説明

炉体の窓構造及び炉体の窓構造の蒸着防止方法

【課題】ガスパージやシャッターを利用することなく透明板に金属ガスが蒸着するのを防止することを可能とする。
【解決手段】炉体11の側壁部11aに取り付けられた透明板31と、炉体11の内部空間12に対する透明板31の露出面31aを加熱する加熱装置41とを備える。加熱装置41は、炉体11の内部空間12に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に透明板31の露出面31aを加熱することを特徴とする。これにより、透明板31の露出面31aに金属ガスが蒸着することを防止することが可能となるうえ、透明板31の露出面31aに金属ガスが蒸着していたとしても、加熱により蒸着物を融解させることにより除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉体の内部を外部から観察、照射するために用いられる炉体の窓構造及び炉体の窓構造の蒸着防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、炉体の内部を外部から観察、照射するための手段として窓構造が好適に用いられている。この窓構造は、炉体の側壁部に取り付けられたガラス板等からなる透明板を有しており、この透明板を通して炉体の内部を外部から撮像装置や光源等により観察、照射することが可能となる。
【0003】
このような窓構造が好適に用いられる箇所としては、例えば、連続溶融めっきラインで用いられる連続焼鈍炉のスナウトが挙げられる。スナウトは、その先端部が溶融めっき浴に浸漬されており、連続焼鈍炉内を搬送される金属帯を外気に触れさせることなく溶融めっき浴内に案内するために用いられる。スナウトの内部は、溶融めっき浴から蒸発している金属ガスにより炉体の内壁面に対する金属の蒸着が起き易いうえ、溶融めっき浴の浴面にドロス等が浮遊し易い環境にある。これらが金属帯の表面に付着してしまうと疵、めっき不良等の表面欠陥が生じてしまうため、スナウトの内壁面や溶融めっき浴の浴面を観察するため、このような窓構造が好適に用いられている。
【0004】
ここで、窓構造の透明板は、炉体の内部空間に含まれる金属ガスが蒸着して蒸着物が付着することにより、撮像装置等による視野、照射範囲が狭められてしまい、透明板を通して炉体の内部を観察、照射するうえでの障害となってしまう。このため、このような問題を解決するため、例えば、ガスパージやシャッターを利用した窓構造が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
ガスパージを利用した窓構造101は、例えば、図4に示すように、炉体111の側壁部111aに設けられたAr等の不活性ガスを充満させるためのパージ室102と、パージ室102内に不活性ガスを供給するガスノズル103とを備えている。この窓構造101によれば、パージ室102内に不活性ガスを供給して充満させることにより、金属ガスが透明板131にまで到達するのを遮断し、金属ガスが透明板131に蒸着するのを防止することが可能となる。
【0006】
シャッターを利用した窓構造104は、例えば、図5に示すように、炉体111の側壁部111aに設けられた円筒状の筒体105と、筒体105内で回転可能に設けられた円形状のシャッター板106とを備えている。この窓構造104によれば、シャッター板106を筒体105内で回転させることにより筒体105内での気体の流出入の有無を切り替えることが可能となり、これにより、金属ガスが透明板131にまで到達するのを遮断し、金属ガスが透明板131に蒸着するのを防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−21326号公報(図4等参照)
【特許文献2】特開平05−44032号公報(図5等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ガスパージを利用した窓構造101では、ガスパージするために大量の不活性ガスが必要となり、その分コストの増大を招いてしまう。また、この窓構造101では、ガスパージすることによりパージ室102の周囲にも不活性ガスが拡散してしまうことになる。このため、連続焼鈍炉のスナウトにこの窓構造101を適用した場合は、不活性ガスの拡散により溶融めっき浴から蒸発した金属ガスも炉体111の入側にまで拡散してしまい、炉体111の広い範囲で金属ガスの蒸着が発生し、蒸着した金属が金属帯に落下することにより疵等の表面欠陥を招く恐れが増大してしまう。また、この場合は、金属ガスが炉体111の入側にまで拡散してしまうことにより、溶融めっき浴の浴面近傍における金属ガスの分圧が飽和蒸気圧より小さくなり、かえって溶融めっき浴から金属ガスの蒸発が促進されてしまうという問題がある。
【0009】
また、シャッターを利用した窓構造104では、炉体111の内部を観察等する都度、シャッター板106を回転させる必要があり、炉体111の内部を定常的に観察等することが困難であるという問題がある。
【0010】
また、ガスパージ、シャッターの何れを利用した窓構造101、104においても、パージ室102や筒体105が炉体111から大きく突出しているため、その突出部114が周辺設備との間で干渉してしまううえ、周辺設備の交換作業時の障害となるという問題がある。
【0011】
また、何れの窓構造101、104においても、透明板131に対して金属ガスが蒸着するのを完全に防止することは困難であり、蒸着物を除去するために塩酸等を用いて定期的に清掃作業を行う必要が依然として生じるという問題がある。
【0012】
また、何れの窓構造101、104においても、パージ室102や筒体105があることから透明板131の位置が炉体111の内壁面111bから炉体111の外側に大きく離れてしまい、その結果、透明板131から炉体111の内部を観察、照射するときの視野、照射範囲が狭められてしまうという問題がある。特に、ガスパージを利用した窓構造104の場合は、ガスパージによる効果を上げるためにパージ室102を小さくすることが多いことから、視野、照射範囲が特に狭められ易くなり、大きな問題となる。
【0013】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ガスパージやシャッターを利用することなく透明板に金属ガスが蒸着するのを防止することを可能とし、上述した問題を有利に解決することを可能とする炉体の窓構造及び炉体の窓構造の蒸着防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の炉体の窓構造及び炉体内部の観察方法を発明した。
【0015】
第1発明に係る炉体の窓構造は、炉体の側壁部に取り付けられた透明板と、前記炉体の内部空間に対する前記透明板の露出面を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段は、前記内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に前記露出面を加熱することを特徴とする。
第2発明に係る炉体の窓構造は、第1発明において、前記炉体は、前記内部空間の一部が溶融めっき浴の浴面に接しており、前記加熱手段は、前記溶融めっき浴から蒸発して前記内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に前記透明板の露出面を加熱することを特徴とする。
第3発明に係る炉体の窓構造は、第2発明において、前記透明板は、前記溶融めっき浴に先端部が浸漬されるスナウトの側壁部に取り付けられることを特徴とする。
第4発明に係る炉体の窓構造は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記加熱手段は、通電により抵抗発熱する抵抗発熱体から構成されていることを特徴とする。
第5発明に係る炉体の窓構造は、第4発明において、前記加熱手段としての抵抗発熱体は、透明導電膜から構成されていることを特徴とする。
第6発明に係る炉体の窓構造の蒸着防止方法は、炉体の側壁部に取り付けられた透明板の当該炉体の内部空間に対する露出面を当該内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に加熱することを特徴とする。
第7発明に係る炉体の窓構造の蒸着防止方法は、内部空間の一部が溶融めっき浴の浴面に接している炉体の側壁部に透明板が取り付けられ、前記炉体の内部空間に対する前記透明板の露出面を前記溶融めっき浴から蒸発して当該内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に加熱することを特徴とする。
第8発明に係る炉体の窓構造の蒸着防止方法は、内部空間の一部が溶融めっき浴の浴面に接している炉体において当該溶融めっき浴に先端部が浸漬されるスナウトの側壁部に透明板が取り付けられ、前記炉体の内部空間に対する前記透明板の露出面を前記溶融めっき浴から蒸発して当該内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明〜第8発明によれば、透明板の露出面に金属ガスが蒸着することを防止することが可能となるうえ、透明板の露出面に金属ガスが蒸着したとしても、加熱により蒸着物を融解させることにより除去することが可能となる。また、ガスパージやシャッターを利用することなく透明板に金属ガスが蒸着するのを防止することが可能となる。また、ガスパージを利用することが不要となるので、ガスパージするための不活性ガスが不要となり、その分コストの低減を図ることが可能となる。また、シャッターを利用することが不要となるので、炉体の内部を定常的に観察、照射することが可能となる。また、ガスパージ、シャッターが不要となるので、透明板等が取り付けられる炉体の突出部の長さを短くすることが可能となり、その分、その突出部が周辺設備との間で干渉したり、周辺設備の交換作業時の障害となることを防止することが可能となる。また、透明板の蒸着物を除去するために塩酸等を用いて定期的に清掃作業を行うことが不要となる。また、透明板の位置を炉体の内壁面に近づけることが可能となり、透明板等から炉体の内部を観察、照射するときの視野、照射範囲が狭まるのを抑えることが可能となる。
第2発明又は第7発明によれば、溶融めっき浴の近傍での飽和蒸気圧に透明板の露出面の近傍での飽和蒸気圧が近づくことになり、透明板に金属ガスが液相の金属として付着するのを抑えることが可能となる。
第3発明又は第8発明によれば、ガスパージすることが不要となるので、不活性ガスが拡散することにより溶融めっき浴から蒸発した金属ガスが炉体の入側にまで拡散してしまうことを防止することが可能となる。また、これにより、溶融めっき浴の浴面近傍において金属ガスの分圧が飽和蒸気圧より小さくなることを防止することが可能となり、溶融めっき浴から金属ガスの蒸発が促進されてしまうことを防止することが可能となる。
第5発明によれば、加熱時の抵抗発熱体の過度の発光により、透明板を通して炉体の内部を観察するときに生じる視認性の低下や、比較的暗い炉体の内部を撮像装置により観察するときの困難を招くことなく、透明板を通して炉体の内部を観察することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る炉体の窓構造の構成を概略的に示す側面断面図である。
【図2】第1実施形態に係る炉体の窓構造の構成を示す拡大側面断面図である。
【図3】本発明に係る窓構造を連続焼鈍炉の加熱帯に適用した例としての構成を概略的に示す側面断面図である。
【図4】従来のガスパージを利用した窓構造の構成を示す側面断面図である。
【図5】従来のシャッターを利用した窓構造の構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した炉体の窓構造及び炉体の窓構造の蒸着防止方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る炉体11の窓構造3の構成を概略的に示す側面断面図であり、図2は、その拡大側面断面図である。
【0020】
炉体11は、金属帯7を熱処理する連続焼鈍炉等の熱処理炉として用いられるものである。金属帯7は、例えば、鋼材や他の金属材料からなる帯材として構成されるものであり、搬送ロール21や図示しない巻取装置により炉体11の内部を搬送される。
【0021】
炉体11は、第1実施形態において、連続焼鈍炉1として構成されており、その出側端部11cに配設された筒状のスナウト13を備えている。スナウト13は、その先端部13cが溶融めっき槽8に貯溜された溶融めっき浴9内に浸漬されており、炉体11は、その内部空間12の一部が溶融めっき浴9の浴面9aに接している。スナウト13は、連続焼鈍炉1内を搬送される金属帯7を外気に触れさせることなく溶融めっき浴9内に案内するために用いられる。溶融めっき浴9は、例えば、亜鉛、アルミニウム、クロム、ニッケル等の溶融めっき金属から構成される。
【0022】
第1実施形態に係る窓構造3は、この連続焼鈍炉1としての炉体11の一部であるスナウト13に配設されている。
【0023】
窓構造3は、炉体11の側壁部11aに取り付けられた透明板31と、炉体11の内部空間12に対する透明板31の露出面31aを加熱する加熱装置41とを備えている。また、窓構造3は、第1実施形態において、透明板31の外側に間隔を空けて炉体11の側壁部11aに取り付けられた保護透明板33を更に備えている。
【0024】
透明板31及び保護透明板33は、第1実施形態において、次のようにして炉体11の側壁部11aに取り付けられている。
【0025】
炉体11のスナウト13の内壁面13aには開口13bが形成されており、その開口13bからは炉体11の外側に突出した筒体15が設けられ、筒体15の外側端部15aからはその外周側に突出したフランジ16が設けられている。透明板31及び保護透明板33は、それらの周端部31c、33cを側方から取り囲むように環状に断熱材17が設けられ、筒体15の外側端部15aにおける開口15bを塞ぐように配置される。断熱材17は、例えば、耐熱性のある不織布、ガスケット、セラミックファイバー等から構成される。
【0026】
そして、透明板31及び保護透明板33の周端部31c、33cを断熱材17とともにフランジ16との間で挟みつけるように環状板18が配置され、これらにボルト19が挿通されてナット20が螺合されることによって、透明板31及び保護透明板33が固定される。
【0027】
透明板31及び保護透明板33は、このようにして炉体11の側壁部11aに取り付けられるものであるが、その取付方法は公知のものであれば特に限定するものではない。
【0028】
透明板31及び保護透明板33は、加熱装置41により比較的高温に加熱されるものであることから、熱膨張率が低く耐熱性のある材料から構成されていることが好ましい。透明板31及び保護透明板33は、このような観点から、例えば、石英ガス等から構成されていることが好ましいが、これに限定するものではない。
【0029】
加熱装置41は、第1実施形態において、透明板31の露出面31aと反対の外面31bに取り付けられた透明導電膜43から構成されている。透明導電膜43は、第1実施形態において、透明板31の外面31bに蒸着することにより取り付けられている。透明導電膜43は、例えば、酸化すず(SnO2)や酸化インジウムすず(ITO:Indiumu Tin Oxide)等から構成されるが、公知のものであれば特に限定しない。
【0030】
透明導電膜43は、第1実施形態において、その外面に一対の電極45が取り付けられている。一対の電極45には、これらの間に電圧を印加する電圧印加手段としての電源装置47が接続されている。電源装置47は、直流及び交流の何れの電圧を印加するものとして構成されていてもよい。また、第1実施形態においては、一方の電極45と電源装置47との間において開閉器49が接続されており、これらの間での電圧の印加の有無を切り替えることが可能となっている。
【0031】
加熱装置41は、この他にも、透明導電膜43のような、通電により抵抗発熱するニクロム線等の抵抗発熱体42から構成されていることが好ましい。但し、ニクロム線等のように抵抗発熱することにより発光する抵抗発熱体42の場合は、後述のように透明板31の露出面31aを加熱したときに抵抗発熱体42が加熱により過度に発光する。このように抵抗発熱体42が過度に発光してしまうと、透明板31を通して炉体11の内部を観察するときに視認性の低下を招くうえ、比較的暗い炉体11の内部を撮像装置により観察するのが非常に困難となる。このため、このような問題の解決を図る観点からは、透明導電膜43から構成されていることが好ましい。また、加熱装置41は、公知の加熱手段であれば特に限定するものではなく、例えば、バーナー、加熱ガスの吹き付け、輻射加熱により加熱するものから構成されていてもよい。
【0032】
なお、加熱装置43が抵抗発熱体42から構成されている場合、その抵抗発熱体42は、透明板31の露出面31aと外面31bとの何れの面に取り付けられていてもよい。
【0033】
また、炉体11の外部には、透明板31及び保護透明板33を通して炉体11の内部を観察するための図示しない撮像装置や、炉体11の内部を照射するための図示しない光源が配設される。
【0034】
次に、第1実施形態に係る炉体11の窓構造3の動作及び炉体11の窓構造3の蒸着防止方法について説明する。
【0035】
第1実施形態に係る炉体11の窓構造3を用いるうえでは、炉体11の内部空間12に対する透明板31の露出面31aをその内部空間12に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に加熱装置41により加熱する。これにより、透明板31の露出面31aに金属ガスが蒸着することを防止することが可能となるうえ、透明板31の露出面31aに金属が蒸着していたとしても、加熱により蒸着物を融解させることにより除去することが可能となる。このとき、加熱により融解した液相としての金属は、透明板31の露出面31aから蒸発したり、他の箇所に落下することにより露出面31aから除去されることになる。
【0036】
このとき、炉体11の内部空間12に金属ガスとして含まれる金属としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、クロム、ニッケル、マグネシウム等や、これらの合金金属が挙げられる。金属の融点について一例を挙げると、亜鉛の融点は420℃程度、アルミニウムの融点は660℃程度であり、亜鉛とアルミニウムとを主成分とする合金金属の融点は420℃〜660℃である。このことから、透明板31の露出面31aを加熱するうえでは、例えば、溶融めっき浴9の溶融めっき金属が亜鉛の場合は420℃以上、アルミニウムの場合は660℃以上、亜鉛とアルミニウムとの合金金属の場合は420℃〜660℃の融点となる温度以上に加熱すればよい。
【0037】
また、このとき、透明板31の露出面31aの温度は、加熱装置41による発熱量や伝熱量等の数値に基づき伝熱計算する等して理論計算により求めてもよいし、実験により求めてもよいし、熱電対等の測温素子により求めてもよい。
【0038】
また、このとき、透明板31の露出面31aを所定の温度となるように調整するうえで、加熱装置41として透明導電膜43等の抵抗発熱体42を用いた場合は、抵抗値がほぼ一定となるため、電圧の調整により発熱量を調整することでその露出面31aが所定の温度となるように調整すればよい。
【0039】
以上の第1実施形態によれば、ガスパージやシャッターを利用することなく透明板31に金属ガスが蒸着するのを防止することが可能となる。また、ガスパージを利用することが不要となるので、ガスパージするための不活性ガスが不要となり、その分コストの低減を図ることが可能となる。また、シャッターを利用することが不要となるので、炉体11の内部を定常的に観察、照射することが可能となる。また、ガスパージ、シャッターが不要となるので、透明板31等が取り付けられる筒体15等からなる炉体11からの突出部14の長さを短くすることが可能となり、その分、その突出部14が周辺設備との間で干渉したり、周辺設備の交換作業時の障害となることを防止することが可能となる。また、透明板31の露出面31aに金属ガスが蒸着したとしても、これを金属の融点以上に加熱することにより融解させて除去することが可能となるので、透明板31の蒸着物を除去するために塩酸等を用いて定期的に清掃作業を行うことが不要となる。また、筒体15等からなる炉体11からの突出部14の長さを短くすることが可能となるので、透明板31の位置を炉体11の内壁面11bに近づけることが可能となり、透明板31等から炉体11の内部を観察、照射するときの視野、照射範囲が狭まるのを抑えることが可能となる。
【0040】
また、第1実施形態に係る窓構造3は、保護透明板33を備えているので、透明板31が加熱されているときに人間が透明板31に触れることによる火傷を防止することが可能となるうえ、透明板31が割れたときに内部雰囲気等の漏洩が発生するのを防止することが可能となる。また、加熱装置41が抵抗発熱体42から構成されている場合、保護透明板33により、人間が抵抗発熱体42に触れることによる感電を防止することが可能となる。
【0041】
また、炉体11の内部空間12の一部が溶融めっき浴9の浴面9aに接している場合、溶融めっき浴9の近傍での飽和蒸気圧に透明板31の露出面31aの近傍での飽和蒸気圧が近づくことになり、透明板31に金属ガスが液相の金属として付着するのを抑えることが可能となる。このような効果を更に効果的に発揮するうえでは、透明板31の露出面31aを溶融めっき浴9の浴温以上に加熱することが好ましい。これにより、透明板31の露出面31aの近傍の飽和蒸気圧を溶融めっき浴9の近傍の飽和蒸気圧以上とすることが可能となり、透明板31に金属ガスが液相の金属として付着するのをより確実に抑えることが可能となる。
【0042】
また、窓構造3が溶融めっき浴9に先端部13cが浸漬されるスナウト13に用いられている場合、以上の第1実施形態によりガスパージすることが不要となるので、不活性ガスが拡散することにより溶融めっき浴9から蒸発した金属ガスが炉体11の入側にまで拡散してしまうことを防止することが可能となる。また、これにより、溶融めっき浴9の浴面近傍において金属ガスの分圧が飽和蒸気圧より小さくなることを防止することが可能となり、溶融めっき浴9から金属ガスの蒸発が促進されてしまうことを防止することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0044】
例えば、連続焼鈍炉1は、金属帯7を加熱する加熱帯1aと、加熱された金属帯7を所定範囲の温度域で保持する均熱帯1bと、金属帯7を冷却する冷却帯1cとを備えているが、本発明に係る窓構造3は、例えば、図3に示すように、加熱帯1aに適用されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 :連続焼鈍炉
3 :窓構造
7 :金属帯
8 :溶融めっき槽
9 :溶融めっき浴
9a :浴面
11 :炉体
12 :内部空間
13 :スナウト
14 :突出部
15 :筒体
16 :フランジ
17 :断熱材
18 :環状板
31 :透明板
31a :露出面
33 :保護透明板
41 :加熱装置
42 :抵抗発熱体
43 :透明導電膜
45 :電極
47 :電源装置
49 :開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体の側壁部に取り付けられた透明板と、
前記炉体の内部空間に対する前記透明板の露出面を加熱する加熱手段とを備え、
前記加熱手段は、前記内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に前記露出面を加熱すること
を特徴とする炉体の窓構造。
【請求項2】
前記炉体は、前記内部空間の一部が溶融めっき浴の浴面に接しており、
前記加熱手段は、前記溶融めっき浴から蒸発して前記内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に前記透明板の露出面を加熱すること
を特徴とする請求項1記載の炉体の窓構造。
【請求項3】
前記透明板は、前記溶融めっき浴に先端部が浸漬されるスナウトの側壁部に取り付けられること
を特徴とする請求2項記載の炉体の窓構造。
【請求項4】
前記加熱手段は、通電により抵抗発熱する抵抗発熱体から構成されていること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の炉体の窓構造。
【請求項5】
前記加熱手段としての抵抗発熱体は、透明導電膜から構成されていること
を特徴とする請求項4記載の炉体の窓構造。
【請求項6】
炉体の側壁部に取り付けられた透明板の当該炉体の内部空間に対する露出面を当該内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に加熱すること
を特徴とする炉体の窓構造の蒸着防止方法。
【請求項7】
内部空間の一部が溶融めっき浴の浴面に接している炉体の側壁部に透明板が取り付けられ、前記炉体の内部空間に対する前記透明板の露出面を前記溶融めっき浴から蒸発して当該内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に加熱すること
を特徴とする炉体の窓構造の蒸着防止方法。
【請求項8】
内部空間の一部が溶融めっき浴の浴面に接している炉体において当該溶融めっき浴に先端部が浸漬されるスナウトの側壁部に透明板が取り付けられ、前記炉体の内部空間に対する前記透明板の露出面を前記溶融めっき浴から蒸発して当該内部空間に金属ガスとして含まれる金属の融点以上に加熱すること
を特徴とする炉体の窓構造の蒸着防止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate