説明

炊飯器

【課題】炊飯器の鍋の周囲に断熱空間を形成して熱の有効活用を図り、省エネルギー化ができる炊飯器を提供すること。
【解決手段】炊飯器本体2の内側壁211と鍋3の間との間に遮熱部材を用いて断熱空間DSを形成する。遮熱部材はシリコーンゴム等で形成された耐熱性弾性部材51であって、断熱空間DSは、炊飯器本体2の内側壁211の周囲縁に上下方向に間隔をあけて環状に装着固定した耐熱性弾性部材51が鍋3の外側壁に当接することで、内側壁211と鍋3との間の空間を区画した密閉空間により形成されている。断熱空間DSは、側面ヒータ6を囲んで形成され、炊飯器1の内側壁211には側面ヒータ6を覆う熱伝導性が良好な金属性のカバー6aが取り付けられており、この取り付けにより耐熱性弾性部材51を挟持して装着固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炊飯器に係り、特にヒータの熱の有効活用を図り、省エネルギー化を実現することができる炊飯器に係るものである。また、被炊飯物を入れる鍋の回転を防ぐことができる炊飯器に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化及び環境汚染の問題を地球規模において最優先課題として解決しなければならない時代に突入している。このうち、頻発する自然災害の一因が地球温暖化にあるとされていることから、地球温暖化の防止、すなわちCO排出量の数値目標が世界各国及び地域に設定されて、その目標達成に向けて様々な施策が打ち出され、我が国においても京都議定書での削減目標達成に向けた取り組みがなされている。かかる状況を踏えて、一般家庭で使用される電化製品もその対象となり、電気炊飯器も省エネルギー対策が急務となって、これまでさまざまな工夫がなされた炊飯器が特許文献で紹介されている。
【0003】
例えば、従来の炊飯器における省エネルギー対策としては、炊飯器の本体と蓋間の断熱を二重にしたり、第1のシール蓋の外側に第2のシール蓋を設けて鍋の鍔部からの放熱を少なくしたり、あるいはまた鍋のフランジ部に弾性材料の部材を装着したりすることによって、炊飯器の熱効率を向上し、消費電力を低減させるものがあった。
【0004】
また、従来の炊飯器において、下記特許文献1に開示された炊飯器のように、炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋を支持する上枠と鍋の側面を包囲する側面壁を上枠と一体化した構成とし、側面壁の外周に、円筒形ボビンを設置しボビンの外周に加熱コイルを配設したものがあった。これは側面壁と上枠とを一体成型して製造するもので隙間がなく炊飯消費電力と保温消費電力が低減されるというものである。
【0005】
さらにまた、下記特許文献2に開示された炊飯器のように、鍋の収納部に中空成形によって空気層を設け、鍋周囲の断熱を強化するとともに鍋の外周部においても熱伝導率の低い樹脂成型を施して断熱構造とすることにより、鍋の側面に相対する側面ヒータを廃止し、さらに鍋の底面部を除き樹脂成型部を形成するものがある。
【特許文献1】特開平11−318696号公報(段落[0009]、[0010]、図2)
【特許文献2】特開2002−440号公報(段落[0007]〜[0009]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載の炊飯器は、側面壁と上枠とを一体成型して製造するもので、上枠金型が複雑で高価となり経済的ではない。また側面加熱コイルを配設した円筒形ボビンを側面壁に取り付けるのが面倒であった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の炊飯器は、鍋の収納部を中空成形により製造するもので、収納部自体も高価であり、鍋の外周部においても熱伝導率の低い樹脂成型を施して断熱構造とすることが必要となり高価になる。したがって、以上のような状況から、断熱性が良く、省エネルギー化ができる簡単な構造で経済的に安価な炊飯器が求められている。
【0008】
本願の発明者は、上記の問題点を解決すべく種々検討を行った結果、炊飯器本体の内側壁と本体に収容された鍋との間に、断熱空間を形成することによって、この空間内の熱が外部に放出されるのを防止して、熱の有効利用を図ることができる省エネルギーに適した炊飯器を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、炊飯器のヒータの熱の有効活用を図り、省エネルギー化ができる炊飯器を提供することを目的とするものである。
【0010】
また、本発明は、炊飯器の鍋の周囲に断熱空間を形成して熱の有効活用を図り、省エネルギー化ができる炊飯器を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、断熱空間を形成する耐熱性弾性部材により鍋の回転を防止する炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の炊飯器は、被炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容する開口部及び側面ヒータを含む前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに前記加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを備えた炊飯器において、前記炊飯器本体の内側壁と該炊飯器本体に収容された鍋との間に遮熱部材を設けることにより、前記炊飯器本体の内側壁と該炊飯器本体に収容された鍋との間の領域を断熱空間としたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記遮熱部材は耐熱性弾性部材であって、前記断熱空間は、前記炊飯器本体の内側壁の周囲縁に上下方向に間隔をあけて環状に装着固定した耐熱性弾性部材の一部が延伸して前記鍋の外側壁に当接することで、前記内側壁と前記鍋との間の空間を区画した密閉空間により形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、前記断熱空間は、さらに下側の前記耐熱性弾性部材によって、前記炊飯器本体の内側壁の底部分と前記鍋の鍋底付近との間の空間を区画した密閉空間においても形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、前記断熱空間は、前記側面ヒータを囲んで形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、上側の前記耐熱性弾性部材は、前記炊飯器本体の内側壁の開口部上端内縁付近に装着固定されることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項4に記載の炊飯器において、前記炊飯器の内側壁には前記側面ヒータを覆うカバーが取り付けられており、この取り付けにより、前記耐熱性弾性部材を挟持して装着固定することを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6に記載の炊飯器において、前記側面ヒータのカバーは、熱伝導性が良好な金属で形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項2乃至7のいずれかに記載の炊飯器において、前記耐熱性弾性部材の上側耐熱性弾性部材と下側耐熱性弾性部材との間は前記炊飯器本体の内側壁の上下方向に延伸する条片で接続されており、前記断熱空間は、前記条片を前記炊飯器の内側壁の周囲縁に環状に装着固定することで、前記内側壁及び前記条片と前記鍋との間の空間を区画した密閉空間により形成されることを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の炊飯器において、前記側面ヒータは、誘導加熱コイルで構成されることを特徴とする。
【0021】
請求項10の発明は、請求項2乃至9のいずれかに記載の炊飯器において、前記耐熱性弾性部材は、シリコーンゴムによって形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、被炊飯物を入れる鍋と、鍋を収容する開口部及び側面ヒータを含む鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、鍋及び炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを備えた炊飯器において、炊飯器本体の内側壁と炊飯器本体に収容された鍋との間の領域を断熱空間としたことにより、加熱手段によって発生した熱がこの空間内に閉じ込められて外方に逃げないので、熱の有効利用を図ることができ、鍋が炊飯時及び保温時に冷やされるおそれがない。したがって、鍋の側面に露がつきにくく、加熱が少なくてすみ消費電力を節減できる。
【0023】
請求項2の発明によれば、遮熱部材は耐熱性弾性部材であって、断熱空間は、炊飯器本体の内側壁の周囲縁に上下方向に間隔をあけて環状に装着固定した耐熱性弾性部材の一部が延伸して鍋の外側壁に当接することで、内側壁と鍋との間の空間を区画した密閉空間により形成されるので、加熱手段によって発生した熱がこの空間内に閉じ込められて外方に逃げないので、熱の有効利用を図ることができ、かつこの耐熱性弾性部材の延伸された部分が鍋の回転防止片となってご飯をよそうのに便利である。
【0024】
請求項3の発明によれば、断熱空間は、さらに下側の耐熱性弾性部材によって、炊飯器本体の内側壁の底部分と鍋の鍋底付近との間の空間を区画した密閉空間においても形成されるので、主ヒータにより発生した熱を閉じ込めるこの断熱空間により、この断熱空間内の熱が外部に放出されるのを防止してさらに熱の有効利用を図ることができる。したがって、より鍋の加熱が少なくてすみ消費電力を節減できる。
【0025】
請求項4の発明によれば、断熱空間は、側面ヒータを囲んで形成されるので、この空間内に発生した熱が外部に放出されるのを防止して熱の有効利用によりさらに効果的な加熱を図ることができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、上側の前記耐熱性弾性部材は、炊飯器本体の内側壁の開口部上端内縁付近に装着固定されるので、外気の入り込む鍋と炊飯器本体開口部との隙間の入り口近辺を断熱空間により塞ぎ、この隙間からの放熱をより効果的に抑止することができる。
【0027】
請求項6の発明によれば、断熱空間は、炊飯器の内側壁には側面ヒータを覆うカバーが取り付けられており、この取り付けにより、耐熱性弾性部材を挟持して装着固定するので、側面ヒータの熱はこの空間内に確実に閉じ込められ、側面ヒータのカバーを介して鍋の加熱に向けられるために効果的な鍋の加熱が可能になる。また断熱空間内の熱の外部への放熱が止められることから、その分発熱量を節減でき省エネルギー化を図ることができる。また、側面ヒータの組み立てが容易で製造工数を節減できる。
【0028】
請求項7の発明によれば、側面ヒータのカバーは、熱伝導性が良好な金属で形成されるので、鍋に対する熱伝導がよく効率的な熱の利用を図ることができる。
【0029】
請求項8の発明によれば、耐熱性弾性部材の上側耐熱性弾性部材と下側耐熱性弾性部材との間は炊飯器本体の内側壁の上下方向に延伸する条片で接続されており、断熱空間は、条片を炊飯器の内側壁の周囲縁に環状に装着固定することで、内側壁及び条片と鍋との間の空間を区画した密閉空間により形成されるので、炊飯器本体の側壁と条片との二重の壁材により断熱空間内の熱の外部への放熱がさらに効果的に抑止することができる。また、耐熱性弾性部材と条片とが一体に形成されていることから、炊飯器の内側壁への取り付けが簡単であり、側面ヒータのカバーで挟持する場合はカバーの取り付けと同時に一度に二つの回転防止片の取り付けができ、取り付けが簡単かつ容易である。
【0030】
請求項9の発明によれば、側面ヒータは、誘導加熱コイルで構成されるので、内ケースに影響を及ぼすことなく鍋に対して効果的な加熱が行なえる。
【0031】
請求項10の発明によれば、耐熱性弾性部材は、シリコーンゴムによって形成されるので、耐熱性と耐久性を併せ持った部材を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0033】
図1は本発明の一実施例に係る炊飯器の断面図である。図2は炊飯器本体と鍋の一部断面図である。図3は他の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。図4はさらに他の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。図5は別の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。図6はさらに別の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である
本発明の実施例に係る炊飯器1は、図1に示すように、被炊飯物を入れる鍋3と、この鍋3を着脱自在に収容する開口部及び鍋3内の被炊飯物を加熱する誘導加熱コイル5や側面ヒータ6等の加熱手段並びに底面に設けられて炊飯器1外へ連通する通気孔23a及び排気孔23bを有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4と、誘導加熱コイル5及び側面ヒータ6等の加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温を行なう制御手段とを備えている。炊飯器本体2に通気孔23a及び排気孔23bを開閉するシャッター機構25を設け、制御手段が、炊飯器本体2内部の温度が所定温度以上の期間は通気孔23a及び排気孔23bを開き、また所定温度以下の期間は通気孔23a及び排気孔23bを閉鎖するようにシャッター機構25を制御する機構を備えていてもよい。
【0034】
炊飯器本体2は、その内部に鍋3を収容する非金属材料で成形された有底筒状の内ケース21とこの内ケース21を覆う外ケース22とを有し、内ケース21内に鍋3が着脱自在に収容されるようになっている。内ケース21にはその上端部に外周方向へ突出したフランジ21aが形成されている。鍋3にはその上端開口部に外周方向へ突出したフランジ31が形成されており、このフランジ31が内ケース21のフランジ21aに掛るように載置される。内ケース21の底部付近の外周囲には、主な加熱手段である誘導加熱コイル5が配設される。この誘導加熱コイル5は、鍋3の外周面までの距離が一定になるように耐熱性樹脂材料で成形されたコイルカバー(図示省略)に支持されている。また、内ケース21には、上方開口部と誘導加熱コイル5との間に側面ヒータ6が配設されている。
【0035】
蓋体4は、枠体42の上下に表蓋41及び蓋カバー48をそれぞれ取り付け、蓋カバー48を介して枠体42に内蓋43が装着された構成を有し、炊飯器本体2の内ケース21の上方開口部を覆うように取り付けられている。その取り付けは、枠体42をヒンジ部材44と枢支ピン45とを用いて炊飯器本体2に軸支した構成となっている。また枠体42と内蓋43の間には、蓋カバー48に覆われて蓋ヒータ49が配設されるとともに、蓋温度センサ(図示省略)が設けられている。さらに内蓋43には炊飯器本体2内の圧力を調整する圧力調整弁4a及び安全弁4bが装着されている。蓋カバー48は枠体42に固定され、内蓋43は蓋カバー48を覆って枠体42に着脱自在に支持されている。圧力調整弁4aは、図示しないソレノイドにより一連の炊飯工程のうち沸騰維持工程で作動される。表蓋41には、鍋3内の炊飯物が吹きこぼれて一気に飛び出すのを防止する吹きこぼれ防止蓋4cが着脱自在に装着されている。
【0036】
内蓋43の外周囲には、鍋3のフランジ部31と内蓋43をシールする鍋パッキン46が外枠50に支持されて装着されている。また、ヒンジ部材44の反対側には、内ケース21の上端部に形成された係止部材47aが設けられ、枠体42に設けた係止レバー47bに係止されて蓋体4を閉じた状態に支持するようになっている。炊飯器本体2内に鍋3を収容して蓋体4で覆うと、鍋パッキン46が鍋3の開口縁部に圧接して鍋3が閉鎖される。
【0037】
炊飯器本体2は、外ケース22の前面に操作プレート7が装着されている。この操作プレート7には、電源スイッチ7a、炊飯スタートスイッチ、メニュー選択スイッチ、保温スイッチ等(図示せず)のスイッチ類の操作釦及び表示パネル7bが装着されており、これらの部品のうち、表示パネル7bには操作制御基板8に取り付けられた電子部品(図示省略)によって選択された炊飯メニュー等が表示される。
【0038】
炊飯器本体2には、誘導加熱コイル5、側面ヒータ6及び蓋ヒータ49等へ電力を供給・制御する電源制御基板10が通気孔23aに近接した箇所に配設されている。この電源制御基板10には、半導体素子からなるインバータ、スイッチング素子、タイマー素子等の電子部品が装着されている。これらの電子部品のうち、特にインバータ9は作動時に発熱するのでヒートシンク、或いは冷却ファンによって冷却される。また、炊飯器本体2は、その底部23の中央部に鍋3の底面に接触するようにして温度検出センサ32が設けられている。さらに炊飯器本体2又は蓋体4のいずれかに外気温度を検知する外気温センサ(図示省略)が設けられている。この外気温センサの出力は、制御装置に入力されて、冷却用ファン11或いはシャッター機構25が作動される。
【0039】
炊飯器本体2の底部23には、空気を吸気する通気孔23a及び吸気された空気を排出する排気孔23bが形成され、通気孔23aに近接した位置に冷却ファン11が配設されている。この冷却ファン11は、図示しないモータにより作動される。
【0040】
通気孔23a及び排気孔23bは、底部23に所定の幅長及び長さを有する複数本の細溝、いわゆるスリットで形成されている。また、これらのスリットからなる通気孔23a及び排気孔23bは、それぞれのスリットを塞ぐ幅長及び長さを有する板状体からなる開閉扉、すなわちシャッター板23a’、23b’で開閉される。その開閉は、各シャッター板23a’、23b’が作動板24に連結されて、この作動板24がソレノイド12によって移動されることによって通気孔23a及び排気孔23bがそれぞれ開閉される。この作動板24は、炊飯器本体の底部23に設けたガイド機構26でガイドされながら底部で摺動可能になっている。シャッター機構25は、各シャッター板23a’、23b’を有する作動板24と、この作動板24を作動させるソレノイド12とで構成されている。
【0041】
本発明は、例えば上記のような被炊飯物を入れる鍋3と、その鍋3を収容する開口部及び鍋3内の被炊飯物を加熱する側面ヒータ6を含む加熱手段並びに加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4とを備えた炊飯器1において、図2に示すように、炊飯器本体2の内側壁211と炊飯器本体2に収容された鍋3との間に、側面ヒータ6を囲んで断熱空間DSを形成するものである。この断熱空間DSは、炊飯器本体2の内ケース21の内側壁211に縦方向に間隔をあけて上下に配置し、かつ全周にわたり装着固定した耐熱性弾性部材51によって、内側壁211と鍋3との間に形成される密閉された空間である。側面ヒータ6によって発生した熱がこの空間内に閉じ込められて外方に逃げないので、鍋3が炊飯時及び保温時に冷やされない、したがって、鍋3の側面に露がつきにくく、加熱が少なくてすみ消費電力を節減できる。
【0042】
また、断熱空間DSは、耐熱性弾性部材51のうち下側のものにより炊飯器本体2の内側壁211の底部分と鍋3の鍋底付近にも形成される。この部分では主な加熱手段である誘導加熱コイル5によって発生した熱が断熱空間DS内から外部に放出されるのを防止する。これによって、鍋3の加熱をする熱量が少なくてすみ消費電力を節減できる。
【0043】
さらに、断熱空間DSは、図3に示すように、側面ヒータ6を囲む炊飯器本体2の内ケース21の内側壁211と側面ヒータ6のカバー6aとの間に形成された密閉された空間により形成される。内ケース21は保温性の良好な合成樹脂で形成し、側面ヒータ6のカバー6aは、鍋3側に効率的に熱を伝達するように、熱伝導性が良好なアルミニウムや銅などの金属で形成される。側面ヒータ6のカバー6aは、内ケース21の全周にわたり形成したくぼみ21dの上下に装着固定した耐熱性弾性部材51を介して内ケース21に嵌め込んで装着される。この場合、断熱空間DSは、炊飯器本体2の開口部上縁フランジに沿った内側方向に延伸して鍋の側面に接する耐熱性弾性部材51によって形成され、外部への放熱を抑えるようにしている。
【0044】
断熱空間DSを密閉する耐熱性弾性部材51の一端部は、内ケース21の内側壁211から延伸して収容した鍋3の外面と接触し、摩擦により鍋3を保持しその回転を妨げる機能を兼ね、回転防止片となっている。耐熱性弾性部材51としては耐熱性と耐久性のあるシリコーンゴムが好ましいが、その他の部材を用いてもよい。炊き上げられたご飯を、しゃもじを使ってかき混ぜたり鍋から茶碗によそったりする場合に鍋が回転してしまい、作業し難いことがある。このような場合に片手で鍋を押さえながら片手でしゃもじを持ってご飯をよそわねばならないとすると、鍋を押さえる動作と茶碗を持つ動作とが2動作になり不便である。その上鍋が熱い状態であるとやけどをするおそれもある。従来は、鍋が回転しないように内ケースのフランジに特別な装置を取り付けたり、あるいはまた、炊飯器本体に蓋体の開閉を検知するマイクロスイッチとスイッチのON/OFFに連動するプランジャーとを設け、プランジャー先端にはゴム弾性体が取り付けられ、蓋が開くとスイッチで検知し、スイッチの検知に連動してプランジャーが動作し、ゴム弾性体が突出して鍋に当接し、鍋を保持して回転を防止するようにしたりしている。しかし、上記の回転防止片51によると、従来のように複雑な装置を設けることなく簡単かつ安価に鍋の回転を防止することができる。
【0045】
図3に示した断熱空間DSは、側面ヒータ6を装着するため内ケース21の内側壁211に設けたくぼみ部分と側面ヒータ6のカバー6aとに囲まれた密閉された空間である。なお、密閉空間といっても各部材の嵌合部や、側面ヒータ6のリード端子の引き出し口、各種センサの装着部分などに隙間があることは差し支えない。断熱空間DSは、側面ヒータ6を内蔵し、側面ヒータ6の周囲に空間を作って取り囲み、この空間内部の熱が外方に放出されるのを防ぐように作用する。側面ヒータ6の熱は、熱伝導性の良好なカバー6aを介して鍋3に伝えられ、鍋3の加熱、保温に利用される。図3においては、断熱空間DSの上端は内ケース21のフランジ21bに接する位置にまで達している。このことによって鍋3と内ケース21との空間で一番外気に近い位置にあって放熱の多い部位を断熱空間DSで占めることにより、より効果的な加熱・保温効果が得られるようにした。
【0046】
側面ヒータ6のカバー6aは、気密の断熱空間DSを作るように、炊飯器本体2の内ケース21に耐熱性弾性部材51を介して装着固定される。カバー6aは、炊飯器本体2の内側の壁面を形成するように設けられる。カバー6aは、アルミニウムや銅などの金属板の上下両端に弾力を生じるように屈曲部分6bが形成されており、内ケース21の所定部分に嵌めこんで固定できるようになっている。内ケース21の上端に形成されたフランジ21aとは逆側の内周方向に突出したフランジ21b下面と、内ケース21の内側壁211に形成されたくぼみの下端部の棚状部分21cとの間に、回転防止片を兼ねた耐熱性弾性部材51を介在させてこのカバー6aの屈曲部分6bを嵌着する。幅広の回転防止片を設けると、大気が入り込む鍋3と内側壁211との隙間の入り口付近を延伸部分51bが塞ぐことになるため、隙間からの放熱を抑える効果がある。
【0047】
図3、図4に示すように、耐熱性弾性部材51は、密閉された断熱空間DSを形成する延伸部分51bを有するシリコーンゴムの成型体である。断面が方形で表された基部51aから基部よりも薄い延伸部分51bが、側面ヒータ6のカバー6aと炊飯器本体の内ケース21との間に挟持されることによって装着固定され、断熱空間DSを形成するとともに延伸部分51bを内ケース21の内側に露出させる。延伸部分51bは、ある程度の弾力を有するもので、鍋3を入れていないときには内ケース21の内側に真っ直ぐ突き出すぐらいの強度を有しており、鍋3を収容すると鍋3側面に強く接触することができる。図4においては、内ケース21の内側壁に設けたくぼみ21dに、カバー6aを嵌め込んで装着し、カバー6aの装着と同時に耐熱性弾性部材51も取り付けたものであり、壁面へのはめ込みで回転防止片とともに耐熱性弾性部材51が強固に取り付けられる。
【0048】
図5に示したものは、断熱空間DSをフランジ21aより少し下がった位置に設けたものであるが、くぼみ21dの内壁面に帯状のシリコーンゴム製の条片51cを施して断熱効果を高めたものである。条片51cの上部と下部には、鍋3の回転防止片となる耐熱性弾性部材51の延伸部分51bが形成されている。内ケース21の壁と条片51cの二重の壁材により断熱性を高めて断熱空間DSの熱が鍋と反対側に放熱されるのをより確実に防止するものである。耐熱性弾性部材51の内ケース21への取り付けは、側面ヒータ6のカバー6aによって条片51c部分を内ケース21の内側壁211のくぼみ部分に押し付けて装着固定し、延伸部分51bを内ケース21の内側に露出させるようになされる。これによると条片51cの存在により安定に取り付けることができるし、上下の延伸部分51bの位置決めが簡単である。なお、側面ヒータ6のカバー6aは、必ずしも両端が丸く成形される必要はなく、角型に曲げ加工して回転防止片となる耐熱性弾性部材51を押さえるようにしてもよい。
【0049】
なお、以上には炊飯器本体2の内ケース21の一部に側面ヒータ6を囲んだ断熱空間DSが設けられた例につき述べたが、断熱空間DSが設けられるのは必ずしも一体に作られた内ケース21の一部に限定されるものではなく、図6に示したように、炊飯器本体2の組み立てに便利なように内ケース21とは別の部材21dで構成された炊飯器本体の内側壁211であってもよい。
【0050】
以上述べたように、本発明は炊飯器本体に収容する鍋の周囲に断熱空間を形成することにより、この断熱空間内の熱の有効利用を図るものである。断熱空間は、炊飯器本体の内側壁と鍋の間、鍋底の付近あるいは側面ヒータを囲む炊飯器本体の内側壁と側面ヒータのカバー間に形成される密閉された空間により形成され、加熱手段の熱をこれらの空間内に閉じ込め、外部に放出されるのを防止して鍋の加熱に向けるために、効果的な鍋の加熱が可能になる。つまり、断熱空間内の熱の外部への放熱が止められることから、その分加熱時や保温時の側面ヒータの発熱量を節減でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0051】
なお、側面ヒータ6は、誘導加熱方式であってもよい。誘導加熱による場合には、側面ヒータ6の加熱コイルは、銅線を寄り合わせたリッツ線をポリウレタンなどの絶縁材料で絶縁したものにより同心状に構成し、これを側面ヒータ6のカバー6aの内側に複数個配置して固定する。電源制御基板10に搭載されたインバータ9から高周波電流を加熱コイルに供給すると、加熱コイルに交番磁界が発生してその磁界中に位置する鍋3に渦電流が発生する。渦電流はジュール熱に変換されて鍋3が発熱し、被炊飯物を加熱する。カバー6aは耐熱性樹脂で形成されてもよい。内側壁211とカバー6aとに覆われているため、鍋3の発熱だけでなく加熱コイル自体の発熱も鍋3の加熱及び保温に利用できる。
【0052】
また、本発明では断熱空間を作るのに使用される耐熱性弾性部材を炊飯器本体の内壁面に装着するという簡単な構成によって、その延伸部分が被炊飯物を入れる鍋の外面と接触し、ご飯をよそうときに鍋の回転を防ぐことができるが、この場合、鍋に特段の加工を施す必要がなく実施が容易である。そして給仕のときに鍋を抑えたりする必要もなく、取り扱いが容易な炊飯器を提供することができる。
【0053】
また、耐熱性弾性部材の延伸部分は、側面ヒータのカバーの取り付けと一緒に取り付けることもできるので、特別な工数を必要とせず、安価に装着できる。このため、炊飯器の製造価格が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る炊飯器の断面図である。
【図2】図2は実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。
【図3】図3は他の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。
【図4】図4はさらに他の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。
【図5】図5は他の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。
【図6】図6はさらに他の実施例に係る炊飯器本体と鍋の一部断面図である。
【符号の説明】
【0055】
2 炊飯器本体
3 鍋
4 蓋体
5 誘導加熱コイル
6 側面ヒータ
6a カバー
6b 屈曲部分
21 内ケース
21a フランジ
21b フランジ
21c 棚状部分
22 外ケース
51 耐熱性弾性部材
51a 基部
51b 延伸部分
51c 条片
DS 断熱空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容する開口部及び側面ヒータを含む前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに前記加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを備えた炊飯器において、前記炊飯器本体の内側壁と該炊飯器本体に収容された鍋との間に遮熱部材を設けることにより、前記炊飯器本体の内側壁と該炊飯器本体に収容された鍋との間の領域を断熱空間としたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記遮熱部材は耐熱性弾性部材であって、前記断熱空間は、前記炊飯器本体の内側壁の周囲縁に上下方向に間隔をあけて環状に装着固定した耐熱性弾性部材の一部が延伸して前記鍋の外側壁に当接することで、前記内側壁と前記鍋との間の空間を区画した密閉空間により形成されることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記断熱空間は、さらに下側の前記耐熱性弾性部材によって、前記炊飯器本体の内側壁の底部分と前記鍋の鍋底付近との間の空間を区画した密閉空間においても形成されることを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記断熱空間は、前記側面ヒータを囲んで形成されることを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項5】
上側の前記耐熱性弾性部材は、前記炊飯器本体の内側壁の開口部上端内縁付近に装着固定されることを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記炊飯器の内側壁には前記側面ヒータを覆うカバーが取り付けられており、この取り付けにより、前記耐熱性弾性部材を挟持して装着固定することを特徴とする請求項4に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記側面ヒータのカバーは、熱伝導性が良好な金属で形成されることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記耐熱性弾性部材の上側耐熱性弾性部材と下側耐熱性弾性部材との間は前記炊飯器本体の内側壁の上下方向に延伸する条片で接続されており、前記断熱空間は、前記条片を前記炊飯器の内側壁の周囲縁に環状に装着固定することで、前記内側壁及び前記条片と前記鍋との間の空間を区画した密閉空間により形成されることを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項9】
前記側面ヒータは、誘導加熱コイルで構成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項10】
前記耐熱性弾性部材は、シリコーンゴムによって形成されることを特徴とする請求項2乃至9のいずれかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−312867(P2007−312867A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143482(P2006−143482)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】