説明

炊飯器とレジスタントスターチの生成方法

【課題】効果的にレジスタントスターチを生成させることが可能な炊飯器とレジスタントスターチの生成方法を提供する。
【解決手段】炊飯器1は、炊飯鍋130と加熱部142と冷却部143とリリーフ弁122と調圧ボール125と制御部141とを備える。加熱部142は炊飯鍋130内を加熱する。冷却部143は炊飯鍋130内を冷却する。リリーフ弁122と調圧ボール125と加熱部142とは、炊飯鍋130内を加圧する。高圧炊飯行程は、加熱部142によって炊飯鍋130内を加熱し、リリーフ弁122と調圧ボール125と加熱部142によって炊飯鍋130内を加圧して炊飯鍋130に収容された生米を米飯にする行程である。冷却行程は、高圧炊飯行程の後、冷却部143によって炊飯鍋130内を冷却して、高圧炊飯行程において得られた米飯にレジスタントスターチを生成させる行程である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器とレジスタントスターチの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病予備軍が急増している。糖尿病または糖尿病予備軍とされる人は、国内だけで2,000万人を超えるとされる。血糖値が高めの糖尿病予備軍の人々にとって、食生活の改善による糖尿病予防は重要な課題である。糖尿病を予防するための食生活の改善においては、レジスタントスターチ(RS)を含む食品が注目されている。
【0003】
レジスタントスターチ(RS)とは、消化抵抗性デンプン、難消化性デンプンなどとも呼ばれ、通常の人の消化過程で消化されない、または、消化されにくいデンプンやデンプン由来の成分のことである。レジスタントスターチ(RS)には食物繊維に類似した作用があり、血糖値の上昇を抑制する効果があることが知られている。
【0004】
ところで、米は日本人が最も多く摂取する食品であるが、米飯食はパン食などに比べて、血糖値が高くなりやすいと言われている。そこで、米飯におけるレジスタントスターチ(RS)が注目されている。つまり、米飯中のデンプンの一部をレジスタントスターチ(RS)にすることで、米飯を摂取したときの血糖値の上昇を抑制することが注目されている。
【0005】
米飯中のデンプンの一部をレジスタントスターチ(RS)にすることを目的として、レジスタントスターチ(RS)含量を増加させた米飯を得ることができる炊飯器が開発されている。例えば、特開2008−154660号公報(特許文献1)には、米と水を加熱手段により加熱して米飯とする炊飯工程を実行後、米飯を冷却手段により冷却する冷却工程と、冷却した米飯を加熱手段により再加熱する再加熱工程とを実行するレジスタントスターチ生成コースを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−154660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、特開2008−154660号公報(特許文献1)に記載の炊飯器では、レジスタントスターチ(RS)を十分に増加させることができないことがわかった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、効果的にレジスタントスターチ(RS)を生成させることが可能な炊飯器とレジスタントスターチの生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った炊飯器は、容器と、加熱部と、冷却部と、加圧部と、制御部とを備える。容器は、米と水とを収容する。加熱部は、容器内を加熱する。冷却部は、容器内を冷却する。加圧部は、容器内を加圧する。制御部は、高圧炊飯行程と冷却行程とを行なうように、加熱部と冷却部と加圧部とを制御する。高圧炊飯行程は、加熱部によって容器内を加熱し、加圧部によって容器内を加圧して容器に収容された生米を米飯にする行程である。冷却行程は、高圧炊飯行程の後、冷却部によって容器内を冷却して、高圧炊飯行程において得られた米飯にレジスタントスターチを生成させる行程である。
【0010】
高圧炊飯行程においては、容器内の温度を高温、高圧に保って生米を米飯にする。高温高圧下で生米を米飯にすることによって、常圧で炊飯する場合と比較して、米粒内から流出するデンプン量が増加する。米粒内から流出したデンプンは、米粒内に留まっているデンプンと比較して、アミロース分子が自由に会合しやすく、アミロースの結晶化が起こりやすい。高圧炊飯行程の後、冷却行程を行うことによって、米粒内から流出したデンプン中のアミロースなどが結晶化し、レジスタントスターチ(RS)が増加する。
【0011】
このように、高圧炊飯行程を行なうことによって、常圧で炊飯する場合と比較して、米粒外に流出して結晶化しやすいデンプンを増加させることができる。結晶化しやすいデンプンを増加させることによって、高圧炊飯行程の後に冷却行程を行なったときに、より効果的にレジスタントスターチ(RS)を増加させることができる。
【0012】
このようにすることにより、効果的にレジスタントスターチを生成させることが可能な炊飯器を提供することができる。
【0013】
この発明に従った炊飯器においては、制御部は、冷却行程の後、加熱部が容器内の米飯を加熱する再加熱行程を行なうように加熱部を制御することが好ましい。
【0014】
冷却行程を行なうことにより、米飯の温度が食事として最適な温度よりも低くなる場合がある。そこで、再加熱行程を行なうことによって、炊飯器から米飯を取り出して、例えば電子レンジや加熱調理器などを用いて米飯を温める必要がなくなる。
【0015】
この発明に従ったレジスタントスターチの生成方法は、生米と水とを高圧下で加熱することによって米飯にする高圧炊飯行程と、高圧炊飯行程の後、得られた米飯を冷却することによってレジスタントスターチを生成させる冷却行程とを行なう。
【0016】
高圧炊飯行程においては、容器内の温度を高温、高圧に保って生米を米飯にする。高温高圧下で生米を米飯にすることによって、常圧で炊飯する場合と比較して、米粒内から流出するデンプン量が増加する。米粒内から流出したデンプンは、米粒内に留まっているデンプンと比較して、アミロース分子が自由に会合しやすく、アミロースの結晶化が起こりやすい。高圧炊飯行程の後、冷却行程を行うことによって、米粒内から流出したデンプン中のアミロースなどが結晶化し、レジスタントスターチ(RS)が増加する。
【0017】
このように、高圧炊飯行程を行なうことによって、常圧で炊飯する場合と比較して、米粒外に流出して結晶化しやすいデンプンを増加させることができる。結晶化しやすいデンプンを増加させることによって、高圧炊飯行程の後に冷却行程を行なったときに、より効果的にレジスタントスターチ(RS)を増加させることができる。
【0018】
このようにすることにより、効果的にレジスタントスターチを生成させることが可能なレジスタントスターチの生成方法を提供することができる。
【0019】
この発明に従ったレジスタントスターチの生成方法は、冷却行程において冷却された米飯を加熱する再加熱行程を行なうことが好ましい。
【0020】
冷却行程を行なうことにより、米飯の温度が食事として最適な温度よりも低くなる場合がある。そこで、再加熱行程を行なうことによって、米飯を温かくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、この発明によれば、効果的にレジスタントスターチを生成させることが可能な炊飯器とレジスタントスターチの生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一つの実施の形態の炊飯器の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一つの実施の形態の炊飯器における第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースの各行程を順に示すフローチャートである。
【図3】本発明の一つの実施の形態の炊飯器における第2のレジスタントスターチ(RS)生成コースの各行程を順に示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例における炊飯の各行程を順に示すフローチャートである。
【図5】比較例1における炊飯の各行程を順に示すフローチャートである。
【図6】比較例2における炊飯の各行程を順に示すフローチャートである。
【図7】比較例3における炊飯の各行程を順に示すフローチャートである。
【図8】実施例と比較例1〜3によって得られた米飯のRS率(wt%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の一つの実施の形態の炊飯器1は、本体110と、本体110の上方に配置される蓋体120とによって全体が覆われている。本体110には、凹部として外釜111が形成されている。外釜111の内部には、容器として炊飯鍋130が収容される。炊飯鍋130は、外釜111に着脱可能に収容される。炊飯鍋130はステンレスや鉄などの磁性体を含む材料によって構成されている。炊飯鍋130には米と水とを炊飯鍋130の内部に入れたり、米飯を炊飯鍋130から出したりするための開口が形成されている。炊飯鍋130は、開口を上にして外釜111内に収容される。
【0025】
蓋体120は、炊飯鍋130の開口を上方向から開閉可能であるように、本体110に取り付けられている。蓋体120において炊飯鍋130と対向する面には、パッキン126が配置されている。蓋体120が炊飯鍋130の開口を閉塞すると、パッキン126が炊飯鍋130の上端と蓋体120との間を密閉する。
【0026】
本体110の内部には、制御部141と、制御部141に制御される加熱部142と冷却部143と、温度センサ144とが収容されている。
【0027】
加熱部142は、誘導加熱コイルによって構成されている。加熱部142で炊飯鍋130を誘導加熱することによって、炊飯鍋130内を加熱することができる。なお、加熱部142は、ヒーターなど、他の方式であってもよい。
【0028】
冷却部143は、ペルチェ素子によって構成されている。冷却部143で炊飯鍋130を冷却することによって、炊飯鍋130内を冷却することができる。なお、冷却部143は、マイクロヒートポンプなど、他の方式であってもよい。
【0029】
温度センサ144は、炊飯鍋130の温度を検知して、制御部141に信号を送信する。温度センサ144は、炊飯鍋130の内部の温度を検知するセンサであってもよい。温度センサ144としては、炊飯鍋130に直接、接触して温度を測定する接触式のセンサでもよいし、炊飯鍋130内の温度を赤外線により測定する方式など、他の方式で温度を検知するセンサであってもよい。
【0030】
制御部141は、温度センサ144から送信された信号に基づいて、加熱部142と冷却部143を制御して、炊飯鍋130内の温度を調節する。後述するように、加熱部142は加圧部の一部を兼ねている。
【0031】
蓋体120には、蓋体120によって炊飯鍋130の開口部が塞がれたときに、炊飯鍋130の内部と炊飯器1の外部とを連通する排気通路121が形成されている。炊飯鍋130の開口の周囲と蓋体120との間にはパッキン126が配置されて密閉されているので、蓋体120が閉じられると、炊飯鍋130は排気通路121のみによって炊飯器1の外部と連通する。
【0032】
排気通路121内には、リリーフ弁122が設けられている。リリーフ弁122は、排気通路121を開放または閉塞する。リリーフ弁122が排気通路121を密封した状態で炊飯鍋130内を加熱することによって、炊飯鍋130内の蒸気圧を高めて、炊飯鍋130内の圧力を高めることができる。リリーフ弁122は、管状の形状をした弁座部材123と、弁座部材123の上に載置される調圧ボール125とによって構成されている。炊飯鍋130の内部の気体は、管状の弁座部材123の一方の端部から弁座部材123内に流入し、弁座部材123の他方の端部である排気口124から排気通路121内に排気される。調圧ボール125は、弁座部材123の排気口124を塞ぐように、弁座部材123の上に載置されている。加熱部142と調圧ボール125とリリーフ弁122は、加圧部の一例である。
【0033】
排気通路121は、炊飯鍋130の内部が所定の圧力よりも低い場合には、リリーフ弁122によって塞がれている。炊飯鍋130が加熱されて、炊飯鍋130内に収容された水分が蒸発し、炊飯鍋130内の蒸気圧が高まると、炊飯鍋130内の圧力が高くなる。炊飯鍋130内の圧力が、調圧ボール125の重さ(重力)を上回ると、調圧ボール125が炊飯鍋130内の圧力によって弁座部材123から持ち上げられる。調圧ボール125が弁座部材123から持ち上げられると、弁座部材123の排気口124が開放される。排気口124が開放されると、炊飯鍋130内の蒸気などが弁座部材123から排気通路121内に流入し、排気通路121を通って炊飯器1の外部に噴出して、炊飯鍋130内の圧力が低下する。
【0034】
つまり、炊飯器1では、炊飯鍋130内の圧力が所定の圧力に到達すれば、弁座部材123と排気通路121を通して炊飯鍋130から蒸気が排出される。炊飯鍋130内の蒸気が排出されると、炊飯鍋130内の圧力が低下する。炊飯鍋130内の圧力が所定の圧力を下回れば、調圧ボール125が再び弁座部材123の排気口124を閉塞し、炊飯鍋130が再度密閉される。
【0035】
このようにすることにより、炊飯鍋130の加熱を続けても、炊飯鍋130内の圧力は、所定の圧力前後に調整される。調圧ボール125の質量や弁座部材123の径を変更することによって、調圧ボール125が持ち上がるときの炊飯鍋130内の圧力、すなわち、炊飯鍋130内の最大の圧力を変更することができる。
【0036】
炊飯鍋130内の圧力が高められると、炊飯鍋130内に収容されている水の沸点が上昇する。そこで、炊飯鍋130内を加圧することによって、液体の水を存在させたままで100℃以上の高温にすることができる。このようにすることにより、100℃より高い温度で炊飯する高圧炊飯行程を行なうことができる。
【0037】
また、水の蒸気圧は温度によって決まるため、炊飯鍋130内の温度を制御することによって、調圧ボール125が持ち上げられない範囲の圧力であれば、炊飯鍋130内の圧力を、ほぼ所定の圧力に制御することができる。このように、この実施の形態の炊飯器1においては、温度を制御することによって炊飯鍋130内の圧力が制御される。
【0038】
以上のように構成される炊飯器1を用いて炊飯を行なうときの動作について説明する。初めに、炊飯器1の第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースによる炊飯について説明する。
【0039】
第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースでは、まず、高圧炊飯を行う。
【0040】
図2に示すように、第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースでは、ステップS101で、使用者が所定量の生米と水とを炊飯鍋130に収容する。ステップS102では、使用者は、炊飯器1の操作部(図示しない)を操作して炊飯を開始させる。
【0041】
炊飯が開始されると、ステップS103では、高圧炊飯行程が行なわれる。高圧炊飯行程では、制御部141が加熱部142に制御信号を送信し、加熱部142によって炊飯鍋130が加熱されて、炊飯鍋130の内部に収容されている米と水とが加熱される。時間が経過するとともに、徐々に炊飯鍋130内の温度が上昇し、炊飯鍋130内に収容されている米の糊化が進行する。また、炊飯鍋130内に収容されている水が蒸発する。この時、調圧ボール125によって弁座部材123の排気口124が密閉されているため、炊飯鍋130内の蒸気圧が高まり、炊飯鍋130内の圧力が高くなり、高圧で炊飯が行われる。制御部141は、温度センサ144が検知した炊飯鍋130の温度に基づいて、炊飯鍋130内が所定の圧力に加圧されるように、加熱部142を制御する。
【0042】
炊飯鍋130内の温度を所定の温度まで昇温させた後、一定時間保持する。このように、炊飯鍋130の内部を100℃、1気圧を上回る高温高圧の状態にすることで、炊飯鍋130内に収容されている米粒内からのデンプンの流出が多くなる。
【0043】
その後、制御部141は、加熱部142に制御信号を送信して15分間加熱を停止させて、蒸らしを行う。
【0044】
高圧炊飯行程の後、ステップS104では、冷却行程を行う。制御部141は、冷却部143を制御して、炊飯鍋130内を冷却させる。炊飯鍋130内は、所定の時間、所定の温度に保持される。炊飯鍋130内が冷却されて、所定の時間、所定の温度に保持されることによって、炊飯鍋130内において米粒から流出したデンプン中のアミロースなどが結晶化し、レジスタントスターチ(RS)が増加する。
【0045】
上述のように、第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースでは、高圧炊飯行程において高圧で炊飯する。
【0046】
高圧炊飯行程においては、炊飯鍋130内の温度を高温、高圧に保って生米を米飯にする。高温高圧下で生米を米飯にすることによって、常圧で炊飯する場合と比較して、米粒内から流出するデンプン量が増加する。米粒内から流出したデンプンは、米粒内に留まっているデンプンと比較して、アミロース分子が自由に会合しやすく、アミロースの結晶化が起こりやすい。高圧炊飯行程の後、冷却行程を行うことによって、米粒内から流出したデンプン中のアミロースなどが結晶化し、レジスタントスターチ(RS)が増加する。
【0047】
このように、高圧炊飯行程を行なうことによって、常圧で炊飯する場合と比較して、米粒外に流出して結晶化しやすいデンプンを増加させることができる。結晶化しやすいデンプンを増加させることによって、高圧炊飯行程の後に冷却行程を行なったときに、より効果的にレジスタントスターチ(RS)を増加させることができる。
【0048】
なお、米飯は、60℃以上の温度で食べられることが一般的である。しかしながら、冷却行程終了時には、冷却温度によっては、米飯の温度が60℃よりも低温になることがある。そこで、第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースにおいて得られた米飯を食べるときには、米飯を加熱する必要が生じる場合がある。米飯は、加熱されると、糊化する。糊化とは、デンプンが結晶性を失い、消化されやすい状態になることである。一般に、米の糊化に要する時間は、98℃では20分程度だが、90℃では2〜3時間、75℃では5〜6時間、65℃では10時間である(池田ひろ、木戸詔子、「調理学(食品・栄養科学シリーズ)」、化学同人、2000、p36)。このように、米は、高温になるほど、短時間で糊化する。
【0049】
米飯を長時間、高温に保つと、糊化によってレジスタントスターチ(RS)が消化されやすい状態になり、米飯のレジスタントスターチの含有率が低下してしまう恐れがある。したがって、炊飯器1で得られた米飯は、高温で長期間保存されることは好ましくなく、食べる直前に電子レンジなどにより瞬時に加熱されることが望ましい。
【0050】
以上のように、炊飯器1は、炊飯鍋130と、加熱部142と、冷却部143と、リリーフ弁122と調圧ボール125と、制御部141とを備える。炊飯鍋130は、米と水とを収容する。加熱部142は、炊飯鍋130内を加熱する。冷却部143は、炊飯鍋130内を冷却する。リリーフ弁122と調圧ボール125と加熱部142とは、炊飯鍋130内を加圧する。制御部141は、高圧炊飯行程と冷却行程とを行なうように、加熱部142と冷却部143とリリーフ弁122と調圧ボール125とを制御する。高圧炊飯行程は、加熱部142によって炊飯鍋130内を加熱し、リリーフ弁122と調圧ボール125と加熱部142によって炊飯鍋130内を加圧して炊飯鍋130に収容された生米を米飯にする行程である。冷却行程は、高圧炊飯行程の後、冷却部143によって炊飯鍋130内を冷却して、高圧炊飯行程において得られた米飯にレジスタントスターチを生成させる行程である。
【0051】
また、炊飯器1の第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースにおけるレジスタントスターチの生成方法は、生米と水とを高圧下で加熱することによって米飯にする高圧炊飯行程と、高圧炊飯行程の後、得られた米飯を冷却することによってレジスタントスターチを生成させる冷却行程とを行なう。
【0052】
このようにすることにより、効果的にレジスタントスターチを生成させることが可能な炊飯器1と、効果的にレジスタントスターチを生成させることが可能なレジスタントスターチの生成方法を提供することができる。
【0053】
次に、炊飯器1の第2のレジスタントスターチ(RS)生成コースによる炊飯について説明する。
【0054】
図3に示すように、第2のレジスタントスターチ(RS)生成コースは、ステップS201からステップS204までの各行程は、第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースのステップS101からステップS104までの各行程と同様である。
【0055】
第2のレジスタントスターチ(RS)生成コースが第1のレジスタントスターチ(RS)生成コースと異なる点としては、ステップS204の後に、再加熱行程が行なわれる。
【0056】
第2のレジスタントスターチ(RS)生成コースのステップS205では、制御部141は、加熱部142を制御して、炊飯鍋130を所定の温度まで加熱し、保温する。再加熱の温度としては、例えば65℃以下で、糊化に十分に時間がかかる温度であることが望ましい。このようにすることにより、米飯を炊飯鍋130から出して加熱しなおさなくても、すぐに食べることができる。
【0057】
以上のように、炊飯器1の第2のレジスタントスターチ(RS)生成コースにおいては、制御部141は、冷却行程の後、加熱部142が炊飯鍋130内の米飯を加熱する再加熱行程を行なうように加熱部142を制御する。
【0058】
冷却行程を行なうことにより、米飯の温度が食事として最適な温度よりも低くなる場合がある。そこで、再加熱行程を行なうことによって、炊飯器1から米飯を取り出して、例えば電子レンジや加熱調理器などを用いて米飯を温める必要がなくなる。
【0059】
また、炊飯器1の第2のレジスタントスターチ(RS)生成コースにおけるレジスタントスターチの生成方法は、冷却行程において冷却された米飯を加熱する再加熱行程を行なう。
【0060】
冷却行程を行なうことにより、米飯の温度が食事として最適な温度よりも低くなる場合がある。そこで、再加熱行程を行なうことによって、米飯を温かくすることができる。
【0061】
なお、本発明のレジスタントスターチの生成方法は、炊飯器に限らず、同様の温度・圧力シーケンスでの処理を行うことで、業務用炊飯装置や、レトルト食品製造装置などにも適用することができる。
【実施例】
【0062】
本発明の炊飯器を用いて得られた米飯中に、従来の炊飯器を用いて得られた米飯中と比較してレジスタントスターチが多く生成されていることを、以下の実験によって確認した。
【0063】
(実施例)
生米としては、福島県産のコシヒカリ(2008年産)を用いた。図4に示すように、ステップS301では、生米:水を質量比で1:1.3の割合で炊飯鍋に収容し、ステップS302では、炊飯器に炊飯を開始させた。ステップS303では高圧炊飯行程を行なった。高圧炊飯行程における炊飯時の圧力は、1.4atm、高圧炊飯行程における炊飯時の温度は、125℃であった。高圧炊飯行程においては、5分間、1.4atm、125℃に保持された。その後、ステップS304では、冷却行程として、5℃に冷却した。冷却行程では、48時間、5℃に保たれた。
【0064】
得られた米飯を凍結乾燥させた後、粉砕させた。粉砕された米飯を、パンクレアチンおよびアミログルコシダーゼで処理し、レジスタントスターチでないデンプンをグルコース化した。このようにして得られたグルコース量をAとした。
【0065】
残ったレジスタントスターチを変性エタノールで沈殿・分離後、水酸化カリウム水溶液に溶解し、その後中和し、アミログルコシダーゼでグルコース化した。このようにして得られたグルコース量をBとした。グルコース量Aとグルコース量Bの合計に対するグルコース量Bの割合、すなわち、B/(A+B)の値をRS率(レジスタントスターチ率)とした。上述のように本発明の炊飯器で得られた米飯について求められたRS率は、2.9wt%であった。
【0066】
次に、従来の炊飯器を用いて得られる米飯のレジスタントスターチの比率を求めた。従来の炊飯器を用いて得られる米飯は、次の(比較例1)〜(比較例3)のようにして炊飯された。
【0067】
(比較例1)
生米としては、福島県産のコシヒカリ(2008年産)を用いた。図5に示すように、ステップS401では、生米:水を質量比で1:1.3の割合で炊飯鍋に収容し、ステップS402では、炊飯器に炊飯を開始させた。ステップS403では、高圧炊飯行程を行なった。高圧炊飯行程における炊飯時の圧力は、1.4atm、高圧炊飯行程における炊飯時の温度は、125℃であった。高圧炊飯行程においては、5分間、1.4atm、125℃に保持された。冷却行程は行なわれなかった。上述のようにして求められたRS率は、1.3wt%であった。
【0068】
(比較例2)
生米としては、福島県産のコシヒカリ(2008年産)を用いた。図6に示すように、ステップS501では、生米:水を質量比で1:1.5の割合で炊飯鍋に収容し、ステップS502では炊飯器に炊飯を開始させた。ステップS503では、常圧で炊飯を行なった。炊飯中、加圧は行なわれず、ゲージ圧は0atmであった。炊飯時の温度は、100℃であった。炊飯時には、25分間、0atm、100℃に保持された。その後、ステップS504で、5℃に冷却した。48時間、5℃に保たれた。上述のようにして求められたRS率は、1.5wt%であった。
【0069】
(比較例3)
生米としては、福島県産のコシヒカリ(2008年産)を用いた。図7に示すように、ステップS601で生米:水を質量比で1:1.5の割合で炊飯鍋に収容し、ステップS602では炊飯器に炊飯を開始させた。ステップS603では、常圧で炊飯を行なった。炊飯中、加圧は行なわれず、ゲージ圧は0atmであった。炊飯時の温度は、100℃であった。炊飯時には、25分間、0atm、100℃に保持された。冷却行程は行なわれなかった。上述のようにして求められたRS率は、1.1wt%であった。
【0070】
(実施例)と(比較例1)〜(比較例3)の炊飯の条件と、得られた米飯のRS率を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1と図8に示すように、(実施例)と(比較例1)〜(比較例3)を比較すると、冷却行程を行なった場合には、冷却行程を行なわなかった場合と比較して、RS率が高い米飯が得られた。冷却行程を行なった(実施例)のRS率は2.9wt%、(比較例2)のRS率は1.5wt%であり、冷却行程を行なわなかった(比較例1)のRS率は1.3wt%、(比較例3)のRS率は1.1wt%であった。
【0073】
また、炊飯時に加圧する高圧炊飯行程と冷却行程の両方を行なった場合には、炊飯時に加圧しなかった場合と比較して、RS率が高い米飯が得られた。炊飯時に加圧を行なった(実施例)では、(比較例1)〜(比較例3)と比べてRS率が高かった。
【0074】
このように、(実施例)の米飯では、(比較例1)〜(比較例3)のいずれと比較しても、レジスタントスターチが多く生成されていた。この結果から、高圧炊飯行程と冷却行程の両方を行なうことによって、効果的にレジスタントスターチを生成することができることがわかった。
【0075】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【符号の説明】
【0076】
1:炊飯器、130:炊飯鍋、141:制御部、142:加熱部、143:冷却部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水とを収容する容器と、
前記容器内を加熱する加熱部と、
前記容器内を冷却する冷却部と、
前記容器内を加圧する加圧部と、
前記加熱部と前記冷却部と前記加圧部とを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記加熱部によって前記容器内を加熱し、前記加圧部によって前記容器内を加圧して前記容器に収容された生米を米飯にする高圧炊飯行程と、
前記高圧炊飯行程の後、前記冷却部によって前記容器内を冷却して、前記高圧炊飯行程において得られた米飯にレジスタントスターチを生成させる冷却行程とを行なうように前記加熱部と前記冷却部と前記加圧部とを制御する、炊飯器。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷却行程の後、前記加熱部が前記容器内の米飯を加熱する再加熱行程を行なうように前記加熱部を制御する、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
生米と水とを高圧下で加熱することによって米飯にする高圧炊飯行程と、
前記高圧炊飯行程の後、得られた米飯を冷却することによってレジスタントスターチを生成させる冷却行程とを行なう、レジスタントスターチの生成方法。
【請求項4】
前記冷却行程において冷却された米飯を加熱する再加熱行程を行なう、請求項3に記載のレジスタントスターチの生成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−24929(P2011−24929A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176167(P2009−176167)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】