炊飯器および炊飯器の制御方法
【課題】食味に優れる米飯に炊き上げる。
【解決手段】制御部8は、炊飯工程の開始命令の情報を操作部94から入力したことに応答して、温度センサ9が計測した温度および制御プログラムを用いて、ヒータ12および浸漬した米を攪拌するための攪拌翼136を駆動する。擦り合せの強度を指定する情報に基づき、炊飯工程において攪拌翼136が内容物を攪拌するトータルの回数が制御される。
【解決手段】制御部8は、炊飯工程の開始命令の情報を操作部94から入力したことに応答して、温度センサ9が計測した温度および制御プログラムを用いて、ヒータ12および浸漬した米を攪拌するための攪拌翼136を駆動する。擦り合せの強度を指定する情報に基づき、炊飯工程において攪拌翼136が内容物を攪拌するトータルの回数が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は炊飯器および炊飯器の制御方法に関し、特に、米粒同士を擦り合わせる機能を有する炊飯器および炊飯器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からおいしいご飯を炊くために様々な炊飯器が市販されているが、精米後の各家庭での米の保存状態によって同じ炊飯器を使用しても炊き上がりが異なってしまう。つまり、精米直後はおいしく炊けるが、精米後室温で保存する場合には、精白米表面の脂質層が徐々に酸化し、結果吸水不足となり、おいしいご飯と感じられない炊飯となってしまうことがたびたびあった。特に梅雨から夏にかけては室温の上昇とともに脂質層の酸化スピードは速まり、新米が出てくる直前の8月から9月の米を炊飯して得られる米飯の食味は低下する。
【0003】
米の保存により炊飯した場合の食味が低下してしまうという課題に対して、家庭用精米機が各種提案されている。家庭用精米機を用いれば、例えばご飯を炊く前に炊く量だけの玄米を精米できることから、おいしいご飯を炊くことができるという利点がある。
【0004】
特許文献1(特開2000−210574号公報)の精米機は、精米機構を洗米まで使用可能としている。つまり、分離籠に入れられた玄米をブレードによってかき回して精米可能であるとともに、分離籠に入れられた白米を水で濡れた状態または水とともにブレードによってかき回して洗米可能としている。
【0005】
特許文献2(特開平2−245243号公報)には水中精米装置が示される。水中精米装置によれば、米穀を浮遊状態で水中精米することにより、精米と米磨ぎ(こめとぎ)を同時に可能としている。
【0006】
特許文献3(特開平6−63429号公報)には米の表面に糠成分を残すことのない精米処理方法が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−210574号公報
【特許文献2】特開平2−245243号公報
【特許文献3】特開平6−63429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の家庭用精米機によれば、特許文献2と3の精米装置に比較して、炊飯直前に精米し引き続いて洗米することができるとの特徴を有する。しかしながら、家庭用精米機は未だ普及率は高くなく、多くの家庭では、販売店で精米してもらい精米状態の米を家庭で保存することになる。したがって、米表面の脂質が酸化した米を食べざるを得ないといった状況にあった。
【0009】
それゆえに本発明の目的は、食味に優れる米飯に炊き上げる炊飯器および炊飯器の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、炊飯工程において鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備える。
【0011】
好ましくは、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するための制御手段を、さらに備える。
【0012】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【0013】
好ましくは、除去する手段は、鍋の米を浸漬する水面上に載置される油分吸着機能を有するシート状部材を含む。
【0014】
好ましくは、除去する手段は、鍋の浸漬した米の上に載置されて、沸き上がる米粒表層部が通過する複数の孔が形成された平板状部材を含む。
【0015】
この発明の他の局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、炊飯工程において鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、擦り合わせ手段の駆動を停止させて鍋の水を入替えるように報知する報知手段と、を備える。
【0016】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【0017】
この発明のさらに他の局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する炊飯器の制御方法は、以下の特徴を有する。
【0018】
つまり、炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備え、制御方法は、鍋の内部の温度を計測するステップと、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するステップと、を備える。
【0019】
この発明のさらに他の局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する炊飯器の制御方法は、以下の特徴を有する。炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、を備える。制御方法は、鍋の内部の温度を計測するステップと、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するステップと、攪拌手段の駆動を停止させて鍋の水を入替えるように報知するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、炊飯工程において浸漬した米粒同士を擦り合わせることで水側に米の酸化脂質層を含む表層部分を移行させ、水側に移行した表層部分を除去する手段で除去する、または水の入替えで除去することで、食味に優れる米飯に炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る炊飯器の概略ハードウェア構成図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の制御部の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る炊飯器の制御に係る機能構成図である。
【図4】実施の形態に係る操作部と表示部の構成図である。
【図5】実施の形態に係る攪拌部材と内鍋の取付態様を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る攪拌部の構成を示す図である。
【図7】(A)〜(C)は、実施の形態に係る基本的な炊飯工程と擦り合わせ期間とを関連付けて説明する図である。
【図8】実施の形態に係る炊飯工程を説明する図である。
【図9】実施の形態に係る他の炊飯工程を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るさらなる他の炊飯工程を説明する図である。
【図11】実施の形態に係るさらなる他の炊飯工程を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図13】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図14】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図15】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図16】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図17】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図18】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図19】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図20】実施の形態に係る他の攪拌部材の構成を説明する図である。
【図21】実施の形態に係るシートを説明する図である。
【図22】実施の形態に係るキャッチャーを説明する図である。
【図23】実施の形態に係る残留する脂肪酸度の検出試験結果を示す図である。
【図24】実施の形態に係る擦り合わせの有無による食味試験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0023】
本実施の形態の炊飯工程では、炊飯器の内鍋において水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせることにより、米粒表面の酸化脂質層を削り取り水側に移行させ、移行した該酸化脂質成分を除去する。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態に係る炊飯器は、上方に向けて開口を有する本体1と、本体1に収納される内鍋31と、図示のない枢軸(ヒンジ軸)およびラッチの機構2Aにより開閉できるよう本体1に接続された蓋2とを含む。蓋2には、内蓋4が一体的に取り付けられる。本体1の内部には内鍋31の収容部を構成する外鍋32、内鍋31に収容された調理物を加熱および保温するための加熱用シーズヒータ(以下、単にヒータという)12、炊飯器の動作を制御する制御部8、内鍋31の温度を検出する温度センサ9、電源部10、上述の擦り合わせのための攪拌部13およびファン7を備える。蓋2の筐体には炊飯中に内鍋31内に発生する水蒸気を外部に逃すための蒸気筒5、炊飯器の動作状態を指す情報を出力する表示部93、ユーザの命令を受付けるために操作されるボタンからなる操作部94を備える。本体1の筐体側面には、ファン7に関連の空気取り入れ口6Aと送出口6Bを備える。
【0025】
米粒表面から削り取られて水側に移行した酸化脂質層を除去するために、浸漬水をユーザが入替える方法と、おねばキャッチャー51(以下、単にキャッチャーという)または炊飯シート52(以下、単にシートという)を用いる方法がある。後者の方法では、炊飯開始前にキャッチャー51を内鍋31の水に浸漬した米の上に載置して、炊飯シート52を水に浮かせる。これらの詳細は後述する。
【0026】
内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度を予測計測するために温度センサ9が設けられる。温度センサ9は、内鍋31の鍋底壁面温度を計測可能なように設けられる。鍋底壁面温度は内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度に等しいと想定する。
【0027】
内鍋31は、外鍋32の中に自由に出し入れできる。内鍋31の調理物を収容する内面はフッ素樹脂加工が施され、外鍋32と接する側面は中空ガラスビーズでコーティングされている。中空ガラスビーズコートにより、熱は内鍋31内に封じ込められて、保温時などの蓄熱効果が高まる。内蓋4は、蓋2が閉じられたとき内鍋31の開口を覆う。内蓋4は、蓋2に着脱自在に取付けられている。
【0028】
攪拌部13は、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を有する回転部14と、回転部14の攪拌翼136を回転させるためのモータ部(後述のモータ部15)とを含む。攪拌翼136は回転部14に一体的に接続されて、モータ部に接続された回転部14がモータ部の回転に連動して回転することにより、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転する。回転時には、内鍋31内には水と共に収容された米が水中に浸漬した状態にあるので、攪拌翼136の回転により攪拌翼136に米が衝突して擦り合わされ、また内鍋31内には水流(図中の細い矢印)が生じ浸漬した米粒同士が擦り合わされる。
【0029】
表示部93と操作部94は、本実施の形態では蓋2の筐体表面において一体的に設けられるが、ユーザが表示情報を視認可能であり、またボタン操作が可能な位置であれば、取り付け位置は、ここに限定されない。
【0030】
ファン7は炊飯終了後の保温移行時に回転する。ファン7の回転により取り込み口6Aから空気が侵入し(図中の太い矢印)、侵入した気流は内鍋31および外鍋32に送風されて、送出口6Bから外部に送出される。送風により、内鍋31自体が急速冷却されて、保温移行時の内鍋31内の米飯の酸化が抑制される。
【0031】
炊飯器は電源コード11を介して図示のない商用電源に接続される。商用電源からの供給電力は電源部10を介して各部に供給される。
【0032】
本実施の形態では、加熱・保温用の熱源としてヒータ12を用いたが、熱源はこれに限定されない。たとえば、IH(Induction Heating:電磁誘導加熱)によるものであってもよい。この場合には、攪拌部136の回転機構のための磁界と干渉が生じないよう両者を配置する。
【0033】
図2には、制御部8の内部構成とその周辺回路が示される。図2を参照して制御部8は、CPU(Central Processing Unit)81、プログラムおよびデータを格納するメモリ82、時間を計時して計時データを出力するタイマ83および各部とデータを入出力するためのI/F(Interface)84を備える。
【0034】
CPU81はI/F84を介して、報知のためのブザー90、開閉センサ91、ヒータ12に通電して発熱動作を行わせるためのヒータ駆動部92、操作部94、表示部93の表示動作を制御する表示制御部931、攪拌部13のモータ駆動部95、ファン7のファン駆動部96、内鍋31内の収容物の重量を計測するための重量センサ97、および温度センサ9とデータを入出力する。開閉センサ91は、機構2Aのヒンジに関連して設けられて、蓋2の開閉を検出する。
【0035】
図3には、本実施の形態による炊飯器を制御するための機能構成が示される。図3を参照してCPU81は、操作部94のボタン操作を介して入力する命令に従って炊飯工程に係る各部を制御するための手順を指す炊飯コースを選択的に決定するコース判定部71、決定された炊飯コースに基づきメモリ82を検索して対応する制御プログラムPRを読出す制御手順決定部72、重量センサ97の検出信号に基づき内鍋31の米の重量を検出する米量判定部73、米量判定部73の検出信号に基づき攪拌部13のモータの単位時間当たりの回転数を決定する回転数決定部74、決定された回転数に従ってモータを回転させるための電圧信号を生成しモータ駆動部95に出力するモータ制御部75、ヒータ12に供給する電流信号を生成してヒータ駆動部92に出力するヒータ制御部76、およびブザー90の鳴動を制御する報知部77を備える。
【0036】
モータ制御部75は、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を制御する。
メモリ82には、各炊飯コースに対応して制御プログラムPRが予め格納される。制御プログラムPRは、加熱手段であるヒータ12に通電する電流レベルを炊飯開始から終了までの期間にわたって時系列に制御するための情報および攪拌翼136の回転を制御するための情報を指す。
【0037】
ここでは内鍋31の米の重量は重量センサ97を用いて計測するとしているが、計測方法はこれに限定されない。たとえば、内鍋31を回転させるモータの負荷に基づき検出してもよく、また内鍋31内の水位を検出するセンサの検出結果に基づき米の重量を検出するようにしてもよく、またユーザが操作部94から米の量を入力するとしてもよい。
【0038】
表示部93と操作部94は図4に示すように一体的に構成される。表示部93による表示動作は、CPU81の指示に基づき表示制御部931により制御される。表示部93には、炊飯コースを選択するための情報931と932と933、および時間情報934が表示される。情報931は、シート52(キャッチャー51)の使用の有無を選択的に指定するための情報であり、情報932はヒータ12による加熱手順を選択的に指定するための情報であり、白米、高速炊飯、おかゆおよび玄米それぞれの加熱手順を示す。情報933は、攪拌翼136の攪拌による擦り合わせの程度(強・弱・なし)を選択的に指定するための情報である。
【0039】
操作部94は、保温・取消ボタン941、予約炊飯の設定を行う際に操作される予約ボタン942、炊飯を開始するときや予約炊飯を決定するときに操作されるスタートボタン943、表示部93の情報を選択するために操作される選択ボタン945、および炊飯コースを選択する際に操作されるコースボタン946を有する。保温・取消ボタン941とスタートボタン943は、ランプを内蔵し、ボタン操作に従ってランプが点灯・消灯する。
【0040】
保温・取消ボタン941は、保温の開始を指示するため、または保温状態を取消すために操作される。炊飯終了後保温工程に入った場合は保温・取消ボタン941のランプが点灯する。
【0041】
予約ボタン942は予約炊飯の設定を行うときに操作される。予約ボタン942の操作に連動して、表示部93の画面には時間情報934として予約した時間が表示される。予約は最大12時間後まで可能である。予約時間は、炊飯完了の時間を指す。炊飯時には、タイマ83の計時データに基づき炊飯終了までの残り時間が時間情報934によって表示される。
【0042】
コースボタン946は炊飯コースを選択する際に使用する。1回押すと情報932に隣接するボタン947のうち白米コースに対応のボタンが点灯する。もう一回押すと高速コースのボタンが点灯する。順に押す毎に情報932のおかゆ→玄米→白米とコース選択を繰返すことができる。コースが選択される毎に、ボタン947のうち当該コースに対応のボタンが点灯する。
【0043】
白米コースを選択した場合は白米コースのランプが点灯する。選択ボタン945を操作することで炊飯コースを選択できる。
【0044】
シート52の有無(あり・なし)は情報931により選択的に設定できる。デフォルトでは情報931の「なし」が選択される。選択されると情報931の文字は太字表示に切替えられる。図4では、「あり」が選択されていることが指示される。情報931のシート52のあり・なしの選択は、選択ボタン945を操作することにより切替えることができる。シート52またはキャッチャー51を炊飯時に使用する際には「あり」が選択される。
【0045】
情報933は炊飯の仕上がり状態、すなわち米粒同士の擦り合わせの程度(強さ)を、[(強)・(弱)・なし]の3種類で示す。ユーザは、3種類のうちから選択できる。選択された擦り合わせの程度を指す文字は太い文字に切替えられる。「なし」が選択される場合は、擦り合わせは行われない。デフォルトでは(弱)が選択された状態になっている。情報933の擦り合わせの程度の選択は、選択ボタン945を操作することにより切替えることができる。情報932の玄米コースが選択される場合には、情報933の擦り合わせの程度の選択をすることはできない。図4では「強」が選択されている。
【0046】
情報932に示す高速炊飯コースおよびおかゆコースのそれぞれが選択される場合でも白米コースと同様に仕上がり状態を選ぶことができる。
【0047】
本実施の形態では、CPU81は、操作部94のボタン操作内容を検出し、検出した操作内容に基づき情報931〜933のキャッチャー51またはシート52の有無、加熱手順および擦り合わせの程度が選択されたと判別したとき、操作内容に基づき選択された炊飯コースを検出する。
【0048】
図5を参照して回転部14の取付け状態について説明する。図5において、内鍋31の底面の中央部には、予め回転部14の形状に整合させて凹部と軸(図6の回転軸134に相当)が形成されており、回転部14は当該凹部に嵌め込み可能な形状を有する。内鍋31が嵌め込まれると、回転軸134は、攪拌翼136の中心軸に連接される。
【0049】
外鍋32の底面外部における、内鍋31の凹部に対応する位置には、モータ部15が取付けられている。回転部14が取り付けられた内鍋31が外鍋32(図示せず)に収容されると、モータ部15から回転部14に回転のための駆動力が伝達可能な状態となる。攪拌翼136は回転部14に着脱自在であるので、使用後は回転部14をモータ部15から取り外して、または攪拌翼136を回転部14から取り外してそれぞれ洗浄することが可能である。
【0050】
図6を参照して攪拌翼136を回転させるための機構について説明する。回転のための機構として、本実施の形態ではマグネットカップリング式非接触式攪拌機構を採用する。具体的には、外鍋32の底面外部に設けられたモータ部15は攪拌用モータ131と、攪拌用モータ131の回転軸に接続される外箱138を有する。
【0051】
外箱138は、回転部14を受容れ可能な凹部形状を有し、その内壁にはアウターヨーク132が取付けられた中空状の箱である。外箱138の内壁にはアウターヨーク132を挟んで磁界を構成するためのアウターマグネット133が配される。
【0052】
内鍋31が外鍋32に収容されるとき、外箱138の凹の部分に嵌め込むように内鍋31の回転部14が取付けられる。回転部14はフッ素樹脂であるテフロン(登録商標)で被膜され、内部は充填されて、完全防水されている。回転部14は、内鍋31の回転軸134の周囲に隙間を介して配されるインナーヨーク137と、インナーヨーク137に磁界を構成するために配されたインナーマグネット135を有する。インナーマグネット135とアウターマグネット133とは空隙を介して相対するように位置し互いに磁力により引き合う。
【0053】
攪拌翼136は、樹脂素材の略円形部材(円の直径は約5〜7cm)であり、円の中心で直交するように十字の凸部が形成されている。凸部は、回転により水流を生じやすいように山型である。
【0054】
動作において、攪拌用モータ131が回転するとモータ軸に連接された外箱138が回転し、アウターマグネット133が回転し、アウターマグネット133に磁力によって引き合うインナーマグネット135も回転する。その結果、回転部14自体が回転し、攪拌翼136が連動して内鍋31の底面内において回転する。
【0055】
(攪拌翼136の回転速度)
発明者らの実験によれば、炊飯工程における攪拌翼136を用いた擦り合わせによって米自体が割れたり、また過剰に削り取られるのを回避するには、攪拌翼136の回転速度、すなわち攪拌用モータ131の回転速度は、内鍋31に収容される米の量に応じて変化させるべきであるとの知見を得た。実験によれば、5.5合炊きの内鍋31(内径は深さ方向に一様に約19cm、深さは約11cmである)で1〜3合の米を炊く場合には、回転速度は500rpm(回転数/分)であり、5合の場合には750rpmであることが好ましい。
【0056】
発明者らの実験によれば、擦り合わせ期間における攪拌用モータ131の運転、すなわち攪拌翼136の回転は連続していてもよく、また間欠していてもよいとの知見を得た。単位時間(10秒)当たりの運転率として、たとえば2秒運転8秒停止の間欠運転の場合を運転率20%とした場合、実験によれば、上述した擦り合わせにより米粒表面の酸化脂質層を削り取るには、運転率は36%〜100%であることが望ましいとの知見を得た。また、少なくも36%であれば、内鍋31内の水温均一化の効果も得られるとの知見を得た。
(一般的な炊飯工程について)
後述の図7(A)を参照して一般的な炊飯工程について説明する。図7(A)のグラフでは、内鍋31内の水温の変化が示される。グラフの縦軸には水温(℃)が取られており、横軸には炊飯開始からの経過時間(分)が取られている。このグラフは、5.5合(米の1合は150グラム)炊きの炊飯器において、内鍋31に3合の白米を収容して炊飯する工程を例示する。
【0057】
一般に炊飯工程は、グラフに示すようにヒータ12による加熱が行われない浸漬工程に続いて、ヒータ12による加熱を行う吸水・糊化工程、沸騰持続工程および蒸らし工程の順に進行する。浸漬工程および吸水・糊化工程では、米のデンプン質を糊化させるために、米の芯にまで充分水を吸わせる。炊飯とは水と米に熱を加えることにより、生デンプンの形を変え、消化されやすいアルファ化デンプンに変化させることである。この生デンプンからアルファ化デンプンへの変化を糊化と呼ぶ。糊化においては、米のデンプンに水と熱を加えると糊状に変化する現象が見られ、糊化は水温60℃から開始されることが知られている。
【0058】
動作において、まず、ユーザは機構2Aに関連の図示されない開閉ボタンを操作し、炊飯器の本体1から内鍋31を取出す。
【0059】
炊飯したい量の米を計量する。米の単位は合および升であり、1合は150グラム、1升は1500グラムに相当する。家庭で使用する精米後の米はまだ表面に糠層が残っているため、ユーザは先に水道水で洗米する(研ぐ)。洗米は表面の糠層を取り除くために、手早く、数回、水を交換しながらかきまぜるといった方法が用いられる。洗米後の米と所定量の水(加水量は米に対する重量比1.4〜1.5倍)を内鍋31に投入する。このとき、内鍋31の鍋底には予め攪拌翼136を含む回転部14が取り付けられた状態にあり、底面から内容物(米または水)が外部にもれることはない。
【0060】
米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32内にセットし、蓋2を閉じる。
ユーザがスタートボタン943を押すと炊飯工程が開始される。このとき、ユーザは操作部94を操作して炊飯のコースを選択しているので、選択内容に従って、CPU81はメモリ82から当該コースに対応した制御プログラムPRを読出す。以降は、CPU81は読出した制御プログラムPRの命令コードに基づき各部を制御する。これにより、炊飯が進行する。
【0061】
炊飯工程では、ヒータ制御部76は、ヒータ駆動部92に対し制御信号を出力するので、ヒータ駆動部92は制御信号に基づき、ヒータ12に通電する。これにより、内鍋31の内容物の加熱が行われる。炊飯工程の開始と同時にCPU81は、温度センサ9によって計測される温度を入力し、入力した温度に基づき内鍋31内の水温を検出する。これにより、炊飯工程における温度管理が行われる。
【0062】
図7(A)によれば、室温(20℃)の水温で15分程度浸漬させることで米が含有する水分が30%近くになり、浸漬工程が終了する。その後、加熱を開始し水温を上昇させながら、さらなる吸水と、60℃以上では米の糊化が行われる。
【0063】
加熱時に或る一定温度でハンチングさせる場合には、温度センサ9の検出温度に基づきヒータ制御部76がヒータ12の通電量を制御することにより、一定温度を維持することができる。
【0064】
水が100℃に達してからはその沸騰を15分以上継続できるようにヒータ制御部76はヒータ12の通電量をヒータ駆動部92を介して制御する。
【0065】
沸騰中に余分となった内鍋31内の蒸気は、必要に応じ蓋2の図示のない小孔および蒸気筒5を通して外部に排気される。15分沸騰継続後には内鍋31には自由水はほとんどなくなっており、米は十分にアルファ化され飯となっている。その後は、蒸らし工程に移る。
【0066】
蒸らし工程では温度が95℃以下にならないようにヒータ制御部76はヒータ12を制御する。この段階で飯の表面に僅かに残ったおねばは、飯に吸水されるのでツヤのあるおいしいご飯に変化する。蒸らし工程が終了すると炊飯完了(炊飯工程終了)である。
【0067】
このように、米からデンプン溶出する糊化工程、その後の沸騰持続工程および蒸らし工程とそれぞれの目的にあわせて温度制御が行われる。浸漬工程後の吸水工程は、水温が室温から60℃以下において、糊化工程は水温60℃以上で100℃まで、沸騰持続工程は98℃以上の維持20分以上、蒸らし工程では95℃以上の維持15分以上が基本である。
【0068】
図7(A)では、吸水・糊化工程の55℃付近で温度をハンチングさせて、ある一定温度に維持することも可能である。この場合、米の酵素活性を上げて、糖の生成を助長する効果が得られる。
【0069】
また、グラフには示さないが、炊飯工程が開始されると浸漬工程を経ずに吸水・糊化工程を開始し、吸水・糊化工程後はただちに沸騰持続工程まで一気に温度を上昇させるようにしてもよい。この場合には、飯の弾力が大きくなる。なお、このケースでも糊化温度以下において攪拌動作が行われる。
【0070】
(炊飯工程における擦り合わせの基本タイミング)
図7(B)と(C)に示すように、擦り合わせタイミングは米の状態によって変えることが望ましい。例えば、一年以上保存した古米の場合は、図7(B)のように浸漬工程および吸水・糊化工程のすべての期間(ただし、糊化開始温度以下の期間)を擦り合わせの期間とすることで、十分に酸化脂質層を削り取ることができて、食味を新米に近づけることが可能となる。とりわけ、家庭では梅雨時から夏場に保存した米は日に日に酸化脂質層が増えることから、図7(B)の期間において擦り合わせを行うことで食味の向上が可能となる。一方、新米の場合は酸化脂質層はほとんど含まれていないので、図7(C)のように浸漬工程のみにおいて擦り合わせを行うことで過度に米粒表面を削りとることを回避できる。
【0071】
(炊飯コースと擦り合わせのタイミング)
図8〜図11のグラフには、本実施の形態の炊飯コース毎に水温の変化と、米同士の擦り合わせタイミングが示される。グラフの縦軸には水温(℃)と擦り合わせの運転率(%)が取られており、横軸には炊飯開始からの経過時間(分)が取られている。このグラフは、5.5合(米の1合は150グラム)炊きの炊飯器において、内鍋31に3合の白米を収容して白米コースで炊飯する工程を例示する。これらグラフで示す水温の変化は、図7(A)で示すグラフのそれに一致している。
【0072】
破線のグラフは水温の変化を指し、実線グラフは攪拌用モータ131の運転率を指す。運転率が0%を指示する期間は攪拌用モータ131は停止し擦り合わせあわせなしの状態であり、運転率が36%〜100%の値を指示する期間は攪拌用モータ131が駆動されて米粒同士の擦り合わせが行わている状態を指す。いずれの炊飯コースであっても、攪拌による米粒同士の擦り合わせは、糊化開始温度(60℃)以下において行われる。
【0073】
図8と図9の炊飯コースは、いずれもユーザが浸漬水を入替えるパターンである。具体的には、図8と図9の炊飯コースは、ユーザが操作部94を操作してシート52およびキャッチャー51は「なし」と選択した場合であって、図8では擦り合わせ強度は「弱」と選択がされて、図9では擦り合わせ強度は「強」と選択がされた場合を指す。
【0074】
図8の「シート(なし)+擦り(弱)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率36%で運転開始されて攪拌動作が行われる。運転開始後所定期間が経過した時点で運転は一時停止されてブザー90が鳴動し水替タイミングが報知される。報知がされると、ユーザは内鍋31を取出し、浸漬水を排出し、新しい水(水温20℃)を、内鍋31の内周面に予めプリントされた所定の目盛線に達する量だけ入れて、内鍋31を炊飯器内にセットし、蓋2を閉じる。なお、内鍋31の内周面には炊飯する米量毎に、加水するべき水の量を支持する目盛線が予めプリントされている。開閉センサ91によって蓋2が閉じられたことが検出されると、一時停止されていた攪拌動作が再開される。
【0075】
図9の「シート(なし)+擦り(強)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率100%で運転開始されて攪拌動作が行われる。以降の動作は図8と同様であり、水入替えがされる。水入替えがされた後は、攪拌動作が運転率36%で再開される。
【0076】
このように浸漬水の入替えがされるので、攪拌動作により米粒表面から削り取られて水側に移行した酸化脂質成分を排出することができる。
【0077】
図10と図11の炊飯コースは、キャッチャー51またはシート52を用いることで上述のようなユーザによる浸漬水の入替えを省略できるパターンである。具体的には、図10と図11の炊飯コースは、ユーザが操作部94を操作してシート52およびキャッチャー51は「あり」と選択した場合であって、図10では擦り合わせ強度は「強」と選択がされて、図11では擦り合わせ強度は「弱」と選択された場合を指す。
【0078】
図10の「シート(あり)+擦り(強)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率50%で運転開始されて攪拌動作が行われる。運転開始後所定期間が経過した時点で運転率は50%→36%に切替されて、その後攪拌動作が糊化温度以下の期間において継続する。
【0079】
図11の「シート(あり)+擦り(弱)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率36%で運転開始されて水温が糊化温度以下の期間において運転が継続する。
【0080】
このように、炊飯コースの情報193が指す擦り合わせの強度を指定する情報に基づき、炊飯工程において攪拌翼136が内鍋31の内容物を攪拌する運転率が、すなわちトータルの回数が可変に制御される。
【0081】
(炊飯工程のフローチャート)
炊飯工程の処理フローチャートは、炊飯コースに応じて予め制御プログラムPRとしてメモリ82に格納されている。いずれの制御プログラムPRに基づき炊飯工程を実行するかは、前処理においてユーザが操作部94を操作する内容に基づき決定される。
【0082】
前処理では、ユーザは、炊飯開始に際して、所定量の米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32にセットし、蓋2を閉めて、その後、操作部94を操作して炊飯コースを選択する。コース判定部71は操作部94の操作内容を検出し、検出する操作内容に基づき炊飯コースを判別する。判別した炊飯コースは、制御手順決定部72に与えられる。以上が前処理である。その後、ユーザがスタートボタン943を操作することにより、炊飯工程の開始が指示される。
【0083】
以下、炊飯コース別に炊飯工程の処理手順を説明する。なお、ここでは情報932による加熱手順として白米に対応の手順が選択されるものと想定する。
【0084】
〈シート(なし)+擦り(弱)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(なし)+擦り(弱)コース’が選択された場合の炊飯工程について図12〜図13のフローチャートを参照して説明する。
【0085】
スタートボタン943が操作されたことを検知すると(ステップS(以下、単にSと略す)101)、制御手順決定部72は、前処理において与えられている炊飯コースの情報に対応する制御プログラムPRをメモリ84から検索して読出す(S102)。その後、CPU81は、読出した制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0086】
まず、米量判定部73は、重量センサ97の検出データに基づき、内鍋31に収容されている米の量を検出し、検出した米量のデータを回転数決定部74に与える。回転数決定部74は、与えられた米量データに基づき攪拌翼136の回転数を決定し、モータ制御部75に出力する(S103)。ここでは、米量と回転数を対応付けたテーブルがメモリ84に予め格納されているので、検出した米量データに基づき当該テーブルを検索することで、対応する回転数を読出すことができる。
【0087】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力する。モータ駆動部95は制御信号に基づき攪拌用モータ131に通電する。これにより、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転する。モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し、米の擦り合わせが開始する(S104a)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を、36%の運転率で回転させるように制御する。
【0088】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S105a)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間と酸化脂質層の除去時間、すなわち攪拌期間のタイムカウントが開始される(S106a)。モータ制御部75はタイマ83からの計時データに基き除去時間5分が経過したと判定すると(S107aでYES)、モータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力する。モータ駆動部95は、制御信号に基づき攪拌用モータ131の回転を停止させる。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせによる酸化脂質層の除去工程は一時停止する(S108a)。
【0089】
除去工程が一時停止すると、報知部77はブザー90を鳴動するように制御する(S109a)。ブザー90の鳴動は、ユーザが水替えのために内鍋31を炊飯器から取出したことが検知されるまで、すなわち重量センサ97の検出する重量W1が0を指示すると検出されるまで(S110a、S111aでYES)継続する。重量W1が0を指示すると検出されると、CPU81はスタートボタン943のランプの点滅を開始させる。点滅は、ユーザに対してスタートボタン943の操作を促すためであり、操作したことが検出されるまで継続する。
【0090】
ユーザは、ブザー90の鳴動により水替えのタイミングであることを確認して、内鍋31炊飯器から取出し、浸漬水を入替えた後に、再度、内鍋31を炊飯器にセットし(S112a)、スタートボタン943を操作する(S113a)。
【0091】
スタートボタン943の操作が検出されると(S113a)、モータ制御部75はモータ駆動部95に攪拌用モータ131の回転を再開させるために制御信号を出力する。これにより、攪拌用モータ131は運転率36%で回転を再開し、回転に連動して攪拌翼136が回転する(S114a)。この回転は、糊化開始温度(60℃)が検出されるまで継続する(S126a、S127)。
【0092】
回転が再開されると、ヒータ制御部76は、タイマ83からの計時データに基づき浸漬工程の残り時間T3が15分経過したと判定すると(S116、S117a)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始する(S118a)。これにより、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される。
【0093】
加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。次いで、ヒータ制御部76は温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K1を計測する(S120a)。ここでは、鍋底壁面温度K1は、内鍋31の水温に等しいと想定する。
【0094】
ヒータ制御部76は鍋底壁面温度K1が所定温度、たとえば55℃を指示すると検知すると(S121aでYES)、温度センサ9の検出温度が所定温度を保持するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電量を制御する(S122a)。
【0095】
モータ制御部75は、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T3の計測を開始する(S123a)。次いで、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が計測される(S124a)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したことを検出し(S125a)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃以上を指示すると判定すると(S126a)、糊化が開始されるのでモータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力する。モータ駆動部95は、制御信号に基づき攪拌用モータ131の回転を停止させる。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせは終了する(S127a)。
【0096】
その後は、内鍋31内を沸騰させるためにヒータ制御部76は、ヒータ駆動部95を介して、フルパワーで加熱が行われるようにヒータ12に通電する(図13のS128)。温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K3が計測される(S129)。ヒータ12の連続加熱による内鍋31内の沸騰と蒸発がしばらく継続すると(沸騰持続工程)、内鍋31の鍋底の水がほとんどない状態に変化する。
【0097】
ヒータ制御部76は、温度センサ9の検出温度に基づき、鍋底壁面温度K3が103℃以上を指示することを検出すると(S130でYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電を停止する。これにより、内鍋31に対する加熱動作は停止する(S131)。
【0098】
その後、蒸らし工程に移行する。CPU81は、加熱動作を停止した(沸騰持続工程を終了)後は、内鍋31内の米飯を蒸らすために、タイマ83の計時データに基づき、蒸らし時間T4の計測を開始する(S132)。蒸らし工程においても温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K4が検出される(S133)。ヒータ制御部76は、蒸らし工程においては、温度センサ9の検出温度に基づく鍋底壁面温度K4と95℃とを比較しながら、比較結果に基づき鍋底壁面温度K4が95℃を下回らないように、ヒータ駆動部92を介しヒータ12の通電量を制御し、加熱量を制御する(S133〜S135)。
【0099】
CPU81は、タイマ83の計時データに基づき蒸らし時間T4が15分以上を指示するか否かを判定する(S136)。蒸らし時間T4が15分が経過したと判定すると(S136でYES)、炊飯工程は終了する(S137)。炊飯工程終了時には、CPU81はブザー90などの音声出力部を介して炊飯終了を報知する音またはメッセージを出力するようにしてもよい。
【0100】
ヒータ制御部76は、引き続いて保温工程に移行するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12の通電量を制御し、内鍋31内の米飯を保温するよう動作する(S138)。CPU81は、保温工程時には保温・取消ボタン941のランプを点灯し、保温状態であることを報知する。また、保温開始時にはファン駆動部96を介してファン7を回転させて急速冷却し米飯の酸化を抑制する。
【0101】
以上のようにシート(なし)+擦り(弱)コースでは、炊飯工程開始から内鍋31内の水温が糊化開始温度になるまでの期間においては、水替えがされながら攪拌翼136による攪拌が運転率36%で間欠的に行われる。
【0102】
〈シート(なし)+擦り(強)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(なし)+擦り(強)コース’が選択された場合の炊飯工程について図14〜図15のフローチャートを参照して説明する。
【0103】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0104】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。
【0105】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力するので、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転し、モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し米の擦り合わせが開始する(S204b)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を100%の運転率で、すなわち連続的に回転させるように制御する。
【0106】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S205b)。浸漬工程が開始されて、モータ制御部75はタイマ83からの計時データに基き除去時間7分が経過したと判定すると(S206b、207bでYES)、モータ駆動部95に停止の制御信号を出力するので、攪拌用モータ131は回転を停止する(S208b)。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせによる酸化脂質層の除去工程は一時停止する(S208b)。
【0107】
除去工程が一時停止すると、報知部77はブザー90を鳴動させて水替えのタイミングを報知する(S209b)。ユーザは、ブザー90の鳴動を確認して内鍋31を炊飯器から取出し、浸漬水を入替えた後に、再度、内鍋31を炊飯器にセットし(S210b、S211b、S212b)、スタートボタン943を操作する(S213b)。
【0108】
スタートボタン943の操作が検出されると、モータ制御部75はモータ駆動部95に攪拌用モータ131の回転を再開させるために制御信号を出力する。これにより、攪拌用モータ131は運転率36%で回転を再開し、回転に連動して攪拌翼136が回転する(S214b)。この回転は、糊化開始温度(60℃)が検出されるまで継続する(S126a、S127a)。
【0109】
回転が再開されると、ヒータ制御部76は、浸漬工程の残り時間T2が15分経過したと判定すると(S216b、S217b)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。
【0110】
加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。以下、保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0111】
このようにシート(なし)+擦り(強)コースは、運転率100%で米の擦り合わせが行われることから米粒表面を削り取りやすくなるので、酸化脂質層を購入してから(精米後)たとえば1ヶ月以上室温で保存した米、あるいは夏場に高温室温雰囲気にたとえば1週間以上置いてしまった米など、表面の脂質酸化が比較的進行している場合に適用されるのが望ましい。
【0112】
〈シート(あり)+擦り(強)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(あり)+擦り(強)コース’が選択された場合の炊飯工程について図16〜図17のフローチャートを参照して説明する。
【0113】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0114】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。
【0115】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力するので、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転し、モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し米の擦り合わせが開始する(S304c)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を、50%の運転率で、すなわち間欠的に回転させるように制御する。
【0116】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S305c)。浸漬工程が開始されて、モータ制御部75はタイマ83からの計時データに基き除去時間15分が経過したと判定すると(S306c、307cでYES)、運転率を変更する。モータ制御部75はモータ駆動部95に運転率36%の制御信号を出力するので、攪拌用モータ131の回転は運転率36%に変更される(S309c)。攪拌用モータ131の運転率36%による回転は糊化開始温度(60℃)が検出されるまで継続する(S126a、S127a)。
【0117】
運転率36%に変更されてから、ヒータ制御部76は、浸漬工程の残り時間T2が5分経過したと判定すると(S310c、S311c)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。以降の、保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0118】
〈シート(あり)+擦り(弱)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(あり)+擦り(弱)コース’が選択された場合の炊飯工程について図18のフローチャートを参照して説明する。
【0119】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0120】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。
【0121】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力するので、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転し、モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し米の擦り合わせが開始する(S404d)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を、36%の運転率で、すなわち間欠的に回転させるように制御する。
【0122】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S405d)。浸漬工程が開始されて、ヒータ制御部76はタイマ83からの計時データに基づき除去時間(浸漬時間)20分が経過したと判定すると(S406d、407dでYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。以降の保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0123】
このフローチャートで示したシート(あり)+擦り(弱)コースは、運転率36%の間欠的な攪拌動作であるから、シート(あり)+擦り(強)コースに比較してトータルの攪拌回数(攪拌翼136の回転数)は少ないから、米粒同士が擦り合わさって削り取られる表層の量を少なくしたい場合、たとえば新米の炊飯に適用されるのが望ましい。
【0124】
〈擦り(なし)コース〉
炊飯コースとして、‘擦り(なし)コース’が選択された場合の炊飯工程について図19のフローチャートを参照して説明する。
【0125】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜102と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0126】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。まず、ヒータ制御部76はタイマ83からの計時データに基き浸漬時間20分が経過したと判定すると(S504e、S505e、S506eでYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。移行の保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0127】
擦り合わせがない炊飯コースは、たとえば、鶏肉の炊き込みご飯といった油分が多いもの、ゴマ等の小さい具材を混ぜこんだ炊き込みご飯などに適用する。攪拌が省略されるので具材が分離されるのを回避できる。
【0128】
(攪拌部の他の構成例)
上述の実施の形態では、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転するように設けられるが、攪拌用の部材の構成および取付態様はこれに限定されるものではない。
【0129】
図20には、他の実施の形態に係る攪拌部材の構成が示される。図20を参照して攪拌部材は蓋2に一体的に取付けられる。攪拌部材は、蓋2に内蔵される攪拌用モータ131、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されるプロペラ型の攪拌翼139、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸(モータ軸に連結される軸)を収容するためのケース138を含む。攪拌翼139を先端に保持する軸は、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されており伸縮自在である。
【0130】
ケース138は、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸を伸縮させることにより収容したり、または内鍋31の底面方向に伸ばしたりする。蓋2がユーザにより開閉される時には、軸はケース138に収容された状態にある。
【0131】
蓋2が閉じられて炊飯工程が開始すると、図8〜図10に示した攪拌期間のみにおいて、攪拌翼139を保持する軸がケース138から内鍋31の底面方向に伸びて、プロペラ型の攪拌翼139は浸漬状態の米中に位置して、回転する。その他の期間は、軸はケース138内に収容された状態にある。
【0132】
攪拌期間においては、攪拌用モータ131が、前述と同様に米量に応じた回転数で回転する。モータの回転に連動してプロペラ型の攪拌翼139が回転するので、内鍋31内では水流が発生し、それに伴い米同士が水中で移動し、擦りあわされる。これにより、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を用いる場合と同様に擦り合わせの効果が得られる。
【0133】
なお、シート52およびキャッチャー51を使用する場合には、図20の攪拌部材ではなく、図5と図6に示す攪拌部材を使用する。
【0134】
上述した攪拌部は浸漬した米内で羽が回転する構成であったが、内鍋31自体が回転するようにしてもよい。具体的には、回転台にシャフトを介してモータを接続し、回転台に内鍋31を載置する。動作においては、モータが駆動されて回転すると、シャフトを介して回転台が回転し、回転台に載せられた内鍋31が回転する。これにより、内鍋31内において米と水が流動しながら攪拌される。
【0135】
(シートとキャッチャーの構成)
図21にシート52の概略図、図22にキャッチャー51の概略図を示す。シート52は油成分の吸着機能に優れる不織布で作られた薄膜であり略円形を有し、その径が内鍋31の内径に合わせて裁断されている。シート52のところどころには小孔が形成されている。炊飯工程時には、シート52は内鍋31の水面上にあるので、小孔を介して下部の水がシート52の上部にあふれ出る。あふれた水に含まれる不要成分である脂肪酸は、効果的にシート52表面に吸着、またはシート52の層間に吸収される。
【0136】
図22のキャッチャー51はプラスチック製の板状の円形を有し、その径は内鍋31の内径に合うようなサイズを有する。キャッチャー51には処々に小孔が予め形成される。使用時には、内鍋31の米の上に載置される。載置された状態において米とは反対側の上部面には、細長い突起が複数形成されている。当該突起により、小孔を介してキャッチャー51上部にあふれた水中の不要成分が回収されてキャッチャー51上部面において分離することができる。
【0137】
これらは炊飯工程開始時に水と米を入れた上に載せておくことで、水中で米同士を擦り合わせることによって分離させる酸化脂質成分をシート52はシート52中に吸着して分離し、キャッチャー51はキャッチャー51上部に分離する。遊離脂肪酸は水に溶けにくいため、擦り合わせにより米粒から削り取られると水層表面に分布した状態となり、沸騰工程時に徐々に上部に沸きあがった際にシート52およびキャッチャー51で回収可能となる。
【0138】
洗米後の米と水を内鍋31に入れた後に、シート52は水に浮かせるように載せればよく、キャッチャー51も米の上に載せればよく、手間なく、遊離脂肪酸を除去することができる。
【0139】
本実施の形態では、遊離脂肪酸をより確実に除去するためにシート52とキャッチャー51を併用するとしているが、いずれか一方を使用するだけでも遊離脂肪酸を除去することができる。
【0140】
(脂肪酸度の測定試験の結果)
図23に炊飯後の米飯に残る脂肪酸度の値を示す。脂肪酸度とは、米あるいは飯から抽出した遊離脂肪酸量の中和に要するKOH(水酸化カリウム)量で表したもので、量が多いほど古米化していると評される指標である。
【0141】
発明者らは、試験により図23の脂肪酸度の測定結果を得た。具体的には、試料の米として平成19度滋賀県産キヌヒカリを使用して測定した、米自体の脂肪酸度、および本実施の形態における炊飯工程中に水中で米を擦り合わせた後に水替えをして炊飯した場合の米飯の脂肪酸度を示す。グラフの‘低温攪拌ご飯’は、浸漬工程に対応する水温が20℃(低温域)までの期間において所定運転率で擦り合わせを行って炊飯した場合を指し、‘中温攪拌ご飯’は、浸漬工程および吸水・糊化工程(ただし60℃以下)に対応する期間において所定運転率で擦り合わせを行って炊飯した場合を指す。試験は平成21年6月に行った。
【0142】
試験に供した米は古米に分類される。今回の測定試験では、ご飯の水分を除くために試料を凍結乾燥後に測定を行った。凍結乾燥に要した期間は数日間である。凍結乾燥時に遊離脂肪酸が揮発してしまう可能性があったため、米も同様に凍結乾燥し測定を行っている。従来、古米の場合20mgKOH/100gd.w(100g乾燥重量あたりの米について中和するのに必要なKOH量は20mgであることを指す)であるが、今回の凍結乾燥により、米の脂肪酸度は1/5程度に減少している。擦り合わせを行ったご飯も同様に1/5程度の回収率となっている可能性はあるが、図23の測定結果に示すように、米自体の残留脂肪酸度に比べると、‘低温攪拌ご飯’の場合には90%程度の脂肪酸が除去され、‘中温攪拌ご飯’の場合には、水温の上昇にともない再吸収があるものの60%程度の脂肪酸が除去される結果となった。
【0143】
発明者らは、この試験結果から、攪拌回数を多くするほど米粒表面から削り取ることができる酸化脂肪層の量を多くすることができ、攪拌回転数が少ないほど削り取ることができる酸化脂肪層の量は少ないとの結論を得た。上述の図8〜図11に示す運転率と運転期間の変化は、この試験結果に依拠するものである。
【0144】
(食味試験の結果)
発明者らは、食味試験者により、炊飯した飯を試食してもらい食味評価のデータ(評価項目は、外観・味・粘り・硬さ・総合)を収集した。図24中の太い実線は従来方式の炊飯工程による飯の食味結果を指し、細い実線は本実施の形態による攪拌(酸化脂肪層の除去工程)を伴った炊飯工程による飯の食味評価を指す。
【0145】
試料の米として平成20度滋賀県産キヌヒカリを使用しており、太実線は図7(A)の炊飯工程に従って炊飯した飯のデータを指し、細実線は浸漬工程および吸水・糊化工程(ただし60℃以下)に対応する期間において所定運転率で擦り合わせを行って、且つ浸漬工程終了後に水替えをして炊飯した飯のデータを指す。図24によれば、擦り合わせをすることなく炊飯したケースに比べると、擦り合わせを行い水替えをすることで酸化脂肪層が除去されて糠臭さが減った飯の方が、食味(風味)は向上するとの効果を確認できた。
【0146】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
9 温度センサ、12 ヒータ、31 内鍋、32 外鍋、51 キャッチャー、52 シート、71 コース判定部、72 制御手順決定部、73 米量判定部、74 回転数決定部、75 モータ制御部、76 ヒータ制御部、93 表示部、94 操作部、131 攪拌用モータ、136 攪拌翼。
【技術分野】
【0001】
この発明は炊飯器および炊飯器の制御方法に関し、特に、米粒同士を擦り合わせる機能を有する炊飯器および炊飯器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からおいしいご飯を炊くために様々な炊飯器が市販されているが、精米後の各家庭での米の保存状態によって同じ炊飯器を使用しても炊き上がりが異なってしまう。つまり、精米直後はおいしく炊けるが、精米後室温で保存する場合には、精白米表面の脂質層が徐々に酸化し、結果吸水不足となり、おいしいご飯と感じられない炊飯となってしまうことがたびたびあった。特に梅雨から夏にかけては室温の上昇とともに脂質層の酸化スピードは速まり、新米が出てくる直前の8月から9月の米を炊飯して得られる米飯の食味は低下する。
【0003】
米の保存により炊飯した場合の食味が低下してしまうという課題に対して、家庭用精米機が各種提案されている。家庭用精米機を用いれば、例えばご飯を炊く前に炊く量だけの玄米を精米できることから、おいしいご飯を炊くことができるという利点がある。
【0004】
特許文献1(特開2000−210574号公報)の精米機は、精米機構を洗米まで使用可能としている。つまり、分離籠に入れられた玄米をブレードによってかき回して精米可能であるとともに、分離籠に入れられた白米を水で濡れた状態または水とともにブレードによってかき回して洗米可能としている。
【0005】
特許文献2(特開平2−245243号公報)には水中精米装置が示される。水中精米装置によれば、米穀を浮遊状態で水中精米することにより、精米と米磨ぎ(こめとぎ)を同時に可能としている。
【0006】
特許文献3(特開平6−63429号公報)には米の表面に糠成分を残すことのない精米処理方法が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−210574号公報
【特許文献2】特開平2−245243号公報
【特許文献3】特開平6−63429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の家庭用精米機によれば、特許文献2と3の精米装置に比較して、炊飯直前に精米し引き続いて洗米することができるとの特徴を有する。しかしながら、家庭用精米機は未だ普及率は高くなく、多くの家庭では、販売店で精米してもらい精米状態の米を家庭で保存することになる。したがって、米表面の脂質が酸化した米を食べざるを得ないといった状況にあった。
【0009】
それゆえに本発明の目的は、食味に優れる米飯に炊き上げる炊飯器および炊飯器の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、炊飯工程において鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備える。
【0011】
好ましくは、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するための制御手段を、さらに備える。
【0012】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【0013】
好ましくは、除去する手段は、鍋の米を浸漬する水面上に載置される油分吸着機能を有するシート状部材を含む。
【0014】
好ましくは、除去する手段は、鍋の浸漬した米の上に載置されて、沸き上がる米粒表層部が通過する複数の孔が形成された平板状部材を含む。
【0015】
この発明の他の局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、炊飯工程において鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、擦り合わせ手段の駆動を停止させて鍋の水を入替えるように報知する報知手段と、を備える。
【0016】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【0017】
この発明のさらに他の局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する炊飯器の制御方法は、以下の特徴を有する。
【0018】
つまり、炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備え、制御方法は、鍋の内部の温度を計測するステップと、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するステップと、を備える。
【0019】
この発明のさらに他の局面に従う、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する炊飯器の制御方法は、以下の特徴を有する。炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、を備える。制御方法は、鍋の内部の温度を計測するステップと、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するステップと、攪拌手段の駆動を停止させて鍋の水を入替えるように報知するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、炊飯工程において浸漬した米粒同士を擦り合わせることで水側に米の酸化脂質層を含む表層部分を移行させ、水側に移行した表層部分を除去する手段で除去する、または水の入替えで除去することで、食味に優れる米飯に炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る炊飯器の概略ハードウェア構成図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の制御部の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る炊飯器の制御に係る機能構成図である。
【図4】実施の形態に係る操作部と表示部の構成図である。
【図5】実施の形態に係る攪拌部材と内鍋の取付態様を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る攪拌部の構成を示す図である。
【図7】(A)〜(C)は、実施の形態に係る基本的な炊飯工程と擦り合わせ期間とを関連付けて説明する図である。
【図8】実施の形態に係る炊飯工程を説明する図である。
【図9】実施の形態に係る他の炊飯工程を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るさらなる他の炊飯工程を説明する図である。
【図11】実施の形態に係るさらなる他の炊飯工程を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図13】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図14】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図15】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図16】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図17】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図18】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図19】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図20】実施の形態に係る他の攪拌部材の構成を説明する図である。
【図21】実施の形態に係るシートを説明する図である。
【図22】実施の形態に係るキャッチャーを説明する図である。
【図23】実施の形態に係る残留する脂肪酸度の検出試験結果を示す図である。
【図24】実施の形態に係る擦り合わせの有無による食味試験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0023】
本実施の形態の炊飯工程では、炊飯器の内鍋において水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせることにより、米粒表面の酸化脂質層を削り取り水側に移行させ、移行した該酸化脂質成分を除去する。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態に係る炊飯器は、上方に向けて開口を有する本体1と、本体1に収納される内鍋31と、図示のない枢軸(ヒンジ軸)およびラッチの機構2Aにより開閉できるよう本体1に接続された蓋2とを含む。蓋2には、内蓋4が一体的に取り付けられる。本体1の内部には内鍋31の収容部を構成する外鍋32、内鍋31に収容された調理物を加熱および保温するための加熱用シーズヒータ(以下、単にヒータという)12、炊飯器の動作を制御する制御部8、内鍋31の温度を検出する温度センサ9、電源部10、上述の擦り合わせのための攪拌部13およびファン7を備える。蓋2の筐体には炊飯中に内鍋31内に発生する水蒸気を外部に逃すための蒸気筒5、炊飯器の動作状態を指す情報を出力する表示部93、ユーザの命令を受付けるために操作されるボタンからなる操作部94を備える。本体1の筐体側面には、ファン7に関連の空気取り入れ口6Aと送出口6Bを備える。
【0025】
米粒表面から削り取られて水側に移行した酸化脂質層を除去するために、浸漬水をユーザが入替える方法と、おねばキャッチャー51(以下、単にキャッチャーという)または炊飯シート52(以下、単にシートという)を用いる方法がある。後者の方法では、炊飯開始前にキャッチャー51を内鍋31の水に浸漬した米の上に載置して、炊飯シート52を水に浮かせる。これらの詳細は後述する。
【0026】
内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度を予測計測するために温度センサ9が設けられる。温度センサ9は、内鍋31の鍋底壁面温度を計測可能なように設けられる。鍋底壁面温度は内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度に等しいと想定する。
【0027】
内鍋31は、外鍋32の中に自由に出し入れできる。内鍋31の調理物を収容する内面はフッ素樹脂加工が施され、外鍋32と接する側面は中空ガラスビーズでコーティングされている。中空ガラスビーズコートにより、熱は内鍋31内に封じ込められて、保温時などの蓄熱効果が高まる。内蓋4は、蓋2が閉じられたとき内鍋31の開口を覆う。内蓋4は、蓋2に着脱自在に取付けられている。
【0028】
攪拌部13は、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を有する回転部14と、回転部14の攪拌翼136を回転させるためのモータ部(後述のモータ部15)とを含む。攪拌翼136は回転部14に一体的に接続されて、モータ部に接続された回転部14がモータ部の回転に連動して回転することにより、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転する。回転時には、内鍋31内には水と共に収容された米が水中に浸漬した状態にあるので、攪拌翼136の回転により攪拌翼136に米が衝突して擦り合わされ、また内鍋31内には水流(図中の細い矢印)が生じ浸漬した米粒同士が擦り合わされる。
【0029】
表示部93と操作部94は、本実施の形態では蓋2の筐体表面において一体的に設けられるが、ユーザが表示情報を視認可能であり、またボタン操作が可能な位置であれば、取り付け位置は、ここに限定されない。
【0030】
ファン7は炊飯終了後の保温移行時に回転する。ファン7の回転により取り込み口6Aから空気が侵入し(図中の太い矢印)、侵入した気流は内鍋31および外鍋32に送風されて、送出口6Bから外部に送出される。送風により、内鍋31自体が急速冷却されて、保温移行時の内鍋31内の米飯の酸化が抑制される。
【0031】
炊飯器は電源コード11を介して図示のない商用電源に接続される。商用電源からの供給電力は電源部10を介して各部に供給される。
【0032】
本実施の形態では、加熱・保温用の熱源としてヒータ12を用いたが、熱源はこれに限定されない。たとえば、IH(Induction Heating:電磁誘導加熱)によるものであってもよい。この場合には、攪拌部136の回転機構のための磁界と干渉が生じないよう両者を配置する。
【0033】
図2には、制御部8の内部構成とその周辺回路が示される。図2を参照して制御部8は、CPU(Central Processing Unit)81、プログラムおよびデータを格納するメモリ82、時間を計時して計時データを出力するタイマ83および各部とデータを入出力するためのI/F(Interface)84を備える。
【0034】
CPU81はI/F84を介して、報知のためのブザー90、開閉センサ91、ヒータ12に通電して発熱動作を行わせるためのヒータ駆動部92、操作部94、表示部93の表示動作を制御する表示制御部931、攪拌部13のモータ駆動部95、ファン7のファン駆動部96、内鍋31内の収容物の重量を計測するための重量センサ97、および温度センサ9とデータを入出力する。開閉センサ91は、機構2Aのヒンジに関連して設けられて、蓋2の開閉を検出する。
【0035】
図3には、本実施の形態による炊飯器を制御するための機能構成が示される。図3を参照してCPU81は、操作部94のボタン操作を介して入力する命令に従って炊飯工程に係る各部を制御するための手順を指す炊飯コースを選択的に決定するコース判定部71、決定された炊飯コースに基づきメモリ82を検索して対応する制御プログラムPRを読出す制御手順決定部72、重量センサ97の検出信号に基づき内鍋31の米の重量を検出する米量判定部73、米量判定部73の検出信号に基づき攪拌部13のモータの単位時間当たりの回転数を決定する回転数決定部74、決定された回転数に従ってモータを回転させるための電圧信号を生成しモータ駆動部95に出力するモータ制御部75、ヒータ12に供給する電流信号を生成してヒータ駆動部92に出力するヒータ制御部76、およびブザー90の鳴動を制御する報知部77を備える。
【0036】
モータ制御部75は、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を制御する。
メモリ82には、各炊飯コースに対応して制御プログラムPRが予め格納される。制御プログラムPRは、加熱手段であるヒータ12に通電する電流レベルを炊飯開始から終了までの期間にわたって時系列に制御するための情報および攪拌翼136の回転を制御するための情報を指す。
【0037】
ここでは内鍋31の米の重量は重量センサ97を用いて計測するとしているが、計測方法はこれに限定されない。たとえば、内鍋31を回転させるモータの負荷に基づき検出してもよく、また内鍋31内の水位を検出するセンサの検出結果に基づき米の重量を検出するようにしてもよく、またユーザが操作部94から米の量を入力するとしてもよい。
【0038】
表示部93と操作部94は図4に示すように一体的に構成される。表示部93による表示動作は、CPU81の指示に基づき表示制御部931により制御される。表示部93には、炊飯コースを選択するための情報931と932と933、および時間情報934が表示される。情報931は、シート52(キャッチャー51)の使用の有無を選択的に指定するための情報であり、情報932はヒータ12による加熱手順を選択的に指定するための情報であり、白米、高速炊飯、おかゆおよび玄米それぞれの加熱手順を示す。情報933は、攪拌翼136の攪拌による擦り合わせの程度(強・弱・なし)を選択的に指定するための情報である。
【0039】
操作部94は、保温・取消ボタン941、予約炊飯の設定を行う際に操作される予約ボタン942、炊飯を開始するときや予約炊飯を決定するときに操作されるスタートボタン943、表示部93の情報を選択するために操作される選択ボタン945、および炊飯コースを選択する際に操作されるコースボタン946を有する。保温・取消ボタン941とスタートボタン943は、ランプを内蔵し、ボタン操作に従ってランプが点灯・消灯する。
【0040】
保温・取消ボタン941は、保温の開始を指示するため、または保温状態を取消すために操作される。炊飯終了後保温工程に入った場合は保温・取消ボタン941のランプが点灯する。
【0041】
予約ボタン942は予約炊飯の設定を行うときに操作される。予約ボタン942の操作に連動して、表示部93の画面には時間情報934として予約した時間が表示される。予約は最大12時間後まで可能である。予約時間は、炊飯完了の時間を指す。炊飯時には、タイマ83の計時データに基づき炊飯終了までの残り時間が時間情報934によって表示される。
【0042】
コースボタン946は炊飯コースを選択する際に使用する。1回押すと情報932に隣接するボタン947のうち白米コースに対応のボタンが点灯する。もう一回押すと高速コースのボタンが点灯する。順に押す毎に情報932のおかゆ→玄米→白米とコース選択を繰返すことができる。コースが選択される毎に、ボタン947のうち当該コースに対応のボタンが点灯する。
【0043】
白米コースを選択した場合は白米コースのランプが点灯する。選択ボタン945を操作することで炊飯コースを選択できる。
【0044】
シート52の有無(あり・なし)は情報931により選択的に設定できる。デフォルトでは情報931の「なし」が選択される。選択されると情報931の文字は太字表示に切替えられる。図4では、「あり」が選択されていることが指示される。情報931のシート52のあり・なしの選択は、選択ボタン945を操作することにより切替えることができる。シート52またはキャッチャー51を炊飯時に使用する際には「あり」が選択される。
【0045】
情報933は炊飯の仕上がり状態、すなわち米粒同士の擦り合わせの程度(強さ)を、[(強)・(弱)・なし]の3種類で示す。ユーザは、3種類のうちから選択できる。選択された擦り合わせの程度を指す文字は太い文字に切替えられる。「なし」が選択される場合は、擦り合わせは行われない。デフォルトでは(弱)が選択された状態になっている。情報933の擦り合わせの程度の選択は、選択ボタン945を操作することにより切替えることができる。情報932の玄米コースが選択される場合には、情報933の擦り合わせの程度の選択をすることはできない。図4では「強」が選択されている。
【0046】
情報932に示す高速炊飯コースおよびおかゆコースのそれぞれが選択される場合でも白米コースと同様に仕上がり状態を選ぶことができる。
【0047】
本実施の形態では、CPU81は、操作部94のボタン操作内容を検出し、検出した操作内容に基づき情報931〜933のキャッチャー51またはシート52の有無、加熱手順および擦り合わせの程度が選択されたと判別したとき、操作内容に基づき選択された炊飯コースを検出する。
【0048】
図5を参照して回転部14の取付け状態について説明する。図5において、内鍋31の底面の中央部には、予め回転部14の形状に整合させて凹部と軸(図6の回転軸134に相当)が形成されており、回転部14は当該凹部に嵌め込み可能な形状を有する。内鍋31が嵌め込まれると、回転軸134は、攪拌翼136の中心軸に連接される。
【0049】
外鍋32の底面外部における、内鍋31の凹部に対応する位置には、モータ部15が取付けられている。回転部14が取り付けられた内鍋31が外鍋32(図示せず)に収容されると、モータ部15から回転部14に回転のための駆動力が伝達可能な状態となる。攪拌翼136は回転部14に着脱自在であるので、使用後は回転部14をモータ部15から取り外して、または攪拌翼136を回転部14から取り外してそれぞれ洗浄することが可能である。
【0050】
図6を参照して攪拌翼136を回転させるための機構について説明する。回転のための機構として、本実施の形態ではマグネットカップリング式非接触式攪拌機構を採用する。具体的には、外鍋32の底面外部に設けられたモータ部15は攪拌用モータ131と、攪拌用モータ131の回転軸に接続される外箱138を有する。
【0051】
外箱138は、回転部14を受容れ可能な凹部形状を有し、その内壁にはアウターヨーク132が取付けられた中空状の箱である。外箱138の内壁にはアウターヨーク132を挟んで磁界を構成するためのアウターマグネット133が配される。
【0052】
内鍋31が外鍋32に収容されるとき、外箱138の凹の部分に嵌め込むように内鍋31の回転部14が取付けられる。回転部14はフッ素樹脂であるテフロン(登録商標)で被膜され、内部は充填されて、完全防水されている。回転部14は、内鍋31の回転軸134の周囲に隙間を介して配されるインナーヨーク137と、インナーヨーク137に磁界を構成するために配されたインナーマグネット135を有する。インナーマグネット135とアウターマグネット133とは空隙を介して相対するように位置し互いに磁力により引き合う。
【0053】
攪拌翼136は、樹脂素材の略円形部材(円の直径は約5〜7cm)であり、円の中心で直交するように十字の凸部が形成されている。凸部は、回転により水流を生じやすいように山型である。
【0054】
動作において、攪拌用モータ131が回転するとモータ軸に連接された外箱138が回転し、アウターマグネット133が回転し、アウターマグネット133に磁力によって引き合うインナーマグネット135も回転する。その結果、回転部14自体が回転し、攪拌翼136が連動して内鍋31の底面内において回転する。
【0055】
(攪拌翼136の回転速度)
発明者らの実験によれば、炊飯工程における攪拌翼136を用いた擦り合わせによって米自体が割れたり、また過剰に削り取られるのを回避するには、攪拌翼136の回転速度、すなわち攪拌用モータ131の回転速度は、内鍋31に収容される米の量に応じて変化させるべきであるとの知見を得た。実験によれば、5.5合炊きの内鍋31(内径は深さ方向に一様に約19cm、深さは約11cmである)で1〜3合の米を炊く場合には、回転速度は500rpm(回転数/分)であり、5合の場合には750rpmであることが好ましい。
【0056】
発明者らの実験によれば、擦り合わせ期間における攪拌用モータ131の運転、すなわち攪拌翼136の回転は連続していてもよく、また間欠していてもよいとの知見を得た。単位時間(10秒)当たりの運転率として、たとえば2秒運転8秒停止の間欠運転の場合を運転率20%とした場合、実験によれば、上述した擦り合わせにより米粒表面の酸化脂質層を削り取るには、運転率は36%〜100%であることが望ましいとの知見を得た。また、少なくも36%であれば、内鍋31内の水温均一化の効果も得られるとの知見を得た。
(一般的な炊飯工程について)
後述の図7(A)を参照して一般的な炊飯工程について説明する。図7(A)のグラフでは、内鍋31内の水温の変化が示される。グラフの縦軸には水温(℃)が取られており、横軸には炊飯開始からの経過時間(分)が取られている。このグラフは、5.5合(米の1合は150グラム)炊きの炊飯器において、内鍋31に3合の白米を収容して炊飯する工程を例示する。
【0057】
一般に炊飯工程は、グラフに示すようにヒータ12による加熱が行われない浸漬工程に続いて、ヒータ12による加熱を行う吸水・糊化工程、沸騰持続工程および蒸らし工程の順に進行する。浸漬工程および吸水・糊化工程では、米のデンプン質を糊化させるために、米の芯にまで充分水を吸わせる。炊飯とは水と米に熱を加えることにより、生デンプンの形を変え、消化されやすいアルファ化デンプンに変化させることである。この生デンプンからアルファ化デンプンへの変化を糊化と呼ぶ。糊化においては、米のデンプンに水と熱を加えると糊状に変化する現象が見られ、糊化は水温60℃から開始されることが知られている。
【0058】
動作において、まず、ユーザは機構2Aに関連の図示されない開閉ボタンを操作し、炊飯器の本体1から内鍋31を取出す。
【0059】
炊飯したい量の米を計量する。米の単位は合および升であり、1合は150グラム、1升は1500グラムに相当する。家庭で使用する精米後の米はまだ表面に糠層が残っているため、ユーザは先に水道水で洗米する(研ぐ)。洗米は表面の糠層を取り除くために、手早く、数回、水を交換しながらかきまぜるといった方法が用いられる。洗米後の米と所定量の水(加水量は米に対する重量比1.4〜1.5倍)を内鍋31に投入する。このとき、内鍋31の鍋底には予め攪拌翼136を含む回転部14が取り付けられた状態にあり、底面から内容物(米または水)が外部にもれることはない。
【0060】
米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32内にセットし、蓋2を閉じる。
ユーザがスタートボタン943を押すと炊飯工程が開始される。このとき、ユーザは操作部94を操作して炊飯のコースを選択しているので、選択内容に従って、CPU81はメモリ82から当該コースに対応した制御プログラムPRを読出す。以降は、CPU81は読出した制御プログラムPRの命令コードに基づき各部を制御する。これにより、炊飯が進行する。
【0061】
炊飯工程では、ヒータ制御部76は、ヒータ駆動部92に対し制御信号を出力するので、ヒータ駆動部92は制御信号に基づき、ヒータ12に通電する。これにより、内鍋31の内容物の加熱が行われる。炊飯工程の開始と同時にCPU81は、温度センサ9によって計測される温度を入力し、入力した温度に基づき内鍋31内の水温を検出する。これにより、炊飯工程における温度管理が行われる。
【0062】
図7(A)によれば、室温(20℃)の水温で15分程度浸漬させることで米が含有する水分が30%近くになり、浸漬工程が終了する。その後、加熱を開始し水温を上昇させながら、さらなる吸水と、60℃以上では米の糊化が行われる。
【0063】
加熱時に或る一定温度でハンチングさせる場合には、温度センサ9の検出温度に基づきヒータ制御部76がヒータ12の通電量を制御することにより、一定温度を維持することができる。
【0064】
水が100℃に達してからはその沸騰を15分以上継続できるようにヒータ制御部76はヒータ12の通電量をヒータ駆動部92を介して制御する。
【0065】
沸騰中に余分となった内鍋31内の蒸気は、必要に応じ蓋2の図示のない小孔および蒸気筒5を通して外部に排気される。15分沸騰継続後には内鍋31には自由水はほとんどなくなっており、米は十分にアルファ化され飯となっている。その後は、蒸らし工程に移る。
【0066】
蒸らし工程では温度が95℃以下にならないようにヒータ制御部76はヒータ12を制御する。この段階で飯の表面に僅かに残ったおねばは、飯に吸水されるのでツヤのあるおいしいご飯に変化する。蒸らし工程が終了すると炊飯完了(炊飯工程終了)である。
【0067】
このように、米からデンプン溶出する糊化工程、その後の沸騰持続工程および蒸らし工程とそれぞれの目的にあわせて温度制御が行われる。浸漬工程後の吸水工程は、水温が室温から60℃以下において、糊化工程は水温60℃以上で100℃まで、沸騰持続工程は98℃以上の維持20分以上、蒸らし工程では95℃以上の維持15分以上が基本である。
【0068】
図7(A)では、吸水・糊化工程の55℃付近で温度をハンチングさせて、ある一定温度に維持することも可能である。この場合、米の酵素活性を上げて、糖の生成を助長する効果が得られる。
【0069】
また、グラフには示さないが、炊飯工程が開始されると浸漬工程を経ずに吸水・糊化工程を開始し、吸水・糊化工程後はただちに沸騰持続工程まで一気に温度を上昇させるようにしてもよい。この場合には、飯の弾力が大きくなる。なお、このケースでも糊化温度以下において攪拌動作が行われる。
【0070】
(炊飯工程における擦り合わせの基本タイミング)
図7(B)と(C)に示すように、擦り合わせタイミングは米の状態によって変えることが望ましい。例えば、一年以上保存した古米の場合は、図7(B)のように浸漬工程および吸水・糊化工程のすべての期間(ただし、糊化開始温度以下の期間)を擦り合わせの期間とすることで、十分に酸化脂質層を削り取ることができて、食味を新米に近づけることが可能となる。とりわけ、家庭では梅雨時から夏場に保存した米は日に日に酸化脂質層が増えることから、図7(B)の期間において擦り合わせを行うことで食味の向上が可能となる。一方、新米の場合は酸化脂質層はほとんど含まれていないので、図7(C)のように浸漬工程のみにおいて擦り合わせを行うことで過度に米粒表面を削りとることを回避できる。
【0071】
(炊飯コースと擦り合わせのタイミング)
図8〜図11のグラフには、本実施の形態の炊飯コース毎に水温の変化と、米同士の擦り合わせタイミングが示される。グラフの縦軸には水温(℃)と擦り合わせの運転率(%)が取られており、横軸には炊飯開始からの経過時間(分)が取られている。このグラフは、5.5合(米の1合は150グラム)炊きの炊飯器において、内鍋31に3合の白米を収容して白米コースで炊飯する工程を例示する。これらグラフで示す水温の変化は、図7(A)で示すグラフのそれに一致している。
【0072】
破線のグラフは水温の変化を指し、実線グラフは攪拌用モータ131の運転率を指す。運転率が0%を指示する期間は攪拌用モータ131は停止し擦り合わせあわせなしの状態であり、運転率が36%〜100%の値を指示する期間は攪拌用モータ131が駆動されて米粒同士の擦り合わせが行わている状態を指す。いずれの炊飯コースであっても、攪拌による米粒同士の擦り合わせは、糊化開始温度(60℃)以下において行われる。
【0073】
図8と図9の炊飯コースは、いずれもユーザが浸漬水を入替えるパターンである。具体的には、図8と図9の炊飯コースは、ユーザが操作部94を操作してシート52およびキャッチャー51は「なし」と選択した場合であって、図8では擦り合わせ強度は「弱」と選択がされて、図9では擦り合わせ強度は「強」と選択がされた場合を指す。
【0074】
図8の「シート(なし)+擦り(弱)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率36%で運転開始されて攪拌動作が行われる。運転開始後所定期間が経過した時点で運転は一時停止されてブザー90が鳴動し水替タイミングが報知される。報知がされると、ユーザは内鍋31を取出し、浸漬水を排出し、新しい水(水温20℃)を、内鍋31の内周面に予めプリントされた所定の目盛線に達する量だけ入れて、内鍋31を炊飯器内にセットし、蓋2を閉じる。なお、内鍋31の内周面には炊飯する米量毎に、加水するべき水の量を支持する目盛線が予めプリントされている。開閉センサ91によって蓋2が閉じられたことが検出されると、一時停止されていた攪拌動作が再開される。
【0075】
図9の「シート(なし)+擦り(強)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率100%で運転開始されて攪拌動作が行われる。以降の動作は図8と同様であり、水入替えがされる。水入替えがされた後は、攪拌動作が運転率36%で再開される。
【0076】
このように浸漬水の入替えがされるので、攪拌動作により米粒表面から削り取られて水側に移行した酸化脂質成分を排出することができる。
【0077】
図10と図11の炊飯コースは、キャッチャー51またはシート52を用いることで上述のようなユーザによる浸漬水の入替えを省略できるパターンである。具体的には、図10と図11の炊飯コースは、ユーザが操作部94を操作してシート52およびキャッチャー51は「あり」と選択した場合であって、図10では擦り合わせ強度は「強」と選択がされて、図11では擦り合わせ強度は「弱」と選択された場合を指す。
【0078】
図10の「シート(あり)+擦り(強)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率50%で運転開始されて攪拌動作が行われる。運転開始後所定期間が経過した時点で運転率は50%→36%に切替されて、その後攪拌動作が糊化温度以下の期間において継続する。
【0079】
図11の「シート(あり)+擦り(弱)」の炊飯コースにおいては、炊飯工程開始とともに攪拌用モータ131は運転率36%で運転開始されて水温が糊化温度以下の期間において運転が継続する。
【0080】
このように、炊飯コースの情報193が指す擦り合わせの強度を指定する情報に基づき、炊飯工程において攪拌翼136が内鍋31の内容物を攪拌する運転率が、すなわちトータルの回数が可変に制御される。
【0081】
(炊飯工程のフローチャート)
炊飯工程の処理フローチャートは、炊飯コースに応じて予め制御プログラムPRとしてメモリ82に格納されている。いずれの制御プログラムPRに基づき炊飯工程を実行するかは、前処理においてユーザが操作部94を操作する内容に基づき決定される。
【0082】
前処理では、ユーザは、炊飯開始に際して、所定量の米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32にセットし、蓋2を閉めて、その後、操作部94を操作して炊飯コースを選択する。コース判定部71は操作部94の操作内容を検出し、検出する操作内容に基づき炊飯コースを判別する。判別した炊飯コースは、制御手順決定部72に与えられる。以上が前処理である。その後、ユーザがスタートボタン943を操作することにより、炊飯工程の開始が指示される。
【0083】
以下、炊飯コース別に炊飯工程の処理手順を説明する。なお、ここでは情報932による加熱手順として白米に対応の手順が選択されるものと想定する。
【0084】
〈シート(なし)+擦り(弱)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(なし)+擦り(弱)コース’が選択された場合の炊飯工程について図12〜図13のフローチャートを参照して説明する。
【0085】
スタートボタン943が操作されたことを検知すると(ステップS(以下、単にSと略す)101)、制御手順決定部72は、前処理において与えられている炊飯コースの情報に対応する制御プログラムPRをメモリ84から検索して読出す(S102)。その後、CPU81は、読出した制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0086】
まず、米量判定部73は、重量センサ97の検出データに基づき、内鍋31に収容されている米の量を検出し、検出した米量のデータを回転数決定部74に与える。回転数決定部74は、与えられた米量データに基づき攪拌翼136の回転数を決定し、モータ制御部75に出力する(S103)。ここでは、米量と回転数を対応付けたテーブルがメモリ84に予め格納されているので、検出した米量データに基づき当該テーブルを検索することで、対応する回転数を読出すことができる。
【0087】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力する。モータ駆動部95は制御信号に基づき攪拌用モータ131に通電する。これにより、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転する。モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し、米の擦り合わせが開始する(S104a)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を、36%の運転率で回転させるように制御する。
【0088】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S105a)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間と酸化脂質層の除去時間、すなわち攪拌期間のタイムカウントが開始される(S106a)。モータ制御部75はタイマ83からの計時データに基き除去時間5分が経過したと判定すると(S107aでYES)、モータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力する。モータ駆動部95は、制御信号に基づき攪拌用モータ131の回転を停止させる。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせによる酸化脂質層の除去工程は一時停止する(S108a)。
【0089】
除去工程が一時停止すると、報知部77はブザー90を鳴動するように制御する(S109a)。ブザー90の鳴動は、ユーザが水替えのために内鍋31を炊飯器から取出したことが検知されるまで、すなわち重量センサ97の検出する重量W1が0を指示すると検出されるまで(S110a、S111aでYES)継続する。重量W1が0を指示すると検出されると、CPU81はスタートボタン943のランプの点滅を開始させる。点滅は、ユーザに対してスタートボタン943の操作を促すためであり、操作したことが検出されるまで継続する。
【0090】
ユーザは、ブザー90の鳴動により水替えのタイミングであることを確認して、内鍋31炊飯器から取出し、浸漬水を入替えた後に、再度、内鍋31を炊飯器にセットし(S112a)、スタートボタン943を操作する(S113a)。
【0091】
スタートボタン943の操作が検出されると(S113a)、モータ制御部75はモータ駆動部95に攪拌用モータ131の回転を再開させるために制御信号を出力する。これにより、攪拌用モータ131は運転率36%で回転を再開し、回転に連動して攪拌翼136が回転する(S114a)。この回転は、糊化開始温度(60℃)が検出されるまで継続する(S126a、S127)。
【0092】
回転が再開されると、ヒータ制御部76は、タイマ83からの計時データに基づき浸漬工程の残り時間T3が15分経過したと判定すると(S116、S117a)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始する(S118a)。これにより、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される。
【0093】
加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。次いで、ヒータ制御部76は温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K1を計測する(S120a)。ここでは、鍋底壁面温度K1は、内鍋31の水温に等しいと想定する。
【0094】
ヒータ制御部76は鍋底壁面温度K1が所定温度、たとえば55℃を指示すると検知すると(S121aでYES)、温度センサ9の検出温度が所定温度を保持するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電量を制御する(S122a)。
【0095】
モータ制御部75は、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T3の計測を開始する(S123a)。次いで、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が計測される(S124a)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したことを検出し(S125a)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃以上を指示すると判定すると(S126a)、糊化が開始されるのでモータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力する。モータ駆動部95は、制御信号に基づき攪拌用モータ131の回転を停止させる。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせは終了する(S127a)。
【0096】
その後は、内鍋31内を沸騰させるためにヒータ制御部76は、ヒータ駆動部95を介して、フルパワーで加熱が行われるようにヒータ12に通電する(図13のS128)。温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K3が計測される(S129)。ヒータ12の連続加熱による内鍋31内の沸騰と蒸発がしばらく継続すると(沸騰持続工程)、内鍋31の鍋底の水がほとんどない状態に変化する。
【0097】
ヒータ制御部76は、温度センサ9の検出温度に基づき、鍋底壁面温度K3が103℃以上を指示することを検出すると(S130でYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電を停止する。これにより、内鍋31に対する加熱動作は停止する(S131)。
【0098】
その後、蒸らし工程に移行する。CPU81は、加熱動作を停止した(沸騰持続工程を終了)後は、内鍋31内の米飯を蒸らすために、タイマ83の計時データに基づき、蒸らし時間T4の計測を開始する(S132)。蒸らし工程においても温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K4が検出される(S133)。ヒータ制御部76は、蒸らし工程においては、温度センサ9の検出温度に基づく鍋底壁面温度K4と95℃とを比較しながら、比較結果に基づき鍋底壁面温度K4が95℃を下回らないように、ヒータ駆動部92を介しヒータ12の通電量を制御し、加熱量を制御する(S133〜S135)。
【0099】
CPU81は、タイマ83の計時データに基づき蒸らし時間T4が15分以上を指示するか否かを判定する(S136)。蒸らし時間T4が15分が経過したと判定すると(S136でYES)、炊飯工程は終了する(S137)。炊飯工程終了時には、CPU81はブザー90などの音声出力部を介して炊飯終了を報知する音またはメッセージを出力するようにしてもよい。
【0100】
ヒータ制御部76は、引き続いて保温工程に移行するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12の通電量を制御し、内鍋31内の米飯を保温するよう動作する(S138)。CPU81は、保温工程時には保温・取消ボタン941のランプを点灯し、保温状態であることを報知する。また、保温開始時にはファン駆動部96を介してファン7を回転させて急速冷却し米飯の酸化を抑制する。
【0101】
以上のようにシート(なし)+擦り(弱)コースでは、炊飯工程開始から内鍋31内の水温が糊化開始温度になるまでの期間においては、水替えがされながら攪拌翼136による攪拌が運転率36%で間欠的に行われる。
【0102】
〈シート(なし)+擦り(強)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(なし)+擦り(強)コース’が選択された場合の炊飯工程について図14〜図15のフローチャートを参照して説明する。
【0103】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0104】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。
【0105】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力するので、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転し、モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し米の擦り合わせが開始する(S204b)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を100%の運転率で、すなわち連続的に回転させるように制御する。
【0106】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S205b)。浸漬工程が開始されて、モータ制御部75はタイマ83からの計時データに基き除去時間7分が経過したと判定すると(S206b、207bでYES)、モータ駆動部95に停止の制御信号を出力するので、攪拌用モータ131は回転を停止する(S208b)。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせによる酸化脂質層の除去工程は一時停止する(S208b)。
【0107】
除去工程が一時停止すると、報知部77はブザー90を鳴動させて水替えのタイミングを報知する(S209b)。ユーザは、ブザー90の鳴動を確認して内鍋31を炊飯器から取出し、浸漬水を入替えた後に、再度、内鍋31を炊飯器にセットし(S210b、S211b、S212b)、スタートボタン943を操作する(S213b)。
【0108】
スタートボタン943の操作が検出されると、モータ制御部75はモータ駆動部95に攪拌用モータ131の回転を再開させるために制御信号を出力する。これにより、攪拌用モータ131は運転率36%で回転を再開し、回転に連動して攪拌翼136が回転する(S214b)。この回転は、糊化開始温度(60℃)が検出されるまで継続する(S126a、S127a)。
【0109】
回転が再開されると、ヒータ制御部76は、浸漬工程の残り時間T2が15分経過したと判定すると(S216b、S217b)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。
【0110】
加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。以下、保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0111】
このようにシート(なし)+擦り(強)コースは、運転率100%で米の擦り合わせが行われることから米粒表面を削り取りやすくなるので、酸化脂質層を購入してから(精米後)たとえば1ヶ月以上室温で保存した米、あるいは夏場に高温室温雰囲気にたとえば1週間以上置いてしまった米など、表面の脂質酸化が比較的進行している場合に適用されるのが望ましい。
【0112】
〈シート(あり)+擦り(強)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(あり)+擦り(強)コース’が選択された場合の炊飯工程について図16〜図17のフローチャートを参照して説明する。
【0113】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0114】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。
【0115】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力するので、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転し、モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し米の擦り合わせが開始する(S304c)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を、50%の運転率で、すなわち間欠的に回転させるように制御する。
【0116】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S305c)。浸漬工程が開始されて、モータ制御部75はタイマ83からの計時データに基き除去時間15分が経過したと判定すると(S306c、307cでYES)、運転率を変更する。モータ制御部75はモータ駆動部95に運転率36%の制御信号を出力するので、攪拌用モータ131の回転は運転率36%に変更される(S309c)。攪拌用モータ131の運転率36%による回転は糊化開始温度(60℃)が検出されるまで継続する(S126a、S127a)。
【0117】
運転率36%に変更されてから、ヒータ制御部76は、浸漬工程の残り時間T2が5分経過したと判定すると(S310c、S311c)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。以降の、保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0118】
〈シート(あり)+擦り(弱)コース〉
炊飯コースとして、‘シート(あり)+擦り(弱)コース’が選択された場合の炊飯工程について図18のフローチャートを参照して説明する。
【0119】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0120】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。
【0121】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力するので、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転し、モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し米の擦り合わせが開始する(S404d)。モータ制御部75は、攪拌用モータ131を、36%の運転率で、すなわち間欠的に回転させるように制御する。
【0122】
ここから酸化脂質層の除去工程を伴う浸漬工程が開始する(S405d)。浸漬工程が開始されて、ヒータ制御部76はタイマ83からの計時データに基づき除去時間(浸漬時間)20分が経過したと判定すると(S406d、407dでYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。以降の保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0123】
このフローチャートで示したシート(あり)+擦り(弱)コースは、運転率36%の間欠的な攪拌動作であるから、シート(あり)+擦り(強)コースに比較してトータルの攪拌回数(攪拌翼136の回転数)は少ないから、米粒同士が擦り合わさって削り取られる表層の量を少なくしたい場合、たとえば新米の炊飯に適用されるのが望ましい。
【0124】
〈擦り(なし)コース〉
炊飯コースとして、‘擦り(なし)コース’が選択された場合の炊飯工程について図19のフローチャートを参照して説明する。
【0125】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図12のS101〜102と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0126】
S118a〜S138の処理は、図12〜図13の対応する処理と同一なので説明は省略する。まず、ヒータ制御部76はタイマ83からの計時データに基き浸漬時間20分が経過したと判定すると(S504e、S505e、S506eでYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始するので、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される(S118a)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S119a)。移行の保温工程開始までの処理は前述と同様である。
【0127】
擦り合わせがない炊飯コースは、たとえば、鶏肉の炊き込みご飯といった油分が多いもの、ゴマ等の小さい具材を混ぜこんだ炊き込みご飯などに適用する。攪拌が省略されるので具材が分離されるのを回避できる。
【0128】
(攪拌部の他の構成例)
上述の実施の形態では、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転するように設けられるが、攪拌用の部材の構成および取付態様はこれに限定されるものではない。
【0129】
図20には、他の実施の形態に係る攪拌部材の構成が示される。図20を参照して攪拌部材は蓋2に一体的に取付けられる。攪拌部材は、蓋2に内蔵される攪拌用モータ131、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されるプロペラ型の攪拌翼139、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸(モータ軸に連結される軸)を収容するためのケース138を含む。攪拌翼139を先端に保持する軸は、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されており伸縮自在である。
【0130】
ケース138は、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸を伸縮させることにより収容したり、または内鍋31の底面方向に伸ばしたりする。蓋2がユーザにより開閉される時には、軸はケース138に収容された状態にある。
【0131】
蓋2が閉じられて炊飯工程が開始すると、図8〜図10に示した攪拌期間のみにおいて、攪拌翼139を保持する軸がケース138から内鍋31の底面方向に伸びて、プロペラ型の攪拌翼139は浸漬状態の米中に位置して、回転する。その他の期間は、軸はケース138内に収容された状態にある。
【0132】
攪拌期間においては、攪拌用モータ131が、前述と同様に米量に応じた回転数で回転する。モータの回転に連動してプロペラ型の攪拌翼139が回転するので、内鍋31内では水流が発生し、それに伴い米同士が水中で移動し、擦りあわされる。これにより、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を用いる場合と同様に擦り合わせの効果が得られる。
【0133】
なお、シート52およびキャッチャー51を使用する場合には、図20の攪拌部材ではなく、図5と図6に示す攪拌部材を使用する。
【0134】
上述した攪拌部は浸漬した米内で羽が回転する構成であったが、内鍋31自体が回転するようにしてもよい。具体的には、回転台にシャフトを介してモータを接続し、回転台に内鍋31を載置する。動作においては、モータが駆動されて回転すると、シャフトを介して回転台が回転し、回転台に載せられた内鍋31が回転する。これにより、内鍋31内において米と水が流動しながら攪拌される。
【0135】
(シートとキャッチャーの構成)
図21にシート52の概略図、図22にキャッチャー51の概略図を示す。シート52は油成分の吸着機能に優れる不織布で作られた薄膜であり略円形を有し、その径が内鍋31の内径に合わせて裁断されている。シート52のところどころには小孔が形成されている。炊飯工程時には、シート52は内鍋31の水面上にあるので、小孔を介して下部の水がシート52の上部にあふれ出る。あふれた水に含まれる不要成分である脂肪酸は、効果的にシート52表面に吸着、またはシート52の層間に吸収される。
【0136】
図22のキャッチャー51はプラスチック製の板状の円形を有し、その径は内鍋31の内径に合うようなサイズを有する。キャッチャー51には処々に小孔が予め形成される。使用時には、内鍋31の米の上に載置される。載置された状態において米とは反対側の上部面には、細長い突起が複数形成されている。当該突起により、小孔を介してキャッチャー51上部にあふれた水中の不要成分が回収されてキャッチャー51上部面において分離することができる。
【0137】
これらは炊飯工程開始時に水と米を入れた上に載せておくことで、水中で米同士を擦り合わせることによって分離させる酸化脂質成分をシート52はシート52中に吸着して分離し、キャッチャー51はキャッチャー51上部に分離する。遊離脂肪酸は水に溶けにくいため、擦り合わせにより米粒から削り取られると水層表面に分布した状態となり、沸騰工程時に徐々に上部に沸きあがった際にシート52およびキャッチャー51で回収可能となる。
【0138】
洗米後の米と水を内鍋31に入れた後に、シート52は水に浮かせるように載せればよく、キャッチャー51も米の上に載せればよく、手間なく、遊離脂肪酸を除去することができる。
【0139】
本実施の形態では、遊離脂肪酸をより確実に除去するためにシート52とキャッチャー51を併用するとしているが、いずれか一方を使用するだけでも遊離脂肪酸を除去することができる。
【0140】
(脂肪酸度の測定試験の結果)
図23に炊飯後の米飯に残る脂肪酸度の値を示す。脂肪酸度とは、米あるいは飯から抽出した遊離脂肪酸量の中和に要するKOH(水酸化カリウム)量で表したもので、量が多いほど古米化していると評される指標である。
【0141】
発明者らは、試験により図23の脂肪酸度の測定結果を得た。具体的には、試料の米として平成19度滋賀県産キヌヒカリを使用して測定した、米自体の脂肪酸度、および本実施の形態における炊飯工程中に水中で米を擦り合わせた後に水替えをして炊飯した場合の米飯の脂肪酸度を示す。グラフの‘低温攪拌ご飯’は、浸漬工程に対応する水温が20℃(低温域)までの期間において所定運転率で擦り合わせを行って炊飯した場合を指し、‘中温攪拌ご飯’は、浸漬工程および吸水・糊化工程(ただし60℃以下)に対応する期間において所定運転率で擦り合わせを行って炊飯した場合を指す。試験は平成21年6月に行った。
【0142】
試験に供した米は古米に分類される。今回の測定試験では、ご飯の水分を除くために試料を凍結乾燥後に測定を行った。凍結乾燥に要した期間は数日間である。凍結乾燥時に遊離脂肪酸が揮発してしまう可能性があったため、米も同様に凍結乾燥し測定を行っている。従来、古米の場合20mgKOH/100gd.w(100g乾燥重量あたりの米について中和するのに必要なKOH量は20mgであることを指す)であるが、今回の凍結乾燥により、米の脂肪酸度は1/5程度に減少している。擦り合わせを行ったご飯も同様に1/5程度の回収率となっている可能性はあるが、図23の測定結果に示すように、米自体の残留脂肪酸度に比べると、‘低温攪拌ご飯’の場合には90%程度の脂肪酸が除去され、‘中温攪拌ご飯’の場合には、水温の上昇にともない再吸収があるものの60%程度の脂肪酸が除去される結果となった。
【0143】
発明者らは、この試験結果から、攪拌回数を多くするほど米粒表面から削り取ることができる酸化脂肪層の量を多くすることができ、攪拌回転数が少ないほど削り取ることができる酸化脂肪層の量は少ないとの結論を得た。上述の図8〜図11に示す運転率と運転期間の変化は、この試験結果に依拠するものである。
【0144】
(食味試験の結果)
発明者らは、食味試験者により、炊飯した飯を試食してもらい食味評価のデータ(評価項目は、外観・味・粘り・硬さ・総合)を収集した。図24中の太い実線は従来方式の炊飯工程による飯の食味結果を指し、細い実線は本実施の形態による攪拌(酸化脂肪層の除去工程)を伴った炊飯工程による飯の食味評価を指す。
【0145】
試料の米として平成20度滋賀県産キヌヒカリを使用しており、太実線は図7(A)の炊飯工程に従って炊飯した飯のデータを指し、細実線は浸漬工程および吸水・糊化工程(ただし60℃以下)に対応する期間において所定運転率で擦り合わせを行って、且つ浸漬工程終了後に水替えをして炊飯した飯のデータを指す。図24によれば、擦り合わせをすることなく炊飯したケースに比べると、擦り合わせを行い水替えをすることで酸化脂肪層が除去されて糠臭さが減った飯の方が、食味(風味)は向上するとの効果を確認できた。
【0146】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
9 温度センサ、12 ヒータ、31 内鍋、32 外鍋、51 キャッチャー、52 シート、71 コース判定部、72 制御手順決定部、73 米量判定部、74 回転数決定部、75 モータ制御部、76 ヒータ制御部、93 表示部、94 操作部、131 攪拌用モータ、136 攪拌翼。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、
炊飯工程において前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
前記擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備える、炊飯器。
【請求項2】
前記炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、前記温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するための制御手段を、さらに備える請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される、請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記除去する手段は、前記鍋の米を浸漬する水面上に載置される油分吸着機能を有するシート状部材を含む、請求項1から3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記除去する手段は、前記鍋の浸漬した米の上に載置されて、沸き上がる前記米粒表層部が通過する複数の孔が形成された平板状部材を含む、請求項1から4のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、
炊飯工程において前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
前記炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、前記温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、
前記擦り合わせ手段の駆動を停止させて前記鍋の水を入替えるように報知する報知手段と、を備える、炊飯器。
【請求項7】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される、請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、
前記炊飯器は、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
前記擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備え、
前記制御方法は、
前記鍋の内部の温度を計測するステップと、
炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するステップと、を備える、炊飯器の制御方法。
【請求項9】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、
前記炊飯器は、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、を備え、
前記制御方法は、
前記鍋の内部の温度を計測するステップと、
炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するステップと、
前記攪拌手段の駆動を停止させて前記鍋の水を入替えるように報知するステップと、を備える、炊飯器の制御方法。
【請求項1】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、
炊飯工程において前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
前記擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備える、炊飯器。
【請求項2】
前記炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、前記温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するための制御手段を、さらに備える請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される、請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記除去する手段は、前記鍋の米を浸漬する水面上に載置される油分吸着機能を有するシート状部材を含む、請求項1から3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記除去する手段は、前記鍋の浸漬した米の上に載置されて、沸き上がる前記米粒表層部が通過する複数の孔が形成された平板状部材を含む、請求項1から4のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、
炊飯工程において前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
前記炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、前記温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、
前記擦り合わせ手段の駆動を停止させて前記鍋の水を入替えるように報知する報知手段と、を備える、炊飯器。
【請求項7】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される、請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、
前記炊飯器は、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
前記擦り合わせにより米粒から削り取られて水側に移行する米粒表層部を除去する手段と、を備え、
前記制御方法は、
前記鍋の内部の温度を計測するステップと、
炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するステップと、を備える、炊飯器の制御方法。
【請求項9】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、
前記炊飯器は、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、を備え、
前記制御方法は、
前記鍋の内部の温度を計測するステップと、
炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、計測された温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するステップと、
前記攪拌手段の駆動を停止させて前記鍋の水を入替えるように報知するステップと、を備える、炊飯器の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−72706(P2011−72706A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229403(P2009−229403)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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