炊飯器および炊飯器の制御方法
【課題】ツヤと粘りのある米飯に炊き上げる。
【解決手段】制御部8は、炊飯工程の開始命令の情報を操作部94から入力したことに応答して、温度センサ9が計測した温度および制御プログラムを用いて、ヒータ12および浸漬した米を攪拌するための攪拌翼136を駆動する。攪拌翼136が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度センサ9が計測する温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【解決手段】制御部8は、炊飯工程の開始命令の情報を操作部94から入力したことに応答して、温度センサ9が計測した温度および制御プログラムを用いて、ヒータ12および浸漬した米を攪拌するための攪拌翼136を駆動する。攪拌翼136が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度センサ9が計測する温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は炊飯器および炊飯器の制御方法に関し、特に、米粒同士を擦り合わせる機能を有する炊飯器および炊飯器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からおいしいご飯を炊くために様々な炊飯器が開発されている。しかし、米の炊き上がりは米の品種(または米の組成)ごとに異なり、同じ炊飯器で炊飯しても、コシヒカリはおいしく炊けるが、日本晴はあまりおいしくない、といった品種間差を縮めることはできなかった。現在日本で一番消費されているコシヒカリであるが、これは米の粘りが強く、それがおいしい食感と捉えられている品種である。
【0003】
日本人は粘りの強い米をおいしいと感じるので、米の粘りを向上させるために様々な提案がされている。
【0004】
食品業界の特許文献1(特開平9−206006号公報)の炊飯米の製造法では、米類の炊飯時に(a)トランスグルタミナーゼと、(b)タンパク質部分加水分解物、少糖類および糖アルコールのうちの1種以上を炊飯水に添加して炊飯することにより、炊飯米に粘りを付与する。
【0005】
炊飯器業界の特許文献2(特開2000−308571号公報)の炊飯方法では、加熱段階にその加熱温度を100℃以上に上昇させ、保持する工程を設けて、炊飯米を高圧にさらすことで粘り物性を向上させている。
【0006】
近年の学術報告(たとえば、非特許文献1:理化学測定法による市販精米の食味の推定、横江ら、日本食品科学工学会誌、Vol56,No5,291-298(2009))によれば、市販されている精米は品種間差が小さくなった報告されている。この報告によると、炊飯後の食味において食味評価を行ったパネルは精米の黄味味が弱い試料あるいは、透光度(ツヤ)のある試料を総合的に好ましいと評価したと報告がある。近年、米の品種間差が小さくなっているので、ご飯の炊き上がりとしては色・ツヤが重要視されているということが分かる。
【0007】
ご飯のツヤは、炊飯工程の途中におねばに溶出した米成分(特にアミロペクチン)が炊飯工程の蒸らし時に再度飯表面にコーティングされることで生じると言われている。
【0008】
おねばとは、炊飯の際に米とともに加えた水のことであり、特に炊飯工程の後半の沸騰時に米成分(粘着性のあるデンプン質)が溶出して白濁した状態のものをさす。
【0009】
特許文献3(特開平6−113762号公報)の米飯の製造方法では、溶存気体を除去した脱気水を用いることにより、調理時間(特に浸漬時間)が短縮できると共に、色(褐変による黄色化)、ツヤ(表面細胞破壊による煮くずれ)、粘弾性、栄養素(特に、還元糖類)に優れた、しかも、老化しにくい米飯製造を可能としている。特許文献3によれば、米飯のツヤの向上のためには脱気水を使用すればよいということである。
【0010】
炊き上がりを状態を良くするために特許文献4(特開2000−308572号公報)では、炊飯中、残水があれば水流を起こし、水蒸気発生を抑制する構成が示される。また、特許文献5(特開2008−154661号公報)では、パン製造機の構造上、温度ムラがあるので炊飯に応用する場合も攪拌をしてムラを解消する構成が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−206006号公報
【特許文献2】特開2000−308571号公報
【特許文献3】特開平6−113762号公報
【特許文献4】特開2000−308572号公報
【特許文献5】特開2008−154661号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】理化学測定法による市販精米の食味の推定、横江ら、日本食品科学工学会誌、Vol56,No5,291-298(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
通常の炊飯器では米の品種または新米/古米の別により炊飯後の粘り物性が決定されてしまうため、一般的に好まれる粘りの強いご飯を炊きたい場合、比較的高価なコシヒカリなどの銘柄米を入手しなければ対応できなかった。また、家庭での炊飯では脱気水を入手することは困難であり、一晩汲み置きしてカルキ抜きを行うといった手間がかかるものであった。
【0014】
それゆえに本発明の目的は、ツヤと粘りのある米飯に炊き上げる炊飯器および炊飯器の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明のある局面に従う炊飯器は、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、を備える。
【0016】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【0017】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間の全部または一部である。
【0018】
好ましくは、炊飯工程は、鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、擦り合わせ手段が駆動される一部の期間は、浸漬工程に対応する期間である。
【0019】
好ましくは、炊飯工程は、鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、擦り合わせ手段が駆動される一部の期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間のうち、浸漬工程に対応する期間を除いた期間である。
【0020】
この発明の他の局面に従うと、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段とを備え、制御方法は、炊飯工程の開始命令の情報が入力されたことに応答して、温度計測手段が計測する温度の情報とを用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するステップ、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、炊飯工程において浸漬した米粒同士を擦り合わせることにより、水側に米のデンプン質を移行させ、炊飯工程の後半では水中のデンプン質は米に戻されて、ツヤと粘りのある米飯に炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態に係る炊飯器の概略ハードウェア構成図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の制御部の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る炊飯器の制御に係る機能構成図である。
【図4】実施の形態に係る操作部と表示部の構成図である。
【図5】実施の形態に係る攪拌部材と内鍋の取付態様を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る攪拌部の構成を示す図である。
【図7】(A)〜(D)は、実施の形態に係る炊飯工程を説明する図である。
【図8】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図9】実施の形態に係る他の炊飯工程の処理フローチャートである。
【図10】実施の形態に係る更なる他の炊飯工程の処理フローチャートである。
【図11】実施の形態に係る他の攪拌部材の構成を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る米飯の粘り加重に関する試験結果を示す図である。
【図13】実施の形態に係る擦り合わせの有無による米の表面を撮影した写真を指す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態に係る炊飯器は、上方に向けて開口を有する本体1と、本体1に収納される内鍋31と、図示のない枢軸(ヒンジ軸)およびラッチの機構2Aにより開閉できるよう本体1に接続された蓋2とを含む。蓋2には、内蓋4が一体的に取り付けられる。本体1の内部には内鍋31の収容部を構成する外鍋32、内鍋31に収容された調理物を加熱および保温するための加熱用シーズヒータ(以下、単にヒータという)12、炊飯器の動作を制御する制御部8、内鍋31の温度を検出する温度センサ9、電源部10、攪拌部13およびファン7を備える。蓋2の筐体には炊飯中に内鍋31内に発生する水蒸気を外部に逃すための蒸気筒5、炊飯器の動作状態を指す情報を出力する表示部93、ユーザの命令を受付けるために操作されるボタンからなる操作部94を備える。本体1の筐体側面には、ファン7に関連の空気取り入れ口6Aと送出口6Bを備える。
【0025】
内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度を予測計測するために温度センサ9が設けられる。温度センサ9は、内鍋31の鍋底壁面温度を計測可能なように設置される。鍋底壁面温度は内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度に等しいと想定する。
【0026】
内鍋31は、外鍋32の中に自由に出し入れできる。内鍋31の調理物を収容する内面はフッ素樹脂加工が施され、外鍋32と接する側面は中空ガラスビーズでコーティングされている。中空ガラスビーズコートにより、熱は内鍋31内に封じ込められて、保温時などの蓄熱効果が高まる。内蓋4は、蓋2が閉じられたとき内鍋31の開口を覆う。内蓋4は、蓋2に着脱自在に取付けられている。
【0027】
攪拌部13は、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を有する回転部14と、回転部14の攪拌翼136を回転させるためのモータ部(後述のモータ部15)とを含む。攪拌翼136は回転部14に一体的に接続されて、モータ部に接続された回転部14がモータ部の回転に連動して回転することにより、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転する。回転時には、内鍋31内には水と共に収容された米が水中に浸漬した状態にあるので、攪拌翼136の回転により攪拌翼136に米が衝突して擦り合わされ、また内鍋31内には水流(図中の細い矢印)が生じ浸漬した米粒同士が擦り合わされる。
【0028】
表示部93と操作部94は、本実施の形態では蓋2の筐体表面において一体的に設けられるが、ユーザが表示情報を視認可能であり、またボタン操作が可能な位置であれば、取り付け位置は、ここに限定されない。
【0029】
ファン7は炊飯終了後の保温移行時に回転する。ファン7の回転により取り込み口6Aから空気が侵入し(図中の太い矢印)、侵入した気流は内鍋31および外鍋32に送風されて、送出口6Bから外部に送出される。送風により、内鍋31自体が急速冷却されて、保温移行時の内鍋31内の米飯の酸化が抑制される。
【0030】
炊飯器は電源コード11を介して図示のない商用電源に接続される。商用電源からの供給電力は電源部10を介して各部に供給される。
【0031】
本実施の形態では、加熱・保温用の熱源としてヒータ12を用いたが、熱源はこれに限定されない。たとえば、IH(Induction Heating:電磁誘導加熱)によるものであってもよい。この場合には、攪拌部136の回転機構のための磁界と干渉が生じないよう両者を配置する。
【0032】
図2には、制御部8の内部構成とその周辺回路が示される。図2を参照して制御部8は、CPU(Central Processing Unit)81、プログラムおよびデータを格納するメモリ82、時間を計時して計時データを出力するタイマ83および各部とデータを入出力するためのI/F(Interface)84を備える。
【0033】
CPU81はI/F84を介して、ヒータ12に通電して発熱動作を行わせるためのヒータ駆動部92、操作部94、表示部93の表示動作を制御する表示制御部931、攪拌部13のモータ駆動部95、ファン7のファン駆動部96、内鍋31内の収容物の重量を計測するための重量センサ97、および温度センサ9とデータを入出力する。
【0034】
図3には、本実施の形態による炊飯器を制御するための機能構成が示される。図3を参照してCPU81は、操作部94のボタン操作を介して入力する命令に従って炊飯工程に係る各部を制御するための手順を指す炊飯コースを選択的に決定するコース判定部71、決定された炊飯コースに基づきメモリ82を検索して対応する制御プログラムPRを読出す制御手順決定部72、重量センサ97の検出信号に基づき内鍋31の米の重量を検出する米量判定部73、米量判定部73の検出信号に基づき攪拌部13のモータの単位時間当たりの回転数を決定する回転数決定部74、決定された回転数に従ってモータが回転させるための電圧信号を生成しモータ駆動部95に出力するモータ制御部75、およびヒータ12に供給する電流信号を生成してヒータ駆動部92に出力するヒータ制御部76を備える。
【0035】
モータ制御部75は、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を制御する。
メモリ82には、各炊飯コースに対応して制御プログラムPRが予め格納される。制御プログラムPRは、加熱手段であるヒータ12に通電する電流レベルを炊飯開始から終了までの期間にわたって時系列に制御するための情報および攪拌翼136の回転を制御するための情報を指す。
【0036】
ここでは内鍋31の米の重量は重量センサ97を用いて計測するとしているが、計測方法はこれに限定されない。たとえば、内鍋31を回転させるモータの負荷に基づき検出してもよく、また内鍋31内の水位を検出するセンサの検出結果に基づき米の重量を検出するようにしてもよく、またユーザが操作部94から米の量を入力するとしてもよい。
【0037】
表示部93と操作部94は図4に示すように一体的に構成される。表示部93による表示動作は、CPU81の指示に基づき表示制御部931により制御される。表示部93には、炊飯コースを選択するための情報931と932、および時間情報934が表示される。
【0038】
操作部94は、保温・取消ボタン941、予約炊飯の設定を行う際に操作される予約ボタン942、炊飯を開始するときや予約炊飯を決定するときに操作されるスタートボタン943、炊飯コースを選択する際に操作されるコースボタン946を有する。保温・取消ボタン941とスタートボタン943は、ランプを内蔵し、ボタン操作に従ってランプが点灯・消灯する。
【0039】
保温・取消ボタン941は、保温の開始を指示するとき、または保温状態を取消すために操作される。炊飯終了後保温工程に入った場合は保温・取消ボタン941のランプが点灯する。
【0040】
予約ボタン942は予約炊飯の設定を行うときに操作される。予約ボタン942の操作に連動して、表示部93の画面には時間情報934として予約した時間が表示される。予約は最大12時間後まで可能である。予約時間は、炊飯完了の時間を指す。炊飯時には、タイマ83の計時データに基づき炊飯終了までの残り時間が時間情報934によって表示される。
【0041】
コースボタン946が操作される毎に、情報932に示す炊飯工程における加熱(ヒータ)の制御手順を決定するコースが選択される。コースボタン946の操作により情報932の白米コースを選択した場合は表示部93の白米コースのランプが点灯する。さらに、左右の動作ボタン945を操作することで炊飯の仕上がり状態として情報931に示す米飯の[粘り(強)・粘り(弱)・新米]の3パターン、すなわち後述の擦り合わせのタイミングのうちのいずれかを選択できる。ここでは、炊飯の仕上がり状態は、米飯の粘りの程度を指す。左右の動作ボタン945を操作しなければ粘り(強)が選択されて、情報931の粘り(強)が太字で表示される。動作ボタン945を右に操作することで粘り(弱)→新米と選択を切替えることができる。選択されると情報931の文字は、太字の表示に変わる。粘りの程度として、新米の粘りである‘新米’が選択された後に、さらに動作ボタン945が右に操作されると、3パターンとも細字で表示される。その場合は、後述の攪拌翼136の回転による後述の擦り合わせ工程は省略される。
【0042】
なお、情報932の玄米コースが選択された場合には、ここでは説明を簡単にするために、情報931による炊飯の仕上がり状態の選択はできないと想定している。情報932の高速(高速炊飯)コース、おかゆコースが選択された場合には、白米コースと同様に、動作ボタン945を操作することにより仕上がり状態を選ぶことができる。
【0043】
本実施の形態では、CPU81は、操作部94のボタン操作内容を検出し、検出した操作内容に基づき情報931と932のコースおよび粘りの仕上がりパターンが選択されたと判別したとき、操作内容に基づき選択された炊飯コースを検出する。したがって、本実施の形態では、炊飯コースは、情報932により選択された加熱制御手順と、情報931により選択された擦り合わせのタイミングとの組合わせにより決定される。
【0044】
図5を参照して回転部14の取付け状態について説明する。図5において、内鍋31の底面の中央部には、予め回転部14の形状に整合させて凹部と軸(図6の回転軸134に相当)が形成されており、回転部14は当該凹部に嵌め込み可能な形状を有する。内鍋31が嵌め込まれると、回転軸134は、攪拌翼136の中心軸に連接される。
【0045】
外鍋32の底面外部における、内鍋31の凹部に対応する位置には、モータ部15が取付けられている。回転部14が取り付けられた内鍋31が外鍋32(図示せず)に収容されると、モータ部15から回転部14に回転のための駆動力が伝達可能な状態となる。攪拌翼136は回転部14に着脱自在であるので、使用後は回転部14をモータ部15から取り外して、または攪拌翼136を回転部14から取り外してそれぞれ洗浄することが可能である。
【0046】
図6を参照して攪拌翼136を回転させるための機構について説明する。回転のための機構として、本実施の形態ではマグネットカップリング式非接触式攪拌機構を採用する。具体的には、外鍋32の底面外部に設けられたモータ部15は攪拌用モータ131と、攪拌用モータ131の回転軸に接続される外箱138を有する。
【0047】
外箱138は、回転部14を受容れ可能な凹部形状を有し、その内壁にはアウターヨーク132が取付けられた中空状の箱である。外箱138の内壁にはアウターヨーク132を挟んで磁界を構成するためのアウターマグネット133が配される。
【0048】
内鍋31が外鍋32に収容されるとき、外箱138の凹の部分に嵌め込むように内鍋31の回転部14が取付けられる。回転部14はフッ素樹脂であるテフロン(登録商標)で被膜され、内部は充填されて、完全防水されている。回転部14は、内鍋31の回転軸134の周囲に隙間を介して配されるインナーヨーク137と、インナーヨーク137に磁界を構成するために配されたインナーマグネット135を有する。インナーマグネット135とアウターマグネット133とは空隙を介して相対するように位置し互いに磁力により引き合う。
【0049】
攪拌翼136は、樹脂素材の略円形部材(円の直径はたとえば約5〜7cm)であり、円の中心で直交するように十字の凸部が形成されている。凸部は、回転により水流を生じやすいように山型である。
【0050】
動作において、攪拌用モータ131が回転するとモータ軸に連接された外箱138が回転し、アウターマグネット133が回転し、アウターマグネット133に磁力によって引き合うインナーマグネット135も回転する。その結果、回転部14自体が回転し、攪拌翼136が連動して内鍋31の底面内において回転する。
【0051】
図7のグラフには、本実施の形態の炊飯工程(炊飯過程)の水温の変化と、米同士の擦り合わせタイミングが示される。図7(A)の炊飯工程の水温変化のグラフに関しては、縦軸に内鍋31内の水の温度、横軸に炊飯開始からの経過時間が取られている。このグラフは、5.5合(米の1合は150グラム)炊きの炊飯器において、内鍋31に3合の白米を収容して炊飯する工程を例示する。
【0052】
(炊飯工程について)
一般に炊飯器の炊飯工程は、図7(A)に示すようにヒータ12による加熱が行われない浸漬工程に続いて、ヒータ12による加熱を行う吸水・糊化工程、沸騰持続工程および蒸らし工程の順に進行する。炊飯工程における浸漬工程および吸水・糊化工程では、米のデンプン質を糊化させるために、米の芯にまで充分水を吸わせる。炊飯とは水と米に熱を加えることにより、生デンプンの形を変え、消化されやすいアルファ化デンプンに変化させることである。この生デンプンからアルファ化デンプンへの変化を糊化と呼ぶ。糊化においては、米のデンプンに水と熱を加えると糊状に変化する現象が見られ、糊化は水温60℃から開始されることが知られている。
【0053】
動作において、まず、ユーザは機構2Aに関連の図示されない開閉ボタンを操作し、炊飯器の本体1から内鍋31を取出す。
【0054】
炊飯したい量の米を計量する。米の単位は合および升であり、1合は150グラム、1升は1500グラムに相当する。家庭で使用する精米後の米はまだ表面に糠層が残っているため、ユーザは先に水道水で洗米する(研ぐ)。洗米は表面の糠層を取り除くために、手早く、数回、水を交換しながらかきまぜるといった方法が用いられる。洗米後の米と所定量の水(加水量は米に対する重量比1.4〜1.5倍)を内鍋31に投入する。このとき、内鍋31の鍋底には予め攪拌翼136を含む回転部14が取り付けられた状態にあり、底面から内容物(米または水)が外部にもれることはない。
【0055】
米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32内にセットし、蓋2を閉じる。
ユーザがスタートボタン943を押すと炊飯工程が開始される。このとき、ユーザは操作部94を操作して炊飯のコースを選択しているので、選択内容に従って、CPU81はメモリ82から当該コースに対応した制御プログラムPRを読出す。以降は、CPU81は読出した制御プログラムPRの命令コードに基づき各部を制御する。これにより、炊飯が進行する。
【0056】
炊飯工程では、ヒータ制御部76は、ヒータ駆動部92に対し制御信号を出力するので、ヒータ駆動部92は制御信号に基づき、ヒータ12に通電する。これにより、内鍋31の内容物の加熱が行われる。炊飯工程の開始と同時にCPU81は、温度センサ9によって計測される温度を入力し、入力した温度に基づき内鍋31内の水温を検出する。これにより、炊飯工程における温度管理が行われる。
【0057】
図7(A)によれば、室温(20℃)で15分程度浸漬させることで米が含有する水分が30%近くになり、浸漬工程が終了する。その後、加熱を開始し水温を上昇させながら、さらなる吸水と、60℃以上では米の糊化が行われる。
【0058】
加熱時に或る一定温度でハンチングさせる場合には、温度センサ9の検出温度に基づきヒータ制御部76がヒータ12の通電量を制御することにより、一定温度を維持することができる。
【0059】
水が100℃に達してからはその沸騰を15分以上継続できるようにヒータ制御部76はヒータ12の通電量をヒータ駆動部92を介して制御する。
【0060】
沸騰中に余分となった内鍋31内の蒸気は、必要に応じ蓋2の図示のない小孔および蒸気筒5を通して外部に排気される。15分沸騰継続後には内鍋31には自由水はほとんどなくなっており、米は十分にアルファ化され飯となっている。その後は、蒸らし工程に移る。
【0061】
蒸らし工程では温度が90℃以下にならないようにヒータ制御部76はヒータ12を制御する。この段階で飯の表面に僅かに残ったおねばは、飯に吸水されるのでツヤのあるおいしいご飯に変化する。蒸らし工程が終了すると炊飯完了(炊飯工程終了)である。
【0062】
このように、米からデンプン溶出する糊化工程、その後の沸騰持続工程および蒸らし工程とそれぞれの目的にあわせて温度制御が行われる。浸漬工程後の吸水工程は、水温が室温から60℃以下において、糊化工程は水温60℃以上で100℃まで、沸騰持続工程は98℃以上の維持20分以上、蒸らし工程では90℃以上の維持15分以上が基本である。
【0063】
本実施の形態では、米の状態(古米または新米)、または品種に関係なく、粘り・つやの多い米飯に炊き上げるために、炊飯工程において、水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせる。擦り合わせにより米粒表面部分を平滑にし、且つ削り取られた米表面のデンプン質を水側に移行させる。擦り合わせの期間は、水側に米のデンプン質を移行させるでんぷん質移行工程といえる。削られた表面の成分はアミロースやアミロペクチンを含むデンプン粒子であり、炊飯時のおねばに、より多くのデンプン粒子として移行させることができるので、炊き上がった米の表面の粘り物質量が多くなり、結果、米飯の粘りを向上させることが可能となる。また、米粒の表面が平滑であるために表面において光が反射されやすくツヤを向上させることが可能となる。また表面にコーティングするアミロペクチン量も多くなるので、炊飯後冷めてからのツヤも向上することとなる。
【0064】
炊飯工程において糊化が開始すると、米粒表面は徐々に粘りをもったやわらかいデンプンに変化する。そのため糊化開始後も擦り合わせを続けると米粒同士がくっついてしまい餅ようになってしまう。そこで、擦り合わせは糊化開始温度(水温60℃)以下で実施するのが好ましい。
【0065】
具体的には、図7(B)〜(D)に示すように、炊飯工程を開始後から内鍋31内の水温が糊化開始温度以下の期間において、内鍋31の底面に設けた十字状の凸部を有した攪拌翼136を攪拌用モータ131で回転させることで、内鍋31に水流を発生させ、それに伴い米同士が水中で移動し、擦りあわされる。
【0066】
図7(B)〜(D)には擦り合わせタイミングが、図7(A)の炊飯工程の時間経過に伴う温度変化と関連付けて示される。擦り合わせタイミングは米の状態または品種によって変えることが好ましい。発明者らの実験によれば、粘りの少ない銘柄、たとえばキヌヒカリといった米の場合は、浸漬工程および吸水・糊化工程(ただし、水温が60℃以下)すべての期間において擦り合わせることで(強い粘りを得るための図7(B)参照)、粘りをコシヒカリにより近づけることが可能となるとの知見を得た。
【0067】
例えば、新米が出回る時期の米であって米自体が十分に水分を有する場合は、浸漬工程においてのみ擦り合わせを行うだけで(新米のための図7(C)を参照)、十分に米の表面を平滑化できるので、その後の吸水・糊化工程の擦り合わせを省略することが可能であるとの知見を得た。
【0068】
また、品種自体が粘りを有する銘柄であれば、例えばコシヒカリであれば、浸漬工程の擦りあわせは省略して、吸水・糊化工程(ただし、水温が60℃以下)のみで擦り合わせを行っても(粘りは弱くてもよい図7(D)を参照)、十分粘りの向上に寄与できるとの知見を得た。
【0069】
図7(A)では、吸水・糊化工程の55℃付近で温度をハンチングさせて、ある一定温度に維持することも可能である。この場合、米の酵素活性を上げて、糖の生成を助長する効果が得られる。
【0070】
また、グラフには示さないが、炊飯工程が開始されると浸漬工程を経ずに吸水・糊化工程を開始し、吸水・糊化工程後はただちに沸騰持続工程まで一気に温度を上昇させるようにしてもよい。この場合には、飯の弾力が大きくなる。なお、このケースでも糊化温度以下において攪拌動作が行われる。
【0071】
このように、攪拌翼136により米を浸漬する水を攪拌することにより、米同士の擦り合わせによる粘り増加の他に、水温を均一化できるとの効果も得られる。
【0072】
(攪拌翼136の回転速度)
発明者らの実験によれば、図7(B)〜(C)に示す期間において擦り合わせによって米自体が割れたり、また過剰に削り取られるのを回避するには、攪拌翼136の回転速度、すなわち攪拌用モータ131の回転速度は、内鍋31に収容される米の量に応じて変化させるべきであるとの知見を得た。実験によれば、5.5合炊きの内鍋31(たとえば、内径は深さ方向に一様に約19cm、深さは約11cmである)で1〜3合の米を炊く場合には、回転速度は500rpm(回転数/分)であり、5合の場合には750rpmであることが好ましい。
【0073】
発明者らの実験によれば、擦り合わせ期間における攪拌用モータ131の運転、すなわち攪拌翼136の回転は連続していてもよく、また間欠していてもよいとの知見を得た。単位時間(10秒)当たりの運転率として、たとえば2秒運転8秒停止の間欠運転の場合を運転率20%とした場合、実験によれば、上述した擦り合わせによる効果を得るには運転率は36%〜100%であることが望ましいとの知見を得た。また、少なくも36%であれば、内鍋31内の水温均一化の効果も得られるとの知見を得た。
【0074】
(炊飯工程のフローチャート)
炊飯工程の処理フローチャートは、炊飯コースに応じて予め制御プログラムPRとしてメモリ82に格納されている。いずれの制御プログラムPRに基づき炊飯工程を実行するかは、前処理においてユーザが操作部94を操作する内容に基づき決定される。
【0075】
前処理では、ユーザは、炊飯開始に際して、所定量の米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32にセットし、蓋2を閉めて、その後、操作部94を操作して炊飯コースを選択する。コース判定部71は操作部94の操作内容を検出し、操作内容に基づき選択がされた炊飯コースを判別する。判別した炊飯コースは、制御手順決定部72に与えられる。以上が前処理である。
【0076】
その後、ユーザがスタートボタン943を操作することにより、炊飯工程の開始が指示される。
【0077】
以下、炊飯コース別に炊飯工程の処理手順を説明する。なお、ここでは情報932による加熱手順として白米に対応の手順が選択されるものと想定する。
【0078】
〈白米+粘り(強)コース〉
炊飯コースとして、‘白米+粘り(強)コース’が選択された場合の炊飯工程について図8のフローチャートを参照して説明する。
【0079】
スタートボタン943が操作されたことを検知すると(ステップS(以下、単にSと略す)101)、制御手順決定部72は、前処理において与えられている炊飯コースの情報に対応する制御プログラムPRをメモリ84から検索して読出す(S101)。その後、CPU81は、読出した制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0080】
まず、米量判定部73は、重量センサ97の検出データに基づき、内鍋31に収容されている米の量を検出し、検出した米量のデータを回転数決定部74に与える。回転数決定部74は、与えられた米量データに基づき攪拌翼136の回転数を決定し、モータ制御部75に出力する(S103)。ここでは、米量と回転数を対応付けたテーブルがメモリ84に予め格納されているので、検出した米量データに基づき当該テーブルを検索することで、対応する回転数を読出すことができる。
【0081】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力する。モータ駆動部95は制御信号に基づき攪拌用モータ131に通電する。これにより、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転する。モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し、米の擦り合わせが開始する(S104a)。ここでは攪拌用モータ131は、少なくとも36%の運転率で回転するものと想定する。
【0082】
ここから浸漬工程が開始する(S105a)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間のタイムカウントが開始される(S106a)。ヒータ制御部76は、タイマ83からの計時データに基き浸漬時間が15分を経過したと判定すると(S105でYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始する(S108a)。これにより、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される。
【0083】
加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S109a)。次いで、ヒータ制御部76は温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K1を計測する(S110a)。ここでは、鍋底壁面温度K1は、内鍋31の水温に等しいと想定する。
【0084】
ヒータ制御部76は鍋底壁面温度K1が所定温度、たとえば55℃を指示すると検知すると(S111aでYES)、温度センサ9の検出温度が所定温度を保持するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電量を制御する(S112a)。
【0085】
モータ制御部75は、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T2の計測を開始する(S113a)。次いで、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が計測される(S114a)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したことを検出し(S115a)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃を指示すると判定すると(S116a)、糊化が開始されるのでモータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力する。モータ駆動部95は、制御信号に基づき攪拌用モータ131の回転を停止させる。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせは終了する(S117a)。
【0086】
その後は、内鍋31内を沸騰させるためにヒータ制御部76は、ヒータ駆動部95を介して、フルパワーで加熱が行われるようにヒータ12に通電する(S118)。温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K3が計測される(S119)。ヒータ12の連続加熱による内鍋31内の沸騰と蒸発がしばらく継続すると(沸騰持続工程)、内鍋31の鍋底の水がほとんどない状態に変化する。
【0087】
ヒータ制御部76は、温度センサ9の検出温度に基づき、鍋底壁面温度K3が103℃を指示することを検出すると(S120でYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電を停止する。これにより、内鍋31に対する加熱動作は停止する(S121)。
【0088】
その後、蒸らし工程に移行する。CPU81は、加熱動作を停止した(沸騰持続工程を終了)後は、内鍋31内の米飯を蒸らすために、タイマ83の計時データに基づき、蒸らし時間T3の計測を開始する(S122)。蒸らし工程においても温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K4が検出される(S123)。ヒータ制御部76は、蒸らし工程においては、温度センサ9の検出温度に基づく鍋底壁面温度K4と95℃とを比較しながら、比較結果に基づき鍋底壁面温度K4が95℃を下回らないように、ヒータ駆動部92を介しヒータ12の通電量を制御し、加熱量を制御する(S123〜S125)。
【0089】
CPU81は、タイマ83の計時データに基づき蒸らし時間T3が15分を指示するか否かを判定する(S126)。蒸らし時間T3が15分を指示する、すなわち蒸らし工程開始から15分が経過したと判定すると(S126でYES)、炊飯工程は終了する(S127)。炊飯工程終了時には、CPU81は図示のない音声出力部などを介して炊飯終了を報知する音またはメッセージを出力するようにしてもよい。
【0090】
ヒータ制御部76は、引き続いて保温工程に移行するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12の通電量を制御し、内鍋31内の米飯を保温するよう動作する(S128)。CPU81は、保温工程時には保温・取消ボタン941のランプを点灯し、保温状態であることを報知する。また、保温開始時にはファン駆動部96を介してファン7を回転させて急速冷却し米飯の酸化を抑制する。
【0091】
以上のように白米+粘り(強)コースでは、炊飯工程開始から内鍋31内の水温が糊化開始温度になるまでの期間においては、攪拌翼136による攪拌が連続または間欠に行われる。
【0092】
〈白米+粘り(弱)コース〉
炊飯コースとして、‘白米+粘り(弱)コース’が選択された場合の炊飯工程について図9のフローチャートを参照して説明する。
【0093】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図8のS101〜103と同様の処理が行われる。前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0094】
図9のS118〜S128の処理は、図8のフローチャートのそれと同一処理なので説明は省略する。
【0095】
まず浸漬工程が開始する(S204b)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間T1のタイムカウントが開始される(S205b)。モータ制御部75は、タイムカウント値に基づき浸漬時間T1が15分を指示していると判定すると(S206bでYES)、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を回転させる。これにより攪拌翼136が回転開始し内鍋31内の浸漬した米が攪拌開始される(S207b)。
【0096】
続いて、ヒータ制御部76によりヒータ9に通電されて、内鍋31の水・米が加熱が開始される(S208b)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S209b)。
【0097】
ヒータ制御部76は、温度センサ9により鍋底壁面温度K1を計測して(S210b)、鍋底壁面温度K1が所定値、たとえば55℃に達したことを検知すると(S211b)、温度センサ9の検出温度が所定温度を指示するように、ヒータ駆動部92を介してヒータ9の通電量を制御しながら(S212b)、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T2の計測を開始する(S213b)。
【0098】
次いで、モータ制御部76は、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2を計測する(S214b)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したしたことを検出し(S215bでYES)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃を指示すると判定すると(S216bでYES)、糊化が開始されるので、モータ制御部76はモータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力し、攪拌動作を停止させる(S217b)。
【0099】
以上のように白米+粘り(弱)コースでは、浸漬工程を終了後から内鍋31内の水温が糊化開始温度になるまでの期間において、攪拌翼136による攪拌が連続または間欠に行われる。
【0100】
〈白米+新米コース〉
炊飯コースとして、‘白米+新米コース’が選択された場合の炊飯工程について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0101】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図8のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0102】
具体的には、S101〜S103、S118〜S128の処理は図8のフローチャートのそれと同じであるので説明は省略する。
【0103】
まず、モータ制御部75によりモータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を回転開始されて内鍋31内の米・水が攪拌開始されるとともに、浸漬工程が開始される(S304c、S305c)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間T1のタイムカウントが開始され(S306c)、モータ制御部75は、タイムカウント値に基づき浸漬時間T1が15分を指示していると判定すると(S307cでYES)、浸漬工程は終了するので、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を停止させる(S308c)。これにより、浸漬工程における内鍋31内の攪拌動作は停止する。
【0104】
その後、ヒータ12に通電されて、加熱が開始される(S309c)。加熱開始されると吸水・糊化工程に入る(S310c)。温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K1が計測される(S311c)。計測に基づき鍋底壁面温度K1が所定値、たとえば55℃に達したことを検知すると(S312c)、温度センサ9の検出温度が所定温度を指示するように、ヒータ制御部76はヒータ駆動部92を介してヒータ9の通電量を制御しながら(S313c)、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T2の計測を開始する(S314c)。次いで、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が計測される(S315c)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したしたことが検出され(S316cでYES)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃を指示すると判定すると(S317cでYES)、フルパワーによる加熱が開始される(S118)。
【0105】
以上のように白米+新米コースでは、糊化開始温度以下の浸漬工程の期間においてのみ、攪拌翼136による連続または間欠の攪拌が行われる。
【0106】
(攪拌部の他の構成)
上述の実施の形態では、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転するように設けられるが、攪拌用の部材の構成および取付態様はこれに限定されるものではない。
【0107】
図11には、他の実施の形態に係る攪拌部材の構成が示される。図11を参照して攪拌部材は蓋2に一体的に取付けられる。攪拌部材は、蓋2に内蔵される攪拌用モータ131、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されるプロペラ型の攪拌翼139、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸(モータ軸に連結される軸)を収容するためのケース138を含む。攪拌翼139を先端に保持する軸は、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されており伸縮自在である。
【0108】
ケース138は、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸を伸縮させることにより収容したり、または内鍋31の底面方向に伸ばしたりする。蓋2がユーザにより開閉される時には、軸はケース138に収容された状態にある。
【0109】
蓋2が閉じられて炊飯工程が開始すると、図8〜図10に示した攪拌期間のみにおいて、攪拌翼139を保持する軸がケース138から内鍋31の底面方向に伸びて、プロペラ型の攪拌翼139は浸漬状態の米中に位置して、回転する。その他の期間は、軸はケース138内に収容された状態にある。
【0110】
攪拌期間においては、攪拌用モータ131が、前述と同様に米量に応じた回転数で回転する。モータの回転に連動してプロペラ型の攪拌翼139が回転するので、内鍋31内では水流が発生し、それに伴い米同士が水中で移動し、擦りあわされる。これにより、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を用いる場合と同様に擦り合わせの効果が得られる。
【0111】
上述した攪拌部は浸漬した米内で羽が回転する構成であったが、内鍋31自体が回転するようにしてもよい。具体的には、回転台にシャフトを介してモータを接続し、回転台に内鍋31を載置する。動作においては、モータが駆動されて回転すると、シャフトを介して回転台が回転し、回転台に載せられた内鍋31が回転する。これにより、内鍋31内において米と水が流動しながら攪拌される。
【0112】
(咀嚼模擬試験)
発明者らは、上述の擦り合わせ期間を有する炊飯工程による炊飯後の飯の粘り、テクスチャー(咀嚼模擬)メータで測定した。その結果が図12に示される。
【0113】
テクスチャーの測定は以下のとおりである。H15×φ30mmのステンレス容器に薄膜の樹脂フィルム(食品用ラップフィルム)を敷き、樹脂フィルム上に飯15.0gを載せる。飯に荷重するプランジャーと同一素材の台を用いてステンレス容器を抑え、おにぎり形を作る。おにぎりは台の上にとりだす。これにより、同一量の加重をかけて同一形状に整形されたおにぎりが作られる。
【0114】
上述の手順で2つのおにぎりを作った。おにぎりに使用した米は滋賀県産キヌヒカリ、加水比1.5倍で炊飯した。1つのおにぎりは従来の炊飯器を使用して炊飯した米飯(擦り合わせなし)によるおにぎりであり、他方のおにぎりは、図7(B)に示すタイミングで擦り合わせを行う炊飯工程を経た米飯(擦り合わせあり)によるおにぎりである。
【0115】
これら2個のおにぎりを用いて炊飯の仕上がり(粘り強度)の評価を行う。具体的には、2個のおにぎりそれぞれの中央に、φ16mmの円柱型プランジャーを突き刺し、90%貫入時の硬さと90%変形させた後同じスピードで引き上げ時のマイナス側の荷重値を測定する。荷重スピードは1mm/sである。ここでプラス側の荷重値を硬さ、マイナス側の荷重値のピークを飯粒の粘り、あるいはマイナス側の面積を付着性による粘りとし、仕上がり(粘り強度)の評価を行なった。
【0116】
図12は、上述の手順に従った飯粒の粘り強度の試験結果の比較が示される。図12によれば、擦り合わせありの方が、従来の擦り合わせなしの炊飯よりも付着性による粘りの値が大きくなった。粘り荷重値はマイナス値が大きいほど粘りが大きくなる指標である。なお、図12においては、試料毎の粘り加重のバラツキEも示されている。
【0117】
図13には、本実施の形態に従って炊飯工程中に水中で米同士を擦り合わせた場合(図13の右側)と、擦り合わせしなかった場合(図13の左側)それぞれの、浸漬工程終了直後の米の表面を撮影した写真を示す。両方のケースともに、同一の種類の同一量の米について同一条件で米研ぎをした後に加水比1.5倍の水(水温20度)に20分浸漬した直後の状態を示す。図13の左側は、浸漬期間において擦り合わせをしていない為に米表面の色調にムラがあり、あまりツヤがない。これに対し、右側は浸漬期間(20分)のうち10分間は擦り合わせをした(攪拌用モータ131を500rpmで運転率80%で運転)ケースを指すが、色調にムラが少なく、よりつややかになっており、表面が僅かに削られ、平滑化されているのがわかる。参考までに、米の含水率を測定したところ、擦り合わせなしのケースでは28.7%であり、擦り合わせありでは29.2%であった。
【0118】
本実施の形態によれば、炊飯工程を開始後、内鍋31の水温が糊化開始温度以下である期間において、米同士を擦り合わせることで表面を僅かに削り、削られた米粉を水側に移行させることができる。それらの米粉はデンプン粒子を含むので、その後の加熱により粘りを生じる。炊飯工程の後半(蒸らし工程)では米の周りに存在していた水は米表面にもどり飯の一部となることから、従来よりもデンプン粒子がより多く含まれている「おねば」をコーティングすることとなり粘りの向上につながるものである。また、米表面は擦り合わせで均一化されていえるので、おねばを米表面に均一にコーティングすることが可能となる。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
9 温度センサ、12 ヒータ、31 内鍋、32 外鍋、93 表示部、94 操作部、71 コース判定部、72 制御手順決定部、73 米量判定部、74 回転数決定部、75 モータ制御部、76 ヒータ制御部、131 攪拌用モータ、136 攪拌翼。
【技術分野】
【0001】
この発明は炊飯器および炊飯器の制御方法に関し、特に、米粒同士を擦り合わせる機能を有する炊飯器および炊飯器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からおいしいご飯を炊くために様々な炊飯器が開発されている。しかし、米の炊き上がりは米の品種(または米の組成)ごとに異なり、同じ炊飯器で炊飯しても、コシヒカリはおいしく炊けるが、日本晴はあまりおいしくない、といった品種間差を縮めることはできなかった。現在日本で一番消費されているコシヒカリであるが、これは米の粘りが強く、それがおいしい食感と捉えられている品種である。
【0003】
日本人は粘りの強い米をおいしいと感じるので、米の粘りを向上させるために様々な提案がされている。
【0004】
食品業界の特許文献1(特開平9−206006号公報)の炊飯米の製造法では、米類の炊飯時に(a)トランスグルタミナーゼと、(b)タンパク質部分加水分解物、少糖類および糖アルコールのうちの1種以上を炊飯水に添加して炊飯することにより、炊飯米に粘りを付与する。
【0005】
炊飯器業界の特許文献2(特開2000−308571号公報)の炊飯方法では、加熱段階にその加熱温度を100℃以上に上昇させ、保持する工程を設けて、炊飯米を高圧にさらすことで粘り物性を向上させている。
【0006】
近年の学術報告(たとえば、非特許文献1:理化学測定法による市販精米の食味の推定、横江ら、日本食品科学工学会誌、Vol56,No5,291-298(2009))によれば、市販されている精米は品種間差が小さくなった報告されている。この報告によると、炊飯後の食味において食味評価を行ったパネルは精米の黄味味が弱い試料あるいは、透光度(ツヤ)のある試料を総合的に好ましいと評価したと報告がある。近年、米の品種間差が小さくなっているので、ご飯の炊き上がりとしては色・ツヤが重要視されているということが分かる。
【0007】
ご飯のツヤは、炊飯工程の途中におねばに溶出した米成分(特にアミロペクチン)が炊飯工程の蒸らし時に再度飯表面にコーティングされることで生じると言われている。
【0008】
おねばとは、炊飯の際に米とともに加えた水のことであり、特に炊飯工程の後半の沸騰時に米成分(粘着性のあるデンプン質)が溶出して白濁した状態のものをさす。
【0009】
特許文献3(特開平6−113762号公報)の米飯の製造方法では、溶存気体を除去した脱気水を用いることにより、調理時間(特に浸漬時間)が短縮できると共に、色(褐変による黄色化)、ツヤ(表面細胞破壊による煮くずれ)、粘弾性、栄養素(特に、還元糖類)に優れた、しかも、老化しにくい米飯製造を可能としている。特許文献3によれば、米飯のツヤの向上のためには脱気水を使用すればよいということである。
【0010】
炊き上がりを状態を良くするために特許文献4(特開2000−308572号公報)では、炊飯中、残水があれば水流を起こし、水蒸気発生を抑制する構成が示される。また、特許文献5(特開2008−154661号公報)では、パン製造機の構造上、温度ムラがあるので炊飯に応用する場合も攪拌をしてムラを解消する構成が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−206006号公報
【特許文献2】特開2000−308571号公報
【特許文献3】特開平6−113762号公報
【特許文献4】特開2000−308572号公報
【特許文献5】特開2008−154661号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】理化学測定法による市販精米の食味の推定、横江ら、日本食品科学工学会誌、Vol56,No5,291-298(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
通常の炊飯器では米の品種または新米/古米の別により炊飯後の粘り物性が決定されてしまうため、一般的に好まれる粘りの強いご飯を炊きたい場合、比較的高価なコシヒカリなどの銘柄米を入手しなければ対応できなかった。また、家庭での炊飯では脱気水を入手することは困難であり、一晩汲み置きしてカルキ抜きを行うといった手間がかかるものであった。
【0014】
それゆえに本発明の目的は、ツヤと粘りのある米飯に炊き上げる炊飯器および炊飯器の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明のある局面に従う炊飯器は、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、を備える。
【0016】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される。
【0017】
好ましくは、擦り合わせ手段が駆動される期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間の全部または一部である。
【0018】
好ましくは、炊飯工程は、鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、擦り合わせ手段が駆動される一部の期間は、浸漬工程に対応する期間である。
【0019】
好ましくは、炊飯工程は、鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、擦り合わせ手段が駆動される一部の期間は、炊飯工程を開始後から温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間のうち、浸漬工程に対応する期間を除いた期間である。
【0020】
この発明の他の局面に従うと、米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段とを備え、制御方法は、炊飯工程の開始命令の情報が入力されたことに応答して、温度計測手段が計測する温度の情報とを用いて、加熱手段および擦り合わせ手段を駆動するステップ、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、炊飯工程において浸漬した米粒同士を擦り合わせることにより、水側に米のデンプン質を移行させ、炊飯工程の後半では水中のデンプン質は米に戻されて、ツヤと粘りのある米飯に炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態に係る炊飯器の概略ハードウェア構成図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の制御部の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る炊飯器の制御に係る機能構成図である。
【図4】実施の形態に係る操作部と表示部の構成図である。
【図5】実施の形態に係る攪拌部材と内鍋の取付態様を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る攪拌部の構成を示す図である。
【図7】(A)〜(D)は、実施の形態に係る炊飯工程を説明する図である。
【図8】実施の形態に係る炊飯工程の処理フローチャートである。
【図9】実施の形態に係る他の炊飯工程の処理フローチャートである。
【図10】実施の形態に係る更なる他の炊飯工程の処理フローチャートである。
【図11】実施の形態に係る他の攪拌部材の構成を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る米飯の粘り加重に関する試験結果を示す図である。
【図13】実施の形態に係る擦り合わせの有無による米の表面を撮影した写真を指す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態に係る炊飯器は、上方に向けて開口を有する本体1と、本体1に収納される内鍋31と、図示のない枢軸(ヒンジ軸)およびラッチの機構2Aにより開閉できるよう本体1に接続された蓋2とを含む。蓋2には、内蓋4が一体的に取り付けられる。本体1の内部には内鍋31の収容部を構成する外鍋32、内鍋31に収容された調理物を加熱および保温するための加熱用シーズヒータ(以下、単にヒータという)12、炊飯器の動作を制御する制御部8、内鍋31の温度を検出する温度センサ9、電源部10、攪拌部13およびファン7を備える。蓋2の筐体には炊飯中に内鍋31内に発生する水蒸気を外部に逃すための蒸気筒5、炊飯器の動作状態を指す情報を出力する表示部93、ユーザの命令を受付けるために操作されるボタンからなる操作部94を備える。本体1の筐体側面には、ファン7に関連の空気取り入れ口6Aと送出口6Bを備える。
【0025】
内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度を予測計測するために温度センサ9が設けられる。温度センサ9は、内鍋31の鍋底壁面温度を計測可能なように設置される。鍋底壁面温度は内鍋31に収容された内容物(米、水)の温度に等しいと想定する。
【0026】
内鍋31は、外鍋32の中に自由に出し入れできる。内鍋31の調理物を収容する内面はフッ素樹脂加工が施され、外鍋32と接する側面は中空ガラスビーズでコーティングされている。中空ガラスビーズコートにより、熱は内鍋31内に封じ込められて、保温時などの蓄熱効果が高まる。内蓋4は、蓋2が閉じられたとき内鍋31の開口を覆う。内蓋4は、蓋2に着脱自在に取付けられている。
【0027】
攪拌部13は、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を有する回転部14と、回転部14の攪拌翼136を回転させるためのモータ部(後述のモータ部15)とを含む。攪拌翼136は回転部14に一体的に接続されて、モータ部に接続された回転部14がモータ部の回転に連動して回転することにより、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転する。回転時には、内鍋31内には水と共に収容された米が水中に浸漬した状態にあるので、攪拌翼136の回転により攪拌翼136に米が衝突して擦り合わされ、また内鍋31内には水流(図中の細い矢印)が生じ浸漬した米粒同士が擦り合わされる。
【0028】
表示部93と操作部94は、本実施の形態では蓋2の筐体表面において一体的に設けられるが、ユーザが表示情報を視認可能であり、またボタン操作が可能な位置であれば、取り付け位置は、ここに限定されない。
【0029】
ファン7は炊飯終了後の保温移行時に回転する。ファン7の回転により取り込み口6Aから空気が侵入し(図中の太い矢印)、侵入した気流は内鍋31および外鍋32に送風されて、送出口6Bから外部に送出される。送風により、内鍋31自体が急速冷却されて、保温移行時の内鍋31内の米飯の酸化が抑制される。
【0030】
炊飯器は電源コード11を介して図示のない商用電源に接続される。商用電源からの供給電力は電源部10を介して各部に供給される。
【0031】
本実施の形態では、加熱・保温用の熱源としてヒータ12を用いたが、熱源はこれに限定されない。たとえば、IH(Induction Heating:電磁誘導加熱)によるものであってもよい。この場合には、攪拌部136の回転機構のための磁界と干渉が生じないよう両者を配置する。
【0032】
図2には、制御部8の内部構成とその周辺回路が示される。図2を参照して制御部8は、CPU(Central Processing Unit)81、プログラムおよびデータを格納するメモリ82、時間を計時して計時データを出力するタイマ83および各部とデータを入出力するためのI/F(Interface)84を備える。
【0033】
CPU81はI/F84を介して、ヒータ12に通電して発熱動作を行わせるためのヒータ駆動部92、操作部94、表示部93の表示動作を制御する表示制御部931、攪拌部13のモータ駆動部95、ファン7のファン駆動部96、内鍋31内の収容物の重量を計測するための重量センサ97、および温度センサ9とデータを入出力する。
【0034】
図3には、本実施の形態による炊飯器を制御するための機能構成が示される。図3を参照してCPU81は、操作部94のボタン操作を介して入力する命令に従って炊飯工程に係る各部を制御するための手順を指す炊飯コースを選択的に決定するコース判定部71、決定された炊飯コースに基づきメモリ82を検索して対応する制御プログラムPRを読出す制御手順決定部72、重量センサ97の検出信号に基づき内鍋31の米の重量を検出する米量判定部73、米量判定部73の検出信号に基づき攪拌部13のモータの単位時間当たりの回転数を決定する回転数決定部74、決定された回転数に従ってモータが回転させるための電圧信号を生成しモータ駆動部95に出力するモータ制御部75、およびヒータ12に供給する電流信号を生成してヒータ駆動部92に出力するヒータ制御部76を備える。
【0035】
モータ制御部75は、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を制御する。
メモリ82には、各炊飯コースに対応して制御プログラムPRが予め格納される。制御プログラムPRは、加熱手段であるヒータ12に通電する電流レベルを炊飯開始から終了までの期間にわたって時系列に制御するための情報および攪拌翼136の回転を制御するための情報を指す。
【0036】
ここでは内鍋31の米の重量は重量センサ97を用いて計測するとしているが、計測方法はこれに限定されない。たとえば、内鍋31を回転させるモータの負荷に基づき検出してもよく、また内鍋31内の水位を検出するセンサの検出結果に基づき米の重量を検出するようにしてもよく、またユーザが操作部94から米の量を入力するとしてもよい。
【0037】
表示部93と操作部94は図4に示すように一体的に構成される。表示部93による表示動作は、CPU81の指示に基づき表示制御部931により制御される。表示部93には、炊飯コースを選択するための情報931と932、および時間情報934が表示される。
【0038】
操作部94は、保温・取消ボタン941、予約炊飯の設定を行う際に操作される予約ボタン942、炊飯を開始するときや予約炊飯を決定するときに操作されるスタートボタン943、炊飯コースを選択する際に操作されるコースボタン946を有する。保温・取消ボタン941とスタートボタン943は、ランプを内蔵し、ボタン操作に従ってランプが点灯・消灯する。
【0039】
保温・取消ボタン941は、保温の開始を指示するとき、または保温状態を取消すために操作される。炊飯終了後保温工程に入った場合は保温・取消ボタン941のランプが点灯する。
【0040】
予約ボタン942は予約炊飯の設定を行うときに操作される。予約ボタン942の操作に連動して、表示部93の画面には時間情報934として予約した時間が表示される。予約は最大12時間後まで可能である。予約時間は、炊飯完了の時間を指す。炊飯時には、タイマ83の計時データに基づき炊飯終了までの残り時間が時間情報934によって表示される。
【0041】
コースボタン946が操作される毎に、情報932に示す炊飯工程における加熱(ヒータ)の制御手順を決定するコースが選択される。コースボタン946の操作により情報932の白米コースを選択した場合は表示部93の白米コースのランプが点灯する。さらに、左右の動作ボタン945を操作することで炊飯の仕上がり状態として情報931に示す米飯の[粘り(強)・粘り(弱)・新米]の3パターン、すなわち後述の擦り合わせのタイミングのうちのいずれかを選択できる。ここでは、炊飯の仕上がり状態は、米飯の粘りの程度を指す。左右の動作ボタン945を操作しなければ粘り(強)が選択されて、情報931の粘り(強)が太字で表示される。動作ボタン945を右に操作することで粘り(弱)→新米と選択を切替えることができる。選択されると情報931の文字は、太字の表示に変わる。粘りの程度として、新米の粘りである‘新米’が選択された後に、さらに動作ボタン945が右に操作されると、3パターンとも細字で表示される。その場合は、後述の攪拌翼136の回転による後述の擦り合わせ工程は省略される。
【0042】
なお、情報932の玄米コースが選択された場合には、ここでは説明を簡単にするために、情報931による炊飯の仕上がり状態の選択はできないと想定している。情報932の高速(高速炊飯)コース、おかゆコースが選択された場合には、白米コースと同様に、動作ボタン945を操作することにより仕上がり状態を選ぶことができる。
【0043】
本実施の形態では、CPU81は、操作部94のボタン操作内容を検出し、検出した操作内容に基づき情報931と932のコースおよび粘りの仕上がりパターンが選択されたと判別したとき、操作内容に基づき選択された炊飯コースを検出する。したがって、本実施の形態では、炊飯コースは、情報932により選択された加熱制御手順と、情報931により選択された擦り合わせのタイミングとの組合わせにより決定される。
【0044】
図5を参照して回転部14の取付け状態について説明する。図5において、内鍋31の底面の中央部には、予め回転部14の形状に整合させて凹部と軸(図6の回転軸134に相当)が形成されており、回転部14は当該凹部に嵌め込み可能な形状を有する。内鍋31が嵌め込まれると、回転軸134は、攪拌翼136の中心軸に連接される。
【0045】
外鍋32の底面外部における、内鍋31の凹部に対応する位置には、モータ部15が取付けられている。回転部14が取り付けられた内鍋31が外鍋32(図示せず)に収容されると、モータ部15から回転部14に回転のための駆動力が伝達可能な状態となる。攪拌翼136は回転部14に着脱自在であるので、使用後は回転部14をモータ部15から取り外して、または攪拌翼136を回転部14から取り外してそれぞれ洗浄することが可能である。
【0046】
図6を参照して攪拌翼136を回転させるための機構について説明する。回転のための機構として、本実施の形態ではマグネットカップリング式非接触式攪拌機構を採用する。具体的には、外鍋32の底面外部に設けられたモータ部15は攪拌用モータ131と、攪拌用モータ131の回転軸に接続される外箱138を有する。
【0047】
外箱138は、回転部14を受容れ可能な凹部形状を有し、その内壁にはアウターヨーク132が取付けられた中空状の箱である。外箱138の内壁にはアウターヨーク132を挟んで磁界を構成するためのアウターマグネット133が配される。
【0048】
内鍋31が外鍋32に収容されるとき、外箱138の凹の部分に嵌め込むように内鍋31の回転部14が取付けられる。回転部14はフッ素樹脂であるテフロン(登録商標)で被膜され、内部は充填されて、完全防水されている。回転部14は、内鍋31の回転軸134の周囲に隙間を介して配されるインナーヨーク137と、インナーヨーク137に磁界を構成するために配されたインナーマグネット135を有する。インナーマグネット135とアウターマグネット133とは空隙を介して相対するように位置し互いに磁力により引き合う。
【0049】
攪拌翼136は、樹脂素材の略円形部材(円の直径はたとえば約5〜7cm)であり、円の中心で直交するように十字の凸部が形成されている。凸部は、回転により水流を生じやすいように山型である。
【0050】
動作において、攪拌用モータ131が回転するとモータ軸に連接された外箱138が回転し、アウターマグネット133が回転し、アウターマグネット133に磁力によって引き合うインナーマグネット135も回転する。その結果、回転部14自体が回転し、攪拌翼136が連動して内鍋31の底面内において回転する。
【0051】
図7のグラフには、本実施の形態の炊飯工程(炊飯過程)の水温の変化と、米同士の擦り合わせタイミングが示される。図7(A)の炊飯工程の水温変化のグラフに関しては、縦軸に内鍋31内の水の温度、横軸に炊飯開始からの経過時間が取られている。このグラフは、5.5合(米の1合は150グラム)炊きの炊飯器において、内鍋31に3合の白米を収容して炊飯する工程を例示する。
【0052】
(炊飯工程について)
一般に炊飯器の炊飯工程は、図7(A)に示すようにヒータ12による加熱が行われない浸漬工程に続いて、ヒータ12による加熱を行う吸水・糊化工程、沸騰持続工程および蒸らし工程の順に進行する。炊飯工程における浸漬工程および吸水・糊化工程では、米のデンプン質を糊化させるために、米の芯にまで充分水を吸わせる。炊飯とは水と米に熱を加えることにより、生デンプンの形を変え、消化されやすいアルファ化デンプンに変化させることである。この生デンプンからアルファ化デンプンへの変化を糊化と呼ぶ。糊化においては、米のデンプンに水と熱を加えると糊状に変化する現象が見られ、糊化は水温60℃から開始されることが知られている。
【0053】
動作において、まず、ユーザは機構2Aに関連の図示されない開閉ボタンを操作し、炊飯器の本体1から内鍋31を取出す。
【0054】
炊飯したい量の米を計量する。米の単位は合および升であり、1合は150グラム、1升は1500グラムに相当する。家庭で使用する精米後の米はまだ表面に糠層が残っているため、ユーザは先に水道水で洗米する(研ぐ)。洗米は表面の糠層を取り除くために、手早く、数回、水を交換しながらかきまぜるといった方法が用いられる。洗米後の米と所定量の水(加水量は米に対する重量比1.4〜1.5倍)を内鍋31に投入する。このとき、内鍋31の鍋底には予め攪拌翼136を含む回転部14が取り付けられた状態にあり、底面から内容物(米または水)が外部にもれることはない。
【0055】
米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32内にセットし、蓋2を閉じる。
ユーザがスタートボタン943を押すと炊飯工程が開始される。このとき、ユーザは操作部94を操作して炊飯のコースを選択しているので、選択内容に従って、CPU81はメモリ82から当該コースに対応した制御プログラムPRを読出す。以降は、CPU81は読出した制御プログラムPRの命令コードに基づき各部を制御する。これにより、炊飯が進行する。
【0056】
炊飯工程では、ヒータ制御部76は、ヒータ駆動部92に対し制御信号を出力するので、ヒータ駆動部92は制御信号に基づき、ヒータ12に通電する。これにより、内鍋31の内容物の加熱が行われる。炊飯工程の開始と同時にCPU81は、温度センサ9によって計測される温度を入力し、入力した温度に基づき内鍋31内の水温を検出する。これにより、炊飯工程における温度管理が行われる。
【0057】
図7(A)によれば、室温(20℃)で15分程度浸漬させることで米が含有する水分が30%近くになり、浸漬工程が終了する。その後、加熱を開始し水温を上昇させながら、さらなる吸水と、60℃以上では米の糊化が行われる。
【0058】
加熱時に或る一定温度でハンチングさせる場合には、温度センサ9の検出温度に基づきヒータ制御部76がヒータ12の通電量を制御することにより、一定温度を維持することができる。
【0059】
水が100℃に達してからはその沸騰を15分以上継続できるようにヒータ制御部76はヒータ12の通電量をヒータ駆動部92を介して制御する。
【0060】
沸騰中に余分となった内鍋31内の蒸気は、必要に応じ蓋2の図示のない小孔および蒸気筒5を通して外部に排気される。15分沸騰継続後には内鍋31には自由水はほとんどなくなっており、米は十分にアルファ化され飯となっている。その後は、蒸らし工程に移る。
【0061】
蒸らし工程では温度が90℃以下にならないようにヒータ制御部76はヒータ12を制御する。この段階で飯の表面に僅かに残ったおねばは、飯に吸水されるのでツヤのあるおいしいご飯に変化する。蒸らし工程が終了すると炊飯完了(炊飯工程終了)である。
【0062】
このように、米からデンプン溶出する糊化工程、その後の沸騰持続工程および蒸らし工程とそれぞれの目的にあわせて温度制御が行われる。浸漬工程後の吸水工程は、水温が室温から60℃以下において、糊化工程は水温60℃以上で100℃まで、沸騰持続工程は98℃以上の維持20分以上、蒸らし工程では90℃以上の維持15分以上が基本である。
【0063】
本実施の形態では、米の状態(古米または新米)、または品種に関係なく、粘り・つやの多い米飯に炊き上げるために、炊飯工程において、水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせる。擦り合わせにより米粒表面部分を平滑にし、且つ削り取られた米表面のデンプン質を水側に移行させる。擦り合わせの期間は、水側に米のデンプン質を移行させるでんぷん質移行工程といえる。削られた表面の成分はアミロースやアミロペクチンを含むデンプン粒子であり、炊飯時のおねばに、より多くのデンプン粒子として移行させることができるので、炊き上がった米の表面の粘り物質量が多くなり、結果、米飯の粘りを向上させることが可能となる。また、米粒の表面が平滑であるために表面において光が反射されやすくツヤを向上させることが可能となる。また表面にコーティングするアミロペクチン量も多くなるので、炊飯後冷めてからのツヤも向上することとなる。
【0064】
炊飯工程において糊化が開始すると、米粒表面は徐々に粘りをもったやわらかいデンプンに変化する。そのため糊化開始後も擦り合わせを続けると米粒同士がくっついてしまい餅ようになってしまう。そこで、擦り合わせは糊化開始温度(水温60℃)以下で実施するのが好ましい。
【0065】
具体的には、図7(B)〜(D)に示すように、炊飯工程を開始後から内鍋31内の水温が糊化開始温度以下の期間において、内鍋31の底面に設けた十字状の凸部を有した攪拌翼136を攪拌用モータ131で回転させることで、内鍋31に水流を発生させ、それに伴い米同士が水中で移動し、擦りあわされる。
【0066】
図7(B)〜(D)には擦り合わせタイミングが、図7(A)の炊飯工程の時間経過に伴う温度変化と関連付けて示される。擦り合わせタイミングは米の状態または品種によって変えることが好ましい。発明者らの実験によれば、粘りの少ない銘柄、たとえばキヌヒカリといった米の場合は、浸漬工程および吸水・糊化工程(ただし、水温が60℃以下)すべての期間において擦り合わせることで(強い粘りを得るための図7(B)参照)、粘りをコシヒカリにより近づけることが可能となるとの知見を得た。
【0067】
例えば、新米が出回る時期の米であって米自体が十分に水分を有する場合は、浸漬工程においてのみ擦り合わせを行うだけで(新米のための図7(C)を参照)、十分に米の表面を平滑化できるので、その後の吸水・糊化工程の擦り合わせを省略することが可能であるとの知見を得た。
【0068】
また、品種自体が粘りを有する銘柄であれば、例えばコシヒカリであれば、浸漬工程の擦りあわせは省略して、吸水・糊化工程(ただし、水温が60℃以下)のみで擦り合わせを行っても(粘りは弱くてもよい図7(D)を参照)、十分粘りの向上に寄与できるとの知見を得た。
【0069】
図7(A)では、吸水・糊化工程の55℃付近で温度をハンチングさせて、ある一定温度に維持することも可能である。この場合、米の酵素活性を上げて、糖の生成を助長する効果が得られる。
【0070】
また、グラフには示さないが、炊飯工程が開始されると浸漬工程を経ずに吸水・糊化工程を開始し、吸水・糊化工程後はただちに沸騰持続工程まで一気に温度を上昇させるようにしてもよい。この場合には、飯の弾力が大きくなる。なお、このケースでも糊化温度以下において攪拌動作が行われる。
【0071】
このように、攪拌翼136により米を浸漬する水を攪拌することにより、米同士の擦り合わせによる粘り増加の他に、水温を均一化できるとの効果も得られる。
【0072】
(攪拌翼136の回転速度)
発明者らの実験によれば、図7(B)〜(C)に示す期間において擦り合わせによって米自体が割れたり、また過剰に削り取られるのを回避するには、攪拌翼136の回転速度、すなわち攪拌用モータ131の回転速度は、内鍋31に収容される米の量に応じて変化させるべきであるとの知見を得た。実験によれば、5.5合炊きの内鍋31(たとえば、内径は深さ方向に一様に約19cm、深さは約11cmである)で1〜3合の米を炊く場合には、回転速度は500rpm(回転数/分)であり、5合の場合には750rpmであることが好ましい。
【0073】
発明者らの実験によれば、擦り合わせ期間における攪拌用モータ131の運転、すなわち攪拌翼136の回転は連続していてもよく、また間欠していてもよいとの知見を得た。単位時間(10秒)当たりの運転率として、たとえば2秒運転8秒停止の間欠運転の場合を運転率20%とした場合、実験によれば、上述した擦り合わせによる効果を得るには運転率は36%〜100%であることが望ましいとの知見を得た。また、少なくも36%であれば、内鍋31内の水温均一化の効果も得られるとの知見を得た。
【0074】
(炊飯工程のフローチャート)
炊飯工程の処理フローチャートは、炊飯コースに応じて予め制御プログラムPRとしてメモリ82に格納されている。いずれの制御プログラムPRに基づき炊飯工程を実行するかは、前処理においてユーザが操作部94を操作する内容に基づき決定される。
【0075】
前処理では、ユーザは、炊飯開始に際して、所定量の米と水を収容した内鍋31を本体1の外鍋32にセットし、蓋2を閉めて、その後、操作部94を操作して炊飯コースを選択する。コース判定部71は操作部94の操作内容を検出し、操作内容に基づき選択がされた炊飯コースを判別する。判別した炊飯コースは、制御手順決定部72に与えられる。以上が前処理である。
【0076】
その後、ユーザがスタートボタン943を操作することにより、炊飯工程の開始が指示される。
【0077】
以下、炊飯コース別に炊飯工程の処理手順を説明する。なお、ここでは情報932による加熱手順として白米に対応の手順が選択されるものと想定する。
【0078】
〈白米+粘り(強)コース〉
炊飯コースとして、‘白米+粘り(強)コース’が選択された場合の炊飯工程について図8のフローチャートを参照して説明する。
【0079】
スタートボタン943が操作されたことを検知すると(ステップS(以下、単にSと略す)101)、制御手順決定部72は、前処理において与えられている炊飯コースの情報に対応する制御プログラムPRをメモリ84から検索して読出す(S101)。その後、CPU81は、読出した制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0080】
まず、米量判定部73は、重量センサ97の検出データに基づき、内鍋31に収容されている米の量を検出し、検出した米量のデータを回転数決定部74に与える。回転数決定部74は、与えられた米量データに基づき攪拌翼136の回転数を決定し、モータ制御部75に出力する(S103)。ここでは、米量と回転数を対応付けたテーブルがメモリ84に予め格納されているので、検出した米量データに基づき当該テーブルを検索することで、対応する回転数を読出すことができる。
【0081】
モータ制御部75は、与えられる回転数に基づいた制御信号をモータ駆動部95に出力する。モータ駆動部95は制御信号に基づき攪拌用モータ131に通電する。これにより、攪拌用モータ131は米量に応じた速度で回転する。モータの回転に連動して攪拌翼136は回転し、米の擦り合わせが開始する(S104a)。ここでは攪拌用モータ131は、少なくとも36%の運転率で回転するものと想定する。
【0082】
ここから浸漬工程が開始する(S105a)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間のタイムカウントが開始される(S106a)。ヒータ制御部76は、タイマ83からの計時データに基き浸漬時間が15分を経過したと判定すると(S105でYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12に通電を開始する(S108a)。これにより、内鍋31の内容物(米と水)の加熱が開始される。
【0083】
加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S109a)。次いで、ヒータ制御部76は温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K1を計測する(S110a)。ここでは、鍋底壁面温度K1は、内鍋31の水温に等しいと想定する。
【0084】
ヒータ制御部76は鍋底壁面温度K1が所定温度、たとえば55℃を指示すると検知すると(S111aでYES)、温度センサ9の検出温度が所定温度を保持するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電量を制御する(S112a)。
【0085】
モータ制御部75は、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T2の計測を開始する(S113a)。次いで、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が計測される(S114a)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したことを検出し(S115a)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃を指示すると判定すると(S116a)、糊化が開始されるのでモータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力する。モータ駆動部95は、制御信号に基づき攪拌用モータ131の回転を停止させる。これにより、攪拌翼136の回転による攪拌動作は停止し、米の擦り合わせは終了する(S117a)。
【0086】
その後は、内鍋31内を沸騰させるためにヒータ制御部76は、ヒータ駆動部95を介して、フルパワーで加熱が行われるようにヒータ12に通電する(S118)。温度センサ9の検出温度に基づき内鍋31の鍋底壁面温度K3が計測される(S119)。ヒータ12の連続加熱による内鍋31内の沸騰と蒸発がしばらく継続すると(沸騰持続工程)、内鍋31の鍋底の水がほとんどない状態に変化する。
【0087】
ヒータ制御部76は、温度センサ9の検出温度に基づき、鍋底壁面温度K3が103℃を指示することを検出すると(S120でYES)、ヒータ駆動部92を介してヒータ12への通電を停止する。これにより、内鍋31に対する加熱動作は停止する(S121)。
【0088】
その後、蒸らし工程に移行する。CPU81は、加熱動作を停止した(沸騰持続工程を終了)後は、内鍋31内の米飯を蒸らすために、タイマ83の計時データに基づき、蒸らし時間T3の計測を開始する(S122)。蒸らし工程においても温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K4が検出される(S123)。ヒータ制御部76は、蒸らし工程においては、温度センサ9の検出温度に基づく鍋底壁面温度K4と95℃とを比較しながら、比較結果に基づき鍋底壁面温度K4が95℃を下回らないように、ヒータ駆動部92を介しヒータ12の通電量を制御し、加熱量を制御する(S123〜S125)。
【0089】
CPU81は、タイマ83の計時データに基づき蒸らし時間T3が15分を指示するか否かを判定する(S126)。蒸らし時間T3が15分を指示する、すなわち蒸らし工程開始から15分が経過したと判定すると(S126でYES)、炊飯工程は終了する(S127)。炊飯工程終了時には、CPU81は図示のない音声出力部などを介して炊飯終了を報知する音またはメッセージを出力するようにしてもよい。
【0090】
ヒータ制御部76は、引き続いて保温工程に移行するようにヒータ駆動部92を介してヒータ12の通電量を制御し、内鍋31内の米飯を保温するよう動作する(S128)。CPU81は、保温工程時には保温・取消ボタン941のランプを点灯し、保温状態であることを報知する。また、保温開始時にはファン駆動部96を介してファン7を回転させて急速冷却し米飯の酸化を抑制する。
【0091】
以上のように白米+粘り(強)コースでは、炊飯工程開始から内鍋31内の水温が糊化開始温度になるまでの期間においては、攪拌翼136による攪拌が連続または間欠に行われる。
【0092】
〈白米+粘り(弱)コース〉
炊飯コースとして、‘白米+粘り(弱)コース’が選択された場合の炊飯工程について図9のフローチャートを参照して説明する。
【0093】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図8のS101〜103と同様の処理が行われる。前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0094】
図9のS118〜S128の処理は、図8のフローチャートのそれと同一処理なので説明は省略する。
【0095】
まず浸漬工程が開始する(S204b)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間T1のタイムカウントが開始される(S205b)。モータ制御部75は、タイムカウント値に基づき浸漬時間T1が15分を指示していると判定すると(S206bでYES)、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を回転させる。これにより攪拌翼136が回転開始し内鍋31内の浸漬した米が攪拌開始される(S207b)。
【0096】
続いて、ヒータ制御部76によりヒータ9に通電されて、内鍋31の水・米が加熱が開始される(S208b)。加熱開始すると吸水・糊化工程に入る(S209b)。
【0097】
ヒータ制御部76は、温度センサ9により鍋底壁面温度K1を計測して(S210b)、鍋底壁面温度K1が所定値、たとえば55℃に達したことを検知すると(S211b)、温度センサ9の検出温度が所定温度を指示するように、ヒータ駆動部92を介してヒータ9の通電量を制御しながら(S212b)、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T2の計測を開始する(S213b)。
【0098】
次いで、モータ制御部76は、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2を計測する(S214b)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したしたことを検出し(S215bでYES)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃を指示すると判定すると(S216bでYES)、糊化が開始されるので、モータ制御部76はモータ駆動部95に攪拌用モータ131を停止させるための制御信号を出力し、攪拌動作を停止させる(S217b)。
【0099】
以上のように白米+粘り(弱)コースでは、浸漬工程を終了後から内鍋31内の水温が糊化開始温度になるまでの期間において、攪拌翼136による攪拌が連続または間欠に行われる。
【0100】
〈白米+新米コース〉
炊飯コースとして、‘白米+新米コース’が選択された場合の炊飯工程について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0101】
スタートボタン943が操作されたことをCPU81が検知すると、図8のS101〜103と同様の処理が行われる。つまり、前処理において判定した炊飯コースに対応する制御プログラムPRの命令コードを実行し、各部を制御することにより、選択された炊飯コースに応じた炊飯工程が行われる。
【0102】
具体的には、S101〜S103、S118〜S128の処理は図8のフローチャートのそれと同じであるので説明は省略する。
【0103】
まず、モータ制御部75によりモータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を回転開始されて内鍋31内の米・水が攪拌開始されるとともに、浸漬工程が開始される(S304c、S305c)。浸漬工程が開始されるとタイマ83によって浸漬時間T1のタイムカウントが開始され(S306c)、モータ制御部75は、タイムカウント値に基づき浸漬時間T1が15分を指示していると判定すると(S307cでYES)、浸漬工程は終了するので、モータ駆動部95を介して攪拌用モータ131を停止させる(S308c)。これにより、浸漬工程における内鍋31内の攪拌動作は停止する。
【0104】
その後、ヒータ12に通電されて、加熱が開始される(S309c)。加熱開始されると吸水・糊化工程に入る(S310c)。温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K1が計測される(S311c)。計測に基づき鍋底壁面温度K1が所定値、たとえば55℃に達したことを検知すると(S312c)、温度センサ9の検出温度が所定温度を指示するように、ヒータ制御部76はヒータ駆動部92を介してヒータ9の通電量を制御しながら(S313c)、タイマ83の計時データに基づき吸水時間T2の計測を開始する(S314c)。次いで、温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が計測される(S315c)。設定された吸水時間T2(=15分間)が経過したしたことが検出され(S316cでYES)、かつ温度センサ9の検出温度に基づき鍋底壁面温度K2が60℃を指示すると判定すると(S317cでYES)、フルパワーによる加熱が開始される(S118)。
【0105】
以上のように白米+新米コースでは、糊化開始温度以下の浸漬工程の期間においてのみ、攪拌翼136による連続または間欠の攪拌が行われる。
【0106】
(攪拌部の他の構成)
上述の実施の形態では、攪拌翼136は内鍋31の底面と同一面内において回転するように設けられるが、攪拌用の部材の構成および取付態様はこれに限定されるものではない。
【0107】
図11には、他の実施の形態に係る攪拌部材の構成が示される。図11を参照して攪拌部材は蓋2に一体的に取付けられる。攪拌部材は、蓋2に内蔵される攪拌用モータ131、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されるプロペラ型の攪拌翼139、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸(モータ軸に連結される軸)を収容するためのケース138を含む。攪拌翼139を先端に保持する軸は、攪拌用モータ131のモータ軸に連結されており伸縮自在である。
【0108】
ケース138は、プロペラ型の攪拌翼139を保持する軸を伸縮させることにより収容したり、または内鍋31の底面方向に伸ばしたりする。蓋2がユーザにより開閉される時には、軸はケース138に収容された状態にある。
【0109】
蓋2が閉じられて炊飯工程が開始すると、図8〜図10に示した攪拌期間のみにおいて、攪拌翼139を保持する軸がケース138から内鍋31の底面方向に伸びて、プロペラ型の攪拌翼139は浸漬状態の米中に位置して、回転する。その他の期間は、軸はケース138内に収容された状態にある。
【0110】
攪拌期間においては、攪拌用モータ131が、前述と同様に米量に応じた回転数で回転する。モータの回転に連動してプロペラ型の攪拌翼139が回転するので、内鍋31内では水流が発生し、それに伴い米同士が水中で移動し、擦りあわされる。これにより、内鍋31の底面に設けられる攪拌翼136を用いる場合と同様に擦り合わせの効果が得られる。
【0111】
上述した攪拌部は浸漬した米内で羽が回転する構成であったが、内鍋31自体が回転するようにしてもよい。具体的には、回転台にシャフトを介してモータを接続し、回転台に内鍋31を載置する。動作においては、モータが駆動されて回転すると、シャフトを介して回転台が回転し、回転台に載せられた内鍋31が回転する。これにより、内鍋31内において米と水が流動しながら攪拌される。
【0112】
(咀嚼模擬試験)
発明者らは、上述の擦り合わせ期間を有する炊飯工程による炊飯後の飯の粘り、テクスチャー(咀嚼模擬)メータで測定した。その結果が図12に示される。
【0113】
テクスチャーの測定は以下のとおりである。H15×φ30mmのステンレス容器に薄膜の樹脂フィルム(食品用ラップフィルム)を敷き、樹脂フィルム上に飯15.0gを載せる。飯に荷重するプランジャーと同一素材の台を用いてステンレス容器を抑え、おにぎり形を作る。おにぎりは台の上にとりだす。これにより、同一量の加重をかけて同一形状に整形されたおにぎりが作られる。
【0114】
上述の手順で2つのおにぎりを作った。おにぎりに使用した米は滋賀県産キヌヒカリ、加水比1.5倍で炊飯した。1つのおにぎりは従来の炊飯器を使用して炊飯した米飯(擦り合わせなし)によるおにぎりであり、他方のおにぎりは、図7(B)に示すタイミングで擦り合わせを行う炊飯工程を経た米飯(擦り合わせあり)によるおにぎりである。
【0115】
これら2個のおにぎりを用いて炊飯の仕上がり(粘り強度)の評価を行う。具体的には、2個のおにぎりそれぞれの中央に、φ16mmの円柱型プランジャーを突き刺し、90%貫入時の硬さと90%変形させた後同じスピードで引き上げ時のマイナス側の荷重値を測定する。荷重スピードは1mm/sである。ここでプラス側の荷重値を硬さ、マイナス側の荷重値のピークを飯粒の粘り、あるいはマイナス側の面積を付着性による粘りとし、仕上がり(粘り強度)の評価を行なった。
【0116】
図12は、上述の手順に従った飯粒の粘り強度の試験結果の比較が示される。図12によれば、擦り合わせありの方が、従来の擦り合わせなしの炊飯よりも付着性による粘りの値が大きくなった。粘り荷重値はマイナス値が大きいほど粘りが大きくなる指標である。なお、図12においては、試料毎の粘り加重のバラツキEも示されている。
【0117】
図13には、本実施の形態に従って炊飯工程中に水中で米同士を擦り合わせた場合(図13の右側)と、擦り合わせしなかった場合(図13の左側)それぞれの、浸漬工程終了直後の米の表面を撮影した写真を示す。両方のケースともに、同一の種類の同一量の米について同一条件で米研ぎをした後に加水比1.5倍の水(水温20度)に20分浸漬した直後の状態を示す。図13の左側は、浸漬期間において擦り合わせをしていない為に米表面の色調にムラがあり、あまりツヤがない。これに対し、右側は浸漬期間(20分)のうち10分間は擦り合わせをした(攪拌用モータ131を500rpmで運転率80%で運転)ケースを指すが、色調にムラが少なく、よりつややかになっており、表面が僅かに削られ、平滑化されているのがわかる。参考までに、米の含水率を測定したところ、擦り合わせなしのケースでは28.7%であり、擦り合わせありでは29.2%であった。
【0118】
本実施の形態によれば、炊飯工程を開始後、内鍋31の水温が糊化開始温度以下である期間において、米同士を擦り合わせることで表面を僅かに削り、削られた米粉を水側に移行させることができる。それらの米粉はデンプン粒子を含むので、その後の加熱により粘りを生じる。炊飯工程の後半(蒸らし工程)では米の周りに存在していた水は米表面にもどり飯の一部となることから、従来よりもデンプン粒子がより多く含まれている「おねば」をコーティングすることとなり粘りの向上につながるものである。また、米表面は擦り合わせで均一化されていえるので、おねばを米表面に均一にコーティングすることが可能となる。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
9 温度センサ、12 ヒータ、31 内鍋、32 外鍋、93 表示部、94 操作部、71 コース判定部、72 制御手順決定部、73 米量判定部、74 回転数決定部、75 モータ制御部、76 ヒータ制御部、131 攪拌用モータ、136 攪拌翼。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、
前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、前記温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、を備える、炊飯器。
【請求項2】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間の全部または一部である、請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯工程は、前記鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、
前記擦り合わせ手段が駆動される前記一部の期間は、前記浸漬工程に対応する期間である、請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯工程は、前記鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、
前記擦り合わせ手段が駆動される前記一部の期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間のうち、前記浸漬工程に対応する期間を除いた期間である、請求項3に記載の炊飯器。
【請求項6】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、
前記炊飯器は、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の水に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、を備え、
前記制御方法は、
前記鍋の内部の温度を計測するステップと、
炊飯工程の開始命令の情報が入力されたことに応答して、計測される前記温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するステップと、を備える、炊飯器の制御方法。
【請求項1】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する時間および温度を制御する炊飯器であって、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の内部の温度を計測するための温度計測手段と、
前記鍋の水中に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、
炊飯工程の開始命令の情報を入力したことに応答して、前記温度計測手段が計測した温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するための制御手段と、を備える、炊飯器。
【請求項2】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間内において設定される、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記擦り合わせ手段が駆動される期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間の全部または一部である、請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯工程は、前記鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、
前記擦り合わせ手段が駆動される前記一部の期間は、前記浸漬工程に対応する期間である、請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯工程は、前記鍋の加熱に先立って、加熱をすることなく米を浸漬させるための浸漬工程を含み、
前記擦り合わせ手段が駆動される前記一部の期間は、前記炊飯工程を開始後から前記温度計測手段の計測温度が加熱により上昇し米の糊化開始温度を指示するまでの期間のうち、前記浸漬工程に対応する期間を除いた期間である、請求項3に記載の炊飯器。
【請求項6】
米と米を浸漬する水が収容された鍋を保持し、保持された前記鍋を加熱する炊飯器の制御方法であって、
前記炊飯器は、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記鍋の水に浸漬した米粒同士を擦り合わせるための擦り合わせ手段と、を備え、
前記制御方法は、
前記鍋の内部の温度を計測するステップと、
炊飯工程の開始命令の情報が入力されたことに応答して、計測される前記温度の情報を用いて、前記加熱手段および前記擦り合わせ手段を駆動するステップと、を備える、炊飯器の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−72743(P2011−72743A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230241(P2009−230241)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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