説明

炊飯器

【課題】炊飯、蒸らし及び保温時に強制的に冷却していた制御手段の放熱を炊飯又は保温等に利用して、熱エネルギー節減により消費電力の節減を図る。
【解決手段】被炊飯物を入れる鍋3と、鍋3を収容する開口部及び鍋3内の被炊飯物を加熱する加熱手段5並びに加熱手段5を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段8Aを有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4とを備えた炊飯器1であり、制御手段8Aの放熱フィン14を拡大しかつ炊飯器本体2の所定の箇所まで延長する。放熱フィン14が、制御手段8Aを構成する制御用ICの放熱フィン14あるいはインバータ9の放熱フィン14であり、炊飯器本体2の底部23に延長され、また炊飯器本体2の底部23の大部分を被覆するよう延長、拡大されている。放熱フィン14により放出される熱エネルギーを吸水又は保温に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器に関し、特に省エネルギー化を実現する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化及び環境汚染の問題が地球規模において最優先課題として解決しなければならない時代に突入している。このうち、頻発する自然災害の一因が地球温暖化にあるとされていることから、地球温暖化の防止、すなわちCO2排出量の数値目標が世界各国及び地域に設定され、その目標達成に向けて様々な施策が打ち出されている。また、我が国においても、京都議定書での削減目標達成に向けた取り組みがなされている。
【0003】
かかる状況を踏えて、一般家庭で使用される電化製品もその対象となり、電気炊飯器も省エネルギー対策が急務となっており、これまでにさまざまな省エネルギー対策がなされた炊飯器も種々開発されてきている。
【0004】
ところで、このような炊飯器は、マイクロコンピュータなど制御用ICを使用して好みに応じた炊飯をできるようにしている。この制御用ICが搭載された制御基板には、多数の半導体素子を含む各種電子部品が装着されているので、作動時に、これらの部品の幾つかが発熱するとともに、この制御基板の近傍には炊飯用の加熱源からの熱が加わって制御基板の温度が上昇し、基板上の電子部品に影響を与えて電子部品が誤動作したり或いは破損したりする恐れがある。
【0005】
このため、制御基板に搭載された電子部品のうち発熱量の大きいものにはヒートシンクが設けられている。一方、炊飯器本体には炊飯器内部の温度制御のため、外気を取り込む吸気孔及び排出する排気孔を設けると共に、さらに冷却手段、例えば冷却ファンを設置して強制冷却している。
【0006】
例えば、下記特許文献1に開示された炊飯器は、図5に示したように、炊飯器本体101内には、内鍋107が着脱自在に収納されるとともに、内鍋107の外側には所定の隙間を存して内鍋107の形状に沿った保護枠108が設けられ、この保護枠108の外側に内鍋107を加熱する誘導コイル112〜114が設けられており、さらに保護枠108及び誘導コイル112〜114の外側には保護枠108の底部及び周側部を覆うように真空断熱材121が設けられ、この真空断熱材121の外方には、内鍋107と保護枠108との間の隙間S1に送風する鍋冷却用のファン129が設けられている。
【0007】
そして、炊飯時には保護枠108と真空断熱材121との間に形成された隙間S2に対して送風して誘導コイル112〜114を冷却し、炊飯終了から適温保温への移行時には内鍋107と保護枠108との間の隙間S1に対して送風して内鍋107を冷却するように、ファン129からの送風方向を切り替え、炊飯時及び保温時の消費電力を削減して省エネルギー化を図っている。なお、符号137は電源基板、138は冷却用のファンである。
【0008】
また、下記特許文献2に開示された炊飯器は、図6に示したように、炊飯器本体201と、炊飯器本体201の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体207と、この蓋体内に配設した蓋温度検知手段225と、炊飯器本体201に着脱自在に収納される内鍋204と、内鍋204に当接する内鍋温度検知手段215と、内鍋内の調理物を加熱するための加熱手段206と、内鍋温度検知手段215と蓋温度検知手段225の情報を基に加熱手段206を制御し、内鍋内の調理物を調理する機能を有する制御手段211と、制御手段211及び炊飯器本体201内部を冷却するための空気を送り込む冷却ファン216を備え、浸水工程又は蒸らし工程においては、冷却ファン216の回転を停止する機能を有するものである。
【0009】
下記特許文献2に開示された炊飯器によれば、浸水工程又は蒸らし工程において、冷却ファン216の回転を停止するので、炊飯器外部の空気の温度による内鍋温度検知手段215の検知精度に対する影響を少なくすることができ、その検知精度を高くすることができるので、米への加熱を過不足なく適切に行なえ、また、冷却ファン216の回転を停止する間、そのエネルギー損失を削減できるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−288918
【特許文献2】特開2007−130208
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、上記特許文献1又は2に開示されている炊飯器のように、炊飯時には保護枠と真空断熱材との間に形成された隙間に対して送風して誘導コイルを冷却し、炊飯終了から適温保温への移行時には内鍋と保護枠との間の隙間に対して送風して内鍋を冷却するように、ファンからの送風方向を切り替えたり、浸水工程又は蒸らし工程において、制御手段や炊飯器本体の鍋を冷却するファンを停止したりして、省エネ効果を求めるものが知られている。
【0012】
これらの炊飯器の場合、冷却ファンがタイミングよく作動されないと、炊飯器本体内が必要以上に冷却されてエネルギー損失を招く恐れがある。一方、制御基板に搭載された電子部品の発熱に対しては、冷却手段を設置して強制的に冷却しているが、発生する熱エネルギーを有効に利用するものは知られていなかった。
【0013】
本願の発明者は、省エネルギーの観点から制御基板より発生する熱の利用に着目し、種々検討を行った結果、電子部品が発生する熱エネルギーを有効に利用することによって炊飯器全体の熱損失を減らすことができ、消費エネルギーを少なくすることができることを見出し、本発明に係る炊飯器を完成するに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明は、吸水、炊飯、蒸らし及び保温時に亘って炊飯器外に強制的に逃がしていた制御用ICの熱を保温等に有効利用して、外部に放出される熱エネルギーを節減することによって全消費電力の節減を図った炊飯器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の炊飯器は、被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを備えた炊飯器において、前記制御手段の電子部品の放熱フィンを拡大しかつ炊飯器本体内の所定の箇所まで延長して、該放熱フィンにより放出される熱エネルギーを吸水又は保温に利用することを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記放熱フィンが、前記制御手段を構成する制御用ICの放熱フィンであることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記放熱フィンが、前記制御手段を構成するインバータの放熱フィンであることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の炊飯器において、前記放熱フィンが、前記炊飯器本体の底部に延長されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の炊飯器において、前記放熱フィンが、炊飯器本体の底部の大部分を被覆するよう延長、拡大されていることを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1に記載の炊飯器において、前記炊飯器本体は前記制御手段を冷却する冷却ファンを備えており、前記制御手段は前記冷却ファンを制御して前記炊飯器本体内部の温度が所定温度以上の期間は前記冷却ファンを駆動し、所定温度以下の期間は前記冷却ファンを停止させることを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれか1に記載の炊飯器において、前記制御手段は、該制御手段を冷却する冷却ファンを備えており、前記冷却ファンは前記制御手段によって炊飯時には駆動され、吸水又は保温時には停止されるように制御されることを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の炊飯器において、前記炊飯器本体又は前記蓋体に外気温を検出する外気温センサを備えており、該外気温センサの検出出力により、前記制御手段は前記冷却ファンを外気温が所定温度以上のときは駆動し、外気温が所定温度以下のときは停止するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、被炊飯物を入れる鍋と、その鍋を収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びにその加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、鍋及び炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを備えた炊飯器において、制御手段の電子部品の放熱フィンを拡大しかつ炊飯器本体内の所定の箇所まで延長して、放熱フィンにより放出される熱エネルギーを保温等に利用することにより、従来は強制的に冷却していた制御手段の電子部品の熱を吸水や保温のためのエネルギーの一部として活用することができるので、省エネルギー化できる。
【0024】
また、請求項2又は3の発明によれば、請求項1に記載の炊飯器において、放熱フィンが、制御手段を構成する制御用IC又はインバータの放熱フィンであることにより、その放熱用フィンを拡大しかつ炊飯器本体内の所定の箇所まで延長して、発生する熱を保温等のためのエネルギーの一部として活用することが可能となり、炊飯器を省エネルギー化できる。
【0025】
また、請求項4及び5の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1に記載の炊飯器において、放熱フィンが炊飯器本体の底部に延長され又は炊飯器本体の底部の大部分を被覆するよう延長、拡大されているため、制御手段の電子部品から発する熱エネルギーが、炊飯器本体の全体に波及し、効率よく利用されるので、炊飯器を省エネルギー化できる。
【0026】
また、請求項6の発明によれば、請求項1乃至5の効果に加え、炊飯器本体は制御手段を冷却する冷却ファンを備えており、制御手段は冷却ファンを制御して炊飯器本体内部の温度が所定温度以上の期間は前記冷却ファンを駆動し、所定温度以下の期間は前記冷却ファンを停止させるようにしたので、炊飯器本体内部の温度に応じたきめ細かな温度調節がなされ、制御手段から発する熱エネルギーの効率的な利用が可能になる。
【0027】
また、請求項7の発明によれば、請求項6に記載された炊飯器において、制御手段を冷却する冷却ファンを備えており、冷却ファンは炊飯時には駆動され、保温時等には停止されるように制御されるので、制御手段の放熱フィンの熱が保温時に使用されるため、その発生する熱エネルギーの効率的な利用が可能になる。
【0028】
また、請求項8の発明によれば、請求項6又は7に記載の炊飯器において、炊飯器本体又は蓋体に外気温を検出する外気温センサを備えており、外気温センサの検出出力により、制御手段は、冷却ファンを外気温が所定温度以上のときは駆動し、外気温が所定温度以下のときは停止するように制御するので、放熱フィンの熱が外気温度に応じて適切に利用され、放熱フィンから発する熱エネルギーの効率的な利用が可能になる。また、炊飯器の熱損失が少なく、省エネルギー化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る炊飯器の縦断面図である。
【図2】図2は本発明の他の実施例に係る炊飯器の縦断面図である。
【図3】図3は図2の実施例における制御手段のブロック図である。
【図4】図4は炊飯工程における温度管理を示す曲線図である。
【図5】図5は従来の炊飯器の縦断面図である。
【図6】図6は他の従来の炊飯器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための炊飯器の一具体例を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0031】
まず、本発明の実施例1に係る炊飯器を図1を用いて説明する。なお、図1は本発明の実施例1に係る炊飯器の縦断面図である。
【0032】
実施例1に係る炊飯器1は、図1に示すように、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋3と、この鍋3を着脱自在に収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する誘導加熱コイル51、側面ヒータ52、蓋ヒータ53等の加熱手段5並びに加熱手段5を制御して被炊飯物の炊飯、蒸らし及び保温制御を行う制御手段を有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4とを備えている。
【0033】
後述するように、蓋体4は鍋3内の圧力を制御するために鍋3内と外気とを連通又は遮断する圧力調整弁4aを備え、また鍋3内の圧力を調整する際に炊飯物が吹きこぼれて一気に飛び出すのを防止する貯留タンク4cが着脱自在に装着されている。
【0034】
炊飯器本体2は、その内部に鍋3を収容する非金属材料で成形された有底筒状の内ケース21と、この内ケース21を覆う外ケース22とを有し、内ケース21内に鍋3が着脱自在に収容されるようになっている。内ケース21は、その上端部に外周へ突出したフランジ21aが形成されている。鍋3は、その上端開口部に外方に張り出すフランジ31が形成されており、鍋3を内ケース21内に収容した際、このフランジ31が内ケース21のフランジ21aに掛るように載置されている。
【0035】
内ケース21は、その底部付近の外周囲に誘導加熱コイル51が配設されている。この誘導加熱コイル51は、鍋3の外周面までの距離が一定になるように耐熱性樹脂材料で成形されたカバー(図示省略)に支持されている。また、内ケース21には、上方開口部と誘導加熱コイル51との間に側面ヒータ52が配設されている。
【0036】
炊飯器本体2は、その外ケース22の前面に操作・表示部7が設けられている。この操作・表示部7には、電源スイッチ7aや炊飯スタートスイッチ、メニュー選択スイッチ、保温スイッチ等のスイッチ類の操作釦及び表示パネル7bが装着されている。これらの部品のうち、表示パネル7bには操作制御基板8に取り付けられた電子部品によって選択された炊飯メニュー等が表示される。
【0037】
炊飯器本体2には、操作制御基板8と誘導加熱コイル51、側面ヒータ52及び蓋ヒータ53等に電力を供給・制御する電源制御基板10が配設されている。電源制御基板10にはインバータ9、スイッチング素子、タイマー素子などの電子部品が装着されている。
【0038】
これらの電子部品のうち、特にインバータ9は作動時に発熱するので、電源制御基板10はヒートシンク13によって冷却される。また、炊飯器本体2の底部の中央部には、鍋3の底面に接触するように鍋底温度センサ32が設けられている。さらに炊飯器本体2又は蓋体4のいずれかに外気温度を検知する外気温センサ(図示省略)が設けられている。この外気温センサの出力は、操作制御基板8に入力される。
【0039】
制御手段8Aは、電源制御基板10と操作制御基板8とから構成される。操作制御基板8は半導体素子からなるCPU、ROM、RAM等の電子部品(図示せず)が搭載されている。そして、操作制御基板8は、操作・表示部7の各種操作釦や鍋底温度センサ32、蒸気センサ等に接続され、これらの操作釦及びセンサからの信号がCPUに入力されるようになっている。またCPUには、時間を計時するタイマー、炊飯メニュー検知手段及びROM、RAMが接続されている。制御手段8Aは、電源制御基板10に搭載されたインバータ9、スイッチング素子、タイマー素子等も含む。
【0040】
蓋体4は、枠体42の上には表蓋41を、下には蓋カバー48をそれぞれ取り付け、蓋カバー48を介して枠体42に内蓋43が装着されている。蓋体4は、炊飯器本体2の内ケース21の上方開口部を覆うように取り付けられている。蓋体4の炊飯器本体2への取り付けは、枠体42をヒンジ部材44と枢支ピン45とを用いて回動自在に軸支した構成となっている。また枠体42と内蓋43の間には、蓋カバー48に覆われて蓋ヒータ53が配設されている。蓋カバー48は枠体42に固定され、内蓋43は蓋カバー48を覆って枠体42に着脱自在に支持されている。
【0041】
内蓋43のほぼ中央部には、炊飯器本体2内の圧力を制御する圧力調整弁4aや、圧力調整弁4aの故障などで鍋3内が異常に加圧されたときに開放される安全弁4bが装着されている。そして、この蓋体4の内部には、圧力調整弁4aと貯留タンク4cとの間を連結する蒸気の排出路6が設けられ、表蓋41のほぼ中央部に形成された窪み部分に着脱自在に装着されている蒸気排出路6の一部分をなす貯留タンク4cに繋がっている。
【0042】
内蓋43の外周囲には、鍋3のフランジ31に当接して鍋3内が密閉状態となるようにシールする鍋パッキン46が外枠50に支持されて装着されている。また、蓋体4のヒンジ部材44が設けられた位置に対向する他端部には係止レバー47bが設けられており、内ケース21の上端部に形成された係止部材47aが係止レバー47bに係止されることにより蓋体4を閉じた状態に保持するようになっている。
【0043】
このような構成を備えることにより、内ケース21内に鍋3を収容して蓋体4を閉めると、鍋パッキン46が鍋3の開口縁部に圧接する位置で蓋体4が閉鎖する状態で保持され、その結果、鍋3内が密閉状態となる。
【0044】
内蓋43は、例えばステンレス鋼材あるいはアルミニウム材をステンレス鋼材で被覆したクラッド材で形成されたものである。すなわち、内蓋43は上述した材料からなる金属板を周縁部と内部とに段差を設けて円盤状にプレス成型して形成され、その周縁部にはゴム製の鍋パッキン46を介して硬質のプラスチック製の外枠50を取り付けている。鍋パッキン46はシリコンゴムで形成するのが好ましい。
【0045】
内蓋43には、鍋3内の蒸気の圧力が所定の圧力以上に上昇したときに、鍋3内の圧力を弁孔71を介して蒸気の排出路6に排出するための圧力調整弁4aが設けられている。この圧力調整弁4aは、弁孔71を有する弁座72と、弁座72の上に自重により弁孔71を塞ぐように載置されたボール73と、ボール73を覆うカバー74とから構成されていて、鍋3内の圧力とボール73の自重とのバランスによって、ボール73が弁孔71上を移動することにより弁孔71を開閉する。
【0046】
この圧力調整弁4aには、ソレノイド12のプランジャ17が配置されており、このプランジャ17は、制御手段8Aにより制御される。プランジャ17は制御手段8Aからの出力を受けていないときは、そのロッドがシリンダから突出して弁孔71上のボール73を弁孔の横方向に押し、弁孔71を強制的に開放する。また、プランジャ17は制御手段8Aの出力を受けたときは、ロッドがシリンダ内に引き込まれ、ボールは弁孔の上に戻り、弁孔71は閉塞される。このようにしてプランジャ17は、圧力調整弁4aの開放機構として動作し、開放動作により炊飯工程中に加圧された鍋3内の圧力を強制的に低下させる。
【0047】
貯留タンク4cは、排出路6の一部を構成しており、鍋3内の圧力や蒸気を外気に逃がす放出口4dを有している。この放出口4dは、排出路6と、圧力調整弁4aの弁孔71とを介して、鍋3内と外気とを連通している。そして、炊飯時には発生した蒸気の一部を圧力調整弁4aと排出路6とを介して貯留タンク4cに送り、この貯留タンク4cにおいておねばと水に戻す。すなわち、貯留タンク4cは、蒸気からおねばの成分と水分とを分離して各々を一時的に貯留する役割を果たす。
【0048】
実施例1では、このような炊飯器1において、操作制御基板8及び電源制御基板10に搭載された電子部品のヒートシンクとして使用されている放熱フィン14を、拡大し、かつ炊飯器本体2内の所定の箇所まで延長して、放熱フィン14により放出される熱エネルギーを吸水や保温等に利用している。前述したように、制御手段8Aを構成する電源制御基板10にはインバータ9、スイッチング素子、タイマー素子などが装着されている。
【0049】
これらの電子部品のうち、特にインバータ9は作動時に大きく発熱するので、ヒートシンク13を備えている。また、操作制御基板8に搭載されたマイコンなどの制御用ICにもヒートシンク13が設けられている。これらの電子部品を冷却するため、ヒートシンク13の放熱フィン14が、炊飯器本体2の底部23の大部分を被覆するように、延長、拡大されている。
【0050】
上述したように、制御手段8Aを構成する制御用ICやインバータ9の放熱フィン14により放出される熱エネルギーを加熱吸水時や保温時に利用することにより、従来は棄てられていた電子部品の熱を保温等のためのエネルギーの一部として活用することができ、炊飯器1を省エネルギー化できるようになる。
【実施例2】
【0051】
本実施例2は、放熱フィン14を拡大してもその熱容量が不足な場合において、冷却ファン11を利用する炊飯器1Aに関する。この実施例2の炊飯器1Aを図2〜図4を用いて説明する。なお、図2は実施例2に係る炊飯器の縦断面図である。図3は図2の実施例における制御手段のブロック図である。また、図4はその炊飯工程における温度管理を説明する曲線図である。
【0052】
本発明の実施例2に係る炊飯器1Aは、図2に示すように、被炊飯物を入れる鍋3と、この鍋3を収容する開口部及び鍋3内の被炊飯物を加熱する誘導加熱コイル51、側面ヒータ52等並びにその底面に器外へ連通する吸気孔23a及び排気孔23bを有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4と、誘導加熱コイル51及び側面ヒータ52等を制御して被炊飯物の吸水、炊飯、蒸らし及び保温を行なう制御手段8Aとを備えている。
【0053】
また、蓋体4の枠体42と内蓋43の間には、蓋カバー48に覆われて蓋ヒータ53が配設されるとともに、蓋温度センサ(図示省略)が設けられている。さらに、内蓋43には、炊飯器本体2内の圧力を調整する圧力調整弁4a及び安全弁4bが装着されており、この内蓋43は枠体42に支持されている。
【0054】
炊飯器本体2、鍋3、蓋体4、内蓋43、外ケース22、前面に設けた操作・表示部7、制御手段8Aなど、この炊飯器1Aの基本的構造は実施例1の炊飯器1と同様であるので、共通の記号を付して説明を省略し、以下には必要な部分のみ説明をすることとする。
【0055】
炊飯器本体2には、誘導加熱コイル51、側面ヒータ52及び蓋ヒータ53等へ電力を供給・制御する電源制御基板10が吸気孔23aに近接した箇所に配設されている。この電源制御基板10には、半導体素子からなるインバータ9、スイッチング素子、タイマー素子等の電子部品が装着されている。これらの電子部品のうち、特にインバータ9は作動時に発熱するのでヒートシンク13を備えており、更には、後述する冷却ファン11によって冷却される。
【0056】
また、炊飯器本体2は、その底部23の中央部に鍋3の底面に接触するようにして鍋底温度センサ32が設けられている。さらに炊飯器本体2又は蓋体4のいずれかに外気温度を検知する不図示の外気温センサが設けられている。この外気温センサの出力は、操作制御基板8のCPUなど制御装置に入力され、冷却ファン11或いは吸気孔23a及び排気孔23bのシャッター機構25が作動される。
【0057】
炊飯器本体2の底部23には、その前方及び後方(図2における左方及び右方)に空気を吸気する吸気孔23a及び吸気された空気を排出する排気孔23bが形成され、吸気孔23aに近接した位置に冷却ファン11が配設されている。吸気孔23a及び排気孔23bには開閉するシャッター機構25が設けられており、制御手段8Aは、炊飯器本体2内部の温度が所定温度以上の期間は吸気孔23a及び排気孔23bを開き、また所定温度以下の期間は吸気孔23a及び排気孔23bを閉鎖するようにシャッター機構25を制御する構成となっている。
【0058】
各吸気孔23a及び排気孔23bは、底部23に所定の幅長及び長さを有する複数本の細溝、いわゆるスリットで形成されている。また、これらのスリットからなる吸気孔23a及び排気孔23bは、それぞれのスリットを塞ぐ幅長及び長さを有する板状体からなる開閉扉、すなわちシャッター板23a'及び23b'によって開閉される。
【0059】
制御手段8Aは、図3に示すように、鍋底温度センサ32、蓋温度センサ41、外気温度センサ40の出力が入力される入力回路81と、炊飯スタートスイッチ71、メニュー選択スイッチ72及び保温スイッチ73等の操作出力が入力される信号入力回路82と、各入力回路81、信号入力回路82からの信号を入力して所定の演算を行って出力制御回路83へ所定の出力を行う制御手段80で構成されている。
【0060】
制御手段80は、マイクロコンピュータCPUなどを有し、各入力回路81、82からの信号を元に記憶手段84を構成するROMあるいはRAMに記憶されたプログラムに基づいて所定の演算処理を行ない、所定のタイミングで誘導加熱コイル51、蓋ヒータ53、側面ヒータ52、冷却ファン11及びシャッター機構25を制御するとともに、表示パネル7bに所定の表示をする。すなわち、この制御手段80は、鍋底温度センサ32の検出温度に基づいて主に誘導加熱コイル51を制御して鍋の底部を温度管理し、蓋温度センサ41の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ53を制御して内蓋を温度管理し、また、炊飯工程においては、外気温度が所定温度との高低に応じて冷却ファン11或いはシャッター機構25を制御する。
【0061】
この実施例2の炊飯器1Aでは、実施例1の炊飯器1の場合と同様に、制御手段8Aの電子部品の放熱フィン14を拡大し、かつ炊飯器本体2内の底部23まで延長し、放熱フィン14により放出される熱エネルギーを加熱給水又は保温に利用するようにしている。この炊飯器本体2は、放熱フィン14を拡大しても熱容量が不足な場合に制御手段8Aを冷却する冷却ファン11を備えている。制御手段8Aは、炊飯器本体2の内部の温度が所定温度以上の期間は冷却ファン11を駆動し、所定温度以下の期間は冷却ファン11を停止させる。また、制御手段8Aにより、冷却ファン11は炊飯時には駆動され、保温時には停止されるように制御される。
【0062】
さらにまた、実施例2の炊飯器1Aは、炊飯器本体2又は蓋体4に外気温を検出する外気温度センサ40を備えており、外気温度センサ40の検出出力により、制御手段8Aは冷却ファン11を外気温が所定温度以上のときは駆動し、外気温が所定温度以下のときは停止するように制御する。
【0063】
次に、この制御手段8Aによる炊飯制御、シャッター機構25及び冷却ファン11の制御について図4を参照して説明する。図4は炊飯制御の一例を示す温度・圧力曲線図であって、図面の上方は温度・圧力曲線を示し、下方は圧力調整弁4aの開閉及び吸・排気孔の開閉動作と、冷却ファンの回転・停止状態を示している。なお、本実施例においては吸気孔と排気孔とは連動して開閉制御されているので、図4においては吸気孔のみの開閉動作が示されている。
【0064】
制御手段8Aは、記憶手段84(図3参照)に各種炊飯工程のプログラムが記憶されており、炊飯スタートスイッチ71をオンにしてメニュー選択スイッチ72により選択メニューが選択されると、この操作に基づいて、図4に示すように、炊飯工程(吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程)、蒸らし工程及び保温工程の順に炊飯を実施する。
【0065】
まず吸水工程では、鍋底温度は55℃付近に加熱されているが、鍋内圧力が上がるのにやや先行し105℃、1.2気圧になるまで立ち上がり、圧力調整弁4aを閉成した状態で沸騰維持工程に移行する。この段階でソレノイドのプランジャ17を駆動し、圧力調整弁4aを所定の時間開放して鍋内圧力を1.2気圧から1気圧に急激に低下させる。これを所定回数繰り返すと鍋内の米粒を大きく攪拌することができるため、鍋内全体の米粒を均一に加熱できる。この後、鍋内圧力を1.2気圧に維持しつつ、沸騰を維持する。さらに、鍋底温度が130℃に達し炊飯が完了すると、蒸らし工程に移り、この間に鍋内圧力が1.0気圧に低下する。
【0066】
蒸らし工程が終わると保温工程になるが、この時には誘導加熱コイル51の通電がオフにされ、誘導加熱コイル51はオンからオフに切り替わる。それと同時にシャッター機構25のソレノイド12も作動し、作動板24が移動するとともにシャッター板23a'、23b'が移動し、吸気孔23a及び排気孔23bは閉塞状態に移るとともに冷却ファン11の作動も停止される。
【0067】
吸気孔23a及び排気孔23bが閉塞状態に移ると、保温工程における熱損失が少なくなり、側面ヒータ52、蓋ヒータ53により長時間保温のための温度が維持される。この場合、さらに放熱フィン14からの熱が加わるので、保温の熱エネルギーを節減することができるようになる。
【0068】
制御手段80は、上記のように炊飯メニューで選定されたメニューに応じて、主として誘導加熱コイル51、側面ヒータ52及び蓋ヒータ53を制御して所定の炊飯工程を実施するが、これらの炊飯工程において所定のタイミングでシャッター機構25を操作し、放熱フィン14の熱を利用する。その場合に制御手段8Aを冷却するのに放熱フィン14の熱容量のみでは十分な冷却ができない場合には、冷却ファン11による冷却を行なう。シャッター機構25と放熱フィン14については次のような操作を行うようにすることができる。
【0069】
シャッター機構25は、
(a)吸気孔23a及び排気孔23bを、炊飯器本体2内部の温度が所定温度以上の期間は開き、所定温度以下の期間は閉じる。
(b)吸気孔23a及び排気孔23bを、炊飯時に開き、保温時に閉じる。
(c)吸気孔23a及び排気孔23bを、外気温度センサ40の検出出力により、外気温度が所定温度以上のときには開き、外気温度が所定温度以下のときには閉じる。
(d)炊飯時に外気温が所定温度以上であるときには、吸気孔を全開位置とし、所定温度以下の低温のときには、吸気孔を全閉位置とし、高温と低温の中間温度のときには中閉位置とする。(e)シャッター機構25を、炊飯スイッチ又は保温スイッチに連動して作動させる。
【0070】
冷却ファン11は、
(f)吸気孔23aから吸入した空気を放熱フィン14に当てて排気孔から排気させる。
(g)炊飯スイッチ又は保温スイッチに連動して駆動される。
(h)炊飯器本体2内部の温度が所定温度以上の期間には駆動され、所定温度以下の期間には停止させられる。
(■)炊飯時には駆動され、保温時には停止されるように制御される。
【0071】
また、制御手段8Aは、炊飯器本体2又は蓋体4に備えた外気温を検出する外気温度センサ40の検出出力により、
(j)冷却ファン11を外気温が所定温度以上のときは駆動し、外気温が所定温度以下のときは停止するように制御する。
【0072】
この実施例2の炊飯器1Aによれば、放熱フィン14を拡大して炊飯器本体2内の底部23まで延長しても熱容量が不足する場合には、放熱フィン14を冷却するための冷却ファンを設けて炊飯時の熱放散をコントロールするとともに、保温時には冷却ファンの運転を停止して制御手段の電子部品の放熱フィンにより放出される熱エネルギーを利用している。そのため、実施例2の炊飯器1Aによれば、保温時の熱損失を少なくするとともに熱エネルギーを有効活用でき、かつ冷却ファンの運転も停止するので、消費電力の節減ができ、省エネルギー化に有効である。
【0073】
なお、放熱フィンの熱は、保温時のみならず、吸水工程の加熱にも使用できるし、また、繰り返して炊飯が行われる場合には冷却された状態から始めるのではなく、保温時に維持された温度から吸水工程をはじめることができるので、熱エネルギーが有効に利用されることになる。
【0074】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、放熱フィンを吸気孔及び排気孔を塞ぐように設けた上、炊飯器本体内の温度により吸気孔シャッターと排気孔シャッターの開閉を個別に行うことによって、放熱フィンのシャッターの開放時の冷却能力と閉鎖時の加熱能力の差を利用して温度を調節するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1、1A 炊飯器
2 炊飯器本体
3 鍋
4 蓋体
4a 圧力調整弁
4b 安全弁
4c 貯留タンク
51 誘導加熱コイル
52 側面ヒータ
7 操作プレート
7a 電源スイッチ
7b 表示パネル
8 操作制御基板
8A 制御手段
9 インバータ
10 電源制御基板
11 冷却ファン
12 ソレノイド
14 放熱フィン
21 内ケース
22 外ケース
23a 吸気孔
23b 排気孔
24 作動板
25 シャッター機構
32 鍋底温度センサ
41 表蓋
42 枠体
43 内蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを備えた炊飯器において、前記制御手段の電子部品の放熱フィンを拡大しかつ炊飯器本体内の所定の箇所まで延長して、該放熱フィンにより放出される熱エネルギーを吸水又は保温に利用することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記放熱フィンが、前記制御手段を構成する制御用ICの放熱フィンであることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記放熱フィンが、前記制御手段を構成するインバータの放熱フィンであることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記放熱フィンが、前記炊飯器本体の底部に延長されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記放熱フィンが、炊飯器本体の底部の大部分を被覆するよう延長、拡大されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記炊飯器本体は前記制御手段を冷却する冷却ファンを備えており、前記制御手段は前記冷却ファンを制御して前記炊飯器本体内部の温度が所定温度以上の期間は前記冷却ファンを駆動し、所定温度以下の期間は前記冷却ファンを停止させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御手段は、該制御手段を冷却する冷却ファンを備えており、前記冷却ファンは前記制御手段によって炊飯時には駆動され、吸水又は保温時には停止されるように制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記炊飯器本体又は前記蓋体に外気温を検出する外気温センサを備えており、該外気温センサの検出出力により、前記制御手段は前記冷却ファンを外気温が所定温度以上のときは駆動し、外気温が所定温度以下のときは停止するように制御することを特徴とする請求項6又は7に記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−217997(P2011−217997A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91267(P2010−91267)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】