説明

炊飯器

【課題】 御飯をムラなく炊き上げると共に、炊き上がり後の御飯の上面を平坦
にして視覚的な美味効果を奏する炊飯器を提供する。
【解決手段】 被炊飯物を収容する鍋2と、被炊飯物の加熱手段4と、鍋の蓋体5と、鍋内を略一定の所定圧力とするように鍋内と外気とを連通或は遮断する圧力弁14と、圧力弁を強制的に開状態にする圧力弁開放機構18と、加熱手段の加熱量を制御し圧力弁開放機構による圧力弁の開作動の制御を行う制御手段20と、白米・標準(ふつう)炊飯コースの選択手段とを備え、この制御手段は、白米・標準(ふつう)炊飯コースを実行する場合の沸騰維持工程中における圧力弁の圧力弁開放機構による開作動の回数を、炊飯量が多い場合に少なく、炊飯量が少ない場合に多くなるように設定し、圧力弁の開作動時におねばや米粒が飛び出すのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍋内を加圧状態にして炊飯を行うことにより、短時間で美味しい御飯を炊き上げるようにした圧力式炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力式炊飯器を用いた炊飯では、鍋内で米に水を吸水させる吸水工程、吸水後
にフルパワーで急速に昇温加熱して沸騰状態に至らせる立上加熱工程、加圧され
た鍋内で沸騰状態を保って米を炊き続ける沸騰維持工程、沸騰維持工程終了後に
米をむらすむらし工程の各工程を経て炊飯を終了するのが一般的である。
【0003】
圧力式炊飯器による炊飯の大きな特長は、炊飯時、特に沸騰開始前や沸騰中に
鍋内の圧力を高くし、加熱と圧力の相乗効果によって水を米粒内に短時間で浸透
させるようにして炊飯時間を短縮し、結果として軟らかい御飯を炊き上げるとこ
ろにある。この種の圧力式炊飯器については、例えば、特許文献1、2に開示さ
れている。
【特許文献1】特開平6-22710号公報
【特許文献2】特開2001-137113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近の炊飯器は、水と米を入れた鍋を加熱する誘導加熱コイルによる渦電流で発熱させて加熱する所謂IH炊飯器なるものが主流となっているが、鍋自体が発熱する構造であるため、鍋の内側壁に近い領域にある米は十分に加熱されるものの、内側壁から離れた鍋の中央部から中央上部にある米は加熱不足となり、炊きムラが生じやすい構造になっていた。
【0005】
また、このような炊飯器による炊き上がり状態を見ると、鍋の中央部や上部の
中心部(炊き上がった御飯上面の中心部)辺りに存在する米は加熱不足のため、
内側壁付近の米ほどには膨れておらず、蓋体を開けた時に見られる御飯上面の形
状が平坦面でなく、上部中心部が低くて上部周辺(鍋の内側壁付近)が高くなっ
た皿形状となり、視覚的美味効果に欠けていた。
さらには、上部中心部の加熱不足となっている御飯は、芯が残っていて美味しさ
に欠けていた。
【0006】
一方、IH炊飯器とは異なる方式であって、古くから商品化されているヒータ
を内装した熱板を鍋の底に密着する熱板式の炊飯器は、ヒータによって鍋底全体
を加熱するものであるが、鍋底部の集中的な加熱により鍋内に炊きムラを生じ、
炊き上がったときの御飯上面が山形となり、全体が均一に炊き上がらない。
【0007】
そこで本発明は、御飯をムラなく炊き上げることができるとともに、炊き上が
り後の御飯の上面が平坦になるようにして視覚的な美味効果を奏することができ
る炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水と米とを含む被炊飯物を収容する鍋と、鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段と、鍋の開口部を塞ぐ蓋体と、鍋内の圧力を略一定の所定の圧力とするように鍋内と外気とを連通或は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開状態にする圧力弁開放機構と、加熱手段の加熱量を制御するとともに圧力弁開放機構による圧力弁の開作動の制御を行う制御手段と、少なくとも白米・標準(ふつう)炊飯コースを含む炊飯内容の種別を分類する炊飯コース群から使用者が任意の炊飯コースを選択する選択手段とを備え、
前記制御手段は、白米・標準(ふつう)炊飯コースを実行する場合の沸騰維持工程中における圧力弁の圧力弁開放機構による開作動の回数を、炊飯量が多い場合に少なく、炊飯量が少ない場合に多くなるように設定したものである。
【発明の効果】
【0009】
通常、炊飯量が多い場合には、鍋内の水位が高くなって炊飯物に含まれる米が蓋体に接近するため、開閉回数を多くすれば圧力弁の開閉機構を介しておねばや米粒が飛び出しやすくなるが、このような構成にすることにより、鍋内の水位が高い炊飯量が多い場合に沸騰維持工程中における圧力弁の開作動の回数を少なくしていることから、おねばや米粒が圧力弁から飛び出すことがなくなる。一方、鍋内の水位が低い炊飯量が多い場合に沸騰維持工程中における圧力弁の開作動の回数を多くしていることから、少ない水量であっても水と米を攪拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る炊飯器について説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態に係る炊飯器による炊飯工程の概要を示すフローチ
ャート(「玄米・ふつう炊飯コース」「白米・ふつう炊飯コース」「白米・すし
めし炊飯コース」の3つの炊飯コースが選択できるフロー)、図2は同炊飯器の
一部断面図(蓋体と圧力弁と圧力弁開放機構の部分断面図を示す)、図3は図2
の部分拡大断面図(圧力弁と圧力弁開放機構の部分拡大図を示す)、図4は図1
に示すフローチャートの「玄米・ふつう炊飯コース」のさらに詳細なフローチャ
ート、図5は図4に示すフローチャートに続くフローチャート、図6は図1に示
すフローチャートの「白米・ふつう炊飯コース」のさらに詳細なフローチャート
、図7は図6に示すフローチャートに続くフローチャート、図8は図1に示すフ
ローチャートの「白米・応用(すしめし)炊飯コース」のさらに詳細なフローチ
ャート、図9は図8に示すフローチャートに続くフローチャート、図10は「玄
米・ふつう炊飯コース」の特性図、図11は「白米・ふつう炊飯コース」の特性
図、図12は「白米・応用(すしめし)炊飯コース」の特性図である。
【0012】
図2、図3において(1)は炊飯器本体、(2)は水と米を収容するアルミニウムとステンレスのクラッド材よりなる鍋、(3)は鍋(2)を収納するケースで、外側壁には外底壁と共に誘導コイルによる加熱手段(4)(外底壁は図示せず)を取り付けている。
【0013】
(5)は鍋(2)の開口部(6)を覆う開閉自在の蓋体で、下側に設けた着脱
自在な内蓋(7)とその上方に設けた外蓋(8)とから構成される。
【0014】
内蓋(7)には、弁孔(9)を有する弁座(10)と、弁座(10)の上に自
重により弁孔(9)を塞ぐように載置される金属性のボール(11)と、ボール
(11)を覆うカバー(12)とからなる圧力弁(14)を備えている。この圧
力弁(14)は、鍋(2)内の圧力とボール(11)の自重とのバランスによっ
て、ボール(11)が弁孔(9)上に載置されたり離れたりすることになる。そ
のため、ボール(11)の自重によって弁孔(9)を塞いだ状態であるか否かに
よって弁孔(9)が開閉することになる。
【0015】
したがって、圧力弁(14)の開閉機構(18)は、弁孔(9)、弁座(10
)、ボール(11)、及びカバー(12)により形成されている。
【0016】
また、鍋(2)内が異常に加圧された時(例えば炊飯中に圧力弁(14)が故
障して開かないとき)に開放して鍋内の圧力を逃がす安全弁(13)を備えてい
る。
【0017】
外蓋(8)内の圧力弁(14)にはプランジャ(17)が取り付けられている。
このプランジャ(17)は、制御手段(20)により制御される。すなわち、プランジャ(17)は、制御手段(20)からの出力を受けていない通常状態の時には、ロッド(17a)がシリンダ(17b)から突出して弁孔(9)上のボール(11)を弁孔(9)の横方向に押し、弁孔(9)を強制的に開放する。また、
プランジャ(17)は、制御手段(20)の出力を受けた時にはロッド(17a)がシリンダ(17b)内に没入する。このときボール(11)は、自重により弁孔(9)上に戻り、弁孔(9)を閉塞する。
【0018】
このようにしてプランジャ(17)は、圧力弁開放機構として動作し、圧力弁
と圧力弁開放機構とは炊飯工程中に加圧された鍋内の圧力を強制的に降下させる
ための圧力変更手段として用いられる。
【0019】
また、外蓋(8)には弁孔(9)を介して鍋(2)内と大気とを連通し、鍋(
2)内の圧力や蒸気を大気中に逃がす蒸気口(15)を有している。
【0020】
また、炊飯器本体(1)は、炊飯コースを選択するための選択手段(16)を
備えている。
【0021】
また、制御手段(20)は、周知のようにCPU、ROM、RAMなどで構成
されたハードウェアと、後述するフローチャートの内容を実行するためのソフト
ウェアーとにより構成される。
【0022】
なお、図示しないが鍋底には鍋底温度を検出するための温度センサー、蓋体(
8)には適切な位置に蒸気温度を検出する蒸気センサーが取り付けられており、
温度情報が制御手段(20)に送られるように構成されている。
【0023】
また、図示しないが制御手段(20)は、各種タイマーとして機能する時計を
内蔵しており、炊飯工程で必要とする各種の経過時間をモニタしている。
【0024】
次に、本発明の実施の形態に係る炊飯器の機能について、図1に示すフローチ
ャートに基づき説明する。始めに、本実施の形態に係る炊飯器の基本的な機能に
ついて述べる。この炊飯器には、図1に示すように、基本的には次の3つの炊飯
コースが備えられている。この3つの炊飯コースは、「玄米・標準(ふつう)炊
飯コースA」と、「白米・標準(ふつう)炊飯コースB」と、「白米・応用(す
しめし)炊飯コースC」であって、使用者はこれら3つの炊飯コースのうちの一
つを、選択手段(16)により適宜選択することができる。
【0025】
各炊飯コースA、B、Cは、基本的に糊化温度以下(例えば55度)で吸水さ
せる吸水工程と、水と米とを全加熱(フルパワー)で加熱する立上加熱工程と、
沸騰状態を保つ沸騰維持工程と、沸騰維持終了後に行うむらし工程1(むらし前
半)と、むらし工程1の終了後に行う追炊き工程と、むらしの仕上げを行うむら
し工程2(むらし後半)の各工程を順次実行する。
【0026】
一般に、玄米は糠を取り除いていないために吸水度合が低い。これに対し、白
米は糠部分が少なく吸水性がよい。そのため玄米を炊飯するときは、白米を標準
的に(白御飯としてふつうに)炊飯するときよりも水を吸収しやすくする必要が
ある。
【0027】
よって、玄米の炊飯では、白米の炊飯に比べて炊飯開始初期からできるだけ鍋
内の圧力を高い状態を継続するようにして炊飯することを基本としている。
【0028】
一方、白米を標準的に炊飯するのではなく、すしめしやピラフ用に炊飯すると
きは、炊き上がり後の米粒の周囲に付着する水分を少なくする必要がある。この
ため、すしめし、ピラフ用に白米を炊飯するときには、白米の吸水量を少なくす
ることが好ましく、そのため沸騰時の鍋内の圧力を低くする必要がある。
【0029】
即ち、すしめしに使用する白米の状態は、パラパラに近い方が握りやすい。ま
た、ピラフに使用する白米の米粒の状態は、パラパラに近い方がしゃもじによる
具と米粒とのかき混ぜがしやすくなる。
【0030】
また、おかゆに使用する白米の場合は、白米が糊状になるのを防止するため、
浸透する水が過剰にならないようにする必要がある。
【0031】
よって、すしめしやピラフ、おかゆに代表される炊飯は、米の吸水量を抑える
ために、炊飯開始初期から鍋内の圧力を高めることなく炊飯することを基本とし
ている。
【0032】
前述した3つの炊飯コースは、以上のことを実施するものであり、以下に各炊
飯コースを具体的に説明する。図1に示すように、先ず、所定量の水と米を収容
した鍋(2)をケース(3)内に収納し蓋体(5)を閉める。つづいて、選択手
段(16)により炊飯コースを選択する(S1)。炊飯コースを選択すると(S
2)、ケースの外底壁と外側壁を加熱する加熱手段(4)(コイル)に高周波電
流が印加され、鍋との間に渦電流が流れて鍋が発熱し水と米とが加熱される。
【0033】
ここでは選択手段(16)によって「玄米・標準(ふつう)炊飯コースA」が
選択された場合について説明する(S3)。図1のA、図4及び図5のフローチ
ャート、並びに図10の特性図に示すとおり、加熱手段(4)により加熱を開始
し(S4)、同時に圧力弁(14)を開作動のまま(プランジャ(17)はノー
マル状態でロッドが突出し、ボール(11)を弁孔(9)上から移動させた開作
動状態になっている(S5))で吸水工程を実行する(S6)。
【0034】
吸水工程の実行に伴い、吸水タイマー(図示せず)が吸水時間(T1=30分
)の計時を開始し(S7)、同時に温度センサー(図示せず)により鍋底温度(
K1)を測温する(S8)。この炊飯コースでは、水を吸水しにくい玄米を炊飯
するので、吸水時間は白米の炊飯よりも長めに設定する必要があり、あらかじめ
実験的に吸水時間を最適化することにより30分としている。
【0035】
やがて、鍋底温度(K1)が55度(℃)に達した時(S9)には制御手段(
17)により加熱量を制御し(S10)、予め設定された吸水時間(T1)の計
時を継続する。鍋底温度55度は、できるだけ短時間に吸水を行うために最適化
した温度である。
【0036】
吸水時間が30分になると(S11)、加熱手段(4)を全加熱量で加熱する
(フルパワー加熱)と同時に、プランジャ(17)を操作してロッド(17a)
をシリンダ(17b)に引き込み、ボール(11)を弁孔(9)の上に戻した状
態でボール(11)の自重によって弁孔(9)を塞ぎ、鍋内圧力を高める(ボー
ルの重さに応じて鍋内圧力が定まる)(S12)〜(S13)(立上加熱工程)。
【0037】
このように、フルパワーで加熱するとともに鍋内を加圧状態にすることにより、
短時間で米粒内により多くの水を浸透させることができる。
【0038】
ボール(11)により弁孔(9)が塞がれ、かつ、加熱手段(4)がフルパワ
ーで加熱されているときの蒸気温度(K2)を蒸気センサー(図示せず)により
測温し(S14)、この温度が75度に達するのを測温する。
【0039】
蒸気センサーによる測定温度75度は、現在蒸気センサーが取り付けられてい
る位置において、ボール(11)による加圧条件下で沸騰が始まると判断される
ときの蒸気の温度である。
【0040】
蒸気温度が75度に達すると(S15)、沸騰状態が維持されるよう加熱量が
制御される(S16)(沸騰維持工程)。この沸騰維持工程においては、プラン
ジャ(17)が開作動しないように制御され、圧力弁(14)はボール(11)
の自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小
刻みな開閉動作を繰り返す。この間に十分圧力をかけて玄米内に水分を吸収させ
ることができる。なお、沸騰状態のときは鍋内が加圧状態になっていることによ
り、沸騰温度が100度より高い105度になっている。
【0041】
その後は鍋底温度(K3)が130度に達するのを測温する(S17)。鍋底
温度130度は、沸騰中の鍋内の水がなくなり、強制ドライアップが行われ、や
がて、ドライアップが終了したと判断される温度である。
【0042】
鍋底温度(K3)が130度に達する(S18)と、加熱を停止し(S19)、
むらし工程1に移行すると共に、むらし時間(T2=4分)の計時を開始し、4分を計時するまではプランジャ(17)による圧力弁(14)の開作動は行わないようにして、圧力弁(14)を「閉」状態にする(S20)。なお、むらし時間や後述する追い炊き時間についてもあらかじめ実験的に求めた最適時間を用いる。
【0043】
4分を計時すると(S21)、プランジャ(17)による圧力弁(14)の開作
動を行う(S22)。そして、再度加熱手段による加熱を行い、追炊き工程に移
行すると共に、再加熱時間(T3=3分)の計時を開始する(S23)。再加熱
中は、弁孔(9)を開放して鍋内の蒸気を弁孔(9)から蒸気口(15)を介し
て大気に逃がす(S23)。これにより、米粒表面についた不要な水分などを除
去しながらむらすことで、米をおいしく炊き上げることができ、さらには蓋体の
開放時には鍋内が大気圧と同じになり、蓋体の開閉が容易になる。
【0044】
再加熱時間(T3)が3分の計時を終了すると(S24)、むらし工程2に移
行すると共に、むらし時間(T4=6分)の計時を開始し(S25)、6分の計
時が終了すると(S26)、炊飯を終了して(S27)、保温工程に移行する(
S28)。
【0045】
次に選択手段(16)によって「白米・標準(ふつう)炊飯コースB」が選択
された場合(白米から白御飯をふつうに炊飯する場合)について説明する。図1
のB、図6及び図7のフローチャート、並びに図11の特性図に示すとおり、こ
のコースが選択されると(S29)、加熱手段(4)により加熱を開始し(S3
0)、同時にプランジャ(17)により圧力弁(14)を強制的に開作動させて
(S31)、吸水工程を実行する(S32)。
【0046】
以下のフローにおいて計測される時間や温度の設定は、特に説明しないものに
ついては「玄米・標準(ふつう)炊飯コースB」の場合と同様である。
【0047】
吸水タイマーが吸水時間(T1=15分)の計時を開始し(S33)、同時に
温度センサーにより鍋底温度(K1)を測温する(S34)。
【0048】
白米の場合は、玄米に比べて吸水性がよいので、吸水時間は玄米の場合より短
い15分に設定されている。
【0049】
鍋底温度(K1)が55度に達すると(S35)、加熱量を制御して予め設定
された吸水時間(T1)の計時を継続する(S36)。
【0050】
吸水時間(T1)が15分に達すると(S37)、全加熱量(フルパワー)で
加熱し(S38)(立上加熱工程)、同時にプランジャ(17)を操作してロッ
ド(17a)をシリンダ(17b)内に引き込み、ボール(11)を自重により
弁孔(9)に載置させて弁孔(9)を塞ぎ、鍋内圧力を高める(S39)。
【0051】
蒸気温度(K2)を蒸気センサー(図示せず)により測温する(S40)。や
がて、蒸気温度(K2)が75度になったことを検出すると(S41)、沸騰維持工程に移行する(S42)。
【0052】
沸騰維持工程において、プランジャ(17)による圧力弁(14)の開作動に
よって間欠的に圧力を変更する操作を複数回行う(S43)。すなわち、圧力弁
(14)を強制的に複数回開作動し、加圧された鍋内と大気とを連通・遮断させ
て鍋内の圧力を一気に低下させることを繰り返す(この場合、開閉回数を複数に
して攪拌効果を増大する方が好ましい)。鍋内圧力が大きく低下するごとに、突
沸現象が生じて鍋内に泡が発生し、水と米とが攪拌され、中央側にあった米粒が
鍋内の側方にも移動し、結果として米粒全体に十分な熱が加わることになる。
【0053】
このときの鍋内の圧力変動は図11に示されている。沸騰維持工程に移行する
とすぐに最初の圧力変更操作を実行する。これは、沸騰維持工程に入った直後は
鍋内の残水量が多く、残水量が多いほど米粒が鍋内で攪拌されやすく移動しやす
いからである。時間が経過するにつれて残水量が減少するので、残水量が多い沸
騰維持工程初期に、プランジャ(17)により圧力弁(14)を強制的に開作動
させることにより、米粒をより激しく攪拌させることができる。
【0054】
なお、沸騰維持工程の後半は鍋内の残水量が減少しているので、米が移動し難くなっていることから、突沸現象を発生させても大きな攪拌効果を得ることが困難である。
【0055】
このように、圧力弁(14)を数回開閉させて加熱不足の領域にある米粒を攪
拌することにより、加熱状態を平均化することができるので、最終的には炊き上がった御飯上面を平坦にすることができる。
【0056】
このプロセスは図7に示されている。圧力弁の開閉回数の設定は、予めプログ
ラムにより設定されており(S44)、炊飯量が多い場合には開閉回数を少なく
し、少ない場合には開閉回数を多く設定する(S45)〜(S47)。
【0057】
より具体的に説明すると、炊飯量が多い場合には、水位が高く米の上部が内蓋
(7)に接近しているため、開閉回数を多くすれば弁孔(9)と蒸気口(15)
を介しておねばや米粒が飛び出すおそれがある。本実施の形態では、これを防止
するため炊飯量が多い場合には圧力弁(14)の開閉回数を少なくして米粒の攪
拌による平均化、炊きムラ防止を図り、炊飯量が少ない場合は開閉回数を多くし
てより平均化、炊きムラ防止を図るようにしている。
【0058】
圧力弁(14)の強制的な開作動と、ボール(11)の自重による圧力弁(14)の閉作動を所定回数繰り返すと(S48)、その後は圧力弁(14)の強制的な開作動を行わないようにし(S49)、圧力弁(14)はボール(11)の自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作を繰り返す。
【0059】
そして、さらに沸騰維持工程での加熱量制御を継続し(S50)、鍋底温度(
K3)が130度を検出するまでは沸騰維持工程を継続する(S51)。
【0060】
鍋底温度(K3)が130度を検出すると(S52)、前述の「玄米・標準(
ふつう)炊飯コース」と同様に、加熱を停止し(S53)、むらし工程1に移行
してむらし時間(T2=4分)の計時を開始し(S54)、この4分を計時する
まではプランジャ(17)による圧力弁(14)の開作動は行わないようにする。
【0061】
むらし時間が4分経過すると(S55)、追炊き工程に移行すると共に、プラ
ンジャ(17)による圧力弁(14)の強制的な開作動を実行し(S56)、再
加熱時間(T3=3分)の計時を開始する(S57)。
【0062】
再加熱時間(T3)の3分の計時を終了すると(S58)、むらし工程2に移
行してむらし時間(T4=6分)の計時を開始し(S59)、6分の計時が終了
すると(S60)、炊飯を終了し(S61)、保温工程に移行する(S62)。
【0063】
前述の「玄米・標準(ふつう)炊飯コース」と「白米・標準(ふつう)炊飯コ
ース」のそれぞれのフローチャートにおいて、むらし工程1の終了後に圧力弁(
14)を強制的に開作動させているが、これは炊飯が終了し保温工程に移行した
後で鍋内の御飯を取り出す際に、余計な水分を追い出す目的の他に、蓋体(5)
の開放に伴い大気が鍋内に入って蓋体を開けやすくするとともに、蓋体を開ける
際、鍋内が高圧状態であれば蓋体が急激に開いて高温の蒸気や米粒が飛散し危険
となることを防止するためである。
【0064】
つづいて、選択手段(16)によって「白米・応用(すしめし)炊飯コースC
」が選択された場合について説明する。「白米・応用(すしめし)炊飯コースC
」が選択されると(S63)、図1のCと図8及び図9のフローチャートと図1
2の特性図に示すとおり、加熱手段(4)により加熱を開始し(S64)、同時
にプランジャ(17)により圧力弁(14)を開作動させて(S65)、吸水工
程を実行する(S66)。
【0065】
以下のフローにおいて計測される時間や温度の設定は、特に説明しないものに
ついては「玄米・標準(ふつう)炊飯コースA」の場合と同様である。
【0066】
吸水タイマーが吸水時間(T1=10分)の計時を開始し(S67)、同時に
鍋底温度(K1)を測温する(S68)。
【0067】
この炊飯コースCは、すしめし、ピラフに使用する米を炊飯するものであり、
この場合は米粒内の含水量を抑えた方が好ましい。したがって、吸水時間は白米
・標準炊飯コースBよりさらに短く10分に設定している。
【0068】
鍋底温度(K1)が55度に達すると(S69)、加熱量を制御して予め設定
された吸水時間(T1)の計時を継続する(S70)。
【0069】
吸水時間(T1)が10分に達すると(S71)、全加熱量(フルパワー)で
加熱し(S72)、圧力弁(14)を開作動のままにして(S73)、蒸気温度
(K2)を検出する(S74)(立上加熱工程)。
【0070】
蒸気温度(K2)が75度を検出すると(S75)、沸騰維持工程に移行し加
熱量制御を継続する(S76)(沸騰維持工程)。
【0071】
鍋底温度(K3)が130度を検出すると(S78)、加熱を停止し(S79
)、むらし工程1に移行すると共に、むらし時間(T2=4分)の計時を開始す
る(S80)が、この間も圧力弁(14)は開作動状態のままになっている。よ
って、このコースの鍋内圧力は常に大気圧に近い圧力になっている。
【0072】
むらし時間が4分を経過すると(S81)、圧力弁(14)が開作動状態のま
ま(S82)、追炊き工程に移行し再加熱時間(T3=3分)の計時を開始する
(S83)。
【0073】
再加熱時間の3分を計時すると(S84)、むらし工程2に移行し、むらし時
間(T4=3分)の計時を行う(S85)。3分のむらし時間を計時すると(S
86)、炊飯を終了し(S87)、保温工程に移行する(S88)。
【0074】
このようにしてすしめしやピラフ用のご飯を得る場合には、必要以上の吸水を
抑えた御飯(すしとして握りやすく、ピラフとして食感のあるパラパラした御飯
)を得ることができる。
【0075】
よって、各炊飯コースにおける圧力弁(14)の作動状態をまとめると次のよ
うになる。「玄米・標準(ふつう)炊飯コースA」では、立上加熱工程中→閉(
鍋内圧力は加圧状態)、沸騰維持工程中→閉(加圧状態)、むらし工程中→開(
略大気圧状態)となる。「白米・標準(ふつう)炊飯コースB」では、立上加熱
工程中→閉(加圧状態)、沸騰維持工程中→開、閉(加圧状態、排圧状態の繰り
返し)、むらし工程中→開(略大気圧状態)となる。「白米・応用(すしめし)
炊飯コースC」では、全工程中→開(略大気圧状態)となる。
(変形例)
なお、加熱手段(4)は、誘導コイルによる渦電流によって加熱するIH加熱
方式に限らず、ヒータを内装した熱板を鍋底に装着したものやその他の加熱方法
であってもよく、要するに加熱制御が可能な加熱方法を用いればよい。
【0076】
圧力弁は設定圧力以上になると自動的に開き、設定圧力以下になると自動的に
閉じる開閉機能を有するものであればどのような種類のものでもよい。また、圧
力弁の開閉機構を強制的に開状態にする圧力弁開放機構は、圧力弁が閉じている
状態から強制的に弁を開くことができるものであれば機械的に作用する機構や電磁的に作用する機構であってもよい。
【0077】
以上のように本発明は、炊飯時に鍋内の圧力を高めて炊飯するものにおいて、
沸騰維持工程中に鍋内と大気とを連通して鍋内圧力を低下させるものであるから
、鍋内の圧力が抜け大気圧に戻ろうとする際に突沸現象により水や米が鍋内で攪
拌され、米粒が一部位に定置した状態とならず中央側にあった米粒が鍋内の側方
へも移動し、結果として米粒全体に十分な熱が加わり均一の加熱がなされる。
そして、米粒の加熱が平均化される結果、御飯の上面が平坦になる。
【0078】
また、圧力弁は沸騰維持工程前の立上加熱工程時には閉状態となるようにすれ
ば、鍋内の圧力を高めることができ、短時間で水を米粒内に浸透させ美味しい御
飯を短時間に炊き上げることができる。要するに、鍋内の圧力を高める必要があ
る時には圧力弁を閉じ、均一な加熱を行い炊き上がり後に御飯の上面を平坦にす
る場合は沸騰中に鍋内の圧力を抜くようにしている。
【0079】
そして、圧力弁はむらし工程時(むらし工程の後半)に開状態にしたものであ
るから、蓋体の開放時には鍋内が大気圧と同じになりその開閉が容易となる。
【0080】
少なくとも、白米・標準コースと玄米標準コースを有し、このコースを選択手
段によって選択するものであって、白米・標準コースの場合は沸騰工程中に圧力
弁を数回操作して鍋内と大気を連通・遮断させて圧力弁の少なくとも一回の開作
動によるかき混ぜ効果によって部分的な加熱不足をなくすると共に、米粒の並び
方の調整を行って上面を平坦にすることができ、一方、玄米・標準コースでは沸
騰維持工程中での数回の連通・遮断を行わないので、十分圧力をかけて玄米内に
水分を吸収させることができる。
【0081】
さらに、玄米・標準コースの実行時には沸騰維持工程前の立上加熱工程時に圧
力弁を閉状態にして最も加熱量が多い時に水分を吸収させ、比較的吸収しにくい
玄米の米粒内に短時間で吸収することができる。
【0082】
そして、すしめしやピラフ用の飯を得る場合には、沸騰維持工程前からむらし
工程までの一連の工程中に圧力弁を開状態にして米粒内部への必要以上の吸水を
抑えるようにすれば、炊き上がり後にはすしとして握りやすい、ピラフとして食
感のあるパラパラした御飯が得られる。
【0083】
加えて、白米・標準コースの実行時に鍋内と大気と連通・遮断する回数は炊飯
量が多い場合に少なく、少ない場合に多く設定したものであるから、鍋内と大気
との連通時に鍋内のおねばや米粒が飛散するのを防止する。炊飯量が多い場合は
沸騰維持工程時に本来十分に米粒を攪拌する必要があるが、おねばの吹きこぼれ
を考慮して連通回数を最小限にとどめながらも米粒の攪拌による御飯上面の平坦
化や炊きムラを防ぎ、炊飯量が少ない場合は連通回数を多くしてより平坦化と炊
きムラの防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施例である炊飯器による炊飯工程を示す要部フローチャートである。
【図2】本発明の一実施例である炊飯器の蓋体と圧力弁と圧力弁開放機構を含む部分断面を示す図である。
【図3】図2における圧力弁と圧力弁開放機構の部分拡大断面図である。
【図4】図1に示すフローチャートの「玄米・標準(ふつう)コース」のフローチャートである。
【図5】図4に示すフローチャートに続くフローチャートである。
【図6】図1に示すフローチャートの「白米・ふつう炊飯コース」のフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートに続くフローチャートである。
【図8】図1に示すフローチャートの「白米・すしめし炊飯コース」のフローチャートである。
【図9】図8に示すフローチャートに続くフローチャートである。
【図10】同じく「玄米・ふつう炊飯コース」の特性図である。
【図11】同じく「白米・ふつう炊飯コース」の特性図である。
【図12】同じく「白米・すしめし炊飯コース」の特性図である。
【符号の説明】
【0085】
1 炊飯器本体
2 鍋
4 加熱手段
5 蓋体
9 弁孔
10 弁座
11 ボール
12 カバー
13 安全弁
14 圧力弁
16 選択手段
17 プランジャ(圧力弁開放機構)
18 開閉機構
20 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と米とを含む被炊飯物を収容する鍋と、鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段と、鍋の開口部を塞ぐ蓋体と、鍋内の圧力を略一定の所定の圧力とするように鍋内と外気とを連通或は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開状態にする圧力弁開放機構と、加熱手段の加熱量を制御するとともに圧力弁開放機構による圧力弁の開作動の制御を行う制御手段と、少なくとも白米・標準(ふつう)炊飯コースを含む炊飯内容の種別を分類する炊飯コース群から使用者が任意の炊飯コースを選択する選択手段とを備え、
前記制御手段は、白米・標準(ふつう)炊飯コースを実行する場合の沸騰維持工程中における圧力弁の圧力弁開放機構による開作動の回数を、炊飯量が多い場合に少なく、炊飯量が少ない場合に多くなるように設定することを特徴とする炊飯器。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−55667(P2006−55667A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324908(P2005−324908)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【分割の表示】特願2003−147580(P2003−147580)の分割
【原出願日】平成15年5月26日(2003.5.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】