基づいてインバータ回路32内のパワー半導体素子のゲートを制御するための目標値を算出する目標値演算部35と、インバータ回路32の出力電圧波形における目標波形を発生する目標電圧波形発生部36と、を備えている。
【0029】
系統電源に連系しているときは、インバータ回路32は電流制御モードで動作することになっているので、目標値演算部35は、センサ34で観測された電圧波形に基づいて目標値を定め、その目標値をゲートドライブ信号発生部33に送り、その結果、電圧波形に基づいてインバータ回路32が駆動制御されることになる。
【0030】
これに対し、系統電源の停電時であって図2に示すように結線されている場合には、インバータ回路32を電圧制御モードで動作させる。このとき、外部から基準の周波数や位相が供給されるわけではないので、マスタのパワーコンディショナ21の目標電圧波形発生部36は、所定周波数(50Hzまたは60Hz)で所定電圧の正弦波が出力されるように出力電圧波形の目標波形を定めて、マスタのパワーコンディショナ21の目標値演算部25に供給するとともに、スレーブのパワーコンディショナ22,23に対しては、周波数と位相との基準になる周期トリガ(同期信号)を送信する。周期トリガにおいては、スレーブのパワーコンディショナ22,23ごとに所定の位相差が設けられている。スレーブのパワーコンディショナ22,23では、目標電圧波形発生部36がこの周期トリガを受信し、周期トリガに基づいて自パワーコンディショナにおける出力電圧波形の目標波形を定め、目標値演算部35に出力する。マスタおよびスレーブのいずれのパワーコンディショナ21〜23においても、目標値演算部35は、供給された目標波形とセンサ34で観測された電圧波形とに基づいて目標値を定め、その目標値をゲートドライブ信号発生部33に送り、その結果、電圧波形に基づいてインバータ回路32が駆動制御されることになる。これにより、各パワーコンディショナ21〜23から、相互の位相が120°ずつずれた交流電力が出力されることになる。
【0031】
次に、三相交流電力を得るためのパワーコンディショナ21〜23の出力の結線方法について、図4を用いて説明する。図4の(A)はY結線の例を示している。各パワーコンディショナ21〜23の単相交流出力の一方がそれぞれY結線での各相の線となり、単相交流出力の他方は接地点(中性点)に共通に接続されている。図4の(B)はΔ結線の例を示しており、各パワーコンディショナ21〜23の一対の出力のそれぞれが、他のパワーコンディショナの出力に接続するように、リング状に結線されている。さらに本発明では、図4の(C)に示すようにV結線を採用することによって、2台のパワーコンディショナ21,22のみを用いて三相交流電力を三相負荷51に供給することもできる。この場合は、パワーコンディショナ21の一方の出力を三相交流の第1の相、パワーコンディショナ21の他方の出力とパワーコンディショナ22の一方の出力を結んで三相交流の第2の相、パワーコンディショナ22の他方の出力を三相交流の第3の相としている。
【0032】
次に、系統電源が停電したときに三相交流負荷に電力を供給できるようにするための手順について、図5を用いて説明する。
【0033】
系統電源が停止した場合(ステップ101)、遮断器43が遮断状態でなければ遮断状態とした上で、それまでは図1のような結線であったものを、手動で、図2に示す結線に切り替える(ステップ102)。次に、運転モードを、電流制御を行う通常の単相運転モードから電圧制御を行う三相運転モードに変更して、各パワーコンディショナ21〜23を起動させる(ステップ103)。この運転開始時には、マスタのパワーコンディショナ21からスレーブとなるパワーコンディショナ22,23に対して、三相運転の基準となる周期トリガを伝送し(ステップ104)、運転準備を行う。スレーブのパワーコンディショナ22,23は、運転の準備ができたら、運転待機状態に移行して、運転準備が完了したことを示す待機信号をマスタのパワーコンディショナ21に送信する。スレーブのパワーコンディショナ22,23の両方から待機信号を受信したら、マスタのパワーコンディショナ21は運転を開始し(ステップ105)、スレーブのパワーコンディショナ22,23はマスタのパワーコンディショナ21に追従して運転を開始する(ステップ107)。これにより、三相負荷51に対して三相交流電力を供給できるようになる。
【0034】
次に、上述のように三相交流電力を供給している場合に、系統電源が復帰し、系統に再度連系する場合の手順について、図6を用いて説明する。
【0035】
系統に再度連系するためには、パワーコンディショナ21〜23を三相運転から単相運転に切り替える必要がある。そこで、系統電源の復帰を確認したら、ます、パワーコンディショナ21〜23の三相運転モードをオフにする(ステップ111)。その結果、マスタのパワーコンディショナ21からスレーブのパワーコンディショナ22,23身対して運転停止信号が送信され(ステップ112)、これを受けてスレーブのパワーコンディショナ22,23が運転を停止し(ステップ113)、次に、マスタのパワーコンディショナ21が運転を停止する(ステップ114)。その後、パワーコンディショナ21〜23の運転モードを単相モードに切り替えた上で(ステップ115)、手動で、図2の結線から図1の結線に切り替える(ステップ116)。その後、遮断器43を導通状態とすると、各パワーコンディショナ21〜23は、系統電源に連系した運転を開始する(ステップ117)。
【0036】
ところで、分散電源用のパワーコンディショナとしては、住宅や小規模店舗などを対象とした単相出力のパワーコンディショナが広く普及している。これらを産業用途に転用することは普及の点から見て有効であり、出力される単相交流電力は照明や空調用などに活用することが可能である。しかしながら、従来は、単相用のパワーコンディショナを用いている限り、停電時には重要性の高い動力用の三相交流電力が得られない、という問題点があった。
【0037】
しかしながら、以上説明したように、第1の実施形態の災害時対応分散電源システムは、系統電源が稼動しているときには直流電源11〜13を系統電源(単相交流電力)に連系させることができるとともに、系統電源が停電となったときには、上述のような手順を踏むことによって、動力用として重要度の高い三相交流電力を発生することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図7及び図8は、本発明の第2の実施形態の災害時対応分散電源システムの構成を示す回路図であり、図9は、第2の実施形態のパワーコンディショナの構成を示す回路図である。図7は系統電源が正常に稼動している場合の結線を示し、図8は系統電源が停電している際の結線を示している。図7及び図8に示すように、第2の実施形態の災害時対応分散電源システムは、系統電源が停電となった場合に、直流電源11〜13と系統電源との連系を切り離すと共に、単相交流電力出力から三相交流電力出力への切り替えをを自立的に行う点で第1の実施形態の災害時対応分散電源システムと異なっている。具体的には、第2の実施形態の災害時対応分散電源システムは、第1の実施形態の災害時対応分散電源システムにおいて、更に停電検出部61と制御部62とを備えている。第2の実施形態の災害時対応分散電源システムの他の構成は、第1の実施形態の災害時対応分散電源システムと同一である。
【0039】
例えば、系統電源の停電を検出するために、制御部62は、定期的にパワーコンディショナ21〜23へ制御信号を送信し、単相交流電流の位相を変化させる。このとき、パワーコンディショナ21〜23は、目標値演算部35によって制御部62からの制御信号に基づいて電流目標値を変更する。系統電源から単相交流電力が供給されている場合、電流の位相を変化させても電圧の位相は変化しない。しかしながら、系統電源から単相交流電力が供給されていない場合、電流の位相変化に応じて電圧の位相変化が発生する。停電検出部61は、単相交流電圧の位相の変化を検出した場合に、系統電源が停電したと判断し、制御部62へ通知する。制御部62は、停電検出部61から系統電源の停電の通知を受けると、パワーコンディショナ21へ制御信号を送信すると共に、図7の結線から図8の結線へ切り替える。このとき、パワーコンディショナ21は、目標電圧波形発生部36によって制御部62からの制御信号に基づいて三相交流電力生成のための出力電圧波形の目標波形を定め、上記したように、目標値演算部35に供給すると共に、スレーブのパワーコンディショナ22,23に対して周期トリガを送信する。これにより、各パワーコンディショナ21〜23から、相互の位相が120°ずつずれた交流電力が出力され、三相交流電力が生成される。
【0040】
この第2の実施形態の災害時対応分散電源システムでも、第1の実施形態の災害時対応分散電源システムと同様な利点を得ることができる。更に、第2の実施形態の災害時対応分散電源システムによれば、自立的に、系統電源の停電を検出し、切り替えを行うことができる。
【0041】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0042】
本実施形態では、3つの直流電源と3つのパワーコンディショナとを備える形態を例示したが、直流電源とパワーコンディショナとをそれぞれ1つずつ備える形態であっても、単相電力への連系運転と、3相自立運転の両者を可能にすることができる。以下に、その一例を変形例として示す。
【0043】
[変形例]
図10及び図11は、本発明の変形例の災害時対応分散電源システムの構成を示す回路図であり、図12は、変形例のパワーコンディショナの構成を示す回路図である。図10は系統電源が正常に稼動している場合の結線を示し、図11は系統電源が停電している際の結線を示している。図10及び図11に示すように、変形例の災害時対応分散電源システムは、第2の実施形態の災害時対応分散電源システムにおいて、複数の直流電源11〜13及び複数のパワーコンディショナ21〜23に代えて、1つの直流電源11と1つのパワーコンディショナ70とを備えている。変形例の災害時対応分散電源システムの他の構成は、第2の実施形態の災害時対応分散電源システムと同一である。
【0044】
パワーコンディショナ70は、直流電源11から出力される直流電力から単相交流電力及び三相交流電力を生成することが可能であり、制御部62からの制御信号に応じて何れか一方を生成して出力する。パワーコンディショナ70は、パワーコンディショナ21〜23において、インバータ回路32に代えてインバータ回路72を備えている。パワーコンディショナ70の他の構成は、パワーコンディショナ21〜23と同一である。
【0045】
インバータ回路72は、系統電源が停電した場合に、直流電力から三相交流電力を生成することができるように、例えば、6つのスイッチング素子を用いた三相インバータ構成となっている。一方、通常時は、インバータ回路72は、3つのインバータのうちの2つのインバータを用いて単相交流電力を生成する。
【0046】
まず、系統電源に連系しているとき、ゲートドライブ信号発生部33は、インバータ回路72における3つのインバータのうち2つのインバータに駆動電圧を供給する。例えば、2つのインバータに供給される駆動電圧は、互いに位相差180度となっている。このようにして、高力率の単相交流電力が生成される。
【0047】
次に、系統電源の停電を検出するために、制御部62は、定期的にパワーコンディショナ70へ制御信号を送信し、単相交流電流の位相を変化させる。このとき、パワーコンディショナ70は、目標値演算部35によって制御部62からの制御信号に基づいて電流目標値を変更する。停電検出部61は、単相交流電圧の位相の変化を検出した場合に、系統電源が停電したと判断し、制御部62へ通知する。制御部62は、停電検出部61から系統電源の停電の通知を受けると、パワーコンディショナ70へ制御信号を送信すると共に、図10の結線から図11の結線へ切り替える。このとき、パワーコンディショナ70は、目標電圧波形発生部36によって制御部62からの制御信号に基づいて三相交流電力生成のための出力電圧波形の目標波形を定め、上記したように、目標値演算部35に供給する。すると、目標値演算部35は、供給された目標波形とセンサ34で観測された電圧波形とに基づいて目標値を定め、その目標値をゲートドライブ信号発生部33に送る。すると、ゲートドライブ信号発生部33は、インバータ回路72における3つのインバータに駆動電圧を供給する。例えば、3つのインバータに供給される駆動電圧は、互いに位相差120度となっている。このようにして、高力率の三相交流電力が生成される。
【0048】
この変形例の災害時対応分散電源システムでも、第2の実施形態の災害時対応分散電源システムと同様な利点を得ることができる。
【0049】
本変形例では、ゲートドライブ信号発生部33は、単相交流電力生成時と三相交流電力生成時とで、それぞれの力率が高くなるように各インバータの駆動電圧の位相を調整したが、各インバータの駆動電圧の位相を調整せずとも、単相交流電力と三相交流電力とを得ることができる。例えば、インバータ回路72は、常に三相交流電力を生成するように動作し、単相交流電力が必要なときには3相出力のうちの2相の出力を単相交流電力として用いればよい。
【0050】
また、本実施形態及び変形例では、停電検出部61は、電流の位相を変更して電圧の位相変化を検出する単独運転検出機能を備えていたが、停電検出部61は、本実施形態及び変形例以外にも様々な態様であってもよい。例えば、停電検出部61は、過電圧検出機能や、低電圧検出機能、高周波数検出機能、低周波数検出機能などの様々な機能によって実現可能である。
【0051】
また、本発明の機能を実現するためには、パワーコンディショナとマトリックスコンバータ等の他電力変換機器とを組み合わせて用いる方法も有効である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態の災害時対応分散電源システムの構成を示すブロック図であって、通常運転時の接続を示している。
【図2】本発明の第1の実施形態の災害時対応分散電源システムの構成を示すブロック図であって、系統電源の停電時の接続を示している。
【図3】図1及び図2に示す災害時対応分散電源システムにおけるパワーコンディショナの構成を示すブロック図である。
【図4】三相運転モードでのパワーコンディショナ相互の結線を示す図であって、(A)はY結線、(B)はΔ結線、(C)はV結線を示している。
【図5】図1及び図2に示した災害時対応分散電源システムの動作を示すフローチャートであって、系統電源が停電したことにより三相運転モードを起動するときの処理を示している。
【図6】図1及び図2に示した災害時対応分散電源システムの動作を示すフローチャートであって、系統電源が復帰したことにより連系運転を再開するときの処理を示している。
【図7】本発明の第2の実施形態の災害時対応分散電源システムの構成を示すブロック図であって、通常運転時の接続を示している。
【図8】本発明の第2の実施形態の災害時対応分散電源システムの構成を示すブロック図であって、系統電源の停電時の接続を示している。
【図9】図7及び図8に示す災害時対応分散電源システムにおけるパワーコンディショナの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の変形例の災害時対応分散電源システムの構成を示すブロック図であって、通常運転時の接続を示している。
【図11】本発明の変形例の災害時対応分散電源システムの構成を示すブロック図であって、系統電源の停電時の接続を示している。
【図12】図10及び図11に示す災害時対応分散電源システムにおけるパワーコンディショナの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
11〜13 直流電源
21〜23 パワーコンディショナ
31 DC昇圧部
32 インバータ回路
33 ゲートドライブ信号発生部
34 センサ
35 目標値演算部
36 目標電圧波形発生部
41 三相分電盤
42 単相分電盤
43 遮断器
44 停電時専用三相分電盤
51 三相負荷
52 単相負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源に連系する災害時対応分散電源システムにおいて、
分散電源と、
前記分散電源を前記系統電源に連系させるパワーコンディショナと、
を備え、
前記分散電源と前記系統電源との連系時には単相交流電力を出力し、前記系統電源の停電時には前記系統電源から前記パワーコンディショナを切り離して三相交流電力を出力することを特徴とする、災害時対応分散電源システム。
【請求項2】
前記系統電源の停電を検出する停電検出手段と、
前記停電検出手段によって前記系統電源の停電が検出された場合に、前記系統電源から前記パワーコンディショナを切り離させると共に、単相交流電力出力から三相交流電力出力へ切り換えさせる制御を行う制御手段と、
を更に備える、請求項1に記載の災害時対応分散電源システム。
【請求項3】
複数台の前記パワーコンディショナを備え、
前記系統電源に連系させるときは前記複数台のパワーコンディショナを相互に並列接続して前記系統電源に接続し、前記系統電源の停電時には、前記系統電源から前記複数台のパワーコンディショナを切り離し、前記複数台のパワーコンディショナの交流出力間に所定の位相差が生ずるようにして前記複数台のパワーコンディショナを運転させ、三相交流電力が得られるようにしたことを特徴とする、請求項1及び2に記載の災害時対応分散電源システム。
【請求項4】
3台の前記パワーコンディショナを有し、三相交流電力を得るときには前記3台のパワーコンディショナの出力をY結線またはΔ結線で接続する、請求項3に記載の災害時対応分散電源システム。
【請求項5】
2台の前記パワーコンディショナを有し、三相交流電力を得るときには前記2台のパワーコンディショナの出力をV結線で接続する、請求項3に記載の災害時対応分散電源システム。
【請求項6】
前記各パワーコンディショナの定格出力が0.1kW以上100kW以下である、請求項3〜5の何れか1項に記載の災害時対応分散電源システム。
【請求項7】
前記複数台のパワーコンディショナのうちの1台がマスタとなって、前記三相交流電力の各相の基準となる信号を生成し他のパワーコンディショナに送信する、請求項3〜6の何れか1項に記載の災害時対応分散電源システム。
【請求項8】
燃料を供給する燃料供給ステーションに設けられ、前記三相交流電力は、前記燃料を移送する燃料ポンプを駆動する三相モータに供給される、請求項1〜7の何れか1項に記載の災害時対応分散電源システム。
【請求項9】
分散電源を系統電源に連系させる複数台のパワーコンディショナの運転方法において、
前記系統電源に連系させるときには前記複数台のパワーコンディショナの出力を並列に接続して前記系統電源に接続し、前記複数台のパワーコンディショナを電流制御モードで動作させ、
前記系統電源に連系させない場合には、前記複数台のパワーコンディショナの出力を前記系統電源から切り離し、前記複数台のパワーコンディショナの交流出力間に所定の位相差が生じて前記交流出力が三相交流の各相に対応するように、前記複数台のパワーコンディショナを電圧制御モードで動作させることを特徴とするパワーコンディショナの運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−278588(P2008−278588A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117097(P2007−117097)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】