説明

炊飯器

【課題】炊飯中および保温時に逃げる熱を抑えて省エネルギー化を実現した炊飯器を提供すること。
【解決手段】上方に開口を有し被調理物が投入される釜2と、この釜が収容される有底筒状の釜収容ケース4および被調理物を加熱調理する加熱手段を有する炊飯器本体8と、釜2および炊飯器本体8の開口を開閉自在に覆う蓋体14とを備え、釜収容ケース4は、釜2の底部分が収容される釜底収容部4と、この釜底収容部から上方へ延設されて釜2の胴部を覆う筒状胴部4とを有し、この筒状胴部4には珪藻土からなる筒状断熱部材5が装着され、この釜底収容部4の内側側壁面には珪藻土からなる断熱層5’が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に係り、特に炊飯中および保温時に炊飯器から逃げる熱を抑えて省エネルギー化を実現した電気式の炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭において炊飯器は、既に必需品の一つとなっており、種々のタイプのものが開発され市販されている。特に電気式の炊飯器は、炊飯時に釜内の圧力を常圧状態で炊飯するもの或いは所定の圧力を加圧して炊飯するものがあり、一方で、炊飯終了後にもほぼ炊き立て状態のご飯を食することができるように保温機能が設けられたり、タイマー機能が設けられたりして様々な機能が付加されて多機能化してきている。このため、炊飯器の普及拡大とその多機能化にともない消費する電力量も増大してきている。
【0003】
一方、近年、日本のみならず世界的なエネルギー事情および地球温暖化を防止する施策の一つとしてのCO削減等の観点から、電気機器が消費する電力量を低減することが法的規制を含めて要求され、この規制もその目標値が年々高くなってきている。
【0004】
このような状況から、電気式の炊飯器においても、炊飯時および保温時等において消費する電力量を低減する方策を採り入れたものが開発されている。
【0005】
炊飯器は、通常、上方に開口部を有する有底の釜と、この釜を収容して釜内の被炊飯物を加熱調理する炊飯器本体と、釜および炊飯器本体の開口部を覆う蓋体とで構成されている。
【0006】
この種の炊飯器は、釜の上方が開口しており、この開口部から釜内の熱が大量に放熱されるので、開口部からの放熱を抑えるために蓋体には輻射熱を反射するアルミ箔や放熱を遮断する断熱部材が設けられている。
【0007】
また、釜内の放熱は上方の開口部からだけでなく、釜の側方からも放熱されるので、釜収容部、すなわち釜収容ケースの胴部にも断熱部材を設けて釜側方からの放熱を抑えるようにしたものも開発されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【0008】
例えば下記特許文献1に記載されている炊飯器は、釜を収容する炊飯器本体の胴部に亜鉛鉄板からなる筒状の遮熱板を設けて釜側方からの放熱を抑えるようにしたものである。また、下記特許文献2に記載されている炊飯器は、胴部にギャップをあけて胴断熱壁を設けたものである。さらに、下記特許文献3に記載されている胴部の断熱材は、プラスチック樹脂や樹脂材料からなる断熱材本体の内部に多数の高硬度で内部を中空にした部材からなる中空粉末を含有させたものである。
【特許文献1】特開2002−360416号公報(段落〔0012〕、図3)
【特許文献2】特開平11−9443号公報(段落〔0030〕、図1)
【特許文献3】特開平11−9465号公報(段落〔0040〕、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の遮熱板は、金属材からなる亜鉛鉄板で形成されているので、高い遮熱効果を期待することができない。また亜鉛鉄板は樹脂等の材料に比べて高価であり、さらに炊飯器本体に付設される補助用胴ヒータと接触する恐れがある。また、上記特許文献2の断熱手段は、所定のギャップを設けて胴断熱壁を設けているので、このギャップを保持するために機械的補強が必要となり構造が複雑になる上、釜を収容する釜収容部が大型になる。さらに、上記特許文献3の断熱材は、プラスチック樹脂、樹脂材料からなる断熱材本体の内部に高硬度で内部を中空にした部材からなる多数の中空粉末を含有させたものを使用するので、材料が特殊なものとなり高価になる。
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、炊飯中および保温時に逃げる熱を抑えて省エネルギー化を実現した炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、以下の手段によって達成される。すなわち、請求項1に記載の炊飯器の発明は、上方に開口を有し被調理物が投入される釜と、前記釜が収容される有底筒状の釜収容ケースおよび被調理物を加熱調理する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記釜および炊飯器本体の開口を開閉自在に覆う蓋体とを備えた炊飯器において、前記釜収容ケースは、珪藻土からなる成型体で形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記釜収容ケースは、底部に開口部が形成されており、前記開口部に釜底の温度を検出する温度センサが配設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の炊飯器において、前記釜収容ケースは、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の炊飯器の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の炊飯器において、前記蓋体の内部には、珪藻土からなる断熱部材が装着されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4に記載の炊飯器において、前記断熱部材は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、上方に開口を有し被調理物が投入される釜と、前記釜が収容される有底筒状の釜収容ケースおよび被調理物を加熱調理する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記釜および炊飯器本体の開口を開閉自在に覆う蓋体とを備えた炊飯器において、
前記釜収容ケースは、前記釜の底部分が収容される釜底収容部と、前記釜底収容部から上方へ延設されて前記釜の胴部を覆う筒状胴部とを有し、前記筒状胴部には珪藻土からなる筒状断熱部材が装着されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項6に記載の炊飯器において、前記筒状胴部は、その直径を前記釜底収容部の開口より拡大し、この拡大箇所に部品装着スペースを形成して、前記部品装着スペースに前記筒状断熱部材が装着されていることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の炊飯器において、前記筒状断熱部材は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項7に記載の炊飯器において、前記部品装着スペースには、補助加熱手段が装着されていることを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項6に記載の炊飯器において、前記釜底収容部の内側側壁面には、珪藻土からなる断熱層が形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項10に記載の炊飯器において、前記断熱層は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項6ないし11のいずれかに記載の炊飯器において、前記蓋体の内部には、珪藻土からなる断熱部材が装着されていることを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、請求項12に記載の炊飯器において、前記断熱部材は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、炊飯器本体内の釜収容ケースは珪藻土からなる成型体で形成されているので、土鍋のように熱伝導性が低い一方断熱効果及び蓄熱効果に優れ、保温性が良好で省エネにも資するものとなる。したがって、炊飯中或いは保温中に釜内からの放熱が抑えられて熱エネルギーの節約ができる。また、この珪藻土は天然材であることから安値で簡単に入手できるので、釜収容ケースを作製するのに要する材料費が安価になり、しかも軽量にできる。
【0025】
請求項2の発明によれば、釜収容ケースの底部に開口を形成してこの開口部に温度センサを設けることにより、釜底の温度が簡単かつ正確に検出できる。
【0026】
請求項3の発明によれば、釜収容ケースは所定厚さの珪藻土層とこの珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層を設けた積層体で形成されているので、珪藻土層の型崩れおよび亀裂がなくなる。
【0027】
請求項4の発明によれば、前記蓋体の内部には、珪藻土からなる断熱部材が装着されているので、蓋体上部からの放熱を効果的に抑えることができ、断熱効果及び蓄熱効果がさらに向上し保温性をさらに高めることができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、前記断熱部材は、所定厚さの珪藻土層とこの珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されているので珪藻土層の型崩れおよび亀裂がなくなる。
【0029】
請求項6又は7の発明によれば、釜の胴部を囲む筒状胴部に、珪藻土からなる筒状断熱部材が装着されているので、釜収容ケースの胴部からの放熱が抑えられる。これにより、断熱効果及び蓄熱効果に優れ保温性が良好になり、炊飯中および保温中の熱の放熱を抑えて省エネルギー化を図ることができる。この珪藻土は天然材であることから安値に簡単に入手できるので、筒状断熱部材を作製するのに要する材料費が安価になり、しかも軽量にできる。
【0030】
請求項8の発明によれば、前記筒状断熱部材は、所定厚さの珪藻土層とこの珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層を設けた積層体で形成されているので、珪藻土層の型崩れおよび亀裂がなくなる。
【0031】
請求項9の発明によれば、部品装着スペースを設けることにより、筒状断熱部材および補助加熱手段の装着が容易になる。
【0032】
請求項10の発明によれば、釜底収容部の内側側壁面にまで珪藻土からなる断熱層が形成されているので、断熱効果及び蓄熱効果がさらに向上し保温性をさらに高めることができる。
【0033】
請求項11の発明によれば、前記断熱層は、所定厚さの珪藻土層とこの珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層を設けた積層体で形成されているので、珪藻土層の型崩れおよび亀裂がなくなる。
【0034】
請求項12の発明によれば、前記蓋体の内部には、珪藻土からなる断熱部材が装着されているので、蓋体上部からの放熱を効果的に抑えることができ、断熱効果及び蓄熱効果がさらに向上し保温性をさらに高めることができる。
【0035】
請求項13の発明によれば、前記断熱部材は、所定厚さの珪藻土層とこの珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されているので珪藻土層の型崩れおよび亀裂がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電気式の炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。なお、図1は本発明の実施例1に係る電気式の炊飯器の縦断面図である。
【実施例1】
【0037】
本発明の一実施形態に係る電気式の炊飯器(以下、炊飯器という)1は、炊飯中の釜内の圧力を所定圧力、例えば1.2気圧程度に加圧して炊飯する圧力式炊飯器であり、図1に示すように、上方が開口し深底の容器からなる釜2と、上方が開口しこの開口から釜2を収容し釜内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体8と、釜2および炊飯器本体8の開口を覆う開閉自在な蓋体14と、を有している。
【0038】
釜2は、上方に被炊飯物が投入される大きさの開口を有し、深底の筒状容器からなりステンレス鋼等の鉄系金属材で形成されている。
【0039】
上方の開口部には、開口縁が所定長さ外方へ延びたフランジ2が形成され、このフランジ2は、炊飯器本体8内に釜2が収容されたときに、外装ケース3の肩部に係止される。
【0040】
炊飯器本体8は、上方に釜2が収容される大きさの開口を有し有底で釜2の外形と略同じ形状の釜収容ケース4と、この釜収容ケース4を保持する外装ケース3とからなり、これらのケース3、4は、合成樹脂材の成型体で形成されている。また、釜収容ケース4と外装ケース3との間に所定の隙間Sが形成され、この隙間Sが機器取付けおよび通風空間スペースとなっている。この隙間Sには、ファンモータ9、制御基板10等が装着されている。
【0041】
この隙間Sを設けることにより、釜収容ケース4と外装ケース3間を断熱でき、また、ファンモータ9を駆動させることによって制御基板10等が冷却される。
【0042】
釜収容ケース4は、釜2の外形と略同じ形状を有し深底の筒状容器となっている。この釜収容ケース4は、釜2の底部を収容する鉢状の底部4と、この底部4から延設されて釜2の胴部を囲む筒状胴部4とを有し、筒状胴部4は底部4の上方開口部から段部4ABを経て外側へ膨出し、開口の直径を拡大した大径の筒状となっている。段部4ABは所定の幅長を有しており、この段部4ABを底辺、胴部の内側側壁面4B’を一辺とする箇所に筒状の空間スペース4SPが形成されている。この空間スペース4SPは、釜収容ケース4に釜2が収容されたときに、釜2の胴部とケース4の内側側壁面4B’との間に形成されている。この空間スペース4SPには、側壁面4B’に沿って補助加熱ヒータ6が装着され、また、後述する筒状断熱部材5が挿入される。また、底部4の内側側壁面4A’には珪藻土からなる断熱層5’が一体形成されている。筒状断熱部材5及び断熱層5’の構造等は後述する。
【0043】
鉢状の底部4には、その中心部に所定大きさの開口部4が設けられている。この開口部4には釜底の温度を検出する温度センサ7が設けられている。この温度センサ7により、釜底の温度を検出して釜2内の炊飯量等が検出される。また、底部4の外底壁面には、同心状に分巻された電磁誘導コイル6、6が装着されている。これらの電磁誘導コイル6、6により、釜2にうず電流が誘起されて釜2が自己発熱する。この胴部上方の開口部には、開口縁が所定長さ外方へ延びたフランジ4が形成され、このフランジ4が外装ケース3の肩部に係止されている。
【0044】
外装ケース3は、釜収容ケース4との間に所定のスペースが設けられ釜収容ケース4より大きな外形を有した化粧ボックスとなっている。また、この外装ケース3の前面には、操作パネル12が装着されている。この操作パネル12には、各種の操作スイッチ類およびそれらの各種スイッチ類によって設定される設定状態を表示する表示装置11が設けられている。
【0045】
蓋体14は、炊飯器本体8の釜収容ケース4の上方開口部を覆う内蓋15と、この内蓋15の上方に位置する中蓋16と、この中蓋16に装着されて釜内の圧力を制御する圧力弁機構17と、全体を覆う表蓋カバー18とを有し、一端が本体8にヒンジ機構13で連結されている。この蓋体14は、他端に蓋体14の開放をロックする係止手段19が設けられている。
【0046】
中蓋16の取り付けにより生じた上部との隙間には珪藻土からなる断熱部材5”が装着されている。断熱部材5”の構造等は後述する。
【0047】
圧力弁機構17は、圧力孔17を有する弁座17と、弁座17の上に自重により圧力孔17を塞ぐように載置される金属性のボール17と、このボール17を覆うカバー17と、ボール17を移動させるプランジャ17とで構成されている。この圧力弁機構17は、釜2内の圧力とボール17の自重とのバランスによってボールが圧力孔17上に載置されたり離れたりし、ボール17がこのように移動することによって圧力孔17が開閉される構造となっている。
【0048】
このボール17は、プランジャ17によって作動される。すなわち、プランジャ17は、不図示の制御手段からの出力を受けていないときは、ロッドがシリンダから突出して圧力孔上のボール17を圧力孔17の横方向に押し、この圧力孔17を強制的に開放する。また、プランジャ17が制御手段の出力を受けた時にはロッドがシリンダ内に引き込まれる。このときボール17は、自重により圧力孔17上に戻り、この圧力孔17が閉塞される。
【0049】
このようにしてプランジャ17は、圧力弁開放機構として動作し、圧力弁と圧力弁開放機構とは炊飯工程中に加圧された釜2内の圧力を強制的に低下させる。また、釜2内の圧力が異常に上昇したとき(例えば炊飯中に圧力弁が故障して開かないとき)に開放して釜2内の圧力を逃がす安全弁を有している。
【0050】
次に、図2を参照して、筒状断熱部材5について説明する。なお、図2(a)は筒状断熱部材の外観斜視図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大断面図である。
【0051】
断熱部材5は、釜2の胴部を囲んで釜側方から放熱される熱を遮断するもので、釜収容ケース4のスペース4SPに挿入される大きさ、すなわち内部に釜2の直径より若干長い直径の空洞5を有する筒状体からなり、その高さ5hはスペース4SPに収まる高さとなっており、珪藻土からなる成型体で形成されている。
【0052】
また、断熱層5’は底部4の内側側壁面4A’に一体形成されており、珪藻土からなるものである。
【0053】
この断熱部材5の成型体は、図2(b)に示すように、所定厚さの珪藻土層5と、この珪藻土層5の表裏面を覆い保護する保護層5B1、5B2とで構成されている。なお、図示はしないが、断熱層5’及び断熱部材5”についても同様の構成が当てはまる。
【0054】
断熱部材5、断熱層5’及び断熱部材5”を所定厚さの珪藻土層で形成することにより、この珪藻土層は後述する珪藻土の特性から多数の微細気孔を備えた多孔質層となっている。したがって、この多孔質空隙により断熱効果が発揮され保温効果が高まる。さらに、珪藻土層は、乾燥或いは素焼き等の段階で亀裂或いは破損することがあるので、この層の表面に保護層が設けられている。各保護層は樹脂材の皮膜で形成されているので、表面の空隙が目詰まりされて機械的強度が強くなる。
【0055】
以下に、珪藻土の特性および珪藻土層を有する断熱部材の造り方を説明する。
【0056】
珪藻土は、珪藻の遺骸が堆積された天然に存在する天然物であって、珪藻の外面は、珪酸質の基衣或いは組織からなる微細な水生植物の藻類、いわゆる植物性プランクトンの一種となっている。この植物性プランクトンは、体の周囲に珪酸(SiO)質なる殻が造られ、珪藻が死ぬことで、原形質が分解されてなくなり珪酸質の殻のみが残り、そのまま海底や湖底に珪藻殻の堆積体として沈積している。しかしながら、珪藻殻のみの堆積は少なく、堆積条件によって各種の粘土や砂、海綿、放散虫、鞭毛虫など生物の遺骸などが混入されたものとなっており、その珪藻土の色は白色ないし黄灰色をなしている。また、この珪藻土は、平均で約25μm程度であり、表面および内部に1μm〜0.1μm程度の微細な気孔を多数有している。この微細孔は木炭の5000〜6000倍の数となっており軽量な土となっている。
【0057】
したがって、この珪藻土からなる成型体は、珪藻土の特性から、内部が微細な空隙を有する多孔質層となっているので、この多孔質空隙を保温、断熱空間に利用することができる、また、珪藻土は天然材で豊富に存在し、安値で簡単に入手できるので、断熱部材を安価に作成することができる。
【0058】
次に、筒状断熱部材の作り方を説明する。
【0059】
採掘された所定大きさの塊からなる珪藻土を粉砕機によって粉砕加工し、所定粒度、例えば約1mm以下の粉末を作成する。次いで、この粉末に水を混入して土練機によって所定時間、例えば約10分間水練りし、粘性のある塊を作成する。この水練りは、1回の水練りを所定時間にし、間に時間をあけて複数回繰り返して行うのが好ましい。複数回繰り返すことにより、粘性が増した塊を得ることができる。また、珪藻土は粘性が得られ難いのでバインダーを加えるのが好ましい。このバインダーとしては木節粘土或いは無水珪酸が好ましい。次に、この塊から筒状に成型し成型体を自然乾燥させる。その後、所定温度、例えば約700〜1200℃前後の焼成温度で所定時間、例えば15時間程度素焼きする。
【0060】
その後、成型体の表裏面に弗素樹脂をコートして加熱焼成する。なお、焼成温度、雰囲気、時間等の焼成条件は使用するコート材の種類により最適に設定される。
【実施例2】
【0061】
次に、図3を参照して本発明の実施例2に係る炊飯器を説明する。なお、図3は本発明の実施例2に係る炊飯器の縦断面図である。
【0062】
この炊飯器1Aは、実施例1の炊飯器1の釜収容ケースを珪藻土で形成したものである。その他の構成は、同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
釜収容ケース4Aは、全体が珪藻土層と、この珪藻土層の表裏面に保護層が形成された構成を有している。珪藻土層および保護層は、実施例1と同じものとなっている。
【0064】
また、この収容ケース4Aは、その底部に開口4が形成されている。この開口4には温度センサ7が装着されている。釜収容ケース4Aは、全体が珪藻土層で形成されているので、実施例1の筒状断熱部材を設けたものに比べて、より断熱効果及び蓄熱効果に優れ保温特性が良くなる。また、重量も軽くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る炊飯器の縦断面図である。
【図2】図2(a)は筒状断熱部材の外観斜視図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例2に係る炊飯器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 炊飯器
2 釜
3 外装ケース
4、4A 釜収容ケース
5 筒状断熱部材
5’ 断熱層
5” 断熱部材
珪藻土層
B1、5B2 保護層
7 温度センサ
8 炊飯器本体
14 蓋体
17 圧力弁機構
19 係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口を有し被調理物が投入される釜と、前記釜が収容される有底筒状の釜収容ケースおよび被調理物を加熱調理する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記釜および炊飯器本体の開口を開閉自在に覆う蓋体とを備えた炊飯器において、前記釜収容ケースは、珪藻土からなる成型体で形成されていることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記釜収容ケースは、底部に開口部が形成されており、前記開口部に釜底の温度を検出する温度センサが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記釜収容ケースは、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記蓋体の内部には、珪藻土からなる断熱部材が装着されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記断熱部材は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の炊飯器。
【請求項6】
上方に開口を有し被調理物が投入される釜と、前記釜が収容される有底筒状の釜収容ケースおよび被調理物を加熱調理する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記釜および炊飯器本体の開口を開閉自在に覆う蓋体とを備えた炊飯器において、前記釜収容ケースは、前記釜の底部分が収容される釜底収容部と、前記釜底収容部から上方へ延設されて前記釜の胴部を覆う筒状胴部とを有し、前記筒状胴部には珪藻土からなる筒状断熱部材が装着されていることを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
前記筒状胴部は、その直径を前記釜底収容部の開口より拡大し、この拡大箇所に部品装着スペースを形成して、前記部品装着スペースに前記筒状断熱部材が装着されていることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記筒状断熱部材は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記部品装着スペースには、補助加熱手段が装着されていることを特徴とする請求項7に記載の炊飯器。
【請求項10】
前記釜底収容部の内側側壁面には、珪藻土からなる断熱層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記断熱層は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする請求項10に記載の炊飯器。
【請求項12】
前記蓋体の内部には、珪藻土からなる断熱部材が装着されていることを特徴とする請求項6ないし11のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項13】
前記断熱部材は、所定厚さの珪藻土層と前記珪藻土層の表裏面にそれぞれ保護層が設けられた積層体で形成されていることを特徴とする請求項12に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−154831(P2008−154831A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347631(P2006−347631)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】