説明

炊飯器用釜およびこの釜を備えた炊飯器

【課題】軽量で断熱効果及び蓄熱効果に優れ保温性が良好な炊飯器用釜を提供すること。
【解決手段】炊飯器用釜2は、内側層2とこの内側層の外側を覆う外側層2の積層体で形成されている。この内側層2は珪藻土層、外側層2が熱伝導性の低いステンレス又はチタン金属材からなる金属層でそれぞれ形成され、珪藻土層2は、その表面が耐熱性および耐水性を有する弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂材からなる保護層2で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器用釜およびこの釜を備えた炊飯器に係り、特に炊飯中および保温時に釜から外へ逃げる熱を抑えて省エネルギー化を実現した炊飯器用釜およびこの釜を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭において電気炊飯器は、既に必需品の一つとなっており、種々のタイプのものが開発され市販されている。この種の炊飯器は、炊飯時に釜内の圧力を常圧状態で炊飯するもの或いは所定の圧力にして炊飯するものがあり、一方で炊飯終了後にもほぼ炊き立て状態のご飯を食することができるように保温機能が設けられたり、タイマー機能が設けられたりして様々な機能が付加されて多機能化してきている。このため電気炊飯器の普及拡大とその多機能化にともない消費する電力量も増大してきている。
【0003】
一方、近年、日本のみならず世界的なエネルギー事情および地球温暖化を防止する施策の一つとしてのCO削減等の観点から、電気機器が消費する電力量を低減することが法的規制を含めて要求され、この規制もその目標値が年々高くなってきている。
【0004】
このような状況から、電気炊飯器においても炊飯時および保温時等において消費する電力量を低減する方策を採り入れたものが開発されている。
【0005】
炊飯器は、通常、上方に開口部を有する有底の釜と、この釜を収容して釜内の被炊飯物を加熱調理する炊飯器本体と、釜および炊飯器本体の開口部を覆う蓋体とで構成されている。
【0006】
この種の炊飯器は、釜の上方が開口しており、この開口部から釜内の熱が大量に放熱されるので、開口部からの放熱を抑えるために蓋体には、輻射熱を反射するアルミ箔や放熱を遮断する断熱部材が設けられている。また、釜内の放熱は上方の開口部からだけでなく釜の側方からも放熱されるので、釜収容部、すなわち内ケースの胴部にも断熱部材を設けて釜側方からの放熱を抑えるようにしたものもある。しかしながら、釜は炊飯器本体に着脱可能に収容されるので、内ケースと釜との間に隙間が形成されている。このため、内ケースに断熱部材を設けてもこの隙間からも熱が逃げてしまうことになる。
【0007】
そこで、釜に直接断熱部材を装着して、放熱を抑えるようにした釜が開発されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。例えば、下記特許文献1に記載された釜は、釜を熱伝導性の良好な金属材からなる釜主体およびこの釜主体の外側に接合された磁性金属材からなる発熱層とで形成し、釜の外側に複数の微細な閉塞空間からなる断熱層を形成したものである。この断熱層は、弗素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂などの耐熱性のプラスチック樹脂を主体とした塗料に、平均粒径が5〜80μmのアルミナ、チタニアなどのセラミックス或いはガラスなどを用いて内部が中空になるようにした粒状部材を混入した塗装層となっている。またその他に、釜の外側に単に樹脂層を設けたもの(下記特許文献2参照)、さらに、釜を2枚の金属製板材の間に中間金属材を介在させて接合したクラッド材で形成し、その釜の外側に粒状、粉末状の断熱材(例えば、珪藻土)を塗布したものもある(下記特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−211091号公報(段落〔0020〕〜〔0023〕、図1))
【特許文献2】特開平9−122010号公報(段落〔0016〕、図2)
【特許文献3】特開2002−345636公報(段落〔0013〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の断熱層は、耐熱性プラスチック樹脂からなる塗料に、内部に中空部を有する所定粒径のセラミックス等からなる粒状部材を混入した塗装層で形成されているので、断熱材に特殊な材料、特に内部を中空にする粒状部材を使用しなければならず、これらは簡単に入手できず高価なものになり、またその製法も面倒になっている。
【0009】
また、上記特許文献2、3の断熱層は、釜の外側に単に樹脂層を形成或いは粒状、粉末状の断熱材(例えば、珪藻土)を塗布したものであることから、断熱層の形成は容易になるが、断熱材を塗布しただけでは、断熱効果を上げるのに限界がある。また、珪藻土を塗布しただけでは、簡単に剥がれてしまい永続的な断熱効果は期待できない。
【0010】
本発明は、上記の従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、軽量で断熱性および保温性が優れた炊飯器用釜を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、軽量で断熱性および保温性が優れた炊飯器用釜を備えた炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記発明の目的は、以下の手段によって達成される。すなわち、請求項1に記載の炊飯器用釜の発明は、内側層とこの内側層の外側を覆う外側層の積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、前記内側層は珪藻土層、前記外側層は熱伝導率が低い金属材からなる金属層でそれぞれ形成され、前記珪藻土層は、その表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炊飯器用釜において、前記金属層の金属材はステンレス又はチタンであり、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の炊飯器用釜の発明は、内側層とこの内側層の外側を覆う外側層の積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、前記内側層は電気導電率が高い金属材からなる第1金属層、前記外側層は熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層でそれぞれ形成され、前記第1金属層の表面は珪藻土が混入された樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載の炊飯器用釜において、前記第1金属層の金属材はアルミニウム又は銅、前記第2金属層の金属材はステンレス又はチタン、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の炊飯器用釜の発明は、内側層と外側層との間に中間層が介在された積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、前記中間層は熱伝導率が低い金属材からなる第1金属層、前記外側層は珪藻土層および前記内側層は電気導電率が高い金属材からなる第2金属層でそれぞれ形成されて、前記第2金属層はその表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5に記載の炊飯器用釜において、前記第1金属層の金属材はステンレス又はチタン、前記第2金属層の金属材はアルミニウム又は銅、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の炊飯器用釜の発明は、内側層と外側層との間に中間層が介在された積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、前記中間層は電気導電率が高い金属材からなる第1金属層、前記外側層は熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層および前記内側層は珪藻土層でそれぞれ形成されて、前記珪藻土層は、その表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項7に記載の炊飯器用釜において、前記第1金属層の金属材はアルミニウム又は銅、前記第2金属層の金属材はステンレス又はチタン、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の炊飯器の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかの炊飯器用釜を、電磁誘導加熱手段を有する炊飯器本体に収容したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1、2の発明によれば、内側層と外側層との積層体からなる釜において、内側層は珪藻土層で形成されているので、この釜は土鍋のように熱伝導性が低い一方断熱効果及び蓄熱効果に優れ、保温性が良好で省エネにも資するものとなる。したがって、炊飯或いは保温中に釜内からの放熱が抑えられて熱エネルギーの節約ができ、かつ美味しいご飯を炊きあげることができる。また、この珪藻土は天然材であることから安値に簡単に入手できるので、釜を作製する材料費が安価になり、しかも釜を軽量にできる。また外側層は熱伝導率が低い金属材で形成されているので、釜からの放熱を抑制できる。また、電磁誘導加熱手段を備えた炊飯器に使用すると、この金属層にうず電流が発生して釜が自己発熱して釜内の被調理物を効率よく加熱調理することが可能になる。さらに、珪藻土層の表面は保護層で覆われているので、珪藻土層表面の亀裂、剥がれ等がなくなる。
【0022】
請求項3、4の発明によれば、内側層と外側層との積層体からなる釜において、内側層は電気導電率が高い金属材からなる第1金属層、外側層は熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層で形成されているので、電磁誘導加熱手段を備えた炊飯器に使用すると、第2金属層にうず電流が発生して釜が自己発熱して、この金属層で発生した熱を第1金属層を介して釜内の被調理物に速く伝えることができる。また保護層は珪藻土が混入された樹脂材で形成されているので、断熱性および保温性が向上し、炊飯或いは保温中に釜内からの放熱が抑制される。
【0023】
請求項5、6の発明によれば、内側層と外側層との間に中間層が介在された積層体からなる釜において、中間層は熱伝導率が低い金属材からなる第1金属層で形成されているので、釜からの放熱を抑制できる。また、電磁誘導加熱手段を備えた炊飯器に使用すると、この金属層にうず電流が発生して釜が自己発熱して釜内の被調理物を効率よく加熱調理することが可能になる。内側層は電気導電率が高い金属材からなる第2金属層で形成されているので、第1金属層で発生した熱を第2金属層を介して釜内の被調理物に速く伝えることができる。外側層は珪藻土層で形成されているので、土鍋のように熱伝導性が低く、断熱効果及び蓄熱効果に優れ保温性が良好な釜となる。したがって、炊飯或いは保温中に釜内からの放熱が抑えられて、熱エネルギーの節約ができる。さらに、珪藻土層の表面は保護層で覆われているので、珪藻土層表面の亀裂、剥がれ等がなくなる。
【0024】
請求項7、8の発明によれば、内側層と外側層との間に中間層が介在された積層体からなる釜において、中間層は、電気導電率が高い金属材からなる第1金属層で形成されているので、第2金属層で発生した熱をこの第1金属層を介して釜内の被調理物に速く伝えることができる。外側層は、熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層で形成されているので、釜からの放熱を抑制できる。また、電磁誘導加熱手段を備えた炊飯器に使用すると、この金属層にうず電流が発生して釜が自己発熱して釜内の被調理物を効率よく加熱調理することが可能になる。さらに内側層は珪藻土層で形成されているので、土鍋のように熱伝導性が低く断熱効果及び蓄熱効果に優れた保温性が良好な釜となる。したがって炊飯中或いは保温中に釜内からの放熱が抑えられて熱エネルギーの節約ができる。さらに珪藻土層の表面は保護層で覆われているので、珪藻土層表面の亀裂、剥がれ等がなくなる。
【0025】
請求項9の発明によれば、請求項1乃至請求項8のいずれかの炊飯器用釜を電磁誘導加熱手段を有する炊飯器本体に収容することにより、請求項1乃至8の効果を奏する炊飯器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器用釜およびこの釜を備えた炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器用釜およびこの釜を備えた炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。なお、図1は本発明の実施例1に係る電気炊飯器の縦断面図である。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施形態に係る電気炊飯器(以下、炊飯器という)1は、炊飯中の釜内の圧力を例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器であり、図1に示すように、上方が開口し深底の容器からなる釜2と、上方が開口しこの開口から釜2を収容し釜内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体8と、釜2および炊飯器本体8の開口を覆う開閉自在な蓋体14と、を有している。
【0028】
釜2は、上方に被炊飯物が投入される大きさの開口を有し、深底の筒状容器からなりステンレス鋼等の鉄系金属材で形成されている。この釜2の構造は後に詳述する。
【0029】
上方の開口部には、開口縁が所定長さ外方へ延びたフランジ2が形成され、このフランジ2は、炊飯器本体8内に釜2が収容されたときに、外装ケース3の肩部に係止される。
【0030】
炊飯器本体8は、上方に釜2が収容される大きさの開口を有し有底で釜2の外形と略同じ形状の内ケース4と、この内ケース4を保持する外装ケース3とからなり、これらのケース3、4は、合成樹脂材の成型体で形成されている。また、内ケース4と外装ケース3との間に所定の隙間Sが形成され、この隙間Sが機器取付けおよび通風空間スペースとなっている。この隙間Sには、ファンモータ9、制御基板10等が装着されている。
【0031】
この隙間Sを設けることにより、内ケース4と外装ケース3との間を断熱でき、またファンモータ9を駆動させることによって制御基板10等が冷却される。
【0032】
内ケース4は、釜2の外形と略同じ形状を有し深底の筒状容器となっている。内ケース4の底部4には、その中心部に所定大きさの開口部4A'が設けられている。この開口部4A'には釜底の温度を検知する温度センサ7が設けられている。この温度センサ7により、釜底の温度を検知して釜2内の炊飯量等が検出される。また、底部4の外底壁面には、同心状に分巻された電磁誘導コイル6、6が装着されている。これらの電磁誘導コイル6、6により、釜2にうず電流が誘起されて釜2が自己発熱する。なお、内ケース4の胴部には、スペース4SPが設けられて、このスペース4SPに補助加熱コイル5が設けられている。
【0033】
この胴部上方の開口部には、開口縁が所定長さ外方へ延びたフランジ4が形成され、このフランジ4が外装ケース3の肩部に係止されている。
【0034】
外装ケース3は内ケース4との間に所定のスペースが設けられ内ケース4より大きな外形を有した化粧ボックスとなっている。また、この外装ケース3の前面には操作パネル12が装着されている。この操作パネル12には、各種の操作スイッチ類およびそれらの各種スイッチ類によって設定される設定状態を表示する表示装置11が設けられている。
【0035】
蓋体14は、炊飯器本体の内ケース4の上方開口部を覆う内蓋15と、この内蓋15の上方に位置する中蓋16と、この中蓋16に装着されて釜2内の圧力を制御する圧力弁機構17と、全体を覆う表蓋カバー18とを有し、一端が本体8にヒンジ機構13で連結されている。この蓋体は、他端に蓋体の開放をロックする係止手段19が設けられている。
【0036】
圧力弁機構17は、圧力孔17を有する弁座17と、弁座17の上に自重により圧力孔17を塞ぐように載置される金属性のボール17と、このボール17を覆うカバー17と、ボール17を移動させるプランジャ17とで構成されている。この圧力弁機構17は、釜2内の圧力とボール17の自重とのバランスによって、ボール17が圧力孔17上に載置されたり離れたりし、ボール17がこのように移動することによって圧力孔17が開閉される。
【0037】
このボール17はプランジャ17によって作動される。すなわち、プランジャ17は、不図示の制御手段からの出力を受けていないときは、ロッドがシリンダから突出して圧力孔17上のボール17を圧力孔17の横方向に押し、この圧力孔17を強制的に開放する。また、プランジャ17が制御手段の出力を受けた時にはロッドがシリンダ内に引き込まれる。このときボール17は、自重により圧力孔17上に戻り、この圧力孔17が閉塞される。
【0038】
このようにしてプランジャ17は、圧力弁開放機構として動作し、圧力弁と圧力弁開放機構とは炊飯工程中に加圧された釜内の圧力を強制的に低下させる。また、釜2内が異常に加圧された時(例えば炊飯中に圧力弁が故障して開かないとき)に開放して釜2内の圧力を逃がす安全弁を有している。
【0039】
次に図2を参照して釜の構造を説明する。なお、図2は釜を示し、図2(a)は釜の縦断面図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大断面図である。
【0040】
釜2は上方に被炊飯物が投入される大きさの開口を有し深底の筒状容器で形成されている。この釜2は、内側層2と、この内側層2の外側に外側層2および内側に保護層2を有する積層体で形成されている。
【0041】
内側層2は所定厚さの珪藻土層で形成されている。また外側層2は熱伝導率が低い金属材、例えばステンレス又はチタンからなる金属層で形成されている。さらに保護層2は耐熱性および耐水性を有する樹脂材、例えば、弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材で形成されている。
【0042】
この釜2は外側層2を熱伝導率が低い金属材にすることにより、電磁誘導コイルによりうず電流が発生して自己発熱することができる。またこの外側層2により放熱を抑えることができる。また、内側層2を所定厚さの珪藻土層で形成することにより、この珪藻土層は、後述する特性を有しているので、多数の微細気孔を備えた多孔質層となっている。したがって、この多孔質空隙により断熱効果が発揮され保温効果がよくなる。この珪藻土は、また天然材で豊富に存在し、安値で簡単に入手できるので材料費が安価になる。また釜の重さを軽量にできる。さらに、珪藻土層は、乾燥或いは素焼き等の段階で亀裂或いは破損する恐れがあるので、この層の表面に保護層が設けられている。各保護層は樹脂材の皮膜で形成されているので、表面の空隙が目詰まりされて機械的強度が強くなる。
【0043】
以下に、珪藻土の特性および珪藻土層を有する釜の造り方を説明する。
【0044】
珪藻土は、珪藻の遺骸が堆積された天然に存在する天然物であって、珪藻の外面は、珪酸質の基衣或いは組織からなる微細な水生植物の藻類、いわゆる植物性プランクトンの一種となっている。この植物性プランクトンは、体の周囲に珪酸(SiO2 )質なる殻が造られ、珪藻が死ぬことで原形質が分解されてなくなり珪酸質の殻のみが残り、そのまま海底や湖底に珪藻殻の堆積体として沈積している。しかしながら、珪藻殻のみの堆積は少なく堆積条件によって各種の粘土や砂、海綿、放散虫、鞭毛虫など生物の遺骸などが混入されたものとなっており、その珪藻土の色は白色ないし黄灰色をなしている。また、この珪藻土は、平均で約25μm程度であり、表面および内部に1μm〜0.1μm程度の微細な気孔を多数有している。この微細孔は木炭の5000〜6000倍となっている。しかも軽量な土となっている。したがって、この珪藻土層は、珪藻土の特性から、内部が微細な空隙を有する多孔質層となる。
【0045】
次に、珪藻土層を有する釜の造り方を説明する。採掘された所定の大きさの塊からなる珪藻土を粉砕機によって粉砕加工し、所定粒度、例えば約1mm以下の粉末を作成する。次いで、この粉末に水を混入して土練機によって所定時間、例えば約10分間水練りし、この水練りをこの時間のインターバルで数回繰り返して粘性のある塊を作成する。なお、より粘性を出すためにバインダーを加えるのが好ましい。
【0046】
次いで、予め釜形状に成型して置いたステンレス材からなる容器内に、珪藻土塊を延ばして貼り付け、自然乾燥させた後に、所定温度、例えば約700〜1200℃前後の焼成温度で所定時間、例えば15時間程度素焼きする。その後、珪藻土層の表面を弗素樹脂でコートする。
【実施例2】
【0047】
次に、図3を参照して本発明の実施例2に係る炊飯器用釜およびこの釜を備えた炊飯器を説明する。なお、図3は本発明の実施例2に係る炊飯器用釜を示し、図3(a)は釜の縦断面図、図3(b)は図3(a)のB部分の拡大断面図である。
【0048】
この釜を収容する炊飯器は、実施例1と同じ構成のものを使用するので、その説明を省略する。
【0049】
この炊飯器用釜21は、内側層2と、この内側層の外側が外側層2で覆われた積層体で形成された有底筒状をなし、内側層2は、電気導電率が高い金属材、例えばアルミニウム又は銅からなる第1金属層で形成されて、この第1金属層(内側層2)の外側は熱伝導率が低い金属材、例えばステンレス又はチタンからなる第2金属層(外側層2)で覆われ、かつ第1金属層2の表面は珪藻土が混入された保護層2AFで覆われた構成を有している。保護層2AFの樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材で形成されている。
【0050】
この釜21は、内側層と外側層との積層体からなる釜において、内側層2は電気導電率が高い金属材からなる第1金属層、外側層2は熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層で形成されているので、電磁誘導加熱手段を備えた炊飯器に使用すると、第2金属層2にうず電流が発生して釜21が自己発熱して、この第2金属層2で発生した熱を第1金属層2を介して釜2内の被調理物に速く伝えることができる。また、保護層は珪藻土が混入された樹脂材で形成されているので、断熱効果及び蓄熱効果に優れ保温性が向上し炊飯中或いは保温中に釜内からの放熱が抑制される。
【実施例3】
【0051】
図4は本発明の実施例3に係る炊飯器用釜を示し、図4(a)は釜の縦断面図、図4(b)は図4(a)のC部分の拡大断面図である。なお、この釜を収容する炊飯器は実施例1と同じ構成のものを使用するので、その説明を省略する。
【0052】
この炊飯器用釜22は、内側層2と外側層2との間に中間層2が介在された積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、中間層2は熱伝導率が低い金属材、例えばステンレス又はチタンからなる第1金属層、外側層2は珪藻土層および内側層2は電気導電率が高い金属材、例えばアルミニウム又は銅からなる第2金属層でそれぞれ形成されて、第2金属層2は、その表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層2で覆われた構成を有している。保護層2の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材で形成されている。
【0053】
この釜22によると、中間層2は熱伝導率が低い金属材からなる第1金属層で形成されているので、釜からの放熱を抑制できる。また、電磁誘導加熱手段を備えた炊飯器に使用すると、この第1金属層2にうず電流が発生して釜が自己発熱して釜2内の被調理物を効率よく加熱調理することが可能になる。内側層2は電気導電率が高い金属材からなる第2金属層で形成されているので、第1金属層2で発生した熱を第2金属層2を介して釜22内の被調理物に速く伝えることができる。外側層2は珪藻土層で形成されているので、土鍋のように熱伝導性が低く保温性が良好な釜となる。したがって、炊飯或いは保温中に釜内からの放熱が抑えられて熱エネルギーの節約ができる。さらに、珪藻土層の表面は保護層で覆われているので、珪藻土層表面の亀裂、剥がれ等がなくなる。なお、この珪藻土の外面を樹脂材からなる保護層で覆うのが好ましい。これにより、珪藻土層の亀裂或いは剥離をなくすることができる。
【実施例4】
【0054】
図5は本発明の実施例4に係る炊飯器用釜を示し、図5(a)は釜の縦断面図、図5(b)は図5(a)のD部分の拡大断面図である。
【0055】
この釜23は、内側層2と外側層2との間に中間層2が介在された積層体からなる有底筒状の釜において、中間層2は、電気導電率が高い金属材、例えばアルミニウム又は銅からなる第1金属層、外側層2は熱伝導率が低い金属材、例えばステンレス又はチタンからなる第2金属層および内側層2は珪藻土層でそれぞれ形成され、この珪藻土層2は、その表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層2で覆われている。保護層2の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材で形成されている。この釜は、中間層2は電気導電率が高い金属材からなる第1金属層で形成されているので、第2金属層2で発生した熱をこの第1金属層2を介して釜23内の被調理物に速く伝えることができる。外側層2は、熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層で形成されているので、釜23からの放熱を抑制できる。また、電磁誘導加熱手段を備えた炊飯器に使用すると、この第2金属層2にうず電流が発生して釜が自己発熱して釜23内の被調理物を効率よく加熱調理することが可能になる。さらに内側層2は珪藻土層で形成されているので、土鍋のように熱伝導性が低く、保温性が良好な釜となる。したがって、炊飯或いは保温中に釜内からの放熱が抑えられて、熱エネルギーの節約ができ、また美味しいご飯を炊き上げることができる。さらに、珪藻土層の表面は保護層で覆われているので、珪藻土層表面の亀裂、剥がれ等がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る電気炊飯器の縦断面図である。
【図2】図2は図1の釜を示し、図2(a)は釜の縦断面図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例2に係る炊飯器用釜を示し、図3(a)は釜の縦断面図、図3(b)は図3(a)のB部分の拡大断面図である。
【図4】図4は本発明の実施例3に係る炊飯器用釜を示し、図4(a)は釜の縦断面図、図4(b)は図4(a)のC部分の拡大断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例4に係る炊飯器用釜を示し、図5(a)は釜の縦断面図、図5(b)は図5(a)のD部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 電気炊飯器
2、21、22、23 釜
内側層
外側層
中間層
、2AF 保護層
4 内ケース
、6 電磁誘導コイル
7 温度センサ
8 炊飯器本体
14 蓋体
17 圧力弁機構
19 係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側層とこの内側層の外側を覆う外側層の積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、前記内側層は珪藻土層、前記外側層は熱伝導率が低い金属材からなる金属層でそれぞれ形成され、前記珪藻土層は、その表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする炊飯器用釜。
【請求項2】
前記金属層の金属材はステンレス又はチタンであり、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器用釜。
【請求項3】
内側層とこの内側層の外側を覆う外側層の積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、
前記内側層は電気導電率が高い金属材からなる第1金属層、前記外側層は熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層でそれぞれ形成され、前記第1金属層の表面は珪藻土が混入された樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする炊飯器用釜。
【請求項4】
前記第1金属層の金属材はアルミニウム又は銅、前記第2金属層の金属材はステンレス又はチタン、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする請求項3に記載の炊飯器用釜。
【請求項5】
内側層と外側層との間に中間層が介在された積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、前記中間層は熱伝導率が低い金属材からなる第1金属層、前記外側層は珪藻土層および前記内側層は電気導電率が高い金属材からなる第2金属層でそれぞれ形成されて、前記第2金属層はその表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする炊飯器用釜。
【請求項6】
前記第1金属層の金属材はステンレス又はチタン、前記第2金属層の金属材はアルミニウム又は銅、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする請求項5に記載の炊飯器用釜。
【請求項7】
内側層と外側層との間に中間層が介在された積層体からなる有底筒状の炊飯器用釜において、前記中間層は電気導電率が高い金属材からなる第1金属層、前記外側層は熱伝導率が低い金属材からなる第2金属層および前記内側層は珪藻土層でそれぞれ形成されて、前記珪藻土層は、その表面が耐熱性および耐水性を有する樹脂材からなる保護層で覆われていることを特徴とする炊飯器用釜。
【請求項8】
前記第1金属層の金属材はアルミニウム又は銅、前記第2金属層の金属材はステンレス又はチタン、前記保護層の樹脂材は弗素樹脂、シリコーン樹脂およびポリエーテルサルフォン樹脂のいずれかの樹脂材であることを特徴とする請求項7に記載の炊飯器用釜。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかの炊飯器用釜を、電磁誘導加熱手段を有する炊飯器本体に収容したことを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154832(P2008−154832A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347632(P2006−347632)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】